説明

局所適用化合物のためのデリバリーシステム

局所適用化合物のためのデリバリーシステムが開示されている。 このデリバリーシステムは、脂肪酸、リン脂質、および油脂を含み、そして、水を加えることによって活性化される。 皮膚または毛髪への使用に適した組成物を得るために、このデリバリーシステムは、局所適用化合物および水と共に混合される。 デリバリーシステムを構成する成分の相対量は、表皮および真皮への局所適用化合物の浸透を許容する可撓性の円形小胞、表皮および真皮への局所適用化合物の制御送達のためのものであって、その一部が破裂している膜を有する小胞、角質層での局所適用化合物の保護を許容する層状シートの形状の完全に破裂した小胞、およびこれらの組み合わせでもってして提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年9月24日に出願された米国特許仮出願第60/613,034号の利益の享受を主張する。
【0002】
本願発明は、組成物から局所適用化合物を制御放出するためのデリバリーシステムに関する。 具体的には、本願発明は、組成物、すなわち、(a)脂肪酸、リン脂質および油脂を含むデリバリーシステム、(b)局所適用化合物、および(c)水を含む組成物から局所適用化合物を制御放出するためのデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
活性成分の投与は、活性成分が天然遮断層を十分に透過できないため、所望の標的部位に活性成分の好適な送達を妨げる当該遮断層によって制約を受けることがよくある。 局所適用化合物にとっての天然遮断層とは、皮膚である。
【0004】
局所適用化合物は、様々な化学分類に属し、また、多様な作用効果をも奏する。 幾つかの局所適用化合物では、皮膚表面で所望の作用を発現させるための工夫が加えられている。 また、その他の局所適用化合物では、皮膚表面に浸透し、そして、皮膚表面下部で所望の作用を発現させるための工夫がされている。 しかしながら、皮膚表面がもたらす物理的保護層は、局所適用化合物を効果的に皮膚表面下部に送達させることを難しくしている。
【0005】
哺乳動物の皮膚は、二つの個別の層、すなわち、その最も外側の層が、脂肪親和性の層状構造によって取り囲まれた死亡細胞の幾つかの層から構成されている角質層である表皮と、生体の表皮の下部にある管状の真皮とを含む。 皮膚のほとんどの生命活動を、この表皮と真皮が担っている。 つまり、表皮および真皮に化合物を局所的に送達するためには、それら化合物を、角質層を通過させる必要があるのである。
【0006】
皮膚表面下部に所望の作用を及ぼすパーソナルケア製品の非侵襲的投与は、大抵の場合において、好都合である。 それが故に、様々な活性剤の皮膚浸透性を改善するための研究も行われている。 活性剤の局所投与は、容易であり、また、患者の理解も得られやすく、そして、化合物の分解を防ぐこともできる。 皮膚への浸透性を増大させる方法として、溶媒や界面活性剤などの化学添加物を利用する方法がある。
【0007】
皮膚への活性剤の浸透性を増大させるための有名な方法として、浸透増強剤を用いるものがある。 このような浸透増強剤として、非イオン性物質(例えば、長鎖アルコール、界面活性剤、両性イオン性リン脂質)、陰イオン性物質(例えば、 脂肪酸)、陽イオン性長鎖アミン、スルホキシド、ならびに様々なアミノ誘導体、そして、両性グリシナートおよびベタインがある。 にもかかわらず、皮膚への活性剤の浸透に関する問題点は、未だに実質的な解決には至っていない。
【0008】
皮膚表面への局所適用化合物の送達および/または皮膚表面へ浸透させるための組成物またはデリバリーシステムを開示している特許文献として、米国公開特許公報第US2002/0048596号、米国特許第6,165,520号、米国公開特許公報第US2003/0099694号、および米国公開特許公報第US2002/0064524号がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、局所適用化合物のためのデリバリーシステム、およびそれらデリバリーシステムと局所適用化合物を含有する組成物に関する。 本願発明のデリバリーシステムは、皮膚表面への局所適用組成物の効果的かつ容易な適用を可能にし、また、本願発明の組成物は、それを皮膚表面から浸透せしめることで、角質層または表皮および真皮のいずれかでの局所適用化合物の滞留を可能ならしめる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、局所適用化合物のためのデリバリーシステム、およびそれらデリバリーシステムと局所適用化合物を含む組成物に関する。 具体的には、本願発明は、皮膚表面への局所適用化合物の適用、すなわち、皮膚表面から浸透させることによって、角質層または表皮および真皮のいずれかにまで浸透させるための適用を可能にするデリバリーシステムに関する。
【0011】
本願発明によれば、このデリバリーシステムは、頭皮を含む皮膚への適用に適した組成物を得るために、局所適用化合物および水と共に混合する。 そして、局所適用化合物を適用および送達するために、この混合物を、製剤化することは勿論、製剤成分を取り込むことも可能である。
【0012】
本願発明のある実施態様によれば、デリバリーシステムの構成成分は、相対量でもってして、(a)生体の表皮および真皮への局所適用化合物の浸透を許容する可撓性の円形小胞、(b)表皮および真皮への局所適用薬物の制御送達のためのものであって、その一部が破裂している膜を有する小胞、(c)角質層への局所適用化合物の制御送達および角質層での局所適用化合物の保護を許容する層状シートを形成する完全に破裂した膜を有する小胞、および(d) (a)、(b)および(c)の少なくとも二つを含有する混合物でもってして提供される。
【0013】
本願発明の他の実施態様によれば、脂肪酸、リン脂質、および油脂を含む局所適用化合物のためのデリバリーシステムが提供される。 このデリバリーシステムは、通常、意図的に界面活性剤を用いていないが、2重量%の界面活性剤を含有させることができる。 具体的には、このデリバリーシステムは、約2重量%〜約50重量%の脂肪酸、約5重量%〜約50重量%のリン脂質、および約20重量%〜約90重量%の油脂を含む。
【0014】
本願発明のさらに別の実施態様によれば、本願発明のデリバリーシステム、局所適用化合物および水を含む組成物、すなわち、(a)局所適用化合物が、意図した作用を奏するに十分な量で存在しており、かつ(b)デリバリーシステムおよび水のそれぞれが、約1:1〜約1:100のデリバリーシステム:水の重量比率で存在している組成物が提供される。
【0015】
本願発明のさらに別の実施態様によれば、局所適用化合物、すなわち、スキンケア化合物、局所用薬物、酸化防止剤、染料、皮膚美白用化合物、セルフタンニング化合物、蛍光増白剤、脱臭剤、香料、日焼け止め剤、昆虫忌避剤、薬物、同様の局所適用化合物、およびこれらの混合物からなるグループから選択される局所適用化合物と本願発明のデリバリーシステムとを含有する組成物が提供される。
【0016】
本願発明のこれら態様とその他の態様、それに新規の特徴部分は、好適な実施態様に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0017】
本願発明のデリバリーシステムは、皮膚表面への局所適用組成物の効果的かつ容易な適用を可能にし、また、本願発明の組成物は、それを皮膚表面から浸透せしめることで、角質層または表皮および真皮のいずれかでの局所適用化合物の滞留を可能ならしめる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願発明は、局所適用化合物のためのデリバリーシステム、およびそれらデリバリーシステムと局所適用化合物を含む組成物に関する。 具体的には、このデリバリーシステムは、角質層での局所適用化合物の持続的放出と、皮膚表面の下部、例えば、表皮および真皮への局所適用化合物の制御放出とを可能にする。
【0019】
本明細書で用いられている「デリバリーシステム」の用語は、脂肪酸、リン脂質および油脂の混合物を指す。 また、「活性デリバリーシステム」の用語は、水で希釈したデリバリーシステムを指す。
【0020】
本明細書で用いられている「持続的放出」の用語は、長期間にわたる局所適用化合物の放出、すなわち、所望の標的部位への局所適用化合物の連続的供給を指す。 また、「制御放出」の用語は、下部組織にある所望の標的部位に局所適用化合物を貯蔵するために、所望の標的部位、すなわち、角質層または表皮および真皮へ局所適用化合物の放出することを指す。
【0021】
本願発明のデリバリーシステムは、(a)脂肪酸、(b)リン脂質、および(c)油脂を含む。 このデリバリーシステムは、そこに水を加えることで活性化される。 このデリバリーシステムを、局所的に活性な化合物および水、そして、その他の任意成分と共に混合することで、本願発明の組成物が得られる。 (a)、(b)および(c)の相対量、それに(b)のHLB(親水性-脂肪親和性バランス)に応じて、本願発明の組成物において、デリバリーシステムは、(i)円形小胞、(ii)その一部が破裂している膜を有する小胞、(iii)角質層細胞間に存在する層状構造を模倣する層状シートを形成する完全に破裂した膜を有する小胞、および(iv)これらの混合物として提供される。
【0022】
円形小胞、その一部が破裂している膜を有する小胞、および層状シートの相対量をもってして、所望の標的部位、すなわち、皮膚表面または表皮および真皮への局所適用薬物の制御送達が可能となる。 皮膚表面または表皮および真皮への局所適用薬物の制御送達は、局所適用化合物の経時的な持続的放出を可能にする。
【0023】
1.脂肪酸
本願発明のデリバリーシステムは、約2重量%〜約50重量%、好ましくは、約5重量%〜約40重量%の脂肪酸を含む。 本願発明の効果を最大限に引き出すために、このデリバリーシステムは、約10重量%〜約30重量%の脂肪酸を含む。
【0024】
8〜C26脂肪酸を、本願発明のデリバリーシステムの脂肪酸として取り込むことができる。 この脂肪酸を、一つまたはそれ以上の炭素-炭素二重結合で飽和させることも、あるいは、この脂肪酸に当該二重結合を含有させることもできる。 このデリバリーシステムにおいて有用な脂肪酸の例として、カプリン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、獣脂酸、カプロン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、タル油脂酸、ヤシ酸、ペラルゴン酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、亜麻仁酸、ウンデシレン酸、大豆酸、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。 その他の脂肪酸は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する the CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, First Ed., J. Nikotakis, ed., The Cosmetic Toiletry, and Fragrance Association (1988), [以下、「CTFAハンドブック」と称する]の第27頁〜第28頁に記載されている。
【0025】
2.リン脂質
脂肪酸に加えて、本願発明のデリバリーシステムは、リン脂質を含む。 このデリバリーシステムは、約5重量%〜約50重量%、好ましくは、約5重量%〜約35重量%のリン脂質を含む。 本願発明の効果を最大限に引き出すために、このデリバリーシステムは、約10重量%〜約30重量%のリン脂質を含む。
【0026】
本願発明において有用なリン脂質は、特に限定されない。 したがって、このデリバリーシステムは、例えば、ホスファチジルエタノールアミン(すなわち、セファリン)、ホスファチジルコリン(すなわち、レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、3'-O-リシルホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、およびこれらの混合物を用いて調製することができる。 一般的に、このリン脂質として、その第1,2-位がC6-C24脂肪酸でエステル化されたグリセリドや、その第3位にリン酸エステル残基を有するグリセリドを用いることができる。
【0027】
その他の有用なリン脂質として、正電荷を帯びたリン酸エステル残基、通常は、四級アンモニウム窒素を有するリン酸エステル残基を含有したものがある。 このようなリン脂質として、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、および3'-O-リシルホスファチジルグリセロールなどがあるが、これらに限定されない。
【0028】
精製したリン脂質を用いる必要はない。 本願発明にあっては、市販のレシチンなどの市販のリン脂質を用いることができるので、この点において、経済的であると言える。
【0029】
異なるHLB値を有するリン脂質も利用可能であり、このリン脂質のHLB値は、水を用いて活性化した本願発明のデリバリーシステム内に存在する小胞の形状にも影響を与える。 例えば、約7という低いHLB値を示すリン脂質は、円形小胞を安定化せしめ、また、高いHLB値を示すリン脂質は、破裂した小胞(例えば、約9のHLB)や層状シート(例えば、約10のHLB)を安定化せしめる。 化合物のHLB値は、当業者に周知の事項である。 化合物のHLB値は、文献に記載されている数値であり、また、算出することは勿論、実験によって決定することもできる。 例えば、W.C. Griffin, J. Soc. Cosmetic Chem., 5, 294 (1954)を参照されたい。
【0030】
3.油脂
脂肪酸とリン脂質の他に、本願発明のデリバリーシステムは、油脂を含む。 この油脂として、天然油、合成油、またはそれらの混合物などを利用することができる。 このデリバリーシステムは、約20重量%〜約90重量%、好ましくは、約30重量%〜約85重量%の油脂を含む。 本願発明の効果を最大限に引き出すために、このデリバリーシステムは、約40重量%〜約80重量%の油脂を含む。
【0031】
油脂の種類は、特に限定されない。 有用な油脂の例として、米糠油、ラノリン油、亜麻仁油、ヤシ油、オリーブ油、メンヘーデン油、ヒマシ油, 大豆油、タル油、菜種油、パーム油、牛脚油、ユーカリ油、ペパーミント油、薔薇油、丁子油、レモン油、松油、オレンジ油、アーモンド油、杏核油、アボカド油、大風子油、サクランボ種子油、カカオバター、タラ肝油、トウモロコシ油、綿実油、卵油、エチオダイズド油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ハイブリッドベニバナ油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、硬化綿実油、硬化メンヘーデン油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化落花生油、硬化サメ肝油、硬化大豆油、硬化植物油、ホホバ油、ミンク油、モリンガ油、オリーブ殻皮油、パーム核油、パーム油、モモ核油、落花生油、ペンガワージャンビ油、ベニバナ油、胡麻油、サメ肝油、シアバター、ベニバナ種子油、スイートアーモンド油、植物油、クルミ油、小麦糠脂質、小麦麦芽油、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。 その他の油脂は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するCTFAハンドブックの第23頁、第26頁および第27頁に記載されている。
【0032】
油脂として、例えば、鉱油、1-デセンダイマー、ポリデセン、パラフィン、ワセリンまたはイソパラフィンなどの炭化水素のような合成油を用いることができる。 その他の合成油として、ジメチコンのようなシリコーン油や、ジメチコンポリオールなどの機能性シリコーン油がある。 このシリコーン油は、25℃で、約10センチポアズ(cps)〜約600,000cpsの粘度を、また、通常は、約350cps〜約10,000cpsの粘度を示す。 シリコーン油の例として、ジメチコン、ジメチコンコポリオール、ジメチコノール、シメチコン、フェニルトリメチコン、ステアロキシジメチコン、リメチルシリルアモジメチコン、アルキルジメチコンポリオール、そして、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン側鎖を有するジメチコンなどがある。
【0033】
本願発明のデリバリーシステムは、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両イオン性および両性の界面活性剤などの界面活性剤を意図的に加えることもできる。 本明細書で用いる「界面活性剤」の用語は、リン脂質以外の表面活性化剤を指す。 特に、「界面活性剤」の用語は、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両イオン性および両性の界面活性剤を含む洗浄剤型および洗剤型の界面活性剤を指す。 通常、本願発明のデリバリーシステムは、界面活性剤を実質的に含んでいないが、0重量%〜約2重量%の界面活性剤を含むことができる。
【0034】
本願発明のデリバリーシステムは、任意成分を含むことができる。 例えば、デリバリーシステムに、ビタミンEおよび/またはビタミンE誘導体などの酸化防止剤を取り込むことができる。 その他の任意成分として、香料、保存料、染料およびコレステロールエステルなどがあるが、これらに限定されない。 任意成分は、それが意図している作用を奏するに十分な量で利用されるものであって、通常は、デリバリーシステムの0重量%〜約1重量%の量で利用される。 任意成分は、合計で、デリバリーシステムの0重量%〜約10重量%の量でデリバリーシステムに利用される。
【0035】
通常は、デリバリーシステムでの脂肪酸:リン脂質の重量比率は、約0.5:1〜約2:1である。 しかしながら、脂肪酸:リン脂質の重量比率を、約0.2:1〜約5:1に調整することも可能である。 好ましい実施態様によれば、脂肪酸:リン脂質の重量比率は、約0.8:1〜約1.2:1に調整される。
【0036】
本願発明のデリバリーシステムは、脂肪酸、リン脂質、および油脂を、均質な組成物が得られるまで攪拌することによって取得できる。 本願発明のデリバリーシステムについての二つの事例を、以下に示している。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

以下の実施例3〜5を調製し、次いで、等量の脱イオン水と共に混合して活性化を行った。 各実施例で、異なるHLB値を示すリン脂質を用いた。 実施例3および5では、所望のHLB値に調整するために、レシチンの混合物を用いた。 HLB値が7のリン脂質の混合物を取り込んでいる実施例3を、水を用いて活性化をすると、円形小胞が得られた。 HLB値が9のレシチンを取り込んでいる実施例4を、水を用いて活性化をすると、破裂した小胞が得られた。 HLB値が10.5のレシチンの混合物を取り込んでいる実施例5を、水を用いて活性化をすると、層状シートが得られた。
【0039】
【表3】

本願発明のデリバリーシステムは、パーソナルケア製品、化粧品および医薬品の分野において有用である。 本願発明のデリバリーシステムは、香料、顔料、皮膚治療剤、局所用薬物、および同様の局所適用化合物などの局所適用化合物の制御放出と標的送達を実現する。
【0040】
本願発明のデリバリーシステムを、室温下で、水と共に混合するか、あるいは加熱して、活性デリバリーシステムを形成する。 通常は、本願発明のデリバリーシステムを、水と共に混合するか、あるいは水と局所適用化合物とを含むその他のビヒクルと共に混合して、本願発明の組成物を得る。 このデリバリーシステムに水を加えて、デリバリーシステム:水の重量比率を、約1:1〜約1:100、好ましくは、約1:約50に調整する。 デリバリーシステム:水のさらに好ましい重量比率は、約1:1〜約1:10である。 皮膚に適用する最終組成物を得るために、この混合物に対して水と製剤成分をさらに加えるか、あるいは、この混合物に対して水とその他の追加成分を加えることができる。
【0041】
デリバリーシステムに水を加えることで、デリバリーシステムが活性化され、そして、局所適用化合物を送達するための多様な構造の形成が可能となる。 後述するように、脂肪酸、リン脂質および油脂の相対量、それに、リン脂質のHLB値は、エマルジョンに出現する小胞の主要形態、すなわち、円形小胞、その一部が破裂している小胞、そして、層状シートを形成する完全に破裂した小胞などの形態に相関する。 通常は、これら各形態のものが、活性デリバリーシステムにおいて認められる。 デリバリーシステムに含まれる脂肪酸、リン脂質および油脂の相対量および種類は、円形小胞、その一部が破裂している小胞、そして、層状シートの分布に変化を及ぼし、それにより、皮膚表面から表皮および真皮への組成物の浸透性も改変される。 これにより、所望の標的部位への局所適用化合物の制御送達が実現することとなる。
【0042】
デリバリーシステムへの水の添加に加えて、通常は、局所適用化合物もデリバリーシステムに添加される。 これまで通りに、デリバリーシステムに水を加える以前に、局所的に活性な化合物が添加される。 そうすることで、水を添加して得られた小胞が、局所適用化合物を封入あるいは取り込んで、そして、局所適用化合物の制御放出および/または持続的放出のために供される。
【0043】
局所適用化合物は、意図した作用を奏するに十分な量で、本願発明の組成物に取り込まれる。 組成物に用いる局所適用化合物の量は、治療薬での極少量からスキンケア化合物、例えば、制汗剤での比較的多量に至る広範囲の用量に及ぶ。 本願発明の組成物に用いる局所適用化合物の量は、化合物の種類と意図している用途に基づきさえすれば、当業者にとって自明の事項である。
【0044】
本願発明の重要な特徴によれば、局所適用化合物として、水溶性および油溶性の区別に関係なく、多様な化合物を用いることができる。
【0045】
したがって、この局所適用化合物として、化粧品用化合物、医薬用活性化合物、それに、化粧品やパーソナルケア製品で用いられている化合物、または皮膚への局所的適用に適した化合物のいずれか、またはそれらの混合物を用いることができる。 このような局所的活性剤として、脱臭剤、スキンケア化合物、植物抽出物、酸化防止剤、昆虫忌避剤、反対刺激薬、ビタミン、ステロイド、レチノイド、抗菌化合物、抗真菌化合物、抗炎症性化合物、抗生物質、局所麻酔薬、日焼け止め剤、蛍光増白剤、その他の局所的に効果的な化粧品用化合物や医薬品用化合物などがあるが、これらに限定されない。
【0046】
例えば、スキンコンディショナーを、局所適用化合物とすることができる。 スキンコンディショニング剤として、フルクトース、グルコース、グリセリン、プロピレングリコール、グリセレス-26、マンニトール、尿素、ピロリドンカルボン酸、加水分解レシチン、ココ-ベタイン、システイン塩酸塩、グルカミン、PPG-15、グルコン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、オレイルベタイン、チアミン塩酸塩、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解タンパク質、加水分解ケラチン、アミノ酸、アミンオキシド、ビタミンA、E、およびDの水溶性誘導体、アミノ機能性シリコーン、エトキシル化グリセリン、α-ヒドロキシ酸およびその塩などの保湿剤、PEG-24硬化ラノリンなどの油脂誘導体、およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。 その他の無数のスキンコンディショナーは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する the CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, First Ed., J. Nikotakis, ed., The Cosmetic Toiletry, and Fragrance Association (1988)[以下、「CTFAハンドブック」と称する]の第79頁〜第84頁に記載されている。
【0047】
少なくとも10個の炭素原子、好ましくは、10個〜約32個の炭素原子を有する水不溶性エステルも、スキンコンディショナーに利用できる。 好適なエステルとして、約8個〜約20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、および、約2個〜約12個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族カルボン酸の他に、これとは逆に、2個〜約12個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、および、約8個〜約20個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族カルボン酸もある。 このエステルは、直鎖状のものでも、分枝状のものでもよい。 好適なエステルとして、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
(a) 脂肪族一価アルコールエステル、すなわち、プロピオン酸ミリスチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、酢酸セチル、プロピオン酸セチル、ステアリン酸セチル、ネオペンタン酸イソデシル、オクタン酸セチル、ステアリン酸イソセチルなどであるが、これらに限定されない。
【0049】
(b) ポリカルボン酸の脂肪族ジ-およびトリ-エステル、すなわち、アジピン酸ジイソプロピル、フマル酸ジイソステアリル、アジピン酸ジオクチル、およびクエン酸トリイソステアリルなどであるが、これらに限定されない。
【0050】
(c) 脂肪族多価アルコールエステル、すなわち、ジペラルゴン酸プロピレングリコールなどであるが、これらに限定されない。
【0051】
(d) 芳香族酸の脂肪族エステル、すなわち、安息香酸のC12-C15アルコールエステル、サリチル酸オクチル、安息香酸スクロース、およびフタル酸ジオクチルなどであるが、これらに限定されない。
【0052】
その他の無数のエステルは、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する CTFAハンドブックの第24頁〜第26頁に記載されており、また、リポ ケミカルズ社から、LIPONATE(商品名)、LIPO ポリグリコール、およびLIPOVOL(商品名)の商品が市販されており、入手可能である。
【0053】
アスコルビン酸やエリトルビン酸などの酸化防止剤、あるいは蛍光増白剤も局所適用化合物として使用できる。 さらに、ジヒドロキシアセトンなどのセルフタンニング化合物も、局所適用剤として使用できる。
【0054】
このような局所適用化合物として有用な蛍光増白剤として、日光の不可視紫外線領域を吸収し、そして、そのエネルギーを波長の長い可視波長光に変換することができる化合物がある。 蛍光増白剤は、無色の物質であり、また、可視光線領域のエネルギーを吸収しない。 通常は、蛍光増白剤として、スチルベンの誘導体または4,4'-ジアミノスチルベン、ビフェニール、五員ヘテロ環、例えば、トリアゾール、オキサゾールまたはイミダゾール、または、六員ヘテロ環、例えば、クマリン、ナフタラミドまたはs-トリアジンが使われている。 蛍光増白剤は、TINOPAL(登録商標)、LEUCOPHOR(登録商標)、およびCALCOFLUOR(登録商標)などの様々な商品名で市販されている。 具体的な蛍光化合物として、TINOPAL(登録商標) 5BM、CALCOFLUOR(登録商標) CG、およびLEUCOPHOR(登録商標) BSBなどがあるが、これらに限定されない。
【0055】
局所適用化合物として、収斂性塩または生物作用性化合物などの脱臭剤や発汗抑制化合物を用いることができる。 収斂性塩として、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛の有機塩および無機塩、およびこれらの混合物がある。 収斂性塩の陰イオンとして、例えば、硫酸塩、塩化物、クロロ水酸化物、蟻酸塩、乳酸塩、ベンジルスルホン酸塩、またはフェニルスルホン酸塩などを用いることができる。 制汗剤用の収斂性塩の例として、ハロゲン化アルミニウム、ヒドロキシハロゲン化アルミニウム、ジルコニルオキシハロゲン化物、ジルコニルヒドロキシハロゲン化物、およびこれらの混合物がある。
【0056】
アルミニウム塩の例として、塩化アルミニウムの他に、一般式、すなわち、Al2(OH)xy・XH2O、式中、Qは、塩素、臭素または沃素であり;xは、約2〜約5であり;x+yは、約6であり、xおよびyが、整数である必要はなく;および、Xが、約1〜約6である一般式で表されるヒドロキシハロゲン化アルミニウムがある。 ジルコニウム化合物の例として、ジルコニル塩およびジルコニルヒドロキシ塩とも呼ばれており、また、一般実験式、すなわち、ZrO(OH)2-nzz、式中、zは、約0.9〜約2の範囲で変化し、かつ整数である必要は無く;nは、Lの原子価であり;2-nzは、0と同等またはそれ以上であり;そして、Lが、ハロゲン化物、硝酸塩、スルファミド酸塩、硫酸塩、およびそれらの混合物からなるグループから選択される実験式で表されるいるジルコニウムオキシ塩とジルコニウムヒドロキシ塩がある。
【0057】
したがって、脱臭剤化合物として、臭化アルミニウム水和物、カリミョウバン、クロロヒドロキシアルミニウム乳酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、クロロアルミニウム水和物、テトラクロロアルミニウム-ジルコニウム水和物、グリシンを取り込んだポリクロロアルミニウム-ジルコニウム水和物、トリクロロアルミニウム-ジルコニウム水和物、オクタクロロアルミニウム-ジルコニウム水和物、セスキクロロアルミニウム水和物、アルミニウムセスキクロロハイドレックスPG、アルミニウムクロロハイドレックスPEG、アルミニウム-ジルコニウムオクタクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウム-ジルコニウムペンタクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウム-ジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウム-ジルコニウムトリクロロハイドレックスグリシン複合体、アルミニウムクロロハイドレックスPG、クロロジルコニウム水和物、ジクロロアルミニウム水和物、アルミニウムジクロロハイドレックスPEG、アルミニウムジクロロハイドレックスPG、アルミニウムセスキクロロハイドレックスPG、塩化アルミニウム、ペンタクロロアルミニウム-ジルコニウム水和物、クロロフィリン銅複合体、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するCTFAハンドブックの第56頁に記載されている無数のその他の有用な発汗抑制化合物、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。 悪臭を遮蔽して脱臭剤として作用する香料も、活性剤として使用できる。 無数の香料化合物は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するCTFAハンドブックの第69頁〜第70頁に記載されている。
【0058】
加えて、意図した作用を奏するに十分な量のその他の化合物も、局所適用化合物として取り込むことができる。 例えば、組成物を日焼け止め剤として使用するのであれば、ベンゾフェノン-3、トリヒドロキシケイ皮酸およびその塩、タンニン酸、尿酸、キニン塩、ジヒドロキシナフトール酸、アントラニラート、メトキシケイ皮酸ジエタノールアミン、p-アミノ安息香酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、PEG-25、p-アミノ安息香酸、または安息香酸トリエタノールアミンなどの化合物を、局所適用化合物として使用することができる。
【0059】
さらに、ジオキシベンゾン、アミノ安息香酸エチル4-[ビス(ヒドロキシプロピル)]、アミノ安息香酸グリセリル、ホモサレート、アントラニラートメチル、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾン、パディメートO、赤ワセリン、二酸化チタン、4-メンチルベンジリデンカンファー、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-12、イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ゾトクリレン、または酸化亜鉛などの日焼け止め用化合物を、局所適用化合物として使用することができる。 その他の日焼け止め剤化合物は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するCTFAハンドブックの第86頁〜第87頁に記載されている。
【0060】
同様に、抗真菌化合物、抗菌化合物、抗炎症性化合物、局所麻酔薬、皮疹、皮膚病および皮膚炎用の薬剤、それに、抗掻痒性化合物や刺激抑制化合物などの局所適用薬物を、本願発明の組成物での活性剤として用いることができる。 例えば、ベンゾカイン、塩酸ジクロニン、アロエベラなどの鎮痛薬;ピクリン酸ブタンベン、塩酸リドカイン、キシロカインなどの麻酔薬;ポピドンヨード、ポリミキシンB硫酸バシトラシン、亜鉛ネオマイシン硫酸ヒドロコルチゾン、クロラムフェニコール、塩化エチルベンゼトニウム、エリスロマイシンなどの抗菌化合物や防腐薬;リンダンなどの駆虫薬;過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン過酸化ベンゾイル、リン酸クリンダマイシン、5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシキノリンなどのアクネ用製剤をはじめとする実質的にすべての皮膚科用製剤;ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベータメタゾンなどの抗炎症剤;o-アミノ-p-モノ酢酸トルエンスルホンアミドなどの火傷軽減用軟膏;モノベンゾンなどの脱色素剤;活性ステロイドアムシノニド、酢酸ジフロラゾン、ヒドロコルチゾンなどの皮膚炎緩和剤;塩化エチルベンゼトニウムなどのおむつかぶれ緩和剤;鉱油、PEG-4ジラウレート、ラノリン油、ワセリン、鉱ロウなどの皮膚軟化薬および保湿剤;硝酸ブトクアゾール、ハロプロジン、クロトリマゾールなどの殺菌剤;O-[(2-ヒドロキシメチル)-メチル]グアニンなどのヘルペス処置用薬物;ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベータメタゾン、ミリスチン酸イソプロピルMSDなどの掻痒症用薬物;アントラリン、メトキサレン、コールタールなどの乾癬、脂漏症、および疥癬症用薬剤;2-(アセチルオキシ)-9-フルオロ-1'、2'、3'、4'-テトラヒドロ-11-ヒドロキシプレグナ-1,4-ジエノ-[16、17-b]ナフタレン-3、20-ジオンおよび21-クロロ-9-フルオロ-1'、2'、3'、4'-テトラヒドロ-llb-ヒドロキシプレグナ-1,4-ジエノ-[16、17-b]ナフタレン-3、20-ジオンなどのステロイドなどがある。 アラントインのような皮膚美白用剤や皮膚保護剤、それに、サリチル酸のような抗アクネ剤などの局所適用可能なその他の薬物も、意図した作用を奏するに十分な量で、本願発明の組成物に取り入れることができる。 その他の局所適用化合物は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1985) [以下、「Remington's」と称する]の第773頁〜第791頁および第1054頁〜第1058頁に記載されている。
【0061】
植物抽出物を、局所適用化合物とすることもできる。 植物抽出物として、アルファルファ、アロエベラ、アムラの果実、アンゼリカの根、アニスの種子、リンゴ、アプリコット、アーティチョークの葉、アスパラガスの根、バナナ、メギ、大麦の芽、ミツバチ花粉、ビートの葉、ビルベリーの果実、カバの葉、苦瓜、ブラックカラントの葉、黒胡椒、黒胡桃、ブルーベリー、ブラックベリー、ゴボウ、ニンジン、唐辛子、セロリの種子、サクランボ、ツマトリソウ、コーラナッツ、コーンシルク、クランベリー、タンポポの根、ニワトコ、ユーカリの葉、亜麻油粉末、ショウガの根、イチョウの葉、ヤクヨウニンジン、アキノキリンソウ、ヒドラスチス、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、ハイビスカス、ネズミサシ、キィウィ、クズ、レモン、カンゾウの根、ライム、モルト、マリーゴールド、ミルラ、オリーブの葉、オレンジの果実、オレンジの果皮、オレガノ、パパイヤの果実、パパイヤの葉、トケイソウの果実、モモ、ナシ、パインの樹皮、スモモ、ザクロ、プルーン、ラズベリー、ルバーブの根、ローズマリーの葉、サルビアの葉、スペアミントの葉、セイヨウオトギリソウ、イチゴ、スイートクローバー、タンジェリン、スミレ草、クレソン、スイカ、ヤナギの樹皮、ヒメコウジの葉、アメリカマンサクの樹皮、ヨヒンベ、およびキャッサバの根などに由来するものがあるが、これらに限定されない。
【0062】
組成物全体に対するデリバリーシステムの濃度は、局所適用化合物が意図している作用を奏する上で十分な濃度であって、通常は、製剤の約0.01重量%〜約50重量%の濃度である。 組成物に取り込まれるデリバリーシステムの量は、局所適用化合物の種類と組成物での局所適用化合物の量とも関連している。
【0063】
本願発明の組成物は、本願発明のデリバリーシステムを、局所適用化合物および水と共に混合して調製される。 本願発明の組成物は、化粧品、医薬品およびその他のかような組成物に伝統的に用いられているその他の成分を含有することができる。 このような成分として、染料、香料、保存料、界面活性剤、酸化防止剤、粘着防止剤、および同様のタイプの化合物などがあるが、これらに限定されない。 これら成分は、それらが意図している作用を奏する上で十分な量でもってして、組成物に取り込まれる。
【0064】
通常は、以下の追加成分が、本願発明のデリバリーシステムおよび局所適用化合物と共に、本願発明の組成物に取り込まれる。 これら成分の各々とその他の成分は、組成物またはその有効性に悪影響を及ぼさずに、それらが意図している作用を奏する上で十分な量でもってして、組成物に取り込まれる。
【0065】
例えば、本願発明の組成物に、界面活性剤を用いることができる。 界面活性剤として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または混和可能な界面活性剤の混合物などがある。 組成物のpHに応じて陰イオン性または陽イオン性を示す両イオン性および両性の界面活性剤も利用することができる。
【0066】
本願発明の組成物に、ヒドロトロープを用いることもできる。 ヒドロトロープとは、他の化合物の水溶性を改善する性質を備えた化合物である。 ヒドロトロープの例として、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸アンモニウム、キシレンスルホン酸アンモニウム、トルエンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸、およびキシレンスルホン酸などがあるが、これらに限定されない。 その他の有用なヒドロトロープとして、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、メチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、樟脳スルホン酸ナトリウム、およびコハク酸二ナトリウムなどがある。
【0067】
本願発明の組成物に、さらに溶媒を用いることができる。 この溶媒は、1個〜6個、通常は、1個〜3個の水酸基を有する水溶性の有機化合物、例えば、アルコール、ジオール、トリオール、およびポリオールである場合が多い。 これら溶媒の例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、n-プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG-4、1,5-ペンタンジオール、同様の水酸基含有化合物、およびそれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。 溶媒として、組成物の最終用途に応じて、例えば、ジメチルスルホキシドやテトラヒドロフランのような非プロトン性溶媒、そして、例えば、脂肪族溶媒や芳香族溶媒などの炭化水素溶媒を用いることができる。
【0068】
本願発明の組成物に、増粘剤やゲル化剤を用いることもできる。 増粘剤またはゲル化剤として、例えば、水溶性のポリマーやコロイド溶液を形成するポリマーがある。 すなわち、増粘剤またはゲル化剤として、例えば、ポリマーまたはコポリマー、不飽和カルボン酸または不飽和エステル、多糖誘導体、ガム、コロイド珪酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、ポリアクリロニトリル、親水性シリカゲル、またはそれらの混合物がある。
【0069】
具体的な増粘剤またはゲル化剤として、例えば、アクリルおよび/またはメタクリルポリマーまたはコポリマー、カルボン酸ビニルポリマー、ポリグリセリルアクリレートまたはメタクリレート、ポリアクリルアミド誘導体、セルロースまたは澱粉誘導体、キチン誘導体、アルギン酸塩、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸塩、キサンタン、ゲル化剤、ラムザン、カラヤまたはグアールガム、イナゴマメ粉、およびモンモリロナイト型のコロイド状アルミニウム-マグネシウム珪酸塩などを用いることができる。
【0070】
その他の増粘剤またはゲル化剤として、CARBOPOL(登録商標)(Goodrich)の商品名で市販されているカルボン酸ビニルポリマー、アクリル酸/酢酸エチルコポリマー、アクリル酸/メタクリル酸ステアリルコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルグアール、コロイド状ヘクトライト、ベントナイトなどがある。
【0071】
本願発明の組成物に、顔料、染料、保存料、水和剤、紫外線吸収剤などを用いることもできる。
【0072】
顔料として、無機顔料、有機顔料または真珠顔料がある。 無機顔料として、二酸化チタン、黒色、黄色、赤色または褐色酸化鉄、マンガンバイオレット、ウルトラマリンバイオレット、酸化クロムなどがあるが、これらに限定されない。 有機顔料において、D&CレッドNo.3、No.6、No.7、No.9、No.13、No.19、No.21、No.27、No.30またはNo.36、あるいはカーボンブラックなどがあるが、これらに限定されない。
【0073】
真珠顔料として、例えば、酸化チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコートされた雲母などの白色系真珠顔料を用いることができる。 酸化鉄または酸化クロムで着色されたチタニウム雲母、上掲のタイプの有機顔料で着色されたチタニウム雲母などの着色真珠顔料、あるいは、オキシ塩化ビスマスを用いた真珠顔料なども利用することができる。
【0074】
染料として、例えば、ポンソージナトリウム塩、アリザリングリーンジナトリウム塩、キノリンイエロー、アマランストリナトリウム塩、タータジンジナトリウム塩、ロダミンモノナトリウム塩、フクシンジナトリウム塩、キサントフィルなどの水溶性染料がある。
【0075】
本願発明の組成物は、充填剤、具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト、またはベントナイトタイプの粘土、または、シリカ、シリコーン粉末、ポリアミド、または、粉末ポリメチルメタクリレートなどのその他の充填剤を取り込むことができる。 例えば、タルク、カオリン、TEFLON(登録商標)粉末(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン粉末、架橋ポリ-β-アラニン粉末などの様々な白系充填剤も有用である。
【0076】
本願発明の組成物に含まれるその他の分類に属する任意成分として、pH調整剤、キレート化剤、保存料、緩衝剤、整泡剤、乳白剤、および当業者に周知の同様の分類に属する成分あるが、これらに限定されない。
【0077】
具体的な任意成分として、緩衝剤としての無機リン酸塩、硫酸塩、および炭酸塩;キレート化剤としてのEDTAおよびリン酸塩;および、pH調整剤としての酸および塩基がある。
【0078】
塩基性pH調整剤の例として、アンモニア;モノ-、ジ-、およびトリ-アルキルアミン;モノ-、ジ-、およびトリ-アルカノールアミン;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物;および、これらの混合物があるが、これらに限定されない。 具体的には、塩基性pH調整剤の例として、アンモニア;ナトリウム、カリウムおよびリチウムの水酸化物;モノエタノールアミン;トリエチルアミン;イソプロパノールアミン;ジエタノールアミン;および、トリエタノールアミンなどがあるが、これらに限定されない。 酸性pH調整剤の例として、無機酸および有機カルボン酸などがある。 無機酸の例として、クエン酸、塩酸、硝酸、リン酸、および硫酸などがあるが、これらに限定されない。
【0079】
パーソナルケア用品の分野にあっては、アフターシェーブローション、ベビーローション、ベビークリーム、ベビーシャンプー、化粧用下塗剤および下引剤、浴用カプセル、浴用オイル、浴用タブレット、浴用塩類、浴用石鹸、ほお紅、コロンおよびトイレ水、キューティクル柔軟化剤、除毛剤、散布剤および滑石粉、アイローション、アイメイクアップ、アイメイクアップリムーバー、アイシャドウ、眉用ペンシル、アイライン、フェイスパウダー、フェイス、ボディーおよびハンド用のクリームおよびローション、女性用衛生脱臭剤、足用パウダーおよびスプレイ、化粧用ファウンデーション、香料、ホルモンクリームおよびローション、室内タンニング用剤、レッグペイント剤およびボディペイント剤、リップスティックス、メイクアップベース剤、メイクアップ定着剤、メイクアップ用品、マニキュア用品、マスカラ、男性用タルカム、保湿クリームおよびローション、洗口剤および口息フレッシュナー、ネイルクリームおよびローション、ネイルエキステンダー、マニキュア液およびネイルエナメル、ナイトクリームおよびローション、フケ防止用品、ペーストマスク、香水、プレシェーブローション、無着色リンス、ラフ、サシュ、スキンケア用品、スキンフレッシュナー、皮膚美白剤、サンタンゲル、サンタンクリーム、サンタンリキッド、トニック、薬学的皮膚処理剤、外傷用医薬材料、整髪料、脇部用脱臭剤、セットローション、およびリンクルスムージングクリームおよびローションとしてデザインされた組成物に、デリバリーシステムが取り込まれる。
【0080】
具体的には、本願発明のデリバリーシステムは、ローションおよびアフターシェーブ用品;発汗抑制剤および収斂剤;浴用ゲルや浴用オイルなどの浴用用品;リップスティックス、ポマード、リップグロス、メイクアップファウンデーション、フェイスカラーリングスティック、ネイルハードナー、ネイルコンディショナー、アイカバー、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、およびチークティントなどのメイクアップ用品;皮膚軟化薬および保湿剤のようなシェービング用品;ハンドローション、バニシングクリーム、ナイトクリーム、日焼け止め剤、ボディローション、フェイシャルクリーム、クレイマスク、保湿ローション、メイクアップリムーバー、皮膚美白用クリーム、抗アクネ剤、老化防止剤、および皮脂調整剤などのスキンケア用品;鎮痛性およびコルチゾン系ステロイドクリームおよびステロイド剤;昆虫忌避剤;フケ防止組成物;皮膚美白用組成物;フェイシャルマスクおよび活性化剤;および、セルフタンニング組成物のような調製物を取り込むことができる。
【0081】
本願発明のデリバリーシステムを、図面に例示している。 図1は、このデリバリーシステムに含まれている円形小胞の写真である。 図1において、10重量%のオレイン酸、10重量%のレシチン、0.5重量%の酢酸ビタミンE、および69.5重量%の米糠油を含有している活性デリバリーシステムは、水溶性黒色染料、すなわち、リンタングステン酸を含有している水に対して加えられている。 1重量部のデリバリーシステムは、3重量部の水に対して加えられている。 得られた小胞に黒色染料が浸透しており、図1の写真では、円形構造の小胞が認められる。 図1に示された円形可撓性の小胞は、生体の表皮および真皮への局所適用化合物の浸透と貯蔵空間の形成を可能にしている。
【0082】
図2は、20重量%のオレイン酸と59.5重量%の米糠油を含有していること以外は、前述したものと同様の本願発明のデリバリーシステムに含まれている小胞、すなわち、その一部が破裂している小胞を説明するものである。 その一部が破裂している小胞は、皮膚の表面から表皮および真皮に浸透することができる。 したがって、その一部が破裂している小胞は、表皮または真皮へ局所適用化合物を制御送達および持続的送達して、そこで、局所適用化合物が、長期間にわたって所望の作用を奏する。
【0083】
図3は、層状シートを形成する(30重量%のオレイン酸と49.5重量%の米糠油を含有していること以外は、前述したものと同様である)本願発明のデリバリーシステムでの完全に破裂している小胞を説明するものである。 これら層状シートは、角質層において局所適用化合物のための貯蔵器を保持することができる。
【0084】
円形小胞、その一部が破裂している小胞、および層状シートの各々が、本願発明の活性デリバリーシステムにおいて存在している。 しかしながら、脂肪酸、リン脂質、および油脂と、これら化合物の相対量を慎重に選択することで、いずれか一つの構造の小胞の量を増大させて、それにより、局所適用化合物の送達部位を制御するようにデザインすることができる。
【0085】
図4〜図7は、デリバリーシステムでのオレイン酸を増量させることで、小胞の破壊が進行することを示している。 具体的には、図4のデリバリーシステムは、10重量%のオレイン酸を含んでおり;図5および図6のデリバリーシステムは、20重量%のオレイン酸を含んでおり;そして、図7のデリバリーシステムは、30重量%のオレイン酸を含んでいる。 図4〜図7のデリバリーシステムは、10重量%のレシチンと残余の米糠油をさらに含んでいる。 図7は、小胞の破壊が最も進行した事例を示している。
【実施例】
【0086】
以下の試験は、本願発明のデリバリーシステムをさらに説明するためのものである。
【0087】
試料の調製
レシチン(Z-3、ALC、オックスフォード、コネチカット州)、オレイン酸(コグニス、シンシナティ、オハイオ州)、およびホホバ油(リポ ケミカルズ、パターソン、ニュージャージー州)を、常温混合して、試料の調製を行った。 次いで、油相と水とを様々な比率で混合した。 それぞれが0%〜15%(w/w)のオレイン酸を含有している活性デリバリーシステムを調製した。
【0088】
透過型電子顕微鏡(TEM)
TEMは、試験試料に電子ビームを透過させて組成物を検査する。 試料に含まれる構造物の大きさ、形状および配置状態の他に、試料に含まれる構造物相互の関連性についても、TEM技術を用いて観察される。
【0089】
ネガティブ染色を行った後に、TEMを用いて試料の分析を行った。 具体的には、希釈した試料溶液を銅製のグリッドに滴下し、次いで、試料にネガティブ染色を加えてから、数分間かけて乾燥させた。 これら試験で用いた染色剤は、1%w/vの濃度のリンタングステン酸(PTA)と酢酸ウラシル(UA)であった。 次に、フィリップス社のTEM CM 12の装置(EM、アイントホーフェン、オランダ)を用いて、110キロボルトの加速電圧にて、それぞれの試料の観察を行った。
【0090】
示差走査熱量計(DSC)
DSCは、試験試料と不活性な参照物質との間の温度差を、ほぼ零にまで減少させるために必要なエネルギーを測定する。 この手法は、試料と参照物質とを、同一の温度条件下に置く。 DSCの基本原理は、相転移などの物理的作用が試料に及んでもなお、試料と参照物質とを同じ温度下で維持するために、多少の加熱を必要とする。 この熱量が計測され、そして、温度変化として記録される。 このDSC試験を、TAインストゥルメンタル熱分析DSC(TAインストゥルメンタル、ニューキャッスル、デラウェア州)を用いて行った。 この試験では、アルミニウム製の秤量皿で正確に試料を計量し、次いで、標準的なセル内に配置および密閉した。 −30℃〜30℃の加熱/冷却サイクルの温度変化に伴う熱流の変化をモニターした。
【0091】
皮膚への浸透
放射性オレイン酸(MPバイオメディカルズ)(2μl)を、各製剤の20gに対して加え、次いで、均質に分散するまで混合を続けた。 各製剤に関する皮膚透過性を分析するために、フランツ拡散セル(5.1ml)を用いた。 10%エタノールを含有した等張性リン酸緩衝液でレセプターコンパートメントを満たしてから、ヒトの死体から得た皮膚片をドナーコンパートメントとレセプターコンパートメントとの間で固定し、そして、1時間かけて水和物の予備形成を許容した。 約0.15グラムの各製剤を秤量し、そして、ガラス棒を用いてドナーコンパートメントに移した。 ドナーコンパートメントに移した(5回の実験の各々に関する)各製剤の正確な量を記録した。 ドナーコンパートメントおよび試料採取口をPARAFILM(商品名)で密閉し、次いで、毎時間ごとに、長くとも8時間かけて、試料(300μl)の抜き取りを行った。 このレセプターコンパートメント溶液を、600rpmで、連続的に攪拌した後に、その全体を37℃で維持した。 8時間後に、セルから皮膚を取り出し、そして、テープ剥離法に供するために、標識付けを行い、その後、適切な保存を行った。 ドナー洗浄物を回収するために、エタノール(3ml)を用いた。
【0092】
テープ剥離法
テープ剥離法の実施に先駆けて、各皮膚片の秤量を行った。 約1平方インチのスコッチテープ片(810マジックテープ(登録商標)商品名、3M、セントポール、ミネソタ州)を切り出して、計量を行った。 このテープを、皮膚に押し当て、そして、引き剥がしてから改めて計量を行った。 同様にして、各皮膚片についてもテープ剥離法を7度にわたって行い、そして、それらの重量を計量した。 テープ剥離を行った各皮膚片を、空のシンチレーションビンに移した。 残存した表皮および真皮については、秤量を行ってから、シンチレーションビンに移した。 真皮のすべての皮膚片を、80℃で、2mlの0.3M水酸化ナトリウムを用いて12時間かけて消化した。
【0093】
記録用試料の調製
約0.15グラムの放射性製剤(その正確な重量は記録済)を秤量し、そして、その各々に、10mlのシンチレーションカクテル(ECOLITE商品名)を加えた。 そこで得られた計数値は、ドナーコンパートメントでの計数値を標準化するために用いた。 シンチレーションカクテル(10ml)を、すべてのレセプター試料とテープ剥離片に対して加えた。 シンチレーションカクテル(5ml)を、消化した表皮および真皮の溶液に対して加えた。 シンチレーションカクテル(10ml)を、ドナー洗浄物に対して加えた。 適切なスタンダードとバックグラウンドが調製され、そして、シンチレーションカウンターにおいて、すべての試料に関する放射性関連値が計測された。
【0094】
構造的特徴
透過型電子顕微鏡写真は、異なる三つの構造、すなわち、無傷の小胞、破裂した小胞(非均一単一層状膜)および層状シートという三つの構造の存在を示している。 これら三つの構造は、すべての製剤において認めることができる。 しかしながら、いずれの製剤でも、ある一つの構造が、その他の二つの構造よりも優勢であることがうかがえる。 活性デリバリーシステムでのオレイン酸の量が、それぞれ5重量%、10重量%および15重量%である図1〜3を参照されたい。 オレイン酸を含まないコントロール製剤についての透過型電子顕微鏡写真は、単純なエマルジョン滴でよく認められる構造を示すに止まった。
【0095】
熱力学的特徴
オレイン酸(0重量%、5重量%、10重量%および15重量%)を含む活性デリバリーシステムを調製し、そして、安定性に関するHLB値を調整するために、幾つかのリン脂質を用いた。 実施例3〜5を参照されたい。 オレイン酸を含まないコントロール製剤として、単純エマルジョンを準備した。 オレイン酸の濃度を0重量%から5重量%に増大させると、本願発明のデリバリーシステムのTmが、14.53℃から4.53℃にまで減少したことが、示差走査熱量計を用いた測定で明らかとなった。 オレイン酸の濃度を10重量%および15重量%にまでさらに増大させると、Tmは、それぞれ、5.16℃および6.25℃にまでわずかに増大した。 Tmとは、リン脂質が、ゲル状態(配向性が明瞭で流動性が少ない状態)から液晶状態(配向性が不明瞭で流動性が大きい状態)に変化する転移温度である。
【0096】
コントロール製剤(0%オレイン酸)での晶出温度は、正の値(0.63℃)であったが、5重量%、10重量%および15重量%のオレイン酸を含む活性デリバリーシステムでの晶出温度は、負の値(それぞれ、−1.52℃、−4.82℃および−9.04℃)であった。
【0097】
皮膚への浸透作用
放射線同位元素でオレイン酸に標識付けをして、皮膚から検出を行ったところ、四つの試験試料は、異なる皮膚浸透作用を示した。 15重量%のオレイン酸を含む試験試料は、角質層での最大の定着性を示した。 コントロール製剤(0%オレイン酸)の角質層での定着性は、最大値の半分にも満たなかった。
【0098】
生体の表皮と真皮を標的とした場合に、異なる作用性が認められた。 この実験において、5重量%のオレイン酸を含む活性デリバリーシステムは、最大の定着性を示し、また、その定着量は、コントロール製剤(0%オレイン酸)での定着量の倍であった。
【0099】
皮膚内に残存している局所適用化合物の量は、デリバリーシステムが、皮膚内への有効浸透を許容していることを示している。 本願発明の活性デリバリーシステムの利点は、例えば、コントロール製剤が、マーカーの38%を浸透するに止まっているのに対して、5重量%、10重量%、15重量%のオレイン酸を含む本願発明のデリバリーシステムが、それぞれ、61%、56%および55%という実質的に改善されたマーカー浸透性を示していることからも明らかである。
【0100】
上記の結果は、本願発明の組成物が、構造的および熱力学的に顕著な変化をもたらすことを実証するものである。 オレイン酸を含まないコントロール製剤は、一般的な水中油形(o/w)エマルジョンの性質を示すに過ぎず、また、比較的に大きなTm値を有する。 これに対して、オレイン酸を含む本願発明の活性デリバリーシステムは、Tm値が小さく、また、オレイン酸が5重量%の時の小胞からオレイン酸が15重量%の時の層状シートまでをもカバーする「可撓性」構造を形成する。 これら構造的および熱力学的に変化は、本願発明のデリバリーシステムと皮膚との間の相互作用にも影響を与える。 具体的には、デリバリーシステムの相互において、放射線同位元素で標識付けされたマーカーの主要な定着部位に関して差異が認められる。 層状シートのデリバリーシステムでは、マーカーや局所適用化合物が、主に皮膚の上層部、すなわち、角質層に存在するのに対して、円形の可撓性小胞は、マーカーや局所適用化合物が、皮膚のさらに内部にまで浸透して、主に生体の表皮および真皮に存在しているのである。
【0101】
これまで説明してきた本願発明に、本願発明の趣旨と範囲を逸脱せずに、多くの修正や変更を加えることが可能であることは自明であり、従って、特許請求の範囲の欄に記載の限定事項のみが本願発明に付加されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本願発明の円形小胞を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】その一部が破裂している膜を有する本願発明の小胞を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】層状シートを形成する完全に破裂した本願発明の小胞を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】ある構造を具備した小胞でのオレイン酸の効果を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】ある構造を具備した小胞でのオレイン酸の効果を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図6】ある構造を具備した小胞でのオレイン酸の効果を示す透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】ある構造を具備した小胞でのオレイン酸の効果を示す透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用化合物のためのデリバリーシステム、すなわち;
(a) 約2重量%〜約50重量%の脂肪酸;
(b) 約5重量%〜約50重量%のリン脂質;
(c) 約20重量%〜約90重量%の油脂、
を含むデリバリーシステム。
【請求項2】
界面活性剤を含まない請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項3】
前記脂肪酸が、約5重量%〜約40重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項4】
前記脂肪酸が、約10重量%〜約30重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項5】
前記脂肪酸が、C8〜C26脂肪酸を含む請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項6】
前記脂肪酸が、カプリン酸、カプリル酸、デカン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、獣脂酸、カプロン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、タル油酸、ヤシ酸、ペラルゴン酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、亜麻仁酸、ウンデシレン酸、大豆酸、およびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項7】
前記リン脂質が、約5重量%〜約35重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項8】
前記リン脂質が、約10重量%〜約30重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項9】
前記リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、3'-O-リシルホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリンおよびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項10】
前記油脂が、約30重量%〜約85重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項11】
前記油脂が、約40重量%〜約80重量%の量で存在する請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項12】
前記油脂が、米糠油、ラノリン油、亜麻仁油、ヤシ油、オリーブ油、メンヘーデン油、ヒマシ油、大豆油、タル油、菜種油、パーム油、牛脚油、ユーカリ油、ペパーミント油、薔薇油、丁子油、レモン油、松油、オレンジ油、アーモンド油、杏核油、アボカド油、大風子油、サクランボ種子油、カカオバター, タラ肝油、トウモロコシ油、綿実油、卵油、エチオダイズド油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ハイブリッドベニバナ油、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、硬化綿実油、硬化メンヘーデン油、硬化パーム核油、硬化パーム油、硬化落花生油、硬化サメ肝油、硬化大豆油、硬化植物油、ホホバ油、ミンク油、モリンガ油、オリーブ殻皮油、パーム核油、パーム油、モモ核油、落花生油、ペンガワージャンビ油、米糠油、ベニバナ油、胡麻油、サメ肝油、シアバター、ベニバナ種子油、スイートアーモンド油、植物油、クルミ油、小麦糠脂質、小麦麦芽油、炭化水素、鉱油、1-デセンダイマー、ポリデセン、パラフィン、ワセリン、イソパラフィン、ジメチコン、ジメチコンコポリオール、ジメチコノール、シメチコン、フェニルトリメチコン、ステアロキシジメチコン、トリメチルシリルアモジメチコン、アルキルジメチコンポリオール、ジメチコンおよびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項13】
脂肪酸:リン脂質の重量比率が、約0.2:1〜約5:1である請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項14】
脂肪酸:リン脂質の重量比率が、約0.5:1〜約2:1である請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項15】
脂肪酸:リン脂質の重量比率が、約0.8:1〜約1.2:1である請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項16】
総量で10重量%までの任意成分、すなわち、界面活性剤、酸化防止剤、香料、染料、コレステロールエステルおよびこれらの混合物からなるグループから選択される任意成分をさらに含む請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項17】
前記脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、またはこれらの混合物を含み、前記リン脂質が、レシチンを含み、および、前記油脂が、米糠油を含む請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項18】
約2重量%の界面活性剤を含む請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項19】
水と請求項1に記載のデリバリーシステムとを含む活性デリバリーシステム。
【請求項20】
その50重量%〜99重量%が水である請求項19に記載の活性デリバリーシステム。
【請求項21】
哺乳動物の皮膚または毛髪に対して局所的に適用するのための組成物、すなわち;
(a) 請求項1に記載のデリバリーシステム;
(b) 局所適用化合物;および
(c) 水、
を含む組成物。
【請求項22】
デリバリーシステム:水の重量比率が、約1:1〜約1:100である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
デリバリーシステム:水の重量比率が、約1:1〜約1:4である請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
以下の要素、すなわち;
(a) 円形小胞;
(b) その一部が破裂している膜を有する小胞;
(c) 完全に破裂して層状シートを形成する膜を有する小胞;または
(d) (a)、(b)および(c)の少なくとも二つを含む混合物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記局所適用化合物が、香料、薬物、治療剤、脱臭剤、発汗抑制化合物、スキンコンディショナー、酸化防止剤、昆虫忌避剤、反対刺激薬、ビタミン、植物抽出物、ステロイド、皮膚美白用化合物、セルフタンニング化合物、抗菌化合物、抗真菌化合物、抗炎症性化合物、局所麻酔薬、表皮脂質補助剤、日焼け止め剤、蛍光増白剤、皮膚炎または皮膚病用薬剤、およびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
前記局所適用化合物が、ベンゾカイン、塩酸ジクロニン、アロエベラ、ピクリン酸ブタンベン、塩酸リドカイン、キシロカイン、ポピドンヨード、ポリミキシンB硫酸バシトラシン、亜鉛ネオマイシン硫酸ヒドロコルチゾン、クロラムフェニコール、塩化エチルベンゼトニウム、エリスロマイシン、リンダン、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン過酸化ベンゾイル、リン酸クリンダマイシン、5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシキノリン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベータメタゾン、o-アミノ-p-モノ酢酸トルエンスルホンアミド、モノベンゾン、アムシノニド、酢酸ジフロラゾン、ヒドロコルチゾン、塩化エチルベンゼトニウム、PEG-4 ジラウレート、ラノリン油、ワセリン、鉱ロウ、硝酸ブトクアゾール、ハロプロジン、クロトリマゾール、o-[(2-ヒドロキシ-メチル)メチル]グアニン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベータメタゾン、ミリスチン酸イソプロピルMSD、アントラリン、メトキサレン、コールタール、2-(アセチルオキシ)-9-フルオロ-1'、2'、3'、4'-テトラヒドロ-1-ヒドロキシプレグナ-1,4-ジエノ-[16、17-b]ナフタレン-3,20-ジオン、21-クロロ-9-フルオロ-1'、2'、3'、4'-テトラヒドロ-11b-ヒドロキシプレグナ-1,4-ジエノ-[16z, 17-b]ナフタレン-3,20-ジオン、アラントイン、サリチル酸、およびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記活性剤が、マリーゴールド抽出物、過酸化尿素、サームス ファーメント、グリセリン、蛍光増白剤、抗酸化剤、シリコーン、ミリスチン酸イソプロピル、アスコルビン酸、レチノール、サリチル酸、亜鉛ピリチオン、ベンゾフェノン-3、香料、グリコール酸、ヒアルロン酸、過酸化水素、タンパク質、酵素、トコフェロール、ブテイン、ヒドロキノン、コウジ酸、 ホホバ油、α-またはβ-ヒドロキシ酸、およびこれらの混合物からなるグループから選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
総量で10重量%までの任意成分、すなわち、界面活性剤、酸化防止剤、香料、染料、コレステロールエステルおよびこれらの混合物からなるグループから選択される任意成分をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
哺乳動物の皮膚を処置するための方法であって、(a)請求項1に記載のデリバリーシステム、(b)局所適用化合物、および(c)水を含む組成物と、当該皮膚とを接触させる工程を含む方法。
【請求項30】
前記局所的に活性な化合物が、皮膚の表面に浸透する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記局所的に活性な化合物が、持続的に放出される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記局所的に活性な化合物が、皮膚の表面から表皮および真皮に浸透する請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記局所的に活性な化合物が、表皮および真皮に持続的に放出される請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−514606(P2008−514606A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533540(P2007−533540)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/032749
【国際公開番号】WO2006/036557
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(503440071)リポ ケミカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】