説明

小荷物専用昇降機用かご

【課題】かごドアの開閉と連動して確実に動作し、安定した静止状態を保持することができる台車ストッパを有する小荷物専用昇降機用かごを実現する。
【解決手段】かご出入り口29,30側端に、かご床面10に対し上下方向に移動可能な動作棒13を設置し、この動作棒よりかご中央側のかご床に、かご床面に対して上下方向に出し入れ可能に設置された台車ストッパ11と、動作棒のかご床面に対する移動方向と反対方向に台車ストッパを移動させる移動機構15を設け、かごドア2,3が閉まると、かごドアの重量により動作棒が押し下げられて台車ストッパを突出させ、かごドアが開くと台車ストッパの自重で台車ストッパが格納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロア型の小荷物昇降機用かごに関する。
【背景技術】
【0002】
小荷物専用昇降機は荷物の上げ下ろしに利用される昇降機で、エレベータよりも単純な構造でできていることから、人が乗ることはできないものであり、法令上、かごの床面積が1m以内でかつ、天井の高さが1.2m以内のものを言う(建築基準法施行令第129条の3第3号)。以前はダムウェーターとも言われていたが、現在は小荷物専用昇降機の名称に統一されているものである。小荷物専用昇降機には、かご床の上下方向の停止位置を建屋の床面に対して600〜700mm程度高い位置としたテーブル型と、かご床の上下方向の停止位置を建屋の床面と同じ高さにしたフロア型がある。一般に、テーブル型は食品など軽量物の運搬に利用されているもので、フロア型は200〜500kgまでの重量物の上げ下ろしに利用されるものである。フロア型はかご床の上下方向の停止位置が建屋の床面と同じ高さになっているので、荷物を積んだ台車などを直接乗り込ませることができる。図12にフロア型の小荷物専用昇降機の斜視図を、図13に小荷物専用昇降機の構造を示す斜視図を示す。また、小荷物専用昇降機のかごドアの配置には、図14から16に示すように、ドアが一方向に設置されている1方向型、かごを貫通できるように2方向にかごドアが配置されている貫通型、乗り込み側と直角方向の2方向にかごドアが設置されているコーナー型がある。
【0003】
このような小荷物専用昇降機に台車を乗せて運搬する場合、乗り込み時にかご奥側のかご壁あるいはドアに台車を接触させて壁やドアを破損することがあった。このため、小荷物専用昇降機やエレベータに台車ごと乗り込む場合に、かご奥側の壁またはドアに台車が衝突しないよう台車ストッパが設けられている。図17、図18は従来技術による台車ストッパの平面図、断面図を示す。これは、かご手前側の台車ストッパを足で踏むと、かご手前側の台車ストッパが床下に格納され台車が乗り込めるようになると共に、かご奥側の台車ストッパが床上に出現し、台車が乗り込み側と反対側のドアに接触することを防止する装置である。台車を搬出する場合には、搬出側の台車ストッパを足で踏んで台車ストッパを格納してから搬出するようになっている(例えば特許文献1参照)。また、図19は従来技術による、台車をかごに乗り込ませた後、手動またはドアスイッチに連動させて台車の手前側の台車ストッパを出現させるものである(例えば特許文献2参照)。この方式は、台車の搬出時には、手動でスイッチを操作して台車ストッパを格納させるか、ドアスイッチに連動して台車ストッパを格納させるようになっている。
【0004】
【特許文献1】実開昭56−3182号公報
【特許文献2】実開平2−139879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した、従来の足踏み式台車ストッパはリンク機構を使った機械式のものであることから、確実に動作できるものであるが足踏み式の台車ストッパは昇降機のドアの開閉と連動して動作するようになっていないことから、台車ストッパの操作忘れによりかご手前側の台車ストッパが突出したまま台車を搬入し、かご手前側ストッパに台車を衝突させてしまうという問題があった。また、この従来技術の台車ストッパの一端が突出して他端が格納されている静止状態は、リンクと台車ストッパの摩擦力で保持されている。このため、一度かご床と同一面に格納した台車ストッパが台車搬入時の振動などで飛び出し台車の走行の邪魔になると同時に、突出させたかご奥側の台車ストッパが格納されてしまい、台車ストッパとしての用を成さなくなるという問題があった。このため、図18に示すように台車ストッパの静止状態保持のためにばね板を使ったロック機構がある(例えば特許文献1参照)。しかし、このようなロック機構をつければそれをはずすために大きな足踏み力が必要となり、人間が昇降機のかごに乗り込んで足踏み操作をすることが必要になることから、小型の小荷物専用昇降機には取り付けられないという問題があった。これに対して、図19のように小荷物専用昇降機に取り付ける小型の台車ストッパもあるが、電気式であるため、一般的に機械式と比べてスイッチの接触不良などにより動作の確実性が劣るという問題があった。
【0006】
更に、足踏み式の台車ストッパの場合は、一方の台車ストッパが床上に突出するとリンクにより必ず反対側の台車ストッパが格納されるようになっていることから、昇降機走行中は、どちらか一方の台車ストッパしかかご床から突出していない。このため、昇降機走行中の振動で台車が台車ストッパの突出していない方向に移動してドアに接触し、ドアの開閉が不能となるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、かごドアの開閉と連動して確実に動作し、安定した静止状態を保持することができる台車ストッパを有する小荷物専用昇降機用かごを実現することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、昇降機の走行中に振動などにより台車が移動することを防止しうる小荷物専用昇降機用かごを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記の目的は、かご出入り口側端に設置された、かご床面に対し上下方向に移動可能な動作棒と、動作棒よりかご中央側のかご床に、かご床面に対して上下方向に出し入れ可能に設置された台車ストッパと、動作棒のかご床面に対する移動方向と反対方向に台車ストッパを移動させる移動機構と、かご出入り口を開閉するかごドアであって、開いている時にはかご床面より上面にある動作棒を、閉じた時には下方に押し下げるかごドアとを設けることによって達成できる。また、小荷物専用昇降機用かごが複数方向に出入り口を有しているときには、各出入り口毎に、動作棒と、台車ストッパと、移動機構と、かごドアとを設けることによっても達成することができる。
【0010】
本発明の目的は、上記の小荷物専用昇降機の移動機構をかご床下に設置された支持部材と、一端が動作棒に対して回転自在に接続され、他端が台車ストッパに対して回転自在に接続されており、長手方向中間部に回転支点を有する連接棒と、回転支点において、連接棒と支持部材とを回転自在に接続する支持ピンとを設けることによっても達成できる。
【0011】
また、回転支点周りの、台車ストッパ側の回転モーメントが、動作棒側の回転モーメントよりも大きくなるようにすることによっても達成できる。動作棒は、かご出入り口両側端に設置され、台車ストッパが、各動作棒について1つずつ設置されてもよいし、一端が各動作棒に対して回転自在に接続され、他端が1つの台車ストッパに対して回転自在に接続された連接棒を設置してもよい。また、動作棒は、かご出入り口両側端に設置され、移動機構は、かご床下に各動作棒について1つずつ設置された支持部材と、1つまたは複数の台車ストッパを取り付けた台車ストッパ動作軸と、一端が各動作棒に対して回転自在に接続され、他端が台車ストッパ動作軸に対して回転自在に接続されており、長手方向中間部に回転支点を有する連接棒と、回転支点において、各連接棒と対応する前記支持部材とを回転自在に接続する支持ピンとを設置してもよいし、かごドアを1枚上引き式とすることによっても達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、小荷物専用昇降機用かごの出入り口側端に設置された、かご床面に対し上下方向に移動可能な動作棒と、動作棒よりかご中央側のかご床に、かご床面に対して上下方向に出し入れ可能に設置された台車ストッパと、動作棒のかご床面に対する移動方向と反対方向に台車ストッパを移動させる移動機構と、かご出入り口を開閉するかごドアであって、開いている時にはかご床面より上面にある動作棒を、閉じた時には下方に押し下げるかごドアとを設けることによって、台車ストッパは、かごドアの開閉と連動して確実に動作し、安定した静止状態を保持することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態について図1から図5を用いて説明する。図1は、フロア型で、ドア配置が貫通型の小荷物専用昇降機用かご1が荷物搬入階に停止して、一方のドアが開き、他方のドアは閉まっている状態を示している。ドアが開いている方をかご手前側、ドアが閉まっている方をかご奥側として説明する。
【0014】
小荷物専用昇降機用かご1は、かご室12とかご床10を有する。かご室12とかご床10の外周には補強材14が設けられ、小荷物専用昇降機用かご1はこの補強材14に接続されたワイヤ16によって吊り下げられており、ワイヤ16を図示しない巻き上げ機にて巻き上げることによって上下方向に走行する。かご室12手前側にはかご手前側出入り口29、かご奥側には、かご奥側出入り口30があり、それぞれの出入り口にはかご手前側かごドア2、及びかご奥側かごドア3が設けられている。それぞれのドアはかご室12の上部に設けられたかご手前側かごドアガイドレール6、かご奥側かごドアガイドレール8に沿って上下方向に移動し、開閉されるようになっている。
【0015】
一方、建屋には小荷物専用昇降機用かご1に荷物を搬入するための開口部とドアが、かご室に設けられたかごドアと一対に設けられている。かご手前側にはかご手前側建屋ドア4が設けられ、かご奥側にはかご奥側建屋ドア5が設けられている。建屋側のドアについても、それぞれの建屋ドアの上部に設けられた、かご手前側建屋ドアガイドレール7とかご奥側建屋ドアガイドレール9に沿って上下に移動し、開閉が行われる。
【0016】
かご床10は停止時には高さが建屋床17上面とほぼ同一になり、建屋床17上の台車18を直接かご床10に乗り込ませるようにすることができる。かご床10には台車ストッパ11と動作棒13と台車ストッパ11と動作棒13を結ぶ移動機構15が各出入り口ごとに設置されている。図2に示すように動作棒13は各かご入り口部のかご手前側かごドア2及びかご奥側かごドア3がかご床にあたる範囲内であって、かご床10の両側端に動作棒床貫通穴28を通って上下方向に移動可能に設置されている。また、台車ストッパ11は動作棒13よりもかごの中央側のかご床に台車ストッパ床貫通穴27を通って上下方向に移動可能に設置されている。台車ストッパ11は床上に突出したときにはかご室に入った台車18のストッパとして働くように、幅方向はほぼ台車の車輪間の幅になるよう設置され、前後方向には台車の車輪の軸間長さに車輪直径を加えた長さよりも幾分長い間隔を有するように設置されている。また、図5に示すように2つの台車ストッパ11は1つの台車ストッパ動作軸24に取り付けられて、台車ストッパ動作軸24と一緒に上下方向に移動するようになっている。
【0017】
図3、4は移動機構15、動作棒13、台車ストッパ11の部分詳細図である。移動機構15は連接棒21と取り付け部25と支持ピン22と台車ストッパ動作軸24を有している。連接棒21は一端において動作棒13に対して回転自在になるように動作棒取り付けピン20によって動作棒13に接続されており、他端は台車ストッパ動作軸24に回転自在に取り付けられている。また、連接棒21は、その中間に支点23を有しており、支点23に設けられた支持ピン22によって取り付け部25に回転自在に取り付けられている。取り付け部25は動作棒床貫通穴28と台車ストッパ床貫通穴27の間のかご床10の下面に固定され、この取り付け部25を介して動作棒13、台車ストッパ11、台車ストッパ動作軸24はかご床10に保持されている。
【0018】
上記のように、連接棒21は支点23に取り付けた支持ピン22の回りに回転自在に取り付け部25に取り付けられているが、この支点23についての台車ストッパ側の回転モーメントは動作棒側の回転モーメントよりも大きくなるように各部材の重量が選定されている。台車ストッパ側の回転モーメントと動作棒側の回転モーメントは次のようになる。
【0019】
支点23から台車ストッパ11までの距離に台車ストッパ11と台車ストッパ動作軸24の重量の合計を掛け算して求められる台車ストッパを押し下げる方向に働く回転モーメントを台車ストッパ回転モーメントとし、支点23から動作棒13までの距離に動作棒13と動作棒取り付けピン20の重量の合計を掛け算して求められる動作棒を押し下げる方向に働く回転モーメントを動作棒回転モーメントとし、支点23と連接棒21の重心との距離に連接棒21の重量を掛け算して求められる回転モーメントを連接棒回転モーメントとする。連接棒21の重心が支点23から台車ストッパ側に寄っていて、連接棒回転モーメントが台車ストッパ11を押し下げる方向となる時は、上記台車ストッパ側の回転モーメントは、上記台車ストッパ回転モーメントに連接棒回転モーメントを加えたものとなり、動作棒側の回転モーメントは上記の動作棒回転モーメントとなる。また、連接棒21の重心が支点23から動作棒側に寄っていて、連接棒回転モーメントが動作棒13を押し下げる方向となる時は、上記動作軸側の回転モーメントは、上記動作軸回転モーメントに連接棒回転モーメントを加えたものとなり、台車ストッパ側の回転モーメントは上記の台車ストッパ回転モーメントとなる。この台車ストッパ側の回転モーメントが動作軸側の回転モーメントよりも大きくなるように、たとえば台車ストッパ11、あるいは台車ストッパ動作軸24は重量の大きい部材によって構成される。これらの部材の重量を大きくできない時には別途、台車ストッパ動作軸24または台車ストッパ11に錘を設置するようにしてもよい。そして、上記構成により、何も荷重がかからない場合には連接棒21は、台車ストッパ11、台車ストッパ動作軸24が下がり、動作棒13がかご床10の上に突出する方向に回転する。この回転は図4に示すように、動作棒床貫通穴28と取り付け部25の間のかご床10下面に固定された連接棒ストッパ26によって止められるようになっている。
【0020】
上記の構成によって、動作棒13が押し下げられると、台車ストッパ11がかご床から突出し、動作棒13が上がると台車ストッパ11が下がるという動作を可能にしている。そして、台車ストッパ11の長さは突出状態にある時は、かご床10からほぼ台車18の車軸中心の高さとなり、格納状態にあるときにはかご床面とほぼ同一の高さとなるように構成されている。また、動作棒13は台車ストッパ11が突出状態にあるときにかご床面と同一の高さとなるように構成されている。
【0021】
本発明の第1の実施形態の動作について、図6、1、7、8を参照しながら説明する。図6は小荷物専用昇降機用かご1が荷物を搭載しない状態で、荷物搬入階からの呼び寄せにしたがって、上下方向に走行している状態を示している。図1は小荷物専用昇降機用かご1が荷物搬入階に停止して、一方のドアが開き、他方のドアは閉まっている状態を示している。上記の構造の説明と同様に、図1のドアが開いている方をかご手前側、ドアが閉まっている方をかご奥側として説明する。図7は小荷物専用昇降機用かご1が荷物を搭載して上下方向に走行中の状態を示している。図8は小荷物専用昇降機用かご1が走行後、荷物搬出階に停止して、手前側のドアは閉まったままで、奥側のドアが開いた状態を示している。
【0022】
図6に示すように、小荷物専用昇降機用かご1は荷物を搭載しない状態で荷物搬入階からの呼び寄せにしたがって、上下方向に走行する。上下方向の走行は図示しないワイヤ巻上げ装置でワイヤ16を巻き上げあるいは伸ばすことによって行われる。この時、かご室12に取り付けられているかご手前側かごドア2及びかご奥側かごドア3は閉まった状態で、かご手前側出入り口29、かご奥側出入り口30ともに閉じられている。また、建屋に設けられたかご手前側建屋ドア4、かご奥側建屋ドア5も同様に閉まった状態となっている。かご手前側出入り口29、及びかご奥側出入り口30に設置された動作棒13は共にかご手前側かごドア2、かご奥側かごドア3の荷重によって押し下げられている状態で、それぞれの移動機構15によって、台車ストッパ11はすべてかご床10の上に突出した状態となっている。
【0023】
図1に示すように、小荷物専用昇降機用かご1は荷物搬入階に到着すると、かご床10と建屋床17が同一の高さとなるような状態で停止する。停止後、図示しないドア開閉ボタンを押すと、かご手前側かごドア2とかご手前側建屋ドア4がそれぞれかご手前側かごドアガイドレール6、かご手前側建屋ドアガイドレール7に沿って上方に引き上げられ、かご手前側出入り口29が開かれる。かご手前側かごドア2が引き上げられると、かご手前側出入り口29に設置された動作棒13を押し下げていた荷重がなくなる。一方、図4に示すように、連接棒21は支点23に取り付けた支持ピン22の回りに回転自在に取り付け部25に取り付けられており、この支点23についての台車ストッパ側の回転モーメントが動作棒側の回転モーメントよりも大きくなるように各部材の重量が選定されていることから、動作棒13にかかる荷重がなくなると連接棒21は、台車ストッパ11、台車ストッパ動作軸24が下がり動作棒13がかご床10の上に突出する方向に回転する。そして回転は連接棒21がかご床10の下面に取り付けられた、連接棒ストッパ26に当たることによって回転が止まる。この動作によって、動作棒13に荷重がかからなくなると、台車ストッパ11は床面と同一面あるいは床面より下の格納位置に移動し、台車がかご床10の上を走行できるようになる。そして、上記の動作では、常に台車ストッパ11が下がる方向に連接棒21が回転する回転モーメントが発生することから、台車ストッパの格納状態を容易に保持することができ、台車18の搬入時の振動などにより台車ストッパ11がかご床10の上に突出することを防止できる効果がある。また、動作棒13はかご床10の上に突出するが、その位置は図2に示すようにかご出入り口の両側端にあるため、台車の走行、搬入に支障はない。
【0024】
このようにして、かご手前側出入り口29が開き、台車ストッパ11が格納位置に下がり、台車18をかご室12の中に搬入できるようになる。かご床10と建屋床17は同一面となっていることから、台車18は建屋床17からかご床10に容易に乗り込むことができる。一方、かご奥側かごドア3、かご奥側建屋ドア5は共に閉じられたままで、かご奥側出入り口30に設置された台車ストッパ11はかご床10の上に突出した状態が保持されている。後述するように、このかご奥側出入り口30に設置された台車ストッパ11はかご奥側かごドア3によって突出状態が保持されていることから、台車18をかご室12に搬入する時の振動などによって、格納位置から下がることがなく、台車18の搬入時にかご奥側の台車ストッパ11が確実に台車ストッパとして機能するという効果がある。したがって、この状態で、台車18をかご室12の中に搬入していくと、台車18はかご奥側の台車ストッパ11に当たって停止し、かご奥側かごドア3に接触してそれを損傷することが防止される。
【0025】
台車18をかご室12の中に搬入し終わり、図示しないドア開閉ボタンを押すと、かご手前側かごドア2、かご手前側建屋ドア4が閉まる。図7、図3に示すように、かご手前側かごドア2が閉動作によって下降してくると、このドアの下面が、かご手前側出入り口29に設置された動作棒13の上端に当たり、かご手前側かごドア2の重量が動作棒13にかかり始める。すると、かご手前側かごドア2の重量は動作棒13を介して、連接棒21に動作棒を下げる方向の回転モーメントを発生させる。さらに、かご手前側かごドア2が下がり動作棒にかかる荷重が増加して、この発生回転モーメントと先に説明した動作軸側回転モーメントの合計回転モーメントが、台車ストッパ側回転モーメントよりも大きくなると、連接棒21は動作棒13が下がり台車ストッパ11をかご床10の上に突出させる方向に回転する。そして、かご手前側かごドア2がかご床10の面上まで降下して停止すると、動作棒13は上端がかご手前側かごドア2に当接した状態で停止し、台車ストッパ11はかご床10の上に突出した状態で停止する。これによって、台車18の前後に台車ストッパ11が突出し、すべてのかごドア及び建屋ドアが閉められた状態となる。
【0026】
次に、図示しない荷物搬出階のボタンを押すと、小荷物専用昇降機用かご1は上下方向に走行を始める。走行中は図7に示すように、台車前後に台車ストッパ11が突出しているので、走行による振動で台車18が前後に移動することが防止され、走行中に台車がかごドアに接触し、かごドアが開閉不能になるということを防止できるという効果を奏する。
【0027】
図8に示すように、小荷物専用昇降機用かご1は荷物搬出階に到着すると、搬入階に到着した時と同様に、かご床10と建屋床17が同一の高さとなるような状態で停止する。停止後、図示しないドア開閉ボタンを押すと、かご奥側かごドア3とかご奥側建屋ドア5がそれぞれかご奥側かごドアガイドレール8、かご手前側建屋ドアガイドレール9に沿って上方に引き上げられ、かご奥側出入り口30が開かれる。かご奥側かごドア3が引き上げられると、かご奥側出入り口30に設置された動作棒13を押し下げていた荷重がなくなり、搬入階に到着した時と同様の動作で、台車ストッパ11が格納位置に下がり、動作棒13がかご床10の上に突出する。そして、常に台車ストッパ11が下がる方向に連接棒21が回転する回転モーメントが発生することから、台車ストッパの格納状態を容易に保持することができ、台車18の搬出時の振動などにより台車ストッパ11がかご床10の上に突出することを防止できる効果がある。また、動作棒13はかご床10の上に突出するが、その位置は図2に示すようにかご出入り口の両側端にあるため、台車の走行、搬入に支障はない。
【0028】
以上述べた、本発明の第1の実施形態は、動作棒13の荷重がなくなると、常に台車ストッパ11が下がる方向に連接棒21が回転する回転モーメントが発生することから、台車ストッパの格納状態を容易に保持し、台車18の搬入時の振動などにより台車ストッパ11がかご床10の上に突出することを防止でき、また、台車ストッパ11はかごドアによって突出状態が保持されていることから、台車18をかご室12に搬入する時の振動などによって、格納位置から下がることがなく、台車18の搬入時にかご奥側の台車ストッパ11が確実に台車ストッパとして機能するという効果がある。さらに、走行中には、台車前後に台車ストッパ11が突出しているので、走行による振動で台車18が前後に移動することが防止され、走行中に台車がかごドアに接触し、かごドアが開閉不能になるということを防止できるという効果を奏する。
【0029】
本発明の第1の実施形態は、かごドアの方向が貫通型の小荷物専用昇降機についてのものであるが、かごドアの方向が1方向に設置されている1方向型においても適用できる。この場合、かご奥側には固定式の台車ストッパ等を設置することによって、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0030】
本発明の第2の実施形態について図9を用いて説明する。図9は第2の実施形態による動作棒13、移動機構15、台車ストッパ11の構成を示す斜視図である。第1の実施形態と同様の部分には同様の記号を付して説明は省略する。台車ストッパ11は切欠部11cを有するストッパ部11aと接続棒11bで構成されている。連接棒21は一端において動作棒13に対して回転自在になるように動作棒取り付けピン20によって動作棒13に接続されており、他端は台車ストッパの接続棒11bに回転自在に取り付けられている。そして、各連接棒21、動作棒13毎に1つの台車ストッパ11が取り付けられている。図2に示すように動作棒13は各かご入り口部のかご手前側かごドア2及びかご奥側かごドア3のそれぞれの投影範囲内であって、かご床10の両側端に動作棒床貫通穴28を通って上下方向に移動可能に設置されている。また、台車ストッパ11は動作棒13よりもかごの中央側のかご床に台車ストッパ床貫通穴27を通って上下方向に移動可能に設置されている。このため、連接棒21はかご床の両側端の動作棒13とかご床中央側の台車ストッパ11を接続するように平面状でハの字型になるように構成されている。
【0031】
第2の実施形態の動作及び効果は第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態は第1の実施形態に比較して部品点数が少なくなることから、小型の小荷物専用昇降機により好適な構成となっている。
【0032】
本発明の第3の実施形態について図10を用いて説明する。図10は第3の実施形態による動作棒13、移動機構15、台車ストッパ11の構成を示す斜視図である。第1の実施形態と同様の部分には同様の記号を付して説明は省略する。第3の実施形態では、台車ストッパ11は左右に分割されず、一体となって構成されている。このため、台車ストッパ床貫通穴27も大きな長穴として構成されている。
【0033】
第3の実施形態の動作及び効果は第1の実施形態と同様であるが、第3の実施形態は第1の実施形態に比較して台車ストッパ11の幅が広く構成されていることから、かご室12に搬入される台車18の大きさ、幅にかかわらず、有効に台車ストッパとして動作することができる効果があり、たとえば、かご室12に複数の小型台車を搬入するような場合でも、有効に両輪にストッパがかかるようにすることができるという優れた効果を奏する。
【0034】
本発明の第4の実施形態について図11を用いて説明する。図11は第4の実施形態による動作棒13、移動機構15、台車ストッパ11の構成を示す斜視図である。第2、第3の実施形態と同様の部分には同様の記号を付して説明は省略する。第4の実施形態では、台車ストッパ11は左右に分割されず、一体となってかご床10の中央側に構成されている。台車ストッパ11の2箇所に切欠部11cを有する1枚の矩形の板の台車ストッパ部11aと、接続棒11bで構成されている。連接棒21は一端において動作棒13に対して回転自在になるように動作棒取り付けピン20によって動作棒13に接続されており、他端は台車ストッパの接続棒11bに回転自在に取り付けられている。そして、各連接棒21、動作棒13は1つの台車ストッパ11に取り付けられている。第2の実施例と同様に、連接棒21はかご床の両側端の動作棒13とかご床中央側の台車ストッパ11を接続するように平面状でハの字型になるように構成されている。
【0035】
第4の実施形態の動作及び効果は第2、第3の実施形態と同様であるが、第4の実施形態は第2、第3の実施形態に比較して、台車ストッパ11の幅がコンパクトに構成されていることから、かご室12に搬入される台車18の大きさ、幅にかかわらず、有効に台車ストッパとして動作することができる効果があり、かご室12に複数の小型台車を搬入するような場合でも、有効に両輪にストッパがかかるようにすることができるとともに、より小型の小荷物専用昇降機に適用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態の小荷物専用昇降機用かごの立面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の小荷物専用昇降機用かごの床平面図である。
【図3】本発明のかごドアが閉じた状態の移動機構を示す立面図である。
【図4】本発明のかごドアが開いた状態の移動機構を示す立面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の動作説明図(1)である。
【図7】本発明の第1の実施形態を動作説明図(2)である。
【図8】本発明の第1の実施形態を動作説明図(3)である。
【図9】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示す斜視図である。
【図12】小荷物専用昇降機の斜視図である。
【図13】小荷物専用昇降機の構造を示す斜視図である。
【図14】小荷物専用昇降機の平面説明図(1)である。
【図15】小荷物専用昇降機の平面説明図(2)である。
【図16】小荷物専用昇降機の平面説明図(3)である。
【図17】従来技術による機械式台車ストッパの平面図である。
【図18】従来技術による機械式台車ストッパの断面図である。
【図19】従来技術による電機式台車ストッパを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 小荷物専用昇降機用かご、2 かご手前側かごドア、3 かご奥側かごドア、4 かご手前側建屋ドア、5 かご奥側建屋ドア、6 かご手前側かごドアガイドレール、7 かご手前側建屋ドアガイドレール、8 かご奥側かごドアガイドレール、9 かご奥側建屋ドアガイドレール、10 かご床、11 台車ストッパ、11a 台車ストッパ部、11b 接続棒、11c 切欠部、12 かご室、13 動作棒、14 補強材、15 移動機構、16 ワイヤ、17 建屋床、18 台車、19 建屋天井、20 動作棒取り付けピン、21 連接棒、22 支持ピン、23 支点、24 台車ストッパ動作軸、25 取り付け部、26 連接棒ストッパ、27 台車ストッパ床貫通穴、28 動作棒床貫通穴、29 かご手前側出入り口、30 かご奥側出入り口、31 ガイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご出入り口側端に設置された、かご床面に対し上下方向に移動可能な動作棒と、
前記動作棒よりかご中央側のかご床に、かご床面に対して上下方向に出し入れ可能に設置された台車ストッパと、
前記動作棒のかご床面に対する移動方向と反対方向に台車ストッパを移動させる移動機構と、
前記かご出入り口を開閉するかごドアであって、開いている時にはかご床面より上面にある動作棒を、閉じた時には下方に押し下げるかごドアと
を有することを特徴とする小荷物専用昇降機用かご。
【請求項2】
複数方向に出入り口を有し、
前記各出入り口毎に、
動作棒と、
台車ストッパと、
移動機構と、
かごドアと
を有することを特徴とする請求項1に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項3】
移動機構は、
かご床下に設置された支持部材と、
一端が動作棒に対して回転自在に接続され、他端が台車ストッパに対して回転自在に接続されており、長手方向中間部に回転支点を有する連接棒と、
前記回転支点において、前記連接棒と支持部材とを回転自在に接続する支持ピンと
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項4】
回転支点周りの、台車ストッパ側の回転モーメントは、動作棒側の回転モーメントよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項5】
動作棒は、かご出入り口両側端に設置され、
台車ストッパが、各前記動作棒について1つずつ設置されていること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項6】
動作棒は、かご出入り口両側端に設置され、
一端が前記各動作棒に対して回転自在に接続され、他端が1つの台車ストッパに対して回転自在に接続された連接棒と
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項7】
動作棒は、かご出入り口両側端に設置され、
移動機構は、
かご床下に前記各動作棒について1つずつ設置された支持部材と、
1つまたは複数の台車ストッパを取り付けた台車ストッパ動作軸と、
一端が前記各動作棒に対して回転自在に接続され、他端が台車ストッパ動作軸に対して回転自在に接続されており、長手方向中間部に回転支点を有する連接棒と、
前記回転支点において、前記各連接棒と対応する前記支持部材とを回転自在に接続する支持ピンと
を有することを特徴とする請求項1又は2又は4に記載の小荷物専用昇降機用かご。
【請求項8】
かごドアは1枚上引き式であることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載の小荷物専用昇降機用かご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−45578(P2007−45578A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231885(P2005−231885)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】