説明

小土被り区間の推進工法

【課題】道路等をアンダーパスする小土被り区間のトンネルを構築する場合に、地盤の沈下を確実に防止することができ、かつ、裏込材と化学的に反応しない滑材を用いた小土被り区間の推進工法を提供する。
【解決手段】シールド機1の左側に位置する主シールド6aのカッターヘッド8を回転駆動させて地盤を掘削するとともに、スライドジャッキ10を伸張させて主シールド6aを前胴体3から推進させると、主シールド6aと地山との間にオーバーカット部が生じる。このオーバーカット部を放置すると主シールド6a周辺部の地山が緩み、地盤沈下が生じる可能性がある。そこで、地盤沈下を防止し、かつ、主シールド6aと地山との間に生じる摩擦力を低減するために、主シールド6aを推進させるとともに、注入装置14から吐出される滑材を注入孔13を介してオーバーカット部に圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法に関し、特に、道路等をアンダーパスする小土被り区間のトンネルをシールド工法により構築する際に、地盤の変状を防止するのに有効なシールドの掘進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、道路等を開削することなくトンネルを構築することができるので、工期を短縮することができるとともに、工事費を削減することができるものである。また、交通を遮断する必要がないので、周辺の住宅環境に影響を与えることもないものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般的なシールド工法に用いられるシールド機は円形、矩形断面等の外殻を有し、先端部のカッターで地山を掘削するとともにシールド機の外殻にて地山を保持し、地山の崩壊を防ぎながら掘進する。掘進の際は、シールド機の外殻が地山と接触しているために、シールド機の外殻と地山との間で摩擦力が発生し、シールド機はこの摩擦力に抗して前進する。
【特許文献1】特開平10−184268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、小土被り区間においては、シールド機が地山内を掘進する際にシールド機の外殻と地山との間に生じる摩擦力により、シールド機の周囲の地山には外殻からシールド機の掘進方向への力が作用し、地表面に沈下、陥没等の地盤変状が発生する可能性があるという問題点があった。特に、多連式シールド機、矩形断面シールド機等の水平方向の長さが長いシールド機においては、円形断面シールド機に比べて地表面への影響範囲が大きくなるために、小土被りでは施工が困難になるという問題点があった。
【0005】
また、シールド機による掘削径はシールド機の外殻径よりも10〜15mm程度大きいために外殻と地山との間に隙間、つまりオーバーカット部が生じるが、裏込材を注入するまでの間、地山を保持することができず、地盤変状が生じる可能性があるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、道路等をアンダーパスする小土被り区間のトンネルを構築する場合に、地盤の沈下を確実に防止することができる小土被り区間の推進工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
【0008】
すなわち、請求項1に係る小土被り区間の推進工法の発明は、シールド機を用いて小土被り区間を掘進する掘進工法であって、前記シールド機により地盤を掘削しながら、前記シールド機の外殻と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材を圧入することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の小土被り区間の推進工法であって、前記滑材を土被り圧以上の圧力で注入することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の小土被り区間の推進工法であって、前記滑材は、ゲル状で可塑性を有し、シールド機推進後に設置されるセグメントの外周と地山との間に充填される裏込材と、化学的に反応しない材料又は反応しても有害ガスを発生しない材料からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の小土被り区間の推進工法であって、前記滑材は前記裏込材に混合された場合にも、前記裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の小土被り区間の推進工法であって、前記滑材は、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させてゲル化した材料であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項3又は4に記載の小土被り区間の推進工法であって、前記滑材は、吸水性ポリマーに水を混合させてゲル化した材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小土被り区間の推進工法によれば、シールド機の外殻と地山との間に滑材を土被り圧以上の圧力で注入することにより、シールド機が地山内を掘進する際にシールド機の外殻と地山との間に生じる摩擦力を低減することができる。また、シールド機の外殻と地山との間の摩擦力が低減されるために、小土被り区間を有するトンネルを掘削する場合においても、地表面の沈下、陥没等の地盤変状を防止することができる。
【0014】
本発明による小土被り区間の推進工法に用いる滑材は、ゲル状で可塑性を有するために一般的な滑材よりも浸透性が小さく、かつ粘度が大きいためにオーバーカット部以外の地盤中への流出が少なく、オーバーカット部の充填性に優れている。
【0015】
さらに、本発明による小土被り区間の推進工法によれば、滑材としてベントナイト溶液に水ガラスを混合させたもの又は吸水性ポリマーに水を混合させたものを用いることにより、セグメントと地山との間の隙間、つまりテールボイドに充填される裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達することができる。また、これらの滑材を裏込材と混合しても有害ガスを発生しないために、トンネル内での作業環境を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
小土被り区間の推進工法は、道路等をアンダーパスする小土被りのトンネルを構築する際に地表面の地盤変状を防止するものであり、以下、本発明に係る小土被り区間の推進工法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る矩形断面シールド機の正面図であり、図2は、本実施形態に係る矩形断面シールド機の側断面図である。なお、本発明の説明に不要と思われる部分の図示は省略している。図1及び図2に示すように、シールド機1は、地中を掘削するためのカッターヘッド8を備えた機械本体部2と、機械本体部2を推進させるための動力部25と、機械本体部2と動力部25とを連結する連結手段4とから構成されている。
【0018】
機械本体部2は、矩形筒状の前胴体3と、前胴体3内の幅方向に並列して配列されるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な2台の矩形状の主シールド6と、幅方向の両端の主シールド6と前胴体3との間に設けられるとともに、各々が独立して前胴体3から推進可能、かつ各々が独立して駆動可能な、複数の主シールド6よりも小幅の矩形状の側部シールド15とを備えている。
【0019】
前胴体3の内部は、各主シールド6及び各側部シールド15が前後移動自在に設けられ、前胴体3からその前方に向かって推進可能に構成されている。各主シールド6及び各側部シールド15は、独立して前胴体3から推進可能に構成されている。
【0020】
各主シールド6は、前胴体3内に前後移動自在に設けられる矩形状のシールド本体7と、シールド本体7を進退させるスライドジャッキ10と、シールド本体7の前面側に主シールド6の矩形領域を掘削するカッターヘッド8と、シールド本体7内に設けられる駆動源11と、駆動源11の駆動力をカッターヘッド8に伝達する動力伝達機構12と、シールド本体7内部からシールド機1の外殻と地山との間に滑材を注入するためにシールド本体7及び前胴体3を貫通する注入孔13と、一端が注入孔13に接続される注入管19と、この注入管19の他端に接続され、この注入管19及び注入孔13を介してシールド機1の外殻と地山との間に滑材を供給する注入装置14と、注入孔13付近に設けられ、シールド機1の外殻と地山との間の圧力を測定する圧力計20とを備える。注入孔13はシールド本体7及び前胴体3の上部及び下部にそれぞれ2箇所ずつ設けられる。
【0021】
各側部シールド15は、前胴体3内にスライド自在に設けられる矩形状のシールド本体16と、シールド本体16を進退させるスライドジャッキ(図示せず)と、シールド本体16の前面側に回転可能に設けられるカッター17と、シールド本体16に設けられる駆動源(図示せず)と、駆動源の駆動力をカッター17に伝達する動力伝達機構(図示せず)とを備えており、各側部シールド15は、独立して駆動可能に構成されている。
【0022】
動力部25は、機械本体部2の前胴体3の後部に連結手段4を介して連結される矩形筒状の後胴体26と、後胴体26内に環状に設けられてシールド機1を推進させる複数のシールドジャッキ27とを備えている。
【0023】
後胴体26は、後胴体26内からシールド機1の外殻と地山との間に滑材を注入するために後胴体26を貫通する注入孔21と、一端が注入孔21に接続される注入管22と、この注入管22の他端に接続され、この注入管22及び注入孔13を介してシールド機1の外殻と地山との間に滑材を供給する注入装置14と、注入孔21付近に設けられ、シールド機1と地山との間の圧力を測定する圧力計23と、セグメント28を組み立てるためのエレクタ29とを備えている。注入孔21は後胴体26の上部及び下部にそれぞれ2箇所ずつ設けられる。
【0024】
また、エレクタ29により、後胴体26内にて順次セグメント28が組み立てられ、セグメント28による環状の内壁が構築される。セグメント28を構築した後にシールド機1が推進すると、シールド機1の推進と同時にセグメント28と地山との間にテールボイドが生じる。このテールボイドを放置するとセグメント28周辺部の地山が緩み、地盤沈下が生じる可能性があるためにテールボイドに裏込材を注入して充填する。裏込材は、硬化時間の設定が可能で、早期強度が得られる2液型を用い、シールド機1の推進と同時に注入する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る主シールド6を推進させた状態の側断面図である。上記のように構成したシールド機1にて小土被りのトンネルを掘削する際は、道路に複数台の地盤沈下計を設置して道路の変状を常時監視し、まず、シールド機1の左側に配置された主シールド6aのカッターヘッド8を回転駆動させて地盤を掘削するとともに、図3に示すように、スライドジャッキ10を伸張させて主シールド6aを前胴体3から推進させる。カッターヘッド8で掘削された土砂は、隔壁を介してカッターヘッド8のすぐ後方にある掘削室5内で撹拌され、必要に応じて掘削土砂の塑性流動化を促進するための作泥剤が注入される。このようにして塑性流動化した土砂は、スクリューコンベア等の排土装置18によりシールド本体7の後方へ送られる。
【0026】
カッターヘッド8による掘削径は前胴体3の径よりもやや大きいために、主シールド6aと地山との間にオーバーカット部が生じる。このオーバーカット部を放置すると主シールド6a周辺部の地山が緩み、地盤沈下が生じる可能性がある。そこで、掘進の際に主シールド6aと地山との間に生じる摩擦力を低減し、地盤沈下を防止するために、主シールド6aを推進させると同時に、注入装置14から吐出される滑材を注入管19及び注入孔13を介してオーバーカット部に圧入する。滑材を圧入する際は、注入圧を圧力計20にて常時監視し、注入装置14にて圧力を調整する。主シールド6aは、主シールド6aの上部及び下部に複数の注入孔13を有しており、これらの注入孔13からそれぞれ滑材がオーバーカット部に注入されるために、主シールド6の全外周にわたって良好に滑材の注入が行われる。
【0027】
次に、上述した左側の主シールド6aの作動方法と同様に、シールド機1の右側に配置された主シールド6bのカッターヘッド8を回転駆動させ、スライドジャッキ10を伸張させることによりその主シールド6bを前胴体3から推進させ、その主シールド6bの前方に位置する地盤をカッターヘッド8を回転させて掘削する。右側の主シールド6bを推進させると同時に、注入装置14から吐出される滑材を注入孔13を介してオーバーカット部に圧入する。
【0028】
図4は、本実施形態に係る滑材として用い得る各種材料についての物性の試験結果を示す図である。滑材は、(1)シールド機1の通過後にテールボイドに充填される裏込材と混合しても化学的に反応しない又は反応しても有害ガスを発生しない性質と、(2)裏込材に混合された場合にも、裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質と、(3)シールド機1の外殻と地山との摩擦を低減するために摩擦係数が、滑材を使用しない場合のシールド機1の外殻と地山との摩擦係数である0.274よりも小さい性質と、(4)オーバーカット部に注入される滑材の切羽面への回り込みを防止するために粘性が大きい性質と、(5)オーバーカット部に注入される滑材の地山への浸透を防止するために浸透性が小さい性質と、(6)練り置きをしたり、注入管19、22内に2〜3日間残置されたりするために、前述した(1)〜(5)の性質を長期間維持する性質とを有する材料であることが望ましい。なお、図4に示した各種材料はすべて(1)の性質を有している。そこで、本実施形態においては、(2)の裏込材と混合されても短時間で強度が得られる性質を有することを最重要項目とし、次に(3)の摩擦係数が上述した0.274よりも小さい性質を有し、さらに、(4)の粘性が大きく、(5)浸透性が小さく、(6)前述した(1)〜(5)の性質を長期間維持する(図示せず)性質を有するNo.3のベントナイト溶液に水ガラスを混合させたゲル化した状態の滑材、又はNo.4の吸水性ポリマーに水を混合させたゲル化した状態の滑材を採用した。
【0029】
滑材を注入する際は、注入圧が土被り圧よりやや高めの圧力となるように圧力計20にて確認しながら注入するとともに、地盤沈下計にて計測される地表面の変状に応じて適宜圧力を調整し、地盤沈下を防止する。また、滑材の注入量も同様に、地盤沈下計にて計測される地表面の変状に応じて適宜調整する。
【0030】
そして、両主シールド6a、6bを突出させた状態で、後胴体26内にてセグメント28を組み立ててから、シールドジャッキ27で後方のセグメント28に反力を取って、シールドジャッキ27を伸張させることにより前胴体3と後胴体26とからなるシールド機1を推進させ、両主シールド6a、6bを前胴体3内に格納する。各主シールド6a、6bの推進時に圧入された滑材は、充填されてから、両主シールド6a、6bが前胴体3内に格納されるまでに2〜3時間が経過しており、滑材が雨水により希釈されたり、地山に混合して劣化する等により滑材としての摩擦低減作用が低下している可能性がある。そこで、シールド機1を推進させる際は、主シールド6を掘進させるときと同様に、注入装置14から吐出される滑材を注入孔21を介してオーバーカット部に圧入し、シールド機1の外殻と地山との間に生じる摩擦を低減する。
【0031】
シールド機1本体を前進させて両主シールド6a、6bを前胴体3内に格納すると、セグメント28と地山との間にテールボイドが生じるために、シールド機1の推進と同時にテールボイドに裏込材を注入して速やかに充填する。ここで、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させたもの又は吸水性ポリマーに水を混合させたもの等の滑材は、裏込材と混合しても化学反応を生じないために、テールボイドに充填される裏込材は所定の時間で所定の強度に達する。
【0032】
なお、裏込材の所定の時間及び所定の強度は、掘進速度等の現場状況により各現場にて決められるものであり、本実施形態においては、裏込め作業を終了してから次の掘削を開始するまでに要する時間、例えば、2.5時間内に地山相当の強度に達するように裏込材の成分を適宜調整する。
【0033】
次に、本発明による小土被り区間の掘進工法にて実際の道路をアンダーパスするトンネルを掘削した際の道路の変状結果を示す。
【0034】
道路上に地盤沈下計を設置し、シールド機1の通過にともなう地盤変位量を測定した。図5は、本実施形態に係るシールド機1の通過にともなう道路上のある地点の地盤変位量を示す図である。図5に示すように、シールド機1の先端が地盤沈下計を設置した位置の直下に到達する以前は、地盤変位量は0であり、地盤変形は全くない。
【0035】
そして、シールド機1の先端部が地盤沈下計の直下に到達すると道路の地表面が少し盛り上がり、地盤変位量が増加を始める。ここで、シールド機1の通過する深度における全土被り圧は35KPaである。
【0036】
シールド機1の中心部付近が地盤沈下計の直下を通過する際は、地盤変位量は徐々に増加を続け、地盤変位量は最大で10mm程度となり、やや道路の表面が盛り上がった状態となる。ここで、シールド機1が通過する際の滑材の注入圧力は、全土被り圧に20KPa加算して50KPaである。
【0037】
しかし、シールド機1の後端部が地盤沈下計の直下を通過する際には、地盤変位量は減少し始め、シールド機1が完全に通過した後も徐々に減少し、シールド機1のテール部が2m程度離れると地盤変位量は0となり、道路の表面は平坦となる。ここで、シールド機1が通過した後の裏込材の注入圧力は、全土被り圧に40KPa加算して70KPaである。
【0038】
シールド機1の通過前、通過時、及び通過後においては、地表面が最大で10mm程度盛り上がったが、地表面の沈下、陥没等の地盤沈下はなかった。
【0039】
したがって、本発明による小土被り区間の推進工法を用いれば、シールド機1の外殻と地山との間に滑材を土被り圧以上の圧力で注入することにより、シールド機1の外殻と地山との間に生じる摩擦力を低減することができる。また、シールド機1の外殻と地山との間の摩擦力が低減されるために、小土被り区間を有するトンネルを掘削する場合においても、地表面の沈下、陥没等の地盤変状を防止することができる。そして、滑材は、ゲル状で可塑性を有するために一般的な滑材よりも浸透性が小さく、かつ粘土が大きいためにオーバーカット部以外の地盤中への流出が少なく、オーバーカット部の充填性に優れている。さらに、滑材としてベントナイト溶液に水ガラスを混合させたもの又は吸水性ポリマーに水を混合させたものを用いることにより、裏込材と混合しても化学反応を生じないために、テールボイドに充填される裏込材と混合しても、裏込材は所定の時間で所定の強度に達することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、主シールド6及びシールド機1を推進させる際に滑材をオーバーカット部に圧入する方法について説明したが、本発明の適用対象は、この方法に限定されるものではなく、シールド機1を推進させる際のみに滑材を圧入する方法を用いてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、注入孔13はシールド本体7及び前胴体3の上部及び下部にそれぞれ2箇所ずつ、また、注入孔21は後胴体26の上部及び下部にそれぞれ2箇所ずつ設けたが、本発明の適用対象は、この数及び設置位置に限定されるものではなく、シールド機1の掘削断面規模に応じて注入孔の数及び位置は適宜変更することが可能である。
【0042】
そして、本実施形態においては、トンネル部分を推進する方法について説明したが、本発明の適用対象は、トンネル部分に限定されるものではなく、上方が開放されている部分、例えばトンネルへのアプローチ部分を掘削する場合には、主シールド6及び後胴体26の下方に滑材を注入し、シールド機1と地山との間に生じる摩擦を低減することが可能である。
【0043】
さらに、本実施形態においては、矩形断面シールド機1に注入孔13、21のみを設けて滑材を圧入する方法について説明したが、本発明の適用対象は、注入方法は注入孔13、21のみを設けて圧入する方法に限定されるものではなく、例えば、注入孔13、21にチェックバルブ、リリーフバルブ等の可変圧力型バルブを用いて圧入する方法を用いてもよい。
【0044】
なお、本実施形態においては、矩形断面のシールド機1を用いた推進方法について説明したが、本発明の適用対象は矩形断面のシールド機1に限定されるものではなく、例えば、円形断面等の様々なシールド機に広く適用が可能である。
【0045】
また、本実施形態においては、道路をアンダーパスするトンネルをシールド機1にて構築する方法について説明したが、本発明の適用対象は道路に限定されるものではなく、小土被り区間を掘進するシールド機一般に広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係る矩形断面シールド機の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る矩形断面シールド機の側断面図である。
【図3】本実施形態に係る主シールドを推進させた状態の側断面図である。
【図4】本実施形態に係る滑材として用い得る各種材料についての物性の試験結果を示す図である。
【図5】本実施形態に係るシールド機の通過にともなう道路上のある地点の地盤変位量を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 シールド機 2 機械本体部
3 前胴体 4 連結手段
5 掘削室 6 主シールド
7 シールド本体 8 カッターヘッド
10 スライドジャッキ 11 駆動源
12 動力伝達機構 13 注入孔
14 注入装置 15 側部シールド
16 シールド本体 17 カッター
18 排土装置 19 注入管
20 圧力計 21 注入孔
22 注入管 23 圧力計
25 動力部 26 後胴体
27 シールドジャッキ 28 セグメント
29 エレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を用いて小土被り区間を掘進する掘進工法であって、
前記シールド機により地盤を掘削しながら、前記シールド機の外殻と地山との間に、両者間に生じる摩擦力を低減するための滑材を圧入することを特徴とする小土被り区間の推進工法。
【請求項2】
前記滑材を土被り圧以上の圧力で注入することを特徴とする請求項1に記載の小土被り区間の推進工法。
【請求項3】
前記滑材は、ゲル状で可塑性を有し、シールド機推進後に設置されるセグメントの外周と地山との間に充填される裏込材と、化学的に反応しない材料又は反応しても有害ガスを発生しない材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の小土被り区間の推進工法。
【請求項4】
前記滑材は前記裏込材に混合された場合にも、前記裏込材が所定の時間で所定の強度に達する性質を有することを特徴とする請求項3に記載の小土被り区間の推進工法。
【請求項5】
前記滑材は、ベントナイト溶液に水ガラスを混合させてゲル化した材料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の小土被り区間の推進工法。
【請求項6】
前記滑材は、吸水性ポリマーに水を混合させてゲル化した材料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の小土被り区間の推進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−9566(P2007−9566A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192722(P2005−192722)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】