説明

少なくとも1つの電極および電解質が共通原子団〔XY1Y2Y3Y4〕を各々含んでなる小型電池、並びに該小型電池の製造方法

中間に固体電解質(4)が配置された少なくとも第一および第二電極(3、5)を、薄層の形で含んでなる小型電池(1)。第一電極(5)および電解質(2)が双方とも少なくとも1つの共通原子団〔XY〕を含んでなり、ここで頂点が化学元素Y、Y、YおよびYで各々形成された四面体の中にXが存在し、化学元素Xはリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウム、ゲルマニウムから選択され、化学元素Y、Y、YおよびYはイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、中間に固体電解質が配置された少なくとも第一および第二電極を、薄層の形で含んでなる小型電池に関する。
【0002】
本発明は、このような小型電池の製造方法にも関する。
【技術水準】
【0003】
公知の小型電池の中で、あるものは陽極におけるLiのようなアルカリ金属イオンの吸蔵および脱吸蔵の原理に基づいている。このような小型電池の電気化学挙動は、小型電池、即ち陽および陰極と2電極間に配置された電解質の活性要素を構成している物質に、相当程度依存している。
【0004】
リチウム小型電池の場合に、アノードとも称される陰極はLiイオンを発生するものであり、しばしば、熱蒸着された金属リチウムの薄層の形をとるか、あるいはリチウムベース金属合金またはリチウム吸蔵化合物、例えばSiTON,SnN,InN,SnOとも称されるSiSn0.9ON1.9から作製される。
【0005】
カソードとも称される陽極は、その構造中にある数のLiカチオンを吸蔵しうる少なくとも1種の物質で形成されている。LiCoO、LiNiO、LiMn、CuS、CuS、WO、TiO、V、Vのような金属と、更に酸化バナジウムおよび金属イオウのリチウム担持形は、高いLiイオン吸蔵能を有することが知られ、したがって陽極を形成するためにしばしば用いられている。しかしながら、ある物質の場合には、付着薄層の結晶化を高め、そのLiイオン吸蔵能を高める上で、熱アニーリングが時には必要とされる。
【0006】
良いイオン伝導体でかつ電気絶縁体でなければならない電解質はガラス物質により通常形成されており、その基材は酸化ホウ素、酸化リチウムまたはリチウム塩、あるいはホフェート、例えばLiPONの名称でよく知られているLi2.9PO3.30.46またはLiSiPONとも称されるLi2.9Si0.45PO1.61.3である。US特許5597660は、酸化バナジウムカソード、リチウムアノードおよびLiPO(x=2.8、2y+3z=7.8およびz=0.16〜0.46)からなる電解質を含んでなる、薄層形の小型電池について記載している。
【0007】
しかしながら、このようなリチウム小型電池は高い電気抵抗を有することが知られている。J.B.Batesらの論文“多結晶LiCoOフィルムの好ましい配向”(Journal of Electochemical Society,147(1),59-70,2000)では、LiCoO陽極およびLiPO固体電解質を含んでなる電池が、電解質と陽極および電解質間の界面とに本質的に起因して、高い抵抗を呈することを示している。
【0008】
欧州特許出願EP‐A‐1052712では、リチウム電池は、非水性溶媒に溶解されたリチウム塩、例えばLiClOまたはLiBFから構成されるか、またはLiSiOのような固形をとる、非水性電解質を含んでなる。陽極の物質はLiMn、LiNi1−y、LiMn2−yのようなリチウム含有化合物から選択され、ここでMはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、SbおよびBから選択され、xは0〜1であり、yは0〜0.9であり、zは2〜2.3である。陰極の物質は、Sn、SiおよびZnから選択される少なくとも1種の元素を含有した第一固相が、例えば固溶体または金属間化合物から構成される第二固相上に付着された、複合粒子により形成されている。電池の性能を向上させるために、該複合粒子は好ましくは鉄、鉛およびビスマスから選択される元素を痕跡の形で含んでなる。しかしながら、これは電池の内部電気抵抗を減少させるためには十分でない。
【発明の目的】
【0009】
高いエネルギー貯蔵能および適度の電気抵抗を示す小型電池を提供することが、本発明の目的である。
【0010】
本発明によると、この目的は、第一電極および電解質が双方とも〔XY〕タイプの少なくとも1つの共通原子団を含んでなるという事実により達成され、ここで頂点が化学元素Y、Y、YおよびYで各々形成された四面体の中にXが存在し、化学元素Xはリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびゲルマニウムから選択され、化学元素Y、Y、YおよびYはイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される。
【0011】
本発明の発展によると、電解質はリチウムおよびナトリウムから選択されるアルカリ金属イオンAを含んでなる。
【0012】
具体的態様によると、第一電極は、金属および炭素から選択される化学元素Eが化合物中に分散された、〔XY〕原子団を有する、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax1y1〔XYz1w1タイプの化合物を形成するように、アルカリ金属イオンA、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含めた金属イオンTの混合物と、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素Bを含んでなる。
【0013】
本発明の他の特徴によると、第二電極は〔X′Y′Y′Y′Y′〕タイプの少なくとも1つの原子団を含んでなり、ここで頂点が化学元素Y′、Y′、Y′およびY′で各々形成された四面体の中にX′が存在し、化学元素X′はリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびモリブデンから選択され、化学元素Y′、Y′、Y′およびY′はイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される。
【0014】
更に具体的には、第二電極は、金属および炭素から選択される化学元素E′が化合物中に分散された、〔X′Y′Y′Y′Y′〕原子団を有する、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax2T′y2〔X′Y′Y′Y′Y′z2B′w2タイプの化合物を形成して、第一および第二電極がアルカリ金属イオンAの異なるインターカレーション電位を有するように、アルカリ金属イオンA、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含めた金属イオンT′の混合物と、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素B′を含んでなる。
【0015】
好ましくは、マイクロテクノロジー分野で用いられる真空薄膜付着技術によると、実施しやすい、このような小型電池の製造方法を提供することも、本発明の目的である。
【0016】
本発明によると、この目的は、該方法が連続的に基板上へ:
‐少なくともAx2T′y2〔XYz2B′w2タイプの化合物および化学元素E′を含んでなる第一スパッタリングターゲットにより、第二電極を形成する第一薄層、
‐少なくとも〔XY〕タイプの原子団を含んでなる第二スパッタリングターゲットにより、電解質(4)を形成する第二薄層、
‐および少なくともAx1y1〔XYz1w1タイプの原子団および化学元素Eを含んでなる第三スパッタリングターゲットにより、第一電極を形成する第三薄層
を付着させることからなる、という事実により達成される。
【具体的態様の説明】
【0017】
図1で示されているように、小型電池1は基板1aを有し、その上に第一および第二金属集電体2および6が配置されている。集電体は例えば白金、クロム、金またはチタン製であり、それらは好ましくは0.1〜0.3μmの厚さを有する。
【0018】
第一集電体2はカソード3を形成する電極で全体的に覆われ、後者は第一集電体2を包囲し、電解質4を形成する薄層が、カソード3、第一および第二集電体2および6を隔離する基板1aの一部と第二集電体6の一部を覆うように付着されている。アノード5を形成する他の電極は、基板1a、電解質4および第二集電体6のフリー部分と接触するように配置されている。アノードおよびカソードは各々好ましくは0.1〜15μmの厚さを有する。
【0019】
2電極のうち少なくとも一方と電解質4は各々、〔XY〕タイプの共通原子団を含んでなり、頂点が化学元素Y、Y、YおよびYで各々形成された四面体の中にXが存在している。化学元素Xはリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびゲルマニウムから選択され、化学元素Y、Y、YおよびYはイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される。元素Y、Y、YおよびYは同一でもよく、これら元素のうち少なくとも1つが2つの四面体に共通した頂点を形成して、縮合化合物を形成してもよい。
【0020】
2電極のうち少なくとも一方と電解質が各々共通原子団を含んでいるという事実から、特に重ね合せ薄層の化学組成にある連続性またはある均一性を生じさせうる。そのため、電極と電解質との界面は、異なる化学組成および異なる構造の薄層であるにもかかわらず、低い電気抵抗を有している。このことから、特に、小型電池の全電気抵抗を減少させ、そのエネルギー貯蔵能を向上させうるのである。
【0021】
固体電解質4は、好ましくは、リチウムおよびナトリウムから選択されるアルカリ金属イオンAを含んでなる。それはAXYタイプの少なくとも1種の化合物を含み、それは好ましくは0.5〜1.5μmの厚さを有する。電解質4は例えばリン酸リチウム(LiPO)を含有しうる。電解質4は化合物の混合物で形成してもよく、その中にはAXYタイプの化合物が含まれる。そのため、電解質4は、LiPOと、LiSiO、LiSiOもしくはLiSのようなリチウム含有化合物またはSiSのようなケイ素含有化合物との混合物で形成してもよい。それは窒素も含んでよく、それが原子団〔XY〕のY、Y、YまたはY元素と部分的に置き換わって、例えばLiPO製の電解質の場合には、LiPOを形成するが、窒素は電解質に良いイオン伝導性を付与する。
【0022】
電解質がアルカリ金属イオンAを含んでなる場合、カソード3を形成する電極は好ましくはアルカリ金属イオンAの吸蔵および脱吸蔵用にデザインされ、一方でアノード5を形成する電極は好ましくはアルカリ金属イオンを供給するようにデザインされる。アノードおよびカソードは、アルカリ金属イオンAの異なるインターカレーション電位を有している。
【0023】
具体的態様において、アノード5を形成する電極は〔XY〕タイプの原子団を含んでなる。それは通常、電解質4に含有されるアルカリ金属イオンA、金属イオンTの混合物、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素B、および化学元素Eも含んでなる。金属イオンTの混合物は、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含んでなる。そのため、電極は、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax1y1〔XYz1w1タイプの化合物を含んでなり、金属および炭素から選択される化学元素Eが該化合物中に分散されている。例えば、LiPO電解質の場合には、例えば白金が分散されたLiFePO(LiFePO,Ptとも表示される)によりアノードが形成されてもよい。陰極のLiFePO,Pt物質は、有利にはLiFe0.67PO,Auで置き換えうる。
【0024】
カソード3は、このタイプの小型電池でカソードとして用いられることが知られた、いかなるタイプの物質から形成されてもよい。それは例えば、アルカリ金属Aまたはアルカリ金属Aの合金により、またはアルカリ金属Aと合金化可能な物質、例えばケイ素、炭素またはスズにより形成しても、あるいはそれは遷移金属を含めた混合カルコゲニドにより形成してもよい。
【0025】
それは〔X′Y′Y′Y′Y′〕タイプの少なくとも1つの共通原子団で形成してもよく、ここで頂点が化学元素Y′、Y′、Y′およびY′で各々形成された四面体の中にX′が存在し、化学元素X′はリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびモリブデンから選択され、化学元素Y′、Y′、Y′およびY′はイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される。更に詳しくは、カソードは、アルカリ金属イオンA、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含めた金属イオンT′の混合物と、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素B′も含んでなる。それは、その場合に、金属および炭素から選択される化学元素E′が化合物中に分散された、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax2T′y2〔X′Y′Y′Y′Y′z2B′w2タイプの化合物を含んでなる。
【0026】
元素TおよびT′は、電極で良い導電性を保証するようにデザインされる元素EおよびE′の場合と同一でもよい。同様に、元素X′、Y′、Y′、Y′およびY′も元素X、Y、Y、YおよびYと同一であることができる。この場合には、連続性も電解質およびカソードの化学組成に存在するため、そのことが更に小型電池の全電気抵抗を減少させて、エネルギー貯蔵能を向上させる。
【0027】
アノードおよびカソードはアルカリ金属イオンAの異なるインターカレーション電位を常に有している。このため、遷移金属TおよびT′も異なり、この第一ケースではそれらが異なるフェルミ準位を有し、または遷移金属TおよびT′が同一で、この第二ケースでは遷移金属が2物質で〔XY〕原子団と相違して結合し、即ちy1およびy2が異なる。同様に、小型電池の化学組成で連続性を保つために、電解質は〔X′Y′Y′Y′Y′〕および〔XY〕原子団を含み、その場合に元素X′、Y′、Y′、Y′、Y′は元素X、Y、Y、Y、Yと各々異なっている。
【0028】
例えば、図1の小型電池では、白金が吸蔵されたLiFePO(LiFePO,Ptとも表示される)によりアノード5が形成され、白金が吸蔵されたLiCoPO(LiCoPO,Ptとも表示される)によりカソード3が作製され、LiPOにより電解質4が作製されている。
【0029】
もう1つの例によると、アノード5は化合物LiVSiにより形成され、電解質4およびカソード3は各々LiSiO‐LiBOおよびLiCoOにより作製されている。この場合に、アノード5および電解質4に共通した原子団はSiOであり、化合物LiVSiはその構造中にSiO原子団を含んでいる。
【0030】
このような小型電池、例えば図1で示されているものは、好ましくは、例えばケイ素製の基板上へ、連続的に:
‐少なくともAx2T′y2〔XYz2B′w2タイプの化合物および化学元素E′を含んでなる第一スパッタリングターゲットにより、カソード3を形成する第一薄層
‐少なくとも〔XY〕タイプの原子団を含んでなる第二スパッタリングターゲットにより、窒素ガスの存在下で付着させうる、電解質4を形成する第二薄層
‐および、少なくともAx1y1〔XYz1w1タイプの原子団および化学元素Eを含んでなる第三スパッタリングターゲットにより、アノード5を形成する第三薄層
を付着させることにより得られる。
【0031】
第一および第二集電体2および6は、好ましくは、カソード3の付着前に、カソードスパッタリングにより、基板1a上に付着される。
【0032】
図2で示された別態様では、カソード3および電解質4の諸成分を含んでなる中間薄層7が、カソード3を全体的に覆うように、カソード3と電解質4との間に配置される。カソード3の諸成分および電解質4の諸成分の濃度は、電解質からカソード方向へ、各々0から1および1から0へと変わる。このように、第一薄層7はカソードの諸成分および電解質の諸成分の各々について第一および第二濃度勾配を形成しており、第一および第二勾配は電解質からカソード方向へ各々減少および増加している。
【0033】
同様に、図2で示された小型電池は、アノード5および電解質の諸成分を含んでなる追加中間薄層8を含んでなる。それはアノード5と電解質4との間に配置され、アノードおよび電解質の諸成分の濃度は、電解質からアノード方向へ、各々0から1および1から0へと変わる。例えば、LiPOの電解質、LiFePO,PtアノードおよびLiCoPO,Ptカソードの場合、中間薄層7は化合物LiPOおよび化合物LiCoPO,Ptを含んでなり、一方で追加中間薄層8は化合物LiPOおよび化合物LiFePO,Ptを含んでなる。
【0034】
電極と電解質との間に電極および電解質と同様の成分を含んでなる中間薄層を配置すると、電極‐電解質‐電極積層の全体において、アノードの〔XY〕原子団およびカソードの〔X′Y′Y′Y′Y′〕原子団について濃度勾配を減少させ、ひいては界面の電気抵抗を減少させ、小型電池の全電気抵抗を減少させられる。
【0035】
図2で示されたもののような小型電池を得るために、電解質の付着前に、第一および第二スパッタリングターゲットによりカソード上に中間薄層7が付着される。2ターゲットのスパッタリング力勾配は中間薄層でカソードおよび電解質の諸成分の濃度勾配を得るために用いても、またはスパッタリングターゲットは非常に速い交互のフラッシュでスパッタしてもよい。同様に、第一電極の付着前に、追加中間薄層8が第二および第三スパッタリングターゲットにより電解質上に付着される。
【0036】
更に、薄層が基板上に付着される場合、後者は各ターゲット前を交互に通過させる回転運動により動かされ、それが各ターゲット前で費やす時間は付着させる薄層の厚さに応じて変わる。
【0037】
例えば、小型電池は、1cmの表面積を有するケイ素基板上で、高周波マグネトロンスパッタリング付着と称される薄層真空付着技術により得られる。こうして、第一白金集電体2がマスク越しで基板上に付着され、次いでカソード3が99%LiCoPOおよび1%白金含有の第一スパッタリングターゲットで形成される。次いで、第一ターゲットおよびLiPOで形成された第二ターゲットにより各々、中間薄層7がカソード上に付着される。好ましくは窒素ガスの存在下、第二ターゲットにより中間薄層7上で電解質4が形成されるが、それは1μmの厚さを有する。
【0038】
次いで、99%FePOおよび1%白金含有の第三ターゲットおよび第二ターゲットにより、追加中間薄層8が電解質4上に付着される。次いで、アノード5が第三ターゲットにより追加中間薄層8上に付着される。カソードおよびアノードは各々1.5μmの厚さを有する。このような小型電池は1.4Vの電圧を出す。
【0039】
このような製造方法によると、比較的均一な化学組成を有する小型電池を得られるのみならず、マイクロテクノロジー分野で用いられている薄層付着技術、特にカソードスパッタリングも利用しうる。そのため、このような小型電池はスマートカードまたはスマートラベルのようなマイクロシステムへ搭載しうるようになる。このような小型電池は、金属リチウム製の陰極を用いない、という利点も呈する。アルカリ金属は、小型電池を損傷させうる基板の回転を必要とする熱蒸発により、実際は通常付着されている。電池の全厚は0.3〜0.30μmであり、小さな厚みのときは低い静電容量で高い電流密度に耐えられ、一方大きな厚みのときは低電流で大きな静電容量を可能にする。
【0040】
本発明は上記態様に限定されない。このように、本発明による小型電池の製造方法では、アノードおよびカソードの付着が保守されうる。更に、薄層の付着は同時スパッタリング技術でも行え、各ターゲットに負荷される力を時間毎に変えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
他の利点および特徴は、非制限例として示されたにすぎない、添付図面で表された、本発明の具体的態様の下記説明から更に明らかとなるであろう:
【図1】断面で、本発明による小型電池の第一態様を表している。
【図2】断面で、本発明による小型電池の第二態様を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間に固体電解質(4)が配置された少なくとも第一および第二電極(3、5)を、薄層の形で含んでなる小型電池(1)であって、
第一電極(5)および電解質(4)が双方とも〔XY〕タイプの少なくとも1つの共通原子団を含んでなり、ここで頂点が化学元素Y、Y、YおよびYで各々形成された四面体の中にXが存在し、化学元素Xがリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびゲルマニウムから選択され、化学元素Y、Y、YおよびYがイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択されることを特徴とする、小型電池。
【請求項2】
化学元素Y、Y、YおよびYが同一である、請求項1に記載の小型電池。
【請求項3】
、Y、YおよびYから選択される少なくとも1つの化学元素が、2つの四面体に共通した頂点を形成している、請求項1または2に記載の小型電池。
【請求項4】
電解質(4)が窒素を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の小型電池。
【請求項5】
電解質(4)が、リチウムおよびナトリウムから選択されるアルカリ金属イオンAを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の小型電池。
【請求項6】
第一電極(5)が、金属および炭素から選択される化学元素Eが化合物中に分散された、〔XY〕原子団を有する、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax1y1〔XYz1w1タイプの化合物を形成するように、アルカリ金属イオンA、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含めた金属イオンTの混合物と、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素Bを含んでなる、請求項5に記載の小型電池。
【請求項7】
第二電極(3)が、〔X′Y′Y′Y′Y′〕タイプの少なくとも1つの原子団を含んでなり、ここで頂点が化学元素Y′、Y′、Y′およびY′で各々形成された四面体の中にX′が存在し、化学元素X′がリン、ホウ素、ケイ素、イオウ、モリブデン、バナジウムおよびモリブデンから選択され、化学元素Y′、Y′、Y′およびY′がイオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される、請求項6に記載の小型電池。
【請求項8】
第二電極(3)が、金属および炭素から選択される化学元素E′が化合物中に分散された、〔X′Y′Y′Y′Y′〕原子団を有する、xおよびw≧0でyおよびz>0の、Ax2T′y2〔X′Y′Y′Y′Y′z2B′w2タイプの化合物を形成して、第一および第二電極(5、3)がアルカリ金属イオンAの異なるインターカレーション電位を有するように、アルカリ金属イオンA、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選択される少なくとも1種の遷移金属イオンを含めた金属イオンT′の混合物と、イオウ、酸素、フッ素および塩素から選択される化学元素B′を含んでなる、請求項7に記載の小型電池。
【請求項9】
TおよびT′が同一である、請求項8に記載の小型電池。
【請求項10】
EおよびE′が同一である、請求項8または9に記載の小型電池。
【請求項11】
電解質(4)が原子団〔XY〕および〔X′Y′Y′Y′Y′〕を含んでなる、請求項7〜10のいずれか一項に記載の小型電池。
【請求項12】
元素X′、Y′、Y′、Y′およびY′が元素X、Y、Y、YおよびYと各々同一である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の小型電池。
【請求項13】
第二電極(3)が、アルカリ金属Aまたはアルカリ金属Aの合金により形成されている、請求項6に記載の小型電池。
【請求項14】
第二電極(3)が、アルカリ金属Aと合金化可能な物質により形成されている、請求項6に記載の小型電池。
【請求項15】
アルカリ金属Aと合金化可能な物質が、ケイ素、炭素またはスズ製である、請求項6に記載の小型電池。
【請求項16】
第二電極(3)が、遷移金属を含めた混合カルコゲニドにより形成されている、請求項6に記載の小型電池。
【請求項17】
第一電極(5)および電解質(4)の諸成分を含んでなる第一中間薄層(8)が、第一電極(5)と電解質(4)との間に配置され、第一電極(5)の諸成分および電解質(4)の諸成分の濃度が、電解質(4)から第一電極(5)方向へ、各々0から1および1から0と変わる、請求項11〜16のいずれか一項に記載の小型電池。
【請求項18】
第二電極(3)および電解質(4)の諸成分を含んでなる第二中間薄層(7)が、第二電極(3)と電解質(4)との間に配置され、第二電極(3)および電解質(4)の諸成分の濃度が、電解質(4)から第二電極(3)方向へ、各々0から1および1から0と変わる、請求項17に記載の小型電池。
【請求項19】
連続的に基板(1a)上へ:
‐少なくともAx2T′y2〔XYz2B′w2タイプの化合物および化学元素E′を含んでなる第一スパッタリングターゲットにより、第二電極(3)を形成する第一薄層、
‐少なくとも〔XY〕タイプの原子団を含んでなる第二スパッタリングターゲットにより、電解質(4)を形成する第二薄層、
‐および少なくともAx1y1〔XYz1w1タイプの原子団および化学元素Eを含んでなる第三スパッタリングターゲットにより、第一電極(5)を形成する第三薄層
を付着させることを特徴とする、請求項12に記載された小型電池(1)の製造方法。
【請求項20】
第一中間薄層(7)が、電解質(4)の付着前に、第一および第二スパッタリングターゲットにより第二電極(3)上に付着される、請求項19に記載の小型電池の製造方法。
【請求項21】
第二中間薄層(8)が、第一電極(5)の付着前に、第二および第三スパッタリングターゲットにより電解質(4)上に付着される、請求項20に記載の小型電池の製造方法。
【請求項22】
電解質(4)が窒素ガスの存在下で付着される、請求項19〜21のいずれか一項に記載の小型電池の製造方法。
【請求項23】
第一および第二集電体(2、6)が、第二電極(3)の付着前に、カソードスパッタリングにより、基板(1a)上に付着される、請求項19〜22のいずれか一項に記載の小型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508671(P2007−508671A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534783(P2006−534783)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002571
【国際公開番号】WO2005/038965
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】