説明

小型ガス液化装置

【課題】液体寒剤を少量発生させることができる小型ガス液化装置を提供する。
【解決手段】極低温ガスは、デュワー116内のガス供給システム103の低温端と蒸発器125とが熱的に結合した冷却システム101を用いて液化される。冷却器の蒸発器125における最低温度は、大気圧下でのガスの沸点よりも高いが、高圧下でのガスの沸点よりも低い。そのため、ガスは圧縮機128で高圧に圧縮され、蒸発器125によって冷却されて凝縮する。ガスは流量制限器148で膨張した時に、一部は気化して留分を大気圧下でのガスの沸点に冷却し、液化ガスを製造する。温かいガスが、除霜のため、パージ弁142の開放のよって熱交換器部分146を通過して上方へと送られ、3方向弁138を通して放出される。詰まりを低減するため、ガス供給弁138はガス純度センサ158によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素、酸素、アルゴン、メタン及び他の類似の低沸点物質といった極低温ガスの液化技術に関するものであり、特に安価で操作が簡単な小型極低温ガス液化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素及び酸素は、1800年代の終わり頃に最初に液化され、その後直ぐに液化窒素及び液化酸素の工業的な生産が達成された。そして、それらは直ぐに製鉄業及び肥料産業において重要な必需品となった。規模の経済は、液化窒素及び液化酸素のコストを1リットル当たり数セントまで減少させた。現在、それらは産業目的で1日あたり数千トン生産され、タンクローリーで長距離移送される。また、それらは幅広い分野のユーザーによって使用されており、特に世界中の大学、工業研究所、診療所及び病院といった場所で使用されている。しかし、これらの施設で個々の研究者や医者によって使用される量は、1日当たり数リットルの単位であり、概ね少ない。そのため、窒素及び酸素といった寒剤(cryogens)の元々のコストは低いが、分配、貯蔵ロス及び少量購入によって最終価格はバルク価格よりも大幅に高くなる。この問題は1950年代に、非特許文献1に記載された研究室規模の閉サイクルガス冷凍機によって部分的に取り組まれている。それらの機械は、空気または窒素の液化のための大きな工業的液化装置よりは小さかったが、自家製造用の機械ではなかった。それらは約6kWの電力を必要とし、1日当たり140リットル以上の液化空気を製造した。これは、医者の診療所や個別の研究所での需要よりも数桁大きい規模である。従って、皮膚科医、材料科学者及び化学者の液化窒素に対する需要や、呼吸障害の患者に対する液化酸素の需要や、他の液体寒剤の需要に応えることが可能な1日当たり数リットルを発生させることができる小型液化装置の需要は存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
新しい部類の低コストな極低温冷却器であるクリメンコ(Kleemenko)冷却器の効率及び信頼性における劇的な改良は、上記した問題を解決できる可能性がある。しかし、これらの新しい冷却装置は、液化目的に適用するためにいくつかの問題を伴う。例えば、液化装置として使用する時、これらの冷却器は従来の工業的液化装置におけるガスを液化する方法と異なる方法を必要とする多くの制限を有する。更に、事務所環境下でのそれらを使用するためには、工業環境下での使用と異なる特別な安全性と取扱懸案事項とが必要となる。加えて、小型装置とすること及び操作様式は、液化処理の実現に他の制約を加える。他方、規模における相違は、窒素、酸素、アルゴン及び天然ガスといったガスの液化における従来の問題を解決するための新規手段の使用を可能とする。本発明は、これら様々な要因を取り込み、市場の需要に合った実用的装置の構築を可能とする小型液化装置の構造を含む。
【0004】
ある実施形態では、事務所または家庭用の小型極低温液化装置の構造によって、安全で、高効率かつ便利な窒素、酸素、天然ガス及びその他のガスの液化が可能となる。このような液化装置の発展を可能とする技術は、冷凍システムにおいて実現されている。冷凍システムは、複数の要素と、混合冷媒と、単一流と、カスケードと、絞り膨張冷凍サイクルとを使用し、起案者であるA.P.クリメンコの名をとった「クリメンコサイクル(Kleemenko-cycle)」として知られている。この冷凍サイクルは、非特許文献2に最初に記載された。クリメンコの発想に基づいた改良によって、性能を変化させることなく、またメンテナンスを必要とすることなく極低温で数万時間連続的に可動することが可能な自己清浄技術が発展した(例えば、特許文献1,2、非特許文献3,4を参照)。例えば圧縮機、銅継手及び凝縮装置等といった一般的な家庭用冷却器の要素を冷却器の組立てに使用したことにより、極低温システムのコストが家庭用冷却システムのコストに近づいた。更に、A.P.クリメンコの発想に基づき、特許文献3,4に記載された手順を用いて実施した高効率な冷媒混合物の設計によって、これらの冷却器の効率は劇的に増加し、装置のサイズにおいて大幅な縮小が可能となった。ここで参照した特許文献は参照することにより本書に含まれるものとする。
【0005】
本発明の一実施形態では、ガスの液化方法を提供している。当該方法は、ガスを精製し、凝縮ガスを製造するために精製ガスを冷却し、凝縮ガスを断熱領域に集め、凝縮ガスを断熱領域から取り出し管(dispensing tube)を通して取り出す過程を含む。ガスを冷却する時、大気圧下でのガスの沸点より高く、かつ高圧下でのガスの沸点より低い最低温度を有する極低温冷却器をしてガスの温度は低下させられる。ガスは、冷却された時に精製ガスが大気圧より高くなるように圧縮され、冷却されたときに凝縮する。凝縮ガスは大気圧まで膨張させられ、凝縮ガスの一部が気化し、凝縮ガスの留分が大気圧下でのガスの沸点まで冷却される。ガスは、パルスチューブ、攪拌、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon)またはクリメンコサイクル極低温冷却器によって冷却されて良い。ガスの温度は、冷却器の対向流式熱交換器に熱的に結合したガスによって低下させられても良い。ある実施形態では、精製ガスが温パージ管を通過して流れることを許可するために断続的にパージ弁を開放し、温パージ管からガス供給管の低温端を通過して上方へと温ガスを送り、温ガスをガス供給管から3方向弁を通過して外部へと排気することによってガス管の低温部を掃除しても良い。更に、ガス供給管の低温端の目詰まりを低減するために、ガスの精製は圧縮スイング吸着器や膜分離器を含み、膜分離器でのガスの清浄さの程度を検出し、ガスの清浄さの程度に基づいて、ガス供給管の低温端の内部への精製ガスの流れを制御するようにしても良い。凝縮ガスの取り出しは、液体が取り出し管を通過して外部へと出るようにするために、断熱領域の内部へとガスが流れることを許容する取り出し弁を開放することによって行っても良い。好ましくは、ガスが断熱領域に入る前に、ガスの圧力は低下する。安全のために、凝縮ガスの取り出しを行うためにユーザーキーを要求しても良い。取り出しデュワーの近接を検出し、取り出しデュワーの存在の検出を要求することによって、更に安全性を高めても良い。
【0006】
他の実施形態では、ガスの液化のための装置を提供する。装置は、ガスが液化され捕集される断熱領域(例えば、デュワー)を含む。また、装置は、ガスを冷却し、かつ凝縮する第2部分のガス供給管に精製ガス流を供給する第1部分を備えたガス供給システムを有する。第1部分は断熱領域の外部に有り、第2部分は断熱部分の内部に有る。同様に、装置は、断熱領域の外部にある温部分と、断熱領域の内部にある冷部分とを有する極低温冷却器を含む。冷部分は、精製ガス流を冷却するためにガス供給システムの第2部分に熱的に結合している。装置は、断熱領域の内部にある入力端と、断熱領域の外部にある出力端とを有する取り出し管を含む。ガス供給システムの第1部分の圧縮機は、ガスが極低温冷却器低温によって冷却される第2部分に入る時に、精製ガス流が大気圧より高い圧力になるようにガスを圧縮する。冷部分は、大気圧下でのガスの沸点より高く、かつ高圧下でのガスの沸点より低い最低温度を有する。ガス供給システムの第2部分では、凝縮ガスは高圧から大気圧まで圧力を低下させる流量制限器を通過して流れる。精製ガス流の一部が蒸発し、大気圧下でのガスの沸点まで精製ガス流の留分が冷却される。この凝縮された留分は、その後捕集され、次の取り出しのために大気圧下で貯蔵される。低温冷却器は、パルスチューブ、攪拌、ギフォード−マクマホンまたはクリメンコサイクル低温冷却器であって良い。低温冷却器の冷部分は、ガス供給システムの第2部分の熱交換器部分分に熱的に結合した対向流式熱交換器を含んでも良い。ガス供給管の低温端に直接接続した温パージ管は、第2部分内に含まれても良く、また、第1部分のパージ弁が、温パージ管の内部への温ガスの流れを制御するために備えられても良い。第1部分の3方向弁は、温ガスがガス供給管を通過して上方へと流れ、断熱領域の外側に排気されることを許可する。ガス供給システムの第1部分は、圧縮スイング吸着器や膜分離器が用いられても良い。更に、装置は膜分離器に接続した湿度計と、湿度計によって検出されたガス純度の程度に応じてガス供給システムの第2部分へのガスの流れを制御するべく湿度計に接続された弁とを含んでも良い。凝縮ガスを取り出し管に通して取り出すために、ガス供給システムの第1部分は、圧縮ガスが断熱領域に流れ込むことを許可する取り出し弁と、ガスが断熱領域に入る前にガスの圧力を低下させる圧力調整器とを備えても良い。キーロックが安全手段として取り出し弁に接続されても良く、キーロックはロックされている時に取り出し弁が開くことを防止し、ユーザーキーによってアンロックされている時に取り出し弁が開くことを許可する。更に、近接センサが取り出し弁に接続されても良く、近接センサは取り出しデュワーが検出されていない時に取り出し弁が開くことを防止し、取り出しデュワーが検出されている時に取り出し弁が開くことを許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許5,617,739(W. A. Little)
【特許文献2】米国特許5,724,832(W. A. Little, I. Sapozhnikov)
【特許文献3】米国特許5,644,502(W. A. Little)
【特許文献4】米国特許5,787,715(J. Dobak et al)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. W. H. Kohler、C. O. Jonkers著、フィリップス技術レビュー(Philips Techn. Rev.)1954年、16号、p. 69
【非特許文献2】A. P. Kleemenko著、「第10回冷凍国際会議会報(コペンハーゲン)1巻(Proceedings of the Xth International Congress of Refrigeration, Copenhagen 1)」、ペルガモン・プレス(ロンドン)(Pergamon Press, London)、1959年、p. 34-39
【非特許文献3】D. Dew-Hughes、R. G. Scurlock、J. H. P. Watson著、「クリメンコサイクル冷却器:極低温の低コスト冷凍機(Kleemenko Cycle Coolers: Low Cost Refrigeration at Cryogenic Temperatures)」、第17回国際極低温技術会議会報(Proc. Seventeenth International Cryogenic Engineering Conference)、Institute of Physics Publishing(ブリストル)、1998年、p. 1-9
【非特許文献4】W. A. Little著「MMRのクリメンコサイクル冷却器(状況、性能、信頼性、生産)(MMR ' s Kleemenko Cycle Coolers: Status, Performance, Reliability, and Production)」低コスト極低温冷却器の軍事及び商業的装置の第4回ワークショップ(M-CALC IV, Fourth Workshop on Military and Commercial Applications of Low-Cost Cryocoolers)、Strategic Analysis, Inc、2003年11月、p. 20-21
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施形態に係る窒素液化装置を示す概略図である。
【図1B】本発明の他の実施形態に係る窒素液化装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る安全のためのインターロック機構を備えた窒素液化装置を示す概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るパルスチューブ極低温冷却器を用いた窒素液化装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい実施形態に係る窒素液化装置の概略図を図1Aに示す。続く記載は窒素の液化のために設計された装置に焦点を当てるが、装置は酸素や他の極低温ガスの液化に使用されても良い。このような場合には、液化される特定のガスの液化温度に一致させるべく操作温度は適切に調節され、冷媒混合物は最適化される。
【0011】
ここでは、窒素液化装置について述べる。装置は、デュワー116の外部にガスが精製され圧縮される第1部分と、デュワー116の内部にガスが冷却され圧縮される第2部分とを有する窒素ガス供給システム103を備える。同様に、極低温システム101は、デュワー116の外部に冷媒が圧縮される温部と、デュワー116の内部に冷媒が膨張し冷却を与える冷部分とを有する。冷凍システムは、昔ながらのクリメンコサイクル冷却器に基づいている。適当な冷媒は、家庭用冷蔵庫に使用されているようなオイル潤滑の溶接密閉された圧縮機100に入り、圧縮される。圧縮された冷媒はその後、圧縮機から冷媒流の中へと引き込まれたほぼ全てのオイルを捕集し、オイルをキャピラリ104に通過させて圧縮機へと返すオイル分離器102に入る。それと同時に、温かい冷媒蒸気は分離器の上部を通過し、管106を通過して空冷凝縮器108へと流れる。凝縮器108内で、冷媒の一部は液体へと凝縮されて2相流を形成し、その後に水分の痕跡を取り除くフィルタードライヤ110を通過する。冷媒流は、それから第2液体−気体分離器112に入る。分離器112の上部は多段の分留管を有し、下部は残留オイル及び凝縮冷媒を取り除くためのサイクロン分離器を有する。分離器112は、好ましくは特許文献5、6のような装置である。分離された液体部分は、分離器112の底部を通過して液化デュワー116内部の熱交換器部分114へと流れる。熱交換器部分114を通過した後、液体は流量制限器118を通過して膨張し、対向流式熱交換器部分120の上部を通過した液体と組み合わされる。この実施形態では、流量制限器118は、熱交換器部分120を約1/3下った位置に設けられており、ここで温度は最終的に約213K(−60℃)に低下する。流量制限器118を出て熱交換器部分120を通過する蒸発した液体は、熱交換器部分122を下方へと流れる時に、分離器112の上部からの分離された蒸気流を予冷する。蒸気の一部は、熱交換器部分122を通過する時に液化する。流量制限器124で冷却された冷媒流は圧力が低下され、蒸発器125を通過して流れ、冷却冷媒は負荷(例えば、蒸発器125と熱的に結合した熱交換器部分146の底部)を冷却する。それから、低温冷媒流体は、熱交換器部分120を上方へと移動し、流入する蒸気流が下方へと流れる部分122を冷却する。デュワーから出た後に、冷媒は再圧縮されて再循環するべく、流体管126を通過して圧縮機100に戻る。
【0012】
【特許文献5】米国特許5,617,739
【特許文献6】米国特許5,724,832
【0013】
【表1】

【0014】
上記の装置を使用した窒素液化のための適切な冷媒を表1に示す。この特定の冷媒は、約95K(−178℃)で大きな冷凍能力を有するように意図されている。クリメンコサイクル冷却器の冷凍能力は、操作温度が約90Kより低下すると急激に低下する。なぜなら、90K付近に沸点を有する冷媒要素の小さな蒸発潜熱と、この温度以下での液体の蒸気圧の急激な降下とがこの温度領域での冷凍能力を制限するためである。この事実は、窒素液化に対する異なる方法にも影響し、より程度は小さいが酸素についても同様である。
【0015】
大気圧下での窒素の沸点は77.4Kである。この温度でのクリメンコサイクル冷却器の冷媒能力は、温度が90K乃至100Kである時の能力に比較して低い。これは、クリメンコサイクル冷却器の制限となる。パルスチューブ、ギフォード・マクマホン及び攪拌冷却のような他のタイプの冷凍器は、制限されない。そのため、クリメンコサイクル冷却器によって効率的な窒素液化を行うために、窒素を507kPa乃至709kPa(5乃至7atm)の比較的高圧で液化する。従って、極低温冷却器の低温領域は、大気圧下での窒素ガスの沸点より高く、かつ高圧状態でガスの沸点より低い最低温度を有するようにする。実施する方法は図1に示されているものと同様である。
【0016】
窒素液化のために、空気が圧縮機128に入り、そこで空気は約811kPa(8atm)に圧縮される。圧縮空気はそれから、プレフィルタ130と、水を除去するための自動ドレーンである合体トラップ132とを通過し、それからガスは更に乾燥され、二酸化炭素を除去する圧縮スイング吸着器134へと送られる。圧縮スイング吸着器134からの乾燥及び部分的に精製された空気は、窒素から酸素を除去する膜分離器136に入る。膜分離器136からの乾燥及び精製された窒素の流れは、それから3本の対応する流路に組み合わされた3つの制御弁138、140,142を含むマニホールドに入る。弁138は3方向弁である。ある設定では、窒素がデュワー116に窒素供給管144を通過して入ることを許可する。デュワー116内の供給管144の低温端は、熱交換器部分146であり、クリメンコサイクル熱交換器部分120及び122の回りに巻かれた小さな直径(1.5mmOD、1.0mmID)の管によって形成されている。窒素ガスは、熱交換器部分146を下方に流れる時に約100Kに予冷される。熱交換器部分146の底部では、管はクリメンコ冷却器の蒸発器125の回りに巻かれ、ここで窒素ガスは冷却され、液体窒素を形成するべく液化される。窒素は加圧されているため、蒸発器125において約90K乃至100Kで液化される。液化窒素はそれから流量制限器148を通過し、ここで約101kPa(1atm)へと圧力が降下し、液体窒素の留分は蒸発し、窒素の残余留分はデュワー内のガスの圧力(すなわち約101kPa(1atm))における沸点(約78K)に冷却される。液体留分はそれから開口149を通って出て、所望の液体窒素150としてデュワー内に捕集される。
【0017】
流量制限器148は、加減弁(手動または電動)、固定オリフィス、多孔性金属プラグ、長いキャピラリまたは短い小径キャピラリであって良い。加減弁は、装置の能力を最適化することができる。しかし、使用者は装置の運転状態について興味はなく、単に液体窒素を必要とするだけであるため、このような調節機構は構成から取り除かれることが好ましい。最適な信頼性のために、流量制限器148は好ましくは長さが短い(15cm)小径キャピラリ(ID 0.025cm)である。管の小さな直径は、冷却段階の間におけるガスの流れを制限するように設計されており、流速は窒素の音速によって制限されている。低速流は、この処理段階における装置への負荷を小さくする。温度が窒素の凝縮温度に達した時、液体が形成され、高密度の液体がキャピラリを流れるため質量流は増加する。流れ特性の調節を管の長さを変更することによってできるため、短いキャピラリはオリフィス流流量制限器よりも優れている。
【0018】
デュワーにおける蒸発損割合を低減するため、デュワーは小径の頚状部を有することが好ましい。この直径を縮小させるための効果的な方法は、小径の窒素供給管を使用することである。小径管はまた、入力窒素の管内での流速をより速くし、かつ熱交換を向上させる。小径管は凍結した水分や二酸化炭素によって詰まりやすいが、搬送される窒素からの水及び二酸化炭素の除去が完全でなくても液化を順調に行うことが可能である。実際、上記した液化は、窒素の予冷却管内に不純物が蓄積することによって液化窒素収率における小さな損失を伴うが、数日以上液化を継続することができる。より長期間、継続して液化装置を稼動させるために、不純物は簡潔な活性逆流システム(例えば、数日に1回)によって流し出され、または浄化(除霜)されても良い。図1Aに示すように、逆流システムは、温かい窒素を短いパージ管152に送り、流量制限器148の真上の熱交換器部分146に直接入れる2方向パージ弁142の開放によって駆動されても良い。2方向パージ弁142の開放と同時に、3方向弁138は、熱交換器部分146の底部に入る温窒素が熱交換器部分146を昇って流れ、排気出口154から出るように切替えられる。温窒素が熱交換器部分146を上方へ流れるため、凝縮した二酸化炭素が蒸発し、最終的には吸収した水分も熱交換器の上部付近から排出する。2乃至3分間の浄化が、24時間稼動した管内に捕捉された不純物を脱着するのに十分であることがわかっている。温パージ管152はまた、156でろう付けされ、開口149の上流の窒素供給管156へと続く。精製が行われるとき、窒素は窒素供給管の端部領域を温め、流れを制限する不純物を脱着し吹き払い、窒素供給管及び膨張キャピラリを「解凍」する。
【0019】
この逆流「解凍」は、大きな工業的液化装置における再生器の運転といくつかの点で類似している。これらの液化装置では、入力エアは、絶縁された金属の積み重ねまたは大きな表面積を有する他の材料を含む2つのカラムからなる再生器を通過する。ガス流れは一方のカラムでは下向きであり、ガスが膨張によって冷却された後は、他方を上向きに流れる。流れは毎分または2分毎に逆向きになる。一方のカラムの冷却された充填剤は、次のサイクルにおける入力ガスを予冷する。同時に、水または二酸化炭素といった不純物はカラム内の物質に吸着され、次のサイクルでカラムから脱着されて吹き出される。図1Aに示す小型液化装置では対照的に、流速が十分に小さいため、液化装置を連続的に長時間稼動することができ、ときおり装置を解凍するのみである。解凍または精製は、手動または適した電気的制御により自動で行われても良い。
【0020】
好適な実施形態では、流速制限チョーク143は、パージ管上のパージ弁142の直後に挿入されている。これにより、入力パージ流は、圧縮スイング吸着器を通過する質量流と同様に、圧力が低下し、かつ体積が増加し、そして窒素の純度を高く維持することができる。
【0021】
人間が介入せずともトラブルが起こらないような動作にするため、湿度計158を装置に組み合わせても良い。これは技術的な支援が容易にできない環境下で重要となる特徴となる。湿度計158は、好ましくは安価なものであり、膜窒素分離器136の通過後側に取り付けられる。開始時には、圧縮スイング吸着乾燥機が完全な状態になるまで、膜分離器136に入る空気はいくらかの水分を含む。この水分の大部分は分離器136の膜繊維の壁を透過する。そして、一部は続いて3方向弁138を仮に弁が開いていた場合には、通過して窒素供給管に入る。これは、湿度計158を使用して、分離器136から逆止弁160の外への透過流の水分含有量を測定し、窒素の水分含有量が予め設定した値以下に低下するまで窒素3方向弁138を閉じたままにすることによって防止することができる。湿度計によって測定されたガスの純度の程度に基づいてガス供給システムの第2領域へのガスの流れを制御することによって、ガス供給管の低温領域の詰まりを低減することができる。膜分離器136の乾燥効果のため、位置160での透過流の水分含有量は、窒素精製流の水分含有量よりも高いことに留意する。更に、透過は入力において高圧よりも大気圧で行われる。従って、この目的のためには、高圧用または高感度なセンサよりもむしろ簡潔かつ安価な湿度計が使用され得る。逆止弁160は、システムが稼動していない時に、湿気を含んだ環境気圧空気が湿度計158に入ることを防止する。
【0022】
電気的または他の深さゲージ162が、デュワー内の液化窒素の量を測定し、デュワー内に十分な液体窒素が製造され、捕集されているかを使用者に示すために使用される。液体窒素は、取り出し弁140を開放することによって装置から取り出され得る。この弁を開くことで、窒素ガスは空気圧を約791kPa(100psig)乃至約136kPa(5psig)に低下させる圧調整器164を通過する。低圧窒素はそれからデュワーに入り、デュワー内のガスを加圧し、液体窒素が取り出し管167を昇り、クラッキング圧が約13.8kPa(psi)に設定された逆止弁168を通過して、使用者の容器に入る。デュワーの上部に設けられた流量制限弁166は、予冷及び液化の間に窒素ガスの小さな流れが通過できる程度の大きさであり、液体窒素の取り出しを行っている間のより大きな流れは通過することはできない。
【0023】
図1Bに示すような他の実施形態では、ポペット型急速排気弁165が逆止弁166(図1A)の代わりに使用される。弁165は、調整器164に接続された入力ポートと、デュワー116の上部に接続された出力ポートと共に設置されている。排気弁165の排気ポートは、大気に対して開放されている。更に、この実施形態では、2方向弁140(図1A)は、一般的な閉じた3方向弁141に交換されている。取り出しボタンが活性化されている時、弁141は活性化され、急速排気弁の入力ポートは加圧され、ポペットが排気弁を閉じ、デュワーを加圧し、LN2を取り出す。取り出しボタンを開放すると、弁141は不活性化され、取り出し管内のガスは3方向弁141の排気ポートを通過して排気される。そして、デュワー内の圧力がポペットを排気ポートから分離し、加圧されたデュワーから雰囲気を排気することが許可される。この環境下では、代わりに逆止弁166(図1A)が使用された場合に比べて移送する間にガスは排気されないため、所定のLN2量を取り出すため必要なガスは極わずかである。使用されるガスの量が低減されることで圧縮スイング吸着器を通過する質量流が減少し、供給窒素の純度を高く維持することができる。これにより、取り出し処理間の湿気を含む空気の漏れを防ぐことができる。
【0024】
液体窒素、液体酸素及び他の寒剤は、皮膚に接触したときに重度の凍傷を負わせることがあるため、装置は安全装置を含むことが好ましい。
【0025】
取り出し弁140(図1A)は、液化装置の側面に設けられた押しボタンによって容易に活性化されても良い。しかし、許可されていない者が液体窒素を取り出さないように、または子供が液体窒素を被らないように、図2に示すように、キーロックを取り出し弁140への回路に組み合わせても良い。キーロックは、ロックされている時に取り出し弁が開放されることを防止し、ユーザーキーによりアンロックされている時に取り出し弁が開放されることを許可する。供給電源200は、キーロック204、押しボタン206及び取り出し弁140を制御するソレノイド208に順番に接続されている。備えられたキーロック204は、キー(例えば、物質的なキー、コードによって励起されるキーパッドまたは権限を有する使用に取り付けられたRFIDキー)と共に使用可能であり、使用者が取り出し弁140を開くために押しボタン206を押しても良く、図1Aに関して先に記載したように液体窒素はデュワー116から取り出し管167を通過して流れる。
【0026】
更なる予防措置として、デュワー210の使用者の存在を検知するインターロックが備えられても良い。仮に使用者のデュワー210が液体窒素の出口管167の下の正しい位置にない場合には、弁制御回路内のリレー202が、弁140が開くことを許可しない。インターロックは様々な近接検出技術によって実施することができる。リレー202に接続した近接センサ214は、使用者のデュワー210の物理的な近接を検知することができ、デュワー210が正しい取り出し位置にあるときのみリレー202を活性化することができる。従って、近接センサは、取り出しデュワーが検出されない時には取り出し弁が開くことを防止し、取り出しデュワーが検出されたときに取り出し弁を開くことを許可する。一般的に、デュワー210は、デュワーに取り付けられた検出可能な要素212を有し、近接センサ214を活性化することができる。例えば、センサ214は、ホール効果スイッチであって良く、要素212はデュワーの底部に取り付けられた磁石であって良い。また、好ましいインターロックでは、要素212は固有のコードを有するラジオ周波数認識(RFID)タグであり、近接センサ214はデュワースタンドの下に設けられたRFIDトランスポンダである。仮に、トランスポンダ214が正しいコードを有するRFIDを検出しない場合には、リレー202は開いたままであり、取り出し弁140が開くことを防止する。
【0027】
これらの事故防止安全手段に加えて、これらの寒剤の使用者に危険を警告する注意が、取り出し押しボタン206及び液体窒素の出口管167に直接隣接して掲示されるべきである。
【0028】
本発明に係る他の実施形態では、液化はクリメンコ冷凍冷却器の代わりにパルスチューブ冷凍冷却器の使用を意図している。例えば、図3はパルスチューブ構造の小型ガス液化装置を示している。説明を簡潔にするために、装置のパルスチューブ冷凍サイクル要素のみ、図中で詳細に示している。液化装置の他の要素(例えば、窒素回路312)及びそれらの動作は図1及び2に示されているものと同様である。振動圧縮機300は、前向き及び逆向きに冷却流体を圧縮機300と、後の冷却器302及びデュワー116内のパルスチューブアセンブリとを接続する冷却管を通して送り込む。パルスチューブアセンブリは、パルスチューブ蓄冷器304と、パルスチューブ306と、両方が接続された図1Aの蒸発器125のような低温端熱交換器310とを含む。低温端熱交換器310は、液体窒素150を製造するべく窒素回路312内を流れる窒素を液化するために冷却する。ヘリウムが、通常、作動流体に選ばれる。標準沸点が約100K以上であるガスの液化には窒素が使用されても良い。詳細については非特許文献5を参照する。
【0029】
【非特許文献5】Peter Kittel他著、「パルスチューブ冷却器の小史(A Short History of Pulse Tube Refrigerators)」、[online]、インターネット<URL:http://ranier.oact.hq.nasa.gov/Sensors_page/Cryo/CryoPT/CryoPTHist.html>
【0030】
酸素の液化装置の場合には、液化物質及び冷媒のデュワー同士を分離して使用することが安全上の理由から好ましい。なぜなら、可燃性の炭化水素を含む冷媒管を液体酸素から物理的に分離するためである。分離されたデュワー間を接続する熱伝導性要素によって、第1デュワーの冷凍低温プレートが他のデュワー内の負荷を冷却することが可能となる。また、酸素から冷凍管を密封するためにケーシングが備えられても良い。とにかく、冷却管は酸素管及び酸素から物理的に分離されていても良いが、それらは熱的に結合されており、領域が1つのデュワーまたは2つの熱的に結合したデュワーに形成されているかに関わらず、実際には同一の熱領域にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの液化のための装置であって、
ガスが液化され捕集される断熱領域と、
前記断熱領域の外部にある第1部分と、前記断熱領域の内部にある第2部分とを備え、前記第1部分は精製ガス流を前記第2部分のガス供給管に供給するガス供給システムと、
前記断熱領域の外部にある温部分と、前記断熱領域の内部にある冷部分とを備え、前記冷部分は前記精製ガス流を冷却するために前記ガス供給システムの前記第2部分に熱的に結合している極低温冷却器と、
前記断熱領域の内部にある入力端と、前記断熱領域の外部にある出力端とを備える取り出し管とを含み、
前記ガス供給システムの前記第1部分は、前記精製ガス流を大気圧以上の高圧にするべく前記ガスを圧縮するための圧縮機を含み、
前記極低温冷却器の前記冷部分は、大気圧下での前記ガスの沸点より高くかつ前記高圧下での前記ガスの沸点より低いの最低温度を有し、
前記ガス供給システムの前記第2部分は、前記圧力が前記高圧から大気圧へと低下し、前記精製ガス流の一部が蒸発して前記精製ガス流の留分を大気圧下でのガスの沸点に冷却する流量制限器を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記極低温冷却器は、パルスチューブ極低温冷却器であることを特徴とする請求項1に記載に装置。
【請求項3】
前記極低温冷却器は、クリメンコサイクル極低温冷却器であることを特徴とする請求項1に記載に装置。
【請求項4】
前記極低温冷却器の前記冷部分は、第1熱交換器と第2熱交換器とを備えた対向流式熱交換器を含み、
前記ガス供給システムの前記第2部分は、前記対向流式熱交換器に熱的に結合している熱交換器部分分を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ガス供給システムの前記第2部分は、前記ガス供給管の低温端に接続した温パージ管を含み、
前記ガス供給システムの前記第1部分は、前記温パージ管に入る温ガスの流れを制御するパージ弁と、前記温ガスが前記ガス供給管を上方へと通過して流れ、排気されることを許可する3方向弁とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ガス供給システムの前記第1部分は、圧縮スイング吸着器と、膜分離器と、前記膜分離器に接続した湿度計と、前記湿度計によって検出されたガス純度の程度に応じて前記ガス供給システムの前記第2部分へのガス流れを制御するために前記湿度計に接続した弁とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ガス供給システムの前記第1部分は、圧縮ガスが前記断熱領域に流れ込むことを許可する取り出し弁と、前記ガスが前記断熱領域に入る前に前記ガスの圧力を低下させる圧力調整器とを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記取り出し弁に接続したキーロックを更に含み、
前記キーロックは、ロックされているときに前記取り出し弁が開くことを防止し、ユーザーキーによってアンロックされているときに前記取り出し弁を開くようにすることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記取り出し弁に接続した近接センサを更に含み、
前記近接センサは、取り出しデュワーが検出されていない時に前記取り出し弁が開くことを防止し、取り出しデュワーが検出されている時に前記取り出し弁が開くようにすることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
液化ガスの製造方法であって、
精製ガスを製造するために、ガス供給システムの第1部分でガスを精製し、
凝縮ガスを製造するために、前記ガス供給システムの第2部分で前記精製ガスを冷却し、
断熱領域で前記凝縮ガスを捕集し、
前記凝縮ガスを前記断熱領域から取り出し管を通して取り出し、
前記ガスの冷却は、大気圧下での前記ガスの沸点より高く、かつ高圧下での前記ガスの沸点より低い最低温度を有する極低温冷却器を用いて前記ガスの温度を低下させることを含み、
更に、前記精製ガスが大気圧以上の圧力となるように前記ガスを圧縮し、
前記凝縮ガスの一部を蒸発させて前記凝縮ガスの留分を大気圧下での前記ガスの沸点に冷却するために前記凝縮ガスを大気圧まで膨張させることを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記極低温冷却器は、パルスチューブ極低温冷却器であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記極低温冷却器は、クリメンコサイクル極低温冷却器であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記極低温冷却器は、対向流式熱交換器であり、前記ガスを前記対向流式熱交換器に熱的に結合させることを含み前記ガスの温度を低下させることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
更に、
前記精製ガスが温パージ管を通過して流れることを許可するパージ弁を断続的に開放する過程と、
前記温ガスを前記温パージ管から上方へガス供給管の低温端を通して送る過程と、
前記温ガスを記ガス供給管から外部へと3方向弁を通して排気する過程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ガスの精製は、
前記ガスを圧縮スイング吸着器及び膜分離器に通過させる過程と、
前記膜分離器でのガス純度の程度を検出する過程と、
検出されたガス純度の程度に応じて前記精製ガスの流れを制御する過程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項16】
前記凝縮ガスの取り出しは、
ガスが断熱領域の内部へと流れることを許可する取り出し弁を開放する過程と、
前記ガスが前記断熱領域に入る前に前記ガスの圧力を低下させる過程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項17】
前記凝縮ガスの取り出しは、
取り出し可能とするためにユーザーキーを要求することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項18】
前記凝縮ガスの取り出しは、
取り出しデュワーの近接を検出する過程と、
取り出しを可能とするために取り出しデュワーの存在の検出を要求する過程とを含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163329(P2012−163329A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107646(P2012−107646)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【分割の表示】特願2007−540103(P2007−540103)の分割
【原出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506306891)エムエムアール・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】MMR TECHNOLOGIES INC.
【住所又は居所原語表記】1400 N. Shoreline #A−5, Mountaion View, CA 94043−1312, U. S. A.
【Fターム(参考)】