説明

導電用高耐食材料及びその製造方法

【課題】量産性に優れた安価な金属基体を用いて、腐食環境でも長期間耐食性に優れ、かつ高い導電性を保持しうる導電用高耐食材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】安価な金属材料を基体として、基体表層にある酸化皮膜層を取り除いた後に、導電性を有する中間層を設け、その表面の上層にπ共役導電性高分子膜を形成する。前記中間層が、C、Ni、Co、Zr、Sn、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Zr基合金、Sn基合金、Pt基合金、Au基合金、Ag基合金、Pd基合金、Ir基合金、Ru基合金、Ru酸化物、Zn酸化物、Ir酸化物、In酸化物、Sn酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。該中間層を形成した基体の上層に形成されるπ共役系導電性高分子が、電解重合法、または、化学重合後に電解重合法よって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電用高耐食材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の特殊な有機合成プラント用構造材料、有機合成用の陽極材料、ターミナルや圧着端子等の給電用材料では、耐食性のみならず、優れた導電性を持つ材料が求められている。現在、このような要望に対しては、ハステロイ合金やモリブデン合金などに代表される耐食性合金、アモルファスカーボン材料、ステンレス鋼に貴金属めっき処理を施した材料、または耐食性合金めっき処理を施した材料などが提案されている。
【0003】
しかし、ステンレス鋼に貴金属あるいは耐食性合金めっきをした場合、ピンホールに起因する局部電池形成による腐食の問題があり、長期耐久性に劣る。また、耐食性合金は表面に絶縁性の不動態皮膜を形成することよって耐食性を向上させており、高い集電機能を求められるような用途に使用することができなかった。また、アモルファスカーボン材料は耐食性に優れ、高い電気伝導性をも有するが、製造に長期間を要する上に、機械加工性に劣るため複雑な形状の構造物には適応することが困難である。また、これらの耐食性合金やアモルファスカーボン材料は非常に高価であるといった問題点がある。
【0004】
これらの問題に対して、安価な金属基体に導電性をもたせつつ、防食する様々な方法が提案されている。特許文献1では、金属基体上に、上側の層をより卑なNi層となるように、酸化還元電位が異なるNiめっき層を2層設け、さらにAuめっきを最上層に形成することによって、ピンホールに起因する孔食を防止し、寿命向上させた金属材料が開示されている。また、特許文献2では、金属基体上に、可溶性導電性高分子を含む溶液を浸漬または塗布、乾燥し、ドーパントを含む導電性高分子膜を形成することによって、長期間の耐食性を保持できる金属材料の防食方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、金めっき層と酸化還元電位が高いNiめっき層によって、卑なNiめっき層の自己犠牲によって金属基体を保護するために、酸化還元電位が低いNiめっき層は腐食が進行し続けるので、該Niめっき層の消失により、その効果も消え、長期に渡る耐食性が不十分である。また、特許文献2の方法では、導電性高分子に電気活性を与えるため、ドーパントとしてクエン酸やp−トルエンスルホン酸などのルイス酸を含む酸性溶液中に基体を浸漬させることから、反応活性が高いAlなどの金属に適応した場合には、浸漬時に絶縁性の酸化皮膜が生成するため、基体と耐食膜との導電性が不十分であるといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−234361号公報
【特許文献2】特許第3129837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、量産性に優れた安価な金属基体を用いて、腐食環境でも長期間耐食性に優れ、かつ高い導電性を保持しうる導電用高耐食材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、金属材料からなる基体表面に、導電性を有する中間層を形成し、該中間層上にπ共役系導電性高分子を形成した構成からなる材料が、長期間に渡って耐食性と導電性とを保持しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下、(1)から(7)の少なくとも1項から構成された導電用高耐食材料及びその製造方法である。
【0010】
(1)金属材料からなる基体表面に、導電性を有する中間層が形成され、該中間層上にπ共役系導電性高分子が形成されていることを特徴とする導電用高耐食材料。
【0011】
(2)金属材料からなる基体がMg、Al、Ti、Zn、Fe、Mg基合金、Al基合金、Ti基合金、Zn基合金、Fe基合金からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載の導電用高耐食材料。
【0012】
(3)中間層上に形成されたπ共役系導電性高分子がポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(1)〜(2)に記載の導電用高耐食材料。
【0013】
(4)導電性を有する中間層がC、Ni、Co、Zr、Sn、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Zr基合金、Sn基合金、Cu基合金、Pt基合金、Au基合金、Ag基合金、Pd基合金、Ir基合金、Ru基合金、Ru酸化物、Zn酸化物、Ir酸化物、In酸化物、Sn酸化物なる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)に記載の導電用高耐食材料。
【0014】
(5)金属材料からなる基体表面の酸化皮膜層を除去する工程後に導電性を有する中間層が形成されていることを特徴とする(1)〜(4)に記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。
【0015】
(6)金属材料からなる基体表面の上層に形成されるπ共役系導電性高分子が、電解重合法によって形成されることを特徴とする(1)〜(5)に記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。
【0016】
(7)金属材料からなる基体表面の上層に形成されるπ共役系導電性高分子が、化学重合後に電解重合法によって形成されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属材料表面に導電性を有する中間層を形成した後、導電性高分子層を形成した構成とすることにより、金属基体の腐食を抑制でき、優れた導電用高耐食材料を提供することができる。また、導電性中間層を形成し、かつその上に導電性高分子膜を形成した構成にすることによって、導電性高分子膜形成時、あるいは腐食環境下において、金属基体の酸化侵食が抑制され、長期に渡って基体−塗膜間の界面抵抗や表面抵抗が低い導電用高耐食材料が得られる。また、加工性の良い金属材料に安価で簡便な方法で塗膜できるため、生産性に優れた導電用高耐食材料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を図面に基づいて説明をする。図1に示すように、金属材料からなる基体1を用意する。本発明の基体に用いる金属材料として安価な金属であるMg、Al、Ti、Zn、Feであることが好ましい。また、該金属を50原子%以上含む合金または金属間化合物または金属炭化物を用いても良い。安価なこれら合金、金属間化合物、金属炭化物としては、例えば、Mg基合金としては、Mg−Zn系合金、Mg−希土類元素系合金、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Zn−Zr系合金などがあり、Al基合金としてはAl−Cu系合金、Al−Mn系合金、Al−Si系合金、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金、Al−Zn−Mg系合金などがあり、Ti基合金としては、Ti−Al系合金、Ti−Cu系合金、Ti−Pd系合金、Zn合金としては、Zn−Al系合金、Zn−Cu系合金、Zn−Al−Cu系合金などがあり、Fe基合金としては、Fe−C系合金、Fe−Sn系合金などがあるが、加工性やコストの観点からAlまたはAl基合金を用いるのが特に好ましい。
【0019】
次に、上記に記載の金属または合金は基体表面に酸化皮膜層を有するために、その酸化皮膜層を除去する。該金属基体の自然酸化皮膜層を除去する方法としては、従来周知の方法が利用でき、例えば、湿式エッチング法、電解エッチング法、電解研磨法、機械的研磨法、逆スパッタリング法、ブラスト法、置換めっき法などがあるが、安価な機械的研磨法が好適である。この除去処理により接触抵抗を良好にし、また導電性中間層と基体との密着性も向上させる効果がある。
【0020】
続いて、該基体表面に導電性中間層2を形成する。本発明では、π共役系導電性高分子形成時、金属基体に酸化皮膜が生成することを抑制するために導電性中間層2の形成を行う。使用できる金属基体としては、集電能を有する金属であれば用いることができるが、本発明では反応活性が高いMg、Al、Ti、Zn、Feやそれらを主成分とする合金になどに適応する場合に有効であり、特にMg、Al、Tiやそれらを主成分とする合金には効果を発揮する。すなわち、反応活性が高いMg、Al、Ti、Zn、Feなどの金属基体を電極として直接電解重合を行うと、該基体に導電性高分子層の形成と同時に絶縁性を有する酸化皮膜の生成も起こり、金属基体と導電性高分子層の界面抵抗が大きくなる。また、化学重合法を用いた場合においても、特に反応活性が高いMg、Al、Tiなどの金属を基体とする場合には、重合に使用する酸化剤溶液と金属基体が接触することにより、同様に酸化皮膜の生成が起こる。
【0021】
この導電性中間層2は、導電用高耐食材料使用環境下において、基体表面に酸化皮膜または不動態皮膜の生成を抑制する作用効果を有する。
【0022】
この導電性中間層としては、C、Ni、Co、Zr、Sn、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Zr基合金、Sn基合金、Cu基合金、Pt基合金、Au基合金、Ag基合金、Pd基合金、Ir基合金、Ru基合金、Ru酸化物、Zn酸化物、Ir酸化物、In酸化物、Sn酸化物などがあげられるが、生産性や耐熱性、耐酸性の観点からC、Ni、Co、Au、Ag、Ir、Ru、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Au基合金、Ag基合金、Ir基合金、Ru基合金、Ru酸化物を用いるのが好ましいが、C、Ni、Co、Au、Ag、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Au基合金、Ag基合金を用いるのがより好ましい。Ni基合金としては、Ni−Mo合金、Ni−W合金、Ni−P合金、Ni−Co合金、Ni−Sn合金、Ni−Co−B合金、Ni−Fe−P合金などがあげられ、Fe基合金としては、Fe−Cr合金、Fe−Mo合金、Fe−W合金、Fe−P合金、Fe−Co合金、Fe−Sn合金、Fe−Co−B合金、Fe−Ni−P合金などがあげられ、Co基合金としては、Co−Mo合金、Co−W合金、Co−P合金、Co−Ni合金、Co−Sn合金、Co−Ni−B合金、Co−Fe−P合金などがあげられ、Zr基合金としては、Zr−Ni合金、Zr−Fe合金、Zr−Co合金、Zr−Cu合金などがあげられ、Sn基合金としては、Sn−Ni合金、Sn−Cu合金、Cu合金としては、Cu−Ni合金、Cu−Fe合金、Cu−Zn合金、Cu−Al合金などがあげられ、Pt基合金としては、Pt−Ir合金、Pt−Pd合金、Pt−Fe合金、Pt−Pd−Ag合金、Pt−Rh合金、Pt−Au合金、Pt−Ag合金などがあげられ、Au基合金としては、Au−Ir合金、Au−Pd合金、Au−Sn合金、Au−Ag合金、Au−Ag−Cu合金などがあげられ、Ag基合金としては、Ag−Pd合金、Ag−Au合金、Ag−Pd−Cu合金、Ag−Mg合金、Ag−Sn合金、Ag−Ir合金などがあげられ、Pd基合金としては、Pd−Au合金、Pd−Ag合金、Pd−Au‐Ag合金、Pd−Pt合金、Pd−Cu合金、Pd−Ir合金などがあげられ、Ir基合金としては、Ir−W合金、Ir−Ni−Al合金、Ir−Mo合金、Ir−Pt合金、Ir−Rh合金、Ir−Ta合金、Ir−Ti合金などがあげられ、Ru基合金としては、Ru−Ta合金、Ru−Ti合金、Ru−W合金、Ru−W合金、Ru−Rh合金、Ru−Ir合金、Ru−Pt合金、Ru−Ag合金、Ru−Au合金、Ru酸化物としてはRuO、Zn酸化物としてはZnO−Al、Ir酸化物としてはIrO、In酸化物としてはIn−SnO、Sn酸化物としてはSnO−Sb、SnO−Fなどがあげられる。
【0023】
上記に記載の導電性中間層2の形成法は従来周知の方法が利用できる。例えば、めっき法、無電解めっき法、物理気相成長法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、溶射法、化学気相成長法などがあるが、安価で生産性が高いめっき法または無電解めっき法が好ましい。
【0024】
導電性中間層2の厚さとしては、耐食性を高め、かつ体積抵抗を低くするために0.01μm〜50μmが好ましいが、より好ましくは0.01μm〜20μmである。
【0025】
また、めっき法などに代表される液相法を用いて導電性中間層2を形成する場合には、該導電性中間層を形成する前に、基体にプレス加工等の曲げ加工により、目的とする成型を行うことによって、複雑な形状でも、導電性中間層およびπ共役系導電性高分子膜を損傷することなく、該導電性中間層および該π共役系導電性高分子膜の効果を確実に得ることができる。また、延性の高いAuやその合金などを導電性中間層として用いる場合には、該導電性中間層2を形成後にプレス加工することも可能である。なお、導電性中間層およびπ共役系導電性高分子膜の形成に関し、上記のように導電中間層を形成後に電解重合を行えば、基体表面が凹凸状態であっても均一に導電性中間層およびπ共役系導電性高分子膜を形成することが可能となり、安定した耐食性および導電特性を得ることができる。
【0026】
次に、導電性中間層2を設けた基体1にπ共役系導電性高分子膜3を形成する。本発明の導電性高分子形成方法としては、電解重合法が好ましい。電解重合法で得られるπ共役系導電性高分子膜は、緻密で規則性が高いため高い電気伝導度を有する。その結果、耐食性に優れ、接触抵抗が良好となる膜が基体上層に形成されることになる。電解重合法としては、導電性高分子モノマーと支持電解質を含んだ溶液中で、導電性中間層を陽極として電解することにより、該基体上層にπ共役系導電性高分子膜を形成することができる。
【0027】
しかし、本電解重合法は該中間層を陽極としてπ共役系導電性高分子膜を形成する方法であるために、Ni基合金などのような、耐食性には優れる反面、溶液中で電解中に発生した酸素と反応し酸化皮膜あるいは不動態皮膜を形成しやすい金属や合金を導電性フィラーに用いた場合には、接触抵抗値が高くなってしまうことがある。そのような場合には、図3に示したように、導電性中間層2を形成した後、化学重合法を用いて薄いπ共役系導電性高分子層4を設け、該π共役系導電性高分子層4を陽極として電解重合し、電解重合導電性高分子層3を形成することが好ましい。
【0028】
上記化学重合法としては、導電性中間層2形成後の基体表面上でπ共役系導電性高分子モノマーと酸化剤溶液を接触させることで、π共役系導電性高分子膜を形成することができる。しかし、一般に化学重合で得られるπ共役系導電性高分子膜は、多孔質な微粒子からなり、緻密な膜でなく、電気電導性に劣る。そのため、化学重合後に電解重合法により、緻密で高い電気伝導度を有するπ共役系導電性高分子膜を形成する必要がある。
【0029】
形成するπ共役系導電性高分子としては、ポリピロールならびにその誘導体、ポリチオフェンならびにその誘導体、ポリアニリンならびにその誘導体等、ポリフェニレンならびにその誘導体、ポリアセチレンならびにその誘導体、ポリフランならびにその誘導体、ポリフェニレンビニレンならびにその誘導体、ポリアセンならびにその誘導体、ポリアズレンならびにその誘導体があげられるが、特に、耐食性および電気伝導度に優れるポリピロールならびにその誘導体、ポリチオフェンならびにその誘導体、ポリアニリンならびにその誘導体が好ましい。
【0030】
該π共役系導電性高分子膜は、導電性中間層に欠陥がある場合には該高分子膜に含まれるドーパントを放出することによって、部分的に自己不動態化し、局部電池形成を抑制する作用も持つ。
【0031】
図2に示すように、燃料電池セルとしてスタッキングされたとき、セパレータと電極が良好な接触抵抗を示すためには、基体上層に設けられるπ共役系導電性高分子膜の電気伝導度として0.1S/cm以上の物性が好ましい。これ以下であると接触抵抗値が増大し不適である。
【0032】
また、π共役系導電性高分子にドーパントが含有されることによって電気伝導性が発現するが、該ドーパントは、陰イオンまたは陽イオンである。そのため、金属からなる導電性フィラーが腐食し、金属陽イオンとなっても、該π共役系導電性高分子膜に捕集されるために、プロトン伝導性電解質膜に悪影響を与えることを防ぐ効果も併せ持つ。
【0033】
このように形成されたπ共役系導電性高分子膜は従来のめっき法などとは異なり、均一でピンホールがなく、耐食性および電気伝導性に優れる有機高分子膜を形成することができる。
【0034】
以上示した方法によって、金属基体に導電性中間層を形成後に、π共役系導電性高分子膜を形成することにより、導電性と耐食性に優れた材料を製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。
【0036】
実施例1
金属基体としてAl合金6063を用いた。Al合金6063は大きさが20×30mm、厚さが1mmの冷間圧延材である。本基体の自然酸化膜を除去するために、2質量%フッ酸水溶液に1分間浸漬後、エタノールで洗浄し、窒素ガスにて十分に乾燥させた。
【0037】
基体をZn置換めっき液(水酸化ナトリウム120g/L、酸化亜鉛20g/L、酒石酸カリウムナトリウム50g/L、塩化第二鉄2g/L、硝酸ナトリウム1g/L)中に浸漬させ後に、Cuストライクめっき(硫酸銅五水和物21g/L、硫酸アンモニウム2.2g/L、ジエチレントリアミン10g/L、浴温60℃、電流密度300mA/cm)をおこなった。続いて、20μm厚みとなるようにNiめっき(硫酸ニッケル六水和物330g/L、塩化ニッケル六水和物45g/L、ホウ酸40g/L、浴温60℃、電流密度500mA/cm)を行い、導電性中間層を形成させた。
【0038】
次に、電解重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。溶媒を純水として、モノマーとしてピロール0.45mol/L、支持電解質としてサリチル酸ナトリウム0.20mol/Lを含む電解液を用いて、導電性中間層を陽極、SUS304を陰極、電解重合時間は1時間、電流密度を5mA/cmとして電解重合を行い、ポリピロール膜を形成し、導電用高耐食材料を10枚作製した。
【0039】
実施例2
金属基体としてZn合金ZDC1を用いた。Zn合金ZDC1は大きさが20×30mm、厚さが1mmの圧延材である。本基体の自然酸化膜を除去するために、ガラスビーズを用いたサンドブラスト法によって除去後、エタノールで洗浄し、窒素ガスにて十分に乾燥させた。
【0040】
基体をZn置換めっき液(水酸化ナトリウム120g/L、酸化亜鉛20g/L、酒石酸カリウムナトリウム50g/L、塩化第二鉄2g/L、硝酸ナトリウム1g/L)中に浸漬させ後に、Cuストライクめっき(硫酸銅五水和物21g/L、硫酸アンモニウム2.2g/L、ジエチレントリアミン10g/L、浴温60℃、電流密度300mA/cm)をおこなった。続いて、2μm厚みとなるようにNi−Wめっき(硫酸ニッケル六水和物79g/L、タングステン酸ナトリウム二水和物66g/L、酒石酸二水和物69g/L、pH3、浴温25℃、電流密度50mA/cm)を行い、導電性中間層を形成させた。
【0041】
次に、化学重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。導電性中間層を形成した基体に、噴霧法によって均一にピロールモノマーを塗布後、エタノール/水混合溶媒中に、酸化剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム0.20mol/L、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.20mol/Lを溶解し、アンモニア水によってpHを7に調整した酸化剤溶液を噴霧法によって吹きかけることによって、ポリピロール膜を形成した。
【0042】
続いて、先に化学重合法によって形成したポリピロール膜を電極として電解重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。溶媒を純水として、モノマーとしてピロール0.45mol/L、支持電解質としてサリチル酸ナトリウム0.20mol/Lを含む電解液を用いて、導電性中間層を陽極、SUS304を陰極、電解重合時間は1時間、電流密度を0.5mA/cmとして電解重合を行い、ポリピロール膜を形成し、導電用高耐食材料を10枚作製した。
【0043】
実施例3
金属基体としてTi−6Al−4V合金を用いた。Ti−6Al−4V合金は大きさが20×30mm、厚さが1mmの冷間圧延材である。本基体の自然酸化膜を除去するために、2質量%フッ酸水溶液に1分間浸漬後、エタノールで洗浄し、窒素ガスにて十分に乾燥させた。
【0044】
基体をZn置換めっき液(水酸化ナトリウム120g/L、酸化亜鉛20g/L、酒石酸カリウムナトリウム50g/L、塩化第二鉄2g/L、硝酸ナトリウム1g/L)中に浸漬させ後に、Cuストライクめっき(硫酸銅五水和物21g/L、硫酸アンモニウム2.2g/L、ジエチレントリアミン10g/L、浴温60℃、電流密度300mA/cm)をおこなった。続いて、2μm厚みとなるようにAg無電解めっき(Agめっき液:硝酸銀20g/L、アンモニア水約45g/L、還元液:酒石酸ナトリウムカリウム100g/L、浴温10℃)を行い、導電性中間層を形成させた。
【0045】
次に、電解重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成する。溶媒をエタノールとして、モノマーとして3,4−エチレンジオキシチオフェン0.40mol/L、支持電解質としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.30mol/Lを含む電解液を用いて、導電性中間層を陽極、SUS304を陰極、電解重合時間は3時間、電流密度を0.25mA/cmとして電解重合を行い、3,4−エチレンジオキシチオフェン膜を形成し、導電用高耐食材料を10枚作製した。
【0046】
実施例4
金属基体としてMg合金AZ91Dを用いた。Mg合金AZ91Zは大きさが20×30mm、厚さが1mmの冷間圧延材である。本基体の自然酸化膜を除去するために、5質量%塩酸水溶液に1分間浸漬後、エタノールで洗浄し、窒素ガスにて十分に乾燥させた。
【0047】
Ag−Pdターゲットを用いたO−Arスパッタリング法(成膜温度250℃)によって、基体上に導電性中間層として0.3μm厚みのAg−Pd合金層を形成した。
【0048】
次に、電解重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。溶媒を純水として、モノマーとしてピロール0.45mol/L、支持電解質としてp−フェノールスルホン酸ナトリウム0.20mol/Lを含む電解液を用いて、導電性中間層を陽極、SUS304を陰極、電解重合時間は1時間、電流密度を5mA/cmとして電解重合を行い、ポリピロール膜を形成し、導電用高耐食材料を10枚作製した。
【0049】
実施例5
金属基体として炭素鋼SS330を用いた。炭素鋼SS330は大きさが20×30mm、厚さが1mmの冷間圧延材である。本基体の自然酸化膜を除去するために、2質量%フッ酸水溶液に1分間浸漬後、エタノールで洗浄し、窒素ガスにて十分に乾燥させた。
【0050】
Ni−Snターゲットを用いたO−Arスパッタリング法(成膜温度350℃)によって、基体上に導電性中間層として0.35μm厚みのNi−Sn合金層を形成した。
【0051】
次に、化学重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。導電性中間層を形成した基体に、噴霧法によって均一にピロールモノマーを塗布後、エタノール/水混合溶媒中に、酸化剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム0.20mol/L、ドーパントとしてテトラエチルアンモニウムジエチルナフタレンスルホン酸0.20mol/Lを溶解し、アンモニア水によってpHを7に調整した酸化剤溶液を噴霧法によって吹きかけることによって、ポリピロール膜を形成した。
【0052】
次に、電解重合法によってπ共役系導電性高分子膜を形成した。溶媒を純水とし、硫酸によってpH3に調整し、モノマーとしてアニリン0.30mol/L、支持電解質としてテトラエチルアンモニウムドデシルベンゼンスルホン酸0.20mol/Lを含む電解液を用いて、導電性中間層を陽極、SUS304を陰極、電解重合時間は1時間、電流密度を5mA/cmとして電解重合を行い、ポリアニリン膜を形成し、導電用高耐食材料を10枚作製した。
【0053】
比較例1
特開2001−234361号公報に準じて、金属基体として純度99.6%のCu板(20×30mm、厚さが1mm)を用いた。本基体をアルカリ脱脂液にて脱脂、続いて希硝酸にて酸洗後、めっき基体として供した。まず、硫酸ニッケル6水和物1.00mol/L、塩化ニッケル6水和物0.25mol/L、ホウ酸0.65mol/Lとする塩化ニッケルを多く含むワット浴を用いて、電流密度100mA/cm、浴温度50℃にて硫黄含有率の低い第1Niめっき層を形成した。続いて、硫酸ニッケル6水和物1.2mol/L、塩化ニッケル6水和物0.19mol/L、ホウ酸0.65mol/L、1,5‐ナフタリンジスルホン酸ナトリウム2.33×10−2mol/L、チオ尿素1.31×10−3mol/Lとするワット浴を用いて、電流密度100mA/cm、浴温度50℃にて、第2Niめっき層を形成した。次に、市販のシアン金めっき浴を用いて、電流密度100mA/cm、浴温度30℃にて、金めっき層を形成した材料を10枚作製した。
【0054】
比較例2
特開平4−1562232号公報に準じて、純水150gにアニリン9.3gを加えて、0〜10℃に保ちながら36質量%過硫酸アンモニウム水溶液を滴下させて化学重合させ、アンモニア水によって脱ドーピングし、銅色の可溶性ポリアニリン8.3gを得た。メタノール200ml中に該ポリアニリンを分散させながらヒドラジン一水和物20gを加え15時間攪拌し、可溶性の灰青色ポリアニリン7.5gを得た。それをクエン酸3.5質量%およびポリアニリン5.0質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、ドーパントを含むポリアニリン溶液を得た。
【0055】
金属基体として純度99.6%のAl板(20×30mm、厚さが1mm)を用いた。本基体をアルカリ脱脂液にて脱脂、続いて2質量%フッ酸水溶液に1分間浸漬後、得られたポリアニリン溶液に、浸漬した後に、温度130℃で1時間乾燥し、深緑色のドーパントを含むポリアニリン皮膜を形成させた材料を10枚作製した。
【0056】
以上において実施例で作製した導電用高耐食材料と比較例に対して、JIS−Z2371に準じた塩水噴霧試験を90日間行い、外観検査法により耐食性を比較した結果を表1に示す。また集電特性を調べるために、塩水噴霧試験後の試験片に対して、4端子測定法により体積抵抗を比較した結果を表2に示す。
【0057】
表1の結果によれば、本発明にかかる各材料は、塩水噴霧試験2160時間後においても外観が変化することなく、優れた耐食性を有することが認められた。これに対し、同様に塩水噴霧試験を行った比較例1で作製した材料は、264時間後に緑錆が発生し、基体の防食性に対して効果がないことが認められた。
【0058】
表2の結果によれば、本発明にかかる各材料は、塩水噴霧試験2160時間後においても良好な体積抵抗を保持し、優れた集電特性を有することが認められた。これに対し、同様に塩水噴霧試験を行った比較例1で作製した材料は、2160時間後に原型をとどめないまでに腐食が進行し、測定することができなかった。また、比較例2で作製した材料は、体積抵抗が高く、集電特性には劣ることが認められた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の導電用高耐食材料の製造工程を示すフロー図の一例。
【図2】本発明の導電用高耐食材料の製造工程を示すフロー図の一例。
【符号の説明】
【0062】
1 基体
2 導電性中間層
3 電解重合法により形成されたπ共役系導電性高分子層
4 化学重合法により形成されたπ共役系導電性高分子層
5 導電用高耐食材料
6 導電用高耐食材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる基体表面に、導電性を有する中間層が形成され、該中間層上にπ共役系導電性高分子が形成されていることを特徴とする導電用高耐食材料。
【請求項2】
金属材料からなる基体がMg、Al、Ti、Zn、Fe、Mg基合金、Al基合金、Ti基合金、Zn基合金、Fe基合金からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の導電用高耐食材料。
【請求項3】
中間層上に形成されたπ共役系導電性高分子がポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜2に記載の導電用高耐食材料。
【請求項4】
導電性を有する中間層がC、Ni、Co、Zr、Sn、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、Zr基合金、Sn基合金、Cu基合、Pt基合金、Au基合金、Ag基合金、Pd基合金、Ir基合金、Ru基合金、Ru酸化物、Zn酸化物、Ir酸化物、In酸化物、Sn酸化物なる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3に記載の導電用高耐食材料。
【請求項5】
金属材料からなる基体表面の酸化皮膜層を除去する工程後に導電性を有する中間層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。
【請求項6】
金属材料からなる基体表面の上層に形成されるπ共役系導電性高分子が、電解重合法によって形成されることを特徴とする請求項1〜5に記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。
【請求項7】
金属材料からなる基体表面の上層に形成されるπ共役系導電性高分子が、化学重合後に電解重合法によって形成されることを特徴とする請求項1〜5に記載の導電用高耐食材料およびその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169543(P2006−169543A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359150(P2004−359150)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】