説明

局所安定化プロスタグランジンE化合物剤形

プロスタグランジンE群化合物を含有する密閉活性物質区画および薬学的に適合できるそのための局所送達ビヒクルを含有する密閉不活性物質区画を含む容器入り多成分剤形。例えば性機能不全を治療するための、患者への局所投与用医薬組成物を提供するために、送達ビヒクルをプロスタグランジンE群化合物と混合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、男性患者並びに女性患者における性機能不全の治療に適した、室温で安定な非水プロスタグランジンE化合物剤形に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンは、血管拡張または血管収縮、平滑筋刺激または抑制を示すことができる。プロスタグランジンE(PGE)などのE群のプロスタグランジンは、生理食塩水溶液として陰茎海綿体注射(Mahmond et al., J. Urology 147:623−626(1992))または局所適用される場合性的勃起障害の治療に有用であることが報告されている。しかしながら、PGEなどのプロスタグランジンは比較的水溶性が低く、および比較的不安定でもある。その結果、注射用プロスタグランジン溶液は使用の直前に調製されており、これは比較的不便な手段である。
【0003】
α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリン複合体を用いることにより、水系においてPGEを安定化する試みが、報告されている。Wiese et al., J. Pharm. Sciences 80:153−156(1991); Szejtli, J., “Industrial Applications of Cyclodextrins,”Inclusion Compounds III, Academic Press, London, England(1984), pp.355−368。しかしながら、このように安定化された水性PGE製剤でさえ、その保存寿命は比較的短く、それにより実際の利用が限定されている。
【0004】
今回、局所送達ビヒクルとは別の区画に保存し、使用直前に送達ビヒクルと混合することができる、薬理学的に許容できる特定の非水性組成物を使用することにより、生物学的利用能を犠牲にすることなくE群のプロスタグランジンの安定性を実質的に高めることができることが見いだされた。
【発明の開示】
【0005】
(発明の概要)
プロスタグランジンE群化合物は、非水性液体またはシート、フィルムもしくは粉末の形態の固体であることができる充填剤と一緒に該化合物を含む非水性組成物として安定化される。場合により、皮膚透過促進剤を含有させることができる。
【0006】
本発明の容器入り多成分剤形の一実施形態は、プロスタグランジンE群化合物を含有する密閉活性物質区画、ならびにプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、および/またはプロスタグランジンEなどのプロスタグランジンE群化合物のための薬学的に適合できる局所送達ビヒクルを含有する密閉不活性物質区画を含む。送達ビヒクルは、患者への局所適用用医薬組成物を提供するために、プロスタグランジンE群化合物と混合可能である。好ましくは、プロスタグランジンE群化合物は、密閉活性物質区画内の担体シート(すなわちフィルム)に実質的に均一に分散されている。一実施形態において、担体シートは、水溶性である。もう一つの実施形態において、担体シートは、生理学的に適合する非水溶媒に可溶性である。局所送達ビヒクルは、好ましくはクリーム、ゲルまたは軟膏である。
【0007】
好ましくは、活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つは、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステル、ポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、溶媒、またはこれらの組み合わせなどの皮膚透過促進剤を含有する。適したカルボン酸エステル皮膚透過促進剤は、限定するものではないが、N,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステル、これらの薬学的に許容できる付加塩、およびこれらの混合物を含む。好ましいN,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステルは、2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシルまたはこれらの薬学的に許容できる付加塩である。
【0008】
いくつかの実施形態において、プロスタグランジンE群化合物は、活性物質区画内の液体充填剤に分散されている。好ましくは、液体充填剤は、CからCの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、またはこれらの混合物などの無水アルコールである。
【0009】
もう一つの実施形態において、活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つは、粘度増進剤(すなわち、増粘剤)もまた含む。
【0010】
好ましい一実施形態において、容器入りプロスタグランジンE剤形は、約0.025から10重量部のプロスタグランジンE群化合物を含有する密閉活性物質区画および約0.05から2.5重量部の増粘剤、約0.001から5重量部の消泡剤、約5から75重量部のアルコール、ならびに約5から75重量部の水を含有する密閉不活性物質区画を含む。場合により、活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つは、約0.5から50重量部の充填剤もまた含む。充填剤は、液体または固形物であり得る。さらに、活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つは、2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシルまたはこの塩などの約0.025から10重量部のN,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステル皮膚透過促進剤を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の剤形の好ましい一実施形態において、活性物質区画は、水溶性充填剤に実質的に均一に分散されているプロスタグランジンE群化合物を含む水溶性フィルムを含有する。このフィルムの所定の大きさの部分は、プロスタグランジン化合物を放出するために湿った体腔中に直接に導入できる。代わりに、プロスタグランジン化合物を含むシートまたはフィルムの所定の大きさの部分は、プロスタグランジン化合物のための生理学的に適合する送達ビヒクルとして役に立つ水性または非水溶媒中に溶解し得る。局所適用のために、局所送達ビヒクルは、粘性で実質的に非流動性である(クリーム、ゲルまたは軟膏など)。
【0012】
好ましい代替実施形態において、容器入り対区画剤形は、密閉活性物質区画および密閉不活性物質区画を含む。プロスタグランジンE群の化合物は、好ましくは充填剤と一緒に、および場合により皮膚透過促進剤と一緒に、活性物質区画内に含有される。生理学的に適合する粘性局所送達ビヒクルは、不活性物質区画内に含有され、使用前、好ましくは使用直前に、活性物質区画の含有物と混合される。皮膚透過促進剤は、活性物質区画内の皮膚透過促進剤に加えて、またはその代わりに、不活性物質区画内に含められ得る。
安定化されたプロスタグランジンE群化合物を含有する本剤形は、ヒト患者における性機能不全、例えば男性インポテンス、早漏、女性の性的興奮障害などの改善に有用である。
【0013】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
プロスタグランジンEは、式
【0014】
【化1】

で表すことができる既知化合物である。前述の構造から誘導され、9−オキソ、11α−ヒドロキシ置換基並びに側鎖における不飽和を有する化合物は、プロスタグランジンE群化合物として知られている(以後、PGE化合物と総称する)。この群の化合物は、式
【0015】
【化2】

で表されるプロスタグランジンE(PGE)、式
【0016】
【化3】

で表されるプロスタグランジンE(またはPGE)、式
【0017】
【化4】

で表されるプロスタグランジンE(またはPGE)並びにこれらの薬学的に許容できる塩を含む。
【0018】
PGE化合物は、血管拡張剤として有用な治療活性を有し、男性および女性の性障害の治療、脂質代謝の調節、潰瘍の治療、炎症性皮膚病変の治療、および類似の治療への適用に用いられてきた。
【0019】
しかしながら、PGE化合物は比較的不安定であり、特に水溶液または水性環境において、分解する傾向がある。しかしながら、今回、これらの化合物が非水溶媒中で効果的に安定化され得ることが見いだされた。本発明のいくつかの形態において、直接にまたはクリーム、ゲル、軟膏などの粘性局所送達ビヒクルと混合して局所投与するために便利な剤形を提供するために、容易に取り扱いおよび計量できるシート状組成物が、提供される。
【0020】
PGE化合物は、シート状材料、すなわち例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル、デンプン、ポリビニルピロリドンなどの多糖などの生理学的に適合できるポリマー材料のシート状材料、すなわちシートまたはフィルム中の実質的に均一に分散されている固形物として、組み込まれ得る。約10ミル以下の厚さを有するシート状材料は通常、フィルムと呼ばれ、約10ミルを超す厚さを有する材料は通常、シートと呼ばれる。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「シート状」という用語は、シート並びにフィルムを指す。シート状材料は、固体または、例えばスポンジなどの多孔材料であり得る。分散させたPGE化合物を含有するシート状材料は、所望であればディスク、錠剤、ペレットなどに変換され得る。
【0021】
これらのシート状物品は、湿った体腔に直接に導入するために水溶性であり得、または局所適用に適したクリームまたは軟膏の製造のための生理学的に適合できる非水溶媒に可溶性であり得る。もちろん、プロスタグランジン含有シート状材料の水溶性成分もまた、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばいわゆるポロキサマー、およびこれらの混合物に基づく水性ゲル並びにポリソルベート、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの液体ブロックコポリマーなどに基づく非水性ゲルの製造に利用できる。
【0022】
所望であれば、本発明のPGE化合物含有フィルムは、生理学的に適合する可塑剤、溶解促進剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)なども含む事ができる。
【0023】
これらのPGE含有シート状材料は、皮膚透過促進剤を用いて、または用いずに、ポリマー材料と共にCからC脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど)などの非水溶媒中で、望ましいPGE化合物の溶液をまず作成し、ついでこの溶液を、ロール、または浅い皿もしくはパン中でバッチ式で連続的に成型し、その後そこから溶媒を蒸発させることにより、製造され得る。得られたシートまたはフィルムは非水性媒体全体に実質的に均一に分散されているPGE化合物を有し、容易に細別され、および所定のPGE含有量をそれぞれが有する望ましい投薬単位に割り当て得る。成型シートまたはフィルムは、保存のために固体表面に保持し、使用の直前に溶解することもできる。
【0024】
前述の投薬単位は、好ましくは、局所適用のために、活性物質区画がPGE化合物投薬単位を含有し、不活性物質区画が送達ビヒクルを含有する、容器入り対区画剤形を提供するために使用される。本発明記載の容器入り対区画剤形において、活性物質区画は、充填剤と共にPGE化合物を非水性液体、微粒子または顆粒中に含むこともできる。適した液体充填剤は、ポリジメチルシロキサン(例えば、シクロメチコンUSP、ジメチコンUSPなど)などのシリコーンオイル、並びにCからC脂肪族アルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール、またはこれらの混合物などである。この特定の目的のための適した固体充填剤は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γシクロデキストリンなどのシクロデキストリン、デンプン、ゴムなどの多糖、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース)、糖類(例えば、ラクトース)などである。
【0025】
特に好ましい固体剤形は、少なくとも1つのPGE化合物(好ましくはPGE)、およびアミン置換カルボン酸エステル型皮膚透過促進剤を含み、どちらも担体シート内に実質的に均一に分散されているか、または容器入り対区画剤形の活性物質区画内に互いに混合されている。PGEおよびPGEは、本目的のために特に好ましい血管作用薬である。
【0026】
PGEおよびPGEは、当業者に公知である。その薬理効果、副作用及び正常な投与量範囲については、様々な参考文献を参照することができる。例えば、Physician’s Desk Reference, 51th Ed.(1997)、The Merck Index, 12th Ed., Merck & Co., NJ.(1996)、および Martindale The Extra Pharmcopoeia, 28th Ed., London、The Pharmaceutical Press(1982)を参照のこと。本明細書に記載のプロスタグランジンE並びに他のPGE化合物は、生理学的に適合できる塩およびエステル誘導体を含む薬学的に許容できるこれらの誘導体もまた含むものとする。
【0027】
固体剤形中に存在するPGEなどのPGE化合物の量は、治療的有効量であり、特定の投与計画のための望ましい用量に従って変える必要がある。本固体剤形は、組成物の全重量に対して、約0.05から約25重量パーセントのPGE化合物、好ましくは約0.1から約15重量パーセントのPGE化合物を含有することができる。
【0028】
固体剤形の望ましい成分は、皮膚透過促進剤である。一般に、適した透過促進剤は、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステル(例えば、アミノ置換カルボン酸エステル)、ポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、溶媒(例えば、極性非プロトン性溶媒)、およびこれらの混合物から選択できる。一般に、Chattaraj, et al, “Penetration Enhancer Classification”, pp.5−20 in Maibach, et al.(eds.)、 Percutaneous Penetration Enhancers, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL(1995)、Bueyuektimkin, N., et al., “Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement”, in Ghosh, T.K., et al, (eds.)、Transdermal and Topical Drug Delivery Systems, Interpharm Press, Inc., Buffalo Grove, IL(1997)を参照されたい(参照により、その関連開示を本明細書に組み込む)。
【0029】
限定するものではないが、適したアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、ベンジルアルコール、カプリル酸アルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、2−ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、リノレニルアルコールおよびこれらの混合物を含む。
【0030】
限定するものではないが、適したカルボン酸の例は、カプロン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂肪酸;および吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸などの他の直鎖または分枝鎖有機酸およびこれらの混合物を含む。
【0031】
限定するものではないが、適したカルボン酸エステルの例は、ラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標) 20、CRILL(商標)1 NF)、オレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80、CRILL(商標)4 NF)などのソルビタン誘導体;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、n−ヘキサン酸イソプロピル、n−デカン酸イソプロピル、n−酪酸イソプロピル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチルなどのCからC22カルボン酸エステル;および酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチルなどの酢酸塩およびこれらの混合物を含む。特に好ましいものは、ラウリン酸ソルビタンおよびオレイン酸ソルビタンである。
【0032】
限定するものではないが、適したポリオールの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール(TEG)、ジプロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ソルビトール、イソソルビトール、デキストラン、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオールおよびこれらの混合物を含む。
【0033】
限定するものではないが、適した界面活性剤の例は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、胆汁酸塩およびレシチンを含む。適した陰イオン界面活性剤は、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物を含む。適した陽イオン界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよびこれらの混合物を含む。適した非イオン界面活性剤は、α−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールのポリエチレングリコールエステル、およびこれらの混合物を含む。適したα−ヒドロ−ω−ヒドロキシ−ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピル)ポリ(オキシエチレン)ブロックコポリマーは、ポロキサマー182、184、231、およびこれらの混合物を含む。適したポリオキシエチレンエーテルはPEG−4ラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)30)、PEG−2オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)93)、PEG−10オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)96)、PEG−20オレイルエーテル(BRIJ(登録商標)99)、およびこれらの混合物を含む。適したポリオキシエチレンソルビタンエステルは、モノラウリン酸エステル(TWEEN(登録商標)20)モノパルミチン酸エステル(TWEEN(登録商標)40)、モノステアリン酸エステル(TWEEN(登録商標)60)、モノオレイン酸エステル(TWEEN(登録商標)80)、およびこれらの混合物を含む。適した脂肪酸のポリエチレングリコールエステルは、ポリオキシエチレン(8)モノステアリン酸エステル(MYRJ(登録商標)45)、ポリオキシエチレン(30)モノステアリン酸エステル(MYRJ(登録商標)51)、ポリオキシエチレン(40)モノステアリン酸エステル(MYRJ(登録商標)52)、およびこれらの混合物を含む。
【0034】
適した両性界面活性剤は、限定するものではないが、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ココベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、アミノプロピルラウリルグルタミド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ココアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウリミノ二プロピオン酸ナトリウム、ココアンホカルボキシメチルヒドロキシプロピル硫酸二ナトリウムなどを含む。
【0035】
特に好ましいカルボン酸エステル透過促進剤は、N,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステルなどのアミノ置換カルボン酸エステルまたはこれらの薬学的に許容できる酸付加塩である。本明細書において、「(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステル」という用語は、(CからC18)アルコールと(CからC18)カルボン酸とのエステルを意味する。(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステルに関連した「N,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換」という用語は、エステルが形成されるアルコール部分またはカルボン酸部分のいずれかがアミノ置換基NR(式中、RおよびRは、それぞれ独立して(CからC)アルキル基である。)を有することを意味する。好ましくは、RおよびRは、両方ともメチル基である。
【0036】
好ましいN,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(C−C18)カルボン酸(CからC18)アルキルエステルは、2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシル(DDAIP);2−(N,N−ジメチルアミノ)酢酸ドデシル(DDAA);ドデカン酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピル(DAIPD);ミリスチン酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピル(DAIPM);オレイン酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロピル(DAIPO);およびこれらの薬学的に許容できる酸付加塩を含む。特に好ましいものは、単独または補助透過促進剤と組み合わせて用いられるDDAIPである。DDAIPは、Steroids,Ltd.(Chicago,IL)から入手できる。DDAIPの製造およびこれらの結晶性酸付加塩は、Buyuktimkinらへの米国特許第6,118,020号に記載されている(これを参照により本明細書に組み込む)。長鎖類似アミノ置換カルボン酸アルキルエステルは、Wongらへの米国特許第4,980,378号に記載されているように容易に入手できる化合物から合成できる(これを本明細書に矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込む)。このようなアミノ置換カルボン酸エステル透過促進剤は、2−(N−置換アミノ)−アルカン酸アルキルおよび(N−置換アミノ)−アルカノールアルカノアートとも呼ばれる場合がある。便宜上、2−(N−置換アミノ)−アルカン酸アルキルおよび(N−置換アミノ)−アルカノールアルカノアートは、アルキル(N−置換アミノ)エステルという用語の下において一緒に分類され得る。
【0037】
限定するものではないが、溶媒の例は、ケラチン透過性に影響する、クエン酸トリエチル(TEC)およびトリアセチンなどの脂肪族エステル;フタル酸ジエチル(DEP)などの芳香族エステル;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME、トランスクトール)、イソソルビドジメチルエーテル(DMI)、ジメチルデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミドなどの双極性非プロトン性溶媒;スクアランおよびオクタノールなどのオイルを含む。
【0038】
特に好ましい皮膚透過促進剤は、双極性非プロトン性溶媒、特にNMP、DGME、およびDMI;脂肪族エステル、特にTECおよびトリアセチン;ソルビタン誘導体であるカルボン酸エステル、特にラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)およびオレイン酸ソルビタン、N,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステル、特にDDAIP、およびこれらの組み合わせである。
【0039】
透過促進剤は、PGE化合物が組織への透過を促進するために十分な量で含有される。具体的な量は、使用されるPGE化合物の望ましい放出速度および特定の形態に従って変える必要がある。一般に、この量は、患者に投与される組成物の全重量に対して約0.01パーセントから約20パーセントの範囲である。
【0040】
活性化合物の徐放性または持続放出を含む望ましい放出速度は、例えば疎水性ビヒクル(ポリジメチルシロキサンなど)などの局所送達ビヒクルを選択することにより調節することもできる。末端にカルボキシ基を有するポリジメチルシロキサンもまた、活性化合物による皮膚透過を促進することができる。
【0041】
天然および修飾多糖ゴムもまた、例えば増粘剤、担体シートの一部または局所送達ビヒクルとして含有させることができる。適した代表的ゴムは、天然および修飾ガラクトマンナンゴムである。ガラクトマンナンゴムは、D−ガラクトースおよびD−マンノース単位を含有する炭水化物ポリマーまたはこのようなポリマーの他の誘導体である。比較的多数のガラクトマンナンがあり、組成は、それらの起源に応じて変化する。ガラクトマンナンゴムは、(1→4)結合を有するβ−D−マンノピラノシル単位の直鎖構造で特徴付けられる。主鎖と(1→6)結合した単一のα−D−マンノピラノシル単位が、側鎖として存在する。ガラクトマンナンゴムは、2種類のマメ科植物(チャンポシス・テトラゴノロブス(Cyamposis tetragonalobus)およびプソラロイズ(psoraloids))のいずれかの種子の粉砕した胚乳であるグアールゴム、およびイナゴマメ(セラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua))の種子の胚乳に存在するローカストビーンゴムを含む。適した修飾多糖ゴムは、カルボキシメチルエーテル、エチレングリコールエーテルおよびプロピレングリコールエーテルなどの天然または置換多糖ゴムのエーテルを含む。
【0042】
他の適した代表的ゴムは、寒天ゴム、カラギーナンゴム、ガティゴム、カラヤゴム、ラムザンガムおよびキサンタンガムを含む。本発明の組成物は、種々のゴムの混合物またはゴムの混合物および酸性ポリマーを含むことができる。
【0043】
ゴム、特にガラクトマンナンゴムは、公知の物質である。例えば、Industrial Gums: Polysaccharides & Their Derivatives, Whistler R.L. and BeMiller J.N.(eds.), 3rd Ed. Academic Press(1992) および Davidson R.L., Handbook of Water−Soluble Gums and Resin, McGraw−Hill, Inc., N. Y.(1980)を参照のこと。大部分のゴムは、種々の形態(通常は粉末)で市販されており、食物および局所組成物にそのまま使用可能である。例えば、粉末形態のローカストビーンゴムは、Tic Gums Inc.(Belcam, MD)から入手できる。
【0044】
含有される場合、多糖ゴムは、組成物の全重量に基づいて約0.1パーセントから約5パーセント、好ましくは約0.5パーセントから3パーセントの範囲で含有される。好ましい一実施形態において、約2.5重量パーセントの多糖ゴムが含有される。
【0045】
多糖ゴムの選択可能な代替物は、ポリアクリル酸ポリマーである。ポリアクリル酸ポリマーの一般的な種類の1つは、「カルボマー」という一般名で知られている。カルボマーは、ポリアルケニルポリエーテルで軽度に架橋したポリアクリル酸ポリマーである。これは、「CARBOPOL(商標)」という名称でB. F. Goodrich Company(Akron, Ohio)から市販されている。特に好ましいカルボマーの種類は、「CARBOPOL 940」と呼ばれるものである。
【0046】
使用に適した他のポリアクリル酸ポリマーは、「PEMULEN(商標)」(B.F.Goodrich Company)および「POLYCARBOPHIL(商標)」(A.H. Robbins, Richmond, VA)と言う名称で市販されている。PEMULEN(商標)ポリマーは、C10からC30のアクリル酸アルキルと、アクリル酸、メタクリル酸またはショ糖のアリルエーテルもしくはペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されたそれらの単純エステルの1つの1以上のモノマーとの、コポリマーである。POLYCARBOPHIL(商標)製品は、ジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸である。
【0047】
必要な親油性化合物の濃度は、望ましい半固体軟度および望ましい皮膚透過促進効果などの他の因子に従って必然的に変わる。親油性化合物の濃度は組成物の全重量に基づいて約0.5重量パーセントから約40重量パーセントの範囲が適切である。好ましい局所組成物は組成物の全重量に基づいて約7重量パーセントから約40重量パーセントの範囲の親油性化合物を含有する。
【0048】
脂肪族アルコールおよび脂肪族エステルの混合物が用いられる場合、アルコールの適した量は、約0.5パーセントから約75パーセントの範囲である。好ましい一実施形態において、アルコールの量は、約5パーセントから約15パーセントの範囲であり、脂肪族エステルの量は、約2パーセントから約15パーセントの範囲である(同じく、組成物の全重量に基づく)。もう一つの好ましい実施形態において、アルコールの量は、約0.5パーセントから約10パーセントの範囲であり、一方脂肪族エステルの量は、0パーセントから約10パーセントの範囲である(同じく、組成物の全重量に基づく)。
【0049】
選択可能な成分ではあるが好ましい成分は、乳化剤である。適した乳化剤は、一般に10より大きい親水性親油性バランス値を示すものとする。ショ糖エステル、特にステアリン酸スクロースは、本組成物に対する乳化剤として役立つことができる。ステアリン酸スクロースは、種々の販売元から入手できる公知の乳化剤である。乳化剤が用いられる場合、組成物の全重量に対して約2パーセント以下の量含有されるステアリン酸スクロースが好ましい。ステアリン酸スクロース乳化剤の好ましい量は、多糖ゴムに対する乳化剤の重量比としても表現できる。
【0050】
他の適した乳化剤は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、長鎖アルコール(好ましくはセトステアリルアルコール)および脂肪酸グリセリドである。適したポリオキシエチレンソルビタンエステルは、モノラウリン酸エステル(TWEEN 20,SPAN 20)、モノパルミチン酸エステル(TWEEN 40)、モノステアリン酸エステル(TWEEN 60)、およびモノオレイン酸エステル(TWEEN 80)ならびにこれらの混合物を含む。好ましい脂肪酸グリセリドは、グリセリルモノオレイン酸エステル、トリオレアン、トリミリスチンおよびトリステアリンを含む。
【0051】
他の選択可能な成分は、消泡剤、すなわち振盪または撹拌により完成製剤が泡を形成する傾向を抑える化学物質である。シリコーンは好ましい消泡剤であるが、さまざまなアルコールおよび脂質もまた同様な性質を示す。アルコールを除き、選択された消泡剤は、比較的低い濃度で効果を示す必要があり、微量で用いられる。消泡剤の例には、ジメチコン、セチルジメチコン、ジメチコンシリレート、ジメチコノール、ジメチコンおよび水和シリカの混合物、イソプロピルアルコール、ヘキシルアルコール、トリメチルシロキシケイ酸、トリフェニルトリメチコンなどがある。特に好ましい消泡剤は、Dow Corning Corporation,MichiganからSIMETHICONE USPという名称で市販されている、200から300ジメチルシロキサン単位の平均鎖長を有するジメチコンおよび水和シリカの混合物である。
【0052】
組成物は、所望であれば緩衝系を含むことができる。緩衝系は、組成物のpHを望ましい範囲内に維持または緩衝化するために選択される。本明細書において、「緩衝系」または「緩衝液」という用語は、水溶液中で、酸または塩基が添加されるとき、pH(または水素イオン濃度もしくは活性)における大きな変化に対してこのような溶液を安定化する溶質剤(単数または複数)を指す。最初の緩衝化pH値から上記の範囲におけるpHの抵抗または変化をもたらす溶質剤(単数または複数)は公知である。無数の適した緩衝液があるが、リン酸カリウム緩衝液(例えば、リン酸カリウム一水和物、KHPO N.F.など)が本発明の組成物に有効であることが明らかになっており、好ましい。
【0053】
医薬組成物の最終pH値は、生理学的に適合する範囲内で変化させることができる。必然的に、最終pH値は、ヒト皮膚を刺激しないpH値であり、PGE化合物の経皮輸送が促進されるpH値が好ましい。この制約に反することなく、必要に応じてPGE化合物の安定性を改善し、軟度を調節するようにpHを選択することができる。一実施形態において、好ましいpH値は、約3.0から約7.4であり、より好ましくは約3.0から約6.5であり、最も好ましくは約3.5から約6.0である。
【0054】
好ましい局所送達ビヒクルに関して、組成物の残りの成分は、溶液またはゲルなどの水性組成物である。好ましくは、組成物中に存在する水は、精製水、例えば脱イオン水である。このような送達ビヒクル組成物は、組成物の全重量に基づいて約50から約95パーセントを超す範囲の水を含有する。存在する特定の水の量は重要でないが、望ましい粘度(通常約50cpsから約10,000cps)および/または他の成分の濃度が得られるように調節可能である。局所送達ビヒクルは、好ましくは少なくとも約30センチポアズの粘度を有する。増粘剤は、望ましい粘度レベルを得るために含め得る。
【0055】
PGE化合物の透過を制限しない範囲まで、有機酸およびアルコールなどのPGE化合物の安定化剤および賦形剤、シクロデキストリン、着色剤、レオロジー剤、ならびに防腐剤が、加えられ得る。
【0056】
上記の成分は、PGEなどのPGE化合物を好ましくは実質的に均一に全体に分散して最終的に受け入れる安定な組成物を製造する任意の順序および方法で混合され得る。このような組成物を製造するための使用可能な1つの手法は、予混合した水/緩衝液中に多糖ゴム(またはポリアクリル酸)を均一に分散させ、ついで得られた混合物を完全に均質化する(すなわち混合する)ことを含む。含有される場合、乳化剤は、多糖ゴムを分散させる前に水/緩衝液に加えられる。望ましいレベルにpH値を調節するための任意の適した方法、例えば、濃リン酸または濃水酸化ナトリウムを添加するなどの方法を使用できる。
【0057】
PGE化合物は、ついで透過促進剤を加えて、または加えずに、混合して用いる前にこれらと混合される。得られた組成物は、局所、外尿道口内または経膣投与に対して使用可能である。
【0058】
これらの組成物は、他の送達方法に伴う低い生物学的利用能および急速な化学分解を避けながら、PGE化合物で治療されるまたは治療可能な、末梢血管疾患、男性のインポテンスおよび他の障害の長時間治療に使用され得る。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態は、水溶性フィルム中に実質的に均一に分散されているプロスタグランジンE群化合物を含む固体可溶性プロスタグランジンE剤形である。本フィルムは、(a)約0.025から10重量部のプロスタグランジンE;(b)約0.55から50重量部のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;(c)約0.025から10重量部の2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシルまたはこの塩;(d)約0.05から25重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース;(e)約0.05から25重量部のポリエチレングリコール8000;(f)約0.001から5重量部のシリコーン消泡剤;(g)約5から90重量部の水;および(h)約5から75重量部のエタノールを含む混合物からフィルムを成型することにより製造される。
【0060】
もう一つの実施形態において、すぐに投与可能な製剤は、酸性緩衝液と一緒に、製剤の重量に基づいて、約0.01パーセントから約5パーセントの修飾多糖ゴム;約0.001パーセントから約1パーセントのPGE化合物、好ましくはPGE、またはこれらの薬学的に許容できる塩、これらの低級アルキルエステルおよびこれらの混合物;約0.5パーセントから約10パーセントの2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシルまたはこれらの塩;エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約0.5パーセントから約10パーセントの低級アルコール;ラウリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約0.5パーセントから約10パーセントのエステル;を含む。好ましくは、本製剤はまた、約2重量パーセント以下のステアリン酸スクロースを含む。
【0061】
PGE化合物の有効性に悪影響を及ぼさない治療組成物の変形は、当業者に明らかであり、本発明の範囲内である。前述のように、得られた製剤が望まれる性質を維持する限りにおいて、例えば、着色剤、抗菌性防腐剤、乳化剤、滑沢剤、香水、PGE化合物安定化剤などの追加の成分を含めることができる。含有される場合、防腐剤は、通常約0.05から約0.30%の量で添加される。適した防腐剤は、メチルパラベン(メチルPABA)、プロピルパラベン(プロピルPABA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む。適した香水および芳香剤は、当分野で公知であり;適した芳香剤は、約5パーセント以下であり、芳香剤は当分野で公知であり;適した芳香剤は、組成物の全重量に基づいて約5パーセント以下のミルテノールであり、好ましくは約2パーセントミルテノールである。本発明の組成物は、少量、すなわち約0.01から約4重量パーセントの局所麻酔剤を所望すれば含むこともできる。典型的な局所麻酔剤は、リドカイン、ベンゾカイン、ジクロニン、ジブカイン、薬学的に許容できる塩およびこれらの混合物を含む。好ましい一実施形態において、局所麻酔剤は、組成物の重量に基づいて約0.5パーセントのジクロニンである。
【0062】
2区画剤形の実例を以下に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
所望であれば、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの防腐剤もまた含めることができる。
【0065】
さらに他の2区画剤形を以下に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
PGE含有フィルムを成型するための、例示的2部分組成物を以下に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
部分AおよびBを撹拌で混合し、得られた混合物を表面上に層として成型し、エタノールを蒸発させてシート状材料(すなわち、成型層の厚さによってシートまたはフィルムのいずれか)を得る。
【0070】
以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0071】
2区画容器入り剤形
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2グラム;METHOCEL(登録商標)E4M;Dow Chemical Co.)、ポリエチレングリコール8000粉末(0.5グラム)、脱イオン水(97.5グラム)、および微量の消泡剤(SIMETHICONE(登録商標);Dow Corning Corp.,Midland,MI)を混合することにより粘性局所送達ビヒクルを調製した。
【0072】
最初に、脱イオン水(約25グラム)のアリコートを約80℃に加熱し、ついでそれにヒドロキシプロピルメチルセルロース(2グラム)を加え、溶解するまで撹拌した。得られた熱溶液に微量の消泡剤を加えた。
【0073】
冷脱イオン水(50グラム)にポリエチレングリコール粉末(0.5グラム;PEG8000)を加え、溶解するまで撹拌して冷ポリエチレングリコール溶液を得た。
【0074】
得られた冷および熱溶液を撹拌して混合し、混合溶液(適量100グラム)に脱イオン水をさらに加え、得られた溶液を氷浴中に置き、連続的に撹拌して約30℃未満に冷却した。得られた溶液のpH値は、6.25と測定された。
【0075】
この溶液は、2区画剤形の不活性物質区画の成分として適している。フィルムまたはシートなどのシート状投薬単位を成型するのに適した溶液を調製するためにエチルアルコールを加えることができる。
【0076】
乾燥したプロスタグランジンE(0.018グラム)および2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシル(0.12グラム)を混合することにより、活性物質区画の内容物を調製した。
【0077】
ついで上記のように調製された活性物質内容物を、3グラムの前述の不活性物質組成物と混合し、これに無水エチルアルコール(3グラム)を加えた。
【0078】
局所または外尿道口内への投与に適した、透明な粘性ゲルが得られた。得られたゲルのpH値は、4.5と測定された。
【実施例2】
【0079】
PGEおよび皮膚透過促進剤を含有するフィルム
実施例1に記載されているようにして調製された透明なゲルの一部を6ミルフィルム展延機でガラスパネル上に塗布し、フィルムができるまで数時間乾燥した。少量の水(100ミリグラム)の添加により、約15秒以内に1平方インチのフィルムは透明なゲルに戻った。
【実施例3】
【0080】
PGEを含有するフィルム
PGE粉末(0.024グラム)を以下の成分:
【0081】
【表4】

を有する水溶液と混合し、上記の実施例1に記載されているようにして調製した。得られたPGEおよび水溶液の混合物を、PGEが溶液に溶けるまで15から30秒激しく振盪した。
【0082】
得られた溶液をガラスパネル上に注ぎ、周囲温度で約3.5時間乾燥した。実質的に均一に分散されているPGEを含有するフィルムが得られた。
【実施例4】
【0083】
PGEおよび2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシルを含有するフィルム
上記の実施例3の手順を用いて、以下の成分:
【0084】
【表5】

を有する水溶液にPGE(0.024グラム)および2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシル(0.03グラム)を溶解した。得られた溶液をガラスパネル上に注ぎ、6ミルフィルム展延機で広げ、約3.5時間乾燥した。実質的に均一に分散されているPGEおよび2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシルを含有する乾燥フィルムが得られた。このフィルムは、容易に水と混和した。所望であれば、材料のための薬学的に適合できる局所送達ビヒクルを含有する密閉不活性物質区画に加えて、フィルムを密閉活性物質区画中に包装することができる。適した送達ビヒクルは、上記のように、患者への局所適用用プロスタグランジンE群化合物と混合することができる材料である。このフィルムは、切断され、送達ビヒクルの個別容器に入れた量で、適用のための個別の用量の容器に入れることができる。フィルムおよび送達ビヒクルの複数の個別容器入り用量は、所望であれば複数回投与キットの形態で一緒に包装することができる。
【0085】
前述の実施例は、本発明の好ましい実施形態の例示として提供したものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロスタグランジンE群化合物を含有する密閉活性物質区画、および薬学的に適合する局所送達ビヒクルを含有する密閉不活性物質区画を含む、容器入り多成分剤形であり、送達ビヒクルが、患者への局所適用用医薬組成物を提供するために、プロスタグランジンE群化合物と混合可能である、剤形。
【請求項2】
プロスタグランジンE群化合物が、密閉活性物質区画内の担体シートに実質的に均一に分散されている、請求項1の剤形。
【請求項3】
担体シートが、水溶性である、請求項2の剤形。
【請求項4】
担体シートが、生理学的に適合する非水溶媒に可溶性である、請求項2の剤形。
【請求項5】
プロスタグランジンE群化合物が、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、およびプロスタグランジンEからなる群から選択される、請求項1の剤形。
【請求項6】
局所送達ビヒクルが、クリーム、ゲルおよび軟膏からなる群から選択される、請求項1の剤形。
【請求項7】
活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つが、皮膚透過促進剤もまた含む、請求項1の剤形。
【請求項8】
皮膚透過促進剤が、アルコール、カルボン酸、カルボン酸エステル、ポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、溶媒、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7の剤形。
【請求項9】
カルボン酸エステルの皮膚透過促進剤が、N,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステル、これらの薬学的に許容できる付加塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8の剤形。
【請求項10】
皮膚透過促進剤が、2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシルまたはこれらの薬学的に許容できる付加塩である、請求項9の剤形。
【請求項11】
プロスタグランジンE群化合物が、活性物質区画内の液体充填剤内に分散されている、請求項1の剤形。
【請求項12】
液体充填剤が、無水アルコールである、請求項11の剤形。
【請求項13】
アルコールが、CからC脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12の剤形。
【請求項14】
活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つが、増粘剤もまた含む、請求項1の剤形。
【請求項15】
密閉活性物質区画が、約0.025から10重量部のプロスタグランジンE群化合物を含有し、ならびに密閉不活性物質区画が、約0.05から2.5重量部の増粘剤、約0.001から5重量部の消泡剤、約5から75重量部のアルコール、および約5から75重量部の水を含有する、請求項1の剤形。
【請求項16】
活性物質区画が、約0.5から50重量部の固体充填剤もまた含有する、請求項15の剤形。
【請求項17】
活性物質区画が、約0.5から50重量部の液体充填剤もまた含有する、請求項15の剤形。
【請求項18】
活性物質区画および不活性物質区画の少なくとも1つが、約0.025から10重量部のN,N−ジ(CからC)アルキルアミノ置換(CからC18)アルキル(CからC18)カルボン酸エステルまたはこれらの薬学的に許容できる付加塩を含有する、請求項15の剤形。
【請求項19】
(a)約0.01パーセントから約5パーセントの修飾多糖ゴム;
(b)約0.001パーセントから約1パーセントのプロスタグランジンE化合物またはこれらの薬学的に許容できる塩、これらの低級アルキルエステル、もしくはこれらの混合物;
(c)約0.5パーセントから約10パーセントの2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオン酸ドデシルまたはこの塩;
(d)エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約0.5パーセントから約10パーセントのアルコール;
(e)ラウリン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、約0.5パーセントから約10パーセントのエステル;
(f)酸性緩衝液;および
(g)約2重量パーセント以下のステアリン酸スクロース
を含むプロスタグランジンE剤形。
【請求項20】
請求項19の剤形からのフィルム成型品。
【請求項21】
水溶性フィルムに実質的に均一に分散されているプロスタグランジンE群の化合物を含む固体の可溶性プロスタグランジンE剤形であり、フィルムが、
(a)約0.025から10重量部のプロスタグランジンE
(b)約0.55から50重量部のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;
(c)約0.025から10重量部の2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシルまたはこの塩;
(d)約0.05から25重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
(e)約0.05から25重量部のポリエチレングリコール8000;
(f)約0.001から5重量部のシリコーン消泡剤;
(g)約5から90重量部の水;および
(h)約5から75重量部のエタノール
を含む混合物からフィルムを成型することにより製造される、剤形。
【請求項22】
水溶性充填剤を含有するフィルムに実質的に均一に分散されているプロスタグランジンE群化合物を含む、水溶性フィルム。

【公表番号】特表2008−526854(P2008−526854A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550431(P2007−550431)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/000147
【国際公開番号】WO2006/074204
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(500210660)ネクスメツド・ホールデイングス・インコーポレイテツド (4)
【Fターム(参考)】