説明

少なくとも1つのドラスタチン10誘導体を含有する新規な医薬組成物

本発明は、癌の治療における同時の、逐次の、又は別々の投与のための、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカンとの組み合わせにおける、少なくとも1つの式(I)の化合物を含んで成る医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドラスタチン10は、海洋軟体動物のドラベッラ・アウリクラリア(Dolabella auricularia)から単離された強力な有糸分裂阻害ペプチドとして知られ、これはチューブリン重合を阻害し、そしてタキサン及びビンカとは異なる化学クラスである (Curr. Pharm. Des. 1999, 5: 139-162)。ドラスタチン10の前臨床試験は、培養液及び動物中の異種移植腫瘍モデルにおいて多様なマウス及びヒト腫瘍細胞株に対する活性を示している。ドラスタチン10、並びに2つの合成ドラスタチン誘導体である、セマドチン及びTZT−1027はDrugs of the future 1999, 24(4): 404-409に記載されている。
【0002】
その後、ドラプロイン部分において多様なチオ基を有する、式(I)のドラスタチン10誘導体が、ヒト癌移植モデルにおいて有意に改善された抗腫瘍活性及び治療係数を示すことが発見された(WO03/008378)。
【0003】
化学療法、及びより特には、併用化学療法は、癌と闘うためによく許容される手段のひとつである。従って、異なる抗腫瘍剤の組み合わせは、相加作用以上の効果が明らかとなり、かつ/又は毒性がないことが観察される場合には、抗腫瘍効果を増加するための手段となり得る。
【0004】
このたび、少なくとも1つのドラスタチン10誘導体、特に以下に定義される少なくとも1つの式(I)のものの組み合わせが、既知の抗癌薬の、Xeloda(商標)、Herceptin(商標)、Omnitarg(商標)、Camptosar(商標)(日本ではTopotecin(商標))、又はPlatinol(商標)(日本ではRanda(商標))と一緒に投与される場合、相加作用以上の効果を示すことが発見された。
【0005】
従って、本発明は、癌の治療における同時の、逐次の、又は別々の投与のための、カペシタビン;トラスツズマブ;ペルツズマブ;イリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩;又はシスプラチンとの組み合わせにおける、少なくとも1つの式(I)
【化1】

の化合物又はその医薬的に許容される塩を含んで成る医薬組成物であって、
式中、
1及びR2は、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル又はブチルであり;
3は、(C1−C4)−アルキレンを有する、フェニルアルキル−、又はフェニルジアルキルアミノ、又はフェニルアルキルオキシであり、そしてここで該フェニル基は、ハロゲン;アルコキシカルボニル;スルファモイル;アルキルカルボニルオキシ;カルバモイルオキシ;シアノ;モノ−若しくはジ−アルキルアミノ;アルキル;アルコキシ;フェニル;フェノキシ;トリフルオロメチル;トリフルオロメトキシ;アルキルチオ;ヒドロキシ;アルキルカルボニルアミノ;1,3−ジオキソリル;1,4−ジオキソリル;アミノ及びベンジルから成る群から選択される1、2又は3つの置換基により任意的に置換されてよい、医薬組成物に関する。
【0006】
好ましい態様において、本発明は、癌の治療における同時の、逐次の、又は別々の投与のための、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブとの組み合わせにおける、少なくとも1つの式(I)
【化2】

の化合物又はその医薬的に許容される塩を含んで成る医薬組成物であって、
式中、
1及びR2は、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル又はブチルであり;
3は、(C1−C4)−アルキレンを有する、フェニルアルキル−、又はフェニルジアルキルアミノ、又はフェニルアルキルオキシであり、そしてここで該フェニル基は、ハロゲン;アルコキシカルボニル;スルファモイル;アルキルカルボニルオキシ;カルバモイルオキシ;シアノ;モノ−若しくはジ−アルキルアミノ;アルキル;アルコキシ;フェニル;フェノキシ;トリフルオロメチル;トリフルオロメトキシ;アルキルチオ;ヒドロキシ;アルキルカルボニルアミノ;1,3−ジオキソリル;1,4−ジオキソリル;アミノ及びベンジルから成る群から選択される1、2又は3つの置換基により任意的に置換されてよい、医薬組成物に関する。
【0007】
Herceptin(商標)(トラスツズマブ)は、組換えDNA由来の、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質、HER2の細胞外ドメインと高い親和性を伴い選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。
【0008】
Omnitarg(商標)(ペルツズマブ;2C4)は、HER二量体形成阻害財(HDI)として知られるヒト化抗体である。HDIは、他のHER受容体ファミリーメンバー(HER1/EGFR、HER3、及びHER4)と協力するHER2受容体の活性を遮断する。癌細胞において、他のHERファミリー受容体と協力するHER2の能力を阻害することは、細胞シグナル伝達を遮断し、そして最終的には癌細胞成長阻害及び癌細胞死に導くことができる。HDIは、これらの独特の作用機構のために、広範な腫瘍、例えば、HER2を過剰発現しないものにおいて、作用するための可能性を有する。
【0009】
Xeloda(商標)(カペシタビン)は、抗腫瘍活性を有するフルオロピリミジンカルバメートである。
【0010】
Camptosar(商標)(Topotecin(商標)、Campto(商標);イリノテカン塩酸塩;CPT−11)は、半合成の、カンプトテシンの水溶性誘導体であって、これは、カンプトセカ・アキュミナタ(Camptotheca acuminata)等の植物から抽出される細胞障害性アルカロイドである。イリノテカン及びその活性代謝産物であるSN−38は、トポイソメラーゼI(DNA間複製における可逆的な一本鎖切断を産生する酵素)を阻害する。
【0011】
Platinol(商標)(日本ではRanda(商標);Briplatin(商標);シス−ジアミンジクロロ白金;CDDP;シスプラチン)は、無機白金(II)錯体である。これは、多様な腫瘍(生殖細胞、進行型膀胱癌、副腎皮質癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌)のために広く記載されている。これは、続けて1〜5日間静脈内に投与され、続いて2〜3週間静止する。
【0012】
本明細書に使用される「医薬的に許容される塩」の語は、本発明の化合物、例えば、式(I)の化合物の生物学的有効性及び特性を維持する、慣習的な酸−又は塩基付加塩を意味する。本発明に従い、酸付加塩が特に好ましく、そして適当な無毒性の有機又は無機酸から形成される。酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸に由来するもの、並びに有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等に由来するものを含む。医薬化合物(すなわち薬物)の塩への化学修飾は、化合物の改善された物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性、及び溶解性を得るために当業者に周知な技術である。例えば、Ansel, H., et. al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th ed., 1995を参照のこと。
【0013】
式(I)の化合物に関して、トリフルオロ酢酸又は塩酸と形成される医薬的に許容される塩が特に好ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様は、上述のとおり、少なくとも1つの式(I)の化合物を含んで成る医薬組成物であって、式中
1及びR2がメチルであり;そして
3が上述に定義したとおりである、医薬組成物である。
【0015】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物が、式(I−A)
【化3】

の化合物である、医薬組成物である。
【0016】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がトラスツズマブとの組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0017】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がペルツズマブとの組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0018】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビンとの組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0019】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がシスプラチンとの組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0020】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がイリノテカン又はその医薬的に許容される塩との組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0021】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がイリノテカン塩酸塩との組み合わせにおいて投与される、医薬組成物である。
【0022】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と同時に投与される、医薬組成物である。
【0023】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと同時に投与される、医薬組成物である。
【0024】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がシスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と同時に投与される、医薬組成物である。
【0025】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がイリノテカン塩酸塩と同時に投与される、医薬組成物である。
【0026】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と逐次的に投与される、医薬組成物である。
【0027】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと逐次的に投与される、医薬組成物である。
【0028】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がシスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と逐次的に投与される、医薬組成物である。
【0029】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がイリノテカン塩酸塩と逐次的に投与される、医薬組成物である。
【0030】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と別々に投与される、医薬組成物である。
【0031】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がカペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと別々に投与される、医薬組成物である。
【0032】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がシスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と別々に投与される、医薬組成物である。
【0033】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、上記式(I)の化合物がイリノテカン塩酸塩と別々に投与される、医薬組成物である。
【0034】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、癌の治療のための医薬組成物の使用である。
【0035】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、固形腫瘍の治療のための医薬組成物の使用である。
【0036】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、又は肺癌の治療のための医薬組成物の使用である。
【0037】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、又は乳癌の治療のための医薬組成物の使用である。
【0038】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、肺癌、特に非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のための医薬組成物の使用である。
【0039】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、肺癌、好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)の治療のための、式(I)又は(I−A)の化合物を、シスプラチン又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と一緒に含有する医薬組成物の使用である。
【0040】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、癌の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0041】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、固形腫瘍の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0042】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、又は肺癌の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0043】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、又は乳癌の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0044】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、肺癌の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0045】
本発明の他の好ましい態様は、上述のとおり、非小細胞肺癌の治療のための医薬の製造のための医薬組成物の使用である。
【0046】
特に、本発明は、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)と、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、及びイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩の、治療的な相加効果以上の組み合わせによる癌の治療;並びに、癌、特に固形腫瘍、更に特には上述のものの改善された治療のためのこのような組み合わせの使用、に関する。
【0047】
より特には、本発明は、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)と、カペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブの治療的な相加作用以上の組み合わせによる癌の治療;並びに、癌、特に固形腫瘍、更に特には上述のものの改善された治療のためのこのような組み合わせの使用、に関する。
【0048】
より特には、本発明は、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)と、シスプラチン、及びイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩の、治療的な相加効果以上の組み合わせによる癌の治療;並びに、癌、特に固形腫瘍、更に特には上述のものの改善された治療のためのこのような組み合わせの使用、に関する。
【0049】
より特には、本発明は、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)と、イリノテカン塩酸塩の、治療的な相加効果以上の組み合わせによる癌の治療;並びに、癌、特に固形腫瘍、更に特には上述のものの改善された治療のためのこのような組み合わせの使用、に関する。
【0050】
本発明に従うN−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミドを伴う、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、及びイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩のそれぞれの投与が、改善された、相加的効果以上の抗悪性腫瘍作用をもたらすことは、予想できない発見であった。これは、上記抗悪性腫瘍作用が、各化合物単独の効果の単純な加算により得られる結果よりも有意に優れていることを意味する。すなわち、本発明に従う各組み合わせの投与は、有意な毒性の増加(実験における体重制御により判断された)を伴うことなく、いずれの成分と比較しても、改善された治療指標(すなわち、優れた有効性)をもたらした。あるいは、本発明は、少なくとも1つの成分(単独治療に与えられる典型的な量との比較において)の量の減少を許容する一方、所望の治療指標を維持する。好ましい態様において、両成分の量(単独治療に与えられる典型的な量との比較において)は減少し、毒性を低下する一方、所望の治療指標をなお維持する。
【0051】
本発明は、より特には、癌の治療方法であって、該方法が、少なくとも1つの式(I)又は(I−A)の化合物から成る第一成分、及びカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩から成る第二成分を含有する治療組成物の有効量を、治療を必要とする患者に対して投与することを含んで成る方法であって;該方法は、上記組成物がそれぞれの活性成分単独の効果に対して相加効果以上の効果を示すことにより特徴づけられる方法、に関する。
【0052】
さらには、本発明は、癌の治療方法であって、該方法が、少なくとも1つの式(I)又は(I−A)の化合物から成る第一成分、及びカペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブから成る第二成分を含有する治療組成物の有効量を、治療を必要とする患者に対して投与することを含んで成る方法であって;該方法は、上記組成物がそれぞれの活性成分単独の効果に対して相加効果以上の効果を示すことにより特徴づけられる方法、に関する。
【0053】
本発明は、より特には、非小細胞肺癌の治療方法であって、該方法が、少なくとも1つの式(I)又は(I−A)の化合物から成る第一成分、及びシスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩から成る第二成分を含有する治療組成物の有効量を、治療を必要とする患者に対して投与することを含んで成る方法であって;該方法は、上記組成物がそれぞれの活性成分単独の効果に対して相加効果以上の効果を示すことにより特徴づけられる方法、に関する。
【0054】
本発明の方法に従い、2つの成分;式(I)又は(I−A)の化合物、及びカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩は、同時に、別々に、又は時間に対して順番に投与することができる。別々に投与される場合、式(I)又は(I−A)の化合物を最初に投与してもよく、あるいはカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩を最初に投与してもよい。
【0055】
上記に定義したとおり、治療組成物は、治療的に有効量の、少なくとも1つの式(I)又は(I−A)の化合物、及びカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩、並びにそのままの状態で、あるいはカプセル中に液体組成物、例えば、溶液又は懸濁液;又は固形組成物、例えば、圧縮錠、ピル、粉末等を、一緒に、あるいは別々に形成するための医薬的に許容される支持体を含んで成る。好ましい用量及び剤形は、上述の製品のそれぞれの単独治療において典型的に推奨されるものに対応し、そして対応する文献から当業者は容易に入手することができる。好ましくは、式(I)又は(I−A)の化合物、及び第二追加成分の投与は、癌の種類、及びより特には腫瘍の種類に依存する治療法に従い行われる。本発明に従う、式(I)又は(I−A)の化合物、及びカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩の組み合わせの投与についての投与範囲は、投与経路、並びに患者の状態(年齢、疾患の程度)により変更することもできる。
【0056】
投与の使用に関係なく、すなわち、同時に、別々に、逐次的に、2つの成分である、式(I)又は(I−A)の化合物、及びカペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩は、同じ、あるいは異なる投与経路により投与することができる。これらが別々の形態で存在する場合にはこれらは同一又は異なる投与経路により投与することができ、そしてこれらが別々の形態でなく存在する場合には同一の投与経路により投与することができる。
【0057】
カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン塩酸塩は当業者に既知である。好ましい用量及び剤形は、よく記載されており、そして当業者により容易に入手することができる。本発明に従う好ましい用量は、5〜50mg/kg、好ましくは15〜30mg/kg、のトラスツズマブ;5〜60mg/kg、好ましくは20〜40mg/kgのペルツズマブ;そして50〜550mg/kg、好ましくは150〜400mg/kg、より好ましくは300〜400mg/kgのカペシタビンである。シスプラチンは、0.5〜10mg/kg、好ましくは4〜7mg/kgの用量において使用され;そしてイリノテカン塩酸塩は、10〜120mg/kg、好ましくは30〜100mg/kg、より好ましくは60〜90mg/kgの用量において使用される。
【0058】
式(I−A)の化合物のための最大耐量(MTD)は、本発明に従う実験において6mg/kgであることが決定された。従って、式(I−A)の化合物は、0.1〜6mg/kgの用量において、好ましくは1〜6mg/kgの用量において、より好ましくは3、4、及び6mg/kgの用量において投与することができる。一定の式(I)の化合物はより高いMTDを示し、従って本発明の精神に離れることなく6mg/kg以上の用量も投与可能であることが理解される。
【0059】
特に、本発明に従う各3つの組み合わせについて以下の結果が観察された:
【0060】
トラスツズマブを伴う式(I−A)の化合物(Herceptin(商標)、KPL−4異種移植モデル):
式(I−A)の化合物、又はトラスツズマブのいずれかによる単独治療の結果に反して、20mg/kgのトラスツズマブを伴う3、4及び6mg/kgの式(I−A)の化合物の併用実験は、KPL−4ヒト乳癌モデルにおける全ての用量で長期間(少なくとも70日間)の有意な腫瘍縮小をもたらした。触知可能腫瘍は、3mg/kg(1/2MTD)又は4mg/kg(2/3MTD)の式(I−A)の化合物及び20mg/kg(MTD)のトラスツズマブにおける28日後において存在しなかった。式(I−A)の化合物とトラスツズマブの組み合わせによるマウス中の抗腫瘍活性の観察は、252日目まで続いた。6mg/kg(MTD)の式(I−A)の化合物及び20mg/kg(MTD)のトラスツズマブの組み合わせもまた、腫瘍縮小をもたらした。更に、3mg/kgの式(I−A)の化合物及び20mg/kgのトラスツズマブで5匹中2匹において、そして4又は6mg/kgの式(I−A)の化合物及び20mg/kgのトラスツズマブで全てのマウスにおいて、完全な腫瘍縮小が観察された。
【0061】
併用における各薬物の効力を定量化するために、最後の注射後1週間目に集めたデータで統計分析を行った。3、4、又は6mg/kgにおける式(I−A)の化合物で処理した腫瘍の大きさは2.5%DMSO−生理食塩水及び20mg/kgのヒトIgG対照と比較して有意に減少した。更に、20mg/kgのトラスツズマブを伴う3、4、又は6mg/kgの式(I−A)の化合物の併用治療における腫瘍体積を、21日目において式(I−A)の化合物の単独治療のものと比較した:全ての組み合わせにおいて、単独治療のものと比較して優れた抗腫瘍活性を示した。
【0062】
これらの発見に基づく本発明の特に好ましい態様は、3mg/kgの式(I−A)の化合物と20mg/kgのトラスツズマブの組み合わせである。
【0063】
本発明の他の特に好ましい態様は、4又は6mg/kgの式(I−A)の化合物と20mg/kgのトラスツズマブの組み合わせである。
【0064】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、乳癌の治療のための医薬の製造のための上に定義される組み合わせである。
【0065】
ペルツズマブを伴う式(I−A)の化合物(Omnitarg(商標)、KPL−4異種移植モデル):
KPL−4ヒト乳癌異種移植モデルを使用するこれらの併用実験において、式(I−A)の化合物の全ての投与量において、有意な腫瘍縮小が観察された。4mg/kgの式(I−A)の化合物及び30mg/kgのペルツズマブでの28日後、腫瘍の痕跡は触診により検出されなかった。式(I−A)の化合物とペルツズマブの組み合わせによるマウスにおける抗腫瘍活性の観察を133日まで続けた。4mg/kgの式(I−A)の化合物及び30mg/kgのペルツズマブの組み合わせは、強力な腫瘍縮小を示した。更に、4mg/kgの式(I−A)の化合物及び30mg/kgのペルツズマブにおいて5匹中3匹の腫瘍が完全に消失した。
【0066】
併用における各薬物の効力を評価するために、最後の注射後1週間目に評価した腫瘍体積における結果を用いて統計分析を行った。3、4、又は6mg/kgにおける式(I−A)の化合物で処理した腫瘍の大きさは、対照と比較して有意に減少し;Tukey試験を使用して21日目において有意な違いが観察された(3mg/kgにおいてP=0.0038、及び4又は6mg/kgにおいてP<0.0001)。更に、ペルツズマブを伴う3、4、又は6mg/kgの式(I−A)の化合物の併用治療における腫瘍体積を、21日目において式(I−A)の化合物の単独治療のものと比較した:全ての組み合わせにおいて、式(I−A)の化合物の単独治療のものと比較して優れた抗腫瘍活性を示した。
【0067】
これらの発見に基づく本発明の特に好ましい態様は、4mg/kgの式(I−A)の化合物と30mg/kgのペルツズマブの組み合わせである。
【0068】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、乳癌の治療のための医薬の製造のための上に定義される組み合わせである。
【0069】
カペシタビンを伴う式(I−A)の化合物(Xeloda(商標);MAXF−401異種移植モデル):
359mg/kgのカペシタビンとの組み合わせにおける各用量(3、4又は6mg/kg)の式(I−A)の抗腫瘍活性は、MAXF−401ヒト乳癌異種移植モデルにおいて、いずれかの単一薬剤のものと同様であることを示した。各用量の式(I−A)の化合物及び539mg/kg(MTD)のカペシタビンの組み合わせは、有利な効果を示さなかった。
【0070】
抗腫瘍効果を評価するために、最後の注射後1週間目に評価した腫瘍体積における結果を用いて統計分析を行った。3、4、又は6mg/kgにおける式(I−A)の化合物で処理した腫瘍の大きさは、有意に、あるいは2.5%DMSO対照において(観察されたものよりも)減少した。更に、カペシタビンを伴う3、4、又は6mg/kgの式(I−A)の化合物の併用治療における腫瘍体積を、21日目において式(I−A)の化合物の単独治療のものと比較した:組み合わせは単独治療で観察されたものと同様の抗腫瘍活性をもたらした。しかしながら、観察された縮小の持続期間は、カペシタビンの単独治療によるよりも併用による方がより長かった。
【0071】
これらの発見に基づく本発明の特に好ましい態様は、4mg/kgの式(I−A)の化合物と359mg/kgのカペシタビンの組み合わせである。
【0072】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、乳癌の治療のための医薬の製造のための上に定義される組み合わせである。
【0073】
シスプラチンを伴う式(I−A)の化合物(Platinol(商標);NCI−H460異種移植モデル):
NCI−H460ヒト肺大細胞異種移植モデルにおけるCDDPとの組み合わせにおける式(I−A)の化合物の抗腫瘍活性を試験した。式(I−A)の化合物を、連続3週間週に1回投与し、そしてCDDPを、治療の初日に投与した。2mg/kg(1/3の最大耐量、MTD)及び3mg/kg(1/2MTD)の用量において、式(I−A)の化合物は、12日目において、腫瘍成長をそれぞれ45%及び93%減少した。5mg/kg(1/2MTD)及び6.7mg/kg(2/3MTD)の用量において、CDDPは、12日目において、腫瘍成長をそれぞれ56%及び66%減少した。2mg/kgの式(I−A)の化合物と6.7mg/kgのCDDPの組み合わせは、12日目における体重減少により判断した毒性を伴わずに、式(I−A)の化合物又はCDDP単独の対応するよう衣料で観察されるものよりも104%減少した。3mg/kgの式(I−A)の化合物と5mg/mgのCDDPの組み合わせは、12日目における体重減少により判断した毒性を伴わずに、式(I−A)の化合物又はCDDP単独の対応するよう衣料で観察されるものよりも108%減少した。
【0074】
従って、本発明の好ましい態様は、2mg/kgの式(I−A)の化合物と6.7mg/kgのCDDPの組み合わせである。
【0075】
本発明の更に他の好ましい態様は、3mg/kgの式(I−A)の化合物と5mg/kgのCDDPの組み合わせである。
【0076】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、非小細胞肺癌の治療のための医薬の製造のための上に定義される組み合わせである。
【0077】
イリノテカンを伴う式(I−A)の化合物(Camptosar(商標);Calu−6異種移植モデル):
イリノテカンとの組み合わせにおける式(I−A)の化合物の抗腫瘍活性を、Calu−6ヒト肺癌異種移植モデルを用いて測定した。以前の実験に従い、最大耐量(MTD)の式(I−A)の化合物は、6mg/kgであり、イリノテカンは120mg/kgであると定義された。式(I)の化合物を連続3週で週に1回投与し、そしてイリノテカンは連続2週間で週に1回投与し、その後1週間休止した。0.375mg/kg、0.75mg/kg、1.5mg/ml、及び3mg/kgの式(I−A)の化合物は、用量に依存して、それぞれ11%、21%、41%、及び117%腫瘍成長を阻害し、そして摂取後32日目に測定した。80mg/kg(2/3MTD)のイリノテカンにおいて、腫瘍の成長は、32日目において68%阻害された。80mg/kg(2/3MTD)のイリノテカンとの組み合わせにおける1.5mg/kg(1/4MTD)の式(I−A)の化合物の抗腫瘍活性は、32日目において110%であった。該効果は、単一の薬剤に関して相加以上であった。体重減少により判断されたとおり、この組み合わせにおいて無毒であることが観察された。80mg/kgのイリノテカンとの組み合わせにおける0.375mg/kg(1/16MTD)又は0.75mg/kg(1/8MTD)の式(I−A)の化合物の抗腫瘍活性は、32日目においてイリノテカン単独のものと一致した。3mg/kg(1/2MTD)の式(I−A)の化合物と80mg/kg(2/3MTD)のイリノテカンの組み合わせは毒性であった。
【0078】
従って、本発明の好ましい態様は、1.5mg/kgの式(I−A)の化合物と80mg/kgのイリノテカン塩酸塩の組み合わせである。
【0079】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、非小細胞肺癌の治療のための医薬の製造のための上に定義される組み合わせである。
【0080】
カペシタビンを伴う式(I−A)の化合物(Xeloda(商標);HT−29異種移植モデル):
HT−29ヒト結腸直腸癌異種移植モデルにおけるカペシタビンとの組み合わせにおける式(I−A)の化合物の抗腫瘍活性を調べた。式(I−A)の化合物を連続3週間週に1回投与し、そしてカペシタビンは14日間に1回投与した。3mg/kg(1/2の最大耐量、MTD)、及び4mg/kg(2/3MTD)の用量において、式(I−A)の化合物は、31日目において、それぞれ76%及び101%腫瘍成長を減少した。359mg/kg(2/3MTD)及び539mg/kg(MTD)の用量において、カペシタビンは、31日目において、それぞれ32%及び50%腫瘍成長を減少した。3mg/kg(1/2MTD)の式(I−A)の化合物及び539mg/kg(MTD)のカペシタビンの組み合わせは、110%腫瘍成長を減少した。4mg/kg(2/3MTD)の式(I−A)の化合物及び359mg/kg(2/3MTD)のカペシタビンの組み合わせは、31日目において、115%腫瘍成長を減少した。
【0081】
これらの組み合わせにおいて、31日目における最大体重減少により判断した毒性を伴うことなく、式(I−A)の化合物又はカペシタビンの対応する用量によるものよりも増加した抗腫瘍活性が観察された。
【0082】
従って、本発明の好ましい態様は、3mg/kgの式(I−A)の化合物と539mg/kgのカペシタビンの組み合わせである。
【0083】
本発明の他の好ましい態様は、4mg/kgの式(I−A)の化合物と359mg/kgのカペシタビンの組み合わせである。
【0084】
本発明の更に他の特に好ましい態様は、直腸大腸癌の治療のための医薬の製造のための上に定義されるいずれか2つの組み合わせの使用である。
【0085】
他の態様において定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び科学的用語及び略語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解される意味を有する。同様に、本明細書に言及されている全ての刊行物、特許出願、全ての特許並びに全てのほかの参考文献は、引用により組み入れられている。
【0086】
本明細書において使用される「媒体」の語は、単独、又はそれぞれの医薬との組み合わせにおける、式I−Aの化合物、あるいはそれぞれの医薬単独が皮下投与のために溶解される溶液を意味する。本発明に従うこのような溶液、並びにその使用及び効果の説明は、以下の実施例により例証され、これは本発明の範囲を制限するように考慮してはならない。
【0087】
以下の実施例において、多様な異種移植モデルにおける本発明の化合物、特に式I−Aの化合物の抗腫瘍活性の測定はPlowman J, Dykes DJ, Hollingshead M, Simpson-Herren L and Alley MC, in Anticancer Drug Development Guide: Preclinical Screening, Clinical Trials and Approval, Teicher B (ed), Humana Press Inc, Totowa (NJ), 1997, pp 101-125に記載された方法に従い行われた(Chapter 6: Human Tumor Xenograft Models in NCI Drug Development)。
【実施例】
【0088】
実施例1:
トラスツズマブ(Herceptin(商標))との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0089】
ヒト腫瘍細胞株
KPL−4ヒト乳癌細胞株は、Prof. Kurebayashi, Kawasaki Medical Centerにより親切にも提供された。該細胞は5%(v/v)ウシ胎仔血清(Roche Diagnostics)で補充したダルベッコMEM(Sigma Chemical Co.)中で培養した。
【0090】
動物
140匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。該マウスは、12時間の明/暗周期下において空調室で飼育した(温度22±2℃、相対湿度55±10%)。該マウスに、25μg/mLのゲンタマイシンを伴う無菌化CE−2及び水道水を任意に与えた。Nippon Roche Research Centerの動物施設 (現在はKamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.)における14日間の検疫後、該マウスを実験に供した。
【0091】
薬物
表題の化合物(式(I−A)の化合物)は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。トラスツズマブ(Herceptin)はChugai Pharmaceutical Co., Ltd.から購入した。表題の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO、Wako Pure Chemical Industries Ltd.)中に溶解し、そして投与前に生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Co., Ltd.)を伴う2.5%DMSO中に希釈した。投与前に、トラスツズマブを生理食塩水に溶解し、そして希釈した。精製したヒトIgG(ICN Pharmaceuticals, Inc.)を、20mg/mLの原液の生理食塩水中に溶解及び希釈した。投与前に、該原液を20mg/kgの投与量用に生理食塩水で希釈した。
【0092】
抗腫瘍活性の測定
フラスコ中で慣習的に培養したKPL−4の単一細胞懸濁液(マウスあたり4×106)を、胸腺欠損ヌードマウスの右側の2番目の乳房脂肪体の乳頭下において100μLの用量において同所的に移植した。腫瘍移植後43日目において225〜485mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各5匹のマウスから成る、8つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ340mm3及び18.6gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。表題の化合物(3mg/kg、4mg/kg、又は6mg/kg)、又はその媒体を、3週連続で週に1回静脈内に投与した(0.2mL/マウス)。トラスツズマブ又はIgG溶液を、0、4、7、11、14、及び18日目に3週間、週に2回、腹腔内に投与した(0.2mL/マウス)。対照グループにおけるマウスには、処理グループとして同じ容量の媒体を与えた:表題の化合物用の生理食塩水中の0.2mLの2.5%DMSO、及び0.2mLの20mg/kgヒトIgG又はトラツズマブ。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。最後の注射1週間後に、腫瘍成長阻害(TGI)を式(1−T/C)×100(%)(式中、T(処理グループ)及びC(対照グループ)は、平均腫瘍容積変化を表す)を使用して計算した。XLフィットプログラムを使用して、21日目における腫瘍成長阻害値からED50値を計算した。最大耐量(MTD)を、死亡率又は20%体重減少のいずれも伴わない用量として定義した。
【0093】
統計分析
統計分析のためにパーケージソフトウェア(SAS preclinical package version 5.0, SAS Institute Japan, Ltd.)を使用した。薬物の効力を推定するために、Tukey試験を使用して処理された個々の腫瘍体積値を対照のものと比較した。XLフィットプログラム#509(MS Excel Add Version 3.0.5 Build -In: XLfit3 12, ID Business Solutions Ltd.)を使用して、腫瘍成長阻害パーセント値からED50値を計算した。
【0094】
実施例2:
ペルツズマブ(Omnitarg(商標))との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0095】
ヒト腫瘍細胞株
KPL−4ヒト乳癌細胞株は、Prof. Kurebayashi, Kawasaki Medical Centerにより親切にも提供された。該細胞は5%(v/v)ウシ胎仔血清(Roche Diagnostics)で補充したダルベッコMEM(Sigma Chemical Co.)中で培養した。
【0096】
動物
100匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。該マウスは、12時間の明/暗周期下において空調室で飼育した(温度22±2℃、相対湿度55±10%)。該マウスに、25μg/mLのゲンタマイシンを伴う無菌化CE−2及び水道水を任意に与えた。Nippon Roche Research Centerの動物施設 (現在はKamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.)における14日間の検疫後、該マウスを実験に供した。
【0097】
薬物
表題の化合物(式(I−A)の化合物)は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。ペルツズマブはRoche Diagnostics GmbHにより供された。表題の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO、Wako Pure Chemical Industries Ltd.)中に溶解し、そして投与前に生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Co., Ltd.)を伴う2.5%DMSO中に希釈した。投与前に、ペルツズマブを生理食塩水に溶解し、そして希釈した。精製したヒトIgG(ICN Pharmaceuticals, Inc.)を、25mg/mLの原液の生理食塩水中に溶解及び希釈した。投与前に、該原液を30mg/kgの投与量用に生理食塩水で希釈した。
【0098】
抗腫瘍活性の測定
フラスコ中で慣習的に培養したKPL−4の単一細胞懸濁液(マウスあたり4.5×106)を、胸腺欠損ヌードマウスの右側の2番目の乳房脂肪体の乳頭下において100μLの用量において同所的に移植した。腫瘍移植後18日目において190〜356mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各5匹のマウスから成る、9つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ226mm3及び20gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。表題の化合物(3mg/kg、4mg/kg、又は6mg/kg)、又はその媒体を、3週連続で週に1回静脈内に投与した(0.2mL/マウス)。ペルツズマブ又はIgG溶液を、0、7、及び14日目に3週間、週に1回、腹腔内に投与した(0.2mL/マウス)。対照グループにおけるマウスには、処理グループとして同じ容量の媒体を与えた:表題の化合物用の生理食塩水中の0.2mLの2.5%DMSO、及び0.2mLの20mg/kgヒトIgG又はペルツズマブ。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。最後の注射1週間後に、腫瘍成長阻害(TGI)を式(1−T/C)×100(%)(式中、T(処理グループ)及びC(対照グループ)は、平均腫瘍容積変化を表す)を使用して計算した。XLフィットプログラムを使用して、21日目における腫瘍成長阻害値からED50値を計算した。最大耐量(MTD)を、死亡率又は20%体重減少のいずれも伴わない用量として定義した。
【0099】
統計分析
統計分析のためにパーケージソフトウェア(SAS preclinical package version 5.0, SAS Institute Japan, Ltd.)を使用した。薬物の効力を推定するために、Tukey試験を使用して処理された個々の腫瘍体積値を対照のものと比較した。XLフィットプログラム#509(MS Excel Add Version 3.0.5 Build -In: XLfit3 12, ID Business Solutions Ltd.)を使用して、腫瘍成長阻害パーセント値からED50値を計算した。
【0100】
実施例3:
カペシタビン(Xeloda(商標))との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0101】
ヒト腫瘍細胞株
MAXF−401ヒト乳癌細胞株は、Prof. Fiebig (University of Freiburg, Germany)から得た。該細胞をマウス中で維持し;腫瘍断片を皮下に移植し、そして使用の前にマウスにおいて連続的に継代した。
【0102】
動物
100匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。該マウスは、12時間の明/暗周期下において空調室で飼育した(温度22±2℃、相対湿度55±10%)。該マウスに、25μg/mLのゲンタマイシンを伴う無菌化CE−2及び水道水を任意に与えた。Nippon Roche Research Centerの動物施設 (現在はKamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.)における5日間の検疫後、該マウスを実験に供した。
【0103】
薬物
表題の化合物(式(I−A)の化合物)は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。該表題の化合物をジメチルスルホキシド (DMSO、Wako Pure Chemical Industries Ltd.)中に溶解し、そして投与前に生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Co., Ltd.)を伴う2.5%DMSO中に希釈した。投与前に、カペシタビンを溶解し、そして5%アラビアゴム−40mMクエン酸緩衝液(pH6)で希釈した。
【0104】
抗腫瘍活性の測定
10〜20mg(約2×2×2mm3)のMAXF401の腫瘍断片を各マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍移植後35日目において245〜588mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各5匹のマウスから成る、11つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ401mm3及び22gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。表題の化合物(3mg/kg、4mg/kg、又は6mg/kg)、又はその媒体を、3週連続で週に1回静脈内に投与した(0.2mL/マウス)。カペシタビン又はその媒体を、14日連続で1日に1回、経口投与した(0.5mL/マウス)。対照グループにおけるマウスには、処理グループのものと同じ容量の媒体を与えた:表題の化合物用の生理食塩水中の0.2mLの2.5%DMSO、及びカペシタビン用の0.5mLの5%アラビアゴム−40mMクエン酸緩衝液(pH6)。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。最後の注射1週間後に、腫瘍成長阻害(TGI)を式(1−T/C)×100(%)(式中、T(処理グループ)及びC(対照グループ)は、平均腫瘍容積変化を表す)を使用して計算した。XLフィットプログラムを使用して、21日目における腫瘍成長阻害値からED50値を計算した。最大耐量(MTD)を、死亡率又は20%体重減少のいずれも伴わない用量として定義した。
【0105】
統計分析
統計分析のためにパーケージソフトウェア(SAS preclinical package version 5.0, SAS Institute Japan, Ltd.)を使用した。薬物の効力を推定するために、Tukey試験を使用して処理された個々の腫瘍体積値を対照のものと比較した。XLフィットプログラム#509(MS Excel Add Version 3.0.5 Build -In: XLfit3 12, ID Business Solutions Ltd.)を使用して、腫瘍成長阻害パーセント値からED50値を計算した。
【0106】
実施例4:
シスプラチン(Randa(商標)、CDDP)との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0107】
ヒト腫瘍細胞株
NCI−H460ヒト肺大細胞癌細胞株は、American Type Culture Collection (Rockville, MD, U.S.A.)から購入した。該細胞は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(cat. # 047115, lot # 31300124; Roche Diagnostics KK, Tokyo, Japan)で補充したRPMI−1640培地(cat. # R8758, lot 12K2310, exp 01/03; lot 82K2497, exp 08/03; Sigma- Aldrich corporation, MO, U.S.A.)中で培養した。
【0108】
動物
60匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。全てのマウスは、実験にかける前に、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.の動物施設において8日間保った。
【0109】
薬物
表題の化合物は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。CDDP(Randa(TM), lot # 924150) はNippon Kayaku Co., Ltd. (Tokyo, Japan)から得た。投与日に、該表題の化合物をジメチルスルホキシド (DMSO、Wako Pure Chemical Industries Ltd.)中に溶解し、そして投与前に生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Co., Ltd.)を伴う2.5%DMSOで希釈した。投与日に、CDDPを生理食塩水で希釈した。
【0110】
抗腫瘍活性の測定
NCI−H460の単一細胞懸濁液(マウスあたり5.6×106細胞)を各マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。腫瘍移植後7日目において150〜245mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各5匹のマウスから成る、8つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ187mm3及び24.3gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。表題の化合物(2mg/kg又は3mg/kg)、CDDP(5mg/kg又は6.7mg/kg)、及び各媒体を、静脈内に投与した。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。投与期間中少なくとも1匹のマウスの死が観察されるか、あるいは投与期間中に治療開始日と比較して半数以上のマウスが20%以上の継続的な体重減少を示す場合に、用量が毒性であると定義した。腫瘍成長阻害は、等式(1−ΔT/ΔC)×100(式中、ΔTは治療グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示し、ΔCは、媒体グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示す)を使用して計算した。
【0111】
実施例5:
イリノテカン(Topotecin(商標))との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0112】
ヒト腫瘍細胞株
Calu−6ヒト肺癌細胞株は、American Type Culture Collection (MD, U.S.A.)から購入した。該細胞は、0.1ミリモル/Lの非必須アミノ酸(Invitrogen corporation, CA, U.S.A.)、1ミリモル/Lのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen corporation, CA, U.S.A.)、及び10%(v/v)ウシ胎仔血清(Roche Diagnostics KK, Tokyo, Japan)で補充したイーグルMEM( Sigma- Aldrich corporation, MO, U.S.A.)中で培養した。
【0113】
動物
60匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。全てのマウスは、実験にかける前に、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.の動物施設において8日間保った。
【0114】
薬物
表題の化合物は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。イリノテカン(Topotecin(商標)、lot. No. EQAZF13)はDaiichi Pharmaceutical Co., Ltd. (Tokyo, Japan)から得た。投与日に、該表題の化合物をジメチルスルホキシド (DMSO)中に溶解し、そして投与前に生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Industry Co., Ltd., Tokushima, Japan)を伴う2.5%DMSOで希釈した。投与日に、イリノテカンを生理食塩水で希釈した。
【0115】
抗腫瘍活性の測定
Calu−6の単一細胞懸濁液(マウスあたり5.7×106細胞)を各マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。腫瘍移植後11日目において181〜326mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各5匹のマウスから成る、10つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ251mm3及び24.7gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。表題の化合物(0.375mg/kg;0.75mg/kg;1.5mg/kg又は3mg/kg)、イリノテカン(80mg/kg)、及び各媒体を、静脈内に投与した。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。投与期間中少なくとも1匹のマウスの死が観察されるか、あるいは投与期間中に治療開始日と比較して半数以上のマウスが20%以上の継続的な体重減少を示す場合に、用量が毒性であると定義した。腫瘍成長阻害は、等式(1−ΔT/ΔC)×100(式中、ΔTは治療グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示し、ΔCは、媒体グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示す)を使用して計算した。
【0116】
実施例6:
カペシタビン(Xeloda(商標))との組み合わせにおける、N−[1−({1−sec−ブチル−4−[2−(2−{[2−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−メチル−カルバモイル}−1−メチルスルファニル−プロピル)ピロリジン−1−イル]−2−メトキシ−4−オキソ−ブチル}−メチル−カルバモイル)−2−メチル−プロピル]−2−ジメチルアミノ−3−メチル−ブチルアミド(式(1−A)の化合物)。
【0117】
ヒト腫瘍細胞株
HT−29ヒト結腸直腸癌胞株は、American Type Culture Collection (MD, U.S.A.)から購入した。該細胞は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(Roche Diagnostics KK, Tokyo, Japan)で補充したマッコイ5a培地(Sigma- Aldrich corporation, MO, U.S.A.)中で培養した。
【0118】
動物
60匹の5週齢の雌胸腺欠損ヌードマウス(BALBVc nu/nu)はCharles River Japan, Inc. (Yokohama, Japan)から購入した。全てのマウスは、実験にかける前に、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.の動物施設において9日間保った。
【0119】
薬物
表題の化合物は、Kamakura Research Laboratories of Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.において合成した。カペシタビン(Lot. No. 26954-190A- MIL) は、F. Hoffmann-La Roche Ltd (Basel, Switzerland)から得た。投与日に、該表題の化合物をジメチルスルホキシド (DMSO)中に溶解し、そして生理食塩水(注射用、Ohtsuka Pharmaceutical Industry Co., Ltd., Tokushima, Japan)を伴う2.5%DMSOで希釈した。カペシタビンは、40ミリmol/Lのクエン酸緩衝−5%アラビアゴム溶液(pH 6.0; Chugai Pharmaceutical Co., Ltd.)で溶解した。
【0120】
抗腫瘍活性の測定
HT−29の単一細胞懸濁液(マウスあたり1.1×107細胞)を各マウスの右側腹部に皮下移植した。腫瘍体積は、等式ab2/2(式中、a及びbは、それぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す)を用いて推定した。腫瘍移植後10日目において172〜282mm3の腫瘍を有するマウスを選択し、そして各6匹のマウスから成る、7つのグループに任意に分けた。選択したマウスの平均腫瘍体積及び体重は、それぞれ217mm3及び25.0gであった。マウスのグループ化後、薬物投与を開始した。式I−Aの化合物(3mg/kg又は4mg/kg)、及び各媒体を、静脈内に投与した。カペシタビン(359mg/kg又は539mg/kg)及びその媒体を経口投与した。各マウスの腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。投与期間中少なくとも1匹のマウスの死が観察されるか、あるいは投与期間中に治療開始日と比較して半数以上のマウスが20%以上の継続的な体重減少を示す場合に、用量が毒性であると定義した。腫瘍成長阻害は、等式(1−ΔT/ΔC)×100(式中、ΔTは治療グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示し、ΔCは、媒体グループの治療開始日との腫瘍体積における差を示す)を使用して計算した。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1a】式I−Aの化合物(3.0mg/kg)単独及びトラスツズマブ(Herceptin(商標);Her;20mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。トラスツズマブ単独(20mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0122】
【図1b】式I−Aの化合物(4.0mg/kg)単独及びトラスツズマブ(Herceptin(商標);Her;20mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。トラスツズマブ単独(20mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0123】
【図1c】式I−Aの化合物(6.0mg/kg)単独及びトラスツズマブ(Herceptin(商標);Her;20mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。トラスツズマブ単独(20mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0124】
【図2a】式I−Aの化合物(3.0mg/kg)単独及びペルツズマブ(Omnitarg(商標);2C4;30mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。ペルツズマブ単独(30mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0125】
【図2b】式I−Aの化合物(4.0mg/kg)単独及びペルツズマブ(Omnitarg(商標);2C4;30mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。ペルツズマブ単独(30mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0126】
【図2c】式I−Aの化合物(6.0mg/kg)単独及びペルツズマブ(Omnitarg(商標);2C4;30mg/kg)との組み合わせによるKPL−4腫瘍細胞の初期処理後における、平均腫瘍体積(T.V;mm3)対日数。ペルツズマブ単独(30mg/kg)での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0127】
【図3a】式I−Aの化合物(2mg/kg)単独、及びシスプラチン(Randa(商標);CDDP;6.7mg/kg)との組み合わせによる接種後のNCI−H460腫瘍細胞の細胞体積(mm3)対日数。シスプラチン(Randa(商標);CDDP;6.7mg/kg)単独での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0128】
【図3b】式I−Aの化合物(3mg/kg)単独、及びシスプラチン(Randa(商標);CDDP;6.7mg/kg)との組み合わせによる接種後のNCI−H460腫瘍細胞の細胞体積(mm3)対日数。シスプラチン(Randa(商標);CDDP;5mg/kg)単独での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0129】
【図4】式I−Aの化合物(1.5mg/kg)単独、及びイリノテカン塩酸塩(Topotecin(商標);CPT−11;80mg/kg)との組み合わせによる接種後のCalu−6腫瘍細胞の細胞体積(mm3)対日数。イリノテカン塩酸塩(Topotecin(商標);CPT−11;80mg/kg)単独での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0130】
【図5a】式I−Aの化合物(3mg/kg)単独、及びカペシタビン(Xeloda(商標);539mg/kg)との組み合わせによる接種後のHT−29腫瘍細胞の細胞体積(mm3)対日数。カペシタビン(Xeloda(商標);539mg/kg)単独での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。
【0131】
【図5b】式I−Aの化合物(4mg/kg)単独、及びカペシタビン(Xeloda(商標);359mg/kg)との組み合わせによる接種後のHT−29腫瘍細胞の細胞体積(mm3)対日数。カペシタビン(Xeloda(商標);359mg/kg)単独での処理について、並びに媒体についてのデータもまた供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療における同時の、逐次の、又は別々の投与のための、カペシタビン;トラスツズマブ;ペルツズマブ;イリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩;又はシスプラチンとの組み合わせにおける、少なくとも1つの式(I)
【化1】

の化合物又はその医薬的に許容される塩を含んで成る医薬組成物であって、
式中、
1及びR2は、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル又はブチルであり;
3は、(C1−C4)−アルキレンを有する、フェニルアルキル−、又はフェニルジアルキルアミノ、又はフェニルアルキルオキシであり、そしてここで該フェニル基は、ハロゲン;アルコキシカルボニル;スルファモイル;アルキルカルボニルオキシ;カルバモイルオキシ;シアノ;モノ−若しくはジ−アルキルアミノ;アルキル;アルコキシ;フェニル;フェノキシ;トリフルオロメチル;トリフルオロメトキシ;アルキルチオ;ヒドロキシ;アルキルカルボニルアミノ;1,3−ジオキソリル;1,4−ジオキソリル;アミノ及びベンジルから成る群から選択される1、2又は3つの置換基により任意的に置換されてよい、医薬組成物。
【請求項2】
癌の治療における同時の、逐次の、又は別々の投与のための、カペシタビン;トラスツズマブ;ペルツズマブ;との組み合わせにおける、少なくとも1つの式(I)
【化2】

の化合物又はその医薬的に許容される塩を含んで成る医薬組成物であって、
式中、
1及びR2は、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル又はブチルであり;
3は、(C1−C4)−アルキレンを有する、フェニルアルキル−、又はフェニルジアルキルアミノ、又はフェニルアルキルオキシであり、そしてここで該フェニル基は、ハロゲン;アルコキシカルボニル;スルファモイル;アルキルカルボニルオキシ;カルバモイルオキシ;シアノ;モノ−若しくはジ−アルキルアミノ;アルキル;アルコキシ;フェニル;フェノキシ;トリフルオロメチル;トリフルオロメトキシ;アルキルチオ;ヒドロキシ;アルキルカルボニルアミノ;1,3−ジオキソリル;1,4−ジオキソリル;アミノ及びベンジルから成る群から選択される1、2又は3つの置換基により任意的に置換されてよい、医薬組成物。
【請求項3】
前記式中、
1及びR2がメチルであり;そして
3が前記請求項に定義されるとおりである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、式(I−A)
【化3】

の化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、トラスツズマブとの組み合わせにおいて投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、ペルツズマブとの組み合わせにおいて投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、カペシタビンとの組み合わせにおいて投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記式(I)の化合物が、シスプラチンとの組み合わせにおいて投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記式(I)の化合物が、イリノテカン又はその医薬的に許容される塩との組み合わせにおいて投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と逐次的に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと逐次的に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、シスプラチン、又はイリノテカン若しくはその医薬的に許容される塩と別々に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記式(I)の化合物が、カペシタビン、トラスツズマブ、又はペルツズマブと別々に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
癌の治療のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
固形腫瘍の治療のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、又は肺癌の治療のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、又は乳癌の治療のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
非小細胞肺癌の治療のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項22】
癌の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
固形腫瘍の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、又は肺癌の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、又は乳癌の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
非小細胞肺癌の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
本明細書に記載される発明。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2008−523002(P2008−523002A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544793(P2007−544793)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012992
【国際公開番号】WO2006/063707
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】