説明

小型多焦点x線源、x線回折イメージングシステム、及び小型多焦点X線源を製作するための方法

【課題】多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムのための多焦点x線源(MFXS)を提供すること。
【解決手段】MFXSは、y軸と同一の直線上にMFXSの長さに沿って形成された複数の焦点(N)を含む。MFXSは、複数の1次ビームを生成するように構成され、隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式:


上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす場合に、1次ビームが検査区域内に位置決めされた対象物の断面を通って伝播するときに、少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する実施形態は、多検出器逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムに関し、より具体的には、MIFM XDIシステムでの使用に好適なx線源に関する。
【背景技術】
【0002】
旅客検査所では、隠された武器、麻薬、及び/又は爆発物について持ち込み荷物及び/又は預かり荷物を検査するために、公知のセキュリティ検出システムが用いられる。少なくとも幾つかの公知のセキュリティ検出システムは、x線イメージングシステムを含む。x線イメージングシステムでは、x線源は、対象物又はスーツケース等の容器を透過して検出器に向かってx線を伝送し、次いで、検出器の出力が処理され、容器内の1つ又はそれ以上の対象物及び/又は1つ又はそれ以上の物質を識別する。
【0003】
少なくとも幾つかの公知のセキュリティ検出システムは、多検出器逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムを含む。MIFB XDIシステムは、逆ファンビーム幾何形状(大型線源及び小型検出器)及び多焦点x線源(MFXS)を用いる。少なくとも幾つかの公知のx線回折イメージング(XDI)システムは、物質内の微結晶の格子面間のd間隔を測定することによって、他の公知のx線イメージングシステムによってもたらされるものと比較して物質識別の向上をもたらす。更にx線回折は、容器内の液体等の他の物質を識別するのに用いることができる分子干渉作用によりデータを得ることができる。
【0004】
しかしながら、逆ファンビーム幾何形状においてMFXSを組み込む少なくとも幾つかのXDIシステムでは、例えばスーツケースなどの検査中の対象物にわたる散乱信号の分布は、著しく不均一である場合がある。散乱信号の不均一な分布は、MFXSの空間範囲と、スーツケースの横幅と、コヒーレントx線散乱検出器アレイの空間範囲とが全て互いに同程度であるときに発生する可能性がある。かかる不均一性の実施例を図1に示している。図1を参照すると、MFXS(図示せず)及び検出器アレイ(図示せず)は共に、その幅が、従来のMIFB XDIシステムの検査区域6内に位置決めされたスーツケース5などの容器の水平幅に等しい。MFXSによって放射され且つ各々が参照番号7で示された区域を透過するx線ビームは、1つの検出器によってのみ検出され、これに対し、MFXSによって放射され且つ各々が参照番号8で示された区域を透過するx線ビームは、2つの検出器によって検出され、これらの区域は比較的範囲が大きい。
【0005】
対象物のより均一なカバレッジを得るためには、MFXSが対象物の幅よりも小さいことが望ましい。その結果、MFXSから各検出器に到達した対応するx線群(本明細書では逆ファンx線束と呼ばれる)は、かなり幅狭であり(水平方向に)、走査の開始点から走査の終了点まで対象物にわたって掃引する「ペンシルビーム」に近づく。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムのための多焦点x線源(MFXS)が提供される。MIFB XDIは、検査区域と、該検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器とを含み、複数の1次ビームは、検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに、複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。複数のコヒーレントx線散乱検出器は、座標X=LにおけるMIFB XDIシステムのy軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点に対して位置決めされる。MFXSは、y軸と同一の直線上にMFXSの長さに沿って形成された複数の焦点(N)を含む。複数の焦点の各焦点は、逐次的に作動されて、各々が複数の収束点のうちの対応する収束点に配向される複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成される。MFXSは、複数の1次ビームを生成するように構成され、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす場合に、複数の1次ビームが検査区域内に位置決めされた対象物の断面を通って伝播するときに、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が、複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。
【0007】
別の態様において、多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムが提供される。MIFB XDIシステムは、アノードと、y軸の同一直線上にあるアノードの長さに沿って配列された複数の焦点(N)とを含む多焦点x線源(MFXS)を含む。複数の焦点の各焦点は、逐次的に作動されて複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成される。またMIFB XDIシステムは、検査区域と、該検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器を含む。コヒーレントx線散乱検出器は、複数の1次ビームが検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに、複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。複数のコヒーレントx線散乱検出器の各コヒーレントx線散乱検出器は、座標X=Lにおける、y軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点のうちの対応する収束点に対して位置決めされる。複数の1次ビームが対象物の断面を通って伝播するときに、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が、コヒーレント散乱光線を検出するように構成され、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす。
【0008】
更に別の態様において、多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムのための多焦点x線源(MFXS)を製作するための方法が提供される。MIFB XDIシステムは、検査区域と、該検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器とを含み、複数の1次ビームが検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに、複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。本方法は、MIFB XDIシステムのy軸と同一の直線上にMFXSの長さに沿って複数の焦点(N)を形成する段階を含む。複数の焦点の各焦点は、逐次的に作動されて、各々が座標X=Lにおけるy軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点のうちの対応する収束点に配向される複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成される。MFXSは、MIFB XDIシステムの検査区域に対して位置決めされる。複数の1次ビームが、検査区域内に位置決めされた対象物の断面を通って伝播するときに、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器がコヒーレント散乱光線を検出するように構成され、座標X=Lにおける線に沿った対応する収束点に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多検出器逆ファンビーム(MIFB)幾何形状を有する従来技術のMIFB XDIにおける不均一な信号変化を示す図である。
【図2】例示的なセキュリティ検出システムのX−Z平面の概略図である。
【図3】図1に示すセキュリティ検出システムのX−Y平面の概略図である。
【図4】図2及び図3に示すセキュリティ検出システムと共に使用するのに好適な多焦点x線源(MFXS)を製造又は製作するための例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、従来技術の多検出器逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムにおける不均一信号変化を示し、図2〜図4は、本明細書で説明するシステム及び方法の例示的な実施形態を示している。
本明細書で説明する実施形態は、多焦点x線源(MFXS)上の各焦点から幾つかのペンシル1次x線ビームを放出するように構成された多検出器逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムを実現する。MIFB XDIシステムは、単一の検出器を有する従来のシステムによる逆ファンビームよりも高い光子効率、すなわち高い信号対ノイズ比を有する。更にMIFB XDIシステムは、多数の投影方向からの対象物質の分析を可能にし、x線回折イメージング(XDI)用のMFXSと投影イメージングを相乗的に用いることによって疑似3Dトモシンセシスシステムと適合する。
【0011】
MIFB XDIシステムは、走査中の対象物にわたる均一な信号分布を得るのを可能にする極めて小型の(すなわち長さが500mmを超えない)多焦点x線源(MFXS)を含む。これに加えて、本明細書で説明するMFXSは、従来のx線源よりも製作が安価であり、従来のMIFBシステム及び構成に組み込まれるx線源よりも寿命が長い。その結果、本明細書で説明するMFXSを含むMIFB XDIシステムは、システムの製作コストを削減し、x線源の寿命を延長し、均一な強度分布を実現し、誤報率を低減し、及び/又は検出率を高めることを可能にする。
【0012】
限定ではないが、預かり荷物又は持ち込み荷物内の武器、爆発物、及び/又は麻薬を含む輸出入禁制品の検出に関して説明されるが、本明細書で説明する実施形態は、あらゆる適切なセキュリティ検出、又はプラスチック再利用、製薬試験及び非破壊試験業界における応用を含む他のx線回折イメージング用途で用いることができる。更に、添付図に示す角度及び/又は寸法は、正確な縮尺のものではない場合があり、明確にする目的で誇張している場合がある。
【0013】
図2は、例示的なセキュリティ検出システム10のX−Z平面における概略図である。例示的な実施形態では、セキュリティ検出システム10は、多焦点x線源(MFXS)12、検査区域14、対象物を支持するように構成された支持体16、1次コリメータ18、及び2次コリメータ20を含む、多検出器逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムである。またセキュリティ検出システム10は、透過検出器22のアレイ及び複数の離散コヒーレントx線散乱検出器24という2種類の検出器を含む。透過検出器22は、コヒーレントx線散乱検出器24からz軸方向にオフセットされる。
【0014】
例示的な実施形態では、MFXS12は、以下で説明するように、z軸と垂直なy軸に実質的に平行な方向にMFXS12に沿って分布された複数の焦点からx線照射を逐次的に放出することができる。例示的な実施形態では、MFXS12は、図3に示すように9個の焦点を有する。別の実施形態では、MFXS12は、およそ40個から100個の焦点を有する。しかしながら、更に別の実施形態においては、MFXS12が、セキュリティ検出システム10を本明細書で説明するように機能させることを可能にするあらゆる好適な数の焦点を含むことができることは、当業者には明らかであり、本明細書で提示される教示により与えられるであろう。
【0015】
更に、例示的な実施形態では、MFXS12は、床又はその近傍などの下部支持表面上に配置又は結合され、透過検出器22及びx線散乱検出器24は、天井又はその近傍などの上部支持構造体上に配置又は結合される。別の実施形態では、MFXS12は、天井又はその近傍などの上部支持構造体上に配置又は結合され、透過検出器22及びx線散乱検出器24は、床又はその近傍などの下部支持表面上に配置又は結合される。更に、例示的な実施形態では、MFXS12、透過検出器22及びコヒーレントx線散乱検出器24は固定であり、支持体16は、z軸に実質的に平行な方向で後方及び前方に移動可能なコンベヤーベルトであり、検査区域14は、コンベヤーベルトが内部を移動する荷物トンネルである。別の実施形態では、MFXS12、透過検出器22、及びコヒーレントx線散乱検出器24は、少なくともz軸に実質的に平行な方向で協働可能であり、支持体16は固定である。特定の別の実施形態では、MFXS12、透過検出器22、コヒーレントx線散乱検出器24、及び支持体16は全て移動可能である。
【0016】
例示的な実施形態では、MFXS12は、MFXS12の各焦点からx線ファンビーム32を放出するように構成される。各ファンビーム32は、実質的に、z軸及びy軸と垂直な鉛直方向のx軸に対しある角度33の平面に位置する。各ファンビーム32は、透過検出器22に配向される。例示的な実施形態では、角度33はおよそ10度である。別の実施形態では、角度33はおよそ15度である。更に別の実施形態では、角度33は、セキュリティ検出システム10が、本明細書で説明するように機能できるようになる何れかの好適な角度である。
【0017】
これに加えて、MFXS12は、MFXS12の各焦点から1次コリメータ18を通ってx線ペンシルビーム34のセットを放出するように構成される。各ペンシルビーム34は、MFXS12と同じX−Y平面内に位置する対応する収束点35に配向される。更に各収束点35は、同じX座標値であるが、異なるY座標値に位置決めされる。各ペンシルビーム34は、同じX−Y平面内で放出されるので、1つのペンシルビーム34のみ(及び1つの収束点35のみ)が図1のX−Z断面図で見ることができる。
【0018】
各ペンシルビーム34からのx線照射の一部は通常、検査区域14内の容器(図示せず)と接触すると様々な方向に散乱される。2次コリメータ20は、各コヒーレントx線散乱検出器24に到達する散乱放射線36の一部分が、散乱放射線36の発生源である対応するペンシルビーム34に対し一定の散乱角θを確実に有することができるように構成される。ある特定の実施形態では、散乱角θはおよそ0.04ラジアンである。コヒーレントx線散乱検出器24は、ファンビーム32ではなくペンシルビーム34からの散乱放射線のみが確実に検出されるようにペンシルビーム34とファンビーム32との間に位置決めすることができる。例えば、2次コリメータ20は、散乱放射線36の方向に対し平行ではない散乱放射線(図示せず)を吸収するように構成される。更に、例示的な実施形態では、2次コリメータ20及びコヒーレントx線散乱検出器24は、z軸に対してペンシルビーム34の片側に位置決めされるが、別の実施形態では、2次コリメータ20及びコヒーレントx線散乱検出器24は、z軸に対してペンシルビーム34の他方側又は両側に位置決めすることができる。
【0019】
例示的な実施形態では、透過検出器22は電荷蓄積検出器であり、コヒーレントx線散乱検出器24は、パルス計数エネルギー分解検出器である。透過検出器22及び各コヒーレントx線散乱検出器24は、幾つかのチャンネル40、例えばN個のチャンネルC1、…CNと電子的に通信状態にあり、ここでNは、セキュリティ検出システム10の構成に基づいて選択される。チャンネル40は、透過検出器22及び各コヒーレントx線散乱検出器24によって収集されたデータをデータ処理システム42に電子的に通信する。例示的な実施形態では、データ処理システム42は、透過検出器22からの出力とコヒーレントx線散乱検出器24からの出力とを組み合わせて、検査区域14内に位置決めされた対象物の内容についての情報を生成する。例えば、限定ではないが、データ処理システム42は、検査区域14内の容器(図示せず)の多視点投影像及び/又は断面画像を生成することができ、これらによって、XDI分析が検出する特定の物質の容器内での場所が識別される。
【0020】
例示的な実施形態では、データ処理システム42は、透過検出器22及びコヒーレントx線散乱検出器24と電気的に通信状態にあるプロセッサ44を含む。プロセッサ44は、コヒーレントx線散乱検出器24から、検出されたx線量子を表す出力信号を受信し、コヒーレントx線散乱検出器24によって検出された散乱放射線内のx線量子のエネルギーEのスペクトルから、運動量移行値xの分布を生成するように構成される。本明細書で用いるプロセッサという用語は、当該技術分野でプロセッサと呼ばれる集積回路に限定されず、広く、コンピュータ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ、特定用途向け集積回路、及び他の何れかの好適なプログラマブル回路を意味する。コンピュータは、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク−読み取り専用メモリ(CD−ROM)、光磁気ディスク(MOD)、又はデジタル多用途ディスク(DVD)などの好適なコンピュータ可読媒体からデータを読み取るためのフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD−ROMドライブ及び/又はあらゆる好適なデバイスなどのデバイスを含むことができる。別の実施形態では、プロセッサ44は、ファームウェア内に記憶された命令を実行する。
【0021】
図3は、X−Y平面でのセキュリティ検出システム10の概略図である。更に図3を参照すると、一実施形態おいて、多検出器逆ファンビーム(MIFB)50をx軸52に沿ってX−Y平面上に投影している。一実施形態では、MFXS12は、複数の焦点54から逐次的に放射線を放出する。より具体的には、MFXS12は、アノード56と、MFXS12のy軸58と同一直線上のアノード56の長さに沿って配列された複数の焦点54とを含む。各焦点54は、x線ファンビームを放出するよう逐次的に作動される。例えば、焦点F1は、コヒーレントx線散乱検出器D1とコヒーレントx線散乱検出器D13との間に延びてこれらの検出器によって検出され、且つ複数のペンシル1次ビーム60を含むファンビームMIFB50を放射する。焦点54は、連続インデックスiを用いてF1、F2、…Fi、…Fnで表している。1次コリメータ18は、どの焦点54が作動されるかに拘わらず、各焦点54にて放出される放射線から、連続インデックスjを有するO1、O2、…、Oj、…Omで標記された一連の収束点60に配向される1次ビームを選択するよう構成される。図3には10個の1次ビーム60を示されており、焦点F1が作動されて、焦点F1から放射された各1次ビーム60が、座標X=Lにおいてy軸に平行な線に沿って位置決めされた対応する収束点O1、O2、…、Oj、…O10に配向されている。
【0022】
連続インデックスjを用いて離散コヒーレントx線散乱検出器D1、D2、…Dj、…Dkで標記している、複数の離散コヒーレントx線散乱検出器24は、対応する収束点62からZ軸に沿う方向に好適な又は望ましい距離にて位置決めされ、離散コヒーレントx線散乱検出器Djにおいて、1次ビームPijから角度θでの干渉性散乱波を記録する。一実施形態では、この距離は、散乱中心と対応するコヒーレントx線散乱検出器Djとの間の距離が約750mmで、約0.037ラジアンの散乱角に対し約30mmである。MFXSと離散コヒーレントx線散乱検出器との組み合わせにより、XDI信号が検出又は測定されないどのような不感区域もなく、検査区域内に位置決めされるある容積の対象物を検査できるようになる。
【0023】
ijで標記される1次ビーム60が、検査区域14内に位置決めされた対象物(図示せず)を通って伝播するときに、1次ビームPijは対象物と相互作用し、例えばコヒーレントx線散乱検出器Dj+1、Dj+2、Dj-1及び/又はDj-2において検出することができる干渉性散乱波を生成する。図3に示すように、1次ビームP11、P12、P13、P14、P15、…P1mは焦点F1から放射され、対応する収束点O1、O2、O3、O4、O5、…Omにそれぞれ配向される。各1次ビームP11、P12、P13、P13、P14、P15、…P1mは、検査区域14を通って移動すると、検査区域14内に位置決めされた対象物(図示せず)と衝突及び/又は相互作用し、例えば、1つ又はそれ以上のコヒーレントx線散乱検出器D1、D2、D3、D4、D5、…Dkにおいて検出可能な干渉性散乱波(図示せず)を生成する。
【0024】
一実施形態では、MFXS12は、直交座標系のy軸(x=0)上に位置決めされる。各焦点54は、ピッチPsを有する格子上の位置を有する。更に、収束点62は、座標X=Lにおいてy軸に平行に位置し、各収束点62は、ピッチPtを有する格子上の位置を有する。特定の実施形態では、XDI預かり荷物審査システムにおいて、Lは約2000ミリメートル(mm)から約2500mmであり、Psは約25mm、Ptは約50mmから約200mmである。この実施形態では、複数のコヒーレントx線散乱検出器24が、収束点62と同じy座標に位置決めされる。コヒーレントx線散乱検出器24の1つのペアを、対応する収束点62を関係付けることができ、コヒーレントx線散乱検出器24のペアは、X−Y平面の両側に位置決めされる。更なる実施形態では、13個の収束点を用いて、異なる個数のコヒーレントx線散乱検出器24を組み込む複数の収束点位置配列を可能にする。全ての収束点62が検出器ペアを有する場合には、セキュリティ検出システム10は、26個のコヒーレントx線散乱検出器24を含むことができる。別の実施形態では、製造及び/又はコスト上の制約条件を考慮して、より少ないコヒーレントx線散乱検出器24を収束点位置1、3、5、7、9、11、及び13に位置決めするか、又は収束点位置1、4、7、10、及び13に位置決めするか、或いは収束点位置1、5、9、及び13に位置決めすることができる。Y方向に合計2000mmの幅にわたる13個の収束点を含むMIFB構成は、各焦点54からy軸方向に約55°のファン角を必要とする。
【0025】
更に図3を参照すると、最も右側の検出器D13は、1次コリメータ18によって伝送されるMFXS12のF1、F2、…Fi、…F9で表した各焦点54からの、本明細書では代替として1次ビームの逆ファンビーム束70とも呼ばれる、P113、P213、…Pij、…P913で標記された複数の1次ビーム60を検出する。逆ファンビーム束70は、図3に示す検査区域14の幅よりも著しく幅狭である。図3に示すMFXS12は、明確にする目的で示したものであり、図示のものよりも小さくてもよい。更に、13個の収束点62しか示していないが、上述のように、実際には収束点62の個数はより多くてもよい。更に散乱信号は、セキュリティ検出システム10に組み込まれるコヒーレントx線散乱検出器24の個数に比例する。
【0026】
図3は、対応する収束点Ojに向かって配向され、対応するコヒーレントx線散乱検出器Djによって検出される1次ビームの幾つかの逆ファンビーム束70を含む。検査区域14内に位置決めされた対象物の走査中に、MFXS12の各焦点54が逐次的に作動され、対象物断面は完全に照射され、散乱信号が対象物の全幅から測定される。この実施形態では、対象物の完全な2D走査を達成するのに、いかなる機械的移動も必要とされない。MFXS12は、この走査をy軸に沿った小さなx線源寸法だけを用いて行う。例示的な実施形態では、MFXSは、y軸に沿って約500mmよりも短い長さを有する。小さなx線源寸法は、コスト及び信頼性の観点から有利である。
【0027】
一実施形態では、対象物断面内の各点は、少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器によって捉えられる。この冗長性条件は、隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の正則間隔Pが次式を満たす時に満たされることが分かる。

ここで、Wsは複数の焦点の横方向範囲、UはMFXS12のy軸58から検査区域14の頂部表面72までの距離、Vは頂部表面72からX=Lにおけるコヒーレントx線散乱検出器平面までの距離である。
【0028】
持ち込み荷物審査に好適な一実施形態では、Wsはおよそ400mm、Uはおよそ1400mm、Vはおよそ700mmである。従って、式1からのコヒーレントx線散乱検出器のピッチ又は間隔Pは、M=1の場合に200mm、M=2の場合は100mmである。M=1の場合、対象物断面の全ての点は、複数の焦点によって1つのコヒーレントx線散乱検出器Dj上に放射される、複数の1次ビームのうちの少なくとも1つによって走査される。M=2の場合、対象物断面の全ての点は、複数の焦点によって1つのコヒーレントx線散乱検出器Dj上に放射される、複数の1次ビームのうちの少なくとも2つによって走査される。
【0029】
検出器アレイの合計横方向範囲、すなわち、コヒーレントx線散乱検出器D1からコヒーレントx線散乱検出器D13までの距離はおよそ2200mmであり、100mmの検出器ピッチ又は間隔を有する23個のコヒーレントx線散乱検出器24に相当する。隣接するコヒーレントx線散乱検出器24間の間隔は十分大きく、その結果、ある特定の1次ビームPijが配向されるコヒーレントx線散乱検出器Djに隣接するコヒーレントx線散乱検出器Dj+1によって測定される、この1次ビームPijからのクロストーク散乱波は、その干渉性散乱寄与を無視することができるほど大きな散乱角を有するようになる。
【0030】
図4を参照すると、一実施形態では、多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システム用の多焦点x線源(MFXS)を製造又は製作するための方法100が提供される。MIFB XDIシステムは、検査区域、及び検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器を含み、複数の1次ビームが検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに、複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される。
【0031】
複数の焦点(N)が、MIFB XDIシステムのy軸と同一の直線上にMFXSの長さに沿って定義される(102)。各焦点は、逐次的に作動されて複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成され、該一次ビームは各々、座標X=Lにおいてy軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点のうちの対応する収束点へ配向される。
【0032】
座標X=Lにおける線に沿った対応する収束点に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、上記に示した式1(上式で、Wsが、複数の焦点の横方向範囲であり、Uが、y軸から検査区域の頂部表面までの距離であり、Vが、頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離である)を満たす場合に、複数の1次ビームが、検査区域内に位置決めされた対象物の断面を伝播してこの断面を走査すると、複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器がこれら複数の1次ビームからの散乱光線を検出するように構成されるよう、MFXSは、MIFB XDIシステムの検査区域に対して位置決めされる(104)。一実施形態では、Wsはおよそ400mm、Uはおよそ1400mm、Vはおよそ700mmである。M=1の場合には、間隔Pは200mm、M=2の場合には、間隔Pは100mmである。更にMFXSは、y軸に沿って500mmよりも短い長さを有するように形成される。
【0033】
上述のMIFB XDIシステムは、走査中の対象物にわたって均一な信号分布を得ることができる極めて小型(すなわち長さが500mmを超えない)のMFXSを含む。これに加えて、本明細書で説明するMFXSは、従来のx線源よりも製作コストが安価であり、従来のMIFB XDIシステム及び設定に組み込まれるx光線源よりも長い寿命を有する。その結果、本明細書で説明するMFXSを含むMIFB XDIシステムは、システムの製作コストを削減し、x線源の寿命を延長し、均一な強度分布をもたらし、誤報率を低下させ、及び/又は検出率を上昇させる。
【0034】
本明細書は、実施例を用いて、最良の形態を含む本発明を開示し、当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0035】
10 セキュリティ検出システム
12 多焦点x線源(MFXS)
14 検査区域
16 支持体
18 1次コリメータ
20 2次コリメータ
22 透過検出器
24 離散コヒーレントx線散乱検出器
32 x線ファンビーム
34 ペンシルビーム
35 収束点
36 散乱放射線
40 チャンネル
42 データ処理システム
44 プロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査区域と、該検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器とを含み、複数の1次ビームが前記検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに前記複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成された多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムのための多焦点x線源(MFXS)であって、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器が、座標X=Lにおける前記MIFB XDIシステムのy軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点に対して位置決めされ、前記MFXSが、
前記y軸と同一の直線上に前記MFXSの長さに沿って形成された複数の焦点(N)を含み、
前記複数の焦点の各焦点が、逐次的に作動されて、各々が前記複数の収束点のうちの対応する収束点に配向される前記複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成され、前記MFXSが、前記複数の1次ビームを生成するように構成され、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす場合に、
前記複数の1次ビームが、前記検査区域内に位置決めされた前記対象物の断面を通って伝播するときに、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が、前記複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成される、
MFXS。
【請求項2】
M=1の場合に、前記断面の全ての点が、前記複数の焦点によって1つのコヒーレントx線散乱検出器Djに対して放出される前記複数の1次ビームのうちの少なくとも1つによって走査される、
ことを特徴とする請求項1に記載のMFXS。
【請求項3】
Wsがおよそ400mm、Uがおよそ1400mm、Vがおよそ700mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のMFXS。
【請求項4】
M=1の場合に、前記間隔Pが200mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のMFXS。
【請求項5】
M=2の場合に、前記間隔Pが100mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のMFXS。
【請求項6】
前記MFXSが、y軸に沿って500mmよりも短い長さを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のMFXS。
【請求項7】
多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムにおいて、
アノードと、y軸の同一直線上にある前記アノードの長さに沿って配列された複数の焦点(N)とを含み、該複数の焦点の各焦点が逐次的に作動されて複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成された多焦点x線源(MFXS)と、
検査区域と、
前記検査区域に対して位置決めされ、前記複数の1次ビームが前記検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに、前記複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成された複数のコヒーレントx線散乱検出器と、
を備え、
前記複数のコヒーレントx線散乱検出器の各コヒーレントx線散乱検出器が、座標X=Lにおける前記y軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点のうちの対応する収束点に対して位置決めされ、前記複数の1次ビームが前記対象物の断面を通って伝播するときに、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が、前記コヒーレント散乱光線を検出するように構成され、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす、
ことを特徴とする多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システム。
【請求項8】
M=1の場合に、前記断面の全ての点が、前記複数の焦点によって1つのコヒーレントx線散乱検出器Djに対して放出される前記複数の1次ビームのうちの少なくとも1つによって走査される、
ことを特徴とする請求項7に記載のMIFB XDIシステム。
【請求項9】
Wsはおよそ400mm、Uがおよそ1400mm、Vがおよそ700mmである、
ことを特徴とする請求項7に記載のMIFB XDIシステム。
【請求項10】
M=1の場合に、前記間隔Pが200mmである、
ことを特徴とする請求項7に記載のMIFB XDIシステム。
【請求項11】
M=2の場合に、前記間隔Pが100mmである、
ことを特徴とする請求項7に記載のMIFB XDIシステム。
【請求項12】
前記MFXSがy軸に沿って500mmよりも短い長さを有する、
ことを特徴とする請求項7に記載のMIFB XDIシステム。
【請求項13】
検査区域と、該検査区域に対して位置決めされた複数のコヒーレントx線散乱検出器とを含み、複数の1次ビームが前記検査区域内に位置決めされた対象物を通って伝播するときに前記複数の1次ビームからのコヒーレント散乱光線を検出するように構成された多重逆ファンビームx線回折イメージング(MIFB XDI)システムのための多焦点x線源(MFXS)を製作するための方法であって、
前記方法が、
前記MIFB XDIシステムのy軸と同一の直線上に前記MFXSの長さに沿って複数の焦点(N)を形成する段階を含み、
前記複数の焦点の各焦点が、逐次的に作動されて、各々が座標X=Lにおける前記y軸に平行な線に沿って位置決めされた複数の収束点のうちの対応する収束点に配向される複数の1次ビームを含むx線ファンビームを放出するように構成され、
前記方法が更に、
前記MIFB XDIシステムの前記検査区域に対して前記MFXSを位置決めする段階を含み、
前記複数の1次ビームが前記検査区域内に位置決めされた対象物の断面を通って伝播するときに、前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの少なくともM個のコヒーレントx線散乱検出器が、前記コヒーレント散乱光線を検出するように構成され、前記座標X=Lにおける前記線に沿った対応する収束点に対して位置決めされた前記複数のコヒーレントx線散乱検出器のうちの隣接するコヒーレントx線散乱検出器間の間隔Pが、次式、

上式で、Wsが前記複数の焦点の横方向範囲、Uがy軸から前記検査区域の頂部表面までの距離、Vが前記頂部表面から座標X=Lにおける線までの距離、
を満たす、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
Wsがおよそ400mm、Uがおよそ1400mm、Vがおよそ700mmである、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
M=1の場合に、前記間隔Pが200mmである、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
M=2の場合に、前記間隔Pが100mmである、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記MFXSが、y軸に沿って500mmよりも短い長さを有するように形成される、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−190900(P2010−190900A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−53715(P2010−53715)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510067212)モルフォ ディテクション インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】