説明

局監視システム

【課題】 デジタル波の中継において、受信画像の画質を直接的に反映した信号を監視すること。
【解決手段】 制御回路43は、復調用集積回路42の出力に基づいて、C/N比やBER値を監視して、C/N比やBER値が異常を示しているか否かを常時監視する。例えばC/N比やBER値が継続的に異常値を示す場合、異常信号を発生し、C/N比やBER値が異常値を示していない場合、正常な放送が出来ていると判定する。このようなC/N比やBER値、判定結果等は、稼働状況に関する評価結果として、制御回路43から伝送媒体49に出力され、パケット通信回線PNを介して管理制御センタ50に送信される。管理制御センタ50では、局監視装置40(1)〜40(m)の検出した評価結果に基づいて、各中継局20,30(1)〜30(n)の個別の稼働状況をリアルタイムで把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波中継局の稼動状態や異常を監視するための局監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波中継局の監視システムとして、予め定められた電波チェックポイントにおいて放送電波を計測して得た電測値を、サーバシステムで集中管理するものが存在する(特許文献1)。なお、電測値としては、チューナで検出した放送電波の入力レベルすなわち検出電波の強度値を用いるのが通常である。
【特許文献1】特開2003−259397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電測値として放送電波の入力レベルを検出しただけでは、中継される信号やテレビ受像機に受信される信号の画質を必ずしも反映したものとならない場合がある。
【0004】
最近、地上波放送がデジタル化されつつあり、デジタル波の中継に際しての画質の維持・管理が重要な課題となっている。このようなデジタル波の場合、上記のような放送電波の入力レベルは、受信画像の画質を直接反映したものとなっていない。このため、例えば従来のアナログ波では、放送電波の入力レベルが徐々に下がった場合、これに伴って画質が徐々に劣化して電波障害の予兆があったが、デジタル波では、このような場合、突然画像が映らなくなることが起こり得る。
【0005】
そこで、本発明は、デジタル波の中継において、受信画像の画質を直接的に反映した信号を監視することで、電波の中継状況を長期にわたって安定して管理することができる局監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る局監視システムは、(a)デジタル放送用の中継局の周辺に設定された所定監視領域内に設置されて当該中継局から送出される送信電波を検出する受信手段と、受信手段で検出した送信電波から画質情報を検出する評価手段と、評価手段による評価結果を所定形式の電気信号として送信する送信手段とをそれぞれ備える複数の局監視装置と、(b)複数の局監視装置からの評価結果を含む監視情報を、所定の通信回線を介して取得する通信手段と、(c)通信手段によって取得した複数の局監視装置からの監視情報を、中継局の稼動状況として監視する監視手段とを備える。ここで、評価結果には、画質情報そのものを含めることができるが、画質情報から得た画質の評価(正常状態、異常予兆、異常状態等)を含めることができる。
【0007】
上記局監視システムによれば、局監視装置において、評価手段が受信手段で検出した送信電波から画質情報を検出し、送信手段が評価手段による評価結果を送信するので、単に送信電波の強度値を電測値として利用する場合に比較して、中継されている画像の画質をより反映した評価結果を得ることができる。さらに、所定監視領域内に複数の局監視装置が設置されているので、局監視装置を設置した各点における放送電波すなわち放送波の状況を高い信頼性で監視することができる。また、この局監視システムによれば、中継局の所定監視領域内における放送電波の状況を上記評価結果の推移として監視することができ、監視対象である特定中継局の稼動状況を長期にわたって高い信頼性で管理することができる。
【0008】
本発明の具体的態様では、上記局監視システムにおいて、監視手段が、中継局に関連づけて蓄積された画質情報に基づいて、所定監視領域内における配信劣化地域を特定する。この場合、所定監視領域内の各対象点における放送電波すなわち放送波の劣化を監視することで、放送電波の劣化に対応する配信劣化地域を特定することができる。例えば配信劣化地域が中継局の特定方位にある場合、この特定方位に向けたアンテナに故障等の異常が生じていることを判定することができる。
【0009】
本発明の別の具体的態様では、複数のデジタル放送用の中継局のそれぞれに対して複数の局監視装置が設けられている。この場合、多数のデジタル放送用の中継局の稼動状況を統括的に監視・管理することができる。
【0010】
本発明の別の具体的態様では、複数の局監視装置が、電柱に設置されて、電柱の電線からの誘導電流を電源として利用して動作する。この場合、既存の設備である電柱の利用によって、24時間体制で中継局の稼動状況を管理することができる。
【0011】
本発明の別の具体的態様では、画質情報が、受信手段が検出した送信電波のキャリア対ノイズ比とビット・エラー・レイトとの少なくとも一方を含む。この場合、デジタル波によって送信される画像に関する画質情報を簡易・的確に特定したデータを利用することができ、中継されている画像の画質を的確に評価することができ、このような的確な評価結果に基づいて高い信頼性で監視が可能になる。
【0012】
本発明の別の具体的態様では、送信手段が、パケット通信回線を利用する通信端末装置を含む。この場合、既存の通信回線網を利用しつつ迅速なデータ送信が可能なり、局監視装置を経済的に活用することができる。
【0013】
本発明の別の具体的態様では、中継局の周辺の気象情報を取得する気象情報取得手段をさらに備え、監視手段が、中継局の周辺の気象情報と、当該中継局に関する監視情報とを関連づけて監視する。この場合、中継局周辺の気象環境を配慮した監視が可能になり、中継局自体の異常と環境の異常とを遠隔的に識別することができ、的確な対処法を迅速に決定することができるようになる。
【0014】
本発明の別の具体的態様では、監視手段が中継局の送信電波の異常又はその予兆を検出した場合に、警報信号を発生する警報装置をさらに備える。この場合、特定の中継局の動作異常を警報信号として管理者に自動的に報知することができ、より迅速な対処が可能になる。
【0015】
本発明の別の具体的態様では、警報装置が、通信ネットワークを介して所定の放送事業者及び保守業者の管理システムに警報信号を送信する。この場合、放送事業者及び保守業者側で異常発生を迅速に知ることができ、中継局の動作異常に対して的確で迅速な対処が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る局監視システムの構成を具体的に説明する図である。この局監視システム10は、地上波デジタル放送用の放送設備100に組み込まれている中継局等について保守・管理を担当する事業者が所有若しくは管理するシステムとして構築されている。
【0017】
局監視システム10は、放送設備100を構成する各中継局20,30(1)〜30(n)に付帯して設置される多数の局監視装置群140と、各局監視装置群140からの情報を収集して一括管理する管理制御センタ50とを備える。後者の管理制御センタ50は、各局監視装置群140からの監視情報と、基幹の放送局60、保守事業者システム70、気象情報提供システム80等の外部システムから得た補助情報等とに基づいて、各中継局20,30(1)〜30(n)の稼動状況を管理し、これらの中継局20,30(1)〜30(n)のいずれかで異常等が生じた場合には、基幹の放送局60、保守事業者システム70等に対して適当な警報通知その他の措置をとる。
【0018】
ここで、監視の対象となる放送設備100は、以上の説明からも明らかなように、基幹の放送局60と、大型中継局20と、多数の小型中継局30(1)〜30(n)とからなる。このうち、基幹放送局60は、送信装置61からの放送信号をパラボラアンテナ62から出力する。一方、大型中継局20は、送受信装置21を備え、基幹放送局60からの放送波すなわち放送電波をアンテナ装置22に設けた特定のアンテナ部分で受けて、このように中継した電波を増幅等するとともに、アンテナ装置22に設けた別のアンテナ部分を介して1又は2以上の小型中継局30(1)〜30(n)に転送する。各小型中継局30(1)〜30(n)は、受信装置及び送信装置からなる送受信装置31と、受信アンテナや送信アンテナからなるアンテナ装置32とを含む中継設備を備えており、大型中継局20や他の中継局30(1)〜30(n)からの放送波すなわち放送電波を受信アンテナや受信装置を介して受けるとともに、中継した電波を送信装置(例えば視聴者のテレビ受像器)や送信アンテナを介して別の中継局30(1)〜30(n)に転送する。
【0019】
なお、基幹の放送局60は、放送事業者が所有するシステムとして、コンピュータを含む管理システム65を有しており、ルータ66を介して通信ネットワークであるインターネットINに接続可能となっている。大型中継局20も、コンピュータを含む管理システム25を有しており、ルータ26を介してインターネットINに接続可能となっている。
【0020】
各小型中継局30(1)〜30(n)や大型中継局20の周辺地域である各監視領域内には、局監視装置群140がそれぞれ配備されており、各局監視装置群140は、中継設備すなわち送受信装置31,21やアンテナ装置32,22等からの放送波の受信状況を各監視領域内の適当な測定点でチェックする局監視装置40(1)〜40(m)で構成される。各局監視装置40(1)〜40(m)は、監視領域内に存在する電柱等の既存の塔状構造物の位置を測定点として、この塔状構造物に取り付けられており、対象とする中継局20,30(1)〜30(n)が送信するデジタル放送信号から画質情報を抽出し、このような画質情報に基づく評価結果を、監視情報として局監視システム10に対し定期的に送信する。
【0021】
ここで、各局監視装置40(1)〜40(m)は、以下に詳細に説明するが、チューナ、監視回路、通信端末装置等を備えるデータ収集端末装置である。つまり、局監視装置40(1)〜40(m)は、パケット通信回線PNを介して管理制御センタ50との間で通信を行うことができるようになっており、この管理制御センタ50と間で情報の交換を行うことができる。
【0022】
管理制御センタ50は、コンピュータ54と、データベース55と、ルータ56とを備える。そして、管理制御センタ50は、パケット通信回線PNを介して各局監視装置群140を構成する局監視装置40(1)〜40(m)から各中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域内の各測定点で受信される放送波の画質情報、評価情報、警告等のいずれかを含む諸情報を定期的に受け取っており、これらの諸情報すなわち監視情報の経時的な推移をデータベース55に蓄積する。この監視情報(パケット通信回線PNを利用した着信情報を含む)には、局監視装置40(1)〜40(m)を特定する識別情報も含まれている。すなわち、各局監視装置40(1)〜40(m)には、ID番号が付されており、管理制御センタ50では、局監視装置40(1)〜40(m)からの監視情報がいずれの測定点からのものであるかを直ちに判断することができるようになっている。つまり、管理制御センタ50は、いずれかの局監視装置40(1)〜40(m)で異常が検出された場合、この局監視装置40(1)〜40(m)がどの中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域に配置されものであるかを特定し、さらに、この監視領域のうちどの測定点で問題が生じているかを特定する。管理制御センタ50は、いずれかの局監視装置40(1)〜40(m)が検出した特定中継局の異常及び対応する測定点若しくはこれを含む配信劣化地域を、例えばメイル形式の警報として、ルータ56及びインターネットINを介して、基幹の放送局60や保守事業者システム70に通知する。また、管理制御センタ50は、いずれかの局監視装置40(1)〜40(m)が検出した特定中継局の異常及び対応する測定点若しくはこれを含む配信劣化地域を、マルチメディアコンテンツの形式でインターネットIN上に提供することもできる。基幹の放送局60や保守事業者システム70は、管理制御センタ50のコンピュータ54にインターネットIN経由で一定制限下でアクセスすることができ、各局監視装置40(1)〜40(m)が検出した各中継局20,30(1)〜30(n)の稼働状況に関する監視情報を、局一覧の形式或いはピックアップされた個別局の形式として縦覧することができる。具体的には、例えば異常な特定中継局を地図上に表示したものや、かかる特定中継局周辺の監視領域を地図上に表示して異常が発生した測定点や配信劣化地域に警告表示を行ったもの等を縦覧することができる。
【0023】
保守事業者システム70は、管理用のコンピュータ74と、通信用のルータ76とを備える。この保守事業者システム70は、ルータ76を介してインターネットINに接続されており、管理制御センタ50や基幹の放送局60との間で通信が可能になっている。具体的に説明すると、保守事業者システム70のコンピュータ74は、管理制御センタ50のコンピュータ54等に対して特別のパスワード等を用いてアクセスすることができる。つまり、保守事業者システム70のコンピュータ74は、管理制御センタ50のコンピュータ54に対してコンテンツ閲覧要求することによって、例えば各中継局20,30(1)〜30(n)の稼働状況に関する監視情報を一覧として或いは個別に取り込むことができる。
【0024】
気象情報提供システム80は、管理用のコンピュータ84と、通信用のルータ86とを備える。気象情報提供システム80は、全国の気象情報を収集する機能を備えており、各中継局20,30(1)〜30(n)やその周辺における気象状況を、刻々と変化する情報としてデータベースに保管している。また、この気象情報提供システム80は、ルータ86を介してインターネットINに接続されており、管理制御センタ50や基幹の放送局60との間で通信が可能になっている。これにより、管理制御センタ50や基幹の放送局60では、各中継局30(1)〜30(n),20やその周辺において刻々と変化する気象状況をほぼリアルタイムで把握することができるようになっている。
【0025】
図2は、各中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域内の各測定点に設置される局監視装置40(1)〜40(m)の構造を概念的に説明するブロック図である。
【0026】
この局監視装置40(1)〜40(m)は、中継局20,30(1)〜30(n)のうち対応する中継局の放送波(放送信号)から画質情報を抽出し、このような画質情報に基づく評価結果を含む監視情報を管理制御センタ50に送信するためのもので、電波を受信する受信アンテナRAと、受信アンテナRAから特定波長帯の電波を検出するチューナ41と、チューナ41で検出した電波からデジタル放送信号を復調する復調用集積回路42と、復調したデジタル放送信号を解析等する制御回路43と、制御回路43の動作を補助するタイマ回路44及びメモリ45と、制御回路43に必要な電力を供給する電力取得装置46及び2次電池47と、電力取得装置46及び2次電池47と制御回路43との間に介在して制御回路43に安定した電圧等を印加する電源制御回路48と、制御回路43で処理された情報をパケット通信用の無線電波に変換する伝送媒体49と、伝送媒体49からの電波を外部に出力する送信アンテナSAとを備える。これらのうち、受信アンテナRA及びチューナ41は、送信電波を検出する受信手段として機能する。また、復調用集積回路42及び制御回路43は、送信電波から画質情報を検出する評価手段として機能する。また、伝送媒体49及び送信アンテナSAは、上述の評価手段による評価結果を所定形式の電気信号として送信する送信手段として機能する。
【0027】
以上の局監視装置40(1)〜40(m)において、受信アンテナRAは、局監視装置40(1)〜40(m)が測定対象とする中継局20,30(1)〜30(n)が送信するデジタル放送電波の周波数に対応する特性を有しており、アンテナ装置22,32から送出される電波を効率よく安定して取り出すことができるようになっている。
【0028】
チューナ41は、受信アンテナRAで取り出された電波のうち、着目する波長帯域の電波のみを選択的に増幅して後段に出力する。なお、制御回路43等からの設定によってチューナ41の帯域を変更できるようにした場合、局監視装置40(1)〜40(m)によって監視すべき波長帯域を状況に応じて適宜切り換えることができる。
【0029】
復調用集積回路42は、チューナ41で抽出された電波からデジタル放送信号を復調する。なお、受信アンテナRA等で取り出される放送電波は、位相変調、周波数変調等が施されたものであり、復調用集積回路42によってこのような変調が逆変換され、画像や音声等の情報を含むデジタル信号が再生される。なお、具体的な実施例では、放送波がISDB−T(integrated service digital broadcasting system for terrestial)方式で送信されており、復調に際しては、本ISDB−T方式に基づく信号処理が実行される。
【0030】
制御回路43は、復調用集積回路42の動作を制御するとともに、復調用集積回路42から出力される信号から必要なデータを抽出することができるようになっている。具体的には、復調用集積回路42による信号再生に際して副産物として得られるC/N(carrier noise)比やBER(bit error rate)値等である画質情報を適宜抽出して、後述するメモリ45に保管することができる。また、制御回路43は、局監視装置40(1)〜40(m)による電波の受信状況を各中継局20,30(1)〜30(n)の稼働状況に関する監視情報として管理制御センタ50に報告するため、メモリ45に保管されたC/N比やBER値を適当なタイミングで伝送媒体49に出力する。
【0031】
なお、制御回路43から伝送媒体49に出力される稼働状況に関する監視情報には、C/N比やBER値に限らず、これらに基づいて加工・生成した情報とすることができる。すなわち、制御回路43は、例えばC/N比やBER値に基づいて局監視装置40(1)〜40(m)で検出した受信電波が正常であるか異常であるかを判定することができ、このような判定結果を監視情報とすることもできる。さらに、稼働状況に関する監視情報には、局監視装置40(1)〜40(m)で検出した受信電波のパワー等を含む補助的或いは付随的なデータも含めることができる。また、制御回路43から伝送媒体49に出力される稼働状況に関する監視情報には、この局監視装置40(1)〜40(m)が属する局監視装置群140が設置される中継局20,30(1)〜30(n)及びその測定点を特定するID情報等を含めることができる。この場合、監視情報がどの中継局20,30(1)〜30(n)に関するものかを明確にリンク付けすることができる。
【0032】
タイマ回路44は、制御回路43に対してその動作に必要なクロック信号を出力するものであり、制御回路43から伝送媒体49に信号を出力するタイミングが適宜設定される。このような信号出力のタイミングは、各局監視装置40(1)〜40(m)で固有のものとされており、混信等の弊害を回避することができるようになっている。メモリ45は、SRAM等からなり、制御回路43で処理された情報や制御回路43での処理に必要な情報を保管する。このメモリ45には、既述のように例えばC/N比やBER値等が一時的に保管される。
【0033】
電力取得装置46は、主に制御回路43に電源を供給するためのものであり、局監視装置40(1)〜40(m)が取り付けられる電柱の送配電線の電力を一部流用する電源装置である、送配電線からの誘導電流を検出する電流センサを内蔵する。監視装置40(1)〜40(m)が電柱に取り付けられない場合、或いは、送配電線の電力を購入することが出来ない場合、この電力取得装置46を太陽電池に置き換えることができる。2次電池47は、電力取得装置46を補助するための補助電源すなわちバッテリであり、電力取得装置46が発電している場合には徐々に充電され、電力取得装置46の出力が停止した場合には、電力取得装置46に代わって電源制御回路48に電力を供給することができるようになっている。
【0034】
電源制御回路48は、電圧安定回路等を含んでおり、制御回路43に安定した電圧等を供給する。なお、電源制御回路48からは、チューナ41、復調用集積回路42、伝送媒体49等に対しても、安定した電圧等を供給することができるようになっている。
【0035】
伝送媒体49は、パケット通信を可能にするパケット通信回線PNに接続可能な通信端末装置であり、例えばDoPa端末、携帯電話等に相当する通信機能を備えた送受信回路を備える。この伝送媒体49は、制御回路43から出力される監視情報、具体的には、C/N比、BER値、判定結果等の他に、受信電波のパワー等を含む補助的データ、中継局20,30(1)〜30(n)及びその測定点を特定するID情報等を、送信アンテナSAを介して外部すなわちパケット通信回線PNに送信する。
【0036】
図2の局監視装置40(1)〜30(m)の動作について説明すると、制御回路43は、復調用集積回路42の出力に基づいて、C/N比やBER値を監視して、C/N比やBER値が異常を示しているか否かを常時監視する。例えばC/N比やBER値が継続的に異常値を示す場合、つまりキャリアに比較してノイズが所定の限界(具体的には、実験やデータの蓄積によって適正化された値)を超えて大きい場合や、デジタル信号中の誤率が所定の限界(具体的には、実験やデータの蓄積によって適正化された値)を超えて大きい場合は、正常な放送が出来なくなっているか、その予兆が発生しているものと判定して、異常信号を発生し、C/N比やBER値が異常値を示していない場合、正常な放送が出来ていると判定する。このようなC/N比やBER値、判定結果等は、稼働状況に関する評価結果として、制御回路43から伝送媒体49に出力され、パケット通信回線PNを介して管理制御センタ50に送信される。管理制御センタ50では、各局監視装置40(1)〜40(m)の検出した評価結果に基づいて、各中継局20,30(1)〜30(n)の個別の稼働状況をリアルタイムで把握することができる。
【0037】
図3は、図1及び図2に示す局監視装置の配置例を説明する模式図である。ここで、図3(a)は、図1に示す大型中継局20の監視領域内に配置される局監視装置群140の配置例を示し、図3(b)は、特定の小型中継局30(k)の監視領域内に配置される局監視装置群の配置例を示す。
【0038】
図3(a)に示す大型中継局20の場合、大型中継局20から次の小型中継局30(1)に向けての経路上に適当な間隔で例えば4つの局監視装置40(1)〜40(4)が設置されている。このように、中継波の方向に局監視装置40(1)〜40(4)を設置することで、小型中継局30(1)に対する放送波の到達状況を監視することができる。なお、図面では、大型中継局20から次の小型中継局30(1)にかけて延びる線上に局監視装置40(1)〜40(4)を設置しているが、局監視装置40(1)〜40(4)は、このような線上に配置する必要はない。つまり、大型中継局20から次の小型中継局かけての地形や大型中継局20の送信方向(複数の場合を含む)に応じて、局監視装置の配置を適宜変更することができる。
【0039】
図3(b)に示す小型中継局30(k)の場合、小型中継局30(k)の周囲の3方位において2段階の半径位置に局監視装置40(1)〜40(6)が設置されている。このように、小型中継局30(k)の周囲に多数の局監視装置40(1)〜40(6)を設置することで、小型中継局30(k)の周辺のデジタル地上波用のテレビ受像機に対する放送波の到達状況を2次元的に監視することができる。例えば、一対の局監視装置40(1),40(4)の双方或いは一方のみで放送波の異常が検出された場合、小型中継局30(k)の送信アンテナ32a〜32cのうち送信アンテナ32aやこれへの給電装置の動作状態に異変が生じていることが想像される。また、局監視装置40(2),40(5)の双方或いは一方のみで放送波の異常が検出された場合、小型中継局30(k)の送信アンテナ32bやこれへの給電装置の動作状態に異変が生じていることが想像される。さらに、局監視装置40(3),40(6)の双方或いは一方のみで放送波の異常が検出された場合、小型中継局30(k)の送信アンテナ32cやこれへの給電装置の動作状態に異変が生じていることが想像される。なお、図3(b)に示す局監視装置40(1)〜40(6)は単なる例示であり、局監視装置の個数や間隔を適宜変更して小型中継局30(k)の稼動状況の監視に適したものとすることができる。
【0040】
図4は、管理制御センタ50のシステムを説明するブロック図である。このシステムは、コンピュータ54と、データベース55と、ルータ56とを備える。
【0041】
ここで、ルータ56は、監視情報を取得するための通信手段として機能し、インターネットINやパケット通信回線PNに接続されている。これにより、コンピュータ54は、前者のパケット通信回線PNを介して局監視装置40(1)〜40(m)との間で通信が可能になっている。また、コンピュータ54は、後者のインターネットINを介して基幹放送局60、保守事業者システム70、気象情報提供システム80等との間で通信が可能になっている。
【0042】
コンピュータ54は、一般的なコンピュータと同様に、CPU54a、入力装置54b、ディスプレイ54c、出力装置54d、記憶装置54f等を備えている。このうち、CPU54aは、入力装置54b、ディスプレイ54c、出力装置54d、及び記憶装置54fとの間で相互にデータの授受が可能になっている。また、CPU54aは、入力装置54b等からの指示に基づいて、記憶装置54f等から所定のプログラムやデータを読み出し、これらプログラム及びデータに基づく各種処理を実行する。
【0043】
具体的に説明すると、コンピュータ54は、監視手段として、各中継局20,30(1)〜30(n)ごとに設けた局監視装置群140によって検出された評価結果を受信して、各中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域内の各測定点における放送波の送信状況をリアルタイムで把握することができる。この際、評価結果に含まれるC/N比やBER値は、データベース55に各中継局20,30(1)〜30(n)ごとの経時的な監視情報として逐次蓄えられる。このような経時的情報は、各中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域内における放送波の送信状況の分布の推移を示すものとして、受信障害の発生を迅速に検知する上で役立つ。また、データベース55に保管される経時的情報は、C/N比やBER値がある値を境として悪化して受信障害を生じさせたような事例を蓄積したものとすることができ、デジタル地上波放送における受信障害を事前に検知する上で極めて役立つ。また、局監視装置群140を構成する局監視装置40(1)〜40(m)によって検出される評価結果には、C/N比やBER値に基づいて受信電波が正常であるか異常であるかを判定した判定結果を含めることができ、この場合、中継局20,30(1)〜30(n)のの監視領域内における異常事態発生をリアルタイムで直接的に把握することができる。なお、データベース55に蓄積される評価結果に含まれるC/N比やBER値は、デジタル放送における画質との関連性が極めて高いものであり、従来のように放送電波の入力レベルを検出するような監視方法に比較して、極めて信頼度の高いものとなる。
【0044】
また、コンピュータ54は、気象情報提供システム80から得た気象情報(例えば、雨、雷、霧等の気象条件)を、C/N比やBER値等の評価結果とともにデータベース55に蓄える。雨、雷、霧等の気象条件に伴って、C/N比やBER値等が断続的に劣化した場合、このような受信障害は一時的なものであるから、対応する中継局20,30(1)〜30(n)の設備に対する修理等の措置は、緊急性があるものではないと判断することができる。なおこの場合、コンピュータ54、ルータ56等は気象情報取得手段として機能する。
【0045】
また、コンピュータ54は、局監視装置群140を構成する各局監視装置40(1)〜40(m)によって検出された評価結果として、特定中継局20,30(1)〜30(n)のC/N比やBER値の悪化を検出した場合、送信電波の異常又はその予兆を知らせる警報信号を発生する警報装置として機能する。この場合、コンピュータ54は、ルータ56及びインターネットINを介して基幹放送局60及び保守事業者システム70に、異常な中継局20,30(1)〜30(n)やその測定点を特定して異常を知らせる警報を通知する。このような警報は、メイル形式とすることができるが、基幹放送局60の管理システム65のコンピュータや、保守事業者システム70のコンピュータ75を遠隔的に制御して、それらのディスプレイに警告画面を表示させることもできる。この場合、局監視装置40(1)〜40(m)によって検出された異常の内容(例えば、特定中継局20,30(1)〜30(n)の監視領域のうち配信が劣化した測定点(配信劣化地域)を特定する情報、C/N比やBER値の悪化の程度等)まで表示させることもできる。
【0046】
入力装置54bは、キーボード、マウス等から構成され、ディスプレイ54cを利用した操作により、このコンピュータ54を操作するオペレータすなわち管理制御センタ50の管理者の意思を反映した指令信号をCPU54aに出力する。
【0047】
ディスプレイ54cは、詳細な説明を省略するが、CRT、或いはLCD等により構成され、CPU54aから入力される駆動信号に基づいて必要な表示を行う。
【0048】
出力装置54dは、プリンタ等からなり、CPU54aから入力されるデータに基づいて用紙に必要なデータ等を印字する出力を行う。
【0049】
記憶装置54fは、コンピュータ54を動作させる基本プログラム等を記憶しているROMと、アプリケーションプログラム、入力指示、入力データ、及び処理結果等を一時格納するRAM等とからなるメモリを備える。
【0050】
データベース55は、大容量の記憶媒体及びそのドライブ装置からなる記憶装置若しくはこれに記録されたテーブル状の情報であり、C/N比やBER値等の評価結果を含む監視情報を各中継局20,30(1)〜30(n)すなわち局監視装置群140が対象とする監視領域に関連づけて、これらの監視情報を各局監視装置40(1)〜40(m)に対応する測定点単位で蓄積する記憶手段として機能する。つまり、C/N比やBER値等の監視情報が、各中継局20,30(1)〜30(n)ごとに、監視領域内の測定点単位で、一定の時間間隔で保管され、統計処理等の管理がなされる。
【0051】
図4等に示すシステムによれば、各中継局20,30(1)〜30(n)からのの放送波の伝播状態に関する稼動状況や異常事態発生を管理制御センタ50から遠隔的に常時監視することができ、放送設備100の運用に支障が生じた場合にも、迅速かつ的確な対処が可能になる。また、各中継局20,30(1)〜30(n)からの放送波の送信状態の異常等の稼働状況の履歴を、局監視装置40(1)〜40(m)によって検出されるC/N比やBER値等に関連づけて蓄積することができるので、過去の経験を蓄積した迅速な対応や事前予知が比較的高い精度で可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る局監視システムを組み込んだ放送設備等の構成を説明する図である。
【図2】各中継局に設置される局監視装置の構造を説明するブロック図である。
【図3】(a)は、図1に示す大型中継局の局監視装置群の配置例を示し、(b)は、特定の小型中継局の局監視装置群の配置例を示す。
【図4】管理制御センタのシステムを説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
10…局監視システム、 20…大型中継局、 21…送受信装置、 22…アンテナ装置、 30…小型中継局、 31…送受信装置、 32…アンテナ装置、 40(1)〜40(m)…局監視装置、 41…チューナ、 42…復調用集積回路、 43…制御回路、 44…タイマ回路、 45…メモリ、 46…太陽電池、 47…2次電池、 48…電源制御回路、 49…伝送媒体、 50…管理制御センタ、 54…コンピュータ、 55…データベース、 56…ルータ、 60…基幹放送局、 61…送信装置、 62…パラボラアンテナ、 65…管理システム、 66…ルータ、 70…保守事業者システム、 80…気象情報提供システム、 100…放送設備、 140…局監視装置群、 IN…インターネット、 PN…パケット通信回線、 RA…受信アンテナ、 SA…送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送用の中継局の周辺に設定された所定監視領域内に設置されて当該中継局から送出される送信電波を検出する受信手段と、前記受信手段で検出した送信電波から画質情報を検出する評価手段と、前記評価手段による評価結果を所定形式の電気信号として送信する送信手段とをそれぞれ備える複数の局監視装置と、
前記複数の局監視装置からの前記評価結果を含む監視情報を、所定の通信回線を介して取得する通信手段と、
前記通信手段によって取得した前記複数の局監視装置からの前記監視情報を、前記中継局の稼動状況として監視する監視手段と
を備える局監視システム。
【請求項2】
前記監視手段は、前記中継局に関連づけて蓄積された前記画質情報に基づいて、前記所定監視領域内における配信劣化地域を特定することをことを特徴とする請求項1記載の局監視システム。
【請求項3】
複数のデジタル放送用の中継局のそれぞれに対して前記複数の局監視装置が設けられていることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項4】
前記複数の局監視装置は、電柱に設置されて、電柱の電線からの誘導電流を電源として利用して動作することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項5】
前記画質情報は、前記受信手段が検出した送信電波のキャリア対ノイズ比とビット・エラー・レイトとの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項6】
前記送信手段は、パケット通信回線を利用する通信端末装置を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項7】
前記中継局の周辺の気象情報を取得する気象情報取得手段をさらに備え、前記監視手段は、前記中継局の周辺の気象情報と、当該中継局に関する前記監視情報とを関連づけて監視することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項8】
前記監視手段が前記中継局の送信電波の異常又はその予兆を検出した場合に、警報信号を発生する警報装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載の局監視システム。
【請求項9】
前記警報装置は、通信ネットワークを介して所定の放送事業者及び保守業者の管理システムに警報信号を送信することを特徴とする請求項8記載の局監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−246082(P2006−246082A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59685(P2005−59685)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591164613)株式会社エヌエイチケイアイテック (39)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(502003390)株式会社ウイル (9)
【Fターム(参考)】