説明

少なくとも2つの非相溶性熱可塑性ポリマーおよび相溶化剤を含む組成物、その製造方法ならびにその使用

【課題】少なくとも2つの非相溶性熱可塑性ポリマーと少なくとも1つの相溶化剤とを含む組成物、この組成物の製造方法、および特に改善された機械的特性を有する熱可塑性物品または半製品の製造のための該組成物の提供。
【解決手段】
該高分子相溶化剤が、該ポリマーそれぞれと相溶性である極性および無極性ユニットの少なくとも2つの基を含むようなものであり、そしてそれは、該相溶化剤のみが該組成物中で架橋される様式での、架橋可能状態の該相溶化剤と該熱可塑性ポリマーとの、架橋システムの存在下における、高温配合反応の生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの非相溶性熱可塑性ポリマーおよび少なくとも1つの相溶化剤を含む組成物、この組成物の製造方法、ならびに特に改善された機械的特性を有する熱可塑性物品または半製品の製造のための該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリマーの組成物またはブレンドは、単一ポリマーで得ることが困難であるかまたは不可能である一連の特性を有するという要件を満たしている。これは、通常、耐溶剤性、衝撃強さ、剛性、延性、“バリア”タイプ特性(”barrier”-type properties)、耐摩耗性、耐火性、光沢(gloss)などのような特定の特性に適用される。ポリマーブレンドはまた、希釈剤として機能する低コストポリマーの添加によって、より低い製造コストを提供し、そして加工性および/またはリサイクル性を改善するという要件を満たし得る。
【0003】
これらのポリマー組成物は、それらが、一般的に非混和性であり(典型的に、極性および無極性である)そして従って相溶化剤(compatibilizer)の混合を必要とするポリマーを含むという事実よって制限される(読者は、Polymer Handbook, J. Brandrup and E. H. Immergut, Editors, 3rd Edition, Wiley, New York, 1989におけるS. M. Krauseによる研究 “Compatible Polymers”を参照してもよい)。このような相溶化(compatibilization)は、界面張力を減少させることおよび相間の接着性を改善することによって、組成物の特性を改善するように意図される。
【0004】
種々の相溶化技術が、非混和性ポリマーに基づく組成物において、現在、使用されている:
− 両方のポリマーと相溶性である少量(典型的に、0.5%〜1%の範囲の質量フラクション)の共溶媒の添加;
− 該2つのポリマーそれぞれと相溶性である2つのブロックを有する、ジブロックまたはトリブロックタイプのコポリマーの、実質的に1%〜20%の質量フラクションでの、添加(トリブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーよりもかなり該組成物の機械的特性を改善する);
− より高い質量フラクション(通常20%〜35%)でのコア−シェルタイプ(core-shell type)(例えば、エチレン/アクリレート/無水マレイン酸タイプまたはグリシジルメタクリレート/エチレン/ビニルアセテートタイプ)の予め架橋されている高分子修飾剤(precrosslinked polymeric modifier)の添加(コア−シェル修飾剤は、脆いブレンドの場合に、衝撃強さの増加を示す);
− “反応性相溶化(reactive compatibilization)”として公知の技術を使用しての相溶化剤のインサイチュ生成[これは、大きなインターフェーズ(interphase)を生じさせ、そして射出成形のような特に厳しい加工処理の間(高圧および高剪断)、該ブレンドの機械的特性を保持することを可能にする]。
【0005】
特許文献US−B−6 887 940自体が、それぞれポリアミドおよびポリオレフィンからなる極性および無極性ポリマーを含む組成物中において、予備酸化(prior oxidation)によって形成されたカルボン酸基を有するポリオレフィンからなる相溶化剤の使用を開示している。
【0006】
これらの技術の利点は、周知であり、そして文献に、例えばA. AjjiおよびL. A. Utrackiによる文献Polym. Eng. Sci., 36, 1574, (1996) に記載されている。
【0007】
これらの技術は、ポリマーブレンド中の界面張力を低下させることを可能にするが、しかし、それらは、得られる組成物に、一方で、満足な結合および機械的特性を、そして、他方で、該組成物が加工された後に(例えば、該組成物の射出成形または押出成形の後に)安定な形態を与えないという主要な欠点を有している。
【0008】
コア−シェル高分子修飾剤の添加または反応性相溶化(reactive compatibilization)からなるもののようなこれらの技術の別の欠点は、それらのプロセッシングの複雑性にある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの欠点を改善することが本発明の目的であり、そしてこの目的は、それぞれ極性および無極性である少なくとも2つの非相溶性熱可塑性ポリマー、ならびに該ポリマーそれぞれと相溶性である極性および無極性ユニットの少なくとも2つの基を含む少なくとも1つの架橋性高分子相溶化剤が、この反応の生成物が架橋されていないこれらのポリマーと逆に架橋されている該相溶化剤とを含むような様式で、好適な架橋システムの存在下において、高温配合反応(hot compounding reaction)に供されると、特に以下を有する組成物が得られることを、本出願人が、予想外なことに発見した点で、達成される:
− これらの同一のポリマーの原料ブレンドであるが相溶化剤を含まないもののそれに対して実質的に改善された破断点伸び(elongation at break);
− この原料ポリマーブレンドのそれと同様かまたはそれよりも大きい弾性率(elastic modulus);および
− 組成物中において架橋されていない状態である同一の相溶化剤によって同一のポリマーに対し付与されるものと同様である、特に降伏応力(yield stress)を含む、“降伏”変形特性(”yield” deformation properties)。
【0010】
該相溶化剤のみが架橋を受けて、それを架橋可能初期状態(crosslinkable initial state)から架橋化最終状態(crosslinked final state)へ変化させるようなこの配合反応(compounding reaction)の生成物を含む、本発明に従う組成物は、該組成物が、全体として先行技術のそれと比較して改善されている、結合(cohesion)そして従って一連の機械的および弾性的な特性を得ることを可能にすることが、注意されるべきである。
【0011】
また、配合操作の間の該2つのポリマー間のインターフェーズ(interphase)のこの架橋が(インターフェーズは相溶化剤のみからなる)、本発明に従う組成物に、加工後(例えば、押出成形または射出成形後)でさえ実質的に維持される、凝集(coalescence)の無い形態を与えることを可能にすることが、注意されるべきである。
【0012】
更には、この架橋されたインターフェーズの存在はまた、この凝集の非存在に起因して、本発明に従う組成物の耐溶剤性およびそのリサイクル性を改善することが、注意されるべきである。
【0013】
有利には、該架橋システムは、有機過酸化物を含むシステム、フェノール性樹脂を含むシステム、金属酸化物を含むシステムおよびジアミンを含むシステムからなる群から選択される。
【0014】
好ましくは、該高分子相溶化剤は、炭素−炭素二重結合を含み、そしてそのとき、該架橋システムは、有利には、少なくとも有機過酸化物、活性剤(activator)および必要に応じて硫黄を含む。
【0015】
この場合、該活性剤は、有利には、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびN,N’−フェニレンジマレイミドからなる群から選択される。
【0016】
本発明の第1の実施形態によれば、該相溶化剤は、線状ポリスチレン/1,4−ポリブタジエン/ポリメチルメタクリレート トリブロックターポリマーである。
【0017】
本発明の第2の実施形態によれば、該相溶化剤は、エチレン、アクリレートおよびアクリル酸由来のユニットを含むランダムターポリマーである。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、該熱可塑性ポリマーは、有利には、以下を含む:
− ポリビニルアセテート、ポリアクリリック(polyacrylics)(例えば、非限定的に、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー、およびメチルメタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー)、脂肪族タイプのエステルホモポリマーおよびコポリマー(例えば、非限定的に、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート)、脂肪族タイプのアミドホモポリマーおよびコポリマー(例えば、非限定的に、ポリアミド −6,6、−6,10、−6,12、−4,6、−6、−11および−12)、ポリオキシメチレン、フルオロポリマー(例えば、非限定的に、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデン)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドならびにポリエーテル−ブロック−アミドコポリマーからなる群から選択される極性ポリマー;ならびに
− ポリオレフィン(例えば、非限定的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびポリメチルペンテン)から選択される無極性ポリマー。
【0019】
なおより有利には、該極性ポリマーは、脂肪族アミド、ポリオキシメチレンおよびポリフッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択され、そして該無極性ポリマーは、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、該組成物は、有利には、以下を含む:
− 1%〜90%の質量フラクションの該極性熱可塑性ポリマー;
− 90%〜1%の質量フラクションの該無極性熱可塑性ポリマー;および
− 0.01%〜5%の質量フラクションの該架橋システム。
【0021】
なおより有利には、該組成物は、以下を含む:
− 40%〜60%の質量フラクションの該極性熱可塑性ポリマー;および
− 50%〜30%の質量フラクションの該無極性熱可塑性ポリマー。
【0022】
好ましくは、本発明に従う組成物は、1%〜25%、そしてなおより好ましくは5%〜15%の質量フラクションの該相溶化剤を含む。
【0023】
本発明に従う組成物はまた、それらが意図される熱可塑性半製品(semi-finished products)または物品(articles)において通常使用される他の成分の全てまたはいくつかを含み得ることが、注意されるべきである。
【0024】
上記で規定される組成物を製造するための本発明に従う方法は、該組成物中の該相溶化剤のみを架橋するように、架橋可能状態の該相溶化剤と該熱可塑性ポリマーの各々とを、架橋システムの存在下において、熱機械的に混合する操作を包含する。
【0025】
好ましくは、該配合操作(compounding operation)は、200℃〜220℃のダイ温度で、二軸スクリュー配合機(twin-screw compounder)において行われる。
【0026】
本発明によれば、該組成物は、破断点伸び(elongation at break)、降伏強度(yield strength)および弾性率(elastic modulus)を包含する、改善された機械的特性を有する熱可塑性物品または半製品の製造のために使用される。
【0027】
本発明の上記特徴ならびに他のものは、添付の図面と組み合わせて、例示として与えられしかし限定を意図しない、本発明のいくつかの例示的な実施例の下記の説明を読めば、より明確に理解される。
【0028】
下記の実施例において、“コントロールの”および本発明に従う、各組成物についての配合条件(compounding conditions)は、以下であった。
【0029】
35mmの直径および40の長さ/直径比を有する“共回転二軸スクリュー(corotating twin-screw)”タイプの配合機(ZK 35×40D、Collin製)。二軸スクリュー押出機(twin-screw extruder)のプロフィールは、主に輸送領域(transport zone)および散在した混合領域(interspersed mixing zones)からなった。ダイの温度は、実施例1において200℃、そして実施例2および3において210℃であった。スクリュー速度(screw speed)は200rpmであった。
【0030】
全ての成分を混合し、そして二軸スクリュー押出機へそれらを導入するために、20kg/hのスループットで計量した(K−Tron製のK−SFS−24を使用)。
【0031】
組成物を、直径1.6mmのロッドの形態で押出成形し、そしてこれらを水で冷却し、次いで1000rpmの速度で作動するオーバーヘッドグラニュレータ(overhead granulator)(LWRG 50H、Leistritz製)によって切断した。
【0032】
H1タイプの引張り試料(tensile specimens)を、射出成形により該顆粒から作製した。この目的のために、125トンプラスチック射出成形機(NT125シリーズ、Sandretto製)を使用した。射出スクリュー(injection screw)の温度プロフィールは、フィードでの160℃からノズルでの200℃への温度勾配であった。鋳型温度(mould temperature)は50℃であった。
【0033】
本発明に従う組成物と“コントロール”組成物の特性を、下記のように実験で評価した。
【0034】
機械的特徴:
引張り試験を、20mm/分の引張り速度で、引張試験機(5544シリーズ、Instron製)を用いて、H1試料について行った。使用した方法は、ヤング率、降伏応力、降伏歪み、破断点応力および破断点伸びを測定することを可能にした。
【0035】
見かけ弾性限度(apparent elastic limit)と呼ばれることもある降伏応力(yield stress)は、定義により、それより上で流動現象が観察されるユニタリーロード(unitary load)である。より正確には、それは、上降伏点(ReH)であり、これは、初めて、ロードの低下が実際に観察される際のユニタリーロードの値である。
【0036】
レオロジー的特徴:
試験を、損失角(tanδ)を測定するARES(Advanced Rheometric Expansion System)装置において行った。−100℃から+100℃への温度スキャン(10℃/分 ランプ)を、組成物の各々について行った。試料を、2rad/sの頻度(frequency)で0.1%の歪みへ供した。
【0037】
組成物膨張試験:
これらの試験の各々を、寸法25×25×2mmを有する4つの試料について行った。試料を、FAMB試験溶媒中に浸漬した。96時間後、試料を溶媒から取り出し、次いでふき取り、それらを重量測定し(質量minitial)そしてそれらを測定した(体積vinitial)。フード下で24時間乾燥後、試料を、再度、重量測定し(質量mfinal)そして測定した(体積vfinal)。
【0038】
パーセンテージ膨張は、以下である:
【0039】
【数1】

【0040】
FAMB溶媒の組成は、以下であった:
【0041】
【数2】

【0042】
クリープ緩和試験(図1に例示)
クリープ緩和試験(creep-relaxation tests)を、H1タイプ試験サンプルから切断した39mm長のバー(bar)について行った(歪み:3%; 温度:140℃; 時間:16時間)。測定を、ARESタイプのインポーズド−ストレインレオメーター(imposed-strain rheometer)(Rheometrics Scientific製)において行った。該ブレンドを比較することができそして複素弾性率Gの値と無関係となるように、パラメータG(t)/Gを計算した。Gは、複素弾性率(complex modulus)の最大値である。
【実施例】
【0043】
実施例
I.試験の第1シリーズ:
5つの“コントロール”組成物A1、B1、C1、D1およびE1、ならびに本発明に従う3つの組成物Inv1、Inv1’およびInv1’’を、上記の様式で製造し、これらのそれぞれの処方(formulations)を、体積フラクション(V/V)として下記表2に与える。
【0044】
組成物A1は、極性ポリマーとして、ポリオキシメチレンコポリマー(Ticona製のHostaform C13021)のみを含み、そして組成物B1は、無極性ポリマーとして、プロピレンホモポリマー(Basell製のMoplen 2084 HEXP)のみを含んだ。
【0045】
組成物C1は、これらの2つのポリマーのブレンドのみを含み、組成物D1は、DICUP40過酸化物架橋システムおよびまた粉末形態のALCAN活性剤を更に含み、一方、組成物E1は、架橋システムを含まないが、相溶化剤として、架橋されていないトリブロックコポリマーSBM 012(Arkema製)を含んだ。
【0046】
本発明に従う各組成物Inv1、Inv1’、Inv1’’は、このポリマーブレンドに加えて、組成物D1において使用される架橋システムおよび組成物E1において使用される相溶化剤の両方を含み、その結果、このコポリマーSBM 012のみが配合(compounding)の間に架橋された。
【0047】
該ポリマーおよび該相溶化剤について(各々は純粋な状態である)、ARES IIレオメーターにおいて測定されたガラス転移温度Tを、下記表1に与える。
【0048】
【表1】

【0049】
これらの値は、2rad/sの頻度でおよび0.1%の歪みについて−100℃から+100℃への10℃/分の速度での温度スキャンに対応している。
【0050】
種々の組成物の機械的特性を、Sandretto成形機において射出成形されたH1タイプ試験試料について測定した。“転移”圧力(”transition” pressure)(即ち、“保持”圧力(”hold” pressure)への転移直前)および機械的特性の測定値を、下記表2に与える。
【0051】
【表2】

【0052】
本発明に従う3つの組成物Inv1、Inv1’およびInv1’’についての膨張値(swelling values)は、“コントロール”組成物D1およびE1のそれらよりも低いことが、注意されるべきであり、このことは、SBM 012相溶化剤が、本発明に従う組成物中において架橋されたことを示している。
【0053】
ガラス転移温度(T)もまた、純粋な製品についてと同一のプロトコルに従って、これらの組成物のいくつかについて測定した。結果を表3に与える。
【0054】
【表3】

【0055】
相溶化剤無しで作製した“コントロール”組成物C1は、純粋な製品からの値との比較によって示されるように、混合物の法則(the law of mixtures)に一致した弾性率および破断点伸びの値を有した(表3を参照のこと)。T値は、組成物C1の種々の成分間で相互作用がないことを示し、温度は純粋な製品のそれと同様のままである。
【0056】
この組成物C1への過酸化物架橋システムの添加は、表2において理解され得るように、“コントロール”組成物D1へ劣った特性を与える。組成物C1の対応の特性と比較した場合、降伏応力および破断点伸びは減少し、一方、弾性率は影響がない。これは、該2つの、極性および無極性の、高分子相が、この架橋システムによって架橋されていないことを示している。
【0057】
該ポリマーブレンドへの架橋システム無しでの該相溶化剤の添加は、“コントロール”組成物E1を提供し、ガラス転移温度Tによって示されるように、該相のより良好な相互浸透(interpenetration)を生じさせ、該2つの主なピーク間の差異は該ブレンドにおいて4℃減少している(表3を参照のこと)。機械的特性の観点から、組成物E1の弾性率は、相溶化されていない組成物C1およびD1のそれよりも実質的に低い。しかし、破断点伸びおよび降伏応力のような他の機械的特性は、改善されている。
【0058】
本発明に従う第1組成物Inv1(これは、減少した量の架橋システムでの相溶化剤のみの架橋を特徴とする)は、ベース組成物C1の高い弾性率と、相溶化された“コントロール”組成物E1の満足いく降伏歪みとを兼ね備えている。効果は、降伏歪みおよび破断点伸び(これは、組成物C1の場合の12%から組成物Inv1の場合の22%へ増加する)の場合に特に顕著である。
【0059】
更に、組成物Inv1における該2つの、極性および無極性の、高分子相の相互浸透は、ガラス転移温度Tが示すように(表3を参照のこと)、相溶化されている“コントロール”組成物E1のそれと匹敵しているままであることが、注意されるべきである。
【0060】
架橋システムの量を増加させることによって、混合物の法則(the law of mixtures)が与えるものを十分超える弾性率を得ることが可能である(本発明に従う第2および第3組成物、Inv1’およびInv1’’を参照のこと)。これらの組成物Inv1’およびInv1’’を特徴付ける増加された剛性は、降伏点の消滅を伴い、該材料は、弾性挙動のために、その可塑性特徴を喪失させる。
【0061】
クリープ緩和試験をまた、上記で説明するように、3つの組成物C1、E1およびInv1から作製した3つのバー試料(bar specimens)それぞれについて行った。複素弾性率の時間に伴う変化に関して得られる結果を与える図1に示されるように、本発明に従う組成物Inv1は、後者よりも高い弾性率を維持することによって、“コントロール”組成物C1およびE1よりも少なく“軟化”されていることが明らかである。従って、本発明に従う組成物Inv1は、140℃の試験温度(該ポリマーの軟化点に実質的に対応)で、組成物C1およびE1よりも少なくクリープ緩和現象に供される。
【0062】
II.試験の第2シリーズ:
3つの“コントロール”組成物C2、D2およびE2ならびに本発明に従う1つの組成物Inv2を、上述の様式で作製し、これらのそれぞれの処方を、表4に重量部で与える。
【0063】
組成物C2は、極性ポリマーとしての、実質的にナイロン−11タイプのポリアミド/エチレンコポリマー(Atofina製のRILSAN B)と、無極性ポリマーとしての、プロピレンホモポリマーMoplen 2084 HEXP(Basell製)とのブレンドを含んだ。
【0064】
組成物D2は、更に、DICUP 40 過酸化物架橋システムおよびまた粉末形態のALCAN活性剤を含み、一方、組成物E2は、架橋システムを含まないが、相溶化剤として、架橋されていないトリブロックコポリマーSBM012(Arkema製)を含んだ。
【0065】
本発明に従う組成物Inv2は、このポリマーブレンドに加えて、組成物D2において使用した架橋システムおよび組成物E2において使用した相溶化剤の両方を含み、その結果、このコポリマーSBM 012のみが、配合の間に架橋された。
【0066】
【表4】

【0067】
本発明に従う組成物Inv2の膨張は、“コントロール”組成物C2、D2およびE2のそれよりも低いことが注意されるべきであり、このことは、SBM 012相溶化剤が、組成物Inv2中で架橋されたことを示している。
【0068】
これらの組成物について、ガラス転移温度Tをまた、純粋な製品についてと同一のプロトコルに従って測定した。結果を、下記の表5に与える。
【0069】
【表5】

【0070】
ガラス転移温度Tは、表5において示されるように、相溶化剤の存在によって改変される(組成物E2およびInv2を参照のこと)。組成物Inv2中の相溶化剤を特徴付ける架橋は、該相の相互浸透を改変せず、何故ならば、ガラス転移温度は、相溶化された“コントロール”ブレンドE2の場合において観察されるものに匹敵しているからである。
【0071】
表4から、本発明に従う組成物Inv2の破断点伸びおよび降伏応力は、ベースの“コントロール”組成物C2のそれと同様であるかまたはより良好であり、一方、組成物Inv2の弾性率は、組成物C2の場合における800MPaから1060MPaへ増加しているので(即ち、32%を超える増加)、顕著に増加していることが明らかである。
【0072】
III.試験の第3シリーズ:
3つの“コントロール”組成物C3、D3およびE3ならびに本発明に従う3つの組成物Inv3、Inv3’およびInv3’’を、上述の様式で作製し、これらのそれぞれの処方を、下記の表6において重量部で与える。
【0073】
組成物C3は、極性ポリマーとしての、ポリオキシメチレンコポリマーHostaform C13021(Ticona製)と、無極性ポリマーとしての、プロピレンホモポリマーMoplen 2084 HEXP(Basell製)とのブレンドを含んだ。
【0074】
組成物D3は、SP1045 フェノール−ホルムアルデヒド樹脂からなる架橋システムを更に含み、一方、組成物E3は、架橋システムを含まなかったが、相溶化剤として、エチレン/アクリレート/アクリル酸タイプの架橋されていないランダムコポリマーAT 325をまた含んだ。
【0075】
本発明に従う3つの組成物Inv3、Inv3’およびInv3’’の各々は、このポリマーブレンドに加えて、組成物D3において使用した架橋システムおよび組成物E3において使用した相溶化剤の両方を含み、その結果、このコポリマーAT 325のみが、配合の間に架橋された。
【0076】
本発明に従う第2および第3組成物、Inv3’およびInv3’’は、それらが、遥かに少ない量の架橋樹脂を含有するという事実によってだけ、組成物Inv3と相違することが、注意されるべきである。
【0077】
【表6】

【0078】
表6から、本発明に従う組成物Inv3、Inv3’およびInv3’’の各々の破断点伸びおよび降伏応力は、ベースの“コントロール”組成物C3のそれよりも良好であり、一方、各組成物Inv3、Inv3’およびInv3’’の弾性率は、このベース組成物C3のそれと同様であるかまたはより高いことが、明らかである。
【0079】
非常に少量の架橋樹脂を含む、本発明に従う組成物Inv3’およびInv3’’は、組成物C3のそれよりもなおより実質的に改善された破断点伸びおよび弾性率の値を有することがまた、注意されるべきである。
【0080】
IV.試験の第4シリーズ:
3つの“コントロール”組成物C4、D4およびE4ならびに本発明に従う1つの組成物Inv4を、上述の様式によって作製し、これらのそれぞれの処方を、表7において重量部で与える。
【0081】
組成物C4は、極性ポリマーとしての、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)KYNARFLEX 2750(Arkema製)と、無極性ポリマーとしての、高密度ポリエチレンLAQTENE X10Bとのブレンドを含んだ。
【0082】
組成物D4は、DICUP 40過酸化物架橋システムおよびまた粉末形態のALCAN活性剤をさらに含み、一方、組成物E4は、架橋システムを含まず、しかしまた、相溶化剤として、架橋されていないトリブロックコポリマーSBM 012(Arkema製)を含んだ。
【0083】
本発明に従う組成物Inv4は、このポリマーブレンドに加えて、組成物D4において使用した架橋システムおよび組成物E4において使用した相溶化剤の両方を含み、その結果、このコポリマーSBM 012のみが、配合の間に架橋された。
【0084】
【表7】

【0085】
表7から、本発明に従う組成物Inv4の破断点伸びおよび降伏応力は、ベースの“コントロール”組成物C4のそれよりも実質的に良好であり、一方、この組成物Inv4の弾性率は、ベース組成物C4のそれよりも高いことが、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、クリープ緩和現象を評価するための、本発明に従う組成物および2つの“コントロール”組成物のそれぞれの複素弾性率(complex moduli)の、時間関数としての変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ極性および無極性である少なくとも2つの非相溶性熱可塑性ポリマー、ならびに該ポリマーそれぞれと相溶性である極性および無極性ユニットの少なくとも2つの基を含む少なくとも1つの高分子相溶化剤を含む組成物であって、該相溶化剤のみが該組成物中で架橋される様式での、架橋可能状態の該相溶化剤と該熱可塑性ポリマーとの、架橋システムの存在下における、高温配合反応(hot compounding reaction)の生成物を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記架橋システムが、有機過酸化物を含むシステム、フェノール性樹脂を含むシステム、金属酸化物を含むシステムおよびジアミンを含むシステムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高分子相溶化剤が、炭素−炭素二重結合を含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記架橋システムが、少なくとも有機過酸化物、活性剤(activator)および必要に応じて硫黄を含むことを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性剤が、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびN,N’−フェニレンジマレイミドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記相溶化剤が、線状ポリスチレン/1,4−ポリブタジエン/ポリメチルメタクリレート トリブロックターポリマーであることを特徴とする、前記請求項の1つに記載の組成物。
【請求項7】
前記相溶化剤が、エチレン、アクリレートおよびアクリル酸由来のユニットを含むランダムターポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5の1つに記載の組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーが、
− ポリビニルアセテート、ポリアクリリック(polyacrylics)、脂肪族タイプのエステルホモポリマーおよびコポリマー、脂肪族タイプのアミドホモポリマーおよびコポリマー、ポリオキシメチレン、フルオロポリマー、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドならびにポリエーテル−ブロック−アミドコポリマーからなる群から選択される極性ポリマー;ならびに
− ポリオレフィンファミリーに属する無極性ポリマー、
を含むことを特徴とする、前記請求項の1つに記載の組成物。
【請求項9】
− 前記極性ポリマーが、脂肪族アミド、ポリオキシメチレンおよびポリフッ化ビニリデンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択されること;ならびに
− 前記無極性ポリマーが、高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンであること
を特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
− 1%〜90%の質量フラクションの前記極性熱可塑性ポリマー;
− 90%〜1%の質量フラクションの前記無極性熱可塑性ポリマー;および
− 0.01%〜5%の質量フラクションの前記架橋システム
を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
− 40%〜60%の質量フラクションの前記極性熱可塑性ポリマー;および
− 50%〜30%の質量フラクションの前記無極性熱可塑性ポリマー
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1%〜25%の質量フラクションの前記相溶化剤を含むことを特徴とする、前記請求項の1つに記載の組成物。
【請求項13】
5%〜15%の質量フラクションの前記相溶化剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該組成物中の該相溶化剤のみを架橋するように、架橋可能状態の前記相溶化剤と前記熱可塑性ポリマーの各々とを、架橋システムの存在下において、熱機械的に混合する操作を包含することを特徴とする、前記請求項の1つに記載の組成物の製造方法。
【請求項15】
前記配合操作が、200℃〜220℃のダイ温度で、二軸スクリュー配合機(twin-screw compounder)において行われることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
破断点伸び、降伏強度および弾性率を包含する、改善された機械的特性を有する熱可塑性物品または半製品の製造のための、請求項1〜13の1つに記載の組成物の使用。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−56257(P2007−56257A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−210539(P2006−210539)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(591136931)
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
【Fターム(参考)】