説明

少なくとも1つの高さにおいて位置調節可能な、板金の下方に設けられた緊張ローラーを有する、異なる厚さの板金を突合わせ溶接するための方法、および装置

【解決手段】 本発明は、板金1、2、有利には、異なる厚さの板金ストリップ、または板金プレートを突合わせ溶接するための方法であって、この方法が、これら板金1、2の上方および下方に、対の状態で、互いに間隔をもって溶接継ぎ目の直ぐ横に設けられた緊張ローラー4、5、10でもって、これら板金1、2の接触ライン、即ち製造されるべき溶接継ぎ目に沿って、レーザー光11または電子ビームと、板金1、2との間の相対的な移動によって行なわれ、その際、これら板金1、2の上方に設けられたこれら緊張ローラー10が、高さ移動可能に及び/またはばね作用を行なうようにこれら板金1、2の上で転動する様式の上記方法に関する。少なくとも溶接継ぎ目の一方の側で、これら板金1、2の下方に設けられた、緊張ローラー4、5が、高さにおいて位置調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、異なる厚さの板金を突合わせ溶接するための方法、および、請求項4の上位概念による方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許第299 358号明細書(特許文献1)から、少なくとも1つの固定式のレーザー光を用いて、当接状態で案内されるストリップ、もしくは板金の、連続的な溶接のための装置であって、この装置が、溶接されるべきストリップ、もしくは板金の両側で、対の状態で、これらストリップ、もしくは板金の走行方向に対して垂直方向に設けられた緊張ローラーを有する、上記装置が公知である。これら上側の緊張ローラーは、その際、適当な方法でこれら板金の上で転動するために、依存せずに移動可能な揺動アームに高さ移動可能に軸受けされている。このことによって、特に、異なる厚さの板金の突合わせ溶接の場合、上側の緊張ローラーは、異なる高さを占めることが可能である。これら両方の、溶接されるべき板金の下方に設けられた緊張ローラーは、固定して設けられており、即ち、高さにおいて位置調節可能ではなく、且つ、従って、一様で平坦な載置台を溶接されるべき板金のために形成している。
【0003】
ドイツ連邦共和国実用新案第93 14 720号明細書(特許文献2)において、比較的に薄い板金における前もって製造された溶接継ぎ目を平滑にするための装置が開示されており、その際、板金の上方で、しかもこの溶接継ぎ目のすぐの領域内において、それぞれに1つの支持ローラーが、および、溶接の後、溶接の後にこの板金の下側面に沿って、場合によって存在する溶接継ぎ目隆起部を取除くため、または少なくとも平滑にするために、この板金の下方に、送達可能、および固定可能な平滑化ローラーが設けられている。
【0004】
要するに、ヨーロッパ特許第713 746号明細書(特許文献3)において、レーザー光を用いて異なる厚さの平坦な板金を突合わせ溶接するための方法、および装置が記載されており、その際、これら両方の板金の間の厚さの段差は、下側面に沿って設けられており、且つ溶接工程の前に、これら板金が、この厚さの段差の領域内において立体的な変形を与えられている。この目的のために、上側の板金保持板および下側の移送構造は、相応して成形されている。
【0005】
この従来技術において、確かに、これら板金の間の厚さの段差が、これら板金の上方かそれとも下方に設けられていることが記載されているが、より厚いおよびより薄い板金の配設の交番、特に上から下へおよび逆に下から上への厚さの段差の交番は、しかしながら、これら溶接装置において行なわれていない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第299 358号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国実用新案第93 14 720号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許第713 746号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の根底をなす課題は、冒頭に記載した様式の方法およびこの方法を実施するための装置を提案することであり、この方法の場合、厚い、および薄い板金の配設が、および特に厚さの段差の配設が、同一の装置でもって適宜に変更可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、独立した請求項1および4が提案されている。請求項2および3内において、補完的な方法の提案が記載されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明による方法、もしくはこの方法を実施するための装置の場合、板金の上側面の上で、高さ移動可能に、及び/またはばね作用を行なうように転動する緊張ローラーと並んで、同様に、これら板金の下方で、少なくとも溶接継ぎ目の一方の側で、緊張ローラーが高さにおいて位置調節され得る。有利には、ただ、両方のこれら板金の下方に設けられた緊張ローラーの内の一方の緊張ローラーだけが、高さにおいて位置調節可能であり、これに対して、他方の緊張ローラーは固定して基礎の上に設けられている。「高さにおいて位置調節可能」は、その際、如何なるばね作用を行なうような軸受部もこの緊張ローラーに設けられてなく、むしろ、この緊張ローラーが、有利には、この板金の、予め設定された厚さ、及び/または予め設定された必要な高さ位置に依存して位置調節されることと理解されるべきである。継続している溶接工程の間じゅう、下側の緊張ローラーの高さを変化すること、即ち位置調節することが有利であることは明らかであり、従って、溶接継ぎ目の経過にわたっての両方の互いに当接する板金エッジ部の相対的な位置が、例えば、正弦波形状に、または、所定の予め設定された曲線経過に従って変化され得る。従って、いわゆる厚さの段差は、全体的または部分的に、構造部材の内側で、例えばこの板金の下側面からこの板金の上側面へと、および再び逆に、この板金の上側面からこの板金の下側面へと到達される(図9参照)。
【0009】
位置調節のために、下側の緊張ローラーは、有利には、垂直方向の案内レールの上で高さ位置調節可能な軸受に、高さ位置調節のための簡単な駆動装置と共に設けられている。
【0010】
本発明による方法でもって、従来技術とは異なり、厚さの段差の適宜な交番は、板金の上方と下方との間の溶接継ぎ目の領域内において可能である。更に、添付された図から明らかなように、より厚い板金の適宜な交番は、左から右へと行なわれ得る。このことは、特に乗用車の左側のおよび右側のために必要とされ且つ鏡対称的に構成されていなければならない構造部材が形成されねばならない場合に有利である。この様式の鏡対称的な構造部材の製造は、従来技術に所属する溶接装置でもっては行なわれず、且つ可能でなく、もしくは、ただこの構造部材の所属して設けられた板金の手間暇がかかる回転および新規の位置決めの後にだけ可能であった。本発明により、この様式の回転および新規の位置決めは必要でない。図の説明から与えられているように、下側の緊張ローラーの簡単な高さ位置調節によって、鏡対称的な構造部材(図7および8参照)と同様に、溶接継ぎ目の経過内内において交番する厚さの段差有する構造部材も、製造され得る。
【0011】
次に、本発明を、添付された図1から図9までに基づいて、例示的に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、側面図において、全溶接装置から、ただ緊張ローラー4、5および10だけが図示されており、これら緊張ローラーの間に、溶接工程の間、板金が通過方向Dに案内されている。この上側の緊張ローラー10は、自体で公知の方法で、揺動アーム12に固定されており、この揺動アームが基本的にばね14に懸架されており、且つ、軸受台13の水平方向の回転軸線を中心として高さ移動可能である。この上側の緊張ローラー10の内側に、矢印方向11でもって配設されたレーザー光が、両方の緊張ローラー10(図2参照)の間に、両方の板金1、2の接触ラインの上に整向される。板金1、2、もしくは板金1′、2′が、レーザー溶接継ぎ目の領域内において異なる厚さであるので、そこで、参照符号3、3′でもって示された厚さの段差が生じる。この厚さの段差は、図2により、通常の場合に上側に設けられており、その際、これら板金1、2の両方の下側面が、溶接継ぎ目の領域内において、1つの平坦な面を形成している。この場合に関して、同様に高さ位置調節可能な緊張ローラー4も、この緊張ローラーのいわゆる中立位置において、相対して位置している、固定した軸受部7に配設された緊張ローラー5と同じ高さ上にある。この溶接継ぎ目の右側に設けられた上側の緊張ローラー10は、より厚い板金2に載置し、且つ、左側の緊張ローラー10が、より薄い板金1に載置している。同じ方法で、図2による図示の場合、この溶接継ぎ目の、このより厚い板金2が左側に、および、このより薄い板金1が右側に設けられていることも可能である。これら両方の場合、しかしながら、これら両方の板金の間の厚さの段差3は上側に位置している。
【0013】
図3および4の場合、厚さの段差は、それぞれに下側に位置しており、従って、両方の板金の上側面が、1つの水平方向の平面を形成しており、これら平面の上で両方の緊張ローラー10が自身の高さで転動する。図3による図示の場合、より薄い板金1が左側に設けられており、且つ、この下に設けられている緊張ローラー4が、図2による中立位置に対して、高さ位置調節可能な軸受部8および所属する駆動装置9を用いて、両方の板金1、2の相応する厚さの差分だけ上方に位置調節されている。左側でのより厚い板金2の配設を有する図4による図示の場合、緊張ローラー4は、厚さの差分だけ、この中立位置から下方へと位置調節されている。全ての場合において、緊張ローラー5の高さ位置は不変のままである。これら上側の緊張ローラー10は、自動的に、その都度右側でこの緊張ローラー5の上に位置する板金によって規定される高さ位置を占める。従って、その都度、ただこの左側の緊張ローラー4の高さ位置だけが位置調節されねばならない。
【0014】
図7および8内において、それぞれに平面図および断面図において、2つの鏡対称的な構造部材が図示されており、その際、図7内において厚さの段差3が上側に、および図8内においてこの厚さの段差3が下側に設けられており、且つ、これら両方の場合、薄い板金1が左側に、および厚い板金2が右側に存在している。それに加えて図示された図5および6は、再び縮小された状態で且つ多少より概略的に、図2および3を示している。
【0015】
図9内において、下の領域内において、平面図で、板金1′および2′からつなぎ合わされた他の構造部材が図示されている。この特徴は、この場合、厚さの段差3′が、この構造部材の内側で、溶接継ぎ目に沿ってただ緊張ローラー4の高さ位置調節によってだけ、溶接工程の間じゅう連続的に変化されることである。切断線A−AおよびC−Cの領域内において、この厚さの段差3′は、それぞれに上側に設けられており、これに対して、この厚さの段差が、切断線B−Bの領域内において下側に設けられている。この溶接継ぎ目の両方の端部を出発点として、即ち有利には連続的にこの厚さの段差3′の状態が変化し、従って、この右側の板金1′か、それともこの左側の板金2′が、この溶接継ぎ目の領域内において弓形に形成されている。この場合にもちろん、より厚い板金2′が固定した緊張ローラー5の上で、および、薄い板金1′が高さ位置調節可能な緊張ローラー4の上で走行し、且つ、その際にただより厚い板金だけが弓形に変形されている場合は、最も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】側面図における、溶接の場合に板金1、2の下方および上方に設けられた緊張ローラー4、5、10の図である。
【図2】厚さの段差3、および高さ位置調節可能な緊張ローラー4の異なる位置を有する、緊張ローラー4、5および10の種々の端面図である。
【図3】厚さの段差3、および高さ位置調節可能な緊張ローラー4の異なる位置を有する、緊張ローラー4、5および10の種々の端面図である。
【図4】厚さの段差3、および高さ位置調節可能な緊張ローラー4の異なる位置を有する、緊張ローラー4、5および10の種々の端面図である。
【図5】厚さの段差3、および高さ位置調節可能な緊張ローラー4の異なる位置を有する、緊張ローラー4、5および10の種々の端面図である。
【図6】厚さの段差3、および高さ位置調節可能な緊張ローラー4の異なる位置を有する、緊張ローラー4、5および10の種々の端面図である。
【図7】それぞれに平面図および断面図における、種々の、板金1、2、もしくは板金1′、2′からつなぎ合わされた構造部材の図である。
【図8】それぞれに平面図および断面図における、種々の、板金1、2、もしくは板金1′、2′からつなぎ合わされた構造部材の図である。
【図9】それぞれに平面図および断面図における、種々の、板金1、2、もしくは板金1′、2′からつなぎ合わされた構造部材の図である。
【符号の説明】
【0017】
1、 1′ 板金(薄い)
2、 2′ 板金(厚い)
3、 3′ 参照符号1および2、もしくは1′および2′の(下側または上側の)板金の間の、厚さの段差
4 緊張ローラー
5 緊張ローラー
6 参照符号4の緊張ローラーと、参照符号5の緊張ローラーとの間の間隙
7 参考文献5の緊張ローラーのための軸受部(固定した)
8 参考文献4の緊張ローラーのための軸受部(高さ位置調節可能な)
9 高さ位置調節のための駆動装置
10 緊張ローラー(上側の)
11 レーザー光
12 参照符号13の軸受台の揺動アーム
13 軸受台
14 ばね
D 参照符号1、2の板金の通過方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金(1、2)、有利には、異なる厚さの板金ストリップ、または板金プレートを突合わせ溶接するための方法であって、この方法が、
これら板金(1、2)の上方および下方に、対の状態で、互いに間隔をもって溶接継ぎ目の直ぐ横に設けられた緊張ローラー(4、5、10)でもって、
これら板金(1、2)の接触ライン、即ち製造されるべき溶接継ぎ目に沿って、
レーザー光(11)または電子ビームと、板金(1、2)との間の相対的な移動によって行なわれ、
その際、これら板金(1、2)の上方に設けられたこれら緊張ローラー(10)が、高さ移動可能に、及び/またはばね作用を行なうようにこれら板金(1、2)の上で転動する様式の上記方法において、
少なくとも溶接継ぎ目の一方の側で、これら板金(1、2)の下方に設けられた、緊張ローラー(4、5)が、高さにおいて位置調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
緊張ローラー(4、5)は、この所属する板金(1、2)の厚さ、及び/または必要な高さ位置に依存して、高さにおいて位置調節されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
継続している溶接工程の間じゅう、一方の緊張ローラー(4)の高さが変化され、且つ、他方の緊張ローラー(5)の高さが固持されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の溶接方法を実施するための、板金(1、2)、有利には、異なる厚さの板金ストリップ、または板金プレートを突合わせ溶接するための装置であって、その際、
これら板金(1、2)の上方および下方に、対の状態で、互いに間隔をもって溶接継ぎ目の直ぐ横に緊張ローラー(4、5、10)が設けられており、且つ、
これら板金(1、2)の上方に設けられたこれら緊張ローラー(10)が、高さ移動可能に、及び/またはばね作用を行なうようにこれら板金(1、2)の上で転動する様式の上記装置において、
板金(1、2)の下方に設けられた緊張ローラーの内の、少なくとも1つの緊張ローラー(4)が、垂直方向の案内レールの上で高さ位置調節可能な軸受(8)に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−513774(P2007−513774A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543377(P2006−543377)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010670
【国際公開番号】WO2005/061169
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506194427)ティッセンクルップ・ドラウツ・ノートヘルファー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】