屋上緑化施工用パネル、及びその屋上緑化施工用パネルを用いた屋上緑化の施工システム
【課題】水性植物等を生育させてビオトープのような湿地系のシステムを実現することで水分蒸散量を十分に確保し、且つそのように水分蒸散量を十分に確保しても、屋上部にかかる積載荷重を少なくすることができる屋上緑化施工用パネル、屋上緑化の施工システムを提供することを課題とする。
【解決手段】パネル本体の中央に、土壌等の植栽基盤材の載置部分となる下段部が形成され、植栽マットを前記下段部側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部から連続して上向きに傾斜してパネル本体の側辺側に中段部が形成され、該中段部の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部が、前記中段部より高い位置に形成されていることを特徴とする。
【解決手段】パネル本体の中央に、土壌等の植栽基盤材の載置部分となる下段部が形成され、植栽マットを前記下段部側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部から連続して上向きに傾斜してパネル本体の側辺側に中段部が形成され、該中段部の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部が、前記中段部より高い位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上緑化施工用パネルと、そのパネルを複数個用いて屋上緑化の施工を行なう屋上緑化の施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて建築物の屋上に植生パネル等を設置して緑化を行う技術が開発され、普及しつつある。このような屋上緑化は、建築物の屋上で植物を栽培し、屋上面からの熱の吸収、放出を緩和することで、いわゆるヒートアイランド現象を抑制するものであり、また建築物の屋上で植物を栽培が行なわれることで、大気汚染等に対する環境改善を図ることも意図するものである。そして、このような屋上緑化の技術として、たとえば下記特許文献1や特許文献2のような特許出願もなされている。
【0003】
このような屋上緑化の技術は、一般に集中管理型緑化と粗放型緑化とに大別される。集中管理型緑化では、ヒートアイランド現象抑制等、単に技術的観点からのみならず、人工の庭園等を施工して美観を維持することも重視されるので、一定期間ごとに念入りなメンテナンスを行なう等、その名のごとく集中的な管理が必要となる。
【0004】
これに対して粗放型緑化では、集中管理型緑化のように美観が要求されるわけではなく、専ら技術的な観点のみ考慮することで足りるとされ、またメンテナンスも極力省力することが望まれている。このようなメンテナンス省力の観点から、粗放型緑化では、灌水をさほど必要としないセダム類が主たる植物種として用いられている。
【0005】
また、土壌は植栽の基盤となるものであり、植物を好適に生育させるには積層される土壌の厚さも一定以上必要であるが、上記セダム植物は他の植物に比べて土壌層の厚さが薄くても生育するので、屋上部に多大な積載荷重をかけない、いわゆる薄層緑化に最も適した植物種であることも、セダム植物が主として粗放型緑化に用いられている理由の1つでもある。
【0006】
しかしながら、上述のようなヒートアイランド対策として屋上緑化がなされているのは、植物の水による蒸散によって屋上近傍における大気の温度を下げるからであり、この作用を有効に生じさせるには、蒸散量の多い植物を用いることが本来は好ましい。この点、セダム植物はもともと蒸散量が多くない植物種であるので、ヒートアイランド対策には最適な植物種であるとはいえない。
【0007】
また、植物種が限られることは、緑化が本来目的とすべき植物の多様性を実現することを困難にすることにもなる。この意味でもセダム植物以外の植物種を用いた屋上緑化の開発が望まれている。そして、このような要求は、上記特許文献1や特許文献2に記載された発明によっては満たすことができない。
【0008】
一方、水性植物、水耕植物等を生育させるために、ビオトープと称される施工システムも開発され、そのようなビオトープに関する特許出願として、たとえば下記特許文献3のような特許出願がなされている。
【0009】
このようなビオトープは、人工の池や川の貯水部のようなイメージを現出させて施工を行うので、植物のみならず、昆虫等の生物も持続して生育できるような生態系を確保することができ、生態の多様性を実現する上では、非常に好適な技術である。また水性植物、水耕植物等を生育させるだけでなく、貯水部等もシステムに具備させているので、水分蒸散量が不足するようなことは決してなく、ヒートアイランド対策として用いるのにも好都合である。従って、このようなビオトープの技術を屋上緑化に採用することが考えられる。
【0010】
しかしながら、このようなビオトープは、そもそも施工されるシステムに水を多く含んでいるので、このビオトープを屋上緑化に適用した場合、屋上部に多大な積載荷重がかかることとなる。従って、ビオトープのような技術を屋上緑化に適用することは実際には困難である。
【0011】
【特許文献1】特開2003−143940号公報
【特許文献2】特開2004−89005号公報
【特許文献3】特開2005−308927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、水性植物等を生育させてビオトープのような湿地系のシステムを実現することで水分蒸散量を十分に確保し、且つそのように水分蒸散量を十分に確保しても、屋上部にかかる積載荷重を少なくすることができる屋上緑化施工用パネル、屋上緑化の施工システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような課題を解決するために、屋上緑化施工用パネルと、そのパネルを用いた屋上緑化の施工システムとしてなされたもので、屋上緑化施工用パネルとしての特徴は、パネル本体1の中央に、土壌等の植栽基盤材16の載置部分となる下段部4が形成され、植栽マット15を前記下段部4側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部4から連続して上向きに傾斜してパネル本体1の側辺側に中段部3が形成され、該中段部3の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部2が、前記中段部3より高い位置に形成されていることである。
【0014】
中段部3は、たとえば略1/4の円弧を描くように湾曲した面や勾配面に形成され、上段部2は、たとえば角柱状や1/4の円柱状に形成される。また下段部4は、たとえば灌水を供給する灌水パイプ14を配置することができるような概ね平坦面に形成される。
【0015】
また、屋上緑化の施工システムとしての特徴は、パネル本体1の中央に、土壌等の植栽基盤材16の載置部分となる下段部4が形成され、植栽マット15を前記下段部2側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部2から連続して上向きに傾斜してパネル本体1の側辺側に中段部3が形成され、該中段部3の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部4が形成された屋上緑化施工用パネル6が、屋上に複数個配置されていることである。
【0016】
下段部4に載置される植栽基盤材16には湿地植物を植栽し、中段部3に載置される植栽マット15には、陸生植物が生育しうるように該陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を保持させることが可能である。また下段部4の上部に、灌水を供給する灌水パイプ14を配置することも可能である。この場合、灌水パイプ14は、複数配置された屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置されることが望ましい。また、灌水が、貯水槽9から灌水パイプ14を介して供給され、供給された灌水が、前記貯水槽9へ返送されるように、該貯水槽9が屋根勾配の下流側に設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述のように、パネル本体の中央に、土壌等の植栽基盤材の載置部分となる下段部が形成され、植物を生育させるマットを前記下段部側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部から連続して上向きに傾斜してパネル本体の側辺側に中段部が形成され、該中段部の両側であって、パネル本体の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部が、前記中段部より高い位置に形成されたものであるため、下段部に植栽基盤材を載置し、その植栽基盤材にたとえば湿地植物を植栽するとともに灌水等を行い、また中段部には、たとえば陸生植物が生育しうるようなマットを載置することによって、従来のビオトープで採用されていた湿地植物を屋上緑化に適用することができ、且つ多様な植物を生育させることができる。
【0018】
しかも、パネル本体が、上述のような上段部、中段部、下段部の異なる3段の高さに形成されているので、上段部及び中段部の部分は、結果的に下段部の部分から
嵩上げされた状態となり、土壌等の植栽基盤材が収容され、また水が供給されて貯留される部分は、下段部の部分のみであるので、従来のビオトープのような湿地植物を屋上緑化に適用することができるにもかかわらず、水の利用によって屋上部に多大な積載荷重がかかることもないという効果がある。
【0019】
上述のような湿地植物を利用したシステムを屋上緑化に適用することができ、水分蒸散量が過不足となるようなことがなく、しかもビオトープ等に比べて屋上の設置面にかかる荷重を著しく減少させることができるので、ヒートアイランド現象の抑制に好適で、植物の多様性を実現することもできる、屋上緑化施工用パネルや、そのパネルを用いた施工システムを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
先ず、一実施形態としての屋上緑化施工用パネルについて説明する。図1はその屋上緑化施工用パネルの平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は同屋上緑化施工用パネルの概略斜視図をそれぞれ示す。
【0021】
図1乃至図3において、1は屋上緑化施工用パネルのパネル本体で、全体が平面正方形状に形成され、且つ全体がポリプロピレン等の合成樹脂で構成されている。
このパネル本体1は、作業者が歩行するための上段部2と、陸生植物の生育場所となる中段部3と、湿地植物の生育場所となる下段部4とを具備して構成されている。
【0022】
上段部2は、前記パネル本体1の4角のコーナー部に形成され、中段部3は、該4角の上段部2間のパネル本体1の4側辺部に形成され、下段部4は、前記上段部2及び中段部3より内側の、パネル本体1の中央部分に形成されている。また上段部2は四角柱状に形成され、中段部3は略1/4の円弧を描くような湾曲面を有して形成され、下段部4は平坦面に形成されている。
【0023】
上段部2は作業者が歩行するための部分であり、中段部3は、植栽マットを載置する部分である。この上段部2及び中段部3は、また嵩上げのための部分でもあり、
該上段部2や中段部3が形成されることによって、下段部4の部分がパネル本体1の底面として所定の深さに形成されることとなる。そして、このように所定の深さに形成された下段部4上に、後述のように土壌等の植栽基盤材が載置されることとなる。
【0024】
そして、このような構成からなる屋上緑化施工用パネル6を使用する場合には、このような屋上緑化施工用パネル6を複数個準備し、図4乃至図6に示すように、その複数個の屋上緑化施工用パネル6を縦横に配置する。図4乃至図6の実施形態においては、2列に並列させて複数個配置される。このように屋上緑化施工用パネル6が縦横に配置された状態においては、隣接する4個のパネル本体1の上段部2が集合して1個のブロック状の上段部2を形成し、隣接する2個のパネル本体1の中段部3が結合して、略半円状の中段部3を形成する。
【0025】
この場合、屋上部分7の上面には、予め複数の断熱用ブロック8が載置されており、その断熱用ブロック8の上面に前記屋上緑化施工用パネル6が載置されることとなる。この断熱用ブロック8は、全体が発泡ポリスチレン等の発泡性合成樹脂で構成されている。
【0026】
発泡ポリスチレン等の発泡性合成樹脂は軽量の素材であるので、断熱効果を奏させる一方で、その断熱用ブロック8を屋上部分7に設置することによって、
その屋上部分7に多大な積載荷重がかかるようなこともない。
【0027】
さらに、2列に並設された屋上緑化施工用パネル6のうち、端部2列の屋上緑化施工用パネル6の外側には、貯水槽9が設置されている。この貯水槽9には、後述する灌水用の水が貯留される。また該貯水槽9の側部には、ポンプ10及びフィルター11が設けられ、フィルター11は、貯水槽9の外部に設置されたソーラーパネル12に接続されている。さらに貯水槽9の外側、及び2列に並設された複数の
屋上緑化施工用パネル6の長手方向側面側には、壁体13が設けられている。
【0028】
次に、上記のように複数の屋上緑化施工用パネル6を設置し、貯水槽9を設置し、さらに壁体13を設置した後、図7及び図8の2点鎖線で示すように、灌水パイプ
14を配置する。この灌水パイプ14は、同図に示すように、その一端側が、貯水槽9内、より具体的には貯水槽9内のポンプ10に接続されており、該貯水槽9から4個の屋上緑化施工用パネル6の下段部4の上面に接触させながら、該4個の屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置される。そして、4個の屋上緑化施工用パネル6を循環した灌水パイプ14の他端側は、貯水槽9へ返送されるごとく、該貯水槽9に臨出される。また、この灌水パイプ14は、図示しないが、多数の細孔が穿設されており、その細孔からいわゆる点滴のごとく水が抽出されるように構成されたものである。
【0029】
次に、上記のように灌水パイプ14を配置した後、図9及び図10に示すように、
屋上緑化施工用パネル6のパネル本体1の中段部3に、植栽マット15を載置する。この植栽マット15は、隣接する屋上緑化施工用パネル6の2個の中段部3に跨がるように設置される。従って、植栽マット15は、略1/4の円弧を描くような湾曲面を有して形成された2個の中段部3を合体させて形成される半円状の形状に沿って、両側が下向きに湾曲した状態で2個の中段部3上に載置されることとなる。
この植栽マット15は、植物繊維等で構成され、各種の陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を混入し保持させて陸生植物が生育しうるように、或いは生育した陸生植物が具備されて構成されている。
【0030】
次に、図11及び図12に示すように、屋上緑化施工用パネル6のパネル本体1の下段部4上に、土壌等の植栽基盤材16を載置する。この場合において、複数の
屋上緑化施工用パネル6が配置された状態においては、下段部4は上段部2や中段部3によって包囲された状態となり、その包囲された状態で、下段部4の部分が所定の深さに形成されることとなるので、その所定の深さに形成された下段部4の部分に土壌等の植栽基盤材16が収納された状態となるのである。結果的に植栽基盤材がパネル本体1内に収納されることとなる。本実施形態では、土壌として軽量の人工土壌が用いられている。またパーライト等を土壌とともに収納することも可能である。この土壌等の植栽基盤材16には、湿地植物(水性植物)の種子、苗等が混入される。或いは生育した湿地植物(水性植物)が植栽基盤材16に植栽される。
【0031】
また、2個の中段部3に跨がるように載置された植栽マット15は、その両端部が2個の中段部3の略半円状の形状に沿って下向きに湾曲した状態で載置されているので、その植栽マット15の両端部は、下段部4に向かって延出した状態となり、従って、上述のように下段部4上に土壌等の植栽基盤材16が載置された状態においては、その土壌等の植栽基盤材16内に前記植栽マット15の両端部が埋設されることとなる。
【0032】
以上のように、植栽基盤材16を下段部4上に載置した状態で、いわゆる湿地状態とする屋上緑化の施工システムの施工が完了する。
【0033】
このように施工システムを施工した後、上記貯水槽9から灌水パイプ14を介して該貯水槽9内に水を、各屋上緑化施工用パネル6に収容された土壌等の植栽基盤材16に供給する。この場合において、灌水パイプ14は、上述のように多数の細孔が穿設されたいわゆる点滴型のものであるため、貯水槽9内のポンプ10によって灌水パイプ14を介して屋上緑化施工用パネル6に供給される水は、その灌水パイプ14の多数の細孔から抽出され、従って、供給される水は、植栽基盤材16側へ一気に噴射されることはなく、上記細孔から点滴のごとく徐々に抽出されることになる。このため、植栽基盤材16が水と不用意に攪拌、混合されるようなこともなく、植栽基盤材16の上面の位置が乱れるようなこともないのである。
【0034】
さらに、屋上部分7の傾斜勾配の下流側に貯水槽9を配置することで、上述のように貯水槽9から灌水パイプ14を介して屋上緑化施工用パネル6側へ供給され、4個の屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置された灌水パイプ14によって供給される水は、各屋上緑化施工用パネル6に収容された植栽基盤材16を通過しつつ、好適に貯水槽9へ返送されることとなる。
【0035】
さらに、上記のような灌水パイプ14による水の供給のみならず、降雨等によって水が散布される場合もあり、その場合には急速に植栽基盤材16に水が供給されて屋上緑化施工用パネル6から水が溢流するおそれもある。しかしながら、上記のように傾斜勾配の下流側に貯水槽9を配置することで、溢流した水も貯水槽9側へ好適に返送されることとなるので、屋上緑化施工用パネル6に多量の水が不用意に貯留されることもなく、植物のいわゆる根腐れ等が生じるおそれもないのである。そして、適度の水が供給されることによって、湿地植物の生育に好適な環境が保持されることとなる。
【0036】
一方、2個の中段部3に跨がるように載置された植栽マット15は、陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材が混入されて保持され、或いは生育した陸生植物が具備されて構成されたものであるが、該植栽マット15の両端部が2個の中段部3の略半円状の形状に沿って下向きに湾曲した状態で該中段部3上に載置され、該植栽マット15の両端部が土壌等の植栽基盤材16内に埋設された状態となっているので、上述のように各屋上緑化施工用パネル6に収納された植栽基盤材16に灌水パイプ14を介して水が供給されることによって、その供給された水は、植物繊維からなる植栽マット15にも浸透することとなり、その結果、一般には乾燥して枯れ易いと認識されている植栽マット15に具備された陸生植物の、乾燥による枯れを未然に防止することが可能となる。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、パネル本体1の上段部2は、作業者が歩行するための領域として確保することができ、またパネル本体1の中段部3は、陸生植物の生育場所としての環境を確保することができ、さらにパネル本体1の下段
部4は、湿地植物の生育場所としての環境を確保することができる、屋上緑化施工用パネル6を提供することが可能となった。
【0038】
また、このような屋上緑化施工用パネル6を複数配置し、屋上部分におけるわずかな傾斜勾配を利用して循環状態で灌水を行うことで、ビオトープで採用されていた湿地植物を屋上緑化に適用することができ、しかも湿地植物のみならず陸生植物も上記のようなパネル本体1の中段部3を利用して生育させることができるので、
多様な植物を生育させることも可能となる。
【0039】
また、パネル本体1が上記上段部2、中段部3、下段部4の異なる3段の高さに形成されているので、上段部及び中段部の部分が下段部の部分から嵩上げされた状態となるので、また水は上述のような灌水パイプ14によって徐々に供給されるので、土壌等の植栽基盤材16に水が供給されるにもかかわらず、屋上部に多大な積載荷重がかかることもない。
【0040】
この結果、上述のような湿地植物を利用したシステムを屋上緑化に適用することができ、水分蒸散量が過不足となるようなことがなく、しかもビオトープ等に比べて屋上の設置面にかかる荷重を著しく減少させることができるので、ヒートアイランド現象の抑制に好適で、植物の多様性を実現できる屋上緑化施工用パネルや、そのパネルを用いた施工システムを提供することが可能となる。
【0041】
尚、上記実施形態では、パネル本体1を略平面正方形状に形成したが、パネル本体の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、その形状は問わない。また、該実施形態では、パネル本体1がポリプロピレンで構成されていたが、パネル本体1の材質も該実施形態に限定されない。たとえばポリエチレン等のようなものを用いることも可能である。さらに、合成樹脂以外の素材、たとえばアルミニウム等の金属を用いることも可能であるが、屋上部に積載荷重を極力かけないようにする観点からは、合成樹脂を用いるのが好ましい。
【0042】
また、該実施形態では、屋上緑化施工用パネル6の下面側であって、屋上部分7の上面側に、予め複数の断熱用ブロック8を載置したため、上述のような好ましい効果が得られたが、このような断熱用ブロック8を屋上緑化施工用パネル6の下面側に載置することは本発明に必須の条件ではない。
【0043】
さらに、屋上の設置面にかかる積載荷重を考慮する必要性から、屋上緑化施工用パネル6の重量の数値を考慮する必要もある。この場合、屋上の設置面には、上記のようなパネル本体1の重量と、パネル本体1内に収納される土壌等の植栽基盤材
16と、該植栽基盤材16に供給される水との総重量がかかることになるが、特にパネル本体1と水との総計の重量を考慮することが重要である。
【0044】
さらに、植栽基盤材16の種類も上記実施形態の土壌、人工土壌等に限定されるものではない。また、粒状のパーライトや、それ以外の軽量骨材を充填することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一実施形態の屋上緑化施工用パネルの概略平面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】同概略斜視図。
【図4】屋上緑化施工用パネルを複数配置した状態の概略斜視図。
【図5】同概略平面図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】灌水パイプを配置した状態の概略平面図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】植栽マットを中段部に載置した状態の概略平面図。
【図10】図9のD−D線断面図。
【図11】土壌等の植栽基盤材をパネルに収納させた状態の概略平面図。
【図12】図9のE−E線断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…パネル本体 2…上段部
3…中段部 4…下段部
6…屋上緑化施工用パネル 9…貯水槽
14…灌水パイプ 15…植栽マット
16…植栽基盤材
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上緑化施工用パネルと、そのパネルを複数個用いて屋上緑化の施工を行なう屋上緑化の施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて建築物の屋上に植生パネル等を設置して緑化を行う技術が開発され、普及しつつある。このような屋上緑化は、建築物の屋上で植物を栽培し、屋上面からの熱の吸収、放出を緩和することで、いわゆるヒートアイランド現象を抑制するものであり、また建築物の屋上で植物を栽培が行なわれることで、大気汚染等に対する環境改善を図ることも意図するものである。そして、このような屋上緑化の技術として、たとえば下記特許文献1や特許文献2のような特許出願もなされている。
【0003】
このような屋上緑化の技術は、一般に集中管理型緑化と粗放型緑化とに大別される。集中管理型緑化では、ヒートアイランド現象抑制等、単に技術的観点からのみならず、人工の庭園等を施工して美観を維持することも重視されるので、一定期間ごとに念入りなメンテナンスを行なう等、その名のごとく集中的な管理が必要となる。
【0004】
これに対して粗放型緑化では、集中管理型緑化のように美観が要求されるわけではなく、専ら技術的な観点のみ考慮することで足りるとされ、またメンテナンスも極力省力することが望まれている。このようなメンテナンス省力の観点から、粗放型緑化では、灌水をさほど必要としないセダム類が主たる植物種として用いられている。
【0005】
また、土壌は植栽の基盤となるものであり、植物を好適に生育させるには積層される土壌の厚さも一定以上必要であるが、上記セダム植物は他の植物に比べて土壌層の厚さが薄くても生育するので、屋上部に多大な積載荷重をかけない、いわゆる薄層緑化に最も適した植物種であることも、セダム植物が主として粗放型緑化に用いられている理由の1つでもある。
【0006】
しかしながら、上述のようなヒートアイランド対策として屋上緑化がなされているのは、植物の水による蒸散によって屋上近傍における大気の温度を下げるからであり、この作用を有効に生じさせるには、蒸散量の多い植物を用いることが本来は好ましい。この点、セダム植物はもともと蒸散量が多くない植物種であるので、ヒートアイランド対策には最適な植物種であるとはいえない。
【0007】
また、植物種が限られることは、緑化が本来目的とすべき植物の多様性を実現することを困難にすることにもなる。この意味でもセダム植物以外の植物種を用いた屋上緑化の開発が望まれている。そして、このような要求は、上記特許文献1や特許文献2に記載された発明によっては満たすことができない。
【0008】
一方、水性植物、水耕植物等を生育させるために、ビオトープと称される施工システムも開発され、そのようなビオトープに関する特許出願として、たとえば下記特許文献3のような特許出願がなされている。
【0009】
このようなビオトープは、人工の池や川の貯水部のようなイメージを現出させて施工を行うので、植物のみならず、昆虫等の生物も持続して生育できるような生態系を確保することができ、生態の多様性を実現する上では、非常に好適な技術である。また水性植物、水耕植物等を生育させるだけでなく、貯水部等もシステムに具備させているので、水分蒸散量が不足するようなことは決してなく、ヒートアイランド対策として用いるのにも好都合である。従って、このようなビオトープの技術を屋上緑化に採用することが考えられる。
【0010】
しかしながら、このようなビオトープは、そもそも施工されるシステムに水を多く含んでいるので、このビオトープを屋上緑化に適用した場合、屋上部に多大な積載荷重がかかることとなる。従って、ビオトープのような技術を屋上緑化に適用することは実際には困難である。
【0011】
【特許文献1】特開2003−143940号公報
【特許文献2】特開2004−89005号公報
【特許文献3】特開2005−308927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、水性植物等を生育させてビオトープのような湿地系のシステムを実現することで水分蒸散量を十分に確保し、且つそのように水分蒸散量を十分に確保しても、屋上部にかかる積載荷重を少なくすることができる屋上緑化施工用パネル、屋上緑化の施工システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような課題を解決するために、屋上緑化施工用パネルと、そのパネルを用いた屋上緑化の施工システムとしてなされたもので、屋上緑化施工用パネルとしての特徴は、パネル本体1の中央に、土壌等の植栽基盤材16の載置部分となる下段部4が形成され、植栽マット15を前記下段部4側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部4から連続して上向きに傾斜してパネル本体1の側辺側に中段部3が形成され、該中段部3の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部2が、前記中段部3より高い位置に形成されていることである。
【0014】
中段部3は、たとえば略1/4の円弧を描くように湾曲した面や勾配面に形成され、上段部2は、たとえば角柱状や1/4の円柱状に形成される。また下段部4は、たとえば灌水を供給する灌水パイプ14を配置することができるような概ね平坦面に形成される。
【0015】
また、屋上緑化の施工システムとしての特徴は、パネル本体1の中央に、土壌等の植栽基盤材16の載置部分となる下段部4が形成され、植栽マット15を前記下段部2側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部2から連続して上向きに傾斜してパネル本体1の側辺側に中段部3が形成され、該中段部3の両側であって、パネル本体1の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部4が形成された屋上緑化施工用パネル6が、屋上に複数個配置されていることである。
【0016】
下段部4に載置される植栽基盤材16には湿地植物を植栽し、中段部3に載置される植栽マット15には、陸生植物が生育しうるように該陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を保持させることが可能である。また下段部4の上部に、灌水を供給する灌水パイプ14を配置することも可能である。この場合、灌水パイプ14は、複数配置された屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置されることが望ましい。また、灌水が、貯水槽9から灌水パイプ14を介して供給され、供給された灌水が、前記貯水槽9へ返送されるように、該貯水槽9が屋根勾配の下流側に設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述のように、パネル本体の中央に、土壌等の植栽基盤材の載置部分となる下段部が形成され、植物を生育させるマットを前記下段部側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部から連続して上向きに傾斜してパネル本体の側辺側に中段部が形成され、該中段部の両側であって、パネル本体の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部が、前記中段部より高い位置に形成されたものであるため、下段部に植栽基盤材を載置し、その植栽基盤材にたとえば湿地植物を植栽するとともに灌水等を行い、また中段部には、たとえば陸生植物が生育しうるようなマットを載置することによって、従来のビオトープで採用されていた湿地植物を屋上緑化に適用することができ、且つ多様な植物を生育させることができる。
【0018】
しかも、パネル本体が、上述のような上段部、中段部、下段部の異なる3段の高さに形成されているので、上段部及び中段部の部分は、結果的に下段部の部分から
嵩上げされた状態となり、土壌等の植栽基盤材が収容され、また水が供給されて貯留される部分は、下段部の部分のみであるので、従来のビオトープのような湿地植物を屋上緑化に適用することができるにもかかわらず、水の利用によって屋上部に多大な積載荷重がかかることもないという効果がある。
【0019】
上述のような湿地植物を利用したシステムを屋上緑化に適用することができ、水分蒸散量が過不足となるようなことがなく、しかもビオトープ等に比べて屋上の設置面にかかる荷重を著しく減少させることができるので、ヒートアイランド現象の抑制に好適で、植物の多様性を実現することもできる、屋上緑化施工用パネルや、そのパネルを用いた施工システムを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
先ず、一実施形態としての屋上緑化施工用パネルについて説明する。図1はその屋上緑化施工用パネルの平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は同屋上緑化施工用パネルの概略斜視図をそれぞれ示す。
【0021】
図1乃至図3において、1は屋上緑化施工用パネルのパネル本体で、全体が平面正方形状に形成され、且つ全体がポリプロピレン等の合成樹脂で構成されている。
このパネル本体1は、作業者が歩行するための上段部2と、陸生植物の生育場所となる中段部3と、湿地植物の生育場所となる下段部4とを具備して構成されている。
【0022】
上段部2は、前記パネル本体1の4角のコーナー部に形成され、中段部3は、該4角の上段部2間のパネル本体1の4側辺部に形成され、下段部4は、前記上段部2及び中段部3より内側の、パネル本体1の中央部分に形成されている。また上段部2は四角柱状に形成され、中段部3は略1/4の円弧を描くような湾曲面を有して形成され、下段部4は平坦面に形成されている。
【0023】
上段部2は作業者が歩行するための部分であり、中段部3は、植栽マットを載置する部分である。この上段部2及び中段部3は、また嵩上げのための部分でもあり、
該上段部2や中段部3が形成されることによって、下段部4の部分がパネル本体1の底面として所定の深さに形成されることとなる。そして、このように所定の深さに形成された下段部4上に、後述のように土壌等の植栽基盤材が載置されることとなる。
【0024】
そして、このような構成からなる屋上緑化施工用パネル6を使用する場合には、このような屋上緑化施工用パネル6を複数個準備し、図4乃至図6に示すように、その複数個の屋上緑化施工用パネル6を縦横に配置する。図4乃至図6の実施形態においては、2列に並列させて複数個配置される。このように屋上緑化施工用パネル6が縦横に配置された状態においては、隣接する4個のパネル本体1の上段部2が集合して1個のブロック状の上段部2を形成し、隣接する2個のパネル本体1の中段部3が結合して、略半円状の中段部3を形成する。
【0025】
この場合、屋上部分7の上面には、予め複数の断熱用ブロック8が載置されており、その断熱用ブロック8の上面に前記屋上緑化施工用パネル6が載置されることとなる。この断熱用ブロック8は、全体が発泡ポリスチレン等の発泡性合成樹脂で構成されている。
【0026】
発泡ポリスチレン等の発泡性合成樹脂は軽量の素材であるので、断熱効果を奏させる一方で、その断熱用ブロック8を屋上部分7に設置することによって、
その屋上部分7に多大な積載荷重がかかるようなこともない。
【0027】
さらに、2列に並設された屋上緑化施工用パネル6のうち、端部2列の屋上緑化施工用パネル6の外側には、貯水槽9が設置されている。この貯水槽9には、後述する灌水用の水が貯留される。また該貯水槽9の側部には、ポンプ10及びフィルター11が設けられ、フィルター11は、貯水槽9の外部に設置されたソーラーパネル12に接続されている。さらに貯水槽9の外側、及び2列に並設された複数の
屋上緑化施工用パネル6の長手方向側面側には、壁体13が設けられている。
【0028】
次に、上記のように複数の屋上緑化施工用パネル6を設置し、貯水槽9を設置し、さらに壁体13を設置した後、図7及び図8の2点鎖線で示すように、灌水パイプ
14を配置する。この灌水パイプ14は、同図に示すように、その一端側が、貯水槽9内、より具体的には貯水槽9内のポンプ10に接続されており、該貯水槽9から4個の屋上緑化施工用パネル6の下段部4の上面に接触させながら、該4個の屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置される。そして、4個の屋上緑化施工用パネル6を循環した灌水パイプ14の他端側は、貯水槽9へ返送されるごとく、該貯水槽9に臨出される。また、この灌水パイプ14は、図示しないが、多数の細孔が穿設されており、その細孔からいわゆる点滴のごとく水が抽出されるように構成されたものである。
【0029】
次に、上記のように灌水パイプ14を配置した後、図9及び図10に示すように、
屋上緑化施工用パネル6のパネル本体1の中段部3に、植栽マット15を載置する。この植栽マット15は、隣接する屋上緑化施工用パネル6の2個の中段部3に跨がるように設置される。従って、植栽マット15は、略1/4の円弧を描くような湾曲面を有して形成された2個の中段部3を合体させて形成される半円状の形状に沿って、両側が下向きに湾曲した状態で2個の中段部3上に載置されることとなる。
この植栽マット15は、植物繊維等で構成され、各種の陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を混入し保持させて陸生植物が生育しうるように、或いは生育した陸生植物が具備されて構成されている。
【0030】
次に、図11及び図12に示すように、屋上緑化施工用パネル6のパネル本体1の下段部4上に、土壌等の植栽基盤材16を載置する。この場合において、複数の
屋上緑化施工用パネル6が配置された状態においては、下段部4は上段部2や中段部3によって包囲された状態となり、その包囲された状態で、下段部4の部分が所定の深さに形成されることとなるので、その所定の深さに形成された下段部4の部分に土壌等の植栽基盤材16が収納された状態となるのである。結果的に植栽基盤材がパネル本体1内に収納されることとなる。本実施形態では、土壌として軽量の人工土壌が用いられている。またパーライト等を土壌とともに収納することも可能である。この土壌等の植栽基盤材16には、湿地植物(水性植物)の種子、苗等が混入される。或いは生育した湿地植物(水性植物)が植栽基盤材16に植栽される。
【0031】
また、2個の中段部3に跨がるように載置された植栽マット15は、その両端部が2個の中段部3の略半円状の形状に沿って下向きに湾曲した状態で載置されているので、その植栽マット15の両端部は、下段部4に向かって延出した状態となり、従って、上述のように下段部4上に土壌等の植栽基盤材16が載置された状態においては、その土壌等の植栽基盤材16内に前記植栽マット15の両端部が埋設されることとなる。
【0032】
以上のように、植栽基盤材16を下段部4上に載置した状態で、いわゆる湿地状態とする屋上緑化の施工システムの施工が完了する。
【0033】
このように施工システムを施工した後、上記貯水槽9から灌水パイプ14を介して該貯水槽9内に水を、各屋上緑化施工用パネル6に収容された土壌等の植栽基盤材16に供給する。この場合において、灌水パイプ14は、上述のように多数の細孔が穿設されたいわゆる点滴型のものであるため、貯水槽9内のポンプ10によって灌水パイプ14を介して屋上緑化施工用パネル6に供給される水は、その灌水パイプ14の多数の細孔から抽出され、従って、供給される水は、植栽基盤材16側へ一気に噴射されることはなく、上記細孔から点滴のごとく徐々に抽出されることになる。このため、植栽基盤材16が水と不用意に攪拌、混合されるようなこともなく、植栽基盤材16の上面の位置が乱れるようなこともないのである。
【0034】
さらに、屋上部分7の傾斜勾配の下流側に貯水槽9を配置することで、上述のように貯水槽9から灌水パイプ14を介して屋上緑化施工用パネル6側へ供給され、4個の屋上緑化施工用パネル6を循環するように配置された灌水パイプ14によって供給される水は、各屋上緑化施工用パネル6に収容された植栽基盤材16を通過しつつ、好適に貯水槽9へ返送されることとなる。
【0035】
さらに、上記のような灌水パイプ14による水の供給のみならず、降雨等によって水が散布される場合もあり、その場合には急速に植栽基盤材16に水が供給されて屋上緑化施工用パネル6から水が溢流するおそれもある。しかしながら、上記のように傾斜勾配の下流側に貯水槽9を配置することで、溢流した水も貯水槽9側へ好適に返送されることとなるので、屋上緑化施工用パネル6に多量の水が不用意に貯留されることもなく、植物のいわゆる根腐れ等が生じるおそれもないのである。そして、適度の水が供給されることによって、湿地植物の生育に好適な環境が保持されることとなる。
【0036】
一方、2個の中段部3に跨がるように載置された植栽マット15は、陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材が混入されて保持され、或いは生育した陸生植物が具備されて構成されたものであるが、該植栽マット15の両端部が2個の中段部3の略半円状の形状に沿って下向きに湾曲した状態で該中段部3上に載置され、該植栽マット15の両端部が土壌等の植栽基盤材16内に埋設された状態となっているので、上述のように各屋上緑化施工用パネル6に収納された植栽基盤材16に灌水パイプ14を介して水が供給されることによって、その供給された水は、植物繊維からなる植栽マット15にも浸透することとなり、その結果、一般には乾燥して枯れ易いと認識されている植栽マット15に具備された陸生植物の、乾燥による枯れを未然に防止することが可能となる。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、パネル本体1の上段部2は、作業者が歩行するための領域として確保することができ、またパネル本体1の中段部3は、陸生植物の生育場所としての環境を確保することができ、さらにパネル本体1の下段
部4は、湿地植物の生育場所としての環境を確保することができる、屋上緑化施工用パネル6を提供することが可能となった。
【0038】
また、このような屋上緑化施工用パネル6を複数配置し、屋上部分におけるわずかな傾斜勾配を利用して循環状態で灌水を行うことで、ビオトープで採用されていた湿地植物を屋上緑化に適用することができ、しかも湿地植物のみならず陸生植物も上記のようなパネル本体1の中段部3を利用して生育させることができるので、
多様な植物を生育させることも可能となる。
【0039】
また、パネル本体1が上記上段部2、中段部3、下段部4の異なる3段の高さに形成されているので、上段部及び中段部の部分が下段部の部分から嵩上げされた状態となるので、また水は上述のような灌水パイプ14によって徐々に供給されるので、土壌等の植栽基盤材16に水が供給されるにもかかわらず、屋上部に多大な積載荷重がかかることもない。
【0040】
この結果、上述のような湿地植物を利用したシステムを屋上緑化に適用することができ、水分蒸散量が過不足となるようなことがなく、しかもビオトープ等に比べて屋上の設置面にかかる荷重を著しく減少させることができるので、ヒートアイランド現象の抑制に好適で、植物の多様性を実現できる屋上緑化施工用パネルや、そのパネルを用いた施工システムを提供することが可能となる。
【0041】
尚、上記実施形態では、パネル本体1を略平面正方形状に形成したが、パネル本体の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、その形状は問わない。また、該実施形態では、パネル本体1がポリプロピレンで構成されていたが、パネル本体1の材質も該実施形態に限定されない。たとえばポリエチレン等のようなものを用いることも可能である。さらに、合成樹脂以外の素材、たとえばアルミニウム等の金属を用いることも可能であるが、屋上部に積載荷重を極力かけないようにする観点からは、合成樹脂を用いるのが好ましい。
【0042】
また、該実施形態では、屋上緑化施工用パネル6の下面側であって、屋上部分7の上面側に、予め複数の断熱用ブロック8を載置したため、上述のような好ましい効果が得られたが、このような断熱用ブロック8を屋上緑化施工用パネル6の下面側に載置することは本発明に必須の条件ではない。
【0043】
さらに、屋上の設置面にかかる積載荷重を考慮する必要性から、屋上緑化施工用パネル6の重量の数値を考慮する必要もある。この場合、屋上の設置面には、上記のようなパネル本体1の重量と、パネル本体1内に収納される土壌等の植栽基盤材
16と、該植栽基盤材16に供給される水との総重量がかかることになるが、特にパネル本体1と水との総計の重量を考慮することが重要である。
【0044】
さらに、植栽基盤材16の種類も上記実施形態の土壌、人工土壌等に限定されるものではない。また、粒状のパーライトや、それ以外の軽量骨材を充填することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一実施形態の屋上緑化施工用パネルの概略平面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】同概略斜視図。
【図4】屋上緑化施工用パネルを複数配置した状態の概略斜視図。
【図5】同概略平面図。
【図6】図5のB−B線断面図。
【図7】灌水パイプを配置した状態の概略平面図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】植栽マットを中段部に載置した状態の概略平面図。
【図10】図9のD−D線断面図。
【図11】土壌等の植栽基盤材をパネルに収納させた状態の概略平面図。
【図12】図9のE−E線断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…パネル本体 2…上段部
3…中段部 4…下段部
6…屋上緑化施工用パネル 9…貯水槽
14…灌水パイプ 15…植栽マット
16…植栽基盤材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体(1)の中央に、土壌等の植栽基盤材(16)の載置部分となる下段部(4)が形成され、植栽マット(15)を前記下段部(4)側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部(4)から連続して上向きに傾斜してパネル本体(1)の側辺側に中段部(3)が形成され、該中段部(3)の両側であって、パネル本体(1)の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部(2)が、前記中段部(3)より高い位置に形成されていることを特徴とする屋上緑化施工用パネル。
【請求項2】
パネル本体(1)の中央に、土壌等の植栽基盤材(16)の載置部分となる下段部(4)が形成され、植栽マット(15)を前記下段部(4)側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部(4)から連続して上向きに傾斜してパネル本体(1)の側辺側に中段部(3)が形成され、該中段部(3)の両側であって、パネル本体(1)の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部(2)が形成された屋上緑化施工用パネル(6)が、屋上に複数個配置されていることを特徴とする屋上緑化の施工システム。
【請求項3】
下段部(4)に載置される植栽基盤材(16)には湿地植物を植栽し、中段部(
3)に載置される植栽マット(15)には、陸生植物が生育しうるように該陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を保持させる請求項2記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項4】
下段部(4)に、灌水を供給する灌水パイプ(14)が配置されている請求項3記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項5】
灌水パイプ(14)が、複数配置された屋上緑化施工用パネル(6)を循環するように配置され、且つ灌水が、貯水槽(9)から前記灌水パイプ(14)を介して供給され、供給された灌水が、前記複数配置された屋上緑化施工用パネル(6)を循環して前記貯水槽(9)へ返送されるように、該貯水槽(9)が屋根勾配の下流側に設けられている請求項4記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項1】
パネル本体(1)の中央に、土壌等の植栽基盤材(16)の載置部分となる下段部(4)が形成され、植栽マット(15)を前記下段部(4)側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部(4)から連続して上向きに傾斜してパネル本体(1)の側辺側に中段部(3)が形成され、該中段部(3)の両側であって、パネル本体(1)の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部(2)が、前記中段部(3)より高い位置に形成されていることを特徴とする屋上緑化施工用パネル。
【請求項2】
パネル本体(1)の中央に、土壌等の植栽基盤材(16)の載置部分となる下段部(4)が形成され、植栽マット(15)を前記下段部(4)側に向かって傾斜させた状態で載置することができるように、前記下段部(4)から連続して上向きに傾斜してパネル本体(1)の側辺側に中段部(3)が形成され、該中段部(3)の両側であって、パネル本体(1)の4角のコーナー部に、作業者の歩行部分となる上段部(2)が形成された屋上緑化施工用パネル(6)が、屋上に複数個配置されていることを特徴とする屋上緑化の施工システム。
【請求項3】
下段部(4)に載置される植栽基盤材(16)には湿地植物を植栽し、中段部(
3)に載置される植栽マット(15)には、陸生植物が生育しうるように該陸生植物の種子、苗等の陸生植物生育材を保持させる請求項2記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項4】
下段部(4)に、灌水を供給する灌水パイプ(14)が配置されている請求項3記載の屋上緑化の施工システム。
【請求項5】
灌水パイプ(14)が、複数配置された屋上緑化施工用パネル(6)を循環するように配置され、且つ灌水が、貯水槽(9)から前記灌水パイプ(14)を介して供給され、供給された灌水が、前記複数配置された屋上緑化施工用パネル(6)を循環して前記貯水槽(9)へ返送されるように、該貯水槽(9)が屋根勾配の下流側に設けられている請求項4記載の屋上緑化の施工システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−22245(P2009−22245A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190904(P2007−190904)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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