説明

屈曲型送波器およびそのシェル

【課題】 カバーによるシェルの屈曲振動の拘束を能動的に排除して、より高い効率の音響放射を可能にする屈曲型送波器およびそのシェルを提供する。
【解決手段】 中空楕円形状の断面を有するシェル100と、このシェル内にて楕円長軸方向に積層された複数個の板状アクティブ振動体から成り、上記シェルの互いに対向する端部に接続されたアクティブ柱状体200と、上記シェルの開放端を閉塞するように取り付けられたカバー300と、を備えた屈曲型送波器10であって、上記カバー300が、上記シェルの開放端に沿って並んで配置された複数個のアクティブ振動体パッキン410から成るアクティブ円環パッキン400を介して、上記シェル100の開放端に接合されるように、屈曲型送波器10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に音波を放射する電気音響変換器に関し、特に振動体の屈曲振動により水中に音波を放射する屈曲型送波器およびそのシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈曲型送波器は、例えば圧電磁器から成るアクティブ振動体から構成されており、圧電磁器の振動振幅をより拡大して、円板状の振動体から低周波で高出力の音波を放射するようになっている。
【0003】
このような屈曲型送波器は、例えば図10および図11に示すように構成されている。
図10において、屈曲型送波器900は、断面が中空楕円状のシェル910と、このシェル910内に配置されたアクティブ柱状体920と、上記シェルの開放した両端を閉塞する一対のカバー930と、を設けてある。
【0004】
上記シェル910は、図11に示すように、楕円状の横断面を備えるように、筒状に形成されており、その上下両端が開放している。
ここで、上記シェル910は、例えばアルミニウム合金から構成されており、後述するアクティブ柱状体920の伸縮により屈曲振動を生ずるようになっている。
【0005】
上記アクティブ柱状体920は、図12に示すように、その断面における楕円の長軸方向に並んで積層された複数の板状アクティブ振動体921から構成されており、その長手方向の両端部が積層板922により挟持されていると共に、全体として積層方向に貫通する通しボルト923により締付られ、固定保持されている。
【0006】
上記板状アクティブ振動体921は、外部の駆動制御部(図示せず)から励振信号が入力されたとき、厚さ方向(上記積層方向)に振動する。これにより、アクティブ柱状体920は、その全長が伸縮するようになっている。
【0007】
さらに、上記積層板922は、それぞれ上記シェル910の長軸方向の端部付近に設けられた接続部911に対して接着等により固定されている。
【0008】
上記カバー930は、図10に示すように、上記シェル910の開放端の形状、すなわち楕円形状に対応した楕円形状を備えており、上記シェル910の開放端の周縁に対して、例えばコルク等の連結部材931を介して、接着剤等により接合されている。
【0009】
このように構成された屈曲型送波器900は、以下のように動作する。
外部の図示しない駆動制御部から励振信号がアクティブ柱状体920に入力されると、このアクティブ柱状体920を構成する各板状アクティブ振動体921が厚さ方向に振動することにより、上記アクティブ柱状体920の全長が伸縮する。
この伸縮運動が、接続部911を介して上記シェル910に伝達されることにより、上記シェル910は、長軸方向に関して伸縮することになる。
例えば、上記アクティブ柱状体920の伸長により、上記シェル910は、図13に示すように、長軸方向に関して伸長する。
【0010】
このような上記シェル910の長軸方向に関する伸縮運動により、上記シェル910の屈曲振動が励起されることになり、その際、上記シェル910の短軸方向の対向領域は、上記シェル910の長軸方向の対向領域に対して逆相の伸縮運動を生ずる。
このため、図13に示すように、上記シェル910は、上記長軸方向の対向領域と短軸方向の対向領域の境界付近に、振動の節点912を備えている。
【0011】
そして、上記シェル910の短軸方向の対向領域における伸縮運動は、上記シェル910の長軸方向の対向領域における伸縮運動に対して、より大きな振幅を有することになる。
したがって、上記シェル910の屈曲振動によって、例えば水中にて上記短軸方向に関してより大きなレベルの音響放射を行なうことができると共に、比較的小型で軽量の構成によって、低周波数の音響放射を行なうことができる。
【0012】
ところで、このような構成の屈曲型送波器900においては、上記シェル910の開放端が、上記カバー930に対して連結部材931を介して固定されている。
これにより、図14に示すように、上記シェル910は、その開放端付近の領域において、連結部材931およびカバー930により拘束されることになり、前述した屈曲振動を行なうことができない。
【0013】
したがって、上記シェル910は、部分的にのみ屈曲振動を行なうことになる。
このため、図15のグラフに示すように、上記シェル910の屈曲振動による音響放射の効率aが低下してしまい、高い音圧レベルの音響放射を行なうためには、シェル910そして送波器900全体を大型化する必要があり、コストが高くなってしまう。
【0014】
これに対して、特許文献1においては、効率の良い音響放射を可能とする小型軽量な電気音響変換器(送波器)が開示されている。
この送波器においては、カバーが、シェルの開放端に対して、屈曲振動の節点付近でのみと接合される。
また、シェルの開放端の接合部以外の領域においては、シェルの屈曲振動を可能にするように、シェルの開放端とカバーとの対向領域が相対的に移動可能であると共に、例えば軟質の合成樹脂等から成る防水手段が設けられている。
【0015】
【特許文献1】特開平11−341597号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、上述した特許文献1による送波器においては、シェルの屈曲振動を妨げないように、カバーがシェルの開放端に対して、屈曲振動の節点付近でのみ接合されており、他の領域は、シェルの屈曲振動を可能にするように、移動可能に構成されている。
この場合、シェル開放端に対するカバーの防水性が低下することになり、例えば深海での使用が制限されることになる。
また、防水手段が設けられている場合には、防水性は確保され得るが、前述した送波器900における連結手段931の場合と同様に、シェルの屈曲振動が防水手段を介してカバーにより抑制されることになってしまう。
【0017】
このようにして、前述した中空楕円形状の断面を有するシェルを使用した屈曲型送波器においては、シェルの屈曲振動が、シェル内部を密封して防水性を確保するためのカバーにより抑制されることになってしまう。
これに対して、上記防水手段として、より軟質の合成樹脂等を使用することにより、シェルの屈曲振動のカバーによる抑制をできるだけ小さくすることは可能である。
しかしながら、このような対策は、受動的であり、その効果はあまり期待できるものではない。
【0018】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、カバーによるシェルの屈曲振動の拘束を能動的に排除して、より高い効率の音響放射を可能にする屈曲型送波器およびそのシェルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するため、本発明の屈曲型送波器は、中空楕円形状の断面を有するシェルと、このシェル内にて楕円長軸方向に積層された複数個の板状アクティブ振動体から成り、上記シェルの互いに対向する端部に接続されたアクティブ柱状体と、上記シェルの開放端を閉塞するように取り付けられたカバーと、を備えた屈曲型送波器であって、上記カバーが、上記シェルの開放端に沿って並んで配置された複数個のアクティブ振動体パッキンから成るアクティブ円環パッキンを介して、上記シェルの開放端に接合された構成としてある。
【0020】
屈曲型送波器をこのような構成とすると、アクティブ柱状体が駆動制御されて、シェルの楕円長軸方向に伸縮することにより、シェルが屈曲振動したとき、このアクティブ柱状体の伸縮に同期して、上記アクティブ円環パッキンが駆動制御されることによって、アクティブ円環パッキンを構成する各アクティブ振動体パッキンが、それぞれ能動的に滑り振動を発生して、対応するシェルの開放端の振動に追従することになる。これにより、シェルの開放端は、アクティブ円環パッキンを介して接合されたカバーに拘束されることなく屈曲振動することが可能になる。
【0021】
これにより、上記カバーがシェルの屈曲振動から分離されることになるので、上記シェルは、双方の開放端の間で、全体として一様に屈曲振動することになり、従来のカバーにより拘束された状態と比較して、音響放射の効率が向上する。
したがって、同じ大きさの送波器によって、より高いレベルの音響放射を行なうことができると共に、同じレベルの音響放射を得るためには、送波器が小型に構成され得ることになる。
【0022】
また、本発明の屈曲型送波器は、上記アクティブ円環パッキンを構成する各板状アクティブ振動体が、上記シェルの屈曲振動に対応して、上記シェルの開放端の対応する部分の移動に追従するように駆動制御される構成としてある。
屈曲型送波器をこのような構成とすると、アクティブ円環パッキン全体が、上記シェルの開放端の屈曲振動に対応して移動することにより、上記シェルの開放端における屈曲振動が、アクティブ円環パッキンそしてカバーにより拘束されることはない。
【0023】
また、本発明の屈曲型送波器は、上記アクティブ円環パッキンを構成する各板状アクティブ振動体が、滑り振動を利用した複数の薄板状アクティブ振動体を積層することにより構成されている。
屈曲型送波器をこのような構成とすると、各薄板状アクティブ振動体の滑り振動により、上記シェルの開放端の屈曲振動に対して容易に、そして正確に対応することができる。
【0024】
また、本発明の屈曲型送波器は、各板状アクティブ振動体が、上記シェルの開放端における屈曲振動の節点の両側にて互いに逆相で駆動制御される構成としてある。
屈曲型送波器をこのような構成とすると、上記シェルの開放端の節点間の領域が、それぞれ上記シェルの開放端における屈曲振動に対して正確に追従することができる。
【0025】
また、本発明の屈曲型送波器は、各板状アクティブ振動体が、対応するシェル開放端の屈曲振動による移動量に対応して、その薄板状アクティブ振動体の積層数が調整される構成としてある。
屈曲型送波器をこのような構成とすると、上記各節点付近では、板状アクティブ振動体の滑り移動量を小さく、また各節点の間の中間付近では、板状アクティブ振動体の滑り移動量を大きくすることができるので、上記シェルの開放端における屈曲振動に対して正確に追従することができる。
【0026】
また、上記目的を達成するため、本発明の屈曲型送波器のシェルは、中空楕円形状の断面を有し、内部に楕円長軸方向に積層された複数個の板状アクティブ振動体から成るアクティブ柱状体が配置されると共に、その開放端を閉塞するようにカバーが取り付けられる屈曲型送波器のシェルであって、上記カバーが、上記シェルの開放端に沿って並んで配置された複数個のアクティブ振動体パッキンから成るアクティブ円環パッキンを介して、上記シェルの開放端に接合されている構成としてある。
また、本発明の屈曲型送波器のシェルは、上記アクティブ円環パッキンが、上記シェルの屈曲振動に対応して、上記シェルの開放端の移動に追従するように駆動制御される構成としてある。
本発明は、このように屈曲型送波器のシェルとしても実現化することができる。
【発明の効果】
【0027】
このようにして、本発明によれば、アクティブ柱状体の駆動によりシェルが屈曲振動したとき、このアクティブ柱状体の伸縮に同期して、上記アクティブ円環パッキンが駆動制御されることによって、アクティブ円環パッキンを構成する各アクティブ振動体パッキンが、それぞれ能動的に対応するシェルの開放端の振動に追従するので、シェルの開放端は、アクティブ円環パッキンを介して接合されたカバーに拘束されることなく屈曲振動することが可能になる。
【0028】
したがって、上記シェルは、全体として一様に屈曲振動し、音響放射の効率が向上するので、同じ大きさの送波器によって、より高いレベルの音響放射を行なうことができる。
逆に、同じレベルの音響放射を得るためには、送波器がより小型に構成され得ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の屈曲型送波器の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1において、屈曲型送波器10は、断面が中空楕円状のシェル100と、このシェル100内に配置されたアクティブ柱状体200と、上記シェル100の開放した両端を閉塞する一対のカバー300と、を設けてある。
【0030】
上記シェル100は、図2の平面図に示すように、楕円状の横断面を備えるように、筒状に形成されており、その上下両端が開放している。
ここで、上記シェル100は、例えばアルミニウム合金から構成されており、後述するアクティブ柱状体200の伸縮により屈曲振動を生ずるようになっている。この屈曲振動は、上述した楕円の長軸方向および短軸方向に関して互いに逆相で発生し、その際四つの節点Pを備えるようになっている。
さらに、上記シェル100は、例えば設定規格化周波数をf,音速をc,λ=c/fとしたとき、その楕円の長さL=0.25λ,幅W=0.13λに設定されている。
【0031】
上記アクティブ柱状体200は、図3に示すように、その断面における楕円の長軸方向に並んで積層された複数の板状アクティブ振動体210から構成されており、その長手方向の両端部が例えばステンレス鋼製の積層板220により挟持されていると共に、全体として積層方向に貫通する例えばステンレス鋼製の通しボルト230により締付られ、固定保持されている。
【0032】
上記板状アクティブ振動体210は、例えばジルコン酸チタン酸鉛系圧電磁気素子であって、外部の駆動制御部(図示せず)からケーブル240を介して励振信号が入力されたとき、厚さ方向(上記積層方向)に振動する。これにより、アクティブ柱状体200は、その全長が伸縮するようになっている。
【0033】
さらに、上記積層板220は、それぞれ上記シェル100の長軸方向の端部付近に設けられた接続部110に対して接着等により固定されている。
【0034】
上記カバー300は、例えばアルミニウム合金から構成されており、図1に示すように、上記シェル100の開放端の形状、すなわち楕円形状に対応した楕円形状を備えており、上記シェル100の開放端の周縁に対して、アクティブ円環パッキン400を介して、接着剤等により接合されている。
【0035】
上記アクティブ円環パッキン400は、図4に示すように、上記シェル100の開放端の端面に沿って楕円環状に並んで配置された複数個(図示の場合、40個)のアクティブ振動体パッキン410から構成されており、各アクティブ振動体パッキン410は、それぞれシェル100の開放端の端面およびカバー300の周縁内側に対して、例えばエポキシ系接着剤により固定されている。
【0036】
個々のアクティブ振動体パッキン410は、例えばジルコン酸チタン酸鉛系圧電磁気素子であって、図5(A)に示すように、それぞれシェル100の開放端の端面に対して垂直な方向に関して積層された所定数(例えば一層から十層、図5の場合、三層)の薄板状アクティブ振動体420から構成されており、両端(図示の場合、上端および下端)に対して駆動電圧が印加されることにより、図5(B)に示すように、横方向に滑り振動dを生ずるようになっている。
【0037】
ここで、各薄板状アクティブ振動体420の滑り振動の移動量dは、印加される駆動電圧により一義的に決まっているので、上記アクティブ振動体パッキン410の滑り振動量は、薄板状アクティブ振動体420の積層数に比例する。
したがって、各アクティブ振動体パッキン410は、配置される上記シェル100の開放端の端面の位置に対応して、この位置における上記シェル100の屈曲振動による振動量と実質的に一致するように、その薄板状アクティブ振動体420の積層数が選定される。
【0038】
その際、各アクティブ振動体パッキン410は、図4における上記シェル100の開放端の端面における屈曲振動の四つの節点Pを挟んで、互いに極性が反転するように配置される。
すなわち、上記各アクティブ振動体パッキン410は、図4に示すように、各節点Pの間の領域のうち、互いに長軸方向に対向する二つの領域αと、互いに短軸方向に対向する二つの領域βに関して、領域αに配置される各アクティブ振動体パッキン410が互いに並列接続されると共に、領域βに配置されるアクティブ振動体パッキン410が互いに並列接続される。
【0039】
さらに、図6に示すように、領域αに配置されるアクティブ振動体パッキン410aと領域βに配置されるアクティブ振動体パッキン410bとが、互いに正負逆接続され、ケーブル430を介して外部の駆動制御部(図示せず)に接続されるようになっている。
これにより、上記各節点Pの両側に位置するアクティブ振動体パッキン410aおよび410bが互いに逆相で、さらに前述したアクティブ柱状体の駆動制御と同期して、駆動制御されることになる。
【0040】
次に、本実施形態の屈曲型送波器10の動作について、説明する。
外部の駆動制御部(図示せず)から励振信号がアクティブ柱状体200に入力されると、この励振信号が、上記アクティブ柱状体200を構成する各板状アクティブ振動体210に印加される。したがって、各板状アクティブ振動体210が厚さ方向に振動することにより、上記アクティブ柱状体200の全長が伸縮する。
【0041】
この伸縮運動が、接続部110を介して上記シェル100に伝達されることにより、上記シェル100は、長軸方向に関して伸縮することになる。
例えば、上記アクティブ柱状体200の伸長により、上記シェル100は、図7に示すように、長軸方向に関して伸長する。
【0042】
このような上記シェル100の長軸方向に関する伸縮運動により、上記シェル100の屈曲振動が励起されることになり、その際、上記シェル100の各節点Pより長軸方向の対向領域が外側(または内側)に向かって振動すると共に、各節点Pより短軸方向の対向領域が内側(または外側)に向かって振動する。そして、短軸方向の対向領域は、上記シェル100の長軸方向の対向領域に対して逆相の伸縮運動を生ずることになる。
したがって、上記シェル100の屈曲振動によって、例えば水中にて上記短軸方向に関してより大きなレベルの音響放射を行なうことができると共に、比較的小型で軽量の構成によって、低周波数の音響放射を行なうことができる。
【0043】
ここで、上記シェル100は、カバー300の周縁に対して、アクティブ円環パッキン400を介して接合されている。
そして、このアクティブ円環パッキン400は、これを構成する各アクティブ振動体パッキン410がそれぞれ対応する上記シェル100の開放端の屈曲振動による振動量に対応して、同期して駆動制御されることにより、同じ振動量だけ滑り振動するようになっている。
したがって、上記アクティブ円環パッキン400が、対応する上記シェル100の開放端の屈曲振動に追従して能動的に滑り振動を生ずることによって、上記カバーが上記シェル100の屈曲振動から分離されることになるので、上記シェル100は、屈曲振動の際にアクティブ円環パッキン400により応力を受けて拘束されるようなことがない。
【0044】
このため、上記シェル100は、屈曲振動の際に、その上端から下端までの全体がほぼ一様に屈曲振動し得る。これにより、上記シェル100の屈曲振動による外側の媒質の排除体積が増加することになる。したがって、図9にて点線bで示すように、上記シェル100によって、音響放射が行なわれることになり、そのレベルは、図10に示した屈曲型送波器900における音響放射aと比較して、高いレベルとなり、効率良く音響放射が行なわれ得ることになる。
また、周波数特性に関しても、図9のグラフから分かるように、より広い周波数帯域で所定レベル以上の音響放射を行なうことが可能である。
【0045】
以上、本発明の屈曲型送波器について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかる屈曲型送波器は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、アクティブ円環パッキン400を構成する各アクティブ振動体パッキン410は、その薄板状アクティブ振動体420の積層数を調整することにより、それぞれ対応するシェル100の開放端の屈曲振動による移動量に対応する滑り振動量を実現するようになっているが、これに限らず、例えば印加される駆動電圧に比例して滑り振動量が決まるアクティブ振動体を使用することにより、各アクティブ振動体パッキン410に印加する駆動電圧を制御するようにしてもよく、また適宜の手段により滑り振動量を制御できるような構成の他の種類のアクティブ振動体を使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、屈曲型送波器、例えば電気音響変換器,水中音響変換器等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による屈曲型送波器の一実施形態の構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1の屈曲型送波器における内部構成を示すカバーを除いた平面図である。
【図3】図1の屈曲型送波器におけるアクティブ柱状体の構成例を示す概略斜視図である。
【図4】図1の屈曲型送波器におけるアクティブ円環パッキンの構成を示す平面図である。
【図5】図4のアクティブ円環パッキンを構成する個々のアクティブ振動体パッキンの(A)非動作時および(B)動作時を示す拡大側面図である。
【図6】図4のアクティブ円環パッキンを構成する個々のアクティブ振動体パッキンの接続状態を示す回路図である。
【図7】図1の屈曲型送波器におけるシェルの屈曲振動を示す概略平面図である。
【図8】図1の屈曲型送波器におけるシェルの屈曲振動を示す短軸方向の概略断面図である。
【図9】図1の屈曲型送波器および従来の屈曲型送波器による音響放射の周波数特性を示すグラフである。
【図10】従来の屈曲型送波器の一例の構成を示す一部破断斜視図である。
【図11】図10の屈曲型送波器における内部構成を示すカバーを除いた平面図である。
【図12】図10の屈曲型送波器におけるアクティブ柱状体の構成例を示す概略斜視図である。
【図13】図10の屈曲型送波器におけるシェルの屈曲振動を示す概略平面図である。
【図14】図10の屈曲型送波器におけるシェルの屈曲振動を示す短軸方向の概略断面図である。
【図15】図10の屈曲型送波器および従来の屈曲型送波器による音響放射の周波数特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
10 屈曲型送波器
100 シェル
110 接続部
200 アクティブ柱状体
210 板状アクティブ振動体
220 積層板
230 通しボルト
240 ケーブル
300 カバー
400 アクティブ円環パッキン
410 アクティブ振動体パッキン
420 薄板状アクティブ振動体
430 ケーブル
P 節点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空楕円形状の断面を有するシェルと、このシェル内にて楕円長軸方向に積層された複数個の板状アクティブ振動体から成り、上記シェルの互いに対向する端部に接続されたアクティブ柱状体と、上記シェルの開放端を閉塞するように取り付けられたカバーと、を備えた屈曲型送波器であって、
上記カバーが、上記シェルの開放端に沿って並んで配置された複数個のアクティブ振動体パッキンから成るアクティブ円環パッキンを介して、上記シェルの開放端に接合されていることを特徴とする屈曲型送波器。
【請求項2】
上記アクティブ円環パッキンを構成する各板状アクティブ振動体が、上記シェルの屈曲振動に対応して、上記シェルの開放端の対応する部分の移動に追従するように駆動制御されることを特徴とする請求項1に記載の屈曲型送波器。
【請求項3】
上記アクティブ円環パッキンを構成する各板状アクティブ振動体が、滑り振動を利用した複数の薄板状アクティブ振動体を積層することにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の屈曲型送波器。
【請求項4】
各板状アクティブ振動体が、上記シェルの開放端における屈曲振動の節点の両側にて、互いに逆相で駆動制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の屈曲型送波器。
【請求項5】
各板状アクティブ振動体が、対応するシェル開放端の屈曲振動による移動量に対応して、その薄板状アクティブ振動体の積層数が調整されていることを特徴とする請求項3または4に記載の屈曲型送波器。
【請求項6】
中空楕円形状の断面を有し、内部に楕円長軸方向に積層された複数個の板状アクティブ振動体から成るアクティブ柱状体が配置されると共に、その開放端を閉塞するようにカバーが取り付けられる屈曲型送波器のシェルであって、
上記カバーが、上記シェルの開放端に沿って並んで配置された複数個のアクティブ振動体パッキンから成るアクティブ円環パッキンを介して、上記シェルの開放端に接合されていることを特徴とする屈曲型送波器のシェル。
【請求項7】
上記アクティブ円環パッキンが、上記シェルの屈曲振動に対応して、上記シェルの開放端の移動に追従するように駆動制御されることを特徴とする請求項6に記載の屈曲型送波器のシェル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−53441(P2007−53441A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235461(P2005−235461)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】