説明

屋外盤の筐体構造

【課題】屋外盤の扉のハンドルが、容易に占めることが可能で、かつ無理な力が加えられない屋外盤の筐体構造を提供する。
【解決手段】屋外盤の防水構造は、扉を閉める際、ツメ金具とストッパ金具とが接触する前にロッド棒と上下部ストッパ金具とが接触する構造になっているため、扉の変形やパッキンの厚み、ロッド棒の連結部の遊びによっては、ロッド棒が上下部ストッパ金具に設けられた穴を外れ、うまく扉が閉まらないケースがある。そこで、本発明では、ツメ金具を有するハンドルと、ハンドルの回転に伴ってそれぞれ上下に移動する2つのロッド棒とを備えた扉と、ツメ金具が嵌合する第1のストッパ、ロッド棒が嵌合する第2のストッパとを備えた本体とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等を収納する屋外盤に関し、特に、映像機器を収納する屋外盤の筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に電子機器等を収納し、伝送ケーブルの中継点に用いられる屋外盤がある。このような屋外盤は、主に屋外環境に設置され、ヒンジ部を有し、ヒンジ部に設けられたハンドルを回転することで開閉する扉を有する。ヒンジ部とは、屋外盤本体と扉とを連結し、扉開閉時の回転中心となる、ヒンジ金具とヒンジピンから成る部位を言う。
また、従来、特に映像機器等の電子機器を収納する屋外盤は、降雨や降雪、波浪等の波飛沫などの要因によって、内部に浸水しないように、本体と扉との間にパッキンが取り付けられた防水構造になっている。この防水構造は、ハンドルのツメ金具とストッパ金具による締め込みだけでは、扉の変形等の要因によって扉上部および扉下部に隙間ができ易く、防水構造としては不十分である。そのため、一般的に扉の内側にはツメ金具と連動するロッド棒が取り付けられており、このロッド棒を上下部ストッパ金具によって締め込むことで、扉上部および扉下部の防水性を保っている。
【0003】
まず、従来の屋外盤の筐体構造の扉内部の構造を、図1、図2A、及び図2Bを用いて説明する。図1は、屋外盤の一例の斜視図である。また、図2Aと図2Bは、従来の屋外盤の扉内部を示した正面図及び側面断面図の一部である。図2Aは、扉を閉めた状態でかつ扉が開閉できない状態の図で、左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。図2Bは、扉を閉めた状態でかつ扉を開閉できる状態の図で左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。1は屋内盤の本体、2は扉、3はハンドル、11はアングル、12はストッパ金具、13はツメ金具31の突き出し部、14は上下部ストッパ金具、21はパッキン、22aと22bはガイド金具、31はツメ金具、32は連結金具、33はロッド棒、34はテーパ形状部、35はハンドル3とツメ金具31とを固定するボルト、37aと37bは連結点、39はハンドル3の回転中心軸である。なお、図2A、図2Bにおいて、上下方向は紙面の上下方向と一致する。
図2A、図2Bにおいて、屋外盤はヒンジ部を有し、屋外盤の扉2には、ハンドル3及びツメ金具31が取り付けられ、ハンドル3を回すと、その回転に連動して、ツメ金具31も回転する。また、ツメ金具31には、連結金具32及びロッド棒33が取り付けられ、それぞれの連結部は、フレキシブルに回転するようになっている。
また、扉2の裏側には、ガイド金具22a及び22bが取り付けられ、ガイド金具22a及び22bの穴にロッド棒33を通すことで、ロッド棒33を扉2の裏側に固定する構造としている。
また、本体1の機器取付アングル11には、ストッパ金具12及び上下部ストッパ金具14が取り付けられ、ストッパ金具12は、ツメ金具31を引っ掛けることで、扉2を本体1に向かって締め付ける。さらに、上下部ストッパ金具14は、ロッド棒33を差し込むことで、扉2を本体1に向かって締め付ける。
また、扉2の裏側の外周部には、パッキン21が貼り付けられており、本体1に押し当てて圧縮されることにより、屋外盤の防水を保っている。図2Aには、扉2を閉めた状態の扉2の内部の構造を示す。この場合、ハンドル3は、0°位置にあるとする。
また、図2Bには、ハンドル3を回して、ツメ金具31をストッパ金具12からはずし、ロッド棒33を上下部ストッパ金具14から抜き、扉2を開閉できる状態を示す。この場合、ハンドル3は、90°位置にある。なお、この場合、図1におけるハンドル3は、ほぼ90°の位置にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−240367号公報
【特許文献2】特開2000−170457号公報
【特許文献3】特開平11−146510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来のロッド棒による屋外盤の防水構造は、扉を閉める際、ツメ金具とストッパ金具とが接触する前にロッド棒と上下部ストッパ金具とが接触する構造になっているため、扉の変形やパッキンの厚み、ロッド棒の連結部の遊びによっては、ロッド棒が上下部ストッパ金具に設けられた穴を外れ、うまく扉が閉まらないケースがある。この場合、扉上部もしくは扉下部を手で圧迫しながらハンドルを回すことでうまく扉が閉まるようになる。しかし、そのようなことをしないで、無理矢理ハンドルを回してしまうと、ハンドルが破損する恐れがある。また、防水の仕様が厳しい場合には、パッキンを通常以上に圧縮して仕様を満たす(以降、“増し締め”と称する)ようにするのが一般的である。しかし、パッキンを通常以上に圧縮するようにすると、より一層上記の問題が起こり易くなり、場合によっては扉が閉まらなくなる。従って、増し締めを行うことが困難である。
【0006】
特許文献1には、ピニオンとラックの係合によりボックス本体と扉に位置するパッキンを全周に渡ってほぼ均一に変形できる扉用締付けロック装置が開示されている。また、特許文献2には、垂直ロッドと水平ロッドとロック金具による閉鎖操作において、せん断や撓み変形を起こさずにパッキングを的確に締付けることができる扉用締付けロック装置が開示され、特許文献3には、箱体のねじれにより扉体に段差が生じても防水片が取付けられている扉が変形したり破損することがない電気機器収納用箱体が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1〜特許文献3には、扉を閉める際、うまく扉が閉まらないケースについては、特に考慮されていない。
本発明は、上記の問題に鑑み、屋外盤の扉のハンドルが、容易に占めることが可能で、かつ無理な力が加えられない屋外盤の筐体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の屋外盤の筐体構造は、ハンドルを回す際、ロッド棒と上下部ストッパ金具が接触するよりも先に、ツメ金具とストッパ金具とが接触し、締め込むことができる構造とする。即ち、扉の変形やロッド棒の連結部の遊びに左右され難いハンドル部分を先に締め込むことにより、パッキンの圧縮幅分の余裕を生み出し、ロッド棒が上下部ストッパ金具の穴に入り易くしたものである。
即ち、本発明の屋外盤の筐体構造は、一方の片側がヒンジで連結され、他方の片側がロック機構で連結された本体と扉とで構成された屋外盤の筐体構造であって、前記扉は、ツメ金具を有するハンドルと、ハンドルの回転に伴ってそれぞれ上下に移動する2つのロッド棒とを備え、前記本体が、前記ツメ金具が嵌合する第1のストッパと、前記ロッド棒が嵌合する第2のストッパとを備え、前記ハンドルが回転した時に、前記ロッド棒と前記第2のストッパが篏合する前に、前記ツメ金具と前記第1のストッパが嵌合し始めるようにしたものである。
また好ましくは、上記発明の屋外盤の筐体構造において、前記屋外盤は、映像機器が収納される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、屋外盤の扉のハンドルが固すぎたり、閉めることができなかったりする危険性を回避することができる。またこれは、ハンドルに無理な力が加わることを防ぐことにもなるため、ハンドルの破損を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】屋外盤の一例の斜視図である。
【図2A】従来の屋外盤の扉内部を示した正面図及び側面断面図の一部である。
【図2B】従来の屋外盤の扉内部を示した正面図及び側面断面図の一部である。
【図3A】本発明による構造の扉内部の正面図、および側面断面図である。
【図3B】本発明による構造の扉内部の正面図、および側面断面図である。
【図4A】従来構造と本発明による構造との、開閉時の比較図である。
【図4B】従来構造と本発明による構造との、開閉時の比較図である。
【図5】本発明のY座標位置の二次曲線状の推移の一実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ロッド棒と上下部ストッパ金具とが接触するよりも先に、ツメ金具1とストッパ金具とが接触する構造を実現する。即ち、本発明は、例えば、ハンドルを回転することによって、ヒンジ部で開閉する扉を有し、ハンドルは、扉に対して、90°回転し、扉裏面の外周部にはパッキンを有し、ハンドルのツメ金具には連結金具とロッド棒を有し、ツメ金具とロッド棒によって本体と扉とを締め付け、浸水が考えられる環境でも防水性が保たれる屋外盤の筐体構造である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に参照する各図においては、同等部分は同一符号により示し、できるだけ説明を省略する。
【0012】
次に、本発明の実施の形態について、図1、図3A、及び図3Bを用いて説明する。図3A及び図3Bは、本発明による構造の扉2の内部の正面図、及び側面断面図である。図3Aは、扉を閉めた状態でかつ扉を開けない状態の図で左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。図3Bは、扉を閉めた状態でかつ扉を開閉できる状態の図で左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。13’は突き出し部、22a’はガイド金具、31’はツメ金具、33’はロッド棒、35’はハンドル3とツメ金具31とを固定するボルト、36はスペーサ、37b’は連結点である。他は図2A、図2Bと同様である。また、図3A、図3Bにおいて、上下方向は紙面の上下方向と一致する。
【0013】
図1における屋外盤は、通常時は、扉2は、本体1と密閉空間を形成し、閉じられた状態となっている。しかし、例えば、映像機器を収納し、設定変更、故障、機器の交換等によって、屋外盤を開閉するために、扉2が本体1に取り付けられているものである。扉2には、ハンドル3が設けられ、0°から、図1の90°の状態まで回転するようにしている。ハンドル3には、扉2の内側にヒンジ部が設けられ、ハンドル3の回転状態に応じて、扉2のロック、及び開閉がなされる。なお扉2の開閉は、人力でハンドルを操作することが多い。
【0014】
図3A、図3Bでは、ロッド棒33’と上下部ストッパ金具14が接触するよりも先に、ツメ金具31とストッパ金具12とが接触する構造を実現するために、まず、ストッパ金具12の突き出し部13’を伸ばし、ツメ金具31’との接触がより早くなるようにする。
この場合、突き出し部13’を伸ばす長さは、ツメ金具31’が突き出し部13’の側面からではなく、下面から接触することができる長さとする。
【0015】
また、ロッド棒33’が上下に移動し始めるタイミングを遅らせるために、ツメ金具31’と連結金具32との連結点37b’を移動し、ハンドル3を90°位置から0°位置へと回した際の、連結点37a及び37b’のY座標位置の推移が二次曲線状となるようにする。
図5に、二次曲線の一実施例を示す。図5は、本発明のY座標位置の二次曲線状の推移の一実施例を説明するための図である。図5(a)は、ツメ金具31’が、連結点37aを中心として回転した場合の回転角度を横軸として、連結点37bのY座標位置の推移を縦軸に示す図である。図5(b)には、図5(a)の横軸における回転角0°の時のツメ金具31’の状態と、回転角90°の時のツメ金具31”の状態とを示す。矢印51と逆方向にツメ金具が、0°から90°に回転し、それに伴なって、連結点37b’から連結点37b”のようにY軸座標が推移する。
この場合、ロッド棒33’が、開閉時に、左右方向と前後方向にずれず、上下動だけさせるためのガイド金具22’は、図3A、図3Bの正面図に示すように、従来図の図2A、図2Bよりも、扉の内側にずらして設置する。
また、上下ストッパ部14を従来と同じ位置にしているため、上下ストッパ部14の近くのガイド金具22bも従来と同じ位置とし、ロット棒33’の曲がりを大きくしている。
【0016】
この結果、ハンドル3が回転した時に、ロッド棒33’とストッパ金具14とが篏合する前に、ツメ金具31’の突き出し部とストッパ金具12の突き出し部13’とが嵌合し始めるようにしたものである。
なお、従来構造の連結点37a、37bのY座標位置は、ほぼ一次曲線状に推移する構造になっている。即ち、ロッド棒33のX座標位置を左右方向にを移動することによっても、同様の効果が得られる。
例えば、上下ストッパ部14の近くのガイド金具22bも位置をずらし、ロット棒33’の曲がりを従来と同様にしても良い。さらには、上下ストッパ部14の近くのガイド金具22bも位置をずらし、ロット棒33’の曲がりも変更しても良い。
【0017】
図1、図4A、及び図4Bによって、本発明の他の実施例を説明する。図4A及び図4Bは、本発明による構造の扉2の内部の正面図、及び側面断面図である。図4Aは、従来の扉の開閉途中の状態の図で左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。図4Bは、本発明の扉の開閉途中の状態の図で左側が正面図扉側の一部、右側が側面断面図の一部である。また、図4Aにおいて、上下方向は紙面の上下方向と一致する。
図4Bの実施例は、図3A、図3Bで示した実施例と同様の構造を有する。ただし、ハンドルの回転時(扉の開閉途中)に、ハンドルとツメ金具とを固定するボルトに干渉する恐れツメ金具と連結金具との間にスペーサを設けたものである。36’はスペーサである。
【0018】
また、図3A、図3Bの実施例では、スペーサ36がツメ金具31’の上下端側に設けられている。このため、ロッド棒33’のX座標位置を移動すると、図4Aのように、ハンドル3の回転時に、ハンドル3とツメ金具31’とを固定するボルト35に干渉する恐れがある。即ち、経時変化や初期不良で、ぶつかって扉の開閉に支障が出るかもしれない。これを避けるため、図4Bの実施例では、ツメ金具31’と連結金具32との間で、かつ、ハンドル3の回転中心軸39とほぼ同軸にスペーサ36’を設ける。
【0019】
また、好ましくは、連結金具32の長さを調節し、ハンドル3を回した際に、ツメ金具31’や連結金具32同士で干渉しないようにする。
また、好ましくは、ロッド棒33’の長さは、ツメ金具31’がストッパ金具12に接触した時点で、ロッド棒33’と上下部ストッパ金具14との間隔を所定値以上空けることが望ましい。例えば、ツメ金具31’がストッパ金具12と接触してから、ツメ金具31’部分の十分な締め付けが得られるように、ストッパ金具12にC3の面取りが加工されている場合に、最低でも3mmのストロークが必要になる。それに対して、ロッド棒33’と連結金具32とのガタを考慮して、ロッド棒33’と上下部ストッパ金具14との間隔を、例えば、5mmとする。
また、好ましくは、ロッド棒33’と上下部ストッパ金具14が接触後、ハンドル3が0°位置に回転するまでのロッド棒33’のストロークは、ロッド棒33’の先端がテーパ形状になっていることを考慮して、テーパ形状部34が完全に上下部ストッパ金具14の穴に入りきるストロークとする。
【0020】
上記実施例によれば、屋外盤の扉の防水構造に用いられるロッド棒が、扉の開閉時に、上下部ストッパ金具に干渉しにくくなり、扉の裏側のパッキンを増し締めすることも容易となる。
また、ハンドルに無理な力が加わることを防止することができるため、ハンドルの破損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0021】
1:本体、 2:扉、 3:ハンドル、 11:アングル、 12:ストッパ金具、 13、13’:突き出し部、 14:上下部ストッパ金具、 21:パッキン、 22a、22b、22a’:ガイド金具、 31、31’:ツメ金具、 32:連結金具、 33、33’:ロッド棒、 34:テーパ形状部、 35:ボルト、 36、36’:スペーサ、 37a、37b、37b’:連結点、 39:回転中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の片側がヒンジで連結され、他方の片側がロック機構で連結された本体と扉とで構成された屋外盤の筐体構造であって、前記扉部は、ツメ金具を有するハンドルと、ハンドルの回転に伴ってそれぞれ上下に移動する2つのロッド棒とを備え、前記本体が、前記ツメ金具が嵌合する第1のストッパと、前記ロッド棒が嵌合する第2のストッパとを備え、前記ハンドルが回転した時に、前記ロッド棒と前記第2のストッパが篏合する前に、前記ツメ金具と前記第1のストッパが嵌合し始めるようにしたことを特徴とする屋外盤の筐体構造。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−106180(P2011−106180A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263068(P2009−263068)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】