説明

屋外使用の粉体塗装アルミ建材

【課題】 静電塗装により高耐候性の機能性皮膜を簡易且つ確実に形成する塗装方法を提供する。
【解決手段】 混合比率をポリエステル粉体塗料7、フッ素粉体塗料3とし、これらをドライブレンドして、被塗物に静電塗着した後、被塗物を雰囲気加熱する。粉体塗料の形状が不定形のため、静電塗着した塗料粉体層には粉末塗料間に空隙が形成されており、雰囲気加熱によって熱溶融温度の低いポリエステル粉末塗料が先行して溶融し、塗料粉体層の空隙を通過して下層のベース塗膜を形成する一方、熱溶融温度の高いフッ素粉体塗料が後続して溶融し、ベース皮膜上に載置するように表層に耐候性確保の機能発揮塗膜を形成するものと見られる。ホットブレンドと被塗物昇温による塗料の時間差溶融を活用し、塗膜中に均一分布することなく、表層にフッ素塗膜を配置して、フッ素使用量を減少した機能性塗膜とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミサッシ、アルミカーテンウォール、アルミ方立、アルミ門扉等の屋外使用の粉体塗装アルミ建材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の静電塗装方法(静電粉体塗装方法といってもよい)として、例えばポリエステル塗料とフッ素塗料を加熱混練したホットブレンド粉体塗料を用いて静電塗装することによって耐候性に優れた機能性塗膜を形成したアルミサッシ等のアルミ建材が知られている。
【0003】
特許文献1によれば、ホットブレンド粉体塗料は、例えば、部分フッ素化ポリエステルの如くに架橋性反応基を有する含フッ素共重合体と、その架橋性反応基と架橋する硬化剤を40/60乃至98/2の比率とし、これに顔料を添加して溶融混練した塗料組成物とされ、これを用いてアルミサッシ等のアルミ建材を静電塗装することにより、耐候性に優れた粉体塗装のアルミ建材に形成するものとされる。
【0004】
しかし乍ら、このようにホットブレンド粉体塗料を用いる場合、これによって形成される粉体塗膜には上記塗料組成物の配合比率に応じた塗料成分が均一に分布して、膜厚方向全体に亘って、塗料組成物の配合比率に応じたポリエステル成分とフッ素成分とが常に存在するために、コストアップを招く要因となることから、本発明者らは、熱溶融温度高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料を用いた粉体塗装によって粉体塗膜を形成することによって、粉体塗膜を、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐候性を付与したフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐衝撃性を付与したポリエステル塗料成分高密度分布域を備えるようにした粉体塗装方法、即ち、静電塗装方法及びアルミ建材等の建築材料を提案済みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO01/025346号公報
【特許文献2】特願2009−70450
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2によると、熱溶融の高低異温度に基づき、焼付工程において、先行溶融する低温側のポリエステル塗料成分を下位に、後続溶融するフッ素塗料を表面側に配置することができ、従って、アルミ建材の粉体塗膜として、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐候性を付与したフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐衝撃性を付与したポリエステル塗料成分高密度分布域を備えたものとすることができるが、この場合、更に、ポリエステル塗料とフッ素塗料の非相溶性に着目すると、粉体塗膜の表面においてポリエステル塗料成分とフッ素塗料成分が、その非相溶性によって弾き合うように配置されて、上記各高密度分布域の形成に加えて、粉体塗膜の表面粗さを確保することができ、該表面粗さが、各塗料成分の屈折率と相俟って、粉体塗膜をマット(つや消し)調表面とすることができ、従って、塗膜劣化要因をなすマット剤を添加することなく、表面を常時マット調とすることが判明した。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題を、耐衝撃性及び耐候性を確保して屋外使用に適するとともにマット調表面を備えることによって使用外観を良好とした粉体塗装アルミ建材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って本発明は、非相溶性にして熱溶融の高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料を用いて粉体塗装、即ち静電塗装を施した粉体塗膜を有することによって、上記熱溶融の高低異温度に基づく膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布した塗膜に耐候性を付与するフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布した塗膜に耐衝撃性を付与するポリエステル塗料成分高密度分布域を備えることにより、耐衝撃性及び耐候性を確保して屋外使用に適するとともに上記非相溶性に基づく光沢度を25〜40%(測定角度60°)のマット調表面を備えることにより高品位にして使用外観を良好としたものとしたものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、非相溶性にして熱溶融温度高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料の粉体塗装によって形成した粉体塗膜を有するアルミ建材であって、該粉体塗膜を、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐候性を付与したフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐衝撃性を付与したポリエステル塗料成分高密度分布域と、測定角度60°の光沢度を25〜40%としたマット調表面を備えて形成してなることを特徴とする屋外使用の粉体塗装アルミ建材としたものである。
【0009】
請求項2乃至4に記載の発明は、上記に加えて、上記粉体塗膜は、その下地の如何に拘らず、良好な塗膜密着性を呈するものとし得ることから、屋外使用のアルミ建材の粉体塗膜の下地をそれぞれ良好な塗膜密着性を呈する好ましい形態のものとするように、請求項2に記載の発明を、上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材とし、請求項3に記載の発明を、上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した化成皮膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材とし、請求項4に記載の発明を、上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜に電着塗装した電着塗膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材としたものである。
【0010】
本発明は、これらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、非相溶性にして熱溶融の高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料を用いて粉体塗装を施した粉体塗膜を有することによって、上記熱溶融の高低異温度に基づく膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布した塗膜に耐候性を付与するフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布した塗膜に耐衝撃性を付与するポリエステル塗料成分高密度分布域を備えることにより、耐衝撃性及び耐候性を確保して屋外使用に適するとともに上記非相溶性に基づく光沢度を25〜40%(測定角度60°)のマット調表面を備えることにより高品位にして使用外観を良好とした粉体塗装アルミ建材を提供することができる。
【0012】
請求項2乃至4に記載の発明は、上記に加えて、屋外使用のアルミ建材の上記粉体塗膜の下地をそれぞれ良好な密着性を呈する好ましい形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】雰囲気加熱とドライブレンド粉体塗料の変化の関係を示すグラフと概念図である。
【図2】粉体塗膜表面(焼付前)の写真である。
【図3】粉体塗膜表面(焼付後)の写真である。
【図4】メタルウエザー試験機による促進耐候性試験後の色調変化結果を示すグラフである。
【図5】メタルウエザー試験機による促進耐候性試験後の光沢保持率結果を示すグラフである。
【図6】サンシャインウエザー試験機による促進耐候性試験後の色調変化結果を示すグラフである。
【図7】サンシャインウエザー試験機による促進耐候性試験後の光沢保持率結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、本発明のアルミ建材は、例えば、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した化成皮膜、本例にあっては6価クロム系化成処理を施すことによって形成した化成皮膜を下地として、粉体塗装によって形成した粉体塗膜を有するものとしてあり、該粉体塗装は、これを、非相溶性にして熱溶融温度高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料を用いたものとし、このとき、該粉体塗膜は、これを、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐候性を付与したフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐衝撃性を付与したポリエステル塗料成分高密度分布域と、測定角度60°の光沢度を25〜40%としたマット調表面を備えて形成したものとしてある。
【0015】
該粉体塗膜は、ポリエステル塗料とフッ素塗料を所定の配合比率でドライブレンドして粉体塗装を行って形成するから、該粉体塗膜においてそのいずれかが100%となる部分を生じることはないとみられるが、該粉体塗膜の構造として、ポリエステル塗料成分とフッ素塗料成分を見ると、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分をそれぞれ高密度に分布したものとなり、その結果、双方は該下地側と表面側でその分布密度を異にするものとしてある。
【0016】
そのメカニズムは必ずしも明確ではないが、上記ドライブレンドの配合段階及びその粉体塗装段階で、ポリエステル塗料とフッ素塗料は、ドライブレンドの配合比率で均一に混合した状態で存在するが、これらポリエステル塗料とフッ素塗料はそれぞれ形状を不定形とするものであるため、アルミ建材への粉体塗装段階の塗装層においては各塗料粒子間に空隙を介在した状態となっている(該塗装層は粉体塗膜より相当程度に厚い)ところ、ポリエステル塗料とフッ素塗料は、熱溶融温度が異なり、前者が低く、後者が高いために、先行溶融したポリエステル塗料がフッ素塗料の空隙を縫って流動化して、該ポリエステル塗料の自重やアルミ建材の塗装時に吊支持して焼付することによって上記空隙のエアが抜けて該空隙が減圧化すること等によって、一部のフッ素塗料を取り込みながら、下地側に集合する一方、フッ素塗料が後続溶融して、先行溶融したポリエステル塗料上の表面側に集合するためと見られる。
【0017】
因みに、ポリエステルとフッ素のSP値(溶解性パラメーターの差)について、ΔSP>1の場合は分離しやすく且つSP値の小さい方が気相側(表層側)に配位しやすいことが想定されるところ、例えば、粉体塗料における低温側のポリエステル塗料のSP値は10.7、フッ素塗料のSP値は8〜9であるから、ΔSPは1.7〜2.7であり、SP値はΔSP>1となる。従って、SP値からも、熱溶融に際して、表層にフッ素塗料が表面側に配置されるに至るものと認められる。
【0018】
粉体塗膜を形成するポリエステル塗料成分及びフッ素塗料成分は、ドライブレンドの配合比率(重量比)に従って存在するところ、該塗料成分は、例えば3:7の如くに、ポリエステル塗料成分を量的に少なく、フッ素塗料成分を量的に多くし、また、5:5のように等分とすることもできるが、一般には、7:3、8:2の如くに、ポリエステル塗料成分を量的に多く、フッ素塗料成分を量的に少なくしても、表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布したフッ素系高密度分布域を形成して、耐候性を確保することができるから、粉体塗膜にあっては、ポリエステル塗料成分を多く、フッ素塗料成分を少なくすることが、該粉体塗膜、ひいてはアルミ建材の生産コストの上昇を抑制しつつ、耐候性を確保する上で好ましい。
【0019】
これを、ポリエステル塗料成分とフッ素塗料成分の膜厚方向の分布を測定した表1によって説明すれば、表1は、膜厚42μmの粉体塗膜について、膜厚方向にその表層部分を赤外分光法によって吸光度を測定し、フッ素塗料/ポリエステル塗料(1700/1720cm−1)のピーク高さ比を求め、フッ素塗料比率0%、100%のときを元に検量線を作成し、フッ素の比率を各2回算出した結果を示したものである。
【0020】
表1によると、表面から膜厚方向に0.5μmの深さ位置においてポリエステル(P):フッ素(F)=5:5のとき、フッ素は93%(平均値)、P:F=7:3のとき87%(同)、P:F=8:2のとき76%(同)、P:F=3:7のとき95%(同)であり、また、表面から膜厚方向に11〜19μmの各深さ位置において、P:F=5:5のとき、フッ素は68%と95%(2回の実測値)、34〜42μmで64%と98%(同)の結果であった。配合比率に拘らず、粉体塗膜において膜厚方向にフッ素塗料成分が表面側に高密度に分布し、ポリエステル塗料成分がその下位の下地側に高密度に分布するも、膜厚方向に双方が分布することから、粉体塗膜においてこれらポリエステル塗料成分とフッ素塗料成分が積層するものではなく、それぞれが高密度分布したものであることが判明する。なお、上記P:F=7:3のときについて、裏面のフッ素を測定したところ、フッ素は2%(同)であった。従って、このとき0.5μmの87%と裏面の2%の合計を除いた残りの11%が、粉体塗膜の肉厚方向中間に分布しており、該肉厚方向に分布密度が低下していることが推認される。
【0021】
【表1】

【0022】
一方、図2及び図3に示す写真は、焼付工程前後の粉体塗膜の表面をマイクロスコープで撮影したものであり、図2は、顔料を添加してポリエステル塗料をホワイト色、フッ素塗料をグレー色に着色し、配合比率を上記7:3としてドライブレンドした後に静電塗装(ガン距離30cm)を施した表面の写真、図3は、これに更に180℃、20分の焼付(雰囲気加熱)を施した表面の写真である。
【0023】
図2は、ドライブレンドの配合比率に応じてホワイト色のポリエステル塗料が多く、グレーが少ない表面状態を呈するが、図3では、グレー色が表面に多量に出現し、ホワイト色が減少した表面状態を呈しており、従って、粉体塗膜におけるフッ素塗料成分が表面側で高密度分布域を形成していることが判明する。
【0024】
粉体塗膜の表面は、上記ポリエステル塗料とフッ素塗料をドライブレンドすることによってマット調のもの、特に測定角度60°の光沢度を25〜40%としたマット調のものとすることができる。
【0025】
ポリエステル塗料とフッ素塗料は、その熱溶融温度を高低異温度とするとともに相互に非相溶性の塗料であることから、焼付による表面形成時にポリエステル塗料とフッ素塗料が相互に弾き合う状態で硬化するため、表面粗さを形成し、該表面粗さが光の乱反射機能を発揮するとともに粉体塗膜のポリエステル塗料成分とフッ素塗料成分の異なる屈折率が該乱反射機能を促進する結果、粉体塗膜の表面を上記光沢度のマット調とするに至るものと認められる。
【0026】
即ち、高耐候ポリエステル粉体塗料(実測膜厚62μm)、熱硬化形フッ素粉体塗料(実測膜厚64μm)、溶剤系熱可塑形フッ素塗料(実測膜厚25μm)、上記ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料(実測膜厚60μm)による各粉体塗装を施して、その粉体塗膜の表面粗さと光沢度を測定した結果を表2に示す。平均膜厚を測定した膜厚計は株式会社フィッシャーインスツルメント製MP−30、表面粗さ計は株式会社小坂研究所製SurfcorderSE500、光沢計は株式会社村上色彩技術研究所製GMX−102(測定角度60°)を用いた。
【0027】
【表2】

【0028】
高耐候ポリエステル粉体塗料の表面粗さは0.3μm、光沢度は80%、熱硬化形フッ素粉体塗料の表面粗さは0.5μm、光沢度は66%、溶剤系熱可塑形フッ素塗料の表面粗さは0.4μm、光沢度は32%の結果であったが、ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料の表面粗さは1.0μm、光沢度は30%であり、従って、該ドライブレンド粉体塗料の粉体塗膜表面のマット調が、主に該表面粗さと光沢度に依存していることが判明した。
【0029】
一般にアルミ建材に使用される高耐候ポリエステル粉体塗料の粉体塗膜における光沢度は80%であり、この場合、そのグロス値が大きくなるため、商品化に当っては、該塗料にマット剤を添加してグロス値を小さくし、表面をマット調とすることがあるが、マット剤の使用は粉体塗膜の劣化要因となるところ、ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料によって、上記フッ素塗料成分高密度分布域による耐候性の確保に加えて、マット剤を使用することなく粉体塗膜の表面をマット調として、アルミ建材を高品位のものとすることができる。
【0030】
該ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料の光沢度は、測定箇所、膜厚、測定機器等によって幾分のバラツキが見られることがあるが、一般に下限を25%、上限を40%の範囲内のものとすることができる。
【0031】
粉体塗膜の膜厚は、常法に従って平均60μm〜100μmの範囲内のものとすればよく、これによって粉体塗膜は、屋外使用に適した耐候性とマット調の表面を有する高品位のものとして、アルミサッシ、アルミカーテンウォール、アルミ方立、アルミ門扉等、各種用途のアルミ製品に適用できる。
【0032】
以上の粉体塗膜を有するアルミ建材の生産方法は、上記ポリエステル塗料とフッ素塗料をドライブレンドしてドライブレンド粉体塗料を形成する塗料ドライブレンド工程と、アルミ建材の被塗物をなすアルミ押出材又はアルミ板に対して上記ドライブレンド粉体塗料を粉体塗装する静電塗装工程と、該粉体塗装した被塗物を、例えば200°程度の高温で熱溶融して上記ポリエステル塗料成分高密度分布域とフッ素塗料成分高密度分布域を形成する雰囲気加熱の加熱工程を経るものとしてあり、このとき、上記静電塗装工程及び加熱工程は、コンベアレールにハンガーを用いてアルミ建材の被塗物をスプレーブースと焼付ブースを経由するように搬送し、スプレーブースで粉体塗装を、焼付ブースで雰囲気加熱を施すように常法に従った粉体塗装を行なうようにすればよい。ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンドは、スプレーブースへの供給前に所定配合比率によって行えばよく、また、スプレーブースのオーバースプレー塗料は、これを回収して再利用して、塗料ロスをなくすようにすることが好ましい。
【0033】
ポリエステル塗料乃至フッ素塗料に顔料を添加して粉体塗膜を着色したものとすること、上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜とすること、上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜に電着塗装した電着塗膜とすることを含めて、本発明の実施に当って、アルミ建材、ポリエステル塗料、フッ素塗料、これらのブレンド粉体塗料、フッ素塗料成分高密度分布域、ポリエステル塗料成分高密度分布域、マット調表面の各具体的形状、構造、材質、生産方法、その条件等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態とすることができる。
【実施例1】
【0034】
板厚0.2×6×17cmのA6063S−T5材に、それぞれ共通の顔料によってグレー色の同色に着色した低温側のベース塗料としてポリエステル粉体塗料を、高温側の機能発揮塗料としてフッ素粉体塗料を、ポリエステル粉体塗料7、フッ素粉体塗料3の配合比率でドライブレンドして静電塗着した後、常温から180℃の雰囲気加熱を施してサンプルとし、メタルウエザー試験機とサンシャインウエザー試験機による促進耐候性試験を行い、前者で120時間毎、後者で500時間毎に取り出して色差計及び光沢計でそれぞれ色調変化と光沢保持率を測定した。メタルウエザー試験機による促進耐候性試験の結果を図4と図5に、サンシャインウエザー試験機による促進耐候性試験の結果を図6と図7に示す。
【実施例2】
【0035】
ドライブレンドの配合比率を、ポリエステル粉体塗料5、フッ素粉体塗料5とした以外、実施例1と同様とした。同じく、結果を図4と図5、図6と図7に示す。
【実施例3】
【0036】
ドライブレンドの配合比率を、ポリエステル粉体塗料3、フッ素粉体塗料7とした以外、実施例1と同様とした。同じく、結果を図4と図5、図6と図7に示す。
【比較例1】
【0037】
粉体塗料を、フッ素粉体塗料を用いず、顔料によってグレー色に着色したポリエステル粉体塗料のみで静電塗着した以外、実施例1と同様とした。同じく、結果を図4と図5、図6と図7に示す。
【比較例2】
【0038】
粉体塗料を、ポリエステル粉体塗料を用いず、顔料によってグレー色に着色したフッ素粉体塗料のみで静電塗着した以外、実施例1と同様とした。同じく、結果を図4と図5、図6と図7に示す。
【0039】
図4のメタルウエザー試験機による色差変化は、比較例1のポリエステル粉体塗料のみのサンプルにあって、試験開始後300時間経過時点でΔE=1.5、500時間経過時点でΔE=7.0であったのに対して、実施例1乃至3のポリエステル粉体塗料とフッ素粉体塗料をドライブレンドしたサンプルは、いずれも500時間経過時点でΔE=1.0以下であり、比較例2のフッ素粉体塗料のみのサンプルと殆ど同程度であった。
【0040】
同じく図5のメタルウエザー試験機による光沢保持率は、比較例1のポリエステル粉体塗料のみのサンプルにあっては、試験開始後360時間経過時点で85%程度、500時間経過時点で20%強であったのに対して、実施例1乃至3のポリエステル粉体塗料とフッ素粉体塗料をドライブレンドしたサンプルは、いずれも480時間経過時点で85%程度であり、比較例2のフッ素粉体塗料のみのサンプルより僅かに低下した程度であった。
【0041】
図6のサンシャインウエザー試験機による色差変化は、試験開始後1500時間経過時点で、いずれもΔE=1.0以下に納まって大差ないが、比較例1のポリエステル粉体塗料のみのサンプルにあっては、試験開始後2000時間経過後にΔE=1.25程度、2500時間経過時点でΔE=1.5であったのに対して、実施例1乃至3のポリエステル粉体塗料とフッ素粉体塗料をドライブレンドしたサンプルは、2000時間、2500時間経過時点でいずれもΔE=1.0以下であり、比較例2のフッ素粉体塗料のみのサンプルより僅かに高い程度であった。
【0042】
同じく図7のサンシャインウエザー試験機による光沢保持率は、比較例1のポリエステル粉体塗料のみのサンプルにあっては、試験開始後1000時間経過時点で100%を僅かに下回る程度で大差ないが、試験開始後1500時間経過時点で75%程度、2000時間経過時点で45%程度、2500時間経過後で数%であったのに対して、実施例1乃至3のポリエステル粉体塗料とフッ素粉体塗料をドライブレンドしたサンプルは、いずれも2500時間経過時点で90%程度であり、比較例2のフッ素粉体塗料のみのサンプルより僅かに低下した程度であった。
【0043】
以上から、ポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料の粉体塗装によって形成したアルミ建材の粉体塗膜が、上記膜厚方向表面側のフッ素塗料成分高密度分布域によって、高度な耐候性を呈すること、実施例1乃至3のドライブレンドの配合比率によって耐候性に大差を生じないことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非相溶性にして熱溶融温度高低異温度のポリエステル塗料とフッ素塗料のドライブレンド粉体塗料の粉体塗装によって形成した粉体塗膜を有するアルミ建材であって、該粉体塗膜を、膜厚方向表面側にフッ素塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐候性を付与したフッ素塗料成分高密度分布域と、膜厚方向下地側にポリエステル塗料成分を高密度に分布することによって塗膜に耐衝撃性を付与したポリエステル塗料成分高密度分布域と、測定角度60°の光沢度を25〜40%としたマット調表面を備えて形成してなることを特徴とする屋外使用の粉体塗装アルミ建材。
【請求項2】
上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材。
【請求項3】
上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した化成皮膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材。
【請求項4】
上記粉体塗膜の下地を、アルミ押出成形材又はアルミ板材に形成した陽極酸化皮膜に電着塗装した電着塗膜としてなることを特徴とする請求項1に記載の屋外使用の粉体塗装アルミ建材。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40503(P2012−40503A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183741(P2010−183741)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】