説明

少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーの組成物

(A)少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデン、およびその少なくとも1つが一般式CH=CR(式中、Rは水素およびメチル基から選択され、Rは−CO−R基(ここで、Rは、Rが、場合により1個以上の−OH基を有する1〜18個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含有するエポキシアルキル基、および合計2〜10個の炭素原子を含有するアルコキシアルキル基から選択される−O−R基である)である)に相当する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマーである少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーと;(B)(A)の100質量部当たり、0.5〜4質量部のエポキシ化大豆油と;(C)(A)の100質量部当たり、0.01〜2質量部の、ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーおよび融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーから選択される少なくとも1つのフルオロポリマーと;(D)(A)の100質量部当たり、1質量部以下の少なくとも1つの酸捕捉剤と含むことを特徴とする塩化ビニリデンコポリマー組成物。前記組成物の製造方法。前記組成物を含む多層フィルムおよびこのフィルムから形成されたパッケージングまたはバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーの組成物、かかる組成物の製造方法、かかる組成物を含む多層フィルムおよびこのフィルムから形成されるパッケージングまたはバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデンコポリマーは、ガスおよび臭気の透過性に関するそれらの優れた特性について知られている。それにもかかわらず、塩化ビニリデンコポリマーの一欠点は、それらが熱の作用下に分解する傾向を有することである。それ故、それらの使用の間ずっとこの欠点を回避するために、それらの熱安定性を向上させることが多くの場合に必要である。ポリマーが接触する実施機器の任意の金属部品上への分解ポリマーの層の形成、特にダイ上の堆積物の形成を低減するためにそれらの潤滑性を向上させることがまた必要であるかもしれない。
標的用途に応じて塩化ビニリデンコポリマーの特性を向上させるためにこれまで様々な解決策が提案されてきた。
【0003】
このように、英国特許出願第1171245号明細書は、塩化ビニリデンコポリマーがこの水性媒体から分離される前に、塩化ビニリデンコポリマーが合成されている水性重合媒体に加えられる、塩化ビニリデンと、モノマーのブレンドの質量に対して、7〜12質量%の、4個以下の炭素原子を含有するアルキルアクリレートおよびアクリロニトリルから選択されたコモノマーとのコポリマーへの添加、または塩化ビニリデンと、モノマーのブレンドの質量に対して、15〜25質量%の塩化ビニル、塩化ビニリデンコポリマーの質量に対して、5質量%以下の水性分散系の形態でのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とのコポリマーへの添加を記載している。PTFEの添加により、より良好な溶融挙動および高い結晶化速度は、押出または成形後に、確かな剛性が急速に成長し、管材料、ボトルならびにまた押出コーティングによるフィルムおよび紙などの基材の被覆材など、かかる剛性を必要とする物品の製造を予見することを可能にするように、得られる塩化ビニリデンコポリマーの組成物を特徴付ける。
【0004】
特開平3−234736号公報はさらに、それ自体、塩化ビニリデンコポリマーの樹脂の成形方法を記載しており、それによれば、この樹脂の成形は、溶融樹脂が搬送される押出機のバレルにフッ素含有ポリマーを接触させた後に実施される。この方法は、熱安定性を向上させるために習慣的に使用されるが、さらにバリア性の劣化にも関与する添加剤、通常は可塑剤をかなり低減するか、またはさらには完全に回避することを可能にすることが提示されている。こうして、実施例は、エポキシ化大豆油および一定量の可塑剤に加えてフルオロポリマーを場合によりおそらく含有する塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー組成物の使用中の熱安定性および機器への付着に対するこの特定の方法の有益な効果を例示しているが、塩化ビニリデンと塩化ビニルとのコポリマーをベースとするこれらの組成物から得ることができるフィルムのバリア性がどのようなものであるかを述べていない。
【0005】
特開2004−224896号公報はそれ自体、組成物の100質量部当たり、0.01〜0.5質量部のフルオロポリマーおよび0.01〜10質量部の結晶化速度促進剤(核剤)を含む、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、80,000〜150,000の質量平均分子量によって特徴付けられる塩化ビニリデンコポリマー組成物を記載している。観察される利点は、ダイ上への堆積物の量の減少、高い結晶化速度および、ソーセージを包装するために使用される単層フィルムである、これらの組成物から得られるフィルムの高周波シーリングの改善である。実施例は、PTFEおよびケイ酸マグネシウムを含む2つのフルオロポリマーのブレンドを含む塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマーの組成物の場合にこれらの有益な効果を例示しているが、得られるフィルムのバリア性がどのようなものであるかを述べていない。
【0006】
塩化ビニリデンコポリマー組成物は、食品包装の分野において、特に多層型フィルムの製造において他の用途を見いだす可能性がある。これに関連して、これらの組成物は、優れた熱安定性によって特徴付けられなければならない。それらはさらに、得られるフィルムの品質(透明性、厚さの一様性)に影響を及ぼすであろう分解ポリマーの層がこのポリマーと接触する機器の金属部品上に形成されることなく使用できなければならない。このタイプの用途向けに、得られるフィルムはさらに、単層フィルムを使用する用途向けに必要とされるものより著しく大きい、ガスおよび臭気に対する優れたバリア性によって特徴付けられなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の刊行物のどれもが同時に全てのこれらの特性によって特徴付けられる組成物の取得を記載していない限り、かかる組成物を得る必要性はそれ故依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の主題は、
(A)少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンと少なくとも1つのコモノマーからなる少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーであって、該少なくとも1つのコモノマーのうちの少なくとも1つが一般式:
CH2=CR12
(式中、R1は水素およびメチル基から選択され、R2は−CO−R3基(ここで、R3は、R4が、場合により1個以上の−OH基を有する1〜18個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含有するエポキシアルキル基、および合計2〜10個の炭素原子を含有するアルコキシアルキル基から選択される−O−R4基である)である)
に相当する(メタ)アクリルモノマーから選択される、上記少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーと;
(B)(A)の100質量部当たり、0.5〜4質量部のエポキシ化大豆油と;
(C)(A)の100質量部当たり、0.01〜2質量部の、ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーおよび融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーから選択される少なくとも1つのフルオロポリマーと;
(D)(A)の100質量部当たり、1質量部以下の少なくとも1つの酸捕捉剤と
を含む塩化ビニリデンコポリマー組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による組成物は、(A)少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデン、およびその少なくとも1つが一般式
CH2=CR12
(式中、R1は水素およびメチル基から選択され、R2は−CO−R3基(ここで、R3は、R4が、場合により1個以上の−OH基を有する1〜18個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含有するエポキシアルキル基、および合計2〜10個の炭素原子を含有するアルコキシアルキル基から選択される−O−R4基である)である)
に相当する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマーである少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーを含む。
【0010】
表現「少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマー」は、組成物がそれらの1つ以上を含んでもよいことを意味すると理解される。好ましくは、それは、それらのたった1つを含む。
本文の残りにおいて、単数形または複数形で用いられる表現「塩化ビニリデンコポリマー」は、特に示される場合を除いて、1つ以上の塩化ビニリデンコポリマーを意味すると理解されるべきである。
表現「少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンおよび少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマー」は、主モノマーである塩化ビニリデンと、後者と共重合可能である少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーを意味すると理解される。
表現「その少なくとも1つが上に定義された一般式CH2=CR12に相当する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのコモノマー」は、コモノマーの少なくとも1つがこの式に相当することを意味すると理解される。
【0011】
この式に相当するモノマーのうちで、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートが挙げられる。
【0012】
本発明による組成物のコポリマーは好ましくは、少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンから、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレートから選択される少なくとも1つのコモノマーから、ならびに前述のアルキル(メタ)アクリレート以外の上に定義された式CH2=CR12に相当するコモノマー、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩および2−スルホエチルメタクリレート酸(2−SEM)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩、およびまたメタクリレート末端ポリプロピレングリコールのリン酸エステル(ローディア(Rhodia)からの製品シポマー(Sipomer)PAM−200などの)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩などの共重合可能な界面活性剤から選択される少なくとも1つの他のコモノマーからなるコポリマーである。
【0013】
本発明による組成物のコポリマーは特に好ましくは、少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンから、メチルアクリレートから、ならびにメチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート、前述のアルキル(メタ)アクリレート以外の上に定義された式CH2=CR12に相当するコモノマー、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩、および2−スルホエチルメタクリレート酸(2−SEM)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩、およびまたメタクリレート末端ポリプロピレングリコールのリン酸エステル(ローディアからの製品シポマーPAM−200などの)またはその塩の1つ、例えばナトリウム塩などの共重合可能な界面活性剤から選択される少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマーである。
【0014】
本発明による組成物のコポリマーはより特に好ましくは、少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンから、メチルアクリレートから、ならびにメチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート、前述のアルキル(メタ)アクリレート以外の上に定義された式CH2=CR12に相当するコモノマー、酢酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマーである。
【0015】
本発明による組成物のコポリマーは最も特に好ましくは、少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンおよびメチルアクリレートからなるコポリマーである。
有利には、塩化ビニリデンコポリマー中の塩化ビニリデンの量は50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%、特に好ましくは70〜97質量%、より特に好ましくは80〜95質量%と変わる。
有利には、塩化ビニリデンコポリマー中の共重合可能なコモノマーの量は1〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは3〜30質量%、より特に好ましくは5〜20質量%と変わる。
【0016】
少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンおよびメチルアクリレートからなるコポリマーの最も特に好ましい場合には、コポリマー中のメチルアクリレートの量は有利には、少なくとも6質量%、好ましくは少なくとも6.5質量%、特に好ましくは少なくとも6.7質量%、より特に好ましくは少なくとも7質量%である。それは有利には、9質量%以下、好ましくは8.7質量%以下、特に好ましくは8.5質量%以下、より特に好ましくは8質量%以下である。
【0017】
本発明による組成物の塩化ビニリデンコポリマーは有利には、実施例に記載される方法で測定される、少なくとも1.44、好ましくは少なくとも1.45の相対粘度によって特徴付けられる。それは有利には、高くても1.52、好ましくは高くても1.49の相対粘度によって特徴付けられる。
【0018】
本発明による組成物の塩化ビニリデンコポリマーは有利には、実施例に記載される方法で測定される、145〜180℃の融点によって特徴付けられる。
本発明による組成物の塩化ビニリデンコポリマーは有利には、少なくとも145℃、好ましくは少なくとも150℃、特に好ましくは少なくとも155℃の融点によって特徴付けられる。それは有利には、高くても180℃、好ましくは高くても175℃、特に好ましくは高くても170℃、より特に好ましくは高くても165℃、最も特に好ましくは高くても160℃の融点によって特徴付けられる。
【0019】
本発明による組成物中のエポキシ化大豆油の量は、(A)の100質量部当たり0.5〜4質量部である。
エポキシ化大豆油の量は、(A)の100質量部当たり少なくとも0.5質量部、好ましくは少なくとも0.75質量部、特に好ましくは少なくとも1質量部、より特に好ましくは少なくとも1.2質量部、最も特に好ましくは少なくとも1.4質量部である。
エポキシ化大豆油の量は、(A)の100質量部当たり4質量部以下、好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2.5質量部以下、より特に好ましくは2.3質量部以下、最も特に好ましくは2質量部以下である。
(A)の100質量部当たり1〜2質量部のエポキシ化大豆油の総量が優れた結果を与える。
【0020】
本発明による組成物は、(C)(A)の100質量部当たり、0.01〜2質量部の、ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーおよび融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーから選択される少なくとも1つのフルオロポリマーを含む。
表現「少なくとも1つのフルオロポリマー」は、組成物がそれらの1つ以上を含んでもよいことを意味すると理解される。好ましくは、それは、それらのたった1つを含む。
本文の残りにおいて、単数形または複数形で用いられる表現「フルオロポリマー」は、特に示される場合を除いて、1つ以上のフルオロポリマーを意味すると理解されるべきである。
【0021】
本発明による組成物に使用されるフルオロポリマーは有利には、例えばサイズ排除クロマトグラフィーによって、核磁気共鳴によってまたは元素分析などによって測定される、20,000超、好ましくは30,000以上の数平均分子量によって特徴付けられる。これらのフルオロポリマーの数平均分子量は有利には2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは500,000以下、より特に好ましくは250,000以下である。
用語「フルオロポリマー」は、フルオロモノマーのホモポリマーおよびフルオロモノマーと少なくとも1つの他のコモノマーとのコポリマーの両方を意味すると理解される。
フルオロポリマーは、好都合には実施例に記載される方法で測定される、ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーおよび、好都合には実施例に記載される方法で測定される、融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーから選択される。
【0022】
表現「非晶質フルオロポリマー」は、結晶性を全く持たない、それ故融点を全く持たないフルオロポリマーを意味すると理解される。これらのフルオロポリマーは、200℃以下であるガラス転移温度によって特徴付けられる。非晶質フルオロポリマーは、好ましくは190℃以下、特に好ましくは185℃以下、より特に好ましくは180℃以下、最も特に好ましくは170℃以下であるガラス転移温度によって特徴付けられる。非常に良好な結果は、165℃以下のガラス転移温度によって特徴付けられる非晶質フルオロポリマーで得られた。
表現「半結晶性フルオロポリマー」は、幾らかの結晶性によって、それ故融点によって特徴付けられるフルオロポリマーを意味すると理解される。
半結晶性フルオロポリマーの融点は200℃以下でなければならない。半結晶性フルオロポリマーは、好ましくは190℃以下、特に好ましくは185℃以下、より特に好ましくは180℃以下、最も特に好ましくは170℃以下である融点によって特徴付けられる。非常に良好な結果は、165℃以下の融点によって特徴付けられる半結晶性フルオロポリマーで得られた。
【0023】
ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーまたは融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーのうちで、次のモノマー:フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヒドロペンタフルオロプロピレン(HPFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、エチレン、プロピレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を含むパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)の少なくとも2つから形成されるフルオロポリマーが挙げられる。
【0024】
フルオロポリマーは有利には、次のモノマー:フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヒドロペンタフルオロプロピレン(HPFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、エチレン、プロピレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を含むパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)の少なくとも2つから形成されるフルオロポリマーから選択される。
【0025】
フルオロポリマーは好ましくは、VDFをベースにするフルオロポリマーおよびVDFを含まない、TFEをベースにするフルオロポリマーから選択される。
VDFをベースにするフルオロポリマーのうちで、VDF/HFP、VDF/HFP/TFE、VDF/PMVE/TFE、VDF/CTFE、VDF/TFE/PMVE、VDF/TFE/プロピレン、VDF/HPFP、VDF/HPFP/TFEおよびVDF/HFP/エチレンフルオロポリマーが挙げられる。
VDFを含まない、TFEをベースにするフルオロポリマーのうちで、TFE/PMVE、TFE/プロピレンおよびTFE/PMVE/エチレンフルオロポリマーが挙げられる。
フルオロポリマーは特に好ましくは、VDFをベースにするフルオロポリマーから、より特に好ましくはVDF/HFPフルオロポリマーおよびVDF/HFP/TFE(またはTFE/HFP/VDF)フルオロポリマーから選択される。
【0026】
フルオロポリマーは、フルオロプラスチックまたはフルオロエラストマーであってもよい。
用語「フルオロプラスチック」は、周囲温度で、それらが非晶質である場合にはそれらのガラス転移温度未満で、またはそれらが半結晶性である場合にはそれらの融点未満で存在する、かつ、線状である(架橋していない)フルオロポリマーを意味すると理解される。これらのフルオロポリマーは、感知できるほどの化学変化なしに、それらが加熱されるときに柔らかくなり、それらが冷却されるときに再び堅くなるという特性を有する。かかる定義は、例えば、1989年にエルスビール・アプライド・サイエンス(Elsevier Applied Science)によって発行された、「ポリマー科学辞典(Polymer Science Dictionary)」という表題の百科事典、マーク S.M.アルガー(Mark S.M.Alger)、ロンドンポリマー専門学校(London School of Polymer Technology)、ポリテクニック オブ ノース ロンドン、英国(Polytechnic of North London,UK)に見いだすことができる。
【0027】
フルオロプラスチックは好ましくは、75質量%超、特に好ましくは90質量%超、より特に好ましくは97質量%超のフルオロモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
特に興味あるフルオロプラスチックのうちで、例えば非限定的に、VDF/HFPソレフ(SOLEF)(登録商標)およびハイラー(HYLAR)(登録商標)フルオロプラスチックならびにVDF/HFP/TFEダイナマー(DYNAMAR)TMフルオロプラスチックが挙げられる。
【0028】
用語「フルオロエラストマー」は、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーに由来する50質量%超の繰り返し単位を含む、真のエラストマーまたは真のエラストマーを得るためのベース成分として役立つフルオロポリマーを意味すると理解される。
真のエラストマーは、ASTM、スペシャル・テクニカル・ブレチン(Special Technical Bulletin)、No.184標準によって、周囲温度で、それらの固有長さの2倍に延伸することができ、かつ、それらを5分間張力下に保持した後それらが解放されると、同時にそれらの初期長さの10%内に戻る材料と定義されている。
【0029】
フルオロエラストマーは一般に非晶質であるか、または低い程度の結晶性(20容量%未満の結晶性相)および周囲温度未満のガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられる。ほとんどの場合に、フルオロエラストマーは0℃未満のTgを有する。フルオロエラストマーは、有利には1J/g未満の、好ましくは0.5J/g未満の、ASTM D3418標準に従って測定されるような、融解熱を有する。特に好ましくは、フルオロエラストマーは検出できる融点を全く持たない、言い換えればそれらは検出できない融解熱を有する。
【0030】
フルオロエラストマーは好ましくは、75質量%超、特に好ましくは90質量%超、より特に好ましくは97質量%超のフルオロモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
特に対象となるフルオロエラストマーのうちで、例えば非限定的に、VDF/HFPテクノフロン(TECNOFLON)(登録商標)フルオロエラストマー、VDF/HFP/TFEテクノフロン(登録商標)フルオロエラストマー、VDF/PMVE/TFEテクノフロン(登録商標)フルオロエラストマー、TFE/PMVEテクノフロン(登録商標)フルオロエラストマーおよびVDF/HFPダイナマーTMフルオロエラストマーが挙げられる。
【0031】
非常に特に対象となるフルオロエラストマーのうちで、例えば被限定的に、−24℃のガラス転移温度によって特徴付けられ、かつ、融点を持たない、周囲温度で粉末の形態にあるVDF/HFPテクノフロン(登録商標)NM粉末(Powder)フルオロエラストマーならびに−22℃のガラス転移温度によって特徴付けられ、かつ、融点を持たない、周囲温度で粉末の形態にあるVDF/HFPダイナマーTMFX9613フルオロエラストマーが挙げられる。
【0032】
本発明による組成物中のフルオロポリマーの量は、(A)の100質量部当たり0.01〜2質量部である。(A)の100質量部当たり0.01〜0.1質量部を含む組成物が好ましい。
フルオロポリマーの総量は、(A)の100質量部当たり少なくとも0.01質量部、好ましくは少なくとも0.02質量部、特に好ましくは少なくとも0.03質量部である。
フルオロポリマーの総量は、(A)の100質量部当たり2質量部以下、好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1質量部以下、より特に好ましくは0.5質量部以下、最も特に好ましくは0.25質量部以下である。(A)の100質量部当たり0.1質量部以下のフルオロポリマーの総量が、非常に良好な結果を与える。
【0033】
本発明による組成物は、(D)(A)の100質量部当たり、1質量部以下の、少なくとも1つの酸捕捉剤を含む。
表現「少なくとも1つの酸捕捉剤」は、組成物がそれらの1つ以上を含んでもよいことを意味すると理解される。好ましくは、それは、それらのたった1つを含む。
本文の残りにおいて、単数形または複数形で用いられる表現「酸捕捉剤」は、特に示される場合を除いて、1つ以上の酸捕捉剤を意味すると理解されるべきである。
【0034】
表現「酸捕捉剤」は、媒体中に存在する酸を捕捉することができる任意の化合物を意味すると理解される。酸捕捉剤は好ましくは塩化水素酸捕捉剤である。
酸捕捉剤は有利には、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウムアルミニウム、酸化マグネシウム、酸化マグネシウムアルミニウム、ピロリン酸四ナトリウムおよび脂肪酸の金属塩から選択される。
炭酸水素マグネシウムアルミニウム(ハイドロタルサイト)のうちで、市販の製品DHT4A(登録商標)またはアルカマイザー(ALCAMIZER)(登録商標)などの一般式Mg4Al2(OH)12CO3・nH2Oに相当するものが挙げられる。
酸捕捉剤は好ましくは、炭酸カルシウムおよび炭酸水素マグネシウムアルミニウムから選択される。
【0035】
酸捕捉剤は特に好ましくは炭酸カルシウムである。
本発明による組成物は好ましくは、炭酸カルシウムである単一の酸捕捉剤を含む。
任意の銘柄の炭酸カルシウムが使用されてもよい。炭酸カルシウムは、沈澱されたものであってもそうでなくてもよい。それは、コートされていてもされていなくてもよい。入手可能は様々な銘柄の炭酸カルシウムのうちで、コートされた沈澱炭酸カルシウムが好ましい。
透過度によって測定される、0.05〜0.09μmの粒径によって特徴付けられる炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0036】
酸捕捉剤は、組成物の総質量に対して1質量部以下の量で組成物中に存在する。本発明による組成物は好ましくは、(A)の100質量部当たり0.8質量部以下、特に好ましくは0.6質量部以下、より特に好ましくは0.5質量部以下の少なくとも1つの酸捕捉剤を含む。本発明による組成物は有利には、(A)の100質量部当たり少なくとも0.05質量部、好ましくは少なくとも0.1質量部、特に好ましくは少なくとも0.15質量部、より特に好ましくは少なくとも0.2質量部の少なくとも1つの酸捕捉剤を含む。
(A)の100質量部当たり0.1〜0.5質量部の少なくとも1つの酸捕捉剤を含む組成物が、非常に良好な結果を与える。
【0037】
(A)、(B)、(C)および(D)に加えて、本発明による組成物はまた、さらに、(E)場合により少なくとも1つのε−カプロラクトンポリマーを含んでもよい。
表現「ε−カプロラクトンポリマー」は、ε−カプロラクトン(または2−オキセパノン)のホモポリマーおよびそれと少なくとも1つの他のコモノマーとのコポリマーの両方を意味すると理解される。
それらの分子量に応じて、ε−カプロラクトンポリマーは周囲温度で固体(粉末もしくは顆粒)の形態に、粘稠な製品(ペースト、ワックスなど)の形態に、または液体の形態にあってもよい。一般に、分子量が10,000g/モルより大きいε−カプロラクトンポリマーは周囲温度で固体形態にあるが、分子量が10,000g/モル以下のものはその代わりに粘稠な製品または液体の形態にある。
【0038】
本発明による組成物を製造するために特に好適である幾つかのε−カプロラクトンポリマーは、商標カパ(CAPA)(登録商標)でソルベー・インテロックス社(Solvay Interox Limited)によって販売されるε−カプロラクトンポリマーである。
表現「少なくとも1つのε−カプロラクトンポリマー」は、組成物が1つ以上のε−カプロラクトンポリマーを含んでもよいことを意味すると理解される。
それが幾つかのε−カプロラクトンポリマーを含むとき、組成物は好ましくは、10,000g/モル以下の分子量によって特徴付けられる少なくとも1つのε−カプロラクトンポリマーを含む。
【0039】
このように、10,000g/モル以下の分子量によって特徴付けられるε−カプロラクトンポリマーに加えて、10,000g/モル以下の分子量によって、または10,000g/モル超の分子量によってのどちらかで特徴付けられる他のε−カプロラクトンポリマーが組成物中に存在してもよい。10,000g/モル超の分子量を有する少なくとも1つのポリマーが組成物中に存在する場合、それらの量は有利には、ε−カプロラクトンポリマーの総質量の50%、好ましくは45%を超えない。
【0040】
少なくとも1つのε−カプロラクトンコポリマーが本発明による組成物中に存在するとき、この(これらの)ε−カプロラクトンポリマーの総量は、(A)の100質量部当たり少なくとも1質量部、好ましくは少なくとも2質量部、特に好ましくは少なくとも3質量部である。
少なくとも1つのε−カプロラクトンコポリマーが本発明による組成物中に存在するとき、この(これらの)ε−カプロラクトンポリマーの総量は、(A)の100質量部当たり50質量部以下、好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下、より特に好ましくは15質量部以下である。
(A)の100質量部当たり3〜15質量部のε−カプロラクトンポリマーの総量は、少なくとも1つのε−カプロラクトンコポリマーが本発明による組成物中に存在するときにより特に好ましい。
【0041】
(A)、(B)、(C)、(D)および場合により(E)に加えて、本発明による組成物は、(F)場合により、例えば、普通に使用される顔料もしくは染料、UV安定剤および酸化防止剤などの、組成物の使用中のガスおよび臭気に対するバリア性にまたは熱安定性に影響を及ぼさない他の化合物を含んでもよい。これらの化合物はそのとき有利には、普通に使用される量で導入される。
好ましくは、本発明による塩化ビニリデンコポリマーの組成物は、上に定義されたような化合物(A)、(B)、(C)、(D)、場合により(E)および/または場合により(F)に本質的に存する。
表現「に本質的に存する」は、主要な化合物(A)、(B)、(C)、(D)、場合により(E)および/または場合により(F)に加えて、本発明による組成物が痕跡量で存在する化合物を含むにすぎないことを意味すると理解される。
【0042】
第1変形によれば、本発明による塩化ビニリデンコポリマーの組成物は、上に定義されたような化合物(A)、(B)、(C)、(D)、場合により(E)および場合により(F)に本質的に存する。
第2変形によれば、本発明による塩化ビニリデンコポリマーの組成物は、上に定義されたような化合物(A)、(B)、(C)、(D)および場合により(F)に本質的に存する。
第3変形によれば、本発明による塩化ビニリデンコポリマーの組成物は、上に定義されたような化合物(A)、(B)、(C)、(D)および場合により(E)に本質的に存する。
特に好ましくは、本発明による塩化ビニリデンコポリマーの組成物は、化合物(A)、(B)、(C)および(D)に本質的に存する。
【0043】
本発明による組成物は、任意の製造方法によって製造されてもよい。
第1変形によれば、本発明による組成物は、予混合により(A)、(B)、(C)および(D)を混合することによって製造される。
本発明の一主題はそれ故、それが予混合による(A)、(B)、(C)および(D)の混合を含むことを特徴とする本発明による組成物の製造方法である。
組成物が(E)および/または(F)を含むとき、後者は有利には、先行本文および以下の本文での第1変形において(B)、(C)および(D)について規定されるように、予混合により(A)と混合される。
用語「予混合」は、ミキサーの使用を含み、かつ、本発明による組成物の様々な成分の混合を実施することを可能にする任意の方法を意味すると理解される。
【0044】
第1の好ましい方法は、ダブルチャンバー高速ミキサーを用いる。このように、(1)そのままでまたは少量の(A)とのマスターバッチとして、(A)および固体添加剤の全てが有利には、第1の場合により加熱され、撹拌されるチャンバー中へ導入される。(2)補助溜めで温度調整された、液体添加剤が次に有利には、ホットチャンバー中の温度が目標値に達したときに導入される。固体添加剤もまた、この工程中に導入されてもよい。(3)目標温度に達してから、混合物は次に有利には、同様に撹拌されている、かつ、低温水が循環する外套を有する、第2のコールドチャンバーへ移される。(4)混合物は有利には、設定温度まで内部で撹拌され続ける。この段階の間、固体添加剤の1つもしくは幾つがまた、好ましくは工程(4)の初めに加えられてもよい。(5)チャンバーの内容物が冷却されたら、チャンバーは空にされる。
【0045】
予混合の第2の方法は有利には、蒸気が注入されてもよい、低速回転を有し、場合により減圧下にある、単一の外套付きチャンバーからなる、パタスン・コナフォーム(Patterson CONAFORM)(登録商標)タイプの低速ミキサーを用いる。その工程は第1の方法の工程とかなり類似しており、(A)および固体添加剤を、チャンバーを加熱する前に導入して、予熱された液体添加剤を、一定温度に達したときにそして規定温度でおよび一定期間の均質化後に添加して、そして最後に、1つもしくは幾つかの固体添加剤を導入することが依然として可能である冷却段階を開始するものである。
第2変形によれば、本発明による組成物は、予混合による、(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部を含有する(A)、(B)の任意の残り、(C)の任意の残り、および(D)の混合によって製造される。
【0046】
従って、本発明の別の主題は、予混合による、(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部を含有する(A)、(B)の任意の残り、(C)の任意の残り、および(D)の混合を含むことを特徴とする、本発明による組成物の製造方法である。
組成物が(E)および/または(F)を含むとき、(E)の少なくとも一部および/または(F)の少なくとも一部は有利には、予め(A)と混合されてもよく、(E)の任意の残りおよび/または(F)の任意の残りは次に、先行本文および以下の本文での第2変形において(B)および(C)について規定されるように、予混合によって加えられてもよい。
(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部は従って有利には、予混合工程の前に(A)と混合される。(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部は好ましくは、塩化ビニリデンのおよび後者と共重合可能なコモノマーの重合によって(A)を製造する工程中に(A)と混合される。
【0047】
塩化ビニリデンのおよびこれと共重合可能なコモノマーの重合によって(A)を製造する工程は有利には、
a1)重合のために必要とされる原材料の少なくとも1つの画分が反応器へ導入されるサブ工程と;
a2)反応器の内容物が、前記原材料の残りを場合により導入しながら反応させられ、そして、反応後に、残存モノマーを含有するスラリーが得られるサブ工程と;
a3)残存モノマーが、サブ工程a2)で得られたスラリーから除去され、そして残存モノマーを除かれたスラリーが得られるサブ工程と;
a4)塩化ビニリデンコポリマーがサブ工程a3)で得られたスラリーから単離されるサブ工程と
によるサブ工程に分かれる。
【0048】
本発明による方法のサブ工程a1)によれば、重合のために必要とされる原材料の少なくとも1つの画分が有利には反応器へ導入される。
表現「原材料」は、重合のために必要とされる原料全て、特に水、分散剤、ラジカル発生剤、塩化ビニリデンおよびこれと共重合可能なコモノマーを意味すると理解される。
原材料は、サブ工程a1)中に任意の順番で導入されてもよい。
表現「重合のために必要とされる原材料の少なくとも1つの画分」は、加えられる原材料の少なくとも一部がサブ工程a1)に加えられることを意味すると理解される。
【0049】
本発明による方法のサブ工程a2)によれば、反応器の内容物は有利には、前記原材料の残りを場合により導入しながら反応させられ、そして、反応後に、残存モノマーを含有するスラリーが得られる。
反応器の内容物をサブ工程a2)により反応させるために、ラジカルがその内部で発生する手段が有利には用いられる。この目的のために、反応器の内容物を加熱すること、または内容物を強力な光放射に露光させることが特に可能である。好ましくは、反応器の内容物は加熱される。
反応器の内容物が反応させられる温度は有利には少なくとも30℃に等しい。加えて、それは有利には、高くても200℃、好ましくは高くても120℃、特に好ましくは高くても80℃に等しい。
【0050】
有利には、サブ工程a2)は、塩化ビニリデンとそれが共重合可能であるコモノマーとがある程度反応してしまうまで続行される。サブ工程a2)は、モノマーの転化率が好ましくは少なくとも80%になるまで続行される。サブ工程a2)は、モノマーの転化率が好ましくは高くても100%になるまで続行される。
重合のために必要とされる原材料の残りは場合によりサブ工程a2)中に導入される。好ましくは、重合のために必要とされる原材料は全て、サブ工程a1)中に導入される。
サブ工程a2)の終わりに、残存モノマーを含有するスラリーが有利には得られる。
表現「残存モノマー」は、反応しなかった、かつ、重合媒体中に存在するモノマーを意味すると理解される。
【0051】
本発明による方法のサブ工程a3)によれば、残存モノマーは、サブ工程a2)で得られたスラリーから除去され、残存モノマーを除かれたスラリーが得られる。
サブ工程a2)で得られたスラリーから残存モノマーを除去する任意の手段が用いられてもよい。好ましくは、サブ工程a2)で得られたスラリーからの残存モノマーの除去(ストリッピングとして知られる)は、減圧下にストリッピングすることによって、あるいは減圧下にストリッピングすることおよびスラリー中へ水蒸気を同時に注入することによって実施される。有利には、上述のストリッピングに冷却段階が続く。
サブ工程a3)の終わりに、残存モノマーを除かれたスラリーが有利には得られる。
【0052】
本発明による方法の工程a4)によれば、塩化ビニリデンポリマーは有利には工程a3)で得られたスラリーから単離される。
サブ工程a4)は好ましくは、サブ工程a3)で得られたスラリーの濾過、引き続く濾過後に得られたケーキの洗浄および乾燥ならびに輸送される塩化ビニリデンコポリマーの包装によって実施される。
【0053】
従って、(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部は、サブ工程a1)、a2)、a3)もしくはa4)のいずれかでまたはこれらのサブ工程の幾つかで導入されてもよい。
サブ工程a1)でのおよびサブ工程a2)での導入は、(B)および/または(C)が原材料とは独立して重合反応器へ導入されること、またはそれらがそれらの1つもしくは幾つかに、好ましくはモノマーの1つにまたはモノマー混合物に予め混合されることを意味すると理解される。
【0054】
好ましくは、(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部は、サブ工程a1)中に、サブ工程a2)中に、有利にはこのサブ工程の終わりに、サブ工程a3)中にまたはそれらのそれぞれ中に導入される。特に好ましくは、(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部は、サブ工程a1)中に、サブ工程a3)中にまたはそれらのそれぞれ中に導入される。
【0055】
この第2変形によれば、予混合工程は、重合工程とは完全に独立して行われてもよいし、またはこの重合工程に合わせて行われてもよい。
表現「重合工程とは完全に独立して行われる」は、サブ工程a4)が完了した後に予混合工程が行われることを意味すると理解される。それは従って、重合工程が行われるところと同じ場所でまたはそれとは異なる場所で行われてもよい。
予混合工程が重合工程とは完全に独立して行われるとき、上で本発明による組成物の製造方法の第1変形について詳細に説明された第1および第2予混合方法が用いられてもよく、第1方法が好ましい。
表現「重合工程に合わせて行われる」は、予混合工程が重合工程の不可欠な部分であることを意味すると理解される。予混合工程は従って好ましくは、サブ工程a4)中の乾燥後および包装前に行われる。
【0056】
予混合工程が重合工程に合わせて行われるとき、好ましい一予混合方法はプロシェアミキサーを用い、このミキサーで重合工程の間ずっと導入された液体添加剤を含有する(A)が固体添加剤を含有するマスターバッチと混合される。予混合時間は有利には、それがコポリマーの加熱を含まないので非常に短い(約3分)。ミキサーへの供給はさらに有利には、質量測定秤量システムによって自動的に実施される。
【0057】
第3変形によれば、本発明による組成物は、(A)を、予め製造された(B)、(C)および(D)の混合物と混合することによって製造される。
【0058】
本発明の別の主題はそれ故、(A)と予め製造された(B)、(C)および(D)の混合物との混合を含むことを特徴とする本発明による組成物の製造方法である。
組成物が(E)および/または(F)を含むとき、(E)および/または(F)は有利には、先行本文および以下の本文での第3変形において(B)、(C)および(D)について規定されるように、(A)と混合される前に予め(B)、(C)および(D)と混合されてもよい。
【0059】
この第3変形によれば、本発明による組成物は有利には、先ず(B)を(C)および(D)と、好ましくは予混合によって混合することによって、特に好ましくは(C)および(D)を予熱された(B)中へ予混合によって導入することによって製造される。予混合に、より特に好ましくは細砕が続く。
(B)、(C)および(D)の混合物は次により特に好ましくは、塩化ビニリデンおよびそれと共重合可能なコモノマーの重合による(A)の製造工程中に、または(A)との予混合によってのどちらかで(A)と混合される。
塩化ビニリデンおよびそれと共重合可能なコモノマーの重合による(A)の製造工程中にそれが(A)と混合されるとき、(B)、(C)および(D)の混合物は、第2変形について上に規定されるように、サブ工程a1)、a2)、a3)またはa4)のいずれかで、またはこれらのサブ工程の幾つかで導入されてもよい。その際、導入についての定義および優先度は、第2変形について定義されたものと同じである。
【0060】
本発明の別の主題は、本発明による組成物を含む多層フィルムである。
多層フィルムは好ましくは、本発明による組成物を含むバリア層を含む。
本発明による多層フィルムは、様々なタイプのものであってもよい。こうして、多層フィルムは、収縮性フィルムまたはブローンフィルムであってもよい。
収縮性フィルムは有利には、少なくとも3つの層、好ましくは少なくとも5つの層を含む。それは有利には二軸延伸される。それはさらに有利には40〜60%収縮可能である。
【0061】
ブローンフィルムは有利には、少なくとも3つの層、好ましくは少なくとも5つの層、特に好ましくは少なくとも7つの層、より特に好ましくは少なくとも9つの層を含む。それは有利には、非常にまたは全く収縮性ではない。かかるフィルムは、そのままで使用されても、積層されてもまたは熱形成されてもよい。
本発明によるフィルムはまた、キャストフィルムであってもよい。キャストフィルムは有利には、少なくとも3つの層、好ましくは少なくとも5つの層を含む。
【0062】
最後に、本発明の一主題は、本発明によるフィルムから形成されたパッケージングまたはバッグである。
パッケージングまたはバッグは、任意の使用向けであってもよい。好ましくは、それは食品包装、例えば、肉、ミルク、香辛料、油またはチーズの包装向けである。
【0063】
本発明による塩化ビニリデンコポリマー組成物は、優れた熱安定性によって特徴付けられるという利点を有する。それらの使用中に、分解ポリマーの層は、ポリマーが接触する実施機器のいかなる金属部品上にも形成されず、特に、得られるフィルムの品質に影響を及ぼすであろう、ダイ上への堆積物は形成されない。これはさらに、ガスおよび臭気に対する優れたバリア性によって特徴付けられ;優れたバリア性は食品包装分野において強く求められている多層型フィルムを製造するためにそれらが使用されることを可能にする。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0065】
使用される製品
様々な塩化ビニリデンコポリマー、すなわち:
− 8質量%のメチルアクリレートを含有する塩化ビニリデンとメチルアクリレートとのコポリマーであり、かつ、1.46の相対粘度および155℃の融点によってさらに特徴付けられる、コポリマーイキサン(IXAN)(登録商標)PV917;
− 8質量%のメチルアクリレートを含有する塩化ビニリデンとメチルアクリレートとのコポリマーであり、かつ、1.46の相対粘度および155℃の融点によってさらに特徴付けられる、コポリマーイキサン(登録商標)PV891;および
− 17質量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニリデンと塩化ビニルとのコポリマーであり、かつ、1.57の相対粘度および162℃の融点によってさらに特徴付けられる、コポリマーイキサン(登録商標)PV700
を使用した。
【0066】
使用されるエポキシ化大豆油は、そのエポキシブリッジのレベルが6〜7%である、エポキシ化大豆油エデノール(EDENOL)(登録商標)D82Hであった。
【0067】
様々なフルオロポリマー、すなわち:
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−24℃のガラス転移温度によって特徴付けられ、かつ、融点を持たないVDF/HFPフルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末;
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−26℃のガラス転移温度および138℃の融点によって特徴付けられるVDF/HFPフルオロポリマー・ソレフ(登録商標)21508/1001;
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−37℃のガラス転移温度および158℃の融点によって特徴付けられるVDF/HFPフルオロポリマー・ソレフ(登録商標)11010/1001;
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−4℃のガラス転移温度および116℃の融点によって特徴付けられるVDF/HFP/TFEフルオロポリマー・ダイナマーTMFX5911;
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−22℃のガラス転移温度によって特徴付けられ、かつ、融点を持たないVDF/HFPフルオロポリマー・ダイナマーTMFX9613;ならびに
− 周囲温度で粉末の形態にあり、−80℃のガラス転移温度および327℃の融点によって特徴付けられるPTFEフルオロポリマー・ダイネオン(DYNEON)TMMM5935EF
を使用した。
【0068】
アクリルポリマーを使用した。これは、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートおよびn−ブチルアクリレートからなるコポリマーであり、周囲温度で粉末の形態にあり、−31℃のガラス転移温度および116℃の第2のものによって特徴付けられ、かつ、融点を持たないアクリルポリマー・プラスチストレングス(PLASTISTRENGTH)TML1000である。
【0069】
使用された炭酸カルシウムは、ナノメートル−サイズの粉末(透過度によって測定される、0.07μmの粒径)の形態にあり、ISO 9277標準に従って測定される、19m2/gの(BET)比表面積およびISO 903標準に従って測定される、286g/lの自由流動密度によって特徴付けられる炭酸カルシウム・ソーカル(SOCAL)(登録商標)312であった。
【0070】
塩化ビニリデンコポリマーの相対粘度の測定
塩化ビニリデンコポリマーの相対粘度は、定数K=0.003のウッベローデ(UBBELHODE)粘度計を用いてISO 3105またはDIN 51562標準に従って測定した。塩化ビニリデンコポリマーの溶液は5g/lの濃度でテトラヒドロフラン中で作製した。粘度測定は20℃で実施した。
【0071】
ポリマーのガラス転移温度のおよび融点の測定
ポリマーのガラス転移温度および融点は、ASTM D 3418−03標準に従ってDSC(示差走査熱量測定法)によって測定した。具体的な測定条件は、
・機械:TA機器(TA Instruments)Q100 DSC;
・参照標準:99.999%純粋インジウム;
・サンプルサイズ:19±5mg;
・温度勾配:10℃/分;
・プロフィール温度:
○熱履歴を消去するための一次加熱:−100℃〜溶融の終わり;
○溶融の終わりから−100℃への冷却;および
○ガラス転移温度および融点を測定するための二次加熱:−100℃〜溶融の終わり
であった。
【0072】
融点は、二次加熱中に得られたサーモグラムから測定し、ピークの強度の最大、すなわち、加熱中に観察される吸熱現象の最大に相当する。融点は1℃以内まで℃単位で表す。
ガラス転移温度は、二次加熱中に得られたサーモグラムから測定し、勾配変化の中点に相当する。ガラス転移温度は1℃以内まで℃単位で表す。
【0073】
組成物中のフルオロポリマー量の測定
塩化ビニリデンコポリマーの組成物中のフルオロポリマーの量は、物質収支によって測定した。
組成物中の酸捕捉剤量の測定
塩化ビニリデンコポリマーの組成物中の酸捕捉剤の量は、物質収支によって測定した。
【0074】
組成物中のエポキシ化大豆油の量の測定
塩化ビニリデンコポリマーの組成物中のエポキシ化大豆油の量は、物質収支によってか、またエポキシ化大豆油標準を用いる薄層クロマトグラフィーによって測定した。クロマトグラフィーにかけるサンプルは、塩化ビニリデンコポリマーの組成物のテトラヒドロフランへの溶解、引き続くメタノール中での沈澱操作によって得た。沈澱した部分を次に濾過し、テトラヒドロフランの溶液へ戻した後2回目の沈澱にかけた。2つの可溶性画分を次に一緒にし、エバポレーターを用いて蒸発させた。得られた濃縮物を薄層クロマトグラフィーにかけた。移行後に、顕色剤を使用し、デンシトメトリー測定を実施した。
【0075】
塩化ビニリデンコポリマー組成物の熱安定性の測定
熱安定性測定の原理は、応力下のその挙動を分析するためにおよび押出機において使用することができるその能力に関して結論に達するために、規定された温度(組成物がイキサン(登録商標)PV917またはイキサン(登録商標)PV891コポリマーを含むときには160℃および組成物がイキサン(登録商標)PV700コポリマーを含むときには170℃)で順化された混合チャンバー中で塩化ビニリデンコポリマー組成物を処理することにある。
【0076】
測定のために用いた機械は、ブラベンダー(Brabender)PL2100プラスチ−コーダー(Plasti−Corder)機であった。
【0077】
測定を実施するために、機械の混合チャンバーの上方に置かれたホッパーを95gのサンプルで満たした。サンプルの全体が混合チャンバーへ導入されるように、ゲージを用いてホッパー一面に圧力をかけた。力スケールでのトルク(Nm)の特定を実施してゲージで圧力を止めることができた。ゲージおよびホッパーを次に取り外した。混合チャンバーへのサンプルの導入は、試験のおよび時間カウントダウンの自動開始点を構成した。トルクおよび材料温度(設定点に関して±5℃)の変動を、試験の継続期間の全体にわたって監視した。
【0078】
6分後におよびその後試験の継続期間の全体にわたって3分毎に、トルク勾配の変化の5〜10分後まで、サンプルを取り出した。取り出した材料を次にボール状にし、プレス中に1分間入れた。こうして得たペレットを次に、口径パンチ(calibre punch)を用いて直径に沿って特別な目的のためにカットし、試験加工シートに接合した。分解段階は、ペレットの暗褐色着色によるか、トルク曲線の勾配の変化によるかのどちらかで視覚化された。5〜10分間の試験続行は、分解点および対応する温度のより容易なおよびより正確な測定を可能にした。測定されるような熱安定性はそれ故、分解点に対応する、分単位で表される時間である。
【0079】
塩化ビニリデンコポリマー組成物からのフィルムの製造
フィルムを、以下の例によって該当する塩化ビニリデンコポリマー組成物から製造した。
このために、3層フィルムA/B/A(A=エクソン・モービル(Exxon Mobil)製のエチレン/酢酸ビニルポリマー・エスコレン(ESCORENE)(登録商標)UL309、B=塩化ビニリデンコポリマー組成物である)を、2つの押出機、4つの温度ゾーンのフィードブロックおよび200×0.6mmシートダイを用いる共押出によって製造した。ダイを出るとすぐに、フィルムを冷却し、3−ロールカレンダーによって縦方向に、程度の差はあるが延伸した。
試験する各塩化ビニリデンコポリマー組成物について、10〜60μmと変わる厚さの7つのフィルムを、フィルムの延伸率を変えることによって製造した。
7つのフィルムは、測定前に23℃および50%相対湿度で少なくとも7日間保管した。
【0080】
フィルム中のフィッシュアイのレベルの測定
本方法の原理は、フィルムを、様々なレベルのフィッシュアイを有するフィルムの内部スケールに関連して、すなわち1(フィッシュアイ全くなし)〜5(非常に多くのフィッシュアイ)に分類することにある。
そのために、オペレータは各フィルムを観察し、それを5つの基準フィルムと比較した。こうして各フィルムに1〜5の格付けを与えた。
【0081】
フィルムの酸素透過速度の測定
本方法の原理は、規定の温度および相対湿度について、単位時間および単位面積当たり、塩化ビニリデンコポリマー組成物のフィルムを通過する酸素の量を測定することにある。
このために、フィルムをセルに、それがこのセルを2つに分けるように置いた。第1部分に酸素を供給し、第2部分を窒素でフラッシュした。フィルムを通過した酸素を、窒素によって電量検出器に運んだ。こうして電量検出器により単位時間当たりの酸素の量を測定した。セルの表面積を求めてから、1日当たりおよび1m2当たりのcm3単位での酸素の量が求められた。
【0082】
用いた機械は、23℃および85%相対湿度に調整された、オックス−トラン(OX−TRAN)1000−Hヒュミディコン(H HUMIDICON)またはモコン(MOCON)2/21(モコン(Mocon))機械であった。
測定は、23℃および50%相対湿度で最低7日間および最高15日間保管されたフィルムに関して実施した。
【0083】
フィルムの層Bの厚さを、酸素透過速度の測定を実施する前に測定した。
酸素透過速度を、各塩化ビニリデンコポリマー組成物について製造した、異なる厚さの7つのフィルムについて測定し、こうして7つの酸素透過性測定値を与えた。
厚さに応じた透過速度の対数回帰を次に、10μmの層Bの標準厚さについての透過速度を計算するために実施した。
フィルムについての酸素透過速度の値(PO2)をこのように測定した。酸素透過速度はそれ故、23℃で10μmの厚さについてcm3/m2・日・気圧の単位で表される。
【0084】
フィルムの水蒸気透過速度の測定
本方法の原理は、規定された温度および相対湿度について、単位時間および単位面積当たり、塩化ビニリデンコポリマー組成物のフィルムを通過する水蒸気の量を測定することにある。
このために、フィルムをセル中に、それがこのセルを2つに分離するように置いた。第1部分は90%湿潤雰囲気に保持し、第2部分は窒素でフラッシュした。このフィルムを通過した水蒸気は、窒素によって赤外検出器に運ばれた。赤外検出器はこうして単位時間当たりの水蒸気の量を測定した。セルの表面積を知って、1日および1m2当たりg単位の水蒸気の量を測定した。
用いられた機械は、38℃および90%相対湿度で順化させた、モコン(MOCON)3/31機械であった。
【0085】
測定は、23℃および50%相対湿度で最低7日間および最高15日間保管されたフィルムに関して実施した。
フィルムの層Bの厚さは、水蒸気透過速度の測定を実施する前に測定した。
水蒸気透過速度は、各塩化ビニリデンコポリマー組成物について製造された、異なる厚さの7つのフィルムのうちの3つについて測定し、こうして3つの水蒸気透過度測定値を与えた。
厚さに応じた透過速度の対数回帰を次に、10μmの層Bの標準厚さについての透過速度を計算するために実施した。
フィルムについての水蒸気透過速度の値(PH2O)はこうして測定した。水蒸気透過速度はそれ故、38℃で10μmの厚さについてg/m2・日単位で表す。
【0086】
ダイ堆積物の測定
本方法の原理は、塩化ビニリデンコポリマー組成物が押し出されるときにこの組成物のダイ上への堆積物の出現時間および量を測定することにある(分解組成物の層の堆積)。
このために、塩化ビニリデンコポリマー組成物を、40mmの外径および0.5mmのダイギャップを有するチューブ状ダイを備えた30mmの直径および長さ20Dのブラベンダー(Brabender)押出機を用いて押し出した。高温および長い滞留時間によって組成物に熱応力を加えるために高温プロフィールおよび遅いスクリュー速度を意図的に選択した。
【0087】
測定条件は下記であった:
・押出機バレルの温度プロフィール:
組成物がイキサン(登録商標)PV917またはイキサン(登録商標)PV891コポリマーを含むとき150−153−155℃;および
組成物がイキサン(登録商標)PV700コポリマーを含むとき150−158−165℃。
・アダプターのプロフィール:
組成物がイキサン(登録商標)PV917またはイキサン(登録商標)PV891コポリマーを含むとき155℃;および
組成物がイキサン(登録商標)PV700コポリマーを含むとき165℃。
・ダイの温度プロフィール:165℃
・押出機のスクリュー速度:±7kg/時の押出量に相当する、30rpm。
【0088】
始動を清浄な機械(完全な分解および全体機械の清掃)で実施した。押出は6時間以下の間、続いた。ダイのエッジ上への茶色または黒っぽい物質の層の堆積がオペレータによって観察された。ダイの写真を30分毎に撮った。試験は、過度の堆積が目に見える場合には6時間の押出前に停止した。
【0089】
実施例1(本発明による)
塩化ビニリデンコポリマーイキサン(登録商標)PV917を、下記の方法でフルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末および炭酸カルシウム・ソーカル(登録商標)312の添加前にエポキシ化大豆油と予混合によって混合した。組成物をこのように製造した。
そのために、塩化ビニリデンコポリマーを周囲温度のチャンバーに入れ、600rpmで撹拌した。180秒後に、55℃に予熱したエポキシ化大豆油を吹き付けによって導入した。同じ塩化ビニリデンコポリマー(1質量部)、フルオロポリマー(0.05質量部)および炭酸カルシウム(0.3質量部)からなるマスターバッチを次に加えた。撹拌を480秒の時間まで続行し、その後にチャンバーの内容物を、170rpmで撹拌され、かつ、その中にチャンバーの内容物を冷却させる水が循環されるジャケットを備えた別のチャンバーに排出させた。組成物の温度をそれ故30℃未満になるまでこのように低下させた。組成物を次に回収した。
幾つかのフィルムを次に、前記の方法で実施例1において得られた塩化ビニリデンコポリマー組成物を使用して製造した。
【0090】
下の表は、各成分の量および性質に関して組成物を特定し、かつ、上記の方法で測定されるこの組成物の特性、すなわち測定された熱安定性、フィッシュ−アイのレベル、酸素透過速度PO2、および水蒸気透過速度PH2Oならびにまたダイ堆積物を詳述する。
【0091】
比較例2
実施例1を、炭酸カルシウム・ソーカル(登録商標)312を添加することなく再現した。
【0092】
比較例3
実施例1を、炭酸カルシウム・ソーカル(登録商標)312およびフルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末を添加することなく再現した。
【0093】
実施例4(本発明による)
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をフルオロポリマー・ソレフ(登録商標)21508/1001で置き換えて再現した。
【0094】
実施例5(本発明による)
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をフルオロポリマー・ソレフ(登録商標)11010/1001で置き換えて再現した。
【0095】
実施例6(本発明による)
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をフルオロポリマー・ダイナマー(登録商標)FX5911で置き換えて再現した。
【0096】
実施例7(本発明による)
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をフルオロポリマー・ダイナマー(登録商標)FX9613で置き換えて再現した。
【0097】
比較例8
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をフルオロポリマーPTFEダイネオン(DYNEON)(登録商標)MMM5935EFで置き換えて再現した。
フィルムの製造中に、優先流れおよび多数の大きい未溶融断片が観察され、フィルムを使用できなくした。酸素透過速度PO2、および水蒸気透過速度PH2Oは、それ故測定できなかった。
【0098】
比較例9
実施例1を、フルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末をアクリルポリマー・プラスチストレングス(PLASTISTRENGTH)TML1000で置き換えて再現した。
【0099】
実施例10(本発明による)
実施例1を、0.1部のフルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末を0.05部の代わりに添加して再現した。
【0100】
実施例11(本発明による)
実施例1を、塩化ビニリデンコポリマーイキサン(登録商標)PV917を塩化ビニリデンコポリマーイキサン(登録商標)PV891で置き換えて再現した。
【0101】
比較例12
実施例1を、塩化ビニリデンコポリマーイキサン(登録商標)PV917を塩化ビニリデンコポリマーイキサン(登録商標)PV700で置き換えて再現した。
【0102】
比較例13
実施例12を、0.1部のフルオロポリマー・テクノフロン(登録商標)NM粉末を0.05部の代わりに添加し、炭酸カルシウム・ソーカル(登録商標)312を添加することなく再現した。
【0103】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデン、およびその少なくとも1つが一般式
CH2=CR12
(式中、R1は水素およびメチル基から選択され、R2は−CO−R3基(ここで、R3は、R4が、場合により1個以上の−OH基を有する1〜18個の炭素原子を含有する線状もしくは分岐アルキル基、2〜10個の炭素原子を含有するエポキシアルキル基、および合計2〜10個の炭素原子を含有するアルコキシアルキル基から選択される−O−R4基である)である)
に相当する(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのコモノマーからなるコポリマーである少なくとも1つの塩化ビニリデンコポリマーと;
(B)(A)の100質量部当たり、0.5〜4質量部のエポキシ化大豆油と;
(C)(A)の100質量部当たり、0.01〜2質量部の、ガラス転移温度が200℃以下である非晶質フルオロポリマーおよび融点が200℃以下である半結晶性フルオロポリマーから選択される少なくとも1つのフルオロポリマーと;
(D)(A)の100質量部当たり、1質量部以下の少なくとも1つの酸捕捉剤と
含むことを特徴とする塩化ビニリデンコポリマー組成物。
【請求項2】
単一塩化ビニリデンコポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記塩化ビニリデンコポリマーが、少なくとも50質量%の量の塩化ビニリデンおよびメチルアクリレートからなるコポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(A)の100質量部当たり、1〜2質量部のエポキシ化大豆油を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(A)の100質量部当たり、0.01〜0.1質量部の少なくとも1つのフルオロポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
単一フルオロポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(A)の100質量部当たり、0.1〜0.5質量部の少なくとも1つの酸捕捉剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
単一の酸捕捉剤を含むこと、およびこれが炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
予混合による(A)、(B)、(C)および(D)の混合を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
予混合による(B)の少なくとも一部および/または(C)の少なくとも一部を含有する(A)と(B)の任意の残り、(C)の任意の残り、および(D)との混合を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
(A)と予め製造された(B)、(C)および(D)の混合物との混合を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を含む多層フィルム。
【請求項13】
食品包装向けの、請求項12に記載のフィルムから形成されたパッケージングまたはバッグ。

【公表番号】特表2011−505442(P2011−505442A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534491(P2010−534491)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065982
【国際公開番号】WO2009/065925
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】