説明

小便器洗浄装置

【課題】 マイクロ波ドップラーセンサーを用いた小便器において、排水の影響による小便器の封水面の変動、対面設置の大便器ブースのドア開閉等の外乱の影響による人体誤検出を防止する小便器を提供する。
【解決手段】 小便器の前方に向けて送受信を行うマイクロ波ドップラーセンサーと、その受信出力を第1の周波数フィルターからの第1人体検出出力と、第2の周波数フィルターからの第2人体検出出力と、第1人体検出出力及び第2人体検出出力による接近検出判断値と、接近検出判断値と比較して判断する接近判断手段と、接近判断手段を有する制御部とを備えた小便器洗浄装置において、制御部は受信出力から第3の周波数フィルターからの尿流検出出力と、尿流の有無の判断となる尿流検出判断値と、尿流の有無を判断する尿流検出手段を有するとともに、尿流検出手段の出力に応じて接近検出判断値を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いて人体の存在状況を検出するマイクロ波ドップラーセンサーを備えた、小便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用足し後の小便器本体の洗浄を自動化する為に、便器に赤外線センサー等の人体検出センサーを設置し、一定時間以上人体を検出した場合には小用前の水膜形成のための前洗浄を実施したり(以下、前洗浄)、その後に人体が離れたことを検出し、一定量の洗浄水を流すようにしたもの(以下、本洗浄)がある。このような小便器洗浄装置は、通常の使用において人体は小便器洗浄の為の操作をする必要がないので便利である。
【0003】
一方、便器洗浄装置において、人体を検出するセンサーとしてマイクロ波センサーを用いることが提案されている。(例えば、特許文献1)マイクロ波は陶器や磁器を透過するので、マイクロ波センサーを陶器製の便器の内部やタイルの裏側に設置することが可能であり、センサー自体の保護、防水等を考慮する必要が無いという点で優れている。また、センサーを隠蔽できるので、悪戯の恐れが無く、デザインの自由度が向上する。
【0004】
また、電波(特にマイクロ、ミリ波)によるマイクロ波ドップラーセンサーは、ドップラ効果を利用して以下の原理で物体(動き)検出に用いられている。
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c
ΔF:ドップラ周波数
S:送信周波数
b:反射周波数
ν:物体の移動速度
c:光速(300×106 m/s)
アンテナから送信されたFSは、物体に反射し、相対運動νによるドップラ周波数シフトを受けFbとなる。この時、送信波と反射波の周波数差ΔFが検出信号として取り出せる。
【0005】
このマイクロ波ドップラーセンサーは物体(動き)を検出するので、これを小便器に採用して、人体の接近や(例えば、特許文献2)人の尿流を(例えば、特許文献3)検出することができるように検討されている。これら技術によれば、人体の接近と人の尿流とは検出されるドップラー周波数の違いに基づいて検出させている。
【0006】
しかし、人体の接近と人の尿流を検出するためにマイクロ波ドップラーセンサーの指向性を広く設定した小便器洗浄装置においては、下水管に流れる排水の影響により小便器の封水面の変動や、小便器の内面に流れ落ちる洗浄水の水滴、小便器の前方に設置された大便器ブースのドアの開閉動作等、人体の接近周波数である約5〜40Hzと類似した動きをするものがトイレ環境に存在する。これに対して人の尿流の周波数は約100〜180Hzであり、人体の接近に比べると速い動作である。更にこれと類似した動きをするものがトイレ環境に存在しないので正確に検出可能である。
そこで小便器洗浄装置は、人体の接近で前記前洗浄を実施したり、その後に人体が離反したことを検出して前記本洗浄をする必要があるが、前記のように人体の接近と類似した動きをする物に対しても人体の接近と判断すると問題が発生してしまう。
また人体の離反に関しても、マイクロ波ドップラーセンサーの小便器への取付位置や角度によって信号の大きさが変わってしまう恐れがあるため、個々の小便器によって最適な離反検出の判断レベルが異なって来る問題が発生してしまう。
これら問題を解決するために、前記人体の接近検出に関しては、その判断レベルを学習制御によって決定していくことでしかできない。また、前記人体の離反検出に関してもその判断レベルを学習制御によって決定していくか、人体の尿流の終了からの規定時間経過によるタイミングで離反検出を行うしかない。
その結果、小便器洗浄装置のそれぞれが設置されたトイレ環境を学習させながら、自動で人体の接近とその他の類似した動きをのものを区別してその検出レベルを蓄積し、その検出レベルの精度を高めていく必要がある。
【特許文献1】実開昭62−132484
【特許文献2】特開平9−80150
【特許文献3】特開2002−266407
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述した背景に鑑みてなされたもので、本発明が目的とするところは小便器が設置されたトイレ環境や、マイクロ波ドップラーセンサーの小便器への取付位置・角度の影響による人体誤検出を無くし、人体検出の精度を上げるための小便器洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、小便器と、前記小便器に設けられ前記小便器の前方に向けて送受信を行うマイクロ波ドップラーセンサーと、前記マイクロ波ドップラーセンサーからの受信出力と、前記受信出力を第1の周波数フィルターを通して得られる第1人体検出出力と、前記受信出力を第2の周波数フィルターを通して得られる第2人体検出出力と、前記第1人体検出出力と人体接近し始めた状態を判断する第1接近検出判断値とを比較して人体の接近を判断する第1接近判断手段と、前記第2人体検出出力と人体接近状態での継続判断する第2接近検出判断値とを比較して人体の接近を判断する第2接近判断手段と、前記第1接近判断手段及び第2接近判断手段の出力によって接近を判定する総合接近判断手段と、前記総合接近判断手段を有する制御部とを備えた小便器洗浄装置において、前記制御部は前記受信出力から第3の周波数フィルターを通して得られる尿流検出出力と、前記尿流検出出力と尿流の有無を判断する尿流検出判断値とを比較して尿流の検出をする尿流検出手段を有するとともに、前記尿流検出手段の出力に応じて、前記第1接近検出判断値又は第2接近検出判断値を更新する。
この結果、第1の人体検出出力と第2人体検出出力とに応じて、それぞれ最適な第1接近検出判断値と第2接近検出判断値を設定して、さらに、人体の放尿の有りを検出することで、直前にあった人体の小便器の接近判定が確実に真の人体検出と認知できるので、トイレ環境における外乱と人体の接近が正確に判断することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の小便器洗浄装置において、前記第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値の更新は、前記尿流検出手段の出力が尿流有りと検出された場合、前記前記第1人体検出出力の平均処理に基づいて第1接近検出判断値を更新し、前記第2人体検出出力の平均処理に基づいて第2接近検出判断値を更新することを特徴とする。
この結果、第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値の更新は、それぞれ平均値処理を行うので、時間とともに確実により最適な値に更新できる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、 請求項1又は2に記載の小便器洗浄装置において、前記第1人体検出出力に基づいて決定される第1離反検出判断値と、前記第2人体検出出力に基づいて決定される第2離反検出判断値と、前記第1離反判断手段及び第2離反判断手段の出力によって離反を判定する総合離反判断手段とを有することを特徴とする。
この結果、接近判定と同様に、第1の人体検出出力と第2人体検出出力とに応じて、それぞれ最適な第1離反検出判断値と第2離反検出判断値を設定するので、より正確な人体の小便器の離反判定が確実にできる。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、 請求項3に記載の小便器洗浄装置において、前記第1離反検出判断値及び第2離反検出判断値の更新は、前記第1接近検出判断値の出力値に合わせて第1離反検出判断値を更新し、前記第2接近検出判断値の出力値に合わせて第2離反検出判断値を更新するを特徴とする小便器洗浄装置。
この結果、接近検出判断値と離反判断値の出力レベルを合わせることにより、確実でより正確な人体の小便器の離反判定ができる。
【発明の効果】
【0012】
従来技術では小便器周辺の環境や、各マイクロ波ドップラーセンサーと小便器の組み合わせに対して最適な人体検出の第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値が異なるため、外乱による誤検出や人体接近時に検出を失敗したりする恐れがあった。しかし尿流検出より以前に検出された信号を人体接近検出信号と判断することにより、確実に人体接近の信号を捕らえることができる。
また人体接近信号と外乱信号による信号の大きさを比較することで、どの小便器においても外乱信号による誤検出を無くし、人体検出の精度を上げるための最適な人体検出の第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値を設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例について、図面をもとに以下に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明による便器洗浄装置を適用した小便器の構成を示す図である。小便器1の内部には、マイクロ波ドップラーセンサー2、制御部3が収められている。小便器1の上端は、蓋4となっており、マイクロ波ドップラーセンサー2と制御部3が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。小便器1の上方背面には小便器1のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する為の給水部5が設けられている。ボール部内空間の上部には、洗浄水吐出口6が設けられている。ボール部内空間の下部には、封水を形成する為のトラップ部7と排水口8が設けられている。マイクロ波ドップラーセンサーの検出範囲9内に小便器1の人体10が接近し用を足すことにより、人体10の接近とその尿流11を検出することができる構成とされている。
【0015】
図2は、マイクロ波ドップラーセンサーにより接近検出の構成図である。マイクロ波ドップラーセンサー2は、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。この点がドップラーセンサーの特徴である。
【0016】
そして、コントローラ3を具体的に示す。マイクロ波ドップラーセンサー2からの受信出力23は増幅され、約15〜40Hzの信号を通過させる第1の周波数フィルター24と、その出力を第1人体検出出力25として、その値を第1接近検出判断値28と比較して主として接近し始めた状態での接近判断を第1接近判断手段29が行う。同様に、約5〜40Hzの信号を通過させる第2の周波数フィルター26と、その出力を第2人体検出出力27として、その値を第2接近検出判断値30と比較して接近状態での接近継続しているかどうかの判断を第2接近判断手段31が行う。ここで、第1接近判断手段29、第2接近判断手段31の出力に応じて総合接近判断手段32が最終的な接近の判断を行う。
【0017】
また、約100〜180Hzの信号を通過させる第3の周波数フィルター34と、その出力を尿流検出出力35として、その値を尿流検出判断値36と比較して尿流の有無の判断を尿流検出判断手段が行う。コントローラ3は、これらの判断に基づいてバルブ50を操作する。このように、検出しようとする対象ごとに、受信出力23より周波数フィルターを通して適切な出力にして取り出している。
【0018】
以上の構成の小便器洗浄装置において、人体10が小便器1に接近する場合や、小便器1の近くで体を動かす際には、主に低周波域通過の第1の周波数フィルター24及び第2の周波数フィルター26から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて移動速度が速いので、主に高周波域通過の第3の周波数フィルター34から信号が出力されるので、制御部33は人体の動きと尿流とを識別できる。
【0019】
前述した、下水管に流れる排水の影響による小便器の封水面の変動や、小便器の内面に流れ落ちる洗浄水の水滴、小便器の前方に設置された大便器ブースのドアの開閉動作、といった外乱信号の周波数は約5〜15Hz、人体接近中の周波数は約15Hz〜40Hz、人体接近後の周波数は約5〜40Hz、尿流の周波数は約100〜180Hzであり、各々に設定されたフィルターからの出力信号を用いて人体と人の尿流の有無を判断する。
【0020】
図3は、マイクロ波ドップラーセンサーにより離反検出の構成図である。ここでも図2と同様に、マイクロ波ドップラーセンサー2は、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。
【0021】
そして、コントローラ3を具体的に示す。マイクロ波ドップラーセンサー2の出力は増幅され、約15〜40Hzの信号を通過させる第1の周波数フィルター24と、その出力を第1人体検出出力25として、その値を第1離反検出判断値38と比較して主として離れ始めた状態での判断を第1離反判断手段39が行う。同様に、約5〜40Hzの信号を通過させる第2の周波数フィルター26と、その出力を第2人体検出出力27として、その値を第2離反検出判断値40と比較して離反し終わった状態での判断を第2離反判断手段41が行う。ここで、第1離反判断手段39、第2離反判断手段41の出力に応じて総合離反判断手段42が最終の離反状態の判断を行う。
【0022】
以上の構成の小便器洗浄装置において、人体10が小便器1に接近する場合と同様に、離反する場合も、小便器1の近くで体を動かす際には、主に低周波域通過の第1の周波数フィルター24及び第2の周波数フィルター26から信号が出力される。
【0023】
図4は人体を検出するためのメインフローチャート図である。全体のソフト処理を示している。人体の接近(S41)・尿流(S42)・離反(S43)の検出を行い、その結果を元に人体検出(S44)を行う。そして人体の検出とは別に、接近と尿流の検出結果を元に接近と外乱データを蓄積し、最適な第1接近検出判断値、第2接近検出判断値、第1離反検出判断値、第2離反検出判断値を設定するための処理(S45)を行う。
【0024】
図5は人体検出処理のフローチャートである。現在人体検出中かどうかを判断し非検出中であれば(S51でNO)接近検出確定の判断をする。接近検出が確定していれば(S52でYES)その時点で人体検出を確定させ(S54)、確定しない時は(S52でNO)尿流検出確定の判断をする。尿流検出が確定していれば(S53でYES)その時点で人体検出を確定させ(S54)、確定しない時は(S53でNO)現状維持で終了する。前記前洗浄の使い勝手を考慮すると、接近検出により人体検出が確定するのが望ましいが、もし接近検出を失敗した時には尿流検出で人体検出が確定することになる。また、現在人体検出中の時は(S51でYES)、離反検出確定の判断をし、離反検出が確定していなければ(S55でNO)現状維持で終了するが、離反検出が確定していれば(S55でYES)その時点で人体非検出(S56)確定となる。
【0025】
図6は人体が小用を開始すると高周波域通過の第3の周波数フィルター34から得られる信号の一例である。第1人体検出出力及び第2人体検出出力を基に第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値を更新するのための起点となる尿流検出は、高周波域通過の第3の周波数フィルター34の出力信号を用いる。V1、V2は尿流検出のための尿流検出判断値36である。ここで、実際のV1、V2は数百ミリボルトの波形であり、T1は放尿の時間であり10数秒程度である。この時間の検出については、以下、図7のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0026】
図7は尿流検出手段を示すフローチャートである。高周波域通過の第3の周波数フィルター34の出力値VHがV1未満かV2より大きい時は現状維持で終了するが(S71でNO)、VHがV1以上かV2以下であれば(S71でYES)、尿流らしき波形が入力されたと判断し、尿流検出時間を計測するためタイマ1をスタートさせる(S72)。VHがV1以上かV2以下の時は常にタイマ1の値を確認し、タイマ1の値が1s以上であれば(S73でYES)尿流検出と確定するが(S74)、タイマ1の値が1s未満の時は(S73でNO)現状維持とする。その後VHがV1以上かV2以下の状態の時は現状維持であるが(S75でYES)、V1未満かV2より大きい時は(S75でNO)、尿流検出判断値を下回った時間を計測するためタイマ2をスタートさせる(S76)。尿流検出判断値を下回った時間が短ければ尿流が継続されていると判断する。その後、VHがV1以上かV2以下になれば(S77でYES)、次の時間計測のためタイマ2の停止とクリアを行い(S78)再度VHの確認を行う。VHがV1未満かV2より大きい時は(S77でNO)タイマ2の値を確認し200ms未満であれば尿流が継続中と判断し再度VHの確認を行うが(S79でNO)、200ms以上の時は尿流が途絶えたと判断する(S79でYES)。最後に次の尿流検出のために今まで計測したタイマ1・2の停止とクリアを行う(S710)。かかる処理で尿流を判別することにより、図6の信号ではおよそT1の間を尿流と検出することができる。
【0027】
図8は人体の接近時に低周波域通過の第1の周波数フィルター24から得られる信号の一例である。まず、接近検出を行う際は、低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出出力25と、低周波域通過の第2の周波数フィルター26を通して得られる第2人体検出出力27を用いる。第1人体検出出力25の振幅のプラス側の現在設定されている第1接近検出判断値をV3とし、V3Lは接近時に発生すると想定される最小の前記第1接近検出判断値である。同様に第1人体検出出力25の振幅のマイナス側の現在設定されている第1接近検出判断値をV4として、V4Lも同様である。そして第1人体検出出力25の振幅値と第1接近検出判断値28(V3−V4)の値を比較していく。ここで、実際のV3−V4の値は数ボルトで、T2は人の接近検出を判断する時間であり1秒程度である。図10のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0028】
図9は人体の接近時に低周波域通過の第2の周波数フィルター26から得られる信号の一例である。第2人体検出出力27の振幅のプラス側の現在設定されている第2接近検出判断値をV5とし、同様に第2人体検出出力27のマイナス側の現在設定されている第2接近検出判断値をV6とする。そして第2人体検出出力27の振幅値と第2接近検出判断値30(V5−V6)の値を比較していく。ここで、実際のV5−V6の値は数ボルトで、T3は人の接近検出を判断する時間であり2秒程度である。図10のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0029】
図10は接近検出手段を示すフローチャートである。低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出出力25の振幅値VAが、第1接近検出判断値28に設定される値として想定される最小値(V3L−V4L)を上回るかどうかの判断をする。下回っている場合は(S101でNO)そのまま終了するが、上回った場合は(S101でYES)人体接近らしき信号が入力されと判断し、接近検出手段を継続する。まずタイマをスタートさせ(S102)、1s経過するまで第1人体検出出力25の振幅値VAの最大値を求める(S103・S104)。図8におけるおよそT2間である。1s経過後は次の時間測定に備え、タイマ停止、及びタイマ値のクリアを行う(S105)。求めたVAの最大値と低周波域通過の第1の周波数フィルター24の第1接近検出判断値28(V3−V4)を比較し、その大小関係とVAの最大値を保持しておく(S106)。この時、今回の接近らしき信号の大きさを確認するため、VAの最大値が現在設定されている第1接近検出判断値28(V3−V4)を下回っていたとしても今後の処理は継続させる。続いて接近時のもう一方の周波数成分を確認するため再度タイマをスタートさせ(S107)、2s間経過するまで低周波域通過の第2の周波数フィルター26を通して得られる第2人体検出出力27の振幅値VBの平均値を求める(S108・S109)。図9におけるおよそT3間である。2s経過後は次の時間測定に備え、タイマ停止、及びタイマ値のクリアを行う(S1010)。求めたVBの平均値と低周波域通過の第2の周波数フィルター26の第2接近検出判断値30(V5−V6)を比較し、その大小関係とVBの平均値を保持しておく(S1011)。ここで、先程保持していた、低周波域通過の第1の周波数フィルター24の第1接近検出判断値28と、低周波域通過の第2の周波数フィルター26の第2接近検出判断値30との大小関係を確認し、VAの最大値が第1接近検出判断値28を下回るか、VBの平均値が第2接近検出判断値30を下回っていたら、S1012でNO)、今回の信号を接近信号として検出しないが、VAの最大値が第1接近検出判断値28を上回り、なおかつVBの平均値が第2接近検出判断値30を上回った場合は(S1012でYES)今回の信号を接近検出の信号と判断することになる(S1013)。
【0030】
しかし、今回処理した人体接近らしき信号が本当に人体接近信号なのか、何らかの外乱信号であるのかまだこの時点では確定ができない。通常、小便器を使用する人は小便器に接近後、数十秒以内に小用を行う。そこでこの条件を利用するため再度タイマをスタートさせ、30秒以内に尿流を検出したら先程検出した値は人体接近の信号であったと確定できる。
【0031】
図11はその外乱データと接近データを判別するフローチャートである。また、図12は接近らしきデータを接近信号として判断した時のタイムチャート、それに対し図13は接近らしきデータを外乱信号として判断した時のタイムチャートである。
【0032】
まず、前述した図10の説明において、VAの最大値とVBの平均値を保持したことにより、接近らしき波形を検出したかどうかの判断をする。接近らしき波形を検出していなければ(S111でNO)特に処理せず終了するが、接近らしき波形を検出していれば(S111でYES)引き続き規定時間内に尿流を検出するかどうかの判断を行う。規定時間を計測するためにタイマをスタートさせ(S112)、尿流検出をしたかどうか(S113)と30sが経過したかどうか(S114)を確認する。30s以内に尿流を検出した時は(S113でYES、且つS114でNO)先程検出した接近らしき波形は接近信号であると判断し、VAの最大値とVBの平均値を接近データとして蓄積する(S116)。タイムチャートで示すと図12のようになる。尿流検出せずに30sが経過した時は(S113でNO、且つS114でYES)先程検出した接近らしき波形は外乱信号であると判断し、VAの最大値とVBの平均値を外乱データとして蓄積する(S115)。タイムチャートで示すと図13のようになる。そして規定のデータ数が蓄積されたかどうかを判断し、規定数に達していなければ(S117でNO)そのまま終了するが、規定数に達していれば(S117でYES)蓄積されたデータを元に接近検出の第1接近検出判断値と第2接近検出判断値を設定する(S118)。
【0033】
接近検出第1接近検出判断値28と接近検出第2接近検出判断値30は、接近用のデータと外乱用のデータの平均値を求め、その中間値を接近と外乱を判断するための一つの目安とすることができる。その中間値をそのまま人体接近検出の第1接近検出判断値28と接近検出第2接近検出判断値30として更新しても良いが、より小さな動きの人体も検出するのならば中間値よりも低めの値に、より外乱への耐性を向上させるのならば中間値よりも高めの値に設定しても良い。
【0034】
また、長期間でのデータを考慮するのであれば、第1接近検出判断値28と接近検出第2接近検出判断値30の更新のタイミングは、蓄積データ数が規定数に達する、且つ規定時間経過としても良い。また、仮の第1接近検出判断値28と仮の第2接近検出判断値30を複数設け、その各仮の第1接近検出判断値28と仮の第2接近検出判断値30が接近らしき信号に対して、接近・外乱として確定した回数を蓄積しておき、最適な回数の仮の第1接近検出判断値28と仮の第2接近検出判断値30を第1接近検出判断値28、第2接近検出判断値30として更新する方法を取っても良い。
【0035】
現在設定されている第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30で、今回の接近らしき信号を接近検出と判断したが、最終的には外乱だと確定した場合は、今回の接近らしき信号(外乱)で人体誤検出したことになり、現在の人体接近検出の第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30は最適な値ではないと考えられる。そのような時は、接近用データ、外乱用データの蓄積数が規定数に達していなくとも、今回の接近らしき信号よりも高い値に第1接近検出判断値28と人体接近第2接近検出判断値30を更新することで、それ以降に発生すると思われる同様の外乱による誤動作を防ぐことができる。
【0036】
しかし、今後更に大きな外乱信号が発生することも考えられ、今回の外乱信号が人体接近信号以上の値であった場合等は、最適な第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30を設定するのは非常に困難である。そのような時は、人体検出のタイミングを接近検出時では無く、尿流検出時にすることで、外乱による人体誤検出を防ぐことができる。そして、接近検出のタイミングで人体検出可能なデータが蓄積された時に、再度人体検出のタイミングを接近検出時に変更すれば良い。
【0037】
また、今回の外乱と判断した信号は、小便器の清掃やメンテナンスのために発生した信号の可能性も考えられる。そこで、規定時間内に規定回数、外乱による誤検出した時に、前述した人体接近検出の第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30を高い値に設定したり、人体検出のタイミングを尿流検出時に変更したりするようにしても良い。
【0038】
図14は人体の離反時に低周波域通過の第1の周波数フィルター24から得られる信号の一例である。離反検出を行う際は、低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出出力25と、低周波域通過の第2の周波数フィルター26を通して得られる第2人体検出出力27を用いる。第1人体検出出力25の振幅のプラス側の現在設定されている第1離反検出判断値をV7とし、同様に第1人体検出出力25の振幅のマイナス側の現在設定されている第1離反検出判断値をV8とする。そして第1人体検出出力25の振幅値と第1離反検出判断値38(V7−V8)の値を比較していく。ここで、実際のV7−V8の値は数ボルトで、T4は人体に離反検出を開始するためのタイマをスタートさせるタイミングである。図16のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0039】
図15は人体の離反時に低周波域通過の第2の周波数フィルター26から得られる信号の一例である。第2人体検出出力27の振幅のプラス側の現在設定されている第2離反検出判断値をV9、同様に第2人体検出出力27の振幅のマイナス側の現在設定されている第2離反検出判断値をV10とする。そして低周波域通過の第2の周波数フィルター26の出力信号の振幅値と第2離反検出判断値40(V9−V10)の値を比較していく。ここで、実際のV9−V10の値は数ボルトで、T5は人体の接近検出を判断する時間であり2秒程度である。図16のフロ−チャートで詳細に説明する。
【0040】
図16は離反検出手段を示すフローチャートである。まず人体が小便器から離反する際に発生する約15Hz〜40Hzの周波数成分を確認する。低周波域通過の第1の周波数フィルター24を通して得られる第1人体検出出力25の振幅値VAが、第1離反検出判断値38(V7−V8)を上回るかどうかの判断をする。下回っている場合はそのまま終了するが(S161でNO)、上回った場合は(S161でYES)、離反らしき信号が入力されたと判断し、離反検出処理を行うためタイマをスタートさせる(S162)。図14におけるT4のタイミングである。その後2s間低周波域通過の第2の周波数フィルター26のを通して得られる第2人体検出出力27の振幅値VBの平均値を求める(S163・S164)。図15におけるおよそT5間である。2s経過後は次の時間測定に備え、タイマ停止、及びタイマ値のクリアを行う(S165)。求めた振幅の平均値と低周波域通過の第2の周波数フィルター26の第2離反検出判断値(V9−V10)を比較し、振幅の平均値が第2離反検出判断値を上回っていたらまだ人体有りと判断しそのまま終了するが(S166でNO)、下回っていた場合は(S166でYES)この時点で人体の離反検出確定とする(S167)。
【0041】
しかし、マイクロ波ドップラーセンサーと小便器の組み合わせによる信号のバラツキなどの影響により、各小便器により最適な第1離反検出判断値38と第2離反検出判断値40は異なる。また接近検出時は尿流を検出することで本当に人体がいるか否かの判別をできたが、離反検出時には接近検出時における尿流検出のような明確な指標が存在しない。
【0042】
図17は第1離反検出判断値38と第2離反検出判断値40を更新する時のフローチャートである。通常、離反時には接近時と酷似した周波数帯域の波形が発生する。そこで、接近検出時に用いた第1接近検出判断値28がV20であれば離反検出時に用いた第1離反検出判断値38もV20、接近検出時に用いた第2接近検出判断値30がV30であれば離反検出時に用いた第2離反検出判断値40もV30、というように、第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30に応じて、第1離反検出判断値38と第2離反検出判断値40を設定すれば同じポイントで人体の離反を検出することができる。
【0043】
また、第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30をそのまま第1離反検出判断値38と第2離反検出判断値40として設定しても良いが、より早いタイミングで離反検出する側に設定するのならば第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値30よりも高めの値に、人体滞在時の離反誤検出を防止する側に設定するのならば第1接近検出判断値28と第2接近検出判断値よ30りも低めの値に設定しても良い。
【0044】
また、人体が小用後に小便器から離反したにも関わらず、下水管に流れる排水の影響による小便器の封水面の変動などの外乱の影響により、マイクロ波ドップラーセンサに人体滞在時のような信号が入力され、人体離反を検出できない可能性がある。通常、小便器の人体は小用後、数十秒以内に小便器から離反を行う。そこで、たとえ前記離反検出条件が成立していなくとも、小用検出後から一定時間経過した時点で離反検出と確定させることで、万一、外乱により離反検出を失敗しても保険的に離反を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例に係る小便器の構成図である。
【図2】本発明の実施例に係るマイクロ波ドップラーセンサーにより接近検出の構成図である。
【図3】本発明の実施例に係るマイクロ波ドップラーセンサーにより離反検出の構成図である。
【図4】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される人体検出機能のプラグラムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される尿流検出機能のプログラムを示すフローチャートである。
【図6】小用中の高周波域通過の第3の周波数フィルターの出力波形である。
【図7】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される尿流検出のプログラムを示すフローチャートである。
【図8】小便器の人体が接近中の低周波域通過の第1の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図9】小便器の人体が接近中の低周波域通過の第2の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図10】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される接近検出のプログラムを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される外乱データと接近データを判別するためのプログラムを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施例に係る尿流検出により接近らしき信号を接近信号と確定する時のタイムチャートである。
【図13】本発明の実施例に係る尿流未検出により接近らしき信号を外乱信号と確定する時のタイムチャートである。
【図14】小便器の人体が離反中の低周波域通過の第1の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図15】小便器の人体が離反中の低周波域通過の第2の周波数フィルターの出力波形信号である。
【図16】本発明の実施例に係る小便器洗浄装置で定期的に処理される離反検出のプログラムを示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施例に係る第1離反検出判断値と第2離反検出判断値を更新する時のフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1…小便器
2…マイクロ波ドップラーセンサー
3…コントローラ
4…蓋
5…給水部
6…洗浄水吐出口
7…トラップ部
8…排水口
9…マイクロ波ドップラーセンサー検出範囲
10…人体
11…尿流
20…送信手段
21…受信手段
22…差分検出手段
23…受信出力
24…第1の周波数フィルター
25…第1人体検出出力
26…第2の周波数フィルター
27…第2人体検出出力
28…第1接近検出判断値
29…第1接近判断手段
30…第2接近検出判断値
31…第2接近判断手段
32…総合接近判断手段
33…制御部
34…第3の周波数フィルター
35…尿流検出出力
36…尿流検出判断値
37…尿流検出手段
38…第1離反検出判断値
39…第1離反判断手段
40…第2離反検出判断値
41…第2離反判断手段
42…総合離反判断手段
50…バルブ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器と、前記小便器に設けられ前記小便器の前方に向けて送受信を行うマイクロ波ドップラーセンサーと、前記マイクロ波ドップラーセンサーからの受信出力と、前記受信出力を第1の周波数フィルターを通して得られる第1人体検出出力と、前記受信出力を第2の周波数フィルターを通して得られる第2人体検出出力と、前記第1人体検出出力と人体接近し始めた状態を判断する第1接近検出判断値とを比較して人体の接近を判断する第1接近判断手段と、前記第2人体検出出力と人体接近状態での継続判断する第2接近検出判断値とを比較して人体の接近を判断する第2接近判断手段と、前記第1接近判断手段及び第2接近判断手段の出力によって接近を判定する総合接近判断手段と、前記総合接近判断手段を有する制御部とを備えた小便器洗浄装置において、前記制御部は前記受信出力から第3の周波数フィルターを通して得られる尿流検出出力と、前記尿流検出出力と尿流の有無を判断する尿流検出判断値とを比較して尿流の検出をする尿流検出手段を有するとともに、前記尿流検出手段の出力に応じて、前記第1接近検出判断値又は第2接近検出判断値を更新することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小便器洗浄装置において、前記第1接近検出判断値及び第2接近検出判断値の更新は、前記尿流検出手段の出力が尿流有りと検出された場合、前記前記第1人体検出出力の平均処理に基づいて第1接近検出判断値を更新し、前記第2人体検出出力の平均処理に基づいて第2接近検出判断値を更新することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の小便器洗浄装置において、前記第1人体検出出力に基づいて決定される第1離反検出判断値と、前記第2人体検出出力に基づいて決定される第2離反検出判断値と、前記第1離反判断手段及び第2離反判断手段の出力によって離反を判定する総合離反判断手段とを有することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の小便器洗浄装置において、前記第1離反検出判断値及び第2離反検出判断値の更新は、前記第1接近検出判断値の出力値に合わせて第1離反検出判断値を更新し、前記第2接近検出判断値の出力値に合わせて第2離反検出判断値を更新することを特徴とする小便器洗浄装置。







【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図1】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−214156(P2006−214156A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27726(P2005−27726)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】