説明

小細胞肺癌の診断方法

小細胞肺癌(SCLC)を検出及び診断する方法が本明細書において記載される。一つの態様において、この診断方法は、SCLC細胞と正常細胞を判別するSCLC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む。別の態様において、本診断方法は、肺癌の2つの主要な組織型である非小細胞肺癌(NSCLC)及びSCLCを識別するSCLC関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む。最後に、本発明は、小細胞肺癌の治療に有用な治療剤のスクリーニング方法、小細胞肺癌の治療方法、及び対象に小細胞肺癌に対するワクチン接種を行う方法を提供する。さらに、本発明は、化学療法抵抗性肺癌の診断マーカーとして及び/又はこれらの癌に対する治療剤の分子標的としての、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子又はSCLC関連遺伝子を提供する。これらの遺伝子は化学療法抵抗性肺癌又はSCLCにおいて上方制御される。従って、化学療法抵抗性肺癌又はSCLCは、これらの遺伝子の発現レベルを診断マーカーとして用いることで予測できる。その結果、非効果的な化学療法に起因するいかなる有害作用も回避することができ、より適切かつ効果的な治療ストラテジーを選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、小細胞肺癌の予後を検出、診断、及び提供する方法、並びに小細胞肺癌を治療及び予防する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年7月27日に出願された米国仮出願第60/703,192号及び2006年5月11日に出願された同第60/799,961号からの恩典を主張する。これら各出願の内容は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺癌は最も一般的な致死的なヒト腫瘍の一つである。肺癌の発症及び進行に関連する多くの遺伝的変化が報告されているが、その正確な分子的機序は明らかにされていない(Sozzi, (2001) Eur J Cancer;37 Suppl 7:S63-73(非特許文献1))。小細胞肺癌(SCLC)は全ての肺癌の15〜20%を占める(Chute JP et al., (1999) J Clin Oncol.; 17:1794-801(非特許文献2), Simon GR et al., (2003) Chest; 123(1 Suppl):259S-271S(非特許文献3))。患者は多剤併用療法に対して良好な反応を示すことが多いが、すぐに再発する。進展型(Extensive-disease)(ED)患者の5%未満が最初の診断後5年以上生存し、限局型(limited-stage disease)(LD)患者の20%のみが集学的療法(combined modality therapy)によって治癒する(Chute JP et al., (1999) J Clin Oncol.; 17:1794-801(非特許文献2), Albain KS et al., (1991) J Clin Oncol.; 9:1618-26(非特許文献4), Sandler AB et al., (2003) Semin Oncol.; 30:9-25(非特許文献5))。SCLCは、特定の形態学的、超微細構造的、免疫組織化学的、及び分子的な特徴を共有する肺の神経内分泌腫瘍を含む、肺腫瘍の特別なクラスに分類される。特定の新生物随伴症候群、例えば、抗利尿ホルモンの不適当な分泌、異所性クッシング症候群、及びイートン‐ランバート症候群は、SCLCと特有の関連を有するが、神経内分泌腫瘍の詳細な分子的特徴は現在まで十分に理解されていない。とはいえ、SCLCの化学療法に対する比較的高い初期応答率は、効果的な新規の化学療法アプローチ及び標的化アプローチの開発の可能性を示唆している(Sattler M & Salgia R, (2003) Semin Oncol.; 30:57-71(非特許文献6), Wolff NC, et al., (2004) Clin Cancer Res. 10:3528-34(非特許文献7))。
【0004】
cDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルの分析は、癌細胞における遺伝子発現の包括的分析を実現し、それらに関する詳細な表現型情報及び生物学的情報を明らかにすることができる(Golub TR et al., (1999) Science; 286:531-7(非特許文献8), Pomeroy SL et al., (2002) Nature; 415:436-42(非特許文献9), van't Veer LJ et al., (2002) Nature; 415:530-6(非特許文献10))。数千の遺伝子間の発現レベルの体系的分析もまた、肺の発癌経路に関与する未知の分子を同定するのに有用なアプローチであり(Kikuchi T et al., (2003) Oncogene;22:2192-205(非特許文献11), Kakiuchi S et al., (2004) Hum Mol Genet.;13:3029-43(非特許文献12)および (2003) Mol Cancer Res.;1:485-99(非特許文献13), Zembutsu H, et al., (2003) Int J Oncol.;23:29-39(非特許文献14))、それらの発見は、新規の抗癌薬及び/又は診断マーカーの開発の標的を示し得る(Suzuki C et al., (2003) Cancer Res.;63:7038-41(非特許文献15), Ishikawa N et al., (2004) Clin Cancer Res.;10:8363-70(非特許文献16))。
【0005】
【非特許文献1】Sozzi, (2001) Eur J Cancer;37 Suppl 7:S63-73
【非特許文献2】Chute JP et al., (1999) J Clin Oncol.; 17:1794-801
【非特許文献3】Simon GR et al., (2003) Chest; 123(1 Suppl):259S-271S
【非特許文献4】Albain KS et al., (1991) J Clin Oncol.; 9:1618-26
【非特許文献5】Sandler AB et al., (2003) Semin Oncol.; 30:9-25
【非特許文献6】Sattler M & Salgia R, (2003) Semin Oncol.; 30:57-71
【非特許文献7】Wolff NC, et al., (2004) Clin Cancer Res. 10:3528-34
【非特許文献8】Golub TR et al., (1999) Science; 286:531-7
【非特許文献9】Pomeroy SL et al., (2002) Nature; 415:436-42
【非特許文献10】van't Veer LJ et al., (2002) Nature; 415:530-6
【非特許文献11】Kikuchi T et al., (2003) Oncogene;22:2192-205
【非特許文献12】Kakiuchi S et al., (2004) Hum Mol Genet.;13:3029-43
【非特許文献13】(2003) Mol Cancer Res.;1:485-99
【非特許文献14】Zembutsu H, et al., (2003) Int J Oncol.;23:29-39
【非特許文献15】Suzuki C et al., (2003) Cancer Res.;63:7038-41
【非特許文献16】Ishikawa N et al., (2004) Clin Cancer Res.;10:8363-70
【発明の開示】
【0006】
発明の簡単な概要
本発明者らは、レーザーマイクロビームマイクロダイセクション(laser-microbeam microdissection)(LMM)により精製した15例のSCLCの、32,256種類の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイによる包括的な遺伝子発現プロファイルを用いて、肺癌の治療薬又は免疫療法の開発にとって格好の候補となる多くの遺伝子を同定した。本発明者らはまた、特定の遺伝子が、肺癌の二つの最も一般的な組織型である非小細胞肺癌(NSCLC)とSCLCの間で示差的に発現されることを発見した。これらの結果は「個別療法」への応用が可能である。
【0007】
本発明者らは、肺における発癌に関与し、かつ新規の診断マーカーとして、並びに新規の薬物及び免疫療法の標的として有用な分子を同定するため、cDNAマイクロアレイを用いるスクリーニング系を構築した。最初に、本発明者らはレーザーマイクロビームマイクロダイセクション(LMM)により精製した15例の小細胞肺癌(SCLC)の発現プロファイルを分析するため、32,256種類の遺伝子を示すcDNAマイクロアレイを使用した。本発明者らは、SCLCにおいて有意に上方制御又は下方制御された遺伝子群についての詳細な網羅的ゲノムデータベースを確立した。対照(ヒト肺)と比較して、50%を上回るSCLCにおいて776種類の転写物は少なくとも0.2倍低く発現し、一方779種類の遺伝子は、50%を上回るSCLCにおいて5倍高い発現を示した。本発明者らは、腫瘍組織及び正常組織におけるこれらの遺伝子発現パターンのうちの83種類を半定量RT-PCR及び/又はノーザンブロット分析を用いて確認し、これらの遺伝子が新規の治療薬又は免疫療法の開発のため及び腫瘍マーカーとして格好の候補であることを確認した。これらの遺伝子の中で、本発明者らはZicファミリーメンバー5(odd-pairedのホモログ、Drosophila;ZIC5)のさらなる特徴付けを行った。ZIC5の低分子干渉RNA(siRNA)によるSCLC細胞の治療は、癌細胞の成長を抑制した。さらに、クラスタリングアルゴリズムをランダム順列試験により同定した475種類の遺伝子の発現データに適用することで、肺癌の2つの主要な組織型である非小細胞肺癌(SCLC)及びSCLCを容易に識別した。特に、本発明者らは、SCLCにおいて多量に発現された34種類の遺伝子を得、そのうちのいくつかが神経発生及び神経保護を含む特定のニューロン機能の特徴を明らかにした。本発明者らはまた、広範な化学療法を受けている患者から採取した進行型SCLC及び進行型腺癌(ADS)の両方で豊富に発現された68種類の遺伝子を同定した。例えばTAF5L、TFCP2L4、PHF20、LMO4、TCF20、RFX2、及びDKFZp547I048であるこれらの一部は転写因子及び/又は遺伝子発現調節因子として公知であり、一部、例えばC9orf76、EHD3、及びGIMAP4はヌクレオチド結合タンパク質をコードする。これらのデータは、この類型の癌に対する新規の診断システム及び治療標的分子を同定するための価値ある情報を提供する。
【0008】
本発明は、小細胞肺癌(SCLC)と相関関係を有する遺伝子発現パターンの発見に一部基づく。小細胞肺癌において示差的に発現する遺伝子は、本明細書において「SCLC核酸」又は「SCLCポリヌクレオチド」と総称され、その対応するコードされるポリペプチドは「SCLCポリペプチド」又は「SCLCタンパク質」と称される。
【0009】
従って、本発明は、患者由来の生物学的試料、例えば組織試料におけるSCLC関連遺伝子の発現レベルを決定することにより、対象における小細胞肺癌の診断、予後予測を提供、又は素因を決定する方法を提供する。「SCLC関連遺伝子」又は「小細胞肺癌関連遺伝子」という用語は、正常細胞の発現レベルと比較した場合にSCLC細胞において異なる発現レベルにより特徴付けられる遺伝子を意味する。正常細胞とは、肺組織から得られる細胞である。本発明の文脈では、SCLC関連遺伝子とは、表2〜3に列挙される遺伝子(すなわち、SCLC No. 1〜1555の遺伝子)であるか、又は表2〜3に列挙される遺伝子と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有しかつ同一の機能を有する遺伝子(例えば、ホモログ、遺伝的変異体、及び多型)である。二つまたはそれ以上の核酸配列の配列同一性を決定するために、当技術分野で公知のアルゴリズムが使用され得る(例えば、BLAST、以下参照)。その遺伝子の正常対照発現レベルと比較した場合に遺伝子の発現レベルに変化又は差異、例えば増加又は減少が生じていることは、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。
【0010】
本発明の文脈では、「対照レベル」という語句は、対照試料において検出されるタンパク質の発現レベルを意味し、正常対照レベル及び小細胞肺癌対照レベルの両方を包含する。対照レベルは、単一の参照集団由来の単一発現パターン又は複数の発現パターン由来の単一発現パターンであり得る。例えば、対照レベルは、以前に試験された細胞由来の発現パターンのデータベースであり得る。「正常対照レベル」は、小細胞肺癌を患っていないことが既知である正常、健常な個体又は個体集団において検出される遺伝子発現レベルを意味する。正常な個体とは、小細胞肺癌の臨床的症状を有さない個体である。他方、「SCLC対照レベル」は、SCLCを患った集団において見出されたSCLC関連遺伝子の発現プロファイルを意味する。
【0011】
試験試料において検出された表3に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子(すなわち、SCLC No. 777〜1555の遺伝子)の発現レベルが正常対照レベルと比較して増加していることは、その対象(試料を採取した対象)がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。逆に、試験試料において検出された表2に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子(すなわち、SCLC No. 1〜776の遺伝子)の発現レベルが正常対照レベルと比較して減少していることは、その対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。
【0012】
あるいは、試料におけるSCLC関連遺伝子パネルの発現が、同じ遺伝子パネルのSCLC対照レベルと比較され得る。試料の発現とSCLC対照との発現の類似性は、その対象(試料を採取した対象)がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。
【0013】
本発明によれば、遺伝子発現レベルは、遺伝子発現が対照レベルと比較して10%、25%、50%増加又は減少している場合に「変化した」又は「異なる」とされる。あるいは、発現レベルは、遺伝子発現が対照レベルと比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍又はそれ以上増加又は減少する場合に「増加した」又は「減少した」とされる。発現は、例えばアレイを用いて、SCLC関連遺伝子プローブと患者由来の組織試料の遺伝子転写物とのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される。
【0014】
本発明の文脈では、患者由来の組織試料とは、試験対象、例えばSCLCを有することが既知の患者又はSCLCを有する疑いのある患者から得た任意の組織である。例えば、組織は上皮細胞を含み得る。より具体的には、組織は肺癌由来の上皮細胞であり得る。
【0015】
本発明はまた、表2〜3に列挙される二つまたはそれ以上のSCLC関連遺伝子の遺伝子発現レベルを含むSCLC基準発現プロファイルを提供する。あるいは、SCLC基準発現プロファイルは、表2に列挙されるSCLC関連遺伝子又は表3に列挙されるSCLC関連遺伝子のうちの二つまたはそれ以上の発現レベルを含み得る。
【0016】
本発明はさらに、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子を発現する試験細胞を試験化合物と接触させ、SCLC関連遺伝子の発現レベル若しくは活性又はその遺伝子産物の活性を決定することによる、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子、例えば表2〜3に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現又は活性を阻害又は増強する薬剤の同定方法を提供する。試験細胞は上皮細胞、例えば、肺癌から得られる上皮細胞であり得る。上方制御されたSCLC関連遺伝子の発現レベル又はその遺伝子産物の活性が試験化合物の非存在下で検出されるレベル又は活性と比較して減少することは、その試験薬剤がSCLC関連遺伝子の阻害剤であり、SCLCの症状、例えば表3に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現を減少させるのに使用され得ることを示す。あるいは、下方制御されたSCLC関連遺伝子の発現レベル又はその遺伝子産物の活性が試験化合物の非存在下で検出される発現レベル又は活性と比較して増加することは、その試験薬剤がSCLC関連遺伝子の発現又は機能の賦活剤であり、SCLCの症状、例えば表2に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の過小発現を減少させるのに使用され得ることを示す。
【0017】
本発明はまた、一つ又は複数のSCLC核酸又はSCLCポリペプチドに結合する検出試薬を含むキットを提供する。一つ又は複数のSCLC核酸に結合する核酸アレイもまた提供する。
【0018】
本発明の治療方法は、アンチセンス組成物(すなわち、一つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物)を対象に投与する段階を含む、対象におけるSCLCを治療又は予防する方法を包含する。本発明の文脈では、アンチセンス組成物とは特定の標的遺伝子の発現を減少させるものである。例えば、アンチセンス組成物は、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子配列に相補的な一つ又は複数のヌクレオチドを含み得る。あるいは、本発明の方法は、低分子干渉RNA(siRNA)組成物(すなわち、一つ又は複数のsiRNAオリゴヌクレオチドを含む組成物)を対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、siRNA組成物とは、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のSCLC核酸、例えばZIC5の発現を減少させるものである。さらに別の方法において、対象におけるSCLCの治療又は予防は、リボザイム組成物(すなわち、一つ又は複数のリボザイムを含む組成物)を対象に投与することにより実行され得る。本発明の文脈では、核酸特異的なリボザイム組成物とは、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のSCLC核酸の発現を減少させるものである。従って、本発明のいくつかの態様において、表3に列挙される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子は小細胞肺癌の治療標的である。他の治療方法には、表2に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現、又は表2に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数によりコードされるポリペプチドの活性を増加する化合物を対象に投与する方法が含まれる。
【0019】
本発明はまたワクチン及びワクチン接種方法を包含する。例えば、対象におけるSCLCを治療又は予防する方法は、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ若しくは複数の核酸によりコードされる一つ若しくは複数のポリペプチド、又はそのようなポリペプチドの免疫学的に活性な断片を含むワクチン組成物を対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、免疫学的に活性な断片とは、全長の天然タンパク質よりも長さが短いが、全長タンパク質により誘導される免疫反応と類似の免疫反応を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的に活性な断片は、少なくとも8残基長であり、免疫細胞、例えばT細胞又はB細胞を刺激することができる。免疫細胞の刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)生成、又は抗体産生を検出することによって測定され得る。例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, 1998, Cold Spring Harbor Laboratory Press 及び Coligan, et al., Current Protocols in Immunology, 1991-2006, John Wiley & Sonsを参照のこと。
【0020】
本発明はまた、ZIC5の発現阻害がSCLCに関与する細胞を含む多種の癌細胞の細胞成長の阻害に有効であるという驚くべき発見に一部基づく。本出願に記載される発明は、この発見に一部基づく。
【0021】
本発明は細胞成長の阻害方法を提供する。そのような方法の中でも、ZIC5の発現を阻害する一つ又は複数の低分子干渉RNAオリゴヌクレオチド(siRNA)を含む組成物と細胞を接触させる段階を含む方法が提供される。本発明はまた、対象における腫瘍細胞の成長の阻害方法を提供する。このような方法はZIC5由来の配列に特異的にハイブリダイズする一つ又は複数の低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物を対象に投与する段階を含む。本発明の別の局面は、生物学的試料の細胞におけるZIC5遺伝子の発現の阻害方法を提供する。遺伝子の発現は、ZIC5遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の一つ又は複数の二重鎖リボ核酸(RNA)分子を細胞に導入することにより阻害され得る。本発明の別の局面は、例えば提供される方法において有用な、核酸配列及びベクターを含む製造物、並びにそれらを含む組成物に関する。そのような製造物の中でも、ZIC5遺伝子を発現する細胞に導入された場合にこの遺伝子の発現を阻害する特性を有するsiRNA分子が提供される。このような分子の中でも、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む分子であって、該センス鎖がZIC5標的配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、該アンチセンス鎖がセンス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含む分子が提供される。この分子のセンス鎖及びアンチセンス鎖は互いにハイブリダイズして二重鎖分子を形成する。
【0022】
本発明は細胞成長の阻害方法を特徴とする。細胞成長は、ZIC5の低分子干渉RNA(siRNA)の組成物と細胞を接触させることにより阻害される。細胞はさらに、トランスフェクション促進剤と接触される。細胞はインビトロ、インビボ、又はエクスビボで提供される。対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシである。細胞は肺上皮細胞である。あるいは、細胞は腫瘍細胞(すなわち、癌細胞)、例えば、癌腫細胞又は腺癌細胞である。例えば、細胞は小細胞肺癌細胞である。細胞成長の阻害とは、処置を受けた細胞が未処置細胞よりも増殖速度が低下するか又は生存度が低下することを意味する。細胞成長は当技術分野で公知の増殖アッセイにより測定される。
【0023】
本発明はまた、化学療法抵抗性肺癌と相関関係を有する遺伝子発現パターンの発見に一部基づく。「化学療法」という用語は、一般的に、特定の化合物薬剤を用いる疾患の治療を意味する。本発明において、化学療法の対象は、癌細胞又は癌組織、好ましくは肺癌細胞又は肺癌組織である。本明細書において、「化学療法剤」は、癌、特に肺癌を治療するために一般的に使用される薬学的薬剤を意味する。癌を治療するための化学療法剤には、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イホスファミド、パクリタキセル、ゲムシタビン、及びドセタキセルが含まれる。より具体的には、本発明の化学療法剤には、シスプラチン及びカルボプラチンを含む白金系抗癌剤が含まれる。「化学療法抵抗性」という用語は特に、癌細胞又は癌組織が典型的な悪性細胞又は悪性組織を選択的に破壊する化学療法剤の影響を受けないことを意味する。
【0024】
化学療法抵抗性肺癌において示差的に発現される遺伝子は、本明細書中で「化学療法抵抗性肺癌核酸」又は「化学療法抵抗性肺癌ポリヌクレオチド」と総称され、対応するコードされるポリペプチドは、「化学療法抵抗性肺癌ポリペプチド」又は「化学療法抵抗性肺癌タンパク質」と総称される。従って、本発明はさらに、患者由来の生物学的試料における化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定することにより、対象における化学療法抵抗性肺癌又は化学療法抵抗性肺癌が発症する素因の診断方法を提供する。「化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子」という用語は、化学療法感受性肺癌細胞と比較した場合に化学療法抵抗性肺癌において発現レベルが異なることにより特徴付けられる遺伝子を意味する。本発明の文脈では、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子とは、表5に列挙される遺伝子である。あるいは、本発明において、化学療法抵抗性SCLC関連遺伝子は表6に列挙される遺伝子である。この遺伝子の対照レベルと比較して試料の発現レベルが増加していることは、対象が化学療法抵抗性肺癌若しくはSCLCを患っているか又はそれらを発症する危険があることを示す。
【0025】
本発明の文脈では、「対照レベル」という語句は、化学療法感受性肺癌又はSCLCを患った個体又は集団において検出される遺伝子の発現レベルを意味する。
【0026】
試験試料において検出される表5に列挙される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルが対照レベルと比較して増加していることは、対象(試料を採取した対象)が化学療法抵抗性肺癌を患っているか又は化学療法抵抗性肺癌を発症する危険があることを示す。同様に、試験試料において検出される表6に列挙される一つ又は複数の化学療法抵抗性SCLC関連遺伝子の発現レベルが対照レベルと比較して増加していることは、対象(試料を採取した対象)が化学療法抵抗性SCLCを患っているか又は化学療法抵抗性SCLCを発症する危険があることを示す。
【0027】
本発明によれば、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子の発現レベルは、遺伝子発現が正常対照レベルと比較して少なくとも約10%、25%、50%増加している場合に「増加した」とされる。発現は、例えばアレイを用いて、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子プローブと患者由来の組織試料の遺伝子転写物とのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される。
【0028】
本発明の文脈では、患者由来の組織試料とは、試験対象、例えば、化学療法抵抗性肺癌又はSCLCを有することが既知であるか又はそれらが疑われる患者から得られる任意の組織のことである。
【0029】
本発明はまた、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の二つまたはそれ以上の遺伝子発現レベルを含む、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)の基準発現プロファイルを提供する。あるいは、化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌である場合、化学療法抵抗性肺癌の基準発現プロファイルは、表6に列挙される化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の二つまたはそれ以上の発現レベルを含む。
【0030】
本発明はさらに、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子を発現する試験細胞を試験化合物と接触させ、その遺伝子の発現レベル若しくは活性、又はその遺伝子産物の活性を決定することによる、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子、例えば、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子の発現又は活性を阻害又は増強する薬剤の同定方法を提供する。試験細胞は、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)から得られる細胞であり得る。上方制御された化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子の発現レベル又はその遺伝子産物の活性が試験化合物の非存在下で検出される発現レベル又は活性と比較して減少することは、試験化合物が化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子の阻害剤であり、化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)の症状、例えば、表5〜6に列挙される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子の発現を減少させるのに使用され得ることを示す。
【0031】
本発明はまた、一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌(若しくはSCLC)核酸又は化学療法抵抗性肺癌(若しくはSCLC)ポリペプチドと結合する検出試薬を含むキットも提供する。一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)核酸に結合する核酸アレイもまた提供される。
【0032】
本発明の治療方法は、一つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス組成物を対象に投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)を治療又は予防する方法を包含する。本発明の文脈では、アンチセンス組成物とは特定の標的遺伝子の発現を減少させるものである。例えば、アンチセンス組成物は、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子からなる群より選択される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子配列に相補的な一つ又は複数のヌクレオチドを含み得る。あるいは、本発明の方法は、一つ又は複数のsiRNAオリゴヌクレオチドを含む低分子干渉RNA(siRNA)組成物を対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、siRNA組成物とは、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)核酸の発現を減少させるものである。さらに別の方法において、対象における化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)の治療又は予防は、一つ又は複数のリボザイムを含むリボザイム組成物を対象に投与することにより行われ得る。本発明の文脈では、核酸特異的なリボザイム組成物とは、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)核酸の発現を減少させるものである。従って本発明において、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子は化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)の好ましい治療標的である。
【0033】
本発明はまたワクチン及びワクチン接種方法を包含する。例えば、対象における化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)を治療又は予防する方法は、表5〜6に列挙される化学療法抵抗性肺癌(又はSCLC)関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の核酸によりコードされる一つ又は複数のポリペプチド又はそのようなポリペプチドの免疫学的に活性な断片を含むワクチンを対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、免疫学的に活性な断片とは、全長の天然タンパク質よりも長さが短いが、全長タンパク質により誘導される免疫反応と類似の免疫反応を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的に活性な断片は、少なくとも8残基長であり、免疫細胞、例えばT細胞又はB細胞を刺激することができるはずである。免疫細胞の刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)生成、又は抗体産生を検出することによって測定され得る。
【0034】
本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、別段に規定されない限り、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書中に記載される方法及び材料と類似又はそれらと等価な方法及び材料が使用され得るが、以下では適当な方法及び材料を記載する。本明細書中で言及する全ての公報、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。相反する場合は、定義も含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は解説のみを目的とするものであり、限定を意図するものではない。
【0035】
本明細書中に記載される方法の利点の一つは、小細胞肺癌の明白な臨床的症状を検出する前に疾患が同定されることである。本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【0036】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用する「一つ(a、an)」及び「その(the)」という単語は、別段に具体的に示されない限り「少なくとも一つ」を意味する。
【0037】
一般的に小細胞肺癌細胞は強い炎症反応を有しかつ多種の細胞成分を含む、固形の塊として存在する。従って、以前に公表されたマイクロアレイデータは異種のプロファイルを反映している可能性がある。
【0038】
これらの問題を考慮して、レーザーマイクロビームマイクロダイセクション(LMM)法により精製された小細胞肺癌細胞集団を調製し、32,256種類の遺伝子を示すcDNAマイクロアレイを用いて、15例のSCLCの網羅的ゲノム遺伝子発現プロファイルを分析した。これらのデータは小細胞肺癌の発癌についての重要な情報を提供するのみならず、その産物が診断マーカーとして及び/又は小細胞肺癌を有する患者の治療のための分子標的としての役割を果たす候補遺伝子の同定を容易にし、かつ臨床的に関連する情報を提供する。
【0039】
本発明は、SCLCを有する患者の上皮細胞と癌腫の間で複数の核酸の発現パターンが変化するという発見に一部基づく。この遺伝子発現の相違は、網羅的なcDNAマイクロアレイシステムを用いて同定した。
【0040】
32,256種類の遺伝子を示すcDNAマイクロアレイとレーザーマイクロダイセクションの組み合わせを用いて15例のSCLC由来の癌細胞の遺伝子発現プロファイルを分析した。レーザーマイクロダイセクションによって高純度で選択されたSCLCを有すると診断された患者由来の癌細胞と正常細胞との間の発現パターンを比較することで、776種類の遺伝子(表2に示す)がSCLC細胞において共通して下方制御されることを同定した。同様に、779種類の遺伝子(表3に示す)が、SCLC細胞において共通して上方制御されることも同定した。さらに、患者の血清又は痰中の癌関連タンパク質を検出するのに有用な候補分子マーカーの選択を行い、ヒトSCLCにおけるシグナル抑制ストラテジーの開発に有用な標的をいくつか発見した。それらの中で、表2及び表3は、SCLCと正常組織の間でその発現が変化する遺伝子のリストを提供する。
【0041】
本発明により同定した示差的に発現される遺伝子には、SCLCのマーカーとして、及びSCLCの症状を治療又は緩和するためにその発現が変えられ得るSCLC遺伝子標的としての診断的用途が見出される。
【0042】
SCLC患者においてその発現レベルが調節される(すなわち、増加又は減少する)遺伝子を表2〜3にまとめ、これらを本明細書中で「SCLC関連遺伝子」、「SCLC核酸」、又は「SCLCポリヌクレオチド」と意味し、その対応するコードされるポリペプチドは、「SCLCポリペプチド」又は「SCLCタンパク質」と表す。別段に示されない限り、「SCLC」は本明細書中に開示される配列のいくつか(例えば、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子)を意味する。以前に記載された遺伝子については、データベースアクセッションとともに示す。
【0043】
細胞試料における多種の遺伝子の発現を測定することで、SCLCを診断することができる。同様に、多種の薬剤に対するこれらの遺伝子の発現を測定することで、SCLCを治療するための薬剤を同定することができる。
【0044】
本発明は、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子のうちの少なくとも一つ、及び最大で全ての遺伝子の発現の決定(例えば、測定)を含む。公知配列についてのGenBank(商標)データベースのエントリーにより提供される配列情報を用いることで、SCLC関連遺伝子は、当業者に周知の技術を用いて検出及び測定され得る。例えば、配列データベースのエントリー内の、SCLC関連遺伝子に対応する配列が、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析においてSCLC関連遺伝子に対応するRNA配列を検出するためのプローブを構築するために使用され得る。プローブは典型的には基準配列の少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、又は少なくとも200ヌクレオチドを含む。別の例として、配列は、例えば増幅反応に基づく検出法、例えば逆転写に基づくポリメラーゼ連鎖反応においてSCLC核酸を特異的に増幅するためのプライマーを構築するために使用され得る。
【0045】
試験細胞集団、例えば患者由来の組織試料における、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベルは、次いで、基準集団における同じ遺伝子の発現レベルと比較される。基準細胞集団には、比較されるパラメータが既知の複数の細胞、すなわち、肺癌細胞(例えば、SCLC細胞)又は正常肺細胞が含まれる。
【0046】
試験細胞集団における遺伝子発現パターンが基準細胞集団と比較した場合にSCLC又はその素因を示すか否かは、基準細胞集団の組成に依存する。例えば、基準細胞集団が正常肺細胞で構成される場合、試験細胞集団と基準細胞集団との間の遺伝子発現パターンの類似性は、試験細胞集団がSCLCでないことを示す。逆に、基準細胞集団がSCLC細胞で構成される場合、試験細胞集団と基準細胞集団との間の遺伝子発現プロファイルの類似性は、試験細胞集団がSCLC細胞を含むことを示す。
【0047】
試験細胞集団におけるSCLCマーカー遺伝子の発現レベルは、基準細胞集団における対応するSCLCマーカー遺伝子の発現レベルから1.1倍、1.5倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍を上回って、又はそれ以上異なる場合に、「変化した」又は「異なる」とみなされる。
【0048】
試験細胞集団と基準細胞集団との間の示差的な遺伝子発現は、対照核酸、例えば、ハウスキーピング遺伝子に対して標準化され得る。例えば、対照核酸はその細胞が癌性状態であるか非癌性状態であるかに依存して相違しないことが公知の核酸である。対照核酸の発現レベルは、試験集団及び基準集団におけるシグナルレベルを標準化するために使用され得る。対照遺伝子の例には、β-アクチン、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びリボソームタンパク質P1が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
試験細胞集団は、複数の基準細胞集団と比較され得る。複数の基準集団は各々、既知のパラメータが相違し得る。従って、試験細胞集団は、例えばSCLC細胞を含むことが既知の第一の基準細胞集団、及び例えば正常肺細胞を含むことが既知の第二の基準集団と比較され得る。試験細胞は、SCLC細胞を含むことが既知であるか又はその疑いのある対象由来の組織試料又は細胞試料中に含まれ得る。
【0050】
試験細胞は、体組織又は体液、例えば生物学的液体(例えば、血液又は痰)から得られる。例えば、試験細胞は肺組織から精製され得る。好ましくは、試験細胞集団は上皮細胞を含む。上皮細胞は好ましくは、肺癌であることが既知の又はその疑いのある組織由来のものである。
【0051】
基準細胞集団中の細胞は、試験細胞の組織型と類似する組織型由来のものであり得る。基準細胞集団は、例えばSCLC細胞株(すなわち、正の対照)又は正常肺細胞株(すなわち、負の対照)などの細胞株であってもよい。あるいは、対照細胞集団は、アッセイパラメータ又は条件が公知の細胞由来の分子情報データベース由来のものであり得る。
【0052】
対象は好ましくは哺乳動物である。哺乳動物の例には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシが含まれるがこれらに限定されない。
【0053】
本明細書中に開示される遺伝子の発現は、当技術分野で公知の方法を用いてタンパク質レベル又は核酸レベルで決定され得る。例えば、これらの核酸配列のうちの一つ又は複数を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析が、遺伝子発現を決定するために使用され得る。あるいは、遺伝子発現は、例えば示差的に発現される遺伝子配列に特異的なプライマーを用いる逆転写に基づくPCRアッセイを用いて測定され得る。発現はまた、タンパク質レベルで、すなわち、本明細書中に記載される遺伝子によりコードされるポリペプチドのレベル又はその生物学的活性を測定することによって決定され得る。このような方法は当技術分野で周知であり、例えば、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体を用いる免疫アッセイを含むがこれに限定されない。これらの遺伝子によりコードされるタンパク質の生物学的活性は、一般的に周知である。Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, 1987-2006, John Wiley and Sons; 及び Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, 1998, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。
【0054】
小細胞肺癌の診断:
本発明の文脈では、SCLCは細胞の試験集団(すなわち、患者由来の生物学的試料)由来の一つ又は複数のSCLC核酸の発現レベルを測定することによって診断される。好ましくは、試験細胞集団は、上皮細胞、例えば肺組織から得られる細胞を含む。遺伝子発現はまた、血液又はその他の体液、例えば唾液若しくは痰から測定され得る。その他の生物学的試料は、タンパク質レベルを測定するのに使用され得る。例えば、診断対象の患者由来の血液又は血清中のタンパク質レベルは免疫アッセイ又はその他の従来的な生物学的アッセイによって測定され得る。
【0055】
一つ又は複数のSCLC関連遺伝子、例えば表2〜3に列挙される遺伝子の発現は、試験細胞集団又は生物学的試料において決定され、アッセイされた一つ又は複数のSCLC関連遺伝子と関連する正常対照の発現レベルと比較される。正常対照レベルとは、典型的にはSCLCを患っていないことが既知の集団において見出される一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現プロファイルである。患者由来の組織試料における一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベルの変化又は差異(例えば、増加又は減少)は、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。例えば、試験集団において表2に列挙される一つ又は複数の下方制御されたSCLC関連遺伝子の発現が正常対照レベルと比較して減少することは、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。逆に、試験集団において表3に列挙される一つ又は複数の上方制御されたSCLC関連遺伝子の発現が正常対照レベルと比較して増加することは、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。
【0056】
試験集団においてSCLC関連遺伝子の一つ又は複数が正常対照レベルと比較して変化することは、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。例えば、SCLC関連遺伝子(表2〜3に列挙される遺伝子)の一団の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上が変化することは、対象がSCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険があることを示す。
【0057】
生物学的試料におけるSCLC関連遺伝子の発現レベルは、SCLC関連遺伝子に対応するmRNA、又はSCLC関連遺伝子によりコードされるタンパク質を定量することによって推定され得る。mRNAの定量法は当業者に公知である。例えば、SCLC関連遺伝子に対応するmRNAのレベルは、ノーザンブロット又はRT-PCRによって推定され得る。SCLC関連遺伝子のヌクレオチド配列は公知であるため、当業者はSCLC関連遺伝子を定量するためにプローブ又はプライマーのヌクレオチド配列を設計することができる。例えば、表1に列挙されるヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドは、SCLC関連遺伝子特異的プライマーセットとして使用され得る。
【0058】
SCLC関連遺伝子の発現レベルはまた、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性又は量に基づいて分析され得る。SCLC関連遺伝子によりコードされるタンパク質の量を決定する方法については後述する。例えば、免疫アッセイ法は、生物学的材料中のタンパク質の決定に有用である。マーカー遺伝子(SCLC関連遺伝子)が肺癌患者の試料中で発現される限り、任意の生物学的材料がタンパク質又はその活性の決定のための生物学的試料として使用され得る。例えば、肺組織由来の上皮細胞。しかしながら、血液及び痰を含む体液もまた分析され得る。他方で、SCLC関連遺伝子によりコードされるタンパク質の活性の決定に適した方法は、分析対象のタンパク質の活性に従って選択され得る。
【0059】
試験生物学的試料中のSCLC関連遺伝子の発現レベルが推定され、正常試料(例えば、疾患を有さない対象由来の試料)における発現レベルと比較される。試験試料中の遺伝子の発現レベルが正常試料における発現レベルよりも高い(表3に示されるSCLC関連遺伝子、すなわち777〜1555)又は低い(表2に示されるSCLC関連遺伝子、すなわち1〜776)ことがこのような比較から示される場合、対象はSCLCに罹患しているか又はSCLCに罹患し易いと判断される。正常対象及び診断対象由来の生物学的試料におけるSCLC関連遺伝子の発現レベルは、同時に決定され得る。あるいは、その発現レベルの正常範囲は、SCLCを有さないことが既知の個体の対照群から以前に採取した試料における遺伝子の発現レベルを分析することにより得られた結果に基づく統計的方法により決定され得る。対象の試料を比較することにより得られる結果はその正常範囲と比較され、その結果が正常範囲に含まれない場合、対象はSCLCに罹患しているか又はSCLCを発症する危険があると判断される。
【0060】
本発明においては、SCLCを含む細胞増殖性疾患を診断するための診断剤もまた提供される。本発明の診断剤は、SCLC関連遺伝子のポリヌクレオチド又はポリペプチドに結合する化合物を含む。好ましくは、SCLC関連遺伝子のポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又はSCLC関連遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する抗体が、このような化合物として使用され得る。
【0061】
本発明のSCLC診断方法は、対象におけるSCLC治療の有効性を評価するのに使用され得る。本方法によれば、試験細胞集団を含む生物学的試料は、SCLCに対する治療を受けている対象から得られる。本評価方法はSCLCを診断する従来法に従って行われ得る。
【0062】
必要ならば、生物学的試料は、治療前、治療中、又は治療後の様々な時点で対象から得られる。次いで、試験生物学的試料におけるSCLC関連遺伝子の発現レベルが決定され、例えば、SCLCの状態が既知の細胞(すなわち癌性細胞又は非癌性細胞)を含む基準細胞集団由来の対照レベルと比較される。対照レベルはこの治療を受けていない生物学的試料において決定される。
【0063】
対照レベルが癌性細胞を含まない生物学的試料由来である場合、対象由来の試験生物学的試料における発現レベルと対照レベルが類似することは、治療が有効であることを示す。対象由来の試験生物学的試料におけるSCLC関連遺伝子の発現レベルと対照レベルが相違することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0064】
SCLC関連遺伝子の発現を阻害又は増強する薬剤の同定:
一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現、又はそれらの遺伝子産物の活性を阻害する薬剤は、SCLCに関連する上方制御された一つ又は複数の遺伝子を発現する試験細胞集団を試験薬剤と接触させ、次いでSCLC関連遺伝子の発現レベル、又はそれらの遺伝子産物の活性を決定することによって同定され得る。その薬剤の存在下での一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベル又はその遺伝子産物の活性レベルが試験薬剤の非存在下での発現レベル又は活性レベルと比較して減少していることは、その薬剤がSCLCに関連する上方制御された一つ又は複数の遺伝子の阻害剤であり、SCLCの阻害に有用であることを示す。
【0065】
あるいは、SCLCに関連する下方制御された一つ又は複数の遺伝子の発現又はその遺伝子産物の活性を増強する薬剤は、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子を発現する試験細胞集団を試験薬剤と接触させ、次いでSCLCに関連する下方制御された遺伝子の発現レベル又は活性を決定することによって同定され得る。一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベル又はそれらの遺伝子産物の活性レベルが試験薬剤の非存在下での発現レベル又は活性レベルと比較して増加していることは、その薬剤がSCLCに関連する下方制御された一つ又は複数の遺伝子の発現又はそれらの遺伝子産物の活性を増大させることを示す。
【0066】
試験細胞集団は、SCLC関連遺伝子を発現する任意の細胞で構成され得る。例えば、試験細胞集団は、上皮細胞、例えば、肺組織由来の細胞を含み得る。さらに、試験細胞集団は、癌腫細胞由来の不死化細胞株であり得る。あるいは、試験細胞集団は、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子をトランスフェクトされた細胞、又はレポーター遺伝子に機能的に連結された、一つ又は複数のSCLC関連遺伝子由来の調節配列(例えば、プロモーター配列)をトランスフェクトされた細胞であり得る。
【0067】
薬剤は、例えば、阻害性オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム)、抗体、ポリペプチド、有機小分子であり得る。薬剤のスクリーニングは、マルチウェルプレート(例えば、96ウェル、192ウェル、384ウェル、768ウェル、1536ウェル)を用いて複数の薬剤を同時にスクリーニングするハイスループット法を用いて行われ得る。ハイスループットスクリーニングを自動化したシステムは、例えば、Caliper Life Sciences, Hopkinton, MAから市販されている。スクリーニングに利用できる有機小分子ライブラリーは、例えば、Reaction Biology Corp., Malvern, PA; TimTec, Newark, DEから購入できる。
【0068】
対象におけるSCLC治療の有効性の評価:
本明細書において同定された示差的に発現されるSCLC関連遺伝子はまた、SCLCの治療経過のモニタリングを可能にする。この方法において、試験細胞集団は、SCLC治療を受けている対象から提供される。必要ならば、試験細胞集団は治療前、治療中、及び/又は治療後の様々な時点で対象から採取される。次いで、試験細胞集団におけるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が決定され、SCLCの状態が既知の細胞を含む基準細胞集団と比較される。本発明の文脈では、基準細胞集団は関心対象の治療を受けてないものである。
【0069】
基準細胞集団がSCLC細胞を含まない場合、試験細胞集団と基準細胞集団において一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現が類似することは、関心対象の治療が有効であることを示す。しかしながら、試験細胞集団と正常対照の基準細胞集団における一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現が相違することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。同様に、基準細胞集団がSCLC細胞を含む場合、試験細胞集団と基準細胞集団において一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現の間に相違が存在することは、関心対象の治療が有効であることを示すが、試験集団と小細胞肺癌対照の基準細胞集団における一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現が類似することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0070】
さらに、治療後に採取した対象由来の生物学的試料において決定された一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベル(すなわち、治療後レベル)が、治療開始前に採取された対象由来の生物学的試料において決定された一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現レベル(すなわち、治療前レベル)と比較され得る。SCLC関連遺伝子が上方制御された遺伝子の場合、治療後試料において発現レベルが減少していることは関心対象の治療が有効であることを示すが、治療後試料において発現レベルが増加しているか又は変化がないことは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。逆に、SCLC関連遺伝子が下方制御された遺伝子の場合、治療後試料において発現レベルが増加していることは、関心対象の治療が有効であることを示すが、治療後試料において発現レベルが減少しているか又は変化がないことは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0071】
本明細書中で使用する場合、「有効」という用語は、その治療が、対象において病理学的に上方制御された遺伝子の発現を減少させるか、病理学的に下方制御された遺伝子の発現を増加させるか、又は肺癌の大きさ、有病率、若しくは転移能力を減少させることを示す。関心対象の治療が予防的に適用される場合、「有効」という用語は、その治療が、小細胞肺癌の形成を遅らせるか若しくは妨げること、又は臨床的SCLCの症状を遅らせる、妨げる、若しくは緩和することを意味する。小細胞肺腫瘍の評価は、標準的な臨床プロトコルを用いて行われ得る。
【0072】
さらに、有効性は、SCLCを診断又は治療するための任意の公知の方法と関連させて決定され得る。SCLCは、例えば、異常な症状、例えば、体重の減少、腹痛、背痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、及び全身の倦怠感、衰弱、並びに黄疸を同定することにより診断され得る。
【0073】
特定の個体に適したSCLCを治療するための治療剤の選択:
個体間の遺伝的構造の違いは、多種の薬物を代謝する能力の相対的な違いをもたらし得る。薬剤が対象において代謝され抗SCLC剤として作用することは、癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンから非癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの対象の細胞における遺伝子発現パターンの変化を誘導することにより明らかになり得る。従って、本明細書中に開示される示差的に発現されるSCLC関連遺伝子は、薬剤がその対象におけるSCLCに適した阻害剤であるかどうかを決定するために、選択された対象由来の試験細胞集団においてSCLCの治療的阻害剤又は予防的阻害剤が試験されることを可能にする。
【0074】
特定の対象に適したSCLCの阻害剤を同定するために、対象由来の試験細胞集団は治療剤に曝され、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が決定される。
【0075】
本発明の方法の文脈では、試験細胞集団は一つ又は複数のSCLC関連遺伝子を発現するSCLC細胞を含む。好ましくは、試験細胞集団は上皮細胞を含む。例えば、試験細胞集団は、候補薬剤の存在下でインキュベートされ得、次に試験細胞集団の遺伝子発現パターン(すなわち、発現プロファイル)が測定されて、一つ又は複数の基準発現プロファイル、例えば、SCLC基準発現プロファイル又は非SCLC基準発現プロファイルと比較され得る。
【0076】
試験細胞集団において、SCLCを含む基準細胞集団における発現と比べて表3に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が減少していること、又は表2に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が増加していることは、その薬剤が治療的用途を有することを示す。
【0077】
本発明の文脈では、試験薬剤は任意の化合物又は組成物であり得る。試験薬剤の例には、免疫調節剤(例えば、抗体)、阻害性オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性短鎖オリゴヌクレオチド及びリボザイム)及び低分子有機化合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0078】
治療剤を同定するためのスクリーニングアッセイ:
本明細書中で開示される示差的に発現されるSCLC関連遺伝子はまた、SCLCを治療するための候補治療剤の同定にも使用され得る。本発明の方法は、試験薬剤がSCLC状態に特徴的なSCLC 1〜1555を含む一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現プロファイルをSCLC状態に特徴的な遺伝子発現パターンに変更し得るかどうかを決定するために候補治療剤をスクリーニングする段階を含む。
【0079】
本発明において、SCLC 1〜1555はSCLCを治療又は予防するための治療剤のスクリーニングに有用である。
【0080】
一つの態様において、試験細胞集団は、一つの試験薬剤又は複数の試験薬剤に(連続して又は組み合わせて)曝され、その細胞中のSCLC 1〜1555の一つ又は複数の発現が測定される。試験細胞集団においてアッセイしたSCLC関連遺伝子の発現プロファイルは、その試験薬剤に曝されていない基準細胞集団における同一のSCLC関連遺伝子の発現プロファイルと比較される。
【0081】
過小発現される遺伝子の発現を刺激することができる、又は過剰発現される遺伝子の発現を抑制することができる薬剤は、臨床的利益を有する。そのような薬剤は、動物又は試験対象においてSCLCを予防する能力についてさらに試験され得る。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、SCLCの治療に有用な薬剤である候補薬剤のスクリーニング方法を提供する。上記において詳述したように、一つ若しくは複数のマーカー遺伝子の発現レベル、又はそれらの遺伝子産物の活性を制御することにより、SCLCの発症及び進行を制御することができる。従って、SCLCの治療に有用な薬剤である候補薬剤は、このような発現レベル及び活性を癌性状態又は非癌性状態の指標として用いるスクリーニング方法を通じて同定され得る。本発明の文脈では、このようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含み得る:
(a)SCLC 1〜1555からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)該ポリペプチドと試験化合物の間の結合活性を検出する段階、及び
(c)該ポリペプチドに結合する試験化合物を選択する段階。
【0083】
スクリーニングに使用されるマーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドは、組換えポリペプチド若しくは天然由来タンパク質、又はそれらの部分ペプチドであり得る。試験化合物と接触させるポリペプチドは、例えば、精製ポリペプチド、可溶性タンパク質、担体結合形態、又は他のポリペプチドと融合された融合タンパク質であり得る。
【0084】
当業者に公知の多くの方法が、マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングするために使用され得る。スクリーニングは、例えば、免疫沈降法によって、特に以下の様式で行われ得る。一つ又は複数のマーカー遺伝子は、その遺伝子を外来遺伝子発現ベクター、例えば、pSV2neo、pcDNA I、pcDNA3.1、pCAGGS、及びpCD8に挿入することによって宿主(例えば、動物)細胞等において発現される。発現に使用されるプロモーターは、一般に使用され得る任意のプロモーターであり得、これには例えば、SV40初期プロモーター(Rigby in Williamson (ed.), (1982) Genetic Engineering, vol.3. Academic Press, London, 83-141)EF-αプロモーター(Kim et al., (1990) Gene 91: 217-23)、CAGプロモーター(Niwa et al., (1991) Gene 108: 193-9)、RSV LTR プロモーター(Cullen, (1987) Methods in Enzymology 152: 684-704)、SRαプロモーター(Takebe et al., (1988) Mol Cell Biol 8: 466-72)、CMV最初期プロモーター(Seed and Aruffo, (1987) Proc Natl Acad Sci USA 84: 3365-9)、SV40後期プロモーター(Gheysen and Fiers, (1982) J Mol Appl Genet 1: 385-94)、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al., (1989) Mol Cell Biol 9: 946-58)、HSV TK プロモーター等が含まれる。外来遺伝子を発現するための宿主細胞への遺伝子導入は、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション法(Chu et al., (1987) Nucleic Acids Res 15: 1311-26)、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama, (1987) Mol Cell Biol 7: 2745-52)、DEAEデキストラン法(Lopata et al., (1984) Nucleic Acids Res 12: 5707-17; Sussman and Milman, (1984) Mol Cell Biol 4: 1641-3)、リポフェクチン法(Derijard B, (1994) Cell 76: 1025-37; Lamb et al., (1993) Nature Genetics 5: 22-30: Rabindran et al., (1993) Science 259: 230-4)等によって実行され得る。マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドは、その特異性が明らかなモノクローナル抗体のエピトープをポリペプチドのN末端又はC末端に導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として発現され得る。市販されているエピトープ-抗体系が使用され得る(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。そのマルチクローニングサイトを使用して、例えば、β-ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等との融合タンパク質を発現し得るベクターが市販されている。
【0085】
そのポリペプチドの特性を融合によって変化させないよう数個から数十個のアミノ酸からなる小型のエピトープのみを導入することによって調製された融合タンパク質もまた報告されている。ポリヒスチジン(Hisタグ)、インフルエンザ凝集素HA、ヒトc-myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7タグ)、ヒト単純疱疹ウイルス糖タンパク質(HSVタグ)、Eタグ(モノクローナルファージのエピトープ)等を含むエピトープ、及びこれらを認識するモノクローナル抗体が、マーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングするためのエピトープ-抗体系として使用され得る(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
【0086】
免疫沈降において、免疫複合体は、適切な界面活性剤を用いて調製された細胞溶解物にこれらの抗体を添加することによって形成される。免疫複合体は、マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチド、このポリペプチドとの結合能力を有するポリペプチド、及び抗体からなる。免疫沈降はまた、上記エピトープに対する抗体を使用する他に、マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに対する抗体を用いて行うこともでき、そのような抗体は上述に従って調製され得る。
【0087】
抗体がマウスIgG抗体である場合、免疫複合体は、例えばプロテインAセファロース又はプロテインGセファロースによって沈降され得る。マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドがエピトープ、例えばGSTとの融合タンパク質として調製される場合、免疫複合体は、これらのエピトープに特異的に結合する物質、例えば、グルタチオン-セファロース4Bを用いることで、ポリペプチドに対する抗体を用いる場合と同じ様式で形成され得る。
【0088】
免疫沈降は、以下の通り又は例えば文献の方法(Harlow and Lane, Antibodies, 511-52, Cold Spring Harbor Laboratory publications, New York (1988) 及び Harlow and Lane, Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1998))に従って実行され得る。
【0089】
SDS-PAGEは免疫沈降させたタンパク質の分析に一般的に使用されており、結合したタンパク質は、適当濃度のゲルを用いることでそのタンパク質の分子量により分析され得る。マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに結合したタンパク質は一般的な染色法、例えば、クマシー染色又は銀染色によって検出するのが困難であるので、そのタンパク質の検出感度は、放射性同位元素35S-メチオニン又は35S-システインを含む培養培地中で細胞を培養して細胞中のタンパク質を標識し、そのタンパク質を検出することによって改善され得る。標的タンパク質は、SDS-ポリアクリルアミドゲルから直接的に精製され得、そのタンパク質の分子量が明らかな場合はその配列が決定され得る。
【0090】
マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに結合するタンパク質をこのポリペプチドを用いてスクリーニングする方法として、例えば、ウェスト-ウェスタンブロッティング分析が使用され得る(Skolnik et al., (1991) Cell 65: 83-90)。具体的には、マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに結合するタンパク質は、ファージベクター(例えば、ZAP)を用いてマーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると考えられる細胞、組織、器官(例えば、精巣若しくは卵巣を含む組織)、又は培養細胞(例えば、DMS114、DMS273、SBC-3、SBC-5、NCI-H196、及びNCI-H446)からcDNAライブラリを調製し、LBアガロース上でタンパク質を発現させ、発現したタンパク質をフィルターに固定し、精製及び標識したポリペプチドを上記フィルターと反応させ、そしてその標識に従ってマーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合したタンパク質を発現するプラークを検出することによって得ることができる。マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドは、ビオチンとアビジンとの間の結合を利用することによって、又はマーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチド、若しくはマーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに融合されたペプチド若しくはポリペプチド(例えば、GST)に特異的に結合する抗体を利用することによって標識され得る。放射性同位元素又は蛍光等を用いる方法もまた使用され得る。
【0091】
あるいは、本発明のスクリーニング方法の別の態様において、細胞を用いるツーハイブリッドシステムが使用され得る(「MATCHMAKER Two-Hybrid system」、「Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one-Hybrid system」(Clontech);「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(Stratagene)」;参考文献「Dalton and Treisman, (1992) Cell 68: 597-612.」、「Fields and Sternglanz, (1994) Trends Genet 10: 286-92」)。
【0092】
ツーハイブリッドシステムにおいては、本発明のポリペプチドを、SRF結合領域又はGAL4結合領域に融合させ、酵母細胞において発現させる。cDNAライブラリは、本発明のポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると考えられる細胞から調製され、そのライブラリは、発現される際、VP16又はGAL4転写活性化領域と融合される。次いで、cDNAライブラリを上記の酵母細胞中に導入し、このライブラリ由来のcDNAを、(本発明のポリペプチドに結合するタンパク質が酵母細胞中で発現され、これらの二つの結合がレポーター遺伝子を活性化し、陽性クローンが検出可能になった場合に、)検出された陽性クローンから単離する。cDNAによりコードされるタンパク質は、上記の単離されたcDNAを大腸菌(E.coli)に導入し、そのタンパク質を発現させることによって調製し得る。
【0093】
レポーター遺伝子として、HIS3遺伝子に加えて、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等が使用され得る。
【0094】
マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドに結合する化合物はまた、アフィニティクロマトグラフィ法を用いてスクリーニングされ得る。例えば、マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドをアフィニティカラムの担体に固定し、マーカー遺伝子によりコードされるSCLCポリペプチドに結合できるタンパク質を含む試験化合物をこのカラムに適用し得る。ここでいう試験化合物は、例えば、細胞抽出物、細胞溶解物等であり得る。試験化合物を充填した後、カラムを洗浄し、このポリペプチドに結合した化合物を調製し得る。
【0095】
試験化合物がタンパク質の場合、得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析し、その配列に基づきオリゴDNAを合成し、このタンパク質をコードするDNAを得るためにこのオリゴDNAをプローブとして用いてcDNAライブラリをスクリーニングする。
【0096】
本発明における結合化合物の検出又は定量の手段として表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサが使用され得る。このようなバイオセンサが使用される場合、本発明のポリペプチドと試験化合物との間の相互作用は、微量のポリペプチドのみを用いることで標識せずとも表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察され得る(例えば、BIAcore、Pharmacia)。従って、バイオセンサ、例えば、BIAcoreを用いることで、マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドと試験化合物との間の結合を評価することができる。
【0097】
マーカー遺伝子によりコードされる固定化したSCLCポリペプチドを、合成化学化合物、又は天然物質バンク若しくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリに曝した際に結合する分子をスクリーニングする方法、及びタンパク質だけでなくそのタンパク質に結合する化学化合物(アゴニスト及びアンタゴニストを含む)も単離するためのコンビナトリアムケミストリーに基づくハイスループット技術(Wrighton et al., (1996) Science 273: 458-64; Verdine, (1996) Nature 384: 11-3)を用いるスクリーニング方法は、当業者に周知である。
【0098】
あるいは、本発明は、以下の段階を含む、マーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のポリペプチドを用いてSCLCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する:
(a)SCLC 1〜1555からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階、及び
(c)(i)SCLC 777〜1555からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される生物学的活性と比較して抑制する化合物か、又は(ii)SCLC 1〜776からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される生物学的活性と比較して増強する化合物を選択する段階。
【0099】
本発明のスクリーニング方法において使用するポリペプチドは、マーカー遺伝子のヌクレオチド配列を用いて組換えタンパク質として得ることができる。そのポリペプチドがマーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドの生物学的活性を有する限り任意のポリペプチドがスクリーニングに使用され得る。マーカー遺伝子及びそれにコードされるポリペプチドに関する情報に基づき、当業者は、スクリーニング及び選択された生物学的活性をアッセイするための任意の適切な測定法の指標として、そのポリペプチドの任意の生物学的活性を選択することができる。
【0100】
このスクリーニングにより単離された化合物は、マーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの候補である。「アゴニスト」という用語は、そのポリペプチドに結合することによりその機能を活性化させる分子を意味する。同様に、「アンタゴニスト」という用語は、そのポリペプチドに結合することによりその機能を阻害する分子を意味する。さらに、このスクリーニングにより単離された化合物は、マーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドと分子(DNA及びタンパク質を含む)とのインビボでの相互作用を阻害又は刺激し得る。
【0101】
本発明の方法において検出される生物学的活性が細胞増殖の場合、これは、例えばマーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドを発現する細胞を調製し、その細胞を試験化合物の存在下で培養し、そして細胞増殖速度を決定すること、細胞周期を測定すること等によって、及び実施例に記載されるようにコロニー形成能を測定することによって、検出され得る。
【0102】
さらなる態様において、本発明は、SCLCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。既に詳述した通り、マーカー遺伝子の発現レベルを制御することにより、SCLCの発症及び進行を制御することができる。従って、SCLCの治療又は予防において使用され得る化合物は、その指標としてマーカー遺伝子の発現レベルを用いるスクリーニングを通じて同定され得る。本発明の文脈では、このようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含み得る:
(a)SCLC 1〜1555からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子を発現する細胞と候補化合物を接触させる段階、及び
(b)SCLC 777〜1555からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを、候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して減少させる候補化合物か、又はSCLC 1〜776からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを、候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して増加させる候補化合物を選択する段階。
【0103】
マーカー遺伝子を発現する細胞には、例えば、SCLCから樹立した細胞株が含まれ、そのような細胞は、本発明の上記スクリーニングのために使用され得る(例えば、DMS114、DMS273、SBC-3、SBC-5、NCI-H196、及びNCI-H446)。発現レベルは当業者に周知の方法により推定され得る。本スクリーニング方法において、一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを減少させる又は増強する化合物の、SCLCの治療又は予防における用途が見出される。
【0104】
あるいは、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含み得る:
(a)SCLC 1〜1555からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞と候補化合物を接触させる段階、
(b)レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階、及び
(c)一つ又は複数のマーカー遺伝子がSCLC 777〜1555からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合は、レポーター遺伝子の発現レベル又は活性レベルを、候補化合物の非存在下での発現レベルと比較して減少させる、又は一つ又は複数のマーカー遺伝子がSCLC 1〜776からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合は、レポーター遺伝子の発現レベルを、候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して増強する候補化合物を選択する段階。
【0105】
適切なレポーター遺伝子及び宿主細胞は当技術分野で周知である。本スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写調節領域を用いて調製され得る。マーカー遺伝子の転写調節領域が当業者に公知の場合、レポーター構築物は、以前の配列情報を用いて調製され得る。マーカー遺伝子の転写調節領域が同定されていない場合、転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントはマーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づきゲノムライブラリから単離され得る。
【0106】
タンパク質を結合させるのに使用され得る支持体の例には、アガロース、セルロース、及びデキストランを含む不溶性多糖類、並びにポリアクリルアミド、ポリスチレン、及びシリコンを含む合成樹脂が含まれ、好ましくは、上記材料から調製された市販のビーズ又はプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサチップ等)が使用され得る。ビーズが使用される場合、それらはカラムに充填され得る。
【0107】
タンパク質の支持体への結合は、慣用的方法、例えば化学結合及び物理的吸着によって実行され得る。あるいは、タンパク質は、そのタンパク質を特異的に認識する抗体を通じて支持体に結合され得る。さらに、タンパク質の支持体への結合は、アビジン及びビオチンによっても行われ得る。
【0108】
タンパク質間の結合は、その緩衝液がタンパク質間の結合を阻害しない限り、緩衝液中で、例えば、リン酸緩衝液及びTris緩衝液(ただしこれらに限定されない)中で行われる。
【0109】
本発明において、結合したタンパク質の検出又は定量の手段として表面プラズモン共鳴現象を利用するバイオセンサが使用され得る。このようなバイオセンサが使用される場合、タンパク質間の相互作用は、微量のポリペプチドのみを用いることで標識せずとも表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察され得る(例えば、BIAcore、Pharmacia)。
【0110】
あるいは、マーカー遺伝子によりコードされるポリペプチドは標識され得、そして結合したタンパク質の標識がその結合タンパク質を検出又は測定するのに使用され得る。具体的には、タンパク質の一方を予備標識した後、その標識したタンパク質を試験化合物の存在下でもう一方のタンパク質と接触させ、次いで洗浄後に結合したタンパク質をその標識に従って検出又は測定し得る。
【0111】
標識物質、例えば、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)及びビオチン/アビジンは、本発明の方法においてタンパク質を標識するのに使用され得る。タンパク質が放射性同位元素で標識される場合、その検出又は測定は、液体シンチレーションにより行われ得る。あるいは、酵素標識されたタンパク質は、その酵素の基質を添加して基質の酵素的変化を検出することによって、例えば吸光光度計を用いて発色を検出することによって検出又は測定され得る。さらに、標識として蛍光物質が使用される場合、結合タンパク質は蛍光光度計を用いて検出又は測定され得る。
【0112】
本発明のスクリーニング法において抗体を使用する場合、抗体は好ましくは上述の標識物質の一つで標識され、その標識物質に基づいて検出又は測定される。あるいは、マーカー遺伝子によりコードされるポリペプチド又はアクチンに対する抗体は、標識物質で標識された二次抗体で検出される一次抗体として使用され得る。さらに、本発明のスクリーニングにおいてタンパク質に結合した抗体は、プロテインGカラム又はプロテインAカラムを用いて検出又は測定され得る。
【0113】
本発明のスクリーニング方法においては、任意の試験化合物、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物発酵産物、海洋生物由来の抽出物、植物抽出物、精製タンパク質又は粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物、及び天然化合物が使用され得る。本発明において、試験化合物はまた、(1)生物学的ライブラリ、(2)アドレス指定できるよう配置された並列固相又は並列液相ライブラリ(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、(3)デコンヴォルーションを用いる合成ライブラリ法、(4)「一ビーズ一化合物(one-bead one-compound)」ライブラリ法、及び(5)アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する合成ライブラリ法を含む当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリ法における多くのアプローチのいずれかを使用して得ることができる。アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する生物学的ライブラリ法はペプチドライブラリに限定されるが、その他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、又は化合物の低分子化合物ライブラリに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12: 145-67)。分子ライブラリの合成方法の例は、当技術分野において見出され得る(DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-13; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-6; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2678-85; Cho et al. (1993) Science 261: 1303-5; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 1233-51)。化合物ライブラリは、溶液(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412-21を参照のこと)又はビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82-4)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-6)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、同第5,403,484号、及び同第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-9)若しくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249: 386-90; Devlin (1990) Science 249: 404-6; Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-82; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-10; 米国特許出願第2002103360号)として作製され得る。
【0114】
本発明のスクリーニング方法により単離された化合物は、例えば、細胞増殖性疾患、例えばSCLCに起因する疾患を治療又は予防するためにマーカー遺伝子によりコードされる一つ又は複数のSCLCポリペプチドの活性を阻害又は刺激するのに使用され得る。本発明のスクリーニング方法により獲得された化合物には、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物の構造の一部が付加、欠失、及び/又は置換により変換されている化合物が含まれる。
【0115】
SCLCを治療又は予防するための薬学的組成物
本発明は、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物のいずれかを含む、SCLCを治療又は予防するための組成物を提供する。
【0116】
本発明の方法により単離された化合物を医薬として、ヒト並びにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、及びチンパンジーを含むその他の動物に投与する場合、単離された化合物は、直接的に投与され得るか、又は公知の薬学的製剤化方法を用いて剤形に処方され得る。例えば、必要に応じて、薬物は糖衣錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、及びマイクロカプセル剤として経口摂取され得、又は水若しくは任意のその他の薬学的に許容される液体を用いる無菌溶液若しくは懸濁物の注射の形態で非経口的に投与され得る。例えば、化合物は、薬学的に許容される担体又は媒体、具体的には無菌水、生理学的食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、溶媒、保存剤、結合剤等と混合され、一般的に承認されている投薬に必要とされる単位投与形態にされ得る。このような製剤に含有される有効成分の量は、表示された範囲内の適切な投与量である。
【0117】
錠剤及びカプセル剤に混和され得る添加物の例には、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、及びアラビアゴムを含む結合剤、結晶セルロースを含む賦形剤、トウモロコシデンプン、ゼラチン、及びアルギニン酸を含む膨張剤、ステアリン酸マグネシウムを含む滑沢剤、スクロース、ラクトース、又はサッカリンを含む甘味剤、並びにペパーミント、アカモノ油(Gaultheria adenothrix oil)、及びチェリーを含む香味剤が含まれるがこれらに限定されない。単位投与形態がカプセル剤の場合、油を含む液体担体はさらに、上記成分を含み得る。注射用の無菌混合物は、注射に適した蒸留水を含む溶媒を用いて通常の投薬実施に従って調製され得る。
【0118】
生理学的食塩水、グルコース、並びにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む補助剤を含むその他の等張液は、注射用水溶液として使用され得る。これらは例えばエタノールであるアルコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含む多価アルコール、並びにポリソルベート80(商標)及びHCO-50を含む非イオン性界面活性剤を含む適切な溶解剤と組み合わせて使用され得る。
【0119】
ゴマ油又は大豆油は油性液として使用され得、安息香酸ベンジル又はベンジルアルコールと組み合わせて溶解剤として使用され得、かつリン酸緩衝液及び酢酸ナトリウム緩衝剤を含む緩衝剤、塩酸プロカインを含む鎮痛剤、ベンジルアルコール及びフェノールを含む安定剤、並びに/又は抗酸化剤と共に処方され得る。調製された注射物は適切なアンプルに充填され得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物を、例えば、動脈内注射、静脈内注射、若しくは経皮注射として、又は鼻腔内投与、経気管支投与、筋内投与、若しくは経口投与として患者に投与するために、当業者に周知の方法が使用され得る。投与の用量及び方法は、患者の体重及び年齢並びに投与方法によって変化するが、当業者は適切な投与方法を日常的に選択し得る。化合物がDNAによりコードされる場合、そのDNAは遺伝子療法のためのベクターに挿入され得、治療を行うためにそのベクターが患者に投与される。投与の用量及び方法は、患者の体重、年齢、及び症状によって変化するが、当業者はそれらを適切に選択することができる。
【0121】
例えば、本発明のタンパク質に結合してその活性を調節する化合物の用量は症状に依存するが、通常の成人(体重約60kg)に経口投与される場合の用量は一般的に、1日当たり約0.1mg〜約100mg、好ましくは1日当たり約1.0mg〜約50mg、より好ましくは1日当たり約1.0mg〜約20mgである。
【0122】
化合物が正常な成人(体重約60kg)に対して注射の形態で非経口的に投与される場合、患者、標的器官、症状、及び投与方法によってある程度の違いはあるものの、1日当たり約0.01mg〜約30mg、好ましくは1日当たり約0.1〜約20mg、より好ましくは1日当たり約0.1〜約10mgの用量を静脈内注射するのがよい。その他の動物の場合、適当な投薬量は、体重60kgに換算することによって日常的に算出され得る。
【0123】
小細胞肺癌を有する対象の予後の評価:
本発明はまた、試験細胞集団における一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の発現と、患者由来の基準細胞集団における同じSCLC関連遺伝子との発現を、広範な疾患段階にまたがり比較する段階を含む、SCLCを有する対象の予後の評価方法を提供する。試験細胞集団及び基準細胞集団における一つ又は複数のSCLC関連遺伝子の遺伝子発現を比較することにより、又は、対象由来の試験細胞集団における遺伝子発現パターンを経時的に比較することにより、対象の予後が評価され得る。
【0124】
例えば、表3に列挙される遺伝子を含む、上方制御されたSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が、正常対照における発現と比較して増加していること、又は表2に列挙される遺伝子を含む、下方制御されたSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が、正常対照における発現と比較して減少していることは、好ましくない予後を示す。逆に、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現が正常対照における発現と比較して類似することは、対象にとってより好ましい予後を示す。好ましくは、対象の予後は、表2及び3に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の遺伝子の発現プロファイルを比較することによって評価され得る。
【0125】
SCLCとNSCLCの判別
表4に列挙される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを比較することによりSCLCとNSCLCを判別する方法もまた提供される。表4に列挙される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルが、NSCLCの発現レベルと比較して増加していることは、対象がSCLCを患っていることを示す。本発明の文脈では、「NSCLCの発現レベル」という語句は、NSCLC患者由来の試料において検出される、一つ又は複数のマーカー遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質の発現レベルを意味する。いくつかの態様において、NSCLCの発現レベルは対照レベルとして役立つ。対照レベルは、単一の基準集団由来、又は複数の発現パターン由来の単一の発現パターンであり得る。例えば、対照レベルは、以前に試験されたNSCLC対照試料由来の発現パターンのデータベースであり得る。本発明において、好ましいNSCLC対照試料は、標準的な診断方法、例えば病理組織学的試験によって同定されたNSCLC組織又はNSCLC細胞であり得る。あるいは、「NSCLCの発現レベル」は、NSCLC患者由来の試料又はNSCLCを患っていることが既知の個体集団由来の試料において検出される遺伝子発現のレベルを意味する。
【0126】
化学療法抵抗性に関連する遺伝子の同定
本発明においては、進行型SCLC及び進行型NSCLCにおいて上方制御された遺伝子を同定し、化学療法感受性肺癌との比較を行った。これらの化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子は表5に列挙される(SLC 1590〜1657)。SLC 1590〜1657のうちの一つ又は複数は、SCLC及びNSCLCを含む化学療法抵抗性肺癌を決定するための診断マーカーとして有用である。
【0127】
従って、いくつかの態様において、本発明は、対象における化学療法抵抗性肺癌又は化学療法抵抗性肺癌が発症する素因の診断方法を提供する。本方法は患者由来の生物学的試料における表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含み、該試料の発現レベルが該遺伝子の対照レベルと比較して増加することが、該対象が化学療法抵抗性肺癌を患っているか又はこれを発症する危険があることを示す。本発明において、対照レベルは化学療法感受性肺癌試料から得ることができる。例えば、対照レベルは、化学療法感受性肺癌対象から得られた細胞又は組織におけるSLC 1590〜1657の発現プロファイルから決定され得る。あるいは、化学療法感受性肺癌から得られた細胞又は組織が対照試料として使用され得る。
【0128】
表5に列挙される化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子はまた、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための治療標的としても有用である。従って、本発明はさらに、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。あるいは、本発明はまた、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法を提供する。本発明において、本明細書中に記載されるSCLCに関するスクリーニング方法又は治療方法は、標的遺伝子としてSLC 1590〜1657の一つ又は複数を用いることで化学療法抵抗性肺癌に関しても適用され得る。
【0129】
例えば、本発明の治療方法は、その発現が化学療法抵抗性肺癌において異常に増加する遺伝子(「上方制御」又は「過剰発現」される遺伝子)の一つ又は複数の遺伝子産物の発現、活性、又はその両方を減少させる段階を含み得る。発現は、当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって阻害され得る。例えば、発現は、過剰発現される遺伝子若しくは遺伝子群の発現を阻害するか又はこれと拮抗する核酸、例えば、過剰発現される遺伝子若しくは遺伝子群の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチド若しくは低分子干渉RNAを対象に投与することによって阻害され得る。
【0130】
さらに、本発明において、化学療法感受性SCLCと比較して進行型SCLCにおいて上方制御された遺伝子を同定した。これらの化学療法抵抗性SCLC関連遺伝子は表6に列挙される(SCL 1658〜1663)。表6に列挙される遺伝子は、表3に列挙される上方制御された遺伝子から化学療法抵抗性SCLC関連遺伝子として選択されたものである。SCLC 1658〜1663は、化学療法抵抗性SCLC対象を決定するための診断マーカーとして有用である。
【0131】
従って、いくつかの態様において、本発明は、対象における化学療法抵抗性SCLC又は化学療法抵抗性SCLCが発症する素因の診断方法を提供する。本方法は患者由来の生物学的試料における表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含み、該試料の発現レベルが該遺伝子の対照レベルと比較して増加することは、該対象が化学療法抵抗性SCLCを患っているか又はこれを発症する危険があることを示す。本発明において、対照レベルは化学療法感受性SCLC試料から得ることができる。例えば、対照レベルは、化学療法感受性SCLC対象から得られた細胞又は組織におけるSLC 1658〜1663の発現プロファイルから決定され得る。あるいは、化学療法感受性SCLC対象から得られた細胞又は組織が、対照レベルを提供する対照試料として使用され得る。
【0132】
表6に列挙される化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子はまた、化学療法抵抗性SCLCを治療又は予防するための治療標的としても有用である。従って、本発明はさらに、化学療法抵抗性SCLCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。あるいは、本発明はまた、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法を提供する。本発明において、本明細書中に記載されるSCLCに対するスクリーニング方法又は治療方法は、標的遺伝子としてSLC 1658〜1663を用いることで化学療法抵抗性SCLCに対する方法にも適用され得る。
【0133】
キット:
本発明はまた、SCLC検出試薬、例えば、SCLC核酸の一部に相補的なオリゴヌクレオチド配列、又はSCLC核酸によりコードされる一つ又は複数のタンパク質に結合する抗体を含む一つ又は複数のSCLC核酸に特異的に結合又は同定する核酸を包含する。検出試薬は、キット形式でまとめて梱包され得る。例えば、検出試薬、例えば、核酸又は抗体(固体マトリクスに結合されたものか又はそれらをマトリクスに結合させるための試薬と別々に梱包されたもののいずれか)、対照試薬(正の対照及び/又は負の対照)、及び/又は検出用標識は、別々の容器に梱包され得る。アッセイ法を実施するための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)もまたキットに含まれ得る。キットのアッセイ形式はノーザンハイブリダイゼーション又はサンドイッチELISAであり得、これらは両方とも当技術分野で公知である。例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press;及び Harlow and Lane, Using Antibodies(前出)を参照のこと。
【0134】
例えば、SCLC検出試薬は、少なくとも一つのSCLC検出部位を形成するよう固体マトリクス、例えば多孔性細片に固定され得る。多孔性細片の測定領域又は検出領域は、各々が核酸を含む複数の部位を含み得る。試験細片はまた、負の対照及び/又は正の対照のための部位を含み得る。あるいは、対照部位は、試験細片とは別の細片に位置し得る。異なる検出部位には異なる量の固定化核酸が含まれていてもよい、すなわち、第一検出部位により多量に含まれ、それ以降の部位にはより少ない量が含まれていてもよい。試験試料を添加した際に検出可能なシグナルを示す部位の数は試料中に存在するSCLCの量の定量的な指標を提供する。検出部位はまた、任意の適当な検出形状をとることができ、典型的には試験細片全体に広がる棒状又は点状である。
【0135】
あるいは、キットは、一つ又は複数の核酸を含む核酸基質アレイを含み得る。アレイ上の核酸は、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子により表される一つ又は複数の核酸配列を特異的に同定する。表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子により表される核酸の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、又は50若しくはそれ以上の発現が、アレイ試験細片又はアレイチップへの結合レベルによって同定され得る。基質アレイは、例えば、固体基板、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,744,305号に記載される「チップ」上に設けられ得る。本発明の方法において使用するアレイ基板は、例えばAffymetrix, Santa Clara, CAから販売されている。
【0136】
アレイ及び複数性:
本発明はまた、一つ又は複数の核酸を含む核酸基質アレイを包含する。アレイ上の核酸は、具体的には、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子に相当する一つ又は複数の核酸配列に対応する。アレイに結合する核酸を検出することにより、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子に相当する核酸の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、又は50若しくはそれ以上の発現レベルが同定され得る。
【0137】
本発明はまた、単離された複数の核酸(すなわち、二種類またはそれ以上の核酸の混合物)を包含する。核酸は液相又は固相に含まれ得、例えば固体支持体、例えばニトロセルロース膜に固定され得る。複数の核酸は、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子に相当する核酸の一つ又は複数を含む。様々な態様において、複数の核酸は、表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子に相当する核酸の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、又は50若しくはそれ以上を含む。
【0138】
小細胞肺癌の抑制方法:
本発明はさらに、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現(若しくはその遺伝子産物の活性)を減少させることにより、又は表2に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の発現(若しくはその遺伝子産物の活性)を増加させることにより、対象におけるSCLCの症状を治療又は緩和する方法を提供する。適切な治療化合物は、SCLCを患っているか又はSCLCを発症する危険のある(SCLCを発症し易い)患者に対して予防的又は治療的に投与され得る。このような対象は、標準的な臨床的方法を用いて、又は表2〜3に列挙されるSCLC関連遺伝子の一つ又は複数の異常な発現レベル若しくはその遺伝子産物の異常な活性を検出することによって、同定され得る。本発明の文脈では、適切な治療剤には、例えば、細胞周期調節、細胞増殖、及びタンパク質キナーゼ活性の阻害剤が含まれる。
【0139】
本発明の治療方法は、SCLC細胞における発現が、そのSCLC細胞が採取されたのと同じ組織型の正常細胞と比べて減少している遺伝子(「下方制御」又は「過小発現」される遺伝子)の一つ又は複数の遺伝子産物の発現、活性、又はその両方を増加させる段階を含む。これらの方法において、対象は、対象において過小発現された(下方制御される)遺伝子の一つ又は複数の量を増加させる有効量の化合物で治療される。投与は全身的なものでも局所的なものでもよい。適切な治療化合物には、過小発現される遺伝子のポリペプチド産物、生物学的に活性なそれらの断片、及び過小発現される遺伝子をコードしかつSCLC細胞における発現を可能にする発現制御エレメントを有する核酸、例えばSCLC細胞に内因的なこのような遺伝子の発現レベルを増加させる(すなわち、過小発現された遺伝子又は遺伝子群の発現を上方制御する)薬剤が含まれる。このような化合物の投与は、対象の肺細胞において異常に過小発現される遺伝子又は遺伝子群の効果に対抗し、対象の臨床的状態を改善する。
【0140】
あるいは、本発明の治療方法は、その発現が肺細胞において異常に増加する遺伝子(「上方制御」又は「過剰発現」される遺伝子)の一つ又は複数の遺伝子産物の発現、活性、又はその両方を減少させる段階を含み得る。発現は当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって阻害され得る。例えば、発現は、過剰発現遺伝子又は遺伝子群の発現を阻害する又はこれと拮抗する核酸、例えば、過剰発現される遺伝子又は遺伝子群の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAを対象に投与することによって阻害され得る。
【0141】
阻害性核酸:
上記のように、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子のヌクレオチド配列に相補的な阻害性核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム)は、この遺伝子の発現レベルを減少させるために使用され得る。例えば、小細胞肺癌において上方制御された表3に列挙されるSCLC関連遺伝子に相補的な阻害性核酸は、小細胞肺癌の治療に有用である。具体的には、本発明の阻害性核酸は、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子又はそれらに対応するmRNAに結合し、それによってこれらの遺伝子の転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、及び/又は表3に列挙されるSCLC関連遺伝子によりコードされるタンパク質の発現を阻害することによってそのタンパク質の機能を阻害することにより作用し得る。本明細書中で使用する場合、「阻害性核酸」という用語は、その阻害性核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、標的配列にその全体が相補的であるヌクレオチド及び一つ又は複数のヌクレオチドのミスマッチを有するヌクレオチドの両方を包含する。本発明の阻害性核酸は、少なくとも15個の連続するヌクレオチの長さに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドを包含する。二つまたはそれ以上の核酸配列の配列同一性を決定するには、当技術分野で公知のアルゴリズムが使用され得る。
【0142】
一つの有用なアルゴリズムは、Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10に最初に記載されたBLAST 2.0である。BLAST分析を行うためのソフトウェアは米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公開され利用することができる(www.ncbi.nlm.nih.govから入手可能)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合に一致するか又はある正値の閾値スコアTを満たす、クエリ配列中の長さWの短いワードを同定することによって高スコアの配列対(HSP)を同定する。Tは隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschul et al.(前出))。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するよう検索を開始するための起点(seed)となる。次いで、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、ワードヒットは各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメータM(一致した残基の対に対する報酬スコア;常に>0)及びN(不一致の残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列について、スコア付けマトリクスは累積スコアを算出するために使用される。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大到達値からX量分減少した場合、一つ又は複数の負のスコアを付けられた残基のアラインメントの蓄積により累積スコアがゼロ若しくはそれ以下になった場合、又はいずれかの配列の終点に到達した場合に中止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、既定値としてワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ値100、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、既定値としてワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコア付けマトリクスを使用する(Henikoff& Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915を参照のこと)。
【0143】
有用な配列アラインメントアルゴリズムのさらなる例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを用いて関連する配列の一群から複数の配列アラインメントを作成する。PILEUPは、アラインメントの作成に使用されるクラスタリング関係を示す系図をプロットすることもできる。PILEUPはFeng & Doolittle, (1987) J. Mol. Evol. 35: 351-60のプログレッシブアラインメント法の簡易版を使用する。使用された方法は、Higgins & Sharp, (1989) CABIOS 5:151-3に記載された方法と類似する。このプログラムは、例えば、最長5,000文字の配列を最大300個まで整列させることができる。マルチプルアラインメントの手順は、2つの最も類似する配列のペアワイズアラインメントにより2つの整列させた配列のクラスターを生成することから開始する。次いでこのクラスターは次に最も関連する配列、又は整列配列のクラスターと整列され得る。2つの配列クラスターは、2つの個々の配列のペアワイズアラインメントの単純な拡張によって整列され得る。最後のアラインメントは、一連のプログレッシブペアワイズアラインメントによって達成される。このプログラムはまた、クラスタリング関係を表示する樹状図(dendogram)又は系図をプロットするのにも使用され得る。このプログラムは特定の配列及びそれらのアミノ酸又はヌクレオチドの座標を配列比較領域として指定することによって実行される。例えば、単量体ドメインファミリーにおいて保存されたアミノ酸を決定するために、又はファミリー内の単量体ドメインの配列を比較するために、本発明の配列又はコード核酸は構造-機能情報を提供するよう整列される。
【0144】
本発明のアンチセンス核酸は、SCLC関連マーカー遺伝子によりコードされるタンパク質を産生する細胞に対して、そのタンパク質をコードするDNA又はmRNAに結合し、それらの転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、そしてそのタンパク質の発現を阻害することによってそのタンパク質の機能を阻害することにより作用する。
【0145】
本発明のアンチセンス核酸は、その核酸に対して不活性の適当な基剤と混合することによりリニメント剤又は湿布を含む外用剤として製造され得る。
【0146】
また、必要に応じて、本発明のアンチセンス核酸は、賦形剤、等張剤、溶解剤、安定剤、保存剤、鎮痛剤等を添加することによって、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、溶液剤、点鼻剤、及び凍結乾燥剤として処方され得る。これらは以下の公知の方法によって調製され得る。
【0147】
本発明のアンチセンス核酸は、病的部位への直接塗布することによって、又は血管への注射により病的部位に到達させることによって患者に投与され得る。アンチセンス封入剤もまた、持続性及び膜透過性を向上するために使用され得る。その例にはリポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチン、又はこれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
本発明の阻害性核酸誘導体の用量は、患者の状態に基づいて適切に調整され得、望ましい用量で使用され得る。例えば、0.1〜100mg/kg、好ましくは0.1〜50mg/kgの範囲の用量が投与され得る。
【0149】
本発明のアンチセンス核酸は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、従って本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。さらに、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害剤は、それらが本発明のタンパク質の生物学的活性を阻害できるという点で有用である。
【0150】
本発明の方法は、上方制御されたSCLC関連遺伝子の細胞中での発現、例えば、細胞の悪性の形質転換から生じた上方制御を変化させるために使用され得る。標的細胞中の表3に列挙されるSCLC関連遺伝子のうちの一つに対応する転写物へのsiRNAの結合は、その細胞によるタンパク質産生を減少させる。
【0151】
本発明のアンチセンス核酸は、修飾型オリゴヌクレオチドを含む。例えば、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与するためにチオ酸化(thioated)オリゴヌクレオチドが使用され得る。
【0152】
また、マーカー遺伝子に対するsiRNAは、マーカー遺伝子の発現レベルを減少させるのに使用され得る。本明細書中、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二重鎖RNA分子を意味する。細胞にsiRNAを導入するために、DNAをRNAの転写の鋳型として用いる技術を含む標準技術が使用され得る。本発明の文脈では、siRNAはセンス核酸配列、及び表3に列挙されるSCLC関連遺伝子を含む上方制御されたマーカー遺伝子に対するアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、単一の転写物が標的遺伝子由来のセンス配列及び相補的アンチセンス配列の両方を有するよう、例えばヘアピンとして構築される。
【0153】
表3に列挙される遺伝子を含むSCLC関連遺伝子のsiRNAは、標的mRNAとハイブリダイズし、それによって通常は単鎖のmRNA転写物に結合することによって翻訳を妨害すること、つまりそのタンパク質の発現を妨害することにより、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子によりコードされるポリペプチドの産生を減少させるか又は阻害する。このようにして、本発明のsiRNA分子は、ストリンジェントな条件下で表3に列挙されるmRNA又はcDNAに特異的にハイブリダイズするそれらの能力によって規定することができる。本発明の目的上、「ハイブリダイズする」又は「特異的にハイブリダイズする」という用語は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」下でハイブリダイズする2つの核酸分子の能力を称するのに使用され得る。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、典型的には核酸の複合混合物中で核酸分子がその標的配列にハイブリダイズするが、他の配列には検出可能な程度ハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェント条件は配列依存的であり、環境が異なればそれらも異なる。より長い配列はより高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲の手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」 (1993)に見られる。一般論として、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度pHで特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低い温度となるよう選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度の下の)温度である(標的配列が過剰に存在する場合、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が消費される)。ストリンジェント条件はまた、脱安定剤、例えばホルムアミドの添加により達成され得る。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションでは、正のシグナルは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくは10倍である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は次の通りであり得る:0.2×SSC及び0.1% SDS、50℃での洗浄を行う、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1% SDS、42℃にてインキュベート、又は5×SSC、1% SDS、65℃にてインキュベート。
【0154】
本発明の文脈では、siRNAは、好ましくは500、200、100、50、又は25ヌクレオチド長未満である。より好ましくは、siRNAは約19〜約25ヌクレオチド長である。siRNAの阻害活性を増強するために、標的配列のアンチセンス鎖の3'末端に一つ又は複数のウリジン(「u」)ヌクレオチドが付加され得る。付加される「u」の数は少なくとも2個、一般的には2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で単鎖を形成する。
【0155】
表3に列挙される遺伝子を含むSCLC関連遺伝子のsiRNAは、mRNA転写物に結合することのできる形態で細胞に直接的に導入され得る。これらの態様において、本発明のsiRNA分子は、典型的にはアンチセンス分子について上述したように修飾される。その他の修飾も可能であり、例えば、コレステロール結合siRNAは、改善された薬理学的特性を示した。Song, et al., Nature Med. 9:347-51 (2003)。あるいは、siRNAをコードするDNAがベクターにより送達され得る。
【0156】
ベクターは、例えば、SCLC関連遺伝子標的配列をその配列に隣接して機能的に連結された調節配列を有する発現ベクターに、両方の鎖の(DNA分子の転写による)発現が可能な様式でクローニングすることによって生成され得る(Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20 : 500-5)。SCLC関連遺伝子のmRNAに対するアンチセンス鎖であるRNA分子は、第一プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3'側のプロモーター配列)によって転写され、SCLC関連遺伝子のmRNAに対してセンス鎖であるRNA分子は、第二プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'側のプロモーター配列)によって転写される。センス鎖及びアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズしてSCLC関連遺伝子のサイレンシングのためのsiRNA構築物を生成する。あるいは、siRNA構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖を生成させるために2つの構築物が使用され得る。クローニングされたSCLC関連遺伝子は、単一の転写物が標的配列由来のセンス配列及び相補的なアンチセンス鎖の両方を有する二次構造、例えばヘアピンを有する構築物をコードし得る。
【0157】
任意のヌクレオチド配列からなるループ配列は、ヘアピンループ構造を形成するためにセンス配列とアンチセンス配列の間に配置され得る。従って、本発明はまた、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有するsiRNAを提供する。式中、[A]は表3に列挙されるmRNA又はcDNAに特異的にハイブリダイズする配列に対応するリボヌクレオチド配列である。好ましい態様において、[A]は表3から選択される遺伝子の配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は約3〜約23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、かつ[A']は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である。領域[A]は[A']とハイブリダイズし、次いで、領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。ループ配列は、例えば、(www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.htmlに見られる)以下の配列から選択され得る。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列もまた活性なsiRNAを提供する(Jacque, J.M. et al., (2002) Nature 418 : 435-8)。CCC、CCACC、又はCCACACC:Jacque, J. M. et al., (2002) Nature, 418: 435-8。UUCG: Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20 : 500-5; Fruscoloni, P. et al., (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 1639-44。UUCAAGAGA: Dykxhoorn, D. M. et al., (2003) Nature Reviews Molecular Cell Biology 4: 457-67。
【0158】
例えば、本発明のヘアピンループ構造を有する好ましいsiRNAを以下に示す。従って、いくつかの態様において、ループ配列[B]は、CCC、UUCG、CCACC、CCACACC、及び UUCAAGAGAからなる群より選択され得る。好ましいループ配列は、UUCAAGAGA(DNA上は「ttcaagaga」)である。
【0159】
ZIC5-siRNAに関しては以下の通りである:
UCAAGCAGGAGCUCAUCUG-[B]-CAGAUGAGCUCCUGCUUGA(標的配列がSEQ ID NO:171の場合)
【0160】
適切なsiRNAのヌクレオチド配列は、www.ambion.com/techlib/ misc/siRNA_finder.htmlから入手可能なsiRNA設計用コンピュータプログラムを用いて設計され得る。このコンピュータプログラムは、以下のプロトコルに基づいてsiRNA合成用ヌクレオチド配列を選択する。
【0161】
siRNAの標的部位の選択:
1.目的の転写物のAUG開始コドンを出発点として、その下流をAAジヌクレオチド配列についてスキャンする。有用なsiRNA標的部位として各AAの出現及び3'側に隣接する19ヌクレオチドを記録する。Tuschl, et al. (1999) Genes Dev 13: 3191-7は、5'側及び3'側の非翻訳領域(UTR)並びに開始コドン付近の領域(75塩基内)に対するsiRNAを設計するのは、これらの領域が調節タンパク質結合部位に豊富に存在し得るという理由で推奨しない。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合と干渉し得る。
【0162】
2.標的部位とヒトゲノムデータベースとを比較し、他のコード配列と有意な配列同一性を有するあらゆる標的配列を検討から外す。配列同一性調査は、NCBIサーバ、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/において見出され得るBLAST(Altschul SF, et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-402; (1990) J Mol Biol. 215(3):403-10)を用いて実行され得る。
【0163】
3.合成に適した標的配列を選択する。Ambionアルゴリズムを用いて、好ましくは数個の標的配列が評価する遺伝子に沿って選択され得る。
【0164】
標的配列、例えばSEQ ID NO:171のヌクレオチドの核酸配列を含む単離された核酸分子、又はSEQ ID NO:171のヌクレオチドの核酸配列に相補的な核酸分子もまた本発明に包含される。本明細書中で使用する場合、「単離された核酸」は、その本来の環境(例えば、天然に存在する場合はその天然環境)から取り出された核酸分子であり、従って、その天然の状態から合成的に変更された核酸分子である。本発明において、単離された核酸には、DNA、RNA、及びそれらの誘導体が含まれる。単離された核酸がRNA又はその誘導体である場合、塩基「t」はそのヌクレオチド配列において「u」で置換される。本明細書中で使用する場合、「相補的」という用語は、核酸分子のヌクレオチド単位間のワトソン-クリック型塩基対又はフーグスティーン型塩基対を意味し、「結合」という用語は、2つの核酸若しくは化合物又は関連する核酸若しくは化合物又はその組み合わせの間の物理的又は化学的相互作用を意味する。相補的核酸配列は適切な条件下でハイブリダイズし、数個の不一致を含む又は不一致を含まない安定な二重鎖複合体(duplex)を形成する。本発明の目的上、5個又はそれ未満の不一致を有する2つの配列は相補的であるとされる。さらに、本発明の単離されたヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションにより二重鎖ヌクレオチド又はヘアピンループ構造を形成し得る。好ましい態様において、このような二重鎖複合体は、10の一致につき1以下の不一致を含む。特に好ましい態様において、二重鎖複合体の鎖は完全に相補的であり、そのような二重鎖複合体は不一致を含まない。ZIC5に対する核酸分子は4612ヌクレオチド長未満である。例えば、核酸分子は、約500未満、約200未満、又は約75ヌクレオチド長未満である。本明細書中に記載される核酸の一つ又は複数を含むベクター及びそのベクターを含む細胞もまた、本発明に包含される。本発明の単離された核酸は、ZIC5に対するsiRNA、又はこのsiRNAをコードするDNAにとって有用である。核酸がsiRNA用又はそのコードDNA用に使用される場合、センス鎖は好ましくは約19ヌクレオチドよりも長く、より好ましくは21ヌクレオチドよりも長い。
【0165】
本発明は、ZIC5をコードする遺伝子が非癌性肺細胞と比較して小細胞肺癌(SCLC)において過剰発現されるという発見に一部基づく。ZIC5のcDNAは4612ヌクレオチド長である。ZIC5の核酸配列及びポリペプチド配列はSEQ ID NO:175及び176に示される。
【0166】
SEQ ID NO:171を含むsiRNAのトランスフェクションは、SCLC細胞株の成長阻害をもたらす。ZIC5は、ノーザンブロット分析及びsiRNA実験により実証されるように、SCLCにおいて上方制御された遺伝子として同定され、大部分のSCLCにおいて活性化される癌精巣抗原であり、かつ細胞の成長/生存において中心的な役割を担う。この遺伝子は、5つのC2H2 ZNFドメインを含む663アミノ酸のタンパク質をコードする。この分子は構造的には、核酸結合性亜鉛イオン結合タンパク質である。
【0167】
siRNA組成物の構造:
本発明はまた、ZIC5の発現を阻害することによる、細胞成長、すなわち癌細胞成長の阻害方法を提供する。ZIC5の発現は、例えば、ZIC5遺伝子を特異的に標的とする一つ又は複数の低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドによって阻害される。ZIC5標的には、例えば、SEQ ID NO:171のヌクレオチドが含まれる。
【0168】
SCLC関連遺伝子配列に隣接する調節配列は、それらの発現が個別に調節され得るように、又は時間的若しくは空間的様式で調節され得るように、同一であっても異なってもよい。siRNAは、例えば、核内低分子RNA(snRNA)U6、又はヒトH1 RNAプロモーター由来のRNAポリメラーゼIII転写ユニットを含むベクターに、それぞれ、SCLC関連遺伝子の鋳型をクローニングすることによって細胞内で転写される。このベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション促進剤が使用され得る。FuGENE(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、及びNucleofector(Wako pure Chemical)がトランスフェクション促進剤として有用である。
【0169】
ZIC5 mRNAの様々な部分に相補的なオリゴヌクレオチドを、標準的な方法に従い、(例えば、肺癌細胞株、例えば、小細胞肺癌(SCLC)細胞株を用いて)腫瘍細胞におけるZIC5の産生を減少させる能力についてインビトロで試験した。候補siRNA組成物と接触させた細胞におけるZIC5遺伝子産物が、候補組成物の非存在下で培養された細胞と比較して減少することは、ZIC5の特異的抗体又はその他の検出ストラテジーを用いて検出する。次いで、インビトロでの細胞系アッセイ又は無細胞アッセイにおいてZIC5の産生を減少させた配列を細胞成長に対する阻害効果について試験する。インビトロでの細胞系アッセイにおいて細胞成長を阻害した配列をラット又はマウスにおいてインビボで試験し、悪性新生物を有する動物においてZIC5産生が減少し、腫瘍細胞成長が減少することを確認する。
【0170】
悪性腫瘍の治療方法
ZIC5の過剰発現により特徴付けられる腫瘍を有する患者は、ZIC5のsiRNAを投与することによって治療される。siRNA療法は、例えば、小細胞肺癌(SCLC)を患っているか又はそれを発症する危険がある患者におけるZIC5の発現を阻害するために使用され得る。このような患者は、特定の腫瘍型についての標準的方法により同定される。小細胞肺癌(SCLC)は、例えば、コンピュータ連動断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)、磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)、又は超音波法によって診断される。治療は、その治療が対象におけるZIC5の発現の減少、又は腫瘍のサイズ、有病率、若しくは転移能の減少を含む臨床上の利益をもたらす場合に有効である。治療が予防的に適用される場合、「有効」は、その治療により腫瘍の形成が遅らされるか若しくは抑止されること、又は腫瘍の臨床的症状が抑止若しくは緩和されることを意味する。有効性は、特定の腫瘍型を診断又は治療するための任意の公知の方法と組み合わせて決定される。Harrison's Principles of Internal Medicine, Kasper, et al., eds, 2005, McGraw-Hillを参照のこと。
【0171】
siRNA療法は、本発明のsiRNAをコードする標準的なベクターによって、及び/又は遺伝子送達系によって、例えば、合成性siRNA分子を送達することによって、一つ又は複数のsiRNAオリゴヌクレオチドを患者に投与することにより行われる。典型的には、合成性siRNA分子は、インビボでのヌクレアーゼによる分解を防止するために化学的に安定化される。化学的に安定化されたRNA分子の調製方法は、当技術分野で周知である。典型的には、このような分子は、リボヌクレアーゼの作用を妨げるよう修飾された骨格及びヌクレオチドを含む。他の修飾も可能であり、例えば、コレステロール結合siRNAは、改善された薬理学的特性を示した(Song et al., (2003) Nature Med. 9:347-51)。その中でも特に、適切な遺伝子送達系には、リポソーム、受容体媒介送達系、又は疱疹ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクターが含まれ得る。治療用核酸組成物は、薬学的に許容される担体に処方される。治療組成物はまた、上述のような遺伝子送達系を含み得る。薬学的に許容される担体は、動物への投与に適した生物学的に適合する媒体、例えば、生理学的食塩水である。化合物の治療有効量は、治療対象において医学的に望ましい結果、例えばZIC5遺伝子産物の産生の減少、例えば増殖などの細胞の成長の減少、又は腫瘍の成長の減少を生じることのできる量である。
【0172】
静脈内、皮下、筋肉内、及び腹腔内送達経路を含む非経口投与は、ZIC5のsiRNA組成物を送達するのに使用され得る。肺腫瘍の治療については、肺動脈への直接注入が有用である。
【0173】
任意の一人の患者に対する用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の核酸、性別、投与時間及び投与経路、全般的な健康、並びに同時に投与される他の薬物を含む多くの要因に依存する。核酸の静脈内投与のための用量は、およそ106〜1022コピーの核酸分子である。
【0174】
ポリヌクレオチドは、標準的方法によって、例えば、例として筋肉又は皮膚である組織の間質空間への注射、循環若しくは体腔への導入によって、又は吸入若しくは吹入によって投与される。ポリヌクレオチドは注射されるか、又はそれ以外では水性若しくは部分的に水性の薬学的に許容される液体担体と共に動物に送達される。ポリヌクレオチドは、リポソーム(例えば、カチオン性リポソーム又はアニオン性リポソーム)と組み合わされる。ポリヌクレオチドは標的細胞による発現に必要な遺伝子情報、例えばプロモーターを含む。
【0175】
本発明の阻害性オリゴヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの一つ又は複数の発現を阻害し、従って本発明のポリペプチドの一つ又は複数の生物学的活性を抑制するのに有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む発現阻害剤は、それらが本発明のポリペプチドの一つ又は複数の生物学的活性を阻害し得る点で有用である。従って、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAの一つ又は複数を含む組成物は、小細胞肺癌を治療するのに有用である。
【0176】
抗体:
あるいは、SCLCにおいて過剰発現される遺伝子の一つ又は複数の遺伝子産物の機能は、遺伝子産物に結合するかそうでなければその機能を阻害する化合物を投与することによって阻害され得る。例えば、この化合物は、過剰発現される遺伝子産物又は遺伝子産物群に結合する抗体である。
【0177】
本発明は、抗体、特に上方制御されたマーカー遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体、又はそのような抗体の断片の使用に言及する。本明細書中で使用する場合、「抗体」という用語は、その抗体を合成するのに使用された抗原(すなわち、上方制御されたマーカーの遺伝子産物)又はそれと密接に関連する抗原とのみ相互作用(すなわち、結合)する、特異的な構造を有する免疫グロブリン分子を意味する。さらに、抗体は、マーカー遺伝子によりコードされるタンパク質の一つ又は複数に結合する限り、抗体の断片又は修飾された抗体であり得る。例として、抗体断片は、Fab、F(ab')2、Fv、又はH鎖及びL鎖由来のFv断片が適切なリンカーで連結された単鎖Fv(scFv)であり得る(Huston J. S. et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-83)。より具体的には、抗体断片は、パパイン又はペプシンを含む酵素で抗体を処理することによって作製され得る。あるいは、抗体断片をコードする遺伝子が構築され、発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主細胞中で発現され得る(例えば、Co M. S. et al., (1994) J. Immunol. 152:2968-76; Better M. and Horwitz A. H. (1989) Methods Enzymol. 178:476-96; Pluckthun A. and Skerra A. (1989) Methods Enzymol. 178:497-515; Lamoyi E. (1986) Methods Enzymol. 121:652-63; Rousseaux J. et al., (1986) Methods Enzymol. 121:663-9; Bird R. E. and Walker B. W. (1991) Trends Biotechnol. 9:132-7を参照のこと)。
【0178】
抗体は、多種の分子、例えばポリエチレングリコール(PEG)との結合により修飾され得る。本発明はこのような修飾された抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。このような修飾方法は当技術分野において慣習的である。
【0179】
あるいは、抗体は、非ヒト抗体由来の可変領域及びヒト抗体由来の定常領域を有するキメラ抗体、又は非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)及び定常領域を含むヒト化抗体を含み得る。このような抗体は、公知技術を使用して調製され得る。ヒト化は、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって実行され得る(例えば、Verhoeyen et al., (1988) Science 239:1534-6を参照のこと)。従って、このようなヒト化抗体は、実質的に一つ未満の完全なヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である。
【0180】
ヒトフレームワーク領域及びヒト定常領域に加えてヒト可変領域を含む完全ヒト抗体もまた使用され得る。このような抗体は、当技術分野で公知の多種の技術を用いて製造され得る。例えば、インビトロ法は、バクテリオファージ表面に呈示されたヒト抗体断片の組換えライブラリを使用する(例えば、Hoogenboom & Winter, (1992) J. Mol. Biol. 227:381-8)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内在性の免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウスに導入することによって作製され得る。このアプローチについては、例えば、米国特許第6,150,584号、同第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号に記載される。このような抗体は公知技術を用いて調製され得る。
【0181】
癌細胞において生じた特定の分子的変化を標的とする癌療法は、抗癌薬、例えば、進行乳癌の治療のためのトラスツズマブ(Herceptin)、慢性骨髄性白血病のためのメチル化イマチニブ(Gleevec)、非小細胞肺癌(NSCLC)のためのゲフィチニブ(Iressa)、並びにB細胞リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫のためのリツキシマブ(抗CD20 mAb)の臨床的開発及び承認申請を通じて実証された(Ciardiello F and Tortora G. (2001) Clin Cancer Res.;7:2958-70. Review; Slamon DJ et al., (2001) N Engl J Med;344:783-92; Rehwald U et al., (2003) Blood;101:420-4; Fang G, et al. (2000). Blood, 96, 2246-53)。これらの薬物は、形質転換した細胞のみを標的とするため、従来の抗癌剤よりも臨床的に効果的であり許容性が良い。従って、このような薬物は癌患者の生存率及び生活水準を改善するだけでなく、分子レベルの標的化癌療法の概念をも実証する。さらに、標的化薬物は、標準的な化学療法と併用された場合にその効果を増強し得る(Gianni L. (2002) Oncology, 63 Suppl 1, 47-56; Klejman A, et al. (2002). Oncogene, 21, 5868-76)。従って、将来的に癌治療は、従来の薬物と、腫瘍細胞の異なる特徴、例えば、血管新生及び侵襲性を対象とする標的特異的薬剤との組み合わせにより行われると考えられる。
【0182】
これらの調節方法は、エクスビボ若しくはインビトロで(例えば、細胞を薬剤と共に培養することによって)、あるいはインビボで(例えば、対象に薬剤を投与することによって)行われ得る。本法は、示差的に発現される遺伝子の異常な発現又はそれらの遺伝子産物の異常な活性を相殺するための療法として、タンパク質若しくはタンパク質の組み合わせ、又は核酸分子若しくは核酸分子の組み合わせの投与を含む。
【0183】
遺伝子及び遺伝子産物の、それぞれの発現レベル又は生物学的活性が(疾患又は障害を患っていない対象と比較して)増加したことにより特徴付けられる疾患及び障害は、過剰発現される遺伝子又は遺伝子群の活性と拮抗する(すなわち、減少させる又は阻害する)治療剤で治療され得る。活性と拮抗する治療剤は、治療的又は予防的に投与され得る。
【0184】
従って、本発明の文脈で使用され得る治療剤は、例えば、(i)過剰発現若しくは過小発現される遺伝子若しくは遺伝子群のポリペプチド、又はそれらのアナログ、誘導体、断片、若しくはホモログ、(ii)過剰発現される遺伝子若しくは遺伝子産物に対する抗体、(iii)過剰発現若しくは過小発現される遺伝子若しくは遺伝子群をコードする核酸、(iv)「機能障害性」の(すなわち、一つ又は複数の過剰発現される遺伝子若しくは遺伝子群の核酸への異種的挿入に起因して機能障害性である)アンチセンス核酸若しくは核酸、(v)低分子干渉RNA(siRNA)、又は(vi)調節因子(すなわち、過剰発現若しくは過小発現されるポリペプチドとその結合相手との間の相互作用を変化させる阻害剤、アゴニスト、及びアンタゴニスト)を含む。機能障害性アンチセンス分子は、相同組換えによってポリペプチドの内因的機能を「ノックアウト」するために使用される(例えば、Capecchi, (1989) Science 244: 1288-92を参照のこと)。
【0185】
生物学的活性の(その疾患又は障害を患っていない対象と比較した)減少により特徴付けられる疾患及び障害は、活性を増加させる(すなわちその活性に対するアゴニストである)治療剤を用いて治療され得る。活性を上方制御する治療剤は、治療的又は予防的な様式で投与され得る。使用され得る治療剤には、ポリペプチド(又はそのアナログ、誘導体、断片、若しくはホモログ)又は生物学的利用能を向上させるアゴニストが含まれるがこれらに限定されない。
【0186】
増加又は減少したレベルは、患者の組織試料を(例えば、生検組織から)得、これをインビトロでRNA若しくはペプチドのレベル、発現されたペプチド(若しくは発現が変化した遺伝子のmRNA)の構造及び/又は活性についてアッセイすることによりペプチド及び/又はRNAを定量することによって容易に検出され得る。当技術分野で周知の方法には、免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット分析、免疫沈降及びその後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミド電気泳動、免疫細胞化学的方法等によるアッセイ)及び/又はmRNAの発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0187】
予防的投与は、疾患の臨床的症状がはっきりと顕れる前に、疾患又は障害が抑止されるかあるいはその進行が遅延するよう行われる。
【0188】
本発明の治療的方法は、示差的に発現される遺伝子の遺伝子産物の活性の一つ又は複数を調節する薬剤と細胞を接触させる段階を含み得る。タンパク質の活性を調節する薬剤の例には、核酸、タンパク質、そのようなタンパク質の天然同族リガンド、ペプチド、ペプチド模倣物、及びその他の低分子が含まれるがこれらに限定されない。例えば、適切な薬剤は、一つ又は複数の示差的に過小発現される遺伝子の一つ又は複数のタンパク質の活性を刺激し得る。
【0189】
小細胞肺癌に対するワクチン接種:
本発明はまた、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の核酸(すなわち、上方制御された遺伝子)によりコードされる一つ又は複数のポリペプチド、そのポリペプチドの免疫学的に活性な断片(すなわち、エピトープ)、又はそのようなポリペプチド若しくはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法に関する。一つ又は複数のポリペプチドの投与は、対象における抗腫瘍免疫を誘導する。抗腫瘍免疫を誘導するため、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の核酸によりコードされる一つ又は複数のポリペプチド、そのポリペプチドの免疫学的に活性な断片、又はそのようなポリペプチド若しくはその断片をコードするポリヌクレオチドがそれを必要とする対象に投与される。ポリペプチド又は免疫学的に活性なその断片は、SCLCに対するワクチンとして有用である。いくつかの場合において、タンパク質又はその断片は、T細胞受容体(TCR)に結合された形態、又はマクロファージ、樹状細胞(DC)、若しくはB細胞を含む抗原提示細胞(APC)により提示される形態で投与され得る。DCは抗原提示能が強いため、APCの中でもDCの使用が最も好ましい。
【0190】
免疫学的に活性な断片(すなわち、エピトープ)の同定は、当技術分野で周知である。B細胞エピトープは、隣接するアミノ酸又はタンパク質の三次的フォールディングによって並列する隣接しないアミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝されても維持されるが、三次的フォールディングにより形成される(すなわち、立体配座により決定する)エピトープは、典型的には、変性溶媒処理により失われる。エピトープは典型的には、固有の空間的立体配座の中に少なくとも3、通常は少なくとも5又は8〜10のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体配座を決定する方法には、例えば、X線結晶構造解析法及び二次元核磁気共鳴法が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed. (1996)を参照のこと。同じエピトープを認識する抗体は、一方の抗体が標的抗原に対する別の抗体の結合を遮断する能力を有することを示す簡単な免疫アッセイ(例えば、競合的ELISA又は固相放射免疫測定法(SPRIA))によって同定され得る。T細胞は、CD8細胞については約9アミノ酸、又はCD4細胞については約13〜15アミノ酸の隣接するエピトープを認識する。そのエピトープを認識するT細胞は、エピトープに反応して刺激されたT細胞による3H-チミジン取り込みにより(Burke et al., J. Inf. Dis. 170, 1110-9 (1994))、抗原依存的な殺傷により(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tigges et al., J. Immunol. (1996) 156:3901-10)、又はサイトカインの分泌により決定される抗原依存的増殖を測定するインビトロアッセイにより同定され得る。免疫原性エピトープの決定方法は、例えば、Reineke, et al., Curr Top Microbiol Immunol (1999) 243:23-36; Mahler, et al., Clin Immunol (2003) 107:65-79; Anthony and Lehmann, Methods (2003) 29:260-9; Parker and Tomer, Methods Mol Biol (2000) 146:185-201; DeLisser, Methods Mol Biol (1999) 96:11-20; Van de Water, et al., Clin Immunol Immunopathol (1997) 85:229-35; Carter, Methods Mol Biol (1994) 36:207-23; 及びPettersson, Mol Biol Rep (1992) 16:149-53に記載される。
【0191】
本発明において、SCLCに対するワクチンは、動物に接種した場合に抗腫瘍免疫を誘導する能力を有する物質を意味する。本発明によれば、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子によりコードされるポリペプチド、又はそれらの断片は、表3に列挙されるSCLC関連遺伝子を発現するSCLC細胞に対する強力かつ特異的な免疫反応を誘導し得るHLA-A24又はHLA-A*0201拘束エピトープペプチドである。従って、本発明はまた、本ポリペプチドを用いる抗腫瘍免疫の誘導方法を包含する。一般的に、抗腫瘍免疫には、以下のような免疫反応が含まれる:
− 腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
− 腫瘍を認識する抗体の誘導、及び
− 抗腫瘍性サイトカイン産生の誘導。
【0192】
従って、あるタンパク質が動物に接種された際にこれらの免疫反応のいずれか一つを誘導する場合、そのタンパク質は抗腫瘍免疫誘導効果を有することが決定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、インビボ又はインビトロでそのタンパク質に対する宿主免疫系の反応を観察することによって検出され得る。
【0193】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球誘導の検出方法は周知である。具体的には、生体に侵入する外来物質は抗原提示細胞(APC)の作用によりT細胞及びB細胞に提示される。抗原特異的様式でAPCによって提示された抗原に反応したT細胞は、その抗原による刺激により細胞傷害性T細胞(又は細胞傷害性Tリンパ球;CTL)へと分化して、増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。従って、あるペプチドによるCTLの誘導は、そのペプチドをAPCを通じてT細胞に提示し、CTLの誘導を検出することによって評価され得る。さらに、APCは、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する効果を有する。CD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞もまた、抗腫瘍免疫に重要であるので、そのペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価され得る。Coligan, Current Protocols in Immunology(前出)を参照のこと。
【0194】
APCとして樹状細胞(DC)を用いるCTLの誘導作用の評価方法が当技術分野で周知である。DCは、APCの中でも強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。本方法において、試験ポリペプチドはまずDCと接触させ、次いでDCをT細胞と接触させる。DCとの接触後に関心対象の細胞に対する細胞傷害性効果を有するT細胞が検出されることは、試験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することを示す。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr-標識腫瘍細胞の溶解物を指標として用いて検出され得る。あるいは、3H-チミジン取込み活性又はLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法もまた周知である。
【0195】
DC以外に、末梢血単核細胞(PBMC)もまたAPCとして使用され得る。GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することによってCTLの誘導が増強されることが報告されている。同様にCTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0196】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性化効果及びそれに続くCTL誘導活性を有するポリペプチドであるとみなされる。従って、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、本ポリペプチドとの接触を通じて腫瘍に対するCTLを誘導する能力を獲得したAPCもまた、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、APCによる本ポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもまた、腫瘍に対するワクチンとして使用され得る。APC及びCTLによる抗腫瘍免疫を用いる、このような腫瘍の治療的方法は、細胞免疫療法と称される。
【0197】
一般的に、細胞免疫療法にポリペプチドを用いる場合、そのCTL誘導の効果は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせてそれらをDCと接触させることによって向上することが公知である。従って、タンパク質断片でDCを刺激する場合、複数の種類の断片の混合物を使用することが有利である。
【0198】
あるいは、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認され得る。例えば、ポリペプチドに対する抗体がそのポリペプチドで免疫した実験動物において誘導される場合、及び腫瘍細胞の成長がこれらの抗体によって抑制される場合、そのポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導する能力を有するとみなされる。
【0199】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導によりSCLCの治療又は予防が可能になる。癌に対する治療又は癌の発現の予防は、癌性細胞の成長の阻害、癌の退縮、及び癌の発生の抑制を含む段階のいずれかを含む。癌を有する個体の死亡率及び罹患率の減少、血液中の腫瘍マーカーレベルの減少、癌に付随する検出可能な症状の軽減等もまた、癌の治療又は予防に含まれる。このような治療的効果及び予防的効果は、統計的に有意であることが好ましい。例えば、細胞増殖性疾患に対するワクチンの治療的効果又は予防的効果を、ワクチンを投与しない対照と比較した場合、観察における有意水準は5%以下である。例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーのU検定、又はANOVAが統計分析に使用され得る。
【0200】
免疫学的活性を有する上記タンパク質又はそのタンパク質をコードするベクターは、アジュバントと組み合わされ得る。アジュバントは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(又は連続して)投与された場合にそのタンパク質に対する免疫反応を増強する化合物を意味する。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるがこれらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは薬学的に許容される担体と適当に組み合わされ得る。このような担体の例には、無菌水、生理学的食塩水、リン酸緩衝液、培養液等が含まれる。さらに、ワクチンは、必要に応じて、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を含有し得る。ワクチンは全身投与、又は、例えば皮内経路、筋肉内経路、皮下経路、経皮経路、口腔投与、若しくは鼻腔内投与を通じて局所投与され得る。ワクチン投与は、一回の投与によって行ってもよく、または、複数回の投与によって追加免疫してもよい。
【0201】
本発明のワクチンとしてAPC又はCTLを用いる場合、腫瘍は、例えば、エクスビボ方法によって治療又は予防され得る。より具体的には、治療又は予防を受ける対象のPBMCが採取され、その細胞がエクスビボでポリペプチドと接触させられ、その後、APC又はCTLの誘導後に、その細胞が対象に投与され得る。APCはまた、そのポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導され得る。インビトロで誘導されたAPC又はCTLは投与前にクローニングされ得る。高い標的細胞損傷活性を有する細胞をクローニングし成長させることによって、細胞免疫療法はより効果的に実施され得る。さらに、この様式で単離されたAPC及びCTLは、その細胞を採取した個体に対する細胞免疫療法だけでなく、他の個体の類似型の腫瘍に対する細胞免疫療法にも使用され得る。
【0202】
ワクチンを開発する一般的な方法は、例えば、Vaccine Protocols, Robinson and Cranage, Eds., 2003, Humana Press; Marshall, Vaccine Handbook: A Practical Guide for Clinicians, 2003, Lippincott Williams & Wilkins;及び Vaccine Delivery Strategies, Dietrich, et al., Eds., 2003, Springer Verlagに記載される。
【0203】
SCLCを阻害するための薬学的組成物:
さらに、薬学的有効量の本発明のポリペプチドを含む、例えばSCLCなどの癌を含む細胞増殖性疾患を治療又は予防するための薬学的組成物が提供される。この薬学的組成物は抗腫瘍免疫を惹起するのに使用され得る。
【0204】
本発明の文脈では、適当な薬学的処方には、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(口腔投与及び舌下投与を含む)、膣投与若しくは非経口投与(筋内投与、皮下投与、及び静脈内投与を含む)に適した処方、又は吸入若しくは吹入による投与に適した処方が含まれる。好ましくは、投与は静脈内投与である。処方物は、別個の投与単位として梱包されていてもよい。
【0205】
経口投与に適した薬学的処方物には、各々所定の量の有効成分を含有する、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤が含まれる。適切な処方物には、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、及び乳化剤も含まれる。有効成分は、ボーラス状の舐剤又はペースト剤として投与してもよい。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、及び/又は湿潤剤を含む従来的な賦形剤を含み得る。錠剤は、任意で一つ又は複数の製剤成分と合わせて圧縮又は成型することによって製造され得る。圧縮錠剤は、任意で結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、及び/又は分散剤と混合された、粉末状又は顆粒状を含む流動状の有効成分を適当な機械で圧縮することにより調製され得る。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成型することにより製造され得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。経口用液体製剤は、例えば、水性又は油性の懸濁物、溶液、乳濁液、シロップ、若しくはエリキシルの形態であり得、又は使用前の水若しくはその他の適当な溶媒と供に構成される乾燥製品として製造され得る。このような液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性溶媒(食用油を含み得る)、及び/又は保存剤を含む慣習的な添加物を含み得る。錠剤は、それに含まれる有効成分の遅延放出又は徐放を提供するよう処方されていてもよい。錠剤の梱包品は、月に一度ずつ服用される錠剤を含み得る。
【0206】
非経口投与に適した処方物には、任意で抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び対象の受容者の血液との等張性をその処方物に与える溶質を含有する、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに懸濁剤及び/又は増粘剤を含む水性及び非水性の無菌懸濁物が含まれる。処方物は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルとして製造され得、フリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存され得、使用直前に無菌液体担体、例えば、生理学的食塩水、注射用水を添加することのみを必要とする。あるいは、処方物は、連続注入用に製造され得る。即時注射溶液及び懸濁物は、上記の種類の無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0207】
直腸投与に適した処方には、カカオ脂又はポリエチレングリコールを含む標準的な担体を含む坐剤が含まれる。口内、例えば口腔内又は舌下への局所投与に適した処方物には、スクロース及びアカシア又はトラガカントを含む芳香基剤中に有効成分を含むトローチ剤、並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアを含む基剤中に有効成分を含む香錠が含まれる。鼻腔内投与のために、本発明の化合物は、液体噴霧剤、分散性粉末剤として、又は液滴の形態で使用され得る。液滴は、一つ又は複数の分散剤、溶解剤、及び/又は懸濁剤も含む水性又は非水性の基剤と共に処方され得る。
【0208】
吸入による投与のために、化合物は、注入器、噴霧器、圧縮パック(pressurized packs)、又はエアゾール噴霧を送達するその他の従来的手段から好都合に送達され得る。圧縮パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切な気体を含む適切な噴射剤を含み得る。圧縮エアゾール剤の場合、投与単位は、計量した量を送達する弁を提供することにより決定され得る。
【0209】
あるいは、吸入又は吹入による投与のために、化合物は、乾燥粉末組成物の形態、例えば、化合物と適切な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンとの粉末混合物の形態をとり得る。粉末組成物は、その粉末が吸入器又は注入器を用いて投与され得る単位投与形態、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチンパック、又はブリスターパックとして製造され得る。
【0210】
その他の処方物には、治療剤を放出する移植デバイス及び接着パッチが含まれる。
【0211】
所望するならば、有効成分を徐放するよう適合された上記製剤が使用され得る。薬学的処方物はまた、抗菌剤、免疫抑制剤、及び/又は保存剤を含むその他の有効成分を含有し得る。
【0212】
本発明の処方物は、具体的に上述した成分に加えて、その処方の種類に関して当技術分野で慣習的な他の薬剤も含み得ることが理解されるべきである。例えば、経口投与に適した処方物は、香味剤を含み得る。
【0213】
好ましい単位投与処方物は、有効成分の後述の有効用量又はその適当な画分を含有する。
【0214】
上述の条件の各々について、組成物、例えば、ポリペプチド及び有機化合物は、一日当たり約0.1〜約250mg/kgの用量範囲で経口投与又は注射によって投与され得る。成人の用量範囲は一般的に、約5mg〜約17.5g/日、好ましくは約5mg〜約10g/日、および最も好ましくは約100mg〜約3g/日である。錠剤又は別個の単位で提供されるその他の単位投与形態は、適宜、その用量で効果がある量か、又は例えば、約5mg〜約500mg、通常約100mg〜約500mgを含む同じ単位が複数あることで効果がある量を含み得る。
【0215】
使用される用量は、対象の年齢及び性別、治療される正確な障害、並びにその重篤度を含む多くの要因に依存する。投与経路もまた、その状態及び重篤度に依存して変化し得る。いずれにしても、適切かつ最適な用量は、当業者によって、上述の要因を考慮した上で日常的に算出され得る。
【0216】
以下の実施例には本発明の局面が記載されるが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することを意図していない。以下の実施例はSCLC細胞において示差的に発現される遺伝子の同定及び特徴付けについて解説する。
【0217】
実施例
材料及び方法
細胞株
本実施例において使用したヒトSCLC細胞株は、以下の通りであった:DMS114, DMS273、SBC-3、SBC-5、NCI-H196、及びNCI-H446。全ての細胞は、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充した適当な培地中で単層培養し、5%のCO2を含む加湿雰囲気下、37℃で維持した。
【0218】
患者及び組織試料
進行型SCLC組織試料(IV期)は死後検体(15人分)からインフォームドコンセントの下で入手した。本研究及び全ての臨床的材料の使用は独立機関たる倫理委員会により承認された。全ての癌組織は、病理学者により組織学的にSCLCであることが確認された。患者のプロファイルは医療記録から得た。病理学的病期は、Union Internationale Contre le Cancerの分類(Travis WD et al., World Health Organization International Histological classification of tumours 1999)に従って決定した。臨床病期は、Veterans Administration Lung Study Groupにより導入された病期分類系(Zelen M, (1973) Cancer Chemother Rep 3; 4:31-42)に従って決定した。15症例のうちの14症例は化学療法により治療された。全ての試料を直ちに凍結し、TissueTek OCT培地(Sakura, Tokyo, Japan)に包埋し、マイクロアレイ分析で使用するまで-80℃で保存した。
【0219】
レーザーマイクロビームマイクロダイセクション、RNA抽出、及びT7に基づくRNA増幅
レーザーマイクロビームマイクロダイセクションを用いて保存した試料から癌細胞を選択的に採取した(Kakiuchi S et al., Hum Mol Genet. 2004; 13(24):3029-43 及び Mol Cancer Res. 2003;1(7):485-99)。RNAの質を検査するため、各症例の残留組織から抽出した総RNAを、変性アガロースゲル下で電気泳動し、リボソームRNAのバンドの存在によりそれらの質を確認した。総RNAの抽出及びT7に基づく増幅は、以前に記載された通りに行った(Kakiuchi S et al., (2004) Hum Mol Genet.;13:3029-43 及び (2003) Mol Cancer Res. 2003;1:485-99)。対照プローブとして、正常なヒト肺のポリ(A)RNA(CLONTECH)を同じ方法で増幅し、各癌性組織及び対照から増幅したRNA(aRNA)の2.5μgアリコートを、それぞれCy5-dCTP 及び Cy3-dCTPの存在下で逆転写した。
【0220】
cDNAマイクロアレイ
米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のUniGeneデータベースから選択した32,256のcDNAを含む「網羅的ゲノム」cDNAマイクロアレイ系を、この分析に使用した。マイクロアレイの構築、ハイブリダイゼーション、洗浄、及びシグナル強度の検出については、以前に記載した(Kikuchi T et al., (2003) Oncogene; 22:2192-205, Kakiuchi S et al., (2004) Hum Mol Genet.;13:3029-43 及び (2003) Mol Cancer Res.;1:485-99, Ochi K et al., (2004) Int J Oncol.;24:647-55)。
【0221】
データの分析
32,256のスポットからのCy3 及び Cy5のシグナル強度は、ArrayVisionソフトウェア(Imaging Research Inc., Ontario, Canada)を用いてバックグラウンドを置き換えることによって定量及び分析した。次に、各標的スポットのCy5(腫瘍)及びCy3(対照)の蛍光強度を、アレイ上の52種類のハウスキーピング遺伝子の平均Cy5/Cy3比が1になるように調整した。低いシグナル強度から得たデータは信頼性が低いため、本発明者らは、以前に記載したように(Kakiuchi S et al., (2003) Mol Cancer Res.;1:485-99)各スライドのカットオフ値を定めて、Cy3及びCy5の両方の色素がこのカットオフより低いシグナル強度を発していた場合はその遺伝子を以降の分析から除外した。その他の遺伝子については、本発明者らは、各試料の生データを用いてCy5/Cy3比を算出した。
【0222】
半定量RT-PCR
本発明者らは、高度に上方制御された遺伝子を選択し、それらの発現レベルを半定量RT-PCR実験により調べた。各試料由来のaRNAの計3μgアリコートを、ランダムプライマー(Roche)及びSuperscript II(Invitrogen)を用いて単鎖cDNAに逆転写した。各々のcDNA混合物は、標的DNA又はβアクチン(ACTB)特異的反応のために調製したプライマーセット(表1)を用いたその後のPCR増幅のために希釈した。ACTBの発現は内部対照として用いた。PCR反応は、直線増幅期の産生強度(product intensity)を得るためにサイクル数を最適化した。
【0223】
(表1)半定量RT-PCR用プライマー配列


【0224】
免疫組織化学分析
SCLCにおいて高度に上方制御された2つの候補マーカーA6636(SCAMP5)及びA0245(CDC20)の示差的なタンパク質発現を確認するために、本発明者らは、臨床組織切片をENVISION+Kit/HRP(DakoCytomation)を用いて染色した。簡潔には、内因的なペルオキシダーゼ及びタンパク質のブロッキング反応後、抗ヒトSCAMP5ポリクローナル抗体(Medical & Biological Laboratories, Aichi, Japan)又は抗ヒトCDC20モノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology, CA)を添加し、次いで、HRP標識抗ウサギ又は抗マウスIgGを二次抗体として添加した。次いで基質-色素原を添加し、その検体をヘマトキシリンで対比染色した。
【0225】
ノーザンブロット分析
ヒト多組織ブロット(BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA)を、個々の遺伝子の32P標識PCR産物とハイブリダイズさせた。cDNAプローブはRT-PCRにより調製した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び洗浄を、供給元の推奨に従って行った。このブロットを、-80℃で168時間、増感スクリーンを用いるオートラジオグラフに供した。
【0226】
RNA干渉アッセイ
癌細胞におけるZIC5の生物学的機能を評価するため、本発明者らは、以前に記載したように、標的遺伝子に対する短鎖ヘアピン型RNA発現用のpsiH1BX3.0ベクターを使用した(Suzuki et al., (2003) Cancer Res, 63: 7038-7041, Kato et al., (2005) Cancer Res. 2005; 65:5638-46, 2005)。H1プロモーターを、終止シグナルとしての5つのチミジン及びジェネティシン(Sigma)選択用のneoカセットと共に、この遺伝子に特異的な配列(標的転写物由来の19ヌクレオチド配列、短いスペーサーTTCAAGAGAにより同じ配列の逆向き相補鎖から分離)の上流にクローニングした。RNAiのための合成オリゴヌクレオチドの標的配列は次の通りであった:対照1(ルシフェラーゼ(LUC):Photinus pyralisルシフェラーゼ遺伝子)、5'-CGTACGCGGAATACTTCGA-3'(SEQ ID NO:163);対照2(スクランブル(SCR):5S rRNA及び16S rRNAをコードする葉緑体ユーグレナ グラシリス(Euglena gracilis)遺伝子)、5'-GCGCGCTTTGTAGGATTCG-3'(SEQ ID NO:167);si-ZIC5、5'-TCAAGCAGGAGCTCATCTG-3'(SEQ ID NO:171)。
【0227】
挿入配列は以下の通りであった:
LUC対照:
TCCCCGTACGCGGAATACTTCGATTCAAGAGATCGAAGTATTCCGCGTACG (SEQ ID NO: 164)、及び
AAAACGTACGCGGAATACTTCGATCTCTTGAATCGAAGTATTCCGCGTACG (SEQ ID NO: 165);
SCR対照:
TCCCGCGCGCTTTGTAGGATTCGTTCAAGAGACGAATCCTACAAAGCGCGC (SEQ ID NO: 168)、及び
AAAAGCGCGCTTTGTAGGATTCGTCTCTTGAACGAATCCTACAAAGCGCGC (SEQ ID NO: 169);
ZIC5:
TCCCTCAAGCAGGAGCTCATCTGTTCAAGAGACAGATGAGCTCCTGCTTGA (SEQ ID NO: 172)、
及び
AAAATCAAGCAGGAGCTCATCTGTCTCTTGAACAGATGAGCTCCTGCTTGA (SEQ ID NO: 173)。
【0228】
LC319細胞を10cmディッシュに蒔き(1.5×106細胞/ディッシュ)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造元の説明書に従って使用してLUC、SCR、及びZIC5に対する標的配列を含むpsiH1BXベクターをトランスフェクトした。1mg/mlのジェネティシン(Invitrogen)を含有する培地で7日間細胞の選択を行い、個々の遺伝子に対するノックダウン効果のRT-PCR分析のために4日後に回収した。これらのRT-PCR実験のプライマーは、上記のプライマーと同じであった。7日間のインキュベーション後、これらの細胞をギムザ溶液で染色してコロニー形成を評価し、そして細胞数を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによってアッセイした。
【0229】
クラスター分析及びSCLCとNSCLC(腺癌)を判別する遺伝子の同定
本発明者らは、遺伝子及び腫瘍の両方に対して階層的クラスタリング法を適用した。15例のSCLC、及び本発明者らの現在のマイクロアレイシステムにおける32,256種類の遺伝子の部分集団(27,648種類の遺伝子)を含むcDNAマイクロアレイを用いて以前に分析した62例のNSCLC(20例の初期ADC、15例の初期SCC、及び27例の進行型ADC)試料の独立集団(Kikuchi T, et al., (2003) Oncogene 22: 2192-205; Kakiuchi S, et al., (2004) Hum Mol Genet 13: 3029-43からのデータ、及び同じ35例の初期NSCLC集団における4608種類の遺伝子発現についての本発明者らの未公表データ)の分類についての再現性のあるクラスターを得るために、本発明者らは、それらの中から80%の実験において有効データが得られ、その発現比が1.7を超える標準偏差で変化した遺伝子を選択した。本分析は、M. Eisen(http://rana.lbl.gov/index.htm)によって作成された、インターネットで入手可能なソフトウェア(「Cluster」及び「TreeView」)を用いて行った(Ball CA, et al., Nucleic Acids Res. 2005;33(Database issue):D580-2, Gollub J, et al., Nucleic Acids Res. 2003;31(1):94-6, Sherlock G, et al., Nucleic Acids Res. 2001;29(1):152-5)。クラスタリングアルゴリズムを適用する前に、本発明者らは、各スポットの蛍光比を対数変換し、次いで、実験の偏りを排除するために各試料のデータの中央値中心(median-center)をとった。
【0230】
結果
LMMを用いたSCLC細胞の単離
SCLC細胞の正確な発現プロファイルを得るために、本発明者らは試料に非癌性細胞が混入するのを避けるためにLMMを用いた。図1は、マイクロダイセクション前(A、B)及び後(C、D)の代表的な癌、並びに解剖した癌細胞(E、F)の顕微鏡画像を示す。
【0231】
SCLCにおいて共通して下方/上方制御された遺伝子の同定
本発明者らは、以下の基準に従ってSCLCに共通して上方/下方制御された遺伝子を同定した:(1)本発明者らが、試験した癌の50%超(15症例のうちの少なくとも8症例)において発現データを得ることができた遺伝子、及び(2)その発現比が、情報価値のある症例の少なくとも50%のSCLCにおいて5.0超又は0.2未満であった遺伝子。SCLCにおいて共通して下方制御された計776種類の遺伝子を表2に列挙し、779種類の共通して上方制御された遺伝子を表3に列挙する。
【0232】
それらのうちの83種類の遺伝子について、半定量RT-PCR(図2A)及び/又はノーザンブロット分析(図3)を用いて腫瘍及び正常組織におけるそれらの遺伝子発現パターンを確認した。
【0233】
タンパク質レベルでデータをさらに実証するために、本発明者らは、A6636(SCAMP5)又はA0245(CDC20)の抗体を用い、一組の腫瘍組織切片及び正常組織切片を用いた免疫組織化学分析を行った(図2B)。両方のタンパク質は、SCLCにおいて豊富に発現されるが、正常肺においてはほとんど検出できないことを確認した。
【0234】
LC319細胞の成長に対するZIC5低分子干渉RNAの効果
本発明者らは、肺癌において高度に発現されるZIC5の配列に特異的なsiRNA発現ベクターを構築し、それらを高レベルのZIC5 mRNAを内因的に発現するLC319細胞株にトランスフェクトした。本発明者らがsi-ZIC5構築物を使用した場合に、RT-PCRによりノックダウン効果を確認した(図4A)。LC319を用いたコロニー形成アッセイ(図4B)及びMTTアッセイ(図4C)は、si-ZIC5をトランスフェクトした細胞の数が劇的に減少することを明らかにした。
【0235】
(表2)SCLCにおいて下方制御された遺伝子




























【0236】
(表3)SCLCにおいて上方制御された遺伝子






























【0237】
NSCLCと比較してSCLCにおいて示差的に上方制御された遺伝子の同定
SCLCの性質を特徴付け、NSCLCの性質と識別する遺伝子を同定するために、本発明者らは、15の進行型SCLC症例、並びに同じcDNAマイクロアレイシステムを用いて以前に得た35例の初期NSCLC(ADC及びSCC)及び27例の進行型NSCLC(ADC)(P期;IIIB又はIV)(Kakiuchi S et al., Hum Mol Genet. 2004;13(24):3029-43, Kikuchi T et al., Oncogene 2003;22: 2192-2205)の発現プロファイルを比較した(図5A)。62個のNSCLC試料は、本発明者らの現在のマイクロアレイシステムにおける32,256種類の遺伝子の部分集団(27,648種類の遺伝子)について分析したため、本発明者らは、試験した症例の80%超において有効な値を得ることができたものについて、この27,648遺伝子の部分集団の情報を分析した。本発明者らはまた、観察された標準偏差が1.7未満の遺伝子を除外した。このカットオフフィルターを通過した475種類の遺伝子をさらに分析した。図5Aの試料軸(横軸)において、77症例からの81個の試料(本発明者らの実験手法の再現性及び信頼性を実証するために、4つの症例を複製して試験した)を、それらの発現プロファイルに基づき2つの大グループにクラスター化した。図5の上部に示す樹状図は、個々の症例間の発現パターンにおける類似性を示す。枝が短いほど類似性が大きい。独立した実験において標識し及びハイブリダイズさせた4つの複製で試験した症例(13番、20番、K91番、及びLC12番)は、同じグループの最も近くにクラスター化された(図5B)。スライドガラス上の異なる位置にスポットされた同一遺伝子もまた、近接する列にクラスター化された(図5B)。これらの結果は、本発明者らの実験的手法に高い再現性及び信頼性があることを裏付ける。77の症例のうち、15例のSCLCは一つの大グループにクラスター化され、20例の初期ADC及び15例のSCC並びに27例の進行型ADCは、単独のグループにクラスター化された。SCLC及びNSCLCは、病因論的及び臨床病理学的な性質の相違を反映する異なる遺伝子発現プロファイルを有することがはっきり表れている。
【0238】
本分析において、本発明者らはSCLCにおいて豊富に発現される34種類の遺伝子を得、そのうちのいくつかの特定の神経機能、例えば、神経発生及び神経保護の特徴を明らかにした(図5A、5Bにおけるクラスター1、表4、すなわち、DPYSL2、ADNP等)。
【0239】
(表4)NSCLCと比較してSCLCにおいて上方制御された遺伝子


【0240】
化学療法抵抗性に関連する遺伝子の同定
化学療法抵抗性は癌の治療にとって大きな障害となるため、特定の化学療法に失敗した患者から得た癌細胞において共通して上方制御された遺伝子の同定は、化学療法抵抗性の機序を理解しこの問題を克服する新規の癌療法を確立するのに有効なアプローチの一つである。本発明者らは、化学療法抵抗性肺癌患者から得た進行型SCLC及び進行型ADCの両方において豊富に発現される68種類の遺伝子を得た(図5A、5Cのクラスター2、表5)。「化学療法抵抗性肺癌患者」は、一回または複数回の化学療法治療を受けたことのある(しかし、これらの患者に提供された化学療法プロトコルは同じでない)、生存する又は死亡した肺癌患者を意味する。TAF5L、TFCP2L4、PHF20、LMO4、TCF20、RFX2、及びDKFZp547I048を含む、これらのうちのいくつかは、転写因子及び/又は遺伝子発現調節因子として公知である。さらに、C9orf76、EHD3、及びGIMAP4を含むヌクレオチド結合タンパク質をコードするいくつかの遺伝子もまた、表中に見られる。
【0241】
さらに、本発明者らは、化学療法感受性肺癌組織と比較して進行型SCLCにおいて特異的に上方制御された化学療法抵抗性肺癌の治療標的としての候補遺伝子を同定した(表6)。
【0242】
上述の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子は、進行型SCLC及び進行NSCLC(表5)又は進行型SCLC(表6)における遺伝子発現レベルを決定し、その発現レベルが化学療法感受性肺癌における対照発現レベルと比較して増加した遺伝子を選択することにより得た。対照発現レベルは、既知の化学療法感受性肺癌発現プロファイルを参照することで得ることもできるし、又は化学療法抵抗性肺癌患者から調製した対照試料を鋳型として用いて同時に決定することもできる。
【0243】
(表5)化学療法感受性肺癌組織と比較して進行型SCLC及び進行型NSCLCにおいて上方制御された遺伝子



【0244】
(表6)化学療法感受性肺癌組織と比較して進行型SCLCにおいて上方制御された遺伝子

【0245】
考察
肺癌は世界で最も一般的な癌である。その病期(LD若しくはEDのいずれか)又は一般状態に関係なく全てのSCLC患者の治療にとって、化学療法は依然として必須要素である。LDにおいて、放射線療法の追加は化学療法単独の場合よりも生存率を改善する。SCLCは通常、化学療法及び放射線療法に対して最初は感受性があるが、その応答が長く続くことは稀である。もどかしいことに、最終的にはほとんどのSCLC患者は高度に治療抵抗性の疾患を再発し、その患者の最終的な結末は5年生存率が10%未満と芳しくない。従って、原発癌及び/又は再発の初期段階を検出する新規の診断ツール、並びに低分子及び抗体に基づくアプローチを含む分子標的化療法、並びに癌特異的抗原を標的とする新規の免疫療法の開発に対する必要性は高い。従って、SCLCの遺伝子発現プロファイルは、薬物標的を選別する最初の一歩である。
【0246】
SCLCの遺伝子発現プロファイルを分析するために、本発明者らは32,256のcDNAを含む網羅的ゲノムcDNAマイクロアレイを使用した。間質組織から癌細胞を単離する能力は、レーザーマイクロダイセクション技術の登場によって大きく改善した。本法を用いれば、周辺の非癌性細胞の混入率は0.3%未満と推定され(Yanagawa R et al., (2001) Neoplasia;3:395-401, Kakiuchi et al., (2004) Hum Mol Genet.;13:3029-43 及び (2003) Mol Cancer Res.; 1:485-99)、これは、そのデータが高度に純粋なSCLC細胞集団の発現プロファイルを表すものであるという結論と矛盾しない。
【0247】
本発明者らは、SCLCにおいて示差的に発現される遺伝子群についての詳細な網羅的ゲノムデータベースを構築した。今日までに、本発明者らは癌において特異的に上方制御された779種類の候補遺伝子を腫瘍マーカー又は治療標的として同定した(表3を参照のこと)。これらの上方制御された遺伝子は、神経内分泌機能に関連する遺伝子又は癌精巣抗原若しくは腫瘍胎児抗原をコードする遺伝子、並びに細胞の成長、増殖、生存、及び形質転換に重要な遺伝子を含む多種の機能を示した。これらの遺伝子は、膜貫通型/分泌型タンパク質、及び癌精巣抗原又は腫瘍胎児抗原、並びに細胞接着、細胞骨格構造、シグナル伝達、及び細胞増殖において重要なタンパク質を含む多種の機能を有するタンパク質をコードする。これらのうちのいくつかは、診断/予後マーカーとして、及び肺癌治療のための新規の分子標的化薬剤又は免疫療法を開発するための治療標的として有用である。腫瘍特異的な膜貫通型/分泌型タンパク質は、それらが細胞表面上に存在し、分子マーカー及び治療標的として容易に接近できるために非常に有利である。CYFRA又はPro-GRPを含む、現在入手可能ないくつかの腫瘍特異的マーカーは、膜貫通型/分泌型タンパク質である(Miyake Y, et al., (1994) Cancer Res.; 54:2136-40; Pujol JL, et al., (1993) Cancer Res.; 53:61-6)。CD20陽性リンパ腫に対するキメラモノクローナル抗体であるリツキシマブ(Rituxan)の例は、特定の細胞表面タンパク質を標的とすることが我々に大きな臨床的利益をもたらし得るという概念を実証している(Hennessy BT, et al., (2004) Lancet Oncol.; 5:341-53)。他方、現在までに同定された腫瘍抗原の中でも、癌精巣抗原(CTA)は、癌ワクチンにとって非常に魅力的な標的群であると認識されている。他の要因、例えば、タンパク質のインビボでの免疫原性もまた重要でありさらなる実験が必要であるが、本発明者らの候補遺伝子は実際のところTSGA14を含む公知のCTAを含む。この発現プロファイルを用いてさらに研究を進めれば、SCLCの免疫療法にとってよい標的となる新規のCTAを同定できるのは間違いない。これらの標的は、診断/予後マーカーとして、及び肺癌治療における新規の分子標的化薬剤又は免疫療法を開発するための治療標的として有用である。上方制御された遺伝子の中で、本発明者らは半定量RT-PCR実験による実証のために83種類の遺伝子を選択し、それらの癌特異的発現を確認した(図2A)。
【0248】
さらに、本発明者らは、上方制御された遺伝子として同定したZIC5(SEQ ID NO:176をコードするSEQ ID NO:175)が、ノーザンブロット分析及びsiRNA実験により実証されるように、SCLCの大部分において活性化される癌精巣抗原であり、細胞の成長/生存において中心的な役割を果たすことを発見した。この遺伝子は、5つのC2H2 ZNFドメインを有する663アミノ酸のタンパク質をコードする。この分子は、構造的には、核酸結合性の亜鉛イオン結合タンパク質である。現在までに同定されている腫瘍抗原の中でも、癌精巣抗原は、癌ワクチンにとって非常に魅力的な標的群と認識されている。他の要因、例えば、タンパク質のインビボでの免疫原性もまた重要でありさらなる実験が必要であるが、ZIC5は免疫療法に都合の良い標的であると同時に、新規の抗癌薬の開発に都合の良い標的でもある。
【0249】
化学療法抵抗性は、臨床的に、進行癌又は末期癌を有する患者の治療を改善するために解決すべき非常に重要な問題である。15例の検死試料及び化学療法の臨床歴のある進行型ADCから得た本発明者らの遺伝子発現プロファイルデータ(図5A、5Cのクラスター2、表5)は、化学療法抵抗性を獲得した進行肺癌の特徴を反映すると判断した。これらの部分集団の教師なしクラスター分析(unsupervised cluster analysis)により、転写因子活性を有することが公知のTAF5L、TFCP2L4、PHF20、LMO4、TCF20、及びRFX2を含む上方制御された遺伝子を同定した。いくつかの転写因子は、化学療法抵抗性の獲得と関係があることが報告されている。例えば、複数の細胞プロセスに関与する転写因子NF-κBの恒常的な活性化は、癌細胞の生存を支持し、化学療法薬に対する感受性を減少させるようである(Arlt A & Schafer H. (2002) Int J Clin Pharmacol Ther.; 40:336-47)。他方、本リストのいくつかの遺伝子には、ヌクレオチドに結合することが見出されたC9orf76、EHD3、及びGIMAP4が含まれていた。いくつかのDNA結合タンパク質は、DNA修復プロセスにおいて重要な役割を担うことが公知であったため、上に示した遺伝子もまた、DNA修復における何らかの機能を有し、化学療法抵抗性の亢進に寄与している。この群の遺伝子のさらなる分析は、化学療法抵抗性腫瘍に対する新規の療法の開発に重要である。
【0250】
肺の神経内分泌腫瘍は、十分に分化した神経内分泌癌腫(典型的なカルチノイド)から中程度のもの(異型性癌腫)又は非常に侵襲的な未分化の病巣(大細胞神経内分泌癌腫(LCNEC0)及びSCLC)を含む。SCLCは、一般的に、肺の主要な神経内分泌腫瘍と考えられ、いくつかの傍腫瘍性神経内分泌症候群を引き起こす。これらの症候群は、SCLC患者において臨床的に異なる症状を表出させる。上方制御された遺伝子には、インスリノーマ関連1(INSM1)、クロモグラニンA(副甲状腺分泌タンパク質1;CHGA)、及びアキート-スクート(achaete-scute)複合体様1(Drosophila;ASCL1)を含む神経内分泌機能に関連するいくつかの遺伝子が含まれており、このことはSCLCと神経内分泌症候群の分子レベルでの強い関係をさらに支持するものである。本発明者らの遺伝子リストはまた、悪液質を含むいくつかの癌関連症候群に関連する遺伝子群も含む。
【0251】
まとめると、本発明者らのLMMシステムと組み合わせたcDNAマイクロアレイ分析により、細胞周期/成長、及びシグナル伝達の機能を有するタンパク質、又は未知の機能を有する産物、並びに膜貫通型/分泌型タンパク質及びCTAをコードする上方制御された遺伝子が関わるSCLCの最も包括的な遺伝子発現プロファイルが明らかになった。動物モデルを用いたさらなる分析により、肺癌に対する可能性のある治療標的及び診断標的を絞り込めると考えられる。ZIC5等の候補遺伝子を選択するための、ヒトの癌器官組織及び正常器官組織の統合的遺伝子発現データベース及びsiRNAの併用的使用は、個別療法のための標的分子の迅速な同定及びさらなる評価のための強力なストラテジーを提供する。
【0252】
産業上の利用可能性
レーザーキャプチャーダイセクション(laser-capture dissection)及び網羅的ゲノムcDNAマイクロアレイの組み合わせを通じて得られた、本明細書中に記載される小細胞肺癌の遺伝子発現分析により、癌の予防及び治療の標的として特定の遺伝子が同定された。これらの示差的に発現される遺伝子の部分集団の発現に基づき、本発明は、小細胞肺癌を同定及び検出するための分子診断マーカーを提供する。
【0253】
本明細書中に記載される方法はまた、小細胞肺癌の予防、診断、及び治療のためのさらなる分子標的を同定するのにも有用である。本明細書中で報告されたデータは、小細胞肺癌の包括的な知識を与え、新規の診断ストラテジーの構築を容易にし、かつ治療薬及び予防剤のための分子標的の同定の糸口を提供する。このような情報は、小細胞肺腫瘍化に関する知識をより深めるのに貢献し、小細胞肺癌を診断、治療、及び究極的には予防する新規のストラテジーを構築するための指標を提供する。
【0254】
本発明者らはまた、ZIC5遺伝子を特異的に標的とする低分子干渉RNA(siRNA)によって細胞成長が抑制されることも示した。従って、この新規のsiRNAは、抗癌医薬品開発にとって有用な標的である。例えば、ZIC5の発現を遮断するか又はその活性を妨げる薬剤には、抗癌剤として、具体的には小細胞肺癌を含む肺癌の治療のための抗癌剤としての治療的用途が見出される。
【0255】
さらに、ランダム順列試験により同定した34種類の遺伝子の発現データに対してクラスタリングアルゴリズムを適用することで、肺癌の2つの主要な組織型である非小細胞肺癌(NSCLC)とSCLCを簡単に識別した。これらのデータは、この種類の癌に対する新規の診断システム及び治療標的分子を同定するための価値ある情報を提供する。肺癌に対する化学療法は、小細胞肺癌と非小細胞肺癌で完全に異なる。従って、肺癌に対する治療ストラテジーを決定するためには、SCLCとNSCLCを識別することが重要である。しかし、従来の病理組織学的診断法は、それらを識別するのに特別な技術を要する。従って、本発明において同定された遺伝子は、肺癌を治療するために非常に有用である。
【0256】
本発明はさらに同定された化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子又はSCLC関連遺伝子を提供する。これらの遺伝子は、化学療法抵抗性肺癌又はSCLCにおいて上方制御された。従って、化学療法抵抗性肺癌又はSCLCは、診断マーカーとしてこれらの遺伝子の発現レベルを用いることで予測され得る。結果的に、効果のない化学療法により生じる任意の有害作用が回避でき、より適切かつ効果的な治療ストラテジーを選択することができる。
【0257】
本明細書中で引用した全ての特許、特許出願、及び公報は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0258】
さらに、本発明は詳細にかつその特定の態様を参照して記載されているが、上記の記載は本来例示及び説明を目的とするものであり、本発明及びその好ましい態様を解説することを意図するものと理解されなければならない。当業者は、日常的な実験を通じて、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明において多種の変更及び修正がなされ得ることを容易に認識すると考えられる。従って、本発明は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって規定されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】2つの代表的なSCLCのレーザーマイクロビームマイクロダイセクション(LMM)を示す画像を示す。上段パネル(A、B)は解剖前の試料を、中段パネル(C、D)はマイクロダイセクション後の同じ部位を示す(H.E.染色×400)。また、回収キャップで捕捉したマイクロダイセクションを行った癌細胞も下段パネル(E、F)に示す。
【図2】図2Aは83種類の候補遺伝子の半定量RT-PCRを示し、図2Bは、試験したSCLC組織及び正常肺組織由来の代表的な試料の、2つの候補タンパク質マーカーA6636(SCAMP5)及びA0245(CDC20)に対する抗体を用いた、免疫組織化学的染色を示す(×100、×200)。
【図3】多組織ノーザンブロットを用いた正常な器官における8種類の候補遺伝子の発現を示す。
【図4】LC319細胞におけるZIC5に対するsiRNAのノックダウン効果を示す。ZIC5 siRNA発現ベクター(si-ZIC5)及びルシフェラーゼsiRNA発現ベクター(si-LUC)並びに負の対照としてのスクランブルsiRNA発現ベクター(si-SCR)を、LC319細胞にトランスフェクトした。図4A、ZIC5転写物に対するノックダウン効果は、定量対照としてACTBの発現を用いるRT-PCRにより確認した。図4B、C、si-ZIC5は強いノックダウン効果を示したが、si-LUC及びsi-SCRはZIC5転写物のレベルに対していかなる効果も示さなかった。si-ZIC5ベクターのトランスフェクションは、si-LUC又はsi-SCRをトランスフェクトした細胞と比較して、コロニー数(B)及び生存細胞数(C)の減少をもたらした。
【図5】SCLC及びNSCLC(腺癌)の教師付きクラスター分析(supervised cluster analysis)を示す。図5A、77の肺癌症例由来の試料にまたがる遺伝子の二次元階層的クラスター分析の樹状図。各ウェルの色は赤色及び緑色で表示され、それぞれ、転写レベルが全ての試料にまたがるその遺伝子の中央値より高いこと及び低いことを示す。黒色、発現に変化なし。灰色、発現が検出できない。77例の肺癌を表す横軸において、15例の進行型SCLC、35例の初期NSCLC(20例のADC及び15例のSCC)並びに27例の進行型ADCは4つの主要部に分かれた。縦軸において、相対発現比における類似性に従って475種類の遺伝子を異なる枝にクラスタリングした。図5B、クラスター1はNSCLCよりもSCLCにおいて豊富に発現した34種類の遺伝子を含む。独立した実験として標識及びハイブリダイズを行った4つの複製での実験例(No. 13、20、K91、及びLC12)は、同じグループ内の最も近くにクラスタリングされた。スライドガラス上の異なる位置にスポットした同一遺伝子もまた、近接する列にクラスタリングされた。図5C、クラスター2は、その両方に対して化学療法による治療がなされた進行型SCLC及び進行型NSCLCにおいて共通して発現される68種類の遺伝子を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来の生物学的試料における小細胞肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含み、該試料における発現レベルが該遺伝子の正常対照レベルと比較して増加又は減少していることが、対象が小細胞肺癌を患っているか又は小細胞肺癌を発症する危険があることを示す、対象における小細胞肺癌又は小細胞肺癌を発症する素因を診断する方法。
【請求項2】
小細胞肺癌関連遺伝子がSCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択され、さらに、試料における発現レベルが正常対照レベルと比較して増加していることが、対象が小細胞肺癌を患っているか又は小細胞肺癌を発症する危険があることを示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試料の発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、請求項2記載の方法。
【請求項4】
小細胞肺癌関連遺伝子がSCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択され、さらに、試料の発現レベルが正常対照レベルと比較して減少していることが、対象が小細胞肺癌を患っているか又は小細胞肺癌を発症する危険があることを示す、請求項1記載の方法。
【請求項5】
試料の発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%低い、請求項4記載の方法。
【請求項6】
複数の小細胞肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
遺伝子の発現レベルが、
(a)小細胞肺癌関連遺伝子のmRNAの検出、
(b)小細胞肺癌関連遺伝子によりコードされるタンパク質の検出、及び
(c)小細胞肺癌関連遺伝子によりコードされるタンパク質の生物学的活性の検出
からなる群より選択される方法により決定される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
検出がDNAアレイを用いて行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料が上皮細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料が小細胞肺癌細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料が小細胞肺癌細胞由来の上皮細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の小細胞肺癌関連遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、小細胞肺癌の基準発現プロファイル。
【請求項13】
SCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の小細胞肺癌関連遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、小細胞肺癌の基準発現プロファイル。
【請求項14】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の小細胞肺癌関連遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、小細胞肺癌の基準発現プロファイル。
【請求項15】
(a)SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)該ポリペプチドと試験化合物の間の結合活性を検出する段階、及び
(c)該ポリペプチドに結合する試験化合物を選択する段階、
を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項16】
(a)SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子を発現する細胞と候補化合物を接触させる段階、及び
(b)候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して、SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを減少させる候補化合物か、又はSCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを増加させる候補化合物を選択する段階、
を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項17】
該細胞が小細胞肺癌細胞を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
(a)SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階、及び
(c)SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される該ポリペプチドの生物学的活性と比較して抑制する試験化合物か、又はSCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される該ポリペプチドの生物学的活性と比較して増強する試験化合物を選択する段階、
を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項19】
(a)SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞と候補化合物を接触させる段階、
(b)レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階、及び
(c)試験化合物の非存在下で検出される該レポーター遺伝子の発現レベル又は活性レベルと比較して、マーカー遺伝子がSCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される上方制御されたマーカー遺伝子である場合は、該レポーター遺伝子の発現又は活性を減少させる候補化合物、又は該マーカー遺伝子がSCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択される下方制御されたマーカー遺伝子である場合は該レポーター遺伝子の発現レベル若しくは活性レベルを増強する候補化合物を選択する段階、
を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項20】
(a)SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の核酸配列又は(b)それらによってコードされるポリペプチドに結合する検出試薬を含むキット。
【請求項21】
SCLC No. 1〜1555の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の核酸配列に結合する二つまたはそれ以上の核酸を含むアレイ。
【請求項22】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択されるコード配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項23】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される核酸配列の発現を減少させるsiRNA組成物を対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項24】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される任意の一つの遺伝子によりコードされるタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又は免疫学的に活性なそれらの断片を対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項25】
(a)SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される核酸によりコードされるポリペプチド、(b)該ポリペプチドの免疫学的に活性な断片、又は(c)該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項26】
ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを含むベクターと抗原提示細胞を接触させる段階を含み、該ポリペプチドが、SCLC No. 777〜1555からなる群より選択される遺伝子によりコードされるか又はその断片である、抗腫瘍免疫を誘導する方法。
【請求項27】
抗原提示細胞を対象に投与する段階をさらに含む、請求項26記載の抗腫瘍免疫を誘導する方法。
【請求項28】
請求項15〜19のいずれか一項記載の方法により得られる化合物を投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項29】
(a)SCLC No. 1〜776の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチド、又は(b)それらにコードされるポリペプチドを含む薬学的有効量の薬剤を対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項30】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対する薬学的有効量のアンチセンスポリヌクレオチド又はsiRNAを含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項31】
SCLC No. 777〜1555の遺伝子からなる群より選択される遺伝子によりコードされるタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又はそれらの断片を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項32】
有効成分として請求項15〜19のいずれか一項記載の方法により選択される薬学的有効量の化合物、及び薬学的に許容される担体を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項33】
(a)診断対象から採取した検体における、SCLC No. 1556〜1589の遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを検出する段階、及び
(b)一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルと非小細胞肺癌の発現レベルとを比較する段階であって、非小細胞肺癌と比較してマーカー遺伝子の発現レベルが高いことが小細胞肺癌であることを示す段階、
を含む、小細胞肺癌と非小細胞肺癌を判別する方法。
【請求項34】
ZIC5の発現を阻害する低分子干渉RNA(siRNA)を含む組成物を対象に投与する段階を含む、対象における小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項35】
siRNAがセンス核酸配列及びZIC5由来の配列に特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸配列を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
siRNAが標的配列としてSEQ ID NO:171からなる配列に対応するリボヌクレオチド配列を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
siRNAが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、式中、[A]はSEQ ID NO:171のヌクレオチドからなる配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドからなるリボヌクレオチドループ配列であり、[A']は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該組成物がトランスフェクション促進剤を含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
センス鎖がSEQ ID NO:171からなる標的配列に対応するリボヌクレオチド配列を含み、アンチセンス鎖がセンス鎖に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、センス鎖及びアンチセンス鎖が互いにハイブリダイズして二重鎖分子を形成し、該二重鎖分子がZIC5遺伝子を発現する細胞に導入された場合に該遺伝子の発現を阻害する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二重鎖分子。
【請求項40】
標的配列がSEQ ID NO:175のヌクレオチド配列由来の少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを含む、請求項39記載の二重鎖分子。
【請求項41】
標的配列がSEQ ID NO:175のヌクレオチド配列由来の約19〜約25個の連続するヌクレオチドを含む、請求項40記載の二重鎖分子。
【請求項42】
単鎖リボヌクレオチド配列を介して連結されたセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む単一のリボヌクレオチド転写物である、請求項41記載の二重鎖分子。
【請求項43】
約100ヌクレオチド長未満のオリゴヌクレオチドである、請求項40記載の二重鎖分子。
【請求項44】
約75ヌクレオチド長未満のオリゴヌクレオチドである、請求項43記載の二重鎖分子。
【請求項45】
約50ヌクレオチド長未満のオリゴヌクレオチドである、請求項44記載の二重鎖分子。
【請求項46】
約25ヌクレオチド長未満のオリゴヌクレオチドである、請求項45記載の二重鎖分子。
【請求項47】
二重鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである、請求項46記載の二重鎖ポリヌクレオチド。
【請求項48】
請求項40記載の二重鎖分子をコードするベクター。
【請求項49】
二次構造を有する転写物をコードし、かつセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む、請求項48記載のベクター。
【請求項50】
転写物がセンス鎖とアンチセンス鎖を連結する単鎖リボヌクレオチド配列をさらに含む、請求項49記載のベクター。
【請求項51】
センス鎖核酸及びアンチセンス鎖核酸の組み合わせを含むポリヌクレオチドを含むベクターであって、該センス鎖核酸がSEQ ID NO:171のヌクレオチド配列を含み、該アンチセンス鎖核酸がセンス鎖に相補的な配列からなるベクター。
【請求項52】
前記ポリヌクレオチドが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、式中、[A]はSEQ ID NO:171のヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり、[A']は[A]に相補的なヌクレオチド配列である、請求項51記載のベクター。
【請求項53】
有効成分としてZIC5の発現を阻害する薬学的有効量の低分子干渉RNA(siRNA)、及び薬学的に許容される担体を含む、小細胞肺癌を治療又は予防するための薬学的組成物。
【請求項54】
siRNAが標的配列としてSEQ ID NO:171からなるヌクレオチド配列を含む、請求項53記載の薬学的組成物。
【請求項55】
siRNAが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、式中、[A]はSEQ ID NO:171のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、[A']は[A]に相補的なリボヌクレオチド配列である、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
患者由来の生物学的試料における、表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階を含み、該試料の発現レベルが該遺伝子の対照レベルと比較して増加していることが、対象が化学療法抵抗性肺癌を患っているか又は化学療法抵抗性肺癌を発症する危険があることを示す、対象における化学療法抵抗性肺癌又は化学療法抵抗性肺癌を発症する素因を診断する方法。
【請求項57】
試料の発現レベルが対照レベルよりも少なくとも10%高い、請求項56記載の方法。
【請求項58】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項59】
複数の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の発現レベルを決定する段階をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項60】
遺伝子の発現レベルが、
(a)化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子のmRNAの検出、
(b)化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子によりコードされるタンパク質の検出、及び
(c)化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子によりコードされるタンパク質の生物学的活性の検出、
からなる群より選択される方法により決定される、請求項56記載の方法。
【請求項61】
検出がDNAアレイを用いて行われる、請求項60記載の方法。
【請求項62】
生物学的試料が肺癌細胞を含む、請求項56記載の方法。
【請求項63】
生物学的試料が肺癌細胞由来の上皮細胞を含む、請求項56記載の方法。
【請求項64】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子の遺伝子発現パターンを含む、化学療法抵抗性肺癌の基準発現プロファイル。
【請求項65】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項64記載の発現プロファイル。
【請求項66】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)該ポリペプチドと試験化合物との間の結合活性を検出する段階、及び
(c)該ポリペプチドに結合する試験化合物を選択する段階、
を含む、化学療法抵抗性肺癌の治療又は予防のための化合物のスクリーニング方法。
【請求項67】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子を発現する細胞と候補化合物を接触させる段階、及び
(b)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の発現レベルを、候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して減少させる候補化合物を選択する段階、
を含む、化学療法抵抗性肺癌の治療又は予防のための化合物のスクリーニング方法。
【請求項68】
前記細胞が化学療法抵抗性肺癌細胞を含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階、及び
(c)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される該ポリペプチドの生物学的活性と比較して抑制する試験化合物を選択する段階、
を含む、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項70】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数のマーカー遺伝子の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターが導入された細胞と候補化合物を接触させる段階、
(b)レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階、及び
(c)レポーター遺伝子の発現又は活性を、試験化合物の非存在下で検出される発現レベル又は活性レベルと比較して減少させる候補化合物を選択する段階、
を含む、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法。
【請求項71】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項66〜70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される二つまたはそれ以上の核酸配列、又は(b)それらによってコードされるポリペプチドに結合する検出試薬を含む、化学療法抵抗性肺癌を検出するためのキット。
【請求項73】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項72記載のキット。
【請求項74】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される一つ又は複数の核酸配列に結合する二つまたはそれ以上の核酸を含む、化学療法抵抗性肺癌を検出するためのアレイ。
【請求項75】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項74記載のアレイ。
【請求項76】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択されるコード配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を対象に投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項77】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される核酸配列の発現を減少させるsiRNA組成物を対象に投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項78】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される任意の一つの遺伝子によりコードされるタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又は免疫学的に活性なそれらの断片を対象に投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項79】
(a)表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される核酸によりコードされるポリペプチド、(b)該ポリペプチドの免疫学的に活性な断片、又は(c)該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項80】
ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを含むベクターを抗原提示細胞と接触させる段階を含み、該ポリペプチドが、表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される遺伝子によりコードされるか又はその断片である、抗腫瘍免疫を誘導する方法。
【請求項81】
前記抗原提示細胞を対象に投与する段階をさらに含む、請求項80記載の抗腫瘍免疫を誘導する方法。
【請求項82】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項75〜81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
請求項66〜70のいずれか一項記載の方法により得られる化合物を投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項84】
請求項71記載の方法により得られる化合物を投与する段階を含む、対象における化学療法抵抗性小細胞肺癌を治療又は予防する方法。
【請求項85】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択されるポリヌクレオチドに対する薬学的有効量のアンチセンスポリヌクレオチド又はsiRNAを含む、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項86】
表5に列挙される遺伝子からなる群より選択される遺伝子によりコードされるタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又はそれらの断片を含む、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項87】
化学療法抵抗性肺癌が小細胞肺癌であり、化学療法抵抗性肺癌関連遺伝子が表6に列挙される遺伝子からなる群より選択される、請求項85又は86記載の組成物。
【請求項88】
有効成分として請求項66〜70のいずれか一項記載の方法により選択される薬学的有効量の化合物、及び薬学的に許容される担体を含む、化学療法抵抗性肺癌を治療又は予防するための組成物。
【請求項89】
有効成分として請求項71記載の方法により選択される薬学的有効量の化合物、及び薬学的に許容される担体を含む、化学療法抵抗性小細胞肺癌を治療又は予防するための組成物。

【図1】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図2A−4】
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【図2B】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2009−502115(P2009−502115A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503310(P2008−503310)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/JP2006/315254
【国際公開番号】WO2007/013665
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】