説明

屋外施設用舗装体の製法およびそれに用いられる表面仕上げ材、並びにそれによって得られる屋外施設用舗装体

【課題】安全な作業で、優れた物性を備えた凹凸ある舗装面を簡単に形成することのできる屋外施設用舗装体の製法と、それに用いられる表面仕上げ材と、その製法によって得られる屋外施設用舗装体とを提供する。
【解決手段】その表面が平坦でJIS A硬度が40〜65のポリウレタンベース層10の上に、個別に計量された特定のA剤とB剤とを、2液型スプレーマシンを用いて混合状態で吹き付けることにより、高低差2.0mm以上の凹凸表面11を有するポリウレタン表面仕上げ層12を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外施設用舗装体の製法およびそれに用いられる表面仕上げ材、並びに上記製法によって得られる屋外施設用舗装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全天候型陸上競技場、多目的運動場、公園や遊歩道等の屋外施設における舗装面は、(1)その外観を、長期間にわたって美麗に維持すること、(2)その面が果たす機能に応じて必要な特性を付加すること、(3)これらの施設の利用者の安全を確保すること、等の要求に応じるために、弾性舗装体からなるベース層の表面に、各種の表面仕上げ材を用いて凹凸ある表面層を形成することによって仕上げられることが多い。
【0003】
このような舗装仕上げ方法としては、例えば図3に示すように、平坦なポリウレタン舗装弾性体1の表面に、ポリウレタン発泡体粒子2を含む二液硬化型のポリウレタン樹脂組成物3を吹き付けて凹凸に塗装する方法(特許文献1参照)が知られている。
【0004】
また、表面層を凹凸に仕上げるのではなく、例えば図4に示すように、ベース層として、加硫ゴムやウレタンエラストマー等の弾性チップ4をウレタン系のバインダー5で接着した弾性マット6を用い、その凹凸面の上に、弾性チップを含まない速硬化型ウレタンエラストマーの表層7を形成する方法(特許文献2参照)や、同じく、特定の発泡ポリウレタン樹脂中に軟質発泡体のチップを含有する材料を基盤上に塗布して下層とし、その上に非発泡のポリウレタン材料を積層してなる弾性舗装材(特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭57−55846号公報
【特許文献2】特開昭63−304804号公報
【特許文献3】特開平11−81210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように、弾性粒子(チップ)を含有するポリウレタン組成物をスプレーノズル等から噴射して凹凸仕上げ面に得る方法では、その吹き付け面に弾性粒子を均一に分布させることが容易でなく、また目的とする高低差の凹凸面を得ることも容易でないという問題がある。そして、凹凸を構成する弾性粒子が経時的に脱落するおそれがあり、耐久性の点においても問題がある。
【0007】
一方、上記特許文献2,3のように、下層表面の凹凸を損なうことなく、その上に表層を形成する場合は、流動性に優れ、しかも凹凸の底に流れ込まないような粘性を備えた表層用の仕上げ材を調製する必要があり、そのコントロールが容易でなく、最終的に得られる凹凸面の高低差が小さいものとならざるを得ないという問題がある。
【0008】
さらに、ポリウレタン組成物を用いる多くの表面仕上げ材には、従来から、そのウレタンプレポリマー成分として、トリレンジイソシアネート(以下「TDI」という)が汎用されているが、上記TDIは、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」という)に比べて、常温における空気中の飽和蒸気圧が高く、スプレー作業に際してはその蒸気を吸い込む可能性が高い。このため、作業環境の安全衛生や作業者の安全の点から、TDIに代えてMDIを使用することが検討されているが、MDIはTDIに比べて、本質的にポリオール成分との反応が早く、そのコントロールが困難なため、A剤とB剤の混合液をスプレーノズル等から噴射させてむらなく凹凸面を形成することはできないという問題がある。
【0009】
また、従来から、ポリウレタン組成物に対し優れた架橋剤として使用されてきた3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(以下「MOCA」という)も、人体に対し発ガン性を有するおそれがあることから、MOCAを使用しない新しい舗装方法が、各種検討されている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、上記TDIやMOCAを用いることなく安全な作業で、優れた物性を備えた凹凸ある舗装面を簡単に形成することのできる屋外施設用舗装体の製法と、それに用いられる表面仕上げ材と、その製法によって得られる屋外施設用舗装体との提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、凹凸表面を有するポリウレタン表面仕上げ層が形成された屋外施設用舗装体の製法であって、その表面が平坦でJIS A硬度が40〜65のポリウレタンベース層の上に、個別に計量された下記のA剤とB剤とを、2液型スプレーマシンを用いて混合状態で吹き付けることにより、高低差2.0mm以上の凹凸表面を有するポリウレタン表面仕上げ層を形成するようにした屋外施設用舗装体の製法を第1の要旨とする。
(A剤)MDIとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とし、弾性チップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が1,000〜10,000mPa・sに調製された組成物。
(B剤)ポリオールを主成分とし、架橋剤、充填剤、触媒、無機揺変剤を含有し、弾性チップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が70,000〜200,000mPa・sに調製された組成物。
【0012】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記A剤、B剤として、この2剤を混合して得られる混合液のポットライフが5〜20秒、タックフリータイムが150秒以下となる反応性を有するものを用いるようにした屋外施設用舗装体の製法を第2の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、それらのなかでも、特に、上記A剤に用いられるウレタンプレポリマーが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールと、MDIとの反応から得られるイソシアネート基末端プレポリマーであって、NCO含有量が3〜10重量%の範囲内である屋外施設用舗装体の製法を第3の要旨とし、上記B剤に用いられるポリオールが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールである屋外施設用舗装体の製法を第4の要旨とする。
【0014】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記B剤に用いられる架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である屋外施設用舗装体の製法を第5の要旨とし、上記ポリウレタンベース層がMDIとポリオールとの反応によって得られるものである屋外施設用舗装体の製法を第6の要旨とし、上記A剤が、有機揺変剤を0.1〜2.6重量%含有するものである屋外施設用舗装体の製法を第7の要旨とする。
【0015】
そして、本発明は、上記第1の要旨である屋外施設用舗装体の製法に用いられる表面仕上げ材であって、下記のA剤とB剤からなる表面仕上げ材を第8の要旨とする。
(A剤)MDIとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とし、弾性チップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が1,000〜10,000mPa・sに調製された組成物。
(B剤)ポリオールを主成分とし、架橋剤、充填剤、触媒、無機揺変剤を含有し、弾性チップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が70,000〜200,000mPa・sに調製された組成物。
【0016】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記A剤とB剤とが、この2液を混合して得られる混合液のポットライフが5〜20秒、タックフリータイムが150秒以下となる反応性を有するものである表面仕上げ材を第9の要旨とする。
【0017】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記A剤に用いられるウレタンプレポリマーが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールと、MDIとの反応から得られるイソシアネート基末端プレポリマーであって、NCO含有量が3〜10重量%の範囲内である表面仕上げ材を第10の要旨とし、上記B剤に用いられるポリオールが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールである表面仕上げ材を第11の要旨とする。
【0018】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、上記B剤に用いられる架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である表面仕上げ材を第12の要旨とし、上記A剤が、有機揺変剤を0.1〜2.6重量%含有するものである表面仕上げ材を第13の要旨とする。
【0019】
また、本発明は、上記第1〜第7のいずれかの要旨である製法によって得られる屋外施設用舗装体であって、その表面が平坦でJIS A硬度が40〜65のポリウレタン硬化体からなるベース層の上に、弾性チップを含まず高低差2.0mm以上の凹凸表面を有し、破断伸び率が500%以上のポリウレタン表面仕上げ層が形成されている屋外施設用舗装体を第14の要旨とする。
【0020】
さらに、本発明は、そのなかでも、特に、舗装体の物性が、変位量0.6〜2.2mm、衝撃吸収率34〜51%であり、陸上競技場の舗装体として用いられる屋外施設用舗装体を第15の要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
すなわち、本発明の屋外施設用舗装体の製法は、MDIを主成分とし粘度が特定の範囲に設定されたウレタンプレポリマー系組成物(A剤)と、粘度が特定の範囲に設定された特殊なポリオール系組成物(B剤)とを、個別に計量した上で、2液型スプレーマシンを用いて混合状態で吹き付けることにより、2.0mm以上という大きな高低差の凹凸表面を有するポリウレタン表面仕上げ層(以下、単に「表面仕上げ層」という)を得るようにしたものである。この方法によれば、従来のように、ベース層の表面に凹凸を形成し、その上に凹凸形状に沿って表面仕上げ層を形成したり、弾性チップによって凹凸が付与された表面仕上げ層を形成したりする必要がなく、平坦なベース表面上に、高低差のある凹凸を、短時間で均一に形成していくことができ、非常に作業性がよい。しかも、A剤が、TDIではなくMDIを主成分としているため、作業者や周辺環境に対して安全性を確保することができる。また、得られるポリウレタン表面仕上げ層は、弾性チップを含有しないため、長期の経時において弾性チップとポリウレタン樹脂間の密着性が低下し弾性チップが脱落する等の問題が生じないことから、非常に耐久性に優れている。
【0022】
また、本発明の製法において、A剤、B剤として、この2剤を混合して得られる混合液のポットライフが5〜20秒、タックフリータイムが150秒以下となる反応性を有するものを用いた場合には、とりわけ2液の反応性が高く、かつその制御性に優れるため、非常に短時間で、凹凸ある表面仕上げ層を形成することができ、好適である。また、反応が早く樹脂物性の発現も早いため、すぐにつぎの作業に取りかかることができ、全体の工期を短縮することができるという利点を有している。
【0023】
さらに、本発明の製法において、特に、上記A剤に用いられるウレタンプレポリマーは、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールと、MDIとの反応から得られるイソシアネート基末端プレポリマーであって、NCO含有量が3〜10重量%の範囲内であることが好適であり、上記B剤に用いられるポリオールは、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールであることが好適である。
【0024】
そして、本発明の製法において、特に、上記B剤に用いられる架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤、より望ましくはジエチルトルエンジアミン(以下「DETDA」という)である場合には、安全性に問題のあるMOCAを用いることなく、安全で効率よく作業を進めることができる。
【0025】
また、本発明の製法において、下地となるポリウレタンベース層は、MDIとポリオールとの反応によって得られるものであることが、表面仕上げ層との成分が共通となって好適である。そして、上記A剤が、有機揺変剤を0.1〜2.6重量%含有するものである場合には、より均一な凹凸形状が分布し、かつ優れた物性の表面仕上げ層を得ることができる。
【0026】
さらに、本発明の表面仕上げ材によれば、上記本発明の屋外施設用舗装体の製法を、効率よく実施することができる。
【0027】
そして、本発明の屋外施設用舗装体は、高低差2.0mm以上の凹凸表面を有し、弾性舗装体として優れた物性の表面仕上げ層が形成されているため、その舗装面上で、歩行や運動を行う人が安全に、しかも機能的に動くことができる。
【0028】
また、本発明の屋外施設用舗装体において、特に、舗装体の物性が、変位量0.6〜2.2mm、衝撃吸収率34〜51%であり、陸上競技場の舗装体として用いられるものは、国際陸上競技連盟が定める規格(IAAF規格)を満足する優れた品質を備えているため、国際陸上競技大会等、高い水準の競技大会に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態である製法の説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態である製法の説明図である。
【図3】従来の弾性舗装材の表面仕上げ構造の一例を示す説明図である。
【図4】従来の弾性舗装材の表面仕上げ構造の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0031】
まず、本発明に用いられる表面仕上げ材は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤と、ポリオールを主成分とし架橋剤、充填剤、触媒および無機揺変剤を含有するB剤とを組み合わせてなるポリウレタン組成物によって構成されている。
【0032】
上記A剤の主成分であるウレタンプレポリマーに用いられるイソシアネートとしては、MDI類が用いられる。なかでも、モノメリックMDIを用いることが好適である。モノメリックMDIとしては、4,4′−MDIだけでなく、2,4′−MDIや2,2′−MDIも含まれる。しかし、これらの異性体を多く使用すると、反応性の低下や物性の低下が懸念されるため、これらを使用する場合は、モノメリックMDI中、70重量%以下の割合で使用することが好ましい。なお、70重量%以上の2,4′−MDIや2,2′−MDIを含むモノメリックMDIを入手することは、経済的な理由からも好ましくない。
【0033】
そして、上記モノメリックMDIは、単独で用いてもよいし、MDIの多量体であるポリメリックMDIやモノメリックMDIの変性体と組み合わせて使用することもできる。しかし、これらの使用は、ウレタンプレポリマーの粘度が高くなりすぎるおそれがあり、また物性、特に伸び率が低下する問題もあるため、これらを使用する場合、モノメリックMDIに対し50重量%以下の割合で使用することが好ましい。
【0034】
また、本発明に用いられるウレタンプレポリマーにおいて、上記ポリイソシアネートとともに用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリカプロラクタンポリオール、ポリエステルポリオール等があげられ、なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールに、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加重合して得られるポリオキシアルキレンポリオールが好適に用いられる。そして、そのなかでも、特に好ましいのは、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平均分子量2,000〜8,000であり、かつポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールが好適である。
【0035】
すなわち、平均ヒドロキシル官能基数が2未満、OH価が20mgKOH/g未満、または平均分子量が8,000を超える場合は、ポリウレタンの硬化が著しく阻害されるのであり、平均ヒドロキシル官能基数が4超、OH価が100mgKOH/g超、または平均分子量が2,000未満の場合は、硬化したポリウレタンの硬度が高くなりすぎて、好ましくない。また、ポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%を超えると、スプレー施工時に、水分の影響によるボイドや粘着等の欠陥が起きやすくなり、やはり好ましくない。
【0036】
本発明に用いられるウレタンプレポリマーは、上記ポリイソシアネートとポリオールとを用い、例えば、つぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、上記ポリイソシアネートを、ポリオールに対し過剰となる割合で、ポリオールと混合する。そして、所定温度(例えば50〜120℃)で撹拌することにより、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0037】
上記ウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート含有量(以下「NCO%」という)は、3.0〜10.0重量%、なかでも、4.0〜6.0重量%に設定することが好適である。すなわち、NCO%が低すぎると、ウレタンプレポリマーの粘度が大きくなり、B剤との混合が困難になる。また、得られる表面仕上げ層に粘着性が残留するおそれもある。一方、NCO%が高すぎると、反応の進行が早くなって表面に粘着性が残留する時間は短くなるが、反応が早すぎて吹き付け施工が困難になるおそれがある。また、NCO%が高すぎても、低すぎても、A剤とB剤の混合比率のバランスが悪くなり、混合不具合が発生する危険性が高くなり、好ましくない。
【0038】
また、本発明に用いられるA剤には、上記ウレタンプレポリマーとともに、必要に応じて、無機揺変剤や有機揺変剤を配合することができる。上記無機揺変剤や有機揺変剤は、チクソトロピック性を上げることに効果を発揮する。その結果、その混合液をスプレーすることによって、より効果的に、表面仕上げ層に凹凸形状を付与することができる。
【0039】
なお、無機揺変剤や有機揺変剤は、その添加のしやすさから、通常、B剤側に配合されるが、B剤の粘度がすでに充分に高く、スプレーマシン等の可動のために限界にあり、B剤側のチクソトロピック性の調整だけでは表面仕上げ層の凹凸形成が不充分になるおそれがある場合には、A剤側に無機揺変剤や有機揺変剤を配合することが非常に有効である。
【0040】
ただし、A剤の主成分はNCO基末端のウレタンプレポリマーであるため、無機揺変剤を使用すると、粘度の調整が難しいこと、無機揺変剤に含まれている水分を完全に除外することが困難なこと(水分が残存しているとウレタンプレポリマーと反応する)、無機揺変剤が分離しやすいことから、主として有機揺変剤を用いることが好適である。
【0041】
上記有機揺変剤は、ウレタンプレポリマーと反応を起さない構成であることが重要であり、反応性の高い水酸基やアミノ基のような活性水素を含有しておらず、液状であることが望ましい。このような有機揺変剤としては、例えばポリエステルエーテル系化合物があげられる。そして、上記有機揺変剤の配合量は、A剤全体に対し、0.1〜2.6重量%に設定することが好ましい。有機揺変剤が少なすぎると、有機揺変剤を配合する効果に乏しく、有機揺変剤が多すぎても、必要以上の効果は得られないからである。
【0042】
そして、上記有機揺変剤とともに無機揺変剤を用いる場合は、無機揺変剤中から、あるいは無機揺変剤の分散過程で、A剤中に水分を持ち込まないよう充分注意することが重要である。
【0043】
また、上記A剤には、可塑剤や消泡剤等、必要に応じて適宜の添加剤を配合することができる。上記可塑剤としては、ジイソノニルフタレート(以下「DINP」という)、ジイソノニルアジペート(以下「DINA」という)、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等があげられる。上記消泡剤としては、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等があげられる。
【0044】
これらの必須成分および任意成分からなるA剤の粘度は、1,000〜10,000mPa・s/30℃に設定することが必要で、より好ましくは、3,000〜6,000mPa・s/30℃である。粘度が低すぎると、チクソトロピック性が充分に発揮できず、反応させた後の凹凸形状の形成に不利になる。また粘度が高すぎると、スプレーマシンによる吹き付け施工が困難になりやすいからである。
【0045】
なお、本発明における「粘度」とは、B型粘度計〔BH式〕によって、7号ロータ、20rpm、30℃の条件で測定される値をいう。
【0046】
一方、本発明のB剤の主成分に用いられるポリオールは、好ましくは、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であり、かつポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールである。なお、上記ポリオールの種類は、A剤のウレタンプレポリマーに用いるポリオールと同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
上記ポリオールが、平均ヒドロキシル官能基数が2未満、OH価が20mgKOH/g未満、および平均分子量が2,000未満の場合は、ポリウレタンの硬化が著しく阻害されるのであり、平均ヒドロキシル官能基数が4超、OH価が100mgKOH/g超、および平均分子量が8,000超の場合は、硬化したポリウレタンの硬度が高くなりすぎることから、好ましくない。また、ポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%を超えると、スプレー施工時に、水分の影響によるボイドや粘着等の欠陥が起きやすくなり、やはり好ましくない。
【0048】
また、上記B剤において、上記ポリオールとともに用いられる架橋剤としては、DETDA、イソブチル−4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート(ICDAB)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)等があげられる。なかでも、芳香族アミン系架橋剤を用いることが、強度や伸び等の性能維持・向上効果を得る上で好適であり、特に、DETDAが好ましい。
【0049】
そして、上記B剤に用いられる充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、タルク、無水石膏(CaSO4 )、雲母等があげられ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの充填剤の配合量は、B剤全体に対し80重量%以下、例えば30〜70重量%に設定することが好適である。
【0050】
さらに、上記B剤に用いられる触媒としては、オクチル酸鉛(OctPb)、ナフテン酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジラウレート等があげられる。
【0051】
また、上記B剤に用いられる無機揺変剤は、B剤のチクソトロピック性を上げることに作用し、前記A剤と混合してスプレーする際に、より効果的に、表面仕上げ層に凹凸形状を付与することができる。このような無機揺変剤としては、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム、カーボンブラック、コロイド状シリカ等があげられ、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの無機揺変剤の配合量は、B剤全体に対し5〜20重量%に設定することが好ましい。無機揺変剤の配合量が少なすぎると、表面仕上げ層における凹凸形状の形成効果が乏しくなるおそれがあり、逆に、無機揺変剤の配合量が多すぎると、B剤の粘度が高くなりすぎて好ましくない。
【0052】
なお、上記無機揺変剤とともに、有機揺変剤を組み合わせて用いることができる。この場合、有機揺変剤の配合量は、B剤全体に対し、1.5重量%以下に設定することが好適である。ただし、B剤に有機揺変剤を使用する際は、B剤の粘度が上がりすぎることのないよう、充填剤、無機揺変剤、および有機揺変剤の配合割合を調整することが難しい。これらの理由のため、有機揺変剤はA剤に配合し、充填剤と無機揺変剤はB剤に配合することが好ましい。
【0053】
また、上記B剤には、これらの必須成分以外に、必要に応じて、着色剤、吸湿剤、消泡剤、可塑剤、安定剤、レベリング剤、改質剤等を、適宜添加することができる。上記着色剤としては、酸化第二鉄、酸化チタン、ベンガラ、酸化クロム等があげられ、吸湿剤としては、ゼオライト等があげられる。また、消泡剤としては、A剤と同様、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等があげられ、上記可塑剤としては、A剤と同様、DINP、DINA、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等があげられる。さらに、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ベンゾチアゾール等があげられる。これらの任意成分のうち、A剤においても用いられるものは、A剤と同一種類のものを用いても異なる種類のものを用いてもよい。
【0054】
そして、上記B剤は、好適には、上記ポリオール15〜30重量%、芳香族アミン系架橋剤2.5〜5.0重量%、充填剤45〜55重量%、触媒1〜3重量%、揺変剤10〜15重量%、添加剤類7〜15重量%、の割合で混合することによって得ることができる。
【0055】
このようにして得られるB剤の粘度は、70,000〜200,000mPa・s/30℃に設定することが必要で、より好ましくは、90,000〜150,000mPa・s/30℃である。B剤の粘度が低すぎると、チクソトロピック性が充分に発揮できず、物性的に問題が生じやすいとともに、得られる凹凸形状の高低差が不充分になりやすい。一方、粘度が高すぎると、スプレーマシンによる吹き付け施工が困難になるからである。
【0056】
また、上記B剤のチクソトロピーインデックス(以下「TI値」という)は、5.0〜8.0に設定することが好ましい。すなわち、TI値が上記範囲よりも小さいと、本発明が目的とする凹凸形状を得ることが難しい。逆に、TI値が上記範囲よりも大きいと、スプレーマシンによる吹き付け施工が困難になりやすいからである。
【0057】
なお、本発明における「TI値」は、B型粘度計〔BH式〕によって、7号ロータ、20rpm、30℃の条件で測定した粘度と、他の条件は同じで回転速度を2rpmに変えて測定した粘度から、下記の式(1)にしたがって求めたものである。
【0058】
TI値=〔2rpm時の粘度〕/〔20rpm時の粘度〕 ……(1)
【0059】
そして、上記A剤、B剤は、ともにウレタンチップやゴムチップ等の弾性チップを含まないものである。すなわち、本発明は、弾性チップ不含のA剤とB剤を混合状態で、表面が平坦なウレタンベース層の表面に吹き付けることによって、凹凸形状を形成しながら硬化させ、短時間で、必要充分な凹凸表面を有する表面仕上げ層を得ることが最大の特徴である。
【0060】
本発明の屋外施設用舗装体を形成するには、上記A剤とB剤とを、互いに適宜の割合となるようそれぞれ計量して、2液型スプレーマシンに導入し、2液を混合状態で、図1に示すような、表面が平坦のポリウレタンベース層10の表面に吹き付ける。これにより、図2に示すように、上記ポリウレタンベース層10の上に、凹凸表面11を有する表面仕上げ層12を形成して、目的とする屋外施設用舗装体を得ることができる。
【0061】
このようにして得られた屋外施設用舗装体の表面仕上げ層12は、A剤とB剤の反応性が早く、ポットライフも短いものでありながら、A剤とB剤がともに適度な粘度に設定された特殊な構成になっているため、2液型スプレーマシンからの吹き付けによって、ポリウレタンベース層10の上に、つぎつぎとむらなく凹凸を形成しつつ硬化したものであり、凹凸表面11の高低差が2.0mm以上、という優れた形状を有している。そして、その物性も、破断伸び率が500%以上という、屋外施設用舗装体として非常に優れたものとなる。そして、上記凹凸表面が、ゴムチップ等の弾性粒子を含まないものであるため、スパイク等で繰り返し衝撃を受けても、弾性粒子の脱落等による摩耗がなく、長期にわたって、その特性が維持されるという利点を有する。
【0062】
なお、上記屋外施設用舗装体の製法において、A剤とB剤を混合した際の反応性は、ポットライフが5〜20秒、タックフリータイムが150秒以下、より好ましくは60秒以下であることが、必要な凹凸高低差のある表面仕上げ層を得るために好適である。反応性がこれ以上高いと、スプレーする際にマシントラブルが起こりやすくなり、逆に、反応性が低いと、スプレー直後の樹脂形状保持力が弱く、必要な凹凸高低差のある表面仕上げ層が得られにくくなるからである。
【0063】
そして、上記のような好ましい反応性を得るには、A剤とB剤を混合する際の混合比率を、そのイソシアネートと活性水素の当量比が0.9〜1.4となるように設定することが好適である。すなわち、上記当量比が0.9未満では、得られる表面仕上げ層の硬度や耐久性等の物性が低下するおそれがあり、逆に、上記当量比が1.4を超えると、伸び率が低下したりタックフリータイムが長くなりすぎるおそれがあるからである。
【0064】
また、上記屋外施設用舗装体の製法において、表面仕上げ材を吹き付けるポリウレタンベース層10は、ポリウレタンを主成分とし、JIS A 硬度が40〜65の層であればよい。硬度がこの範囲から外れると、いかに表面仕上げ材を調整しても、好ましい物性の舗装体を得ることは困難となる。なお、上記ポリウレタンベース層10は、ポリウレタンのみで構成される必要はなく、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブタジエン等、他の樹脂成分やゴム成分が混合されていても差し支えない。新規に施工する場合のポリウレタンベース層としては、施工時の安全衛生上の観点から、TDIプレポリマーやMOCAを使用する材料ではなく、MDIプレポリマーや非MOCA系架橋剤の材料を選択することが好ましい。
【0065】
さらに、上記屋外施設用舗装体の製法において用いられる2液型スプレーマシンは、A剤とB剤を各個別に本体内に導入し、混合状態で吐出できるようになっているものが好適である。そして、高圧タイプであっても低圧タイプであってもよく、2液の混合液を吐出する場合のエア圧や吐出量も、その液性や目的とする表面仕上げ層12の厚み等に応じて、適宜に設定される。
【0066】
このようにして得られる本発明の屋外施設用舗装体は、屋外に設置される各種施設に用いられるものであり、より具体的には、陸上競技場や公園、遊歩道、ジョギング走路、多目的運動場、テニスコート等に設けられる人工面等に対する舗装仕上げ、防水仕上げ等に好適に用いることができる。
【0067】
しかも、本発明によれば、得られる屋外施設用舗装体を、変位量0.6〜2.2mm、衝撃吸収率34〜51%となるよう仕上げることができる。これらの値は、IAAF規格を満足するものであるため、国際陸上競技大会等、高い水準の競技大会に供することができる。
【実施例】
【0068】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限るものではない。なお、以下に示す成分組成は、すべて重量基準である。
【0069】
<A剤の調製>
下記の表1、表2に記載されたモノメリックMDI(4,4′−MDI含量が60%のもの)とポリオール等を窒素雰囲気下で混合し、80℃で20時間反応させた後冷却することにより、末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とするA剤(A−1〜A−8)を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
<B剤の調製>
下記の表3、表4に記載されたポリオール等を高速回転撹拌機で混合することにより、ポリオールを主成分とするB剤(B−1〜B−7)を得た。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
〔実施例1〕
A剤としてA−1、B剤としてB−1を用い、混合比(イソシアネートと活性水素の当量比)を1.25とした。混合液の反応性は、ポットライフが12秒、タックフリータイムが50秒であった。このA剤とB剤を、2液型スプレーマシン(グラコ製、ハイドラキャット HP)を用いて混合状態で、表面が平坦なポリウレタンベース層(JIS A硬度50)の表面に、2.5kg/m2 の吹き付け量でスプレーし、養生硬化させることにより表面仕上げ層を形成して、目的とする舗装体を得た。この表面仕上げ層の表層は、凹凸高低差が2.5mmであり、屋外施設用舗装材として使用するに優れたものが得られた。また、この表面仕上げ層からなる舗装体の物性は、変位量が1.0mm、衝撃吸収率が35.2%であり、IAAF規格を満足するものであった。また、別途このA剤とB剤とを混合して得られたシートの破断伸び率は650%であり、要求値(500%以上)を満足するものであった。
【0076】
なお、上記実施例1における各物性値は、それぞれ下記の方法によって得られた値である。
【0077】
〔凹凸高低差〕
表面仕上げ層の表面の任意の10個所における高低差を計測し、その平均値(mm)を算出した。
【0078】
〔変位量〕
IAAF基準試験方法に従って、IAAF基準に定める垂直歪試験機を舗装体面上に垂直に設置し、所定の高さから20kg鎮を落下させて、変位量を計測した。
【0079】
〔衝撃吸収率〕
IAAF基準試験方法に従って、IAAF基準に定める衝撃吸収試験機を舗装体面上に垂直に設置し、所定の高さから20kg鎮を落下させて、衝撃吸収値を計測した。
【0080】
〔破断伸び率〕
A剤とB剤を混合後、これを、型内面にフッ素樹脂加工を施した、縦300mm×横150mm×深さ2mmのアルミ型(離型剤は不使用、常温)により成型し、23℃×7日(もしくは23℃×1日+50℃×1日)の間、養生を行うことにより、厚み2mmのシートを得た。このシートに対し、JIS−K6251に準じて破断伸び率(%)を測定した。
【0081】
〔実施例2〜8、比較例1〜6〕
上記実施例1と同様にして、前記8種類のA剤と7種類のB剤とを、後記の表5〜表8に示すように組み合わせて用いることにより、目的とする表面仕上げ層からなる舗装体を得た。
【0082】
これらの実施例品、比較例品の物性等について下記のとおり評価し、その結果を後記の表5〜表8に併せて示した。
【0083】
〔反応性〕
ポットライフ:A剤とB剤を混合してから、反応混合物の流動性がなくなるまでの時間 (秒)
タックフリータイム:A剤とB剤を混合してから、表面を指で触った時に、粘着がなく なるまでの時間(秒)
【0084】
〔表面層の粘着性〕
上記タックフリータイムが150秒以下である場合を「○」、150秒を超える場合を「×」として評価した。
【0085】
〔混合性〕
A剤とB剤を2液型スプレーマシンを用いて混合状態で吐出する際の混合状態を、肉眼で観察し、○…良好、×…不良、の2段階で評価した。
【0086】
〔凹凸高低差〕
実施例1の場合と同様、表面仕上げ層の表面の任意の10個所における高低差を計測し、その平均値(mm)を算出した。
【0087】
〔凹凸パターン〕
表面仕上げ層の表面における凹凸パターンを肉眼で観察し、○…均一でむらがない、×…不均一でむらがある、の2段階で評価した。
【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
上記の結果から、下記のように考察することができる。
【0093】
〔A剤ポリイソシアネートのNCO%の影響〕
A剤中のポリイソシアネートのNCO%が3.0〜10.0%では良好な表面が得られた(実施例2、3)が、12.0%では均一な表面が得られなかった(比較例1)。また、NCO%が小さくなるとともに、A剤の粘度も大きくなっており、使用できるA剤の粘度範囲も1,000〜10,000mPa・s/30℃であると考えられる。
【0094】
〔A剤中の揺変剤の効果〕
A剤中の有機揺変剤量が0.1〜2.6部(0.1〜2.53%)の場合は何れも表面層の凹凸高低差が2.0mm以上であったが(実施例1、4、5)、有機揺変剤を含まない場合は凹凸高低差は0.5mmしかなかった(比較例2)。また、有機揺変剤を3.4部(3.29%)に増やしても、高低差には、増量効果はみられなかった(実施例6)。
【0095】
〔B剤の粘度の影響〕
A剤にA−1を用い、B剤の粘度が76,000〜147,000mPa・s/30℃の場合は良好な表面層が得られた(実施例1、7、8)が、粘度が23,000mPa・s/30℃だと表面層の凹凸高低差が1.0mmしかなかった(比較例3)。また、粘度が200,000mPa・s/30℃を超えると均一な表面層が得られなかった(比較例4、5)。
【0096】
〔B剤中の揺変剤の効果〕
使用する無機揺変剤量が増えるとともに、B剤の粘度は増加している(実施例7、実施例1、実施例8、比較例4)。したがって、無機揺変剤を使用することは、本発明に必要なB剤の粘度を得るために、効果的である。しかしながら、B剤に無機揺変剤とともに有機揺変剤を併用すると、粘度が使用上限を超えやすい(比較例5)。このため、有機揺変剤はA剤に使用することが好ましい。
【0097】
〔反応性の影響〕
ポットライフが25秒、タックフリータイムが170秒のものをスプレーして表面仕上げ層を得たが、その凹凸高低差は0.5mmしかなかった(比較例6)
【0098】
〔実施例9〜12〕
A剤としてA−1、B剤としてB−1を用い、A剤とB剤を混合する際のイソシアネートと活性水素の当量比を、0.8、0.9、1.3、1.5の4通りに変更した。それ以外は、実施例と同様にして、4種類の実施例9〜12とした。これらの結果から、上記当量比は、0.9〜1.4の範囲が適当であることがわかった。すなわち、当量比が0.9未満だと、反応が充分に進まないため、得られる表面仕上げ層の硬度が低下する等、その物性が不充分なものとなってしまった。また、当量比が1.4を超えた場合は、伸び率が低下したり、タックフリータイムが長くなり表面仕上げ層の硬化後に粘着が残りやすくなった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、全天候型陸上競技場、多目的運動場、公園や遊歩道等の屋外施設における舗装体として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
10 ポリウレタンベース層
11 凹凸表面
12 表面仕上げ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸表面を有するポリウレタン表面仕上げ層が形成された屋外施設用舗装体の製法であ
って、その表面が平坦でJIS A硬度が40〜65のポリウレタンベース層の上に、個
別に計量された下記のA剤とB剤とを、2液型スプレーマシンを用いて混合状態で吹き付
けることにより、高低差2.0mm以上の凹凸表面を有するポリウレタン表面仕上げ層を
形成することを特徴とする屋外施設用舗装体の製法。
(A剤)ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とし、弾性チップを含まず、3
0℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が1,000〜10,000mPa
・sに調製された組成物。
(B剤)ポリオールを主成分とし、架橋剤、充填剤、触媒、無機揺変剤を含有し、弾性チ
ップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が70,000〜
200,000mPa・sに調製された組成物。
【請求項2】
上記A剤、B剤として、この2剤を混合して得られる混合液のポットライフが5〜20
秒、タックフリータイムが150秒以下となる反応性を有するものを用いるようにした請
求項1記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項3】
上記A剤に用いられるウレタンプレポリマーが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平
均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含
有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネ
ートとの反応から得られるイソシアネート基末端プレポリマーであって、NCO含有量が
3〜10重量%の範囲内である請求項1または2記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項4】
上記B剤に用いられるポリオールが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜
100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中の
ポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールである請
求項3に記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項5】
上記B剤に用いられる架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である請求項1〜4のいずれか
一項に記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項6】
請求項1記載のポリウレタンベース層がジフェニルメタンジイソシアネートとポリオー
ルとの反応によって得られるものである請求項5記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項7】
上記A剤が、有機揺変剤を0.1〜2.6重量%含有するものである請求項1〜6のい
ずれか一項に記載の屋外施設用舗装体の製法。
【請求項8】
請求項1記載の屋外施設用舗装体の製法に用いられる表面仕上げ材であって、下記のA
剤とB剤からなることを特徴とする表面仕上げ材。
(A剤)ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる末端
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とし、弾性チップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)が1,000〜1
0,000mPa・sに調製された組成物。
(B剤)ポリオールを主成分とし、架橋剤、充填剤、触媒、無機揺変剤を含有し、弾性チ
ップを含まず、30℃における粘度(BH式7号ロータ、20rpm)
が70,000〜200,000mPa・sに調製された組成物。
【請求項9】
上記A剤とB剤とが、この2液を混合して得られる混合液のポットライフが5〜20秒
、タックフリータイムが150秒以下となる反応性を有するものである請求項8記載の表
面仕上げ材。
【請求項10】
上記A剤に用いられるウレタンプレポリマーが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、平
均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中のポリオキシエチレン鎖の含
有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネ
ートとの反応から得られるイソシアネート基末端プレポリマーであって、NCO含有量が
3〜10重量%の範囲内である請求項8または9記載の表面仕上げ材。
【請求項11】
上記B剤に用いられるポリオールが、平均ヒドロキシル官能基数2〜4、OH価20〜
100mgKOH/g、平均分子量2,000〜8,000であってポリエーテル鎖中の
ポリオキシエチレン鎖の含有量が30重量%以下であるポリエーテルポリオールである請
求項8〜10のいずれか一項に記載の表面仕上げ材。
【請求項12】
上記B剤に用いられる架橋剤が、芳香族アミン系架橋剤である請求項8〜11のいずれ
か一項に記載の表面仕上げ材。
【請求項13】
上記A剤が、有機揺変剤を0.1〜2.6重量%含有するものである請求項8〜12の
いずれか一項に記載の表面仕上げ材。
【請求項14】
上記請求項1〜7のいずれか一項に記載された製法によって得られる屋外施設用舗装体
であって、その表面が平坦でJIS A硬度が40〜65のポリウレタン硬化体からなる
ベース層の上に、弾性チップを含まず高低差2.0mm以上の凹凸表面を有し、破断伸び
率が500%以上のポリウレタン表面仕上げ層が形成されていることを特徴とする屋外施
設用舗装体。
【請求項15】
舗装体の物性が、変位量0.6〜2.2mm、衝撃吸収率34〜51%であり、陸上競
技場の舗装体として用いられる請求項14記載の屋外施設用舗装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127288(P2011−127288A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284251(P2009−284251)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】