説明

屋外銘板及びその製造方法

【課題】耐久性に優れた屋外銘板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属からなるベースと、ベースの一方の面に拡散により形成された文字領域とを備えたことにより、文字領域が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外銘板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属銘板は、一般的に真鍮材を化学薬品によりエッチングし、得られた凹部に黒色塗料を充填させ、さらにニッケルめっき、次いでクロムめっきを施して製造される。
一般的に文字の線幅は0.3mmであり、エッチング深さは0.1mmである(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【特許文献1】特開2000−239891号公報
【特許文献2】特開2005−232516号公報
【特許文献3】特開2006−009089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、エッチング文字は、エッチングの特性により線幅0.3mmの両端より中心に向かい、すり鉢状の凹形状となる。また、エッチングされた面は粗化されるため凹凸が激しい状態となる。このため線幅の両端部では塗料膜厚が薄くなり、且つ、表面状態がポーラスとなってしまう。また、この種の技術を用いた屋外銘板を屋外で使用すると、線幅両端部では塗料による真鍮材のカバーリング性が劣ることから、ベースとなる真鍮材が腐食され、その腐食物が流れだし表示される文字が判読できなくなるという課題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、耐久性に優れた屋外銘板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、金属拡散により形成された文字を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、金属拡散により形成された文字を有することにより、文字領域が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、金属からなるベースと、該ベースの一方の面に拡散により形成された文字領域とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、金属からなるベースと、ベースの一方の面に拡散により形成された文字領域とを備えたことにより、文字領域が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、金属からなるベースと、該ベースの一方の面に形成され文字領域が拡散されためっき層と、該めっき層の前記文字領域以外の部分に形成された他のめっき層とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、金属からなるベースと、ベースの一方の面に形成され文字領域が拡散されためっき層と、めっき層の文字領域以外の部分に形成された他のめっき層とを備えたことにより、文字領域を含む面が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記ベースが真鍮もしくはリン青銅であり、前記めっきがクロムもしくはニッケルであることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、ベースとなる金属板を準備する工程、前記ベースの一方の面にめっきを施す工程、前記めっきの文字領域となる部分にレジストを印刷する工程、前記めっき及び前記レジストの上に他のめっきを施す工程、前記レジストを除去する工程、所定時間所定温度で加熱することにより前記めっきを前記ベースに拡散させる工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、金属からなるベースと、ベースの一方の面に形成され文字領域が拡散されためっき層と、めっき層の文字領域以外の部分に形成された他のめっき層とを備えたことにより、文字領域を含む面が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記所定時間は、30分から60分の範囲内にあり、前記所定温度は、150℃〜200℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、最適な熱処理が行われるので、耐久性に優れた屋外銘板が効率的に得られる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、前記ベースに真鍮もしくはリン青銅を用い、前記めっきにクロムもしくはニッケルを用いることを特徴とする。
【0017】
すなわち、本発明は、銘板のベースとなる金属板を真鍮とし、その上に銀めっき、さらに保護及び意匠用としてニッケルめっき、次いでクロムめっきを行う。尚、ニッケルめっき及びクロムめっきは文字となる箇所にはめっきはされない。この状態で加熱すると真鍮中の銅が銀めっき中に拡散し黒色文字を作成することができる。このように、金属の拡散現象を利用し、また文字自体も金属であるので屋外でも使用できる特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属からなるベースと、ベースの一方の面に拡散により形成された文字領域とを備えたことにより、文字領域が腐食されにくくなるので、耐久性に優れた屋外銘板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、従来の課題を解決するため、真鍮金属を用いた金属銘板において、金属の拡散の特性を利用した黒色の文字を作成し、また、文字が金属であることから文字下のベース金属の腐食を抑制するため屋外で使用できる銘板を提供することを特徴とする。
【0020】
〔構 成〕
図1は、本発明に係る屋外銘板の一実施の形態を示す平面図である。
図1を参照すると、金属拡散文字を保有する屋外銘板1は、ベースとなる金属板2、拡散により作製した文字3及び取付孔4より成る。但し、屋外銘板1を両面テープで接着したり、半田付けしたり、スポット溶接したりする場合には取付孔4は無くても良い。
【0021】
図2(a)〜(e)は、本発明に係る屋外銘板の製造方法の一実施の形態を示す工程図である。
尚、図2(e)は、本発明に係る屋外銘板1の断面を示している。
ベースとなる金属板201は真鍮とし、文字を形成する基となるめっき層202は、銀めっきを1〜3μm施したものとする。
ここで、文字の線幅は0.3mm以上であるのが好ましい(図2(a))。
【0022】
めっき層202の上に、文字となる部分にレジストを印刷してレジスト層203を形成する(図2(b))。
【0023】
レジスト層203を形成した後、拡散保護、耐食性及び意匠性を確保するために、光沢ニッケルめっきを3〜5μmの厚さになるように施し、次いで光沢クロムめっきを0.1μmになるように施して他のめっき層としてのめっき層(保護めっき層)204を形成する。
【0024】
ここで、光沢ニッケルめっきは、高光沢を有し、高級感、意匠性がある。無光沢ニッケルめっきは、光沢がなく、耐指紋性が劣り(指紋が付着しやすい。)、変色しやすい。尚、黒色ニッケルめっきについては黒色外観のため、文字と同色にならない場合には用いても良い。
【0025】
また、光沢クロムめっきは、高光沢を有し、高級感、意匠性があり、長期の使用で外観変化が小さい。硬質クロムめっきは、めっき硬度が高く、耐摩耗性に優れるが、光沢は光沢クロムめっきに比べて若干劣る。尚、黒色クロムめっきについては黒色外観のため、文字と同色にならない場合には用いても良い。レジストとしては、一般的にPWB(Printed Wiring Board:プリント配線基板)製造に用いられる感光性の液状レジストやフィルム状レジストが用いられる(図2(c))。
【0026】
めっき層204を形成した後、例えば、エッチングによりレジスト層203を除去し(図2(d))、150℃〜200℃の温度範囲で30分〜1時間加熱することで、金属板2の真鍮中の銅が銀からなるめっき層202に拡散し黒色の文字301が形成される(図2(e))。
【0027】
次に、本発明に係る金属銘板の使用例について説明する。
本発明に係る金属銘板1は、種々の装置(例えば、ボール盤、旋盤、フライス盤等の工作機械、測定器、試験器等の品質保証機器)に、取付孔4を介しねじ若しくはリベットで固定して使用する(取付孔4が無い場合には両面テープ、スポット溶接、はんだづけ、ポケット差し込みが用いられる。)。
金属銘板1には、製品名称、製造番号、製造会社名称等その他必要な文字が表示される。
屋外で使用する装置(例えば、変圧器、配電盤等の電気機器、フォークリフト、クレーン等の建設土木機器)の場合、金属銘板1も屋外環境下に暴露される。
本発明に係る金属銘板の文字は金属拡散により形成された金属からなり、また文字以外の部分は、光沢ニッケルめっきと光沢クロムめっきとで保護されるため、ベースとなる金属の腐食が抑制される。
【0028】
尚、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。例えば、上述の説明では、ベースとなる金属板201を真鍮とし、文字を形成する基となるめっき層を銀として説明したが、本発明ではこれに限定されず、ベースとなる金属板201をりん青銅とし、文字を形成する基となるめっき層202をすずめっき層としてもよい。この場合、拡散後の文字色を黒色以外の褐色とすることができる。また、ベースとなる金属と文字を形成する基となるめっき層との組合せは真鍮(ベース)−すず(めっき層)、真鍮(ベース)−はんだ(めっき層)、リン青銅(ベース)−銀(めっき層)、リン青銅(ベース)−はんだ(めっき層)が挙げられる。
【0029】
また、温度については生産性を考慮すると200℃が好ましい。また、めっき層については金を用いても良い。
また、拡散後の文字色については、銀→黒色、すず、はんだ→褐色となる。
【0030】
さらに、保護めっき層としては、文字めっきと異なる色調であり、加熱により変色しなければ他の種類のものを用いても良い。屋外での外観、光沢の保持が求められるので、光沢クロムめっきが最も適している。クロムめっきは一般的に下地めっきとしてニッケルめっきがないと素材に付着しない。従って、光沢ニッケルめっきを用いる場合は光沢クロムめっきと組合せるのが好ましい。
【0031】
以上説明したように、本発明においては、以下に記載するような効果を奏する。
(1)第一の効果は、金属の拡散の特性を利用し表示される文字を金属によって形成することが可能ある。
【0032】
(2)第二の効果は、金属拡散により形成された文字はベースとなる金属の腐食を抑制することが可能ある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る屋外銘板の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明に係る屋外銘板の製造方法の一実施の形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0034】
1 屋外銘板
2 金属板
3 文字
4 取付孔
201 金属板
202 めっき層
203 レジスト層
204 他のめっき層(保護めっき層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属拡散により形成された文字を有することを特徴とする屋外銘板。
【請求項2】
金属からなるベースと、該ベースの一方の面に拡散により形成された文字領域とを備えたことを特徴とする屋外銘板。
【請求項3】
金属からなるベースと、該ベースの一方の面に形成され文字領域が拡散されためっき層と、該めっき層の前記文字領域以外の部分に形成された他のめっき層とを備えたことを特徴とする屋外銘板。
【請求項4】
前記ベースが真鍮もしくはリン青銅であり、前記めっきがクロムもしくはニッケルであることを特徴とする請求項2または3に記載の屋外銘板。
【請求項5】
ベースとなる金属板を準備する工程、前記ベースの一方の面にめっきを施す工程、前記めっきの文字領域となる部分にレジストを印刷する工程、前記めっき及び前記レジストの上に他のめっきを施す工程、前記レジストを除去する工程、所定時間所定温度で加熱することにより前記めっきを前記ベースに拡散させる工程とを備えたことを特徴とする屋外銘板の製造方法。
【請求項6】
前記所定時間は、30分から60分の範囲内にあり、前記所定温度は、150℃〜200℃の範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の屋外銘板の製造方法。
【請求項7】
前記ベースに真鍮もしくはリン青銅を用い、前記めっきにクロムもしくはニッケルを用いることを特徴とする請求項5または6に記載の屋外銘板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−223124(P2008−223124A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67450(P2007−67450)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】