説明

尿素水改質器及びこれを用いた排ガス浄化装置

【課題】尿素水を十分に微粒化し、これにより尿素水を触媒部でアンモニアガスに効率良く改質する。
【解決手段】キャリアガス源から供給されたキャリアガスがキャリアガス加熱部16により加熱され、キャリアガス加熱部16により加熱されたキャリアガスがキャリアガス噴射ノズル17から噴射され、キャリアガス噴射ノズル17から噴射されたキャリアガスにより尿素水18が微粒化されるように尿素水18が第1尿素水供給ノズル21によりキャリアガス噴射ノズル17の先端に供給されるように構成される。また微粒化した尿素水18を分解してアンモニアガスに改質する触媒部23がキャリアガス噴射ノズル17に対向して設けられる。更に触媒部23の出口から排出されたアンモニアガスをエンジンの排気管12に供給するアンモニアガス供給ノズル24が排気管12に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素水を分解してアンモニアガスに改質する改質器と、この改質器で改質されたアンモニアガスを還元剤として用いてエンジンの排ガス中のNOxを浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窒素酸化物の還元剤を供給する供給手段が窒素酸化物含有排ガスの流路に設けられ、この供給手段の後流側に排ガス脱硝部が設けられた排ガス脱硝装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排ガス脱硝装置では、上記還元剤の供給手段が、尿素水を噴出させる尿素水噴出部と、尿素水噴出部から噴出した尿素水を蒸発させる蒸発部と、この蒸発部の後流部に設けられ尿素水をアンモニアガスに分解する加水分解部と、このアンモニアを含むガスを上記排ガス中に噴射供給する還元剤噴射部とを有する。また蒸発部又は蒸発部及び加水分解部にヒータが設けられる。更に上記尿素水噴出部、蒸発部、加水分解部及び還元剤噴射部(分解ガス出口部)を筒状容器内にこの順に設けることにより、尿素気化器が形成される。
【0003】
このように構成された排ガス脱硝装置では、尿素気化器の筒状容器を均一加熱し、内部に向けて尿素水(尿素濃度30%〜50%)を吹き込むと、容器内部で水と尿素が蒸発し、内部に充填した触媒粒子、例えばγアルミナ粒子、炭酸カリウムを担持した粒子等の表面において尿素が分解し、アンモニアガスが生成される。ここで、気化器の内部は、450℃以上を保持する構成とし、尿素が加熱分解する過程で発生するシアヌル酸やイソシアン酸などの固体が副生しないように、急速蒸発加熱を促進する構造になっている。換言すれば、尿素噴霧流量が著しく変化しても、容器内部の温度変動を抑制できるように蒸発面の伝熱促進に注力した構造になっている。具体的には、加水分解部に充填したγアルミナ粒子等の上部(又は前流側)に、これよりも熱伝導率の優れるシリコンカーバイドや、鉄、ステンレスの球、メタルハニカム等を充填した構造になっている。
【0004】
一方、還元剤前駆体を部分的に蒸発させて気体流を生成させるための第1ゾーン及びその気体流を部分的に加熱するための第2ゾーンがダクトに設けられ、このダクトに、還元剤前駆体を供給するための輸送手段と、気体流中の還元剤前駆体を還元剤に変化させるための手段と、第1ゾーンを第1温度に加熱して第2ゾーンを第2温度に加熱するための加熱素子とが設けられた、還元剤を含む気体流を生成するための装置(以下、還元剤含有気体流生成装置という。)が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このように構成された還元剤含有気体流生成装置では、輸送手段が還元剤前駆体をダクトに供給し、第1ゾーンに位置する加熱素子が還元剤前駆体を蒸発させて気体流を形成した後に、第2ゾーンに位置する加熱素子が上記気体流を部分的に250℃の温度まで加熱して気体流中の還元剤前駆体を部分的に還元剤に変化させて、還元剤含有気体流が生成される。上記還元剤含有気体流生成装置で生成された還元剤含有気体流は、内燃機関の排気ラインに導入され、そこで内燃機関の排ガス流と混合される。還元剤含有気体流及び排ガス流の混合ガスがSCR触媒コンバータを通って流れ、排ガス流に含まれる窒素酸化物が還元剤により変換されることにより、排ガス中のNOxの含有率が低下するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−000867号公報(請求項1、2及び6、段落[0012]、段落[0013]、図1)
【特許文献2】特開2010−506078号公報(請求項1及び7、段落[0047]、図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1に示された排ガス脱硝装置では、尿素水の噴射圧が低く、空気を冷却用として使用しているため、尿素水が十分に微粒化しないおそれがあった。また、上記従来の特許文献2に示された還元剤含有気体流生成装置では、尿素水がダクトに流れるため、尿素水がダクトの内壁に付着してしまい、尿素水がダクト内をスムーズに流れないおそれがあった。
【0008】
本発明の第1の目的は、尿素水を十分に微粒化することができ、これにより尿素水を触媒部でアンモニアガスに効率良く改質できる、尿素水改質器を提供することにある。本発明の第2の目的は、改質器ハウジングをアンモニアガス供給ノズルとともに排気管に比較的容易に取付けることができる、尿素水改質器を提供することにある。本発明の第3の目的は、キャリアガス加熱部におけるキャリアガス流路を十分に確保することにより、キャリアガス加熱部でキャリアガスを十分に加熱できるとともに、キャリアガス加熱部のキャリアガス流路に尿素水が流れずにキャリアガスのみが流れることにより、尿素水のキャリアガス流路内壁への付着を阻止でき、キャリアガスがキャリアガス流路内をスムーズに流れる、尿素水改質器を提供することにある。本発明の第4の目的は、微粒化された尿素水が触媒部を通過しても、この尿素水の液滴が分散板に衝突することにより、アンモニアガスの生成量を増大できるとともに、尿素水の排気管への流入を阻止できる、尿素水改質器を提供することにある。本発明の第5の目的は、触媒加熱手段が触媒部を直接加熱することにより、微粒化した尿素水の触媒部におけるアンモニアガスへの改質効率を向上できる、尿素水改質器を提供することにある。本発明の第6の目的は、排ガス温度が低いときであってもNOxを効率良く低減できる、尿素水改質器を用いた排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、図1及び図2に示すように、キャリアガス源14から供給されたキャリアガスを加熱するキャリアガス加熱部16と、キャリアガス加熱部16により加熱されたキャリアガスを噴射するキャリアガス噴射ノズル17と、キャリアガス噴射ノズル17から噴射されたキャリアガスにより尿素水18が微粒化されるように尿素水18をキャリアガス噴射ノズル17の先端に供給する第1尿素水供給ノズル21と、キャリアガス噴射ノズル17に対向して設けられ上記微粒化した尿素水18を分解してアンモニアガス22に改質する触媒部23と、触媒部23の出口から排出されたアンモニアガス22をエンジン11の排気管12に供給するように排気管12に取付けられるアンモニアガス供給ノズル24とを有する尿素水改質器である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、キャリアガス加熱部16、キャリアガス噴射ノズル17、第1尿素水供給ノズル21及び触媒部23が改質器ハウジング26に収容され、改質器ハウジング26がアンモニアガス供給ノズル24の基端に接続されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、キャリアガス加熱部16が、円柱状に形成されたコイル保持部16aと、このコイル保持部16aの外周面に沿いかつコイル保持部16aの外周面に露出しないように埋設された電熱コイル16bと、コイル保持部16aの外周面に螺旋状に巻回することによりキャリアガスがコイル保持部16aの外周面に沿って螺旋状に流れるキャリアガス流路16dを形成するキャリアガス流路用コイル16cとからなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、触媒部23の出口側に触媒部23の出口面に対向して設けられ複数の通孔31a,32aが形成されかつ触媒部23から排出された尿素水18を受ける分散板31,32を更に有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に図1に示すように、触媒部23に挿入され触媒部23を直接加熱可能な触媒加熱手段41,42を更に有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の観点は、図1及び図2に示すように、エンジン11の排気管12に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元型触媒51と、選択還元型触媒51より排ガス上流側の排気管12に臨むアンモニアガス供給ノズル24を有しこのアンモニアガス供給ノズル24から選択還元型触媒51で還元剤として機能するアンモニアガス22を排気管12に供給する第1ないし第5の観点に記載の尿素水改質器13と、選択還元型触媒51より排ガス上流側であって第1尿素水供給ノズル21より排ガス上流側又は排ガス下流側の排気管12に臨む第2尿素水供給ノズル52を有しこの第2尿素水供給ノズル52から選択還元型触媒51で尿素水18を排気管12に供給する尿素水供給手段53と、選択還元型触媒51に関係する排ガス温度を検出する温度センサ54と、温度センサ54の検出出力に基づいて尿素水改質器13及び尿素水供給手段53を制御するコントローラ56とを備えた尿素水改質器を用いた排ガス浄化装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点の尿素水改質器では、キャリアガス源から供給されたキャリアガスをキャリアガス加熱手段が加熱し、この加熱されたキャリアガスをキャリアガス噴射ノズルから噴射し、第1尿素水供給ノズルから供給された尿素水を上記キャリアガス噴射ノズルから噴射されたキャリアガスにより微粒化し、更に微粒化した尿素水が触媒部で分解されてアンモニアガスに改質されるので、尿素水を触媒部でアンモニアガスに効率良く改質できる。また尿素水が比較的低い温度で尿素水噴出部から噴射されるため、尿素水が十分に微粒化しない従来の排ガス脱硝装置と比較して、本発明では、尿素水を十分に微粒化することができる。
【0016】
本発明の第2の観点の尿素水改質器では、キャリアガス加熱部、キャリアガス噴射ノズル、第1尿素水供給ノズル及び触媒部を改質器ハウジングに収容し、この改質器ハウジングをアンモニアガス供給ノズルの基端に接続するので、改質器ハウジングをアンモニアガス供給ノズルとともに排気管に比較的容易に取付けることができる。
【0017】
本発明の第3の観点の尿素水改質器では、熱伝導率の高いコイル保持部を円柱状に形成し、このコイル保持部の外周面に沿いかつコイル保持部の外周面に露出しないように電熱コイルを埋設し、熱伝導率の高いキャリアガス流路用コイルをコイル保持部の外周面に螺旋状に巻回することによりキャリアガスがコイル保持部の外周面に沿って螺旋状に流れるキャリアガス流路を形成したので、キャリアガス加熱部におけるキャリアガス流路を十分に確保できる。この結果、キャリアガス加熱部でキャリアガスを十分に加熱できる。また尿素水がダクトに流れるため、尿素水がダクトの内壁に付着してしまい、尿素水がダクト内をスムーズに流れない従来の還元剤含有気体流生成装置と比較して、本発明では、キャリアガス流路に尿素水が流れずにキャリアガスのみが流れるので、尿素水がキャリアガス流路の内壁に付着するのを阻止できる。この結果、キャリアガスがキャリアガス流路内をスムーズに流れる。
【0018】
本発明の第4の観点の尿素水改質器では、複数の通孔が形成されかつ触媒部から排出された尿素水を受ける熱伝導率の高い分散板を触媒部の出口側に触媒部の出口面に対向して設けたので、微粒化した尿素水が触媒部でアンモニアガスに改質されずに触媒部を通過すると、分散板に衝突する。この分散板に衝突した尿素水の液滴は分散板から熱を奪ってアンモニアガスに分解されるので、アンモニアガスの生成量を増大できるとともに、尿素水の排気管への流入を阻止できる。
【0019】
本発明の第5の観点の尿素水改質器では、触媒加熱手段が触媒部を直接加熱するので、触媒部の温度が微粒化した尿素水をアンモニアガスに改質できる温度に維持される。この結果、微粒化した尿素水の触媒部におけるアンモニアガスへの改質効率を向上できる。
【0020】
本発明の第6の観点の排ガス浄化装置では、排ガス温度が比較的低いことを温度センサが検出すると、コントローラは尿素水供給手段を停止した状態に保ち、尿素水改質器を駆動する。これにより尿素水改質器が尿素水を分解してアンモニアガスに改質した後に、このアンモニアガスをアンモニアガス供給ノズルから排気管に供給する。そして、アンモニアガスが排ガスとともに選択還元型触媒に流入すると、アンモニアガスが排ガス中のNOxを還元するための還元剤として機能し、排ガス中のNOxが速やかにN2に還元される。この結果、排ガス温度が低いときであってもNOxを効率良く低減できる。一方、排ガス温度が比較的高いことを温度センサが検出すると、コントローラは尿素水改質器を停止し、尿素水供給手段を駆動する。これにより尿素水供給手段の第2尿素水供給ノズルから尿素水が排気管に噴射される。このとき排ガス温度が比較的高いので、尿素水が排気管内で速やかにアンモニアガスに分解される。そして、アンモニアガスが排ガスとともに選択還元型触媒に流入すると、アンモニアガスが排ガス中のNOxを還元するための還元剤として機能し、排ガス中のNOxが速やかにN2に還元される。この結果、排ガス温度が高くなってもNOxを効率良く低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明第1実施形態の尿素水改質器を示す縦断面構成図である。
【図2】その尿素水改質器を用いた排ガス浄化装置の構成図である。
【図3】本発明第2実施形態の尿素水改質器を示す縦断面構成図である。
【図4】本発明第3実施形態の尿素水改質器を示す縦断面構成図である。
【図5】本発明第4実施形態の第1尿素水供給ノズルの尿素水供給孔が水平方向に貫通して形成された状態を示す要部断面構成図である。
【図6】本発明第5実施形態の第1尿素水供給ノズルの尿素水供給孔が斜め下向きに形成された状態を示す要部断面構成図である。
【図7】実施例1及び比較例1の排ガス浄化装置を用いたときの排ガス温度の変化に伴うNOx低減率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
図1及び図2に示すように、ディーゼルエンジン11の排気管12には尿素水改質器13が設けられる。この尿素水改質器13は、キャリアガス源14から供給されたキャリアガスを加熱するキャリアガス加熱部16と、キャリアガス加熱部16により加熱されたキャリアガスを噴射するキャリアガス噴射ノズル17と、キャリアガス噴射ノズル17から噴射されたキャリアガスにより尿素水18が微粒化されるように尿素水18をキャリアガス噴射ノズル17の先端に供給する第1尿素水供給ノズル21と、この微粒化した尿素水18を分解してアンモニアガス22に改質する触媒部23と、触媒部23の出口から排出されたアンモニアガス22をエンジン11の排気管12に供給するアンモニアガス供給ノズル24とを有する。上記キャリアガス加熱部16、キャリアガス噴射ノズル17、第1尿素水供給ノズル21及び触媒部23は、鉛直方向に延びる円筒状の改質器ハウジング26に収容され、この改質器ハウジング26の下端はアンモニアガス供給ノズル24の上端に接続される。これにより改質器ハウジング26をアンモニアガス供給ノズル26とともに排気管12に比較的容易に取付けることが可能となる。またキャリアガス源14は、この実施の形態では、コンプレッサ(図示せず)により圧縮されたキャリアガス(エア)を貯留するキャリアガスタンク(エアタンク)である(図2)。なお、キャリアガス源は、キャリアガスタンク(エアタンク)を用いずに、大気中のエア、エンジンの排ガス又はこれらの混合ガスをキャリアガス加熱部に供給するコンプレッサにより構成してもよい。
【0023】
一方、キャリアガス加熱部16は、上端に段付フランジ16eが一体的に設けられ鉛直方向に延びる円柱状に形成されたコイル保持部16aと、このコイル保持部16aの外周面に沿いかつコイル保持部16aの外周面に露出しないように埋設された電熱コイル16bと、コイル保持部16aの外周面に螺旋状に巻回されたキャリアガス流路用コイル16cとからなる(図1)。コイル保持部16aは、SUS316、インコネル(スペシャルメタルズ社製の登録商標)等の熱伝導率が15〜17W/(m・K)と比較的高い金属により形成される。また電熱コイル16bは、図示しないが、金属シース(金属製極細管)の中にニクロム線等の発熱体を遊挿し、金属シースと発熱体との隙間に、高純度の無機絶縁物の粉末を充填して構成される。ここで、電熱コイル16bをコイル保持部16aに埋設する方法としては、図示しないが、コイル保持部16aより僅かに小径の円柱状の第1保持部を用意し、この第1保持部の外周面に電熱コイル16bを収容可能な螺旋状の凹溝を形成し、この螺旋状の凹溝に電熱コイル16bを収容した後に、コイル保持部16aと同一外径を有する円筒状の第2保持部を第1保持部に嵌着する方法などが用いられる。またキャリアガス流路用コイル16cは、SUS316、SUS304、インコネル等の熱伝導率が15〜17W/(m・K)と比較的高い金属線材をコイル保持部16aの外周面に螺旋状に巻回することにより形成される。上記キャリアガス流路用コイル16cは、互いに隣接する金属線材間に所定の間隔D(図1)をあけて螺旋状に巻回され、これによりキャリアガスがコイル保持部16aの外周面に沿って螺旋状に流れるキャリアガス流路16dが形成される。即ち、所定の間隔Dをあけることにより形成された空間がキャリアガスの流れるキャリアガス流路16dとなるように構成される。
【0024】
上記キャリアガス加熱部16は、上部が円筒状に形成され下部が下方に向うに従って先細りの漏斗状に形成された加熱部ケース27の上部に収容され、この加熱部ケース27は改質器ハウジング26の上部に挿入される。また、キャリアガス加熱部16を加熱部ケース27に収容したときに、キャリアガス流路用コイル16cの外周面と加熱部ケース27の内周面との間に0.4〜0.5mmの範囲内の隙間t(図1)が形成される。ここで、上記隙間tを0.4〜0.5mmの範囲内に限定したのは、0.4mm未満では電熱コイル16bで発生しコイル保持部16aを通ってキャリアガス流路用コイル16cに伝わった熱が加熱部ケース27に伝わって放散してしまい、0.5mmを越えるとキャリアガスの大部分が螺旋状のキャリアガス流路16d内を流れずに隙間tを通って流れてしまいキャリアガスをキャリアガス加熱部16で十分に加熱できないからである。またキャリアガス噴射ノズル17は加熱部ケース27の下端に形成され、このキャリアガス噴射ノズル17の先端(下端)からキャリアガス加熱部16で加熱されたキャリアガスが下方に向って噴射されるように構成される。なお、図1及び図2の符号28は改質器ハウジング26及び加熱部ケース27の上部に接続されたキャリアガス供給管である。このキャリアガス供給管28の基端はキャリアガスタンク14に接続され(図2)、先端はキャリアガス流路16dに接続される(図1)。
【0025】
一方、第1尿素水供給ノズル21は、改質器ハウジング26の鉛直方向の略中央の外周面から水平に延びて挿入される。具体的には、第1尿素水供給ノズル21は、その先端部が加熱部ケース27下端のキャリアガス噴射ノズル17の先端より僅かに下方に位置するように改質器ハウジング26に水平に挿入される。また第1尿素水供給ノズル21の先端は閉止され、第1尿素水供給ノズル21の先端部のうちキャリアガス噴射ノズル17の先端に対向する位置には鉛直方向に貫通する尿素水供給孔21aが形成される。このように第1尿素水供給ノズル21を構成することにより、キャリアガス噴射ノズル17から噴射されたキャリアガスにより第1尿素水供給ノズル21の尿素水供給孔21aに供給された尿素水18が吹き飛ばされて微粒化されるとともに、その温度が上昇するようになっている。
【0026】
触媒部23は、この実施の形態では、キャリアガス噴射ノズル17に対向しかつ第1尿素水供給ノズル21から比較的大きな間隔をあけて下方に設けられた第1触媒部23aと、第1触媒部23aより比較的小さな間隔をあけて下方に設けられた第2触媒部23bとからなる。第1及び第2触媒部23a,23bは同一に構成される。具体的には、第1及び第2触媒部23a,23bはモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に、チタニア、ジルコニア又はゼオライトをコーティングして構成される。チタニアからなる第1及び第2触媒部23a,23bは、チタニアを含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。またジルコニアからなる第1及び第2触媒部23a,23bは、ジルコニアを含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。更にゼオライトからなる第1及び第2触媒部23a,23bは、ゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。なお、上記コージェライト製のハニカム担体は、ステンレス鋼により形成されたメタル担体であってもよい。
【0027】
第1尿素水供給ノズル21と第1触媒部23aとの間の比較的広い空間で、上記微粒化した尿素水18が下方に向うに従って次第に広がり第1触媒部23aの入口面(上面)全体に略均一に分散するように構成される。また上記第1触媒部23aの出口側(下側)であって第2触媒部23bの入口側(上側)には、第1触媒部23aの出口面(下面)に対向して第1分散板31が設けられ、第2触媒部23bの出口側(下側)であってアンモニアガス供給ノズル24の入口側(上側)には、第2触媒部23bの出口面(下面)に対向して第2分散板32が設けられる。第1及び第2分散板31,32には、複数の通孔31a,32aがそれぞれ形成されかつ第1及び第2触媒部23a,23bから排出された尿素水18をそれぞれ受けるように構成される。また第1及び第2分散板31,32は熱伝導率が15〜17W/(m・K)と比較的高いSUS316、SUS304、インコネル等により形成される。
【0028】
一方、第1触媒部23aにはこの第1触媒部23aを直接加熱可能な第1グロープラグ41が挿入され、第2触媒部23bにはこの第2触媒部23bを直接加熱可能な第2グロープラグ42が挿入される。第1グロープラグ41は第1触媒部23aの鉛直方向の中央から水平方向に延びて挿入され、第2グロープラグ42は第2触媒部23bの鉛直方向の中央から水平方向に延びて挿入される。上記第1及び第2グロープラグ41,42は、ディーゼルエンジンのシリンダヘッドに取付けられエンジンの燃焼室内を予熱するグロープラグと略同一に構成され、金属チューブに電熱線が組込まれた構造となっている。またアンモニアガス供給ノズル24はエンジン11の排気管12に取付けられる。アンモニアガス供給ノズル24は、円筒状に形成されたノズル本体24aと、このノズル本体24aの上端にノズル本体24aと一体的に形成されたフランジ部24bとからなる。ノズル本体24aの下面は排ガス上流側から排ガス下流側に向ってノズル本体24aの長さが次第に短くなる傾斜面に形成される。フランジ部24bは、排気管12に設けられたフランジ部12aに取付けられる。
【0029】
上記尿素水改質器13は、図2に示すように、ディーゼルエンジン11の排ガス浄化装置に組込まれる。この排ガス浄化装置は、エンジン11の排気管12に設けられた選択還元型触媒51と、選択還元型触媒51より排ガス上流側の排気管12に臨むアンモニアガス供給ノズル24を有する上記尿素水改質器13と、選択還元型触媒51より排ガス上流側であって第1尿素水供給ノズル21より排ガス下流側の排気管12に臨む第2尿素水供給ノズル52を有する尿素水供給手段53と、選択還元型触媒51に関係する排ガス温度を検出する温度センサ54と、温度センサ54の検出出力に基づいて尿素水改質器13及び尿素水供給手段53を制御するコントローラ56とを備える。
【0030】
上記選択還元型触媒51は、排気管12より大径のケース57に収容され、排ガス中のNOxをN2に還元可能に構成される。選択還元型触媒51はモノリス触媒であって、コージェライト製のハニカム担体に、ゼオライト又はジルコニアをコーティングして構成される。ゼオライトとしては、銅ゼオライト、鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト、銀ゼオライト等が挙げられる。銅ゼオライトからなる選択還元型触媒51は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。また鉄ゼオライト、亜鉛ゼオライト又は銀ゼオライトからなる選択還元型触媒51は、鉄、亜鉛又は銀をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にそれぞれコーティングして構成される。更にジルコニアからなる選択還元型触媒51は、ジルコニアを担持させたγ−アルミナ粉末又はθ−アルミナ粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして構成される。
【0031】
一方、尿素水改質器13は、第1尿素水供給ノズル21に先端が接続された第1尿素水供給管61と、この第1尿素水供給管61の基端に接続され尿素水18が貯留された第1尿素水タンク62と、この第1尿素水タンク62内の尿素水18を第1尿素水供給ノズル21に圧送する第1ポンプ63と、第1尿素水供給ノズル21からキャリアガス噴射ノズル17の先端に供給される尿素水18の供給量を調整する第1尿素水供給量調整弁64と、キャリアガスタンク14とキャリアガス加熱部16のキャリアガス流路16dとを接続するキャリアガス供給管28に設けられたキャリアガス流量調整弁66とを更に有する(図2)。上記第1ポンプ63は第1尿素水供給ノズル21と第1尿素水タンク62との間の第1尿素水供給管61に設けられ、第1尿素水供給量調整弁64は第1尿素水供給ノズル21と第1ポンプ63との間の第1尿素水供給管61に設けられる。更に第1尿素水供給量調整弁64は、第1尿素水供給管61に設けられ第1尿素水供給ノズル21への尿素水18の供給圧力を調整する第1尿素水圧力調整弁64aと、第1尿素水供給ノズル21の基端に設けられ第1尿素水供給ノズル21の基端を開閉する第1尿素水用開閉弁64bとからなる。
【0032】
第1尿素水圧力調整弁64aは第1〜第3ポート64c〜64eを有する三方弁であり、第1ポート64cは第1ポンプ63の吐出口に接続され、第2ポート64dは第1尿素水用開閉弁64bに接続され、第3ポート64eは第1戻り管65により第1尿素水タンク62に接続される。第1尿素水圧力調整弁64aを駆動すると、第1ポンプ63により圧送された尿素水18が第1ポート64cから第1尿素水圧力調整弁64aに流入し、この第1尿素水圧力調整弁64aで所定の圧力に調整された後、第2ポート64dから第1尿素水用開閉弁64bに圧送される。また第1尿素水圧力調整弁64aの駆動を停止すると、第1ポンプ63により圧送された尿素水18が第1ポート64cから第1尿素水圧力調整弁64aに流入した後、第3ポート64eから第1戻り管65を通って第1尿素水タンク62に戻される。更にキャリアガス流量調整弁66はキャリアガスタンク14からキャリアガス加熱部16のキャリアガス流路16dに供給されるキャリアガスの流量を調整可能に構成される。
【0033】
尿素水供給手段53は、選択還元型触媒51より排ガス上流側の排気管12に臨む上記第2尿素水供給ノズル52と、第2尿素水供給ノズル52に先端が接続された第2尿素水供給管71と、この第2尿素水供給管71の基端に接続され尿素水18が貯留された第2尿素水タンク72と、この第2尿素水タンク72内の尿素水18を第2尿素水供給ノズル52に圧送する第2ポンプ73と、第2尿素水供給ノズル52から排気管12に供給される尿素水18の供給量を調整する第2尿素水供給量調整弁74とを有する(図2)。上記尿素水18は比較的高温の排ガスによりアンモニアガスに分解され、このアンモニアガスは選択還元型触媒51で還元剤として機能する。また上記第2ポンプ73は第2尿素水供給ノズル52と第2尿素水タンク72との間の第2尿素水供給管71に設けられ、第2尿素水供給量調整弁74は第2尿素水供給ノズル52と第2ポンプ73との間の第2尿素水供給管71に設けられる。更に第2尿素水供給量調整弁74は、第2尿素水供給管71に設けられ第2尿素水供給ノズル52への尿素水18の供給圧力を調整する第2尿素水圧力調整弁74aと、第2尿素水供給ノズル52の基端に設けられ第2尿素水供給ノズル52の基端を開閉する第2尿素水用開閉弁74bとからなる。
【0034】
第2尿素水圧力調整弁74aは第1〜第3ポート74c〜74eを有する三方弁であり、第1ポート74cは第2ポンプ73の吐出口に接続され、第2ポート74dは第2尿素水用開閉弁74bに接続され、第3ポート74eは第2戻り管75により第2尿素水タンク72に接続される。第2尿素水圧力調整弁74aを駆動すると、第2ポンプ73により圧送された尿素水18が第1ポート74cから第2尿素水圧力調整弁74aに流入し、この第2尿素水圧力調整弁74aで所定の圧力に調整された後、第2ポート74dから第2尿素水用開閉弁74bに圧送される。また第2尿素水圧力調整弁74aの駆動を停止すると、第2ポンプ73により圧送された尿素水18が第1ポート74cから第2尿素水圧力調整弁74aに流入した後、第3ポート74eから第2戻り管75を通って第2尿素水タンク72に戻される。
【0035】
一方、ディーゼルエンジン11の吸気ポートには吸気マニホルド81を介して吸気管82が接続され、排気ポートには排気マニホルド83を介して排気管12が接続される(図2)。吸気管82には、ターボ過給機84のコンプレッサハウジング84aと、ターボ過給機84により圧縮された吸気を冷却するインタクーラ86とがそれぞれ設けられ、排気管12にはターボ過給機84のタービンハウジング84bが設けられる。コンプレッサハウジング84aにはコンプレッサ回転翼(図示せず)が回転可能に収容され、タービンハウジング84bにはタービン回転翼(図示せず)が回転可能に収容される。コンプレッサ回転翼とタービン回転翼とはシャフト(図示せず)により連結され、エンジン11から排出される排ガスのエネルギによりタービン回転翼及びシャフトを介してコンプレッサ回転翼が回転し、このコンプレッサ回転翼の回転により吸気管82内の吸入空気が圧縮されるように構成される。
【0036】
温度センサ54は、この実施の形態では、選択還元型触媒51の排ガス入口側のケース57に挿入され選択還元型触媒51に流入する直前の排ガスの温度を検出する第1温度センサ54aと、選択還元型触媒51の排ガス出口側のケース57に挿入され選択還元型触媒51から流出した直後の排ガスの温度を検出する第2温度センサ54bとからなる。またエンジン11の回転速度は回転センサ87により検出され、エンジン11の負荷は負荷センサ88により検出される。第1温度センサ54a、第2温度センサ54b、回転センサ87及び負荷センサ88の各検出出力はコントローラ56の制御入力に接続され、コントローラ56の制御出力は電熱コイル16b、第1グロープラグ41、第2グロープラグ42、第1ポンプ63、第1尿素水圧力調整弁64a、第1尿素水用開閉弁64b、キャリアガス流量調整弁66、第2ポンプ73、第2尿素水圧力調整弁74a、第2尿素水用開閉弁74bにそれぞれ接続される。コントローラ56にはメモリ89が設けられる。このメモリ89には、エンジン回転速度、エンジン負荷、選択還元型触媒51出入口の排ガス温度に応じた、第1尿素水圧力調整弁64a及び第2尿素水圧力調整弁74aの圧力、第1尿素水用開閉弁64b及び第2尿素水用開閉弁74bの単位時間当たりの開閉回数、第1ポンプ63及び第2ポンプ73の作動の有無、キャリアガス流量調整弁66の開度が予め記憶される。またメモリ89には、エンジン回転速度及びエンジン負荷の変化に基づく、エンジン11から排出される排ガス中のNOxの流量の変化がそれぞれマップとして記憶される。なお、この実施の形態では、第1温度センサを選択還元型触媒の排ガス入口側のケースに挿入し、第2温度センサを選択還元型触媒より排ガス出口側のケースに挿入したが、選択還元型触媒に関係する温度を検出できれば、第1又は第2温度センサのいずれか一方を用いてもよい。
【0037】
このように構成された尿素水改質器13を有する排ガス浄化装置の動作を説明する。エンジン11の始動直後やエンジン11の軽負荷運転時には、排ガス温度が100〜200℃と低い。この温度範囲の排ガス温度を第1及び第2温度センサ54a,54bがそれぞれ検出し、回転センサ87及び負荷センサ88がエンジン11の無負荷運転又は軽負荷運転を検出すると、コントローラ56は第1温度センサ54a、第2温度センサ54b、回転センサ87及び負荷センサ88の各検出出力に基づいて、第2ポンプ73、第2尿素水圧力調整弁74a及び第2尿素水用開閉弁74bを停止した状態で、第1ポンプ63、第1尿素水圧力調整弁64a、第1尿素水用開閉弁64b及びキャリアガス流量調整弁66を駆動する。
【0038】
キャリアガス流量調整弁66が駆動されかつ電熱コイル16bに通電されると、キャリアガスタンク14内のキャリアガスがキャリアガス加熱部16のキャリアガス流路16dに供給される。このキャリアガスは、キャリアガス流路16dを流れている間に、電熱コイル16bで発生しコイル保持部16aやキャリアガス流路用コイル16cに伝わった熱を奪いながらキャリアガス噴射ノズル17に達する。上記キャリアガス流路16dは十分に長いため、キャリアガス加熱部16でキャリアガスを十分に加熱できる。またキャリアガス流路16dに尿素水18が流れずにキャリアガスのみが流れるので、尿素水18がキャリアガス流路16dの内壁に付着することがなく、キャリアガスがキャリアガス流路16d内をスムーズに流れる。
【0039】
一方、第1ポンプ63、第1尿素水圧力調整弁64a、第1尿素水用開閉弁64bがそれぞれ駆動されるとともに、電熱コイル16b、第1グロープラグ41及び第2グロープラグ42に通電されると、第1尿素水タンク62内の尿素水18が第1尿素水供給管61を通って第1尿素水供給ノズル21に供給される。この第1尿素水供給ノズル21に供給された尿素水18は、上記キャリアガス噴射ノズル17が高温のキャリアガスを尿素水供給孔21aに向って噴射することにより吹き飛ばされて微粒化されるとともに、その温度が上昇する。そして第1尿素水供給ノズル21と第1触媒部23aとの間の比較的広い空間で、上記微粒化した尿素水18が下方に向うに従って次第に広がり第1触媒部23aの入口面(上面)全体に略均一に分散するので、この略均一に分散し微粒化した尿素水18の大部分は第1触媒部23aで次の式(1)に示すように分解してアンモニアガス22に改質される。
【0040】
(NH2)2CO+H2O → 2NH3+CO2 ……(1)
上記式(1)は、尿素水18がアンモニアガス22に分解する化学反応式を示す。ここで、第1触媒部23aに流入する直前の微粒化した尿素水18の温度は90〜150℃である。また、第1触媒部23aが第1グロープラグ41により直接加熱され、第1触媒部23aの温度が微粒化した尿素水18をアンモニアガス22に改質できる温度(例えば、200〜300℃)に維持されるので、微粒化した尿素水18の第1触媒部23aにおけるアンモニアガス22への改質効率を向上できる。更に微粒化した尿素水18が第1触媒部23aでアンモニアガス22に改質されずに第1触媒部23aを通過すると、第1分散板31に衝突する。この第1分散板31に衝突した尿素水18は第1分散板31から熱を奪ってアンモニアガス22に分解されるので、アンモニアガス22の生成量を増大できる。
【0041】
なお、微粒化した尿素水18がアンモニアガス22に改質されずにそのまま第1触媒部23a及び第1分散板31を通過すると、この微粒化した尿素水18は第2触媒部23bで分解してアンモニアガス22に改質される。ここで、第2触媒部23bが第2グロープラグ41により直接加熱され、第2触媒部23bの温度が微粒化した尿素水18をアンモニアガス22に改質できる温度に維持されるので、微粒化した尿素水18の第2触媒部23bにおけるアンモニアガス22への改質効率を向上できる。また微粒化した尿素水18が第2触媒部23bでアンモニアガス22に改質されずに第2触媒部23bを通過すると、第2分散板32に衝突する。この第2分散板32に衝突した尿素水18は第2分散板32から熱を奪ってアンモニアガス22に分解されるので、アンモニアガス22の生成量を増大できるとともに、排気管12への尿素水18の液滴の流入を阻止できる。
【0042】
このように尿素水改質器13により尿素水18が分解されてアンモニアガス22に改質された後に、このアンモニアガス22はアンモニアガス供給ノズル24から排気管12に供給される。そして、このアンモニアガス22が排ガスとともに選択還元型触媒51に流入すると、アンモニアガス22が排ガス中のNOx(NO、NO2)を還元するための還元剤として機能し、次の式(2)で示すように、排ガス中のNOxが速やかにN2に還元される。
【0043】
NO+NO2+2NH3 → 2N2+3H2O ……(2)
上記式(2)は、排ガス中のNO及びNO2が選択還元型触媒51でアンモニアガス22と反応して、NO及びNO2がN2に還元される化学反応式を示す。この結果、排ガス温度が低いときであってもNOxを効率良く低減できる。
【0044】
排ガス温度が200℃を越えると、コントローラ56は、第1及び第2温度センサ54a,54bの各検出出力に基づいて、第1ポンプ63、第1尿素水圧力調整弁64a、第1尿素水用開閉弁64b及びキャリアガス流量調整弁66の駆動を停止するとともに、電熱コイル16b、第1グロープラグ41及び第2グロープラグ42への通電を停止する。そして、コントローラ56は第2ポンプ73、第2尿素水圧力調整弁74a及び第2尿素水用開閉弁74bを駆動する。これにより尿素水供給手段53の第2尿素水タンク72に貯留された尿素水18が第2尿素水供給管71を通って第2尿素水供給ノズル52から排気管12に噴射される。このとき排ガスが200℃を越える比較的高い温度であるので、尿素水18が排気管12内で速やかにアンモニアガスに分解される。そして、アンモニアガスが排ガスとともに選択還元型触媒51に流入すると、アンモニアガスが排ガス中のNOxを還元するための還元剤として機能し、排ガス中のNOxが速やかにN2に還元される。この結果、排ガス温度が高くなってもNOxを効率良く低減できる。
【0045】
<第2の実施の形態>
図3は本発明の第2の実施の形態を示す。図3において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、尿素水改質器101の加熱部ケース102が下面の閉止された円筒状に形成され、この加熱部ケース102の下面中央にキャリアガス噴射ノズル103が形成される。そして加熱部ケース102の下面に、キャリアガス噴射ノズル103から噴射された高温のキャリアガスの流れが末広がりの円錐状になるように案内するガイド部材104が設けられる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0046】
このように構成された尿素水改質器101を有する排ガス浄化装置では、キャリアガス噴射ノズル103から噴射された高温のキャリアガスの流れが、図3の破線矢印で示すように、下方に向うに従って次第に広がる末広がりの円錐状になるので、第1尿素水供給ノズル21に達した尿素水18は第1の実施の形態より更に第1触媒部23aの入口面(上面)全体に略均一に分散しかつ微粒化するので、この略均一に分散し微粒化した尿素水18の第1触媒部23aにおけるアンモニアガスへの分解効率が第1の実施の形態より更に向上する。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0047】
<第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態を示す。図4において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、排気管12に取付けられたアンモニアガス供給ノズル122が、排気管12に挿入された大径筒状の大径筒部122aと、この大径筒部122aの下端に大径筒部122aと一体的に形成され下方に向うに従って小径になる絞り部122bと、この絞り部122bの下端に絞り部122bと一体的に形成された小径の筒状の小径筒部122cと、大径筒部122aの上端に大径筒部122aと一体的に形成されたフランジ部122dとからなる。小径筒部122cの下面は排ガス上流側から排ガス下流側に向って小径筒部122cの長さが次第に短くなる傾斜面に形成される。フランジ部122dは、排気管12に設けられたフランジ部12aに取付けられる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0048】
このように構成された尿素水改質器121を有する排ガス浄化装置では、アンモニアガス供給ノズル122の大径筒部122aから絞り部122bを通って小径筒部122cから排気管12に供給されるアンモニアガスの流速が速くなるので、アンモニアガスが排ガスと速やかに混合される。上記以外の動作は第1の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0049】
なお、上記実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置をガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記実施の形態では、本発明の排ガス浄化装置をターボ過給機付ディーゼルエンジンに適用したが、本発明の排ガス浄化装置を自然吸気型ディーゼルエンジン又は自然吸気型ガソリンエンジンに適用してもよい。また、上記第1〜第3の実施の形態では、尿素水改質器に触媒部を2つ設けたが、触媒部は1つ又は3つ或いは4つ以上であってもよい。更に、上記第1〜第3の実施の形態では、第1尿素水供給ノズル21の先端部のうちキャリアガス噴射ノズル17の先端に対向する位置に鉛直方向に貫通する尿素水供給孔21aを形成したが、図5又は図6に示すように、第1尿素水供給ノズル141,161の先端部のうちキャリアガス噴射ノズル17の先端に対向する位置に鉛直方向と任意の角度をなす方向に1個若しくは2個以上の尿素水供給孔141a,161aを形成してもよい。例えば、図5に示すように、第1尿素水供給ノズル141の先端部のうちキャリアガス噴射ノズル17の先端に対向する位置に水平方向に貫通する尿素水供給孔141aを形成したり、或いは図6に示すように、第1尿素水供給ノズル161の先端部のうちキャリアガス噴射ノズル17の先端に対向する位置に斜め下向き45度の略ハの字状の尿素水供給孔161aを形成してもよい。
【実施例】
【0050】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図2に示すように、排気量が8000ccである直列6気筒のターボ過給機付ディーゼルエンジン11の排気管12に選択還元型触媒51を設けた。この選択還元型触媒51は、銅をイオン交換したゼオライト粉末を含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作製した銅系の触媒であった。また選択還元型触媒51より排ガス上流側の排気管12に、尿素水18を分解してアンモニアガス22に改質する尿素水改質器13を接続して、尿素水改質器13のアンモニアガス供給ノズル24を排気管12に挿入した。この尿素水改質器13は、図1及び図2に示すように、キャリアガスタンク(エアタンク)14から供給されたキャリアガス(エア)を加熱するキャリアガス加熱部16と、キャリアガス加熱部16により加熱されたキャリアガスを噴射するキャリアガス噴射ノズル17と、キャリアガス噴射ノズル17から噴射されたキャリアガスにより尿素水18が微粒化されるように尿素水18をキャリアガス噴射ノズル17の先端に供給する第1尿素水供給ノズル21と、この微粒化した尿素水18を分解してアンモニアガス22に改質する触媒部23と、触媒部23の出口から排出されたアンモニアガス22をエンジン11の排気管12に供給する上記アンモニアガス供給ノズル24とを有する。触媒部23は、第1及び第2触媒部23a,23bからなり、チタニアを含むスラリーをハニカム担体にコーティングして作成された触媒であった。またアンモニアガス供給ノズル24より排ガス上流側の排気管12に、尿素水18を供給する尿素水供給手段53の第2尿素水供給ノズル52を設けた。ここで、この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0051】
<比較例1>
尿素水改質器を設けなかったこと以外は実施例1と同一に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0052】
<比較試験1及び評価>
エンジンの回転速度及び負荷を変化させて、実施例1及び比較例1のエンジンの排気管から排出される排ガスの温度を100℃から550℃まで徐々に上昇させたときのNOx低減率をそれぞれ測定した。その結果を図7に示す。なお、実施例1の排ガス浄化装置では、排ガス温度が100〜200℃であるとき、尿素水改質器を駆動してアンモニアガス供給ノズルからアンモニアガスを排気管に供給し、排ガス温度が200℃を越えたときに、尿素水供給手段を駆動して第2尿素水供給ノズルから尿素水を排気管に供給した。また、比較例1の排ガス浄化装置では、排ガス温度が100〜550℃であるとき、尿素水供給手段を駆動して第2尿素水供給ノズルから尿素水を排気管に供給した。
【0053】
図1から明らかなように、比較例1の排ガス浄化装置では排ガス温度が100〜150℃であるとき排ガス中のNOxを殆ど浄化できなかったのに対し、実施例1の排ガス浄化装置では排ガス温度が100〜150℃であるとき温度の上昇に伴って排ガス中のNOxの浄化率が急激に上昇することが分かった。また比較例1の排ガス浄化装置では排ガス温度が150℃を越えたときに排ガス中のNOxの浄化率が上昇してきたのに対し、実施例1の排ガス浄化装置では排ガス温度が150℃を越えると排ガス中のNOxの浄化率は80%以上になったことが分かった。
【符号の説明】
【0054】
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
12 排気管
13,101,121 尿素水改質器
14 キャリアガスタンク(キャリアガス源)
16 キャリアガス加熱部
16a コイル保持部
16b 電熱コイル
16c キャリアガス流路用コイル
16d キャリアガス流路
17,103 キャリアガス噴射ノズル
18 尿素水
21,141,161 第1尿素水供給ノズル
22 アンモニアガス
23 触媒部
24,122 アンモニアガス供給ノズル
26 改質器ハウジング
31,32 分散板
41,42 グロープラグ(触媒加熱手段)
51 選択還元型触媒
52 第2尿素水供給ノズル
53 尿素水供給手段
54 温度センサ
56 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガス源(14)から供給されたキャリアガスを加熱するキャリアガス加熱部(16)と、
前記キャリアガス加熱部(16)により加熱されたキャリアガスを噴射するキャリアガス噴射ノズル(17,103)と、
前記キャリアガス噴射ノズル(17,103)から噴射されたキャリアガスにより尿素水(18)が微粒化されるように前記尿素水(18)を前記キャリアガス噴射ノズル(17,103)の先端に供給する第1尿素水供給ノズル(21,141,161)と、
前記キャリアガス噴射ノズル(17,103)に対向して設けられ前記微粒化した尿素水(18)を分解してアンモニアガス(22)に改質する触媒部(23)と、
前記触媒部(23)の出口から排出されたアンモニアガス(22)をエンジン(11)の排気管(12)に供給するように前記排気管(12)に取付けられるアンモニアガス供給ノズル(24,122)と
を有する尿素水改質器。
【請求項2】
前記キャリアガス加熱部(16)、前記キャリアガス噴射ノズル(17,103)、前記第1尿素水供給ノズル(21,141,161)及び前記触媒部(23)が改質器ハウジング(26)に収容され、前記改質器ハウジング(26)が前記アンモニアガス供給ノズル(24,122)の基端に接続された請求項1記載の尿素水改質器。
【請求項3】
前記キャリアガス加熱部(16)が、円柱状に形成されたコイル保持部(16a)と、このコイル保持部(16a)の外周面に沿いかつ前記コイル保持部(16a)の外周面に露出しないように埋設された電熱コイル(16b)と、前記コイル保持部(16a)の外周面に螺旋状に巻回することにより前記キャリアガスが前記コイル保持部(16a)の外周面に沿って螺旋状に流れるキャリアガス流路(16d)を形成するキャリアガス流路用コイル(16c)とからなる請求項1又は2記載の尿素水改質器。
【請求項4】
前記触媒部(23)の出口側に前記触媒部(23)の出口面に対向して設けられ複数の通孔(31a,32a)が形成されかつ前記触媒部(23)から排出された前記尿素水(18)を受ける分散板(31,32)を更に有する請求項1又は2記載の尿素水改質器。
【請求項5】
前記触媒部(23)に挿入され前記触媒部(23)を直接加熱可能な触媒加熱手段(41,42)を更に有する請求項1又は2記載の尿素水改質器。
【請求項6】
エンジン(11)の排気管(12)に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元型触媒(51)と、
前記選択還元型触媒(51)より排ガス上流側の排気管(12)に臨む前記アンモニアガス供給ノズル(24,122)を有しこのアンモニアガス供給ノズル(24,122)から前記選択還元型触媒(51)で還元剤として機能するアンモニアガス(22)を前記排気管(12)に供給する請求項1ないし5いずれか1項に記載の尿素水改質器(13,101)と、
前記選択還元型触媒(51)より排ガス上流側であって前記アンモニアガス供給ノズル(24,122)より排ガス上流側又は排ガス下流側の排気管(12)に臨む第2尿素水供給ノズル(52)を有しこの第2尿素水供給ノズル(52)から前記選択還元型触媒(51)で尿素水(18)を前記排気管(12)に供給する尿素水供給手段(53)と、
前記選択還元型触媒(51)に関係する前記排ガス温度を検出する温度センサ(54)と、
前記温度センサ(54)の検出出力に基づいて前記尿素水改質器(13,101)及び前記尿素水供給手段(53)を制御するコントローラ(56)と
を備えた尿素水改質器を用いた排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197695(P2012−197695A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61154(P2011−61154)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【出願人】(591272295)HKT株式会社 (3)
【Fターム(参考)】