説明

屋外用の車両用カメラ

【課題】車両の動作領域を監視するための、屋外使用の車両用カメラが開示される。
【解決手段】該カメラは、カメラハウジングを備え、該カメラハウジングは、カメラ電子部品とカメラ光学部品とを有するカメラモジュールをカメラハウジング内に取り付けられている。カメラハウジングの内部には、記録方向に向いた記録用開口部が設けられる。カメラ光学部品のうち、記録する側の端に隣接した位置には、記録用開口部を覆う透明な記録窓が設けられる。カメラハウジングおよび記録窓は、充分に同一の熱的特性を有するプラスチック材料で形成されるので、ハウジング内の記録窓のところで生じる結露は低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外で使用の車両用カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用するカメラは、天候の影響を受けるため、特殊な要件を必要とする。例えば、実用車の屋外の監視目的で、出願人によってMCC(Mekra Color Camera)の名称で販売されているカメラをはじめ、現在市場に出ているカメラの場合は、実際のカメラモジュールは、カメラハウジング内に位置している。このカメラハウジングは、記録窓で覆われた、「視野方向」の記録用開口部を有する。カメラモジュールは、CCDモジュールを有するカメラ電子部品と、カメラ光学部品とを備える。カメラ光学部品は、柱状に構成され、カメラ電子部品に向いた第1の端と、記録窓に向いた第2の自由端とを有する。記録される対象からの光は、透明な記録窓を通ってカメラ光学部品の自由端に達した後、カメラ光学部品によってCCDモジュールへと導かれる。
【0003】
カメラモジュールおよびカメラハウジングが別部品として構成されているため、カメラハウジングとカメラモジュールとの間には、何もない空間(空隙)が残される。既知の屋外使用のカメラの場合は、その空隙に、気温の変動および空気中の湿気を原因とする結露が生じる。これは、ガラス製の記録窓の内側、および記録窓の後方に位置するカメラ光学部品の上で、特に顕著である。結露が生じると、画質は、使用に耐えないレベルまで劣化し、更に、電子部品の腐食の原因となる恐れがある。
【0004】
また、雨、雪、および霧の場合、あるいは実用車を洗浄する場合などは、湿気がガラス製の記録窓とプラスチック製のカメラハウジングとの間の隙間からカメラハウジングの内側に入り込み、画質に影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
ドイツ公開公報DE198 42 828 A1は、ハウジング内に配置されたデジタルイメージセンサを開示している。このハウジングは、イメージセンサの前方に、入射光学部品で覆われた入射窓を備える。ハウジングおよび入射光学部品は、一体の光学材料で形成される。
【0006】
ドイツ公開公報DE 101 09 787 A1は、入射窓を有するハウジング内にデジタルイメージセンサを配置した低コストのデジタルカメラを開示している。デジタルイメージセンサは、凸状突起のかたちで入射窓を通ってレンズに達する透明なプラスチックに封入されている。この既知のカメラの重要な特徴は、透明な封入材料以外の光学材料が使用されないことにある。とはいえ単純な構造であるため、このようなカメラは、ごく接近している対象の画像を記録することしかできない。要するに、このようなカメラは、商用車の屋外での使用に適さない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、悪天候下でも均一な画質を保証することができる信頼度の高い屋外使用可能なカメラを提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ガラス製の記録窓およびプラスチック製のカメラハウジングを有する既知の屋外使用のカメラにおいて、記録窓は、気温が低下した際に最も冷たくなる領域である。したがって、カメラハウジングとカメラモジュールとの間の空隙の空気中に含まれる湿気は、ガラス製の記録窓の内側に結露を生じさせる。これは、記録窓のガラスとカメラハウジングのプラスチックとの間の材料の物理的特性の相違に起因する。ガラスは、プラスチックと比べて熱伝導率が大幅に高く、比熱容量も大きい。したがって、記録窓をガラスではなくプラスチックで作成すれば、気温が低下した際に記録窓が最も冷たい領域になる事態は回避される。その結果、記録窓の内側における結露の形成も回避される。この場合は、カメラハウジングはもちろん記録窓も、プラスチックで作成される。すなわち、熱伝導率、定熱容量、および熱膨張係数などの熱的特性が同一または類似の材料で作成されることが望ましい。カメラモジュールとカメラハウジングとの間の空隙は、プラスチック鋳込み化合物で充填される。この方法は、湿気を含む空気をカメラハウジングの内部から徹底的に排除する。したがって、結露はどこにも生じえない。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態において、透明な記録窓は、撮像用の開口部の縁にレーザ溶接されて、プラスチック製のカメラハウジングに取り付けられる。こうすれば、ガラスとプラスチックとを用いた場合よりも高い封止性を実現し、高い密封度を実現できる。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態において、記録窓およびカメラハウジングは、一体の透明なプラスチックにより仕上げられる。これは、カメラハウジングと記録窓との間の密封度の問題をほぼ完全に解消する。
【0011】
本発明の別の好ましい一態様において、プラスチック製の記録窓は、その内側に、カメラ光学部品の第2の自由端の達する先である凹所、すなわちくぼみを有する。これは、カメラ光学部品に向きあった部位の体積を、ひいてはここに存在し得る空気の体積を大幅に減少させる。少ない体積の空気では、気温が低下した際に、カメラ光学部品の第2の端に、すなわち記録窓の凹所内にほとんど結露を生じえない。
【0012】
好都合なことに、鋳込み化合物は、全て同じ透明材料で構成されるので、カメラハウジングとカメラモジュールとの間の空隙内のカメラ光学部品の自由端の上に、鋳込み化合物を流し込むことができる。したがって、記録窓の取り付けは、一つの作業工程で実施することができる。
【0013】
本発明の別の利点にしたがうと、カメラ光学部品の第2の自由端は、透明な鋳込み化合物内に達している。したがって、カメラ光学部品は、不透明な鋳込み化合物にいっさい覆われることのないように保証される。
【0014】
好ましくは、カメラ光学部品は、記録方向を指している自由端を除き、剛性を備えた保護ケースに包み込むことができる。カメラハウジングとカメラモジュールとの間の空隙が鋳込み化合物で満たされる際に、この剛性の保護ケースは、冷却していく鋳込み化合物が、鋳込み化合物とカメラ光学部品との間の熱膨張係数の差に起因してカメラ光学部品の動作に影響を及ぼすことと、それによって生じる熱的な引張りとを阻止する。
【0015】
本発明は、以下の明細書を熟読することと、本発明の例を例示した添付の図面を参照することとを通じて容易に理解される。
【0016】
本発明の実施を目的として設計された構成が、その他の特徴と併せて以下で説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、図面を詳細に参照しながら、発明の実施について詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明にしたがったカメラの第1の実施形態を示したもので、図示するように、カメラハウジング4内にカメラモジュール2が配置されている。カメラモジュール2は、カメラ電子部品6とカメラ光学部品8とを含む。カメラ光学部品8は、カメラ電子部品6に向いた第1の端10と、記録される対象(不図示)に向かう記録方向14を指している第2の自由端12とを有する円柱である。カメラ光学部品8は、第1の端10を介してカメラ電子部品6に結合されている。カメラハウジング4は、カメラ光学部品8の第2の自由端12の「視野」を記録方向14に開いた記録用開口部16を有する。カメラモジュール2およびカメラハウジング4の上記構成により、カメラハウジング4とカメラモジュール2との間には、空隙が形成される。
【0019】
記録用開口部16およびカメラハウジング4は、液体、水蒸気、およびガスの浸入を防ぐべく、透明なプラスチック製の記録窓20で覆われる。記録窓20は、レンズ状であり、記録用開口部16のところで開口部16の縁の下に広がっている。プラスチック製の記録窓20とプラスチック製のカメラハウジング4との間の密結合は、レーザ溶接箇所21と、それによって形成されるレーザ溶接線(図1、符号27)とによって実現される。記録窓20の取り付けは、レーザ溶接の代わりにその他の溶接方法および接合方法を使用して行うことも可能である。カメラ光学部品8の自由端12は、記録窓の真後ろに位置付けられる。
【0020】
カメラハウジング4および記録窓20は、いずれも、熱的特性が非常に似たプラスチック材料で作成されるので、記録窓20は、もはや、カメラの中で最も冷たい部品ではない。したがって、記録窓20の内側の中空の空間18内に、空気中の水蒸気が結露することはない。
【0021】
図2は、本発明の第2の実施形態を示したもので、図中、記録窓20は、その内側に、カメラ光学部品8の自由端12の形状に適合した凹所、すなわちくぼみ22を有する。図3には、空隙18を鋳込み化合物24で満たされた一実施形態が示されている。この空隙は、鋳込み化合物24で満たされるので、鋳込み化合物24からは、カメラ光学部品8の第2の自由端12のみが突き出している。記録用開口部16のところにまだ残っている空隙18は、透明な材料26が充填され、あるいは透明な材料の塊26をいっぱいに流し込まれる。透明な鋳込み材料の塊26は、このように、カメラ光学部品8の第2の自由端12を包み込み、カメラハウジング4の記録用開口部16を塞ぐことによって、その部分に透明な記録窓20を構成する。
【0022】
鋳込み化合物24および透明な鋳込み材料の塊26は、何もない空間18を完全に満たすので、透明な鋳込み材料の塊26を、すなわち記録窓20を、記録用開口部16の縁に沿ってカメラハウジング4から密封することは、必要不可欠な要件ではなくなる。また、空隙18を鋳込み化合物24,26で完全に満たすことによって、カメラハウジング4の内部からは、湿気を含む空気が完全に排除される。したがって、カメラ電子部品の画質または動作能力に影響を及ぼす結露は、もはや生じえない。
【0023】
カメラハウジング4とカメラモジュール2との間の空隙18を満たすには、鋳込み化合物24は、薄くて且つ流動性である必要がある、すなわち、比較的高温である必要がある。空隙18を満たすために使用される際の、液状の鋳込み化合物の温度は、使用される鋳込み化合物の種類に応じて15〜250度の範囲にある。鋳込み化合物の冷却および凝固の際に生じる熱応力によってカメラ光学部品に変動または影響が及ぼされる事態を回避するため、カメラ光学部品8は、円筒型の剛性の保護封体28で取り囲まれる。保護封体28は、カメラ電子部品6からカメラ光学部品8の第2の自由端12に達しており、カメラ光学部品8の「視野」のみを、すなわち第2の自由端12のみを記録方向14に開いている。剛性の保護封体28は、凝固の際に熱応力がカメラ光学部品8に直接に作用する事態を阻止している。したがって、カメラ光学部品8は、記録窓20のところでのみ、透明な鋳込み材料の塊26に接している。
【0024】
透明な鋳込み材料の塊26は、とりわけ記録窓20のところでは、射出成形によって堆積させることができる。
【0025】
空隙28に透明な鋳込み材料の塊26を満たす場合は、空隙28の充填および記録窓20の形成を一つの作業工程で実施することができる。
【0026】
カメラの技術特性および光学特性に悪影響を及ぼさない限りは、ホットキャスト用またはコールドキャスト用のあらゆる化合物が適切である。
【0027】
図4は、本発明の第4の実施形態を示しており、図中、記録窓20およびカメラハウジング4は、好ましくはプラスチックにより一体に仕上げられる。これにより、記録窓20がカメラハウジング4よりも冷たくなる事態は回避される。また、カメラハウジング4と記録窓20との間の封止の問題も解消される。
【0028】
図3の実施形態によれば、カメラ内の空隙18は、透明または非透明な鋳込み化合物で満たすことができる。あるいは、図2の実施形態のように、記録窓20の内側に、カメラ光学部品の自由端12を収容するくぼみを設けることができる。
【0029】
以上では、詳細を具体的に設定したうえで、発明の好ましい一実施形態が説明されたけれど、このような説明は、例示を目的としたものにすぎず、以下の特許請求の範囲の趣旨または範囲を逸脱しない限り、各種の変更および変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にしたがった屋外使用の車両用カメラを示した概略断面図である。
【図2】本発明にしたがった屋外使用の車両用カメラを示した概略断面図である。
【図3】本発明にしたがった屋外使用の車両用カメラを示した概略断面図である。
【図4】本発明にしたがった屋外使用の車両用カメラを示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0031】
2…カメラモジュール
4…カメラハウジング
6…カメラ電子部品
8…カメラ光学部品
10…第1の端
12…第2の自由端
14…記録方向
16…記録用開口部
18…空隙
20…記録窓
21…レーザ溶接痕
22…くぼみ
24…鋳込み化合物
26…鋳込み材料の塊
28…剛性の保護封体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外使用の車両用カメラであって、
カメラ電子部品とカメラ光学部品とを含み、前記カメラ光学部品は、前記カメラ電子部品で終結する第1の端と、記録方向に向いた第2の端とを有し、前記第1の端によって前記カメラ電子部品に結合されているカメラモジュールと、
カメラハウジングと前記カメラモジュールとの間に形成された空隙と、
前記カメラハウジング内に前記記録方向に向けて設けられた記録用開口部と、
前記カメラ光学部品の前記第2の端の向かう先である前記記録用開口部を閉じている透明な記録窓と
を備え、
前記透明な記録窓は、プラスチックで作成され、
プラスチック鋳込み化合物により、前記空隙を充填し、前記カメラモジュールを包み込んだ
車両用カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用カメラであって、
前記透明な記録窓は、レーザ溶接によって前記カメラハウジングと一体にされる車両用カメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用カメラであって、
前記カメラハウジングおよび前記透明な記録窓は、一体にまとめられた透明なプラスチックとして仕上げられる車両用カメラ。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用カメラであって、
前記透明な記録窓は、前記カメラ光学部品の前記第2の端を受け止める凹所を内側に有し、前記第2の端は、前記凹所の形状に適合した形状である車両用カメラ。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用カメラであって、
前記カメラハウジングの内部を満たす前記プラスチック鋳込み化合物は、前記透明な記録窓を形成する前記プラスチック材料と同じ材料である車両用カメラ。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用カメラであって、
前記透明な記録窓の前記プラスチック材料は、前記カメラ光学部品の前記第2の自由端を取り囲む車両用カメラ。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用カメラであって、更に、
前記カメラ光学部品をその前記第2の端を自由端として残した状態で取り囲む保護ようケースを備える車両用カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−304277(P2006−304277A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−75994(P2006−75994)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(500020380)メクラ・ラング・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー (21)
【氏名又は名称原語表記】MEKRA Lang GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】