説明

屋根構造および建物

【課題】屋上部に手摺りを形成しながら、従来のような施工手間を省略することができるとともに雨仕舞を向上できる屋根構造および建物を提供することを目的とする。
【解決手段】人が立ち入り可能であるとともに外部に向かって開放される屋上部1aを有する建物本体1に、この建物本体1の外壁1bの上端部に連結されるとともに、上部が、屋上部1aに立設される支持壁3によって屋上部1aの上方に支持される勾配屋根4が設けられており、この勾配屋根4の傾斜方向の下端部が、建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出しており、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部が、支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって手摺りとされている屋根構造と、この屋根構造を備える建物A。これにより、勾配屋根の傾斜方向の下端部を軒先部として利用でき、上端部を手摺りとして利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体の上部に設けられる屋根構造と、この屋根構造を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の立ち入りが可能な建物の陸屋根やルーフバルコニー等の屋上部に、人が屋上部から外部へと容易に移動できないように、また、外部からの視線を遮るために手摺り壁やフェンス等が設けられる建物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の建物の手摺り壁は、屋上部の外周縁部に沿って配置されているとともに、この建物の外壁の上端部に一体的に設けられている。
【特許文献1】特開平11−062280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1のような建物の場合、外壁から手摺り壁上端にかけての壁面が平坦になっており、庭等の建物の外周部や開口部の上方に軒の出がない状態となっている。このため、例えば雨の日に建物の外周部に出ると濡れてしまったり、雨水や泥が地面から外壁に跳ね返る量が多かったり、跳ね返った雨水や泥が建物内部に多く浸入してしまう等の問題がある。
そこで、特に人が通過する頻度の高い玄関ポーチの上方や、窓等の開口部の上方の外壁に、この外壁よりも外部に突出する庇やキャンティバルコニー等の張出部を設けることが行われているが、その分、施工に手間がかかり、工期が長引いてしまう等の問題が生じる場合がある。
【0004】
本発明の課題は、屋上部に手摺りを形成しながら、従来のような施工手間を省略することができるとともに雨仕舞を向上させることが可能な屋根構造および建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、屋根構造であって、例えば図1〜図8に示すように、人が立ち入り可能であるとともに外部に向かって開放される屋上部1aを有する建物本体1に、この建物本体1の外壁1bの上端部に連結されるとともに、上部が、前記屋上部1aに立設される支持壁3によって前記屋上部1aの上方に支持される勾配屋根4が設けられており、
この勾配屋根4の傾斜方向の下端部は、前記建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出しており、
この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって、前記屋上部1aに立ち入る人のための手摺りとされていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、前記建物本体1の外壁1bの上端部に連結されるとともに、上部が、前記屋上部1aに立設される支持壁3によって前記屋上部1aの上方に支持される勾配屋根4が設けられているので、前記屋上部1aを外部に向かって確実に開放させながら、この勾配屋根4を、前記建物本体1の上部に確実に設置することができる。
そして、このような勾配屋根4の傾斜方向の下端部は、前記建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の下端部を、前記建物本体1の外部に張り出す軒先部として利用することができる。
また、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって、前記屋上部1aに立ち入る人のための手摺りとされているので、前記屋上部1aに立ち入る人が手を載せたり、つかまったりすることができる。また、外部から前記屋上部1aに向かう視線を遮ることができる。
これによって、前記屋上部1aに手摺りを形成しながら、従来のように庇やキャンティバルコニー等の張出部を設ける手間を省略することができるとともに、前記勾配屋根4の傾斜方向の下端部である軒先部によって建物の雨仕舞を向上させることが可能となる。
さらに、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は前記支持壁3に対してオーバーハングすることとなり、人が前記屋上部1aから外部へと移動しにくくなる。特に子供の手摺りの乗り越えを確実に防ぐことができ、安全性に優れる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図4〜図8に示すように、請求項1に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面と、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方には、これら屋上部1a側端面および側端面の長さ方向に沿って、それぞれ化粧板材5,6が取り付けられており、
これら化粧板材5,6の垂直方向の下端部は、前記勾配屋根4の下面の高さ位置よりも下垂していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面と、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方とに取り付けられる化粧板材5,6の垂直方向の下端部が、前記勾配屋根4の下面の高さ位置よりも下垂しているので、前記勾配屋根4に向かって雨が降る場合に、雨水が前記化粧板材5,6の表面を伝い、この化粧板材5,6の垂直方向の下端部に向かって流れることとなる。これによって、前記勾配屋根4に向かって降る雨が前記勾配屋根4に到達することを確実に防ぐことができるので、建物の雨仕舞をより向上させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、例えば図4〜図8に示すように、請求項2に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、前記屋上部1a側端面に取り付けられる化粧板材5の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20(21)のうち、最も上方に位置する屋根材20(21)の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材30(31,32)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、前記屋上部1a側端面に取り付けられる化粧板材5の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20(21)のうち、最も上方に位置する屋根材20(21)の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材30(31,32)が設けられているので、この上カバー部材30(31,32)によって、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部付近から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができ、建物の雨仕舞をさらに向上させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、例えば図7および図8に示すように、請求項3に記載の屋根構造において、
前記上カバー部材32は、前記化粧板材5の垂直方向の上端部を覆う第1覆い部32aと、前記屋根材21の傾斜方向の上端部を覆う第2覆い部32bと、これら第1覆い部32aと第2覆い部32bとの間に位置する中間覆い部32cとを備えており、
この中間覆い部32cは、水平面または前記屋上部1aに向かって下がるように傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記第1覆い部32aと第2覆い部32bとの間に位置する中間覆い部32cが、水平面または前記屋上部1aに向かって下がるように傾斜する傾斜面となっているので、例えば、このような中間覆い部32cがない場合に比して、前記第1覆い部32aと第2覆い部32bとの間の角部付近が鋭利でない状態となり、人が手を載せやすくなる。また、この中間覆い部32cがない場合に比して、前記屋上部1aから前記上カバー部材32の最上部までの高さが低くなるので、前記屋上部1aから見える景色が広がるとともに、前記屋上部1aに向かって注がれる日差しを多く取り込むことができる。
また、前記中間覆い部32cが水平面となっていれば、例えばコップやグラス等を置いてテーブル代わりに用いることができ、前記中間覆い部32cが前記屋上部1aに向かって下がる傾斜面となっていれば、例えば洗濯バサミ等の物品を落とした時に、この物品が前記屋上部1a側に落ちやすくなる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、例えば図4および図6,図7に示すように、請求項2〜4のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20(21)のうち、この勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材20(21)の側端部とを包み込む側カバー部材40(41)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20(21)のうち、この勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材20(21)の側端部とを包み込む側カバー部材40(41)が設けられているので、この側カバー部材40(41)によって、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができ、建物の雨仕舞をより一層向上させることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、例えば図4〜図8に示すように、請求項2〜5のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記化粧板材5,6は、この化粧板材5,6が取り付けられる前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面との間に固定金具7,8を介して取り付けられており、
この固定金具7,8は、前記化粧板材5,6の取付面に形成される被係合部5a,6aに係合する係合部7a,8aを備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記化粧板材5,6は、この化粧板材5,6が取り付けられる前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面との間に固定金具7,8を介して取り付けられており、この固定金具7,8は、前記化粧板材5,6の取付面に形成される被係合部5a,6aに係合する係合部7a,8aを備えているので、予め前記固定金具7,8を前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面に取り付けておくことによって、前記化粧板材5,6を取り付ける際に、この化粧板材5,6の被係合部5a,6aと、前記固定金具7,8の係合部7a,8aとを係合させることで、前記化粧板材5,6を前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面に取り付けることができる。これによって、前記化粧板材5,6を取り付ける際に釘やビス等の止着材を用いる必要がないので、釘やビス等の止着材が設けられた部分から雨水が浸入するようなことを確実に防ぐことができ、建物の雨仕舞を格段に向上させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、例えば図5に示すように、請求項6に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根4は、この勾配屋根4の内部空間を利用した換気通路4cと、前記屋上部1a側に突出する勾配屋根4の傾斜方向の上端部において下方に開口して前記換気通路4cと外部とを連通する換気口4dとを備えており、
前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面に取り付けられる固定金具7の下端部には、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆う覆いプレート9が一体的に設けられており、
この覆いプレート9には、前記支持壁3の屋上部1a側表面の上端部を覆うとともに、前記支持壁3の屋上部1a側表面から所定の隙間Sをあけて設けられる通気部10が接続されており、
この通気部10は、前記隙間Sに向かって水平方向に開口する開口部10aを有しており、この開口部10aと前記換気口4dとを介して前記換気通路4cと屋外とが連通していることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、前記通気部10の開口部10aと前記換気口4dとを介して前記換気通路4cと屋外とが連通しているので、この通気部10によって屋内と屋外とを確実に連通させることができ、十分な換気を行うことができる。
また、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面に取り付けられる固定金具7の下端部に、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆う覆いプレート9が一体的に設けられているので、この覆いプレート9によって、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができる。さらに、前記通気部10は、前記隙間Sに向かって水平方向に開口する開口部10aを有しているので、この開口部10aから内部に侵入しようとする雨水は、水平方向に向きを換えた後に、水平方向に浸入してから更に上昇して前記換気口4dに向かおうとするが、雨水は上昇速度が低下して前記換気口4dにほとんど達しない。これによって、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下方から前記勾配屋根4側に向かって雨水が浸入することを確実に防ぐことができるので、建物の雨仕舞をより格段に向上させることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1〜7のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記屋上部1aと勾配屋根4と支持壁3とで囲まれる空間に収納庫11が設けられており、
前記支持壁3には、前記収納庫11内に収納される物品の出し入れを行うための出し入れ口3aが形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、前記屋上部1aと勾配屋根4と支持壁3とで囲まれる空間に収納庫11が設けられており、前記支持壁3には、前記収納庫11内に収納される物品の出し入れを行うための出し入れ口3aが形成されているので、建物内の空いたスペースを有効的に活用できる。
また、前記支持壁3の上方では、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部が、この支持壁3よりも屋上部1a側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部を、前記屋上部1a側に張り出す軒先部として利用することができる。これによって、雨水が前記屋上部1aから支持壁3および出し入れ口3aに向かって跳ねる距離を長くすることができるので、前記収納庫11付近における雨仕舞を向上させることができ、前記収納庫11内に収納された物品が濡れることを確実に防ぐことができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、例えば図8に示すように、請求項1〜8のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、人の手で握持可能な補助手摺り12が取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、人の手で握持可能な補助手摺り12が取り付けられているので、前記屋上部1aに立ち入る人が、この補助手摺り12を握持しながら前記屋上部1aを安全に歩行できる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の屋根構造を備える建物Aであって、
前記建物本体1の上部に、この建物本体1の上階層となる建物上階部2が設けられており、
この建物上階部2の上部には、前記勾配屋根4と離間して配置される上階屋根2aが設けられており、
この建物上階部2の外壁には、この建物上階部2の内部と前記屋上部1aとを連通する開口部2b,2cが形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、前記建物上階部2の上部に、前記勾配屋根4と離間して配置される上階屋根2aが設けられているので、前記建物上階部2内や前記建物本体1の内部に雨水等が浸入することを防ぐことができ、建物の雨仕舞をさらに格段に向上させることができる。
また、前記上階屋根2aと前記勾配屋根4とが離間して配置されているので、この上階屋根2aと前記勾配屋根4との間に開放部分を形成できることとなり、前記屋上部1aを外部に向かって確実に開放させることができる。
さらに、前記建物上階部2の外壁に、この建物上階部2の内部と前記屋上部1aとを連通する開口部2b,2cが形成されているので、これら開口部2b,2cのうち、少なくとも一方を出入口としておけば、この開口部2b,2cの少なくとも一方を介して、人が前記屋上部1aへと容易に移動できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、建物本体の外壁の上端部に連結されるとともに、上部が、建物本体の屋上部に立設される支持壁によって前記屋上部の上方に支持される勾配屋根が設けられているので、屋上部を外部に向かって確実に開放させながら、この勾配屋根を、建物本体の上部に確実に設置することができる。
そして、このような勾配屋根の傾斜方向の下端部は、建物本体の外壁よりも外部側に突出しているので、この勾配屋根の傾斜方向の下端部を、建物本体の外部に張り出す軒先部として利用することができる。
また、この勾配屋根の傾斜方向の上端部は、支持壁よりも屋上部側に突出することによって、屋上部に立ち入る人のための手摺りとされているので、屋上部に立ち入る人が手を載せたり、つかまったりすることができる。また、外部から屋上部に向かう視線を遮ることができる。
これによって、屋上部に手摺りを形成しながら、従来のように庇やキャンティバルコニー等の張出部を設ける手間を省略することができるとともに、勾配屋根の傾斜方向の下端部である軒先部によって建物の雨仕舞を向上させることが可能となる。
さらに、勾配屋根の傾斜方向の上端部は、支持壁よりも屋上部側に突出しているので、この勾配屋根の傾斜方向の上端部は支持壁に対してオーバーハングすることとなり、人が屋上部から外部へと移動しにくくなる。特に子供の手摺りの乗り越えを確実に防ぐことができ、安全性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本実施の形態の屋根構造は、図1〜図4に示すように、人が立ち入り可能であるとともに外部に向かって開放される屋上部1aを有する建物本体1に、この建物本体1の外壁1bの上端部に連結されるとともに、上部が、前記屋上部1aに立設される支持壁3によって前記屋上部1aの上方に支持される勾配屋根4が設けられており、この勾配屋根4の傾斜方向の下端部が、前記建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出しており、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部が、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって、前記屋上部1aに立ち入る人のための手摺りとされているものである。
【0028】
さらに、この建物本体1の上部には、図1〜図3に示すように、この建物本体1の上階層となる建物上階部2が設けられており、この建物上階部2を上階とし、前記建物本体1を下階とすることで2階建ての建物Aを構築できることとなる。
【0029】
なお、本実施の形態の建物Aは、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、従来の軸組工法や壁式工法の木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建物にも適用することができる。
【0030】
また、このパネルとは、図示はしないが、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に、面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されるものである。
なお、本実施の形態の勾配屋根4の面材は、この勾配屋根4を構成する枠体の上面にのみ貼設されている。
【0031】
ここで、前記建物本体1は、図1および図3に示すように、母屋部下階1cと、この母屋部下階1cに付属するとともに、この母屋部下階1cよりも高さの低い下屋部下階1dとを備えている。前記母屋部下階1cは居住領域として利用されており、前記下屋部下階1dは玄関室や、この玄関室に隣接する収納室として利用されている。
【0032】
また、前記建物上階部2は、図1および図2に示すように、前記建物本体1の母屋部1cの上階層の母屋部上階2dと、前記下屋部1dの上階層の下屋部上階2eとを備えている。前記母屋部上階2dは居住領域として利用されており、前記下屋部上階2eは、前記母屋部上階2dの居住領域と行き来可能な収納室と、この収納室に隣接するとともに行き来可能な前記屋上部1aとを有している。
すなわち、この屋上部1aは、前記下屋部下階1dの上部に位置するルーフバルコニーとして利用されている。
【0033】
このルーフバルコニーである屋上部1aは、前記建物上階部2(母屋部上階2d、下屋部上階2e)の外壁に形成されている開口部2b,2cによって、前記建物上階部2の内部と連通した状態となっている。
これら開口部2b,2cのうち、少なくとも一方は人が無理なく通過できるような大きさの出入り口とすることが望ましく、本実施の形態では前記下屋部上階2eの収納室側の開口部2cが出入り口となっている。また、これら開口部2b,2cには、透光性を有する面材を備えるサッシが設けられている。
【0034】
なお、本実施の形態の屋上部1aは、前記建物上階部2の外壁と、該屋上部1c上に立設される前記支持壁3と、前記下屋部下階1dおよび下屋部上階2eの妻側に配置される妻壁1eとで囲まれる部分を指している。
また、前記建物上階部2の外壁の表面に外装材が取り付けられていることは言うまでもないが、前記支持壁3の屋上部1a側表面に外装材3dが取り付けられるとともに、前記妻壁1eの屋上部1a側表面にも外装材(図示せず)が取り付けられている。また、前記屋上部1aにもルーフィング等防水処理が施されていることは言うまでもない。
【0035】
さらに、前記建物上階部2の下屋部上階2eの上部には、前記勾配屋根4と離間して配置される上階屋根2aが設けられている。これによって、この上階屋根2aと前記勾配屋根4との間に開放部分を形成できることとなり、前記屋上部1aを外部に向かって確実に開放させることができるようになっている。
なお、本実施の形態の上階屋根2aは、棟部の両側に屋根面を有する招き屋根であり、この招き屋根とは、棟部から傾斜方向の下端部までの長さが短い一方の屋根と、この一方の屋根よりも棟部から下端部までの長さが長い他方の屋根とを備えるものである。また、前記母屋部上階2dの上部にも屋根が設けられており、この屋根も前記勾配屋根4とは離間して配置されている。
また、本実施の形態においては、前記上階屋根2aの長さの短い一方の屋根は、前記勾配屋根4の延長線上に配置されており、これら上階屋根2aと勾配屋根4とが、あたかも同一の屋根であるかのような印象を与えることができる。
【0036】
また、この屋上部1aと勾配屋根4と支持壁3とで囲まれる空間には、図1に示すように収納庫11が設けられており、建物内の空いたスペースを有効的に活用できる。さらに、前記支持壁3には、前記収納庫11内に収納される物品の出し入れを行うための出し入れ口3aが形成されている。
【0037】
なお、前記収納庫11は、前記屋上部1aと勾配屋根4と支持壁3と、前記屋上部1aを構成する床上に立設されるとともに前記支持壁3と対向する補助壁11aとによって箱状に形成されてなる。
したがって、前記支持壁3だけでなく、前記補助壁11aによっても前記勾配屋根4を前記屋上部1aの上方に支持できるようになっている。
【0038】
一方、本実施の形態の勾配屋根4は、図1〜図3に示すように、前記建物本体1の外壁1bの上端部に連結されている。すなわち、前記勾配屋根4は、前記建物本体1の母屋部下階1cから下屋部下階1dにかけて形成されており、前記母屋部下階1cの外壁1bに連結された状態となっている。
さらに、下端部が前記建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出するようにして設けられている。これによって、この勾配屋根4の傾斜方向の下端部を、前記建物本体1の外部に張り出す軒先部として利用することができる。
【0039】
さらに、この勾配屋根4は、図3に示すように、前記母屋部下階1cの外壁1bに間隔をあけて隣り合うようにして前記下屋部下階1dの端部に立設される支持壁体1fとも連結されている。本実施の形態の支持壁体1fは、平面視逆L字状に形成されており、この逆L字状を構成する二辺のうち、一辺の延長線上に前記外壁1bが設けられており、他辺の延長線上に前記妻壁1eが設けられており、より安定的に構築されている。
【0040】
なお、前記勾配屋根4の傾斜方向の下端部は、この支持壁体1fよりも外部側に突出するようにして設けられている。これによって、前記勾配屋根4の傾斜方向の下端部を、前記玄関室の外部の玄関ポーチ上に張り出す軒先部として利用することができる。
【0041】
また、この勾配屋根4の上部は、上述のように前記屋上部1c上に立設されるとともに、この屋上部1cを囲む支持壁3によって、この屋上部1cの上方に支持されている。
この支持壁3の上端部には、前記勾配屋根4を所定の角度に傾斜した状態でも確実に支持できるように、所定の角度の傾斜面を有する調整材3bが設けられている。また、この支持壁3の上端部と前記勾配屋根4とは、前記支持壁3の表面と前記勾配屋根4の下面とに当接する固定金具3cによって強固に固定されている(図5参照)。
【0042】
そして、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、図1に示すように、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって、前記屋上部1aに立ち入る人のための手摺りとして利用される。これにより、前記屋上部1aに立ち入る人が手を載せたり、つかまったりすることができる。また、外部から前記屋上部1aに向かう視線を遮ることができる。
【0043】
さらに、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部を、前記屋上部1a側に張り出す軒先部として利用することができる。これによって、雨水が前記屋上部1aから支持壁3に向かって跳ねる距離を長くすることができるので、前記収納庫11付近における雨仕舞を向上させることができ、前記収納庫11内に収納された物品が濡れることを確実に防ぐことができるようになっている。
【0044】
また、本実施の形態の勾配屋根4の上端部は、上述のように前記屋上部1aの上方に支持されて手摺りとして利用される部分だけでなく、図2に示すように、前記建物上階部2の外壁に連結されている部分を備えているものとする。これによって、前記勾配屋根4の設置強度を向上させることができるので好ましい。
【0045】
さらに、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、図1に示すように、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は前記支持壁3に対してオーバーハングすることとなり、人が前記屋上部1aから外部へと移動しにくくなる。特に子供の手摺りの乗り越えを確実に防ぐことができ、安全性に優れる。
【0046】
すなわち、例えば子供が前記勾配屋根4の上端部に手をかけ、さらに前記支持壁3の表面に足をかけて、この手摺りを乗り越えようとしても、このように前記勾配屋根4の上端部がオーバーハングしているため、乗り越えようとする子供の上体も背側に傾き、自身の上体を支えきれずに前記屋上部1a側に着地することとなる。したがって、特に子供の乗り越えを確実に防ぐことができ、安全性が高い。
【0047】
一方、本実施の形態の勾配屋根4は、図4に示すように、建築用屋根パネルである屋根本体4aからなり、この勾配屋根4の屋根本体4aの内部空間を利用した換気通路4cと、前記屋上部1a側に突出する勾配屋根4の傾斜方向の上端部において下方に開口して前記換気通路4cと外部とを連通する換気口4dとを備えており、屋根自体の換気や小屋裏部分の換気などの屋根換気が行えるようになっている。
【0048】
また、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面と、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方には、図4(a)〜(c)に示すように、これら屋上部1a側端面および側端面の長さ方向に沿って、それぞれ化粧板材5,6が取り付けられている。
【0049】
すなわち、前記化粧板材5は、前記屋上部1a側端面に取り付けられるので、正面視矩形状に形成されたものである。
なお、この化粧板材5は、図4(a)に示すように鉛直に配置された状態で取り付けられるものであるため、前記屋根本体4aの傾斜方向の上端面には、鉛直な面を形成するために、所定の角度の傾斜面を有する調整材4bが取り付けられている。そして、この調整材4bの表面に、前記化粧板材5が取り付けられている。
また、前記勾配屋根4の屋根本体4aを構成する面材は、前記調整材4bが設けられている分だけ、前記勾配屋根4の傾斜方向の上方に向かって突出している。これにより、後述する下地材20aを固定しやすくなっている。
【0050】
また、前記化粧板材6は、前記傾斜する勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面に取り付けられるので、斜材として形成されている。
つまり、この化粧板材6の傾斜方向の上端面および下端面は鉛直に配置される鉛直面となっており、上端面は、下端面よりも上方に配置されるようになっている。そして、これら上端面および下端面は鉛直面であるから、前記化粧板材6を前記勾配屋根4の側端面に取り付ける際も、鉛直に配置された状態を維持していることとなる。
【0051】
また、これら化粧板材5,6の垂直方向の下端部は、前記勾配屋根4の下面の高さ位置よりも下垂している。したがって、例えば前記勾配屋根4に向かって雨が降る場合に、雨水が前記化粧板材5,6の表面を伝い、この化粧板材5,6の垂直方向の下端部に向かって流れることとなる。
これによって、前記勾配屋根4に向かって降る雨が前記勾配屋根4に到達することを確実に防ぐことができるので、建物の雨仕舞を向上させることができる。
【0052】
なお、これら化粧板材5,6は、図4(a)および(c)に示すように、これら化粧板材5,6が取り付けられる前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面との間に固定金具7,8を介して取り付けられている。
さらに、この固定金具7,8は、前記化粧板材5,6の取付面に形成される被係合部5a,6aに係合する係合部7a,8aを備えている。
【0053】
前記固定金具7,8の係合部7a,8aは、先端が上方に向かって突出するフック状体であり、これら固定金具7,8の本体に、垂直方向に沿って上方と下方との2箇所に設けられている。
また、前記化粧板材5,6の被係合部5a,6aは、前記固定金具7,8の係合部7a,8aの形状に合わせて形成されており、前記係合部7a,8aであるフック状体の先端が確実に係合できるようになっている。
なお、これら固定金具7,8自体は、前記化粧板材5,6によって覆われることとなるので、雨仕舞等を考慮する必要は無く、釘やビス等の止着材によって前記屋根本体4aに固定してもよい。
また、前記固定金具8は、前記化粧板材6を取り付けるためのものであるため、この化粧板材6と同じく、斜材として形成されている。
【0054】
このような前記固定金具7,8を、予め前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面に取り付けておくことによって、前記化粧板材5,6を取り付ける際に、この化粧板材5,6の被係合部5a,6aと、前記固定金具7,8の係合部7a,8aとを係合させることで、前記化粧板材5,6を前記勾配屋根4の屋上部1a側端面および側端面に取り付けることができる。
これによって、前記化粧板材5,6を取り付ける際に釘やビス等の止着材を用いる必要がないので、釘やビス等の止着材が設けられた部分から雨水が浸入するようなことを確実に防ぐことができ、建物の雨仕舞を向上させることができる。
【0055】
さらに、前記勾配屋根4の屋根本体4aの上面には、瓦からなる複数の屋根材20が設けられている。
また、これら複数の屋根材20は、下方に位置する屋根材20の上端部に、上方に位置する屋根材20が重なり合うようにして葺かれることによって、これら屋根材20上を流れる雨水が屋根材20裏に浸入しないようになっている。
なお、前記勾配屋根4の屋根本体4aの上面には予め防水シート(図中の破線)が敷設されており、この防水シートの上面に前記複数の屋根材20が設けられている。
【0056】
また、前記複数の屋根材20のうち、最も上方に位置する屋根材20は、図4(a)に示すように、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部に固定される下地材20aとともに止着材により前記屋根本体4aに固定されている。
そして、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、前記屋上部1a側端面に取り付けられる化粧板材5の垂直方向の上端部と、この最も上方に位置する屋根材20の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材30が設けられている。この上カバー部材30は、前記化粧板材5の垂直方向の上端部を覆う第1覆い部30aと、前記屋根材20の傾斜方向の上端部を覆う第2覆い部30bとを備えている。
なお、この上カバー部材30も前記止着材によって前記下地材20aとともに、前記屋根本体4aに固定されている。
【0057】
このように前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、前記屋上部1a側端面に取り付けられる化粧板材5の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20のうち、最も上方に位置する屋根材20の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材30が設けられているので、この上カバー部材30によって、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部付近から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができる。
【0058】
なお、本実施の形態の上カバー部材30は、前記屋根材20と同様に瓦によって構成されてなるものとするが、これに限られるものではない。
すなわち、例えば図6に示すように、アルミ等の金属からなる上カバー部材31を用いてもよい。この上カバー部材31は、前記化粧板材5の垂直方向の上端部を覆う第1覆い部31aと、前記屋根材20の傾斜方向の上端部を覆う第2覆い部31bとを備えており、前記第1覆い部31aは、前記化粧板材5の上端に固定される受け材31cに接続されている。
また、前記第2覆い部31bは、この第2覆い部31bの撓みを防止する下地材31d上に位置している。
【0059】
さらに、前記複数の屋根材20のうち、前記勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材20は、図4(c)に示すように、前記勾配屋根4の幅方向の最も側方の端部に沿って固定される下地材20bに沿って配置されている。
そして、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、この最も側方に位置する屋根材20の側端部とを包み込む側カバー部材40が設けられている。
【0060】
このように前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材20のうち、この勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材20の側端部とを包み込む側カバー部材40が設けられているので、この側カバー部材40によって、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができる。
【0061】
なお、この側カバー部材40は、この側カバー部材40の裏面側に、前記下地材20bを被覆するとともに、前記屋根本体4aの上面を被覆する防水下地材40aと一組で前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方に取り付けられるものとする。
すなわち、前記側カバー部材40は、前記防水下地材40aを介して前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方に取り付けられることとなる。これによって、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方から雨水等が浸入することを、より確実に防ぐことができるようになっている。
なお、本実施の形態においては、前記側カバー部材40は前記勾配屋根4の幅方向両端部に取り付けられているものとする。
【0062】
一方、建物Aの雨仕舞を向上させるため、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面に対して、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆うような部材を設けることが好ましい。
すなわち、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面に取り付けられる固定金具7の下端部には、図5に示すように、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆う覆いプレート9が一体的に設けられている。
また、この覆いプレート9には、前記支持壁3の屋上部1a側表面の上端部を覆うとともに、前記支持壁3の屋上部1a側表面から所定の隙間Sをあけて設けられる通気部10が接続されている。そして、この通気部10は、前記隙間Sに向かって水平方向に開口する開口部10aを有しており、この開口部10aと前記換気口4dとを介して前記換気通路4cと屋外とが連通している。
【0063】
ここで、前記覆いプレート9は、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆う部分の傾斜方向の下端部から垂直下方に向かって延在するとともに、下端部が適宜折曲形成されて前記通気部10に接続される垂下部9aを備えている。
【0064】
また、前記通気部10は、前記垂下部9aに接続されるとともに、板材3eを介して前記支持壁3の調整材3bに固定される第1金具10bと、この第1金具10bとともに前記板材3eを介して前記支持壁3の調整材3bに固定されるとともに、前記支持壁3の屋上部1a側表面に沿って下垂する第2金具10cとを備えており、これら第1金具10bと第2金具10cとの間に前記隙間Sが形成されている。また、前記開口部10aは、前記第1金具10bに形成されている。
さらに、前記第2金具10cには、火災時に発泡することによって前記隙間Sを塞ぐ防火発泡材10dが設けられている。
【0065】
このような前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部付近の構成によれば、前記通気部10の開口部10aと前記換気口4dとを介して前記換気通路4cと屋外とが連通しているので、この通気部10によって屋内と屋外とを確実に連通させることができ、十分な換気を行うことができる。
また、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の屋上部1a側端面に取り付けられる固定金具7の下端部に、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面を覆う覆いプレート9が一体的に設けられているので、この覆いプレート9によって、前記換気口4dを除く前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下面から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができる。さらに、前記通気部10は、前記隙間Sに向かって水平方向に開口する開口部10aを有しているので、この開口部10aから内部に侵入しようとする雨水は、水平方向に向きを換えた後に、水平方向に浸入してから更に上昇して前記換気口4dに向かおうとするが、雨水は上昇速度が低下して前記換気口4dにほとんど達しない。
これによって、屋根換気を十分に行いながら、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部の下方から前記勾配屋根4側に向かって雨水が浸入することを確実に防ぐことができる。
【0066】
本実施の形態によれば、前記建物本体1の外壁1bの上端部に連結されるとともに、上部が、前記屋上部1aに立設される支持壁3によって前記屋上部1aの上方に支持される勾配屋根4が設けられているので、前記屋上部1aを外部に向かって確実に開放させながら、この勾配屋根4を、前記建物本体1の上部に確実に設置することができる。
そして、このような勾配屋根4の傾斜方向の下端部は、前記建物本体1の外壁1bよりも外部側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の下端部を、前記建物本体1の外部に張り出す軒先部として利用することができる。
また、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出することによって、前記屋上部1aに立ち入る人のための手摺りとされているので、前記屋上部1aに立ち入る人が手を載せたり、つかまったりすることができる。また、外部から前記屋上部1aに向かう視線を遮ることができる。
これによって、前記屋上部1aに手摺りを形成しながら、従来のように庇やキャンティバルコニー等の張出部を設ける手間を省略することができるとともに、前記勾配屋根4の傾斜方向の下端部である軒先部によって建物の雨仕舞を向上させることが可能となる。
さらに、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部は、前記支持壁3よりも屋上部1a側に突出しているので、この勾配屋根4の傾斜方向の上端部は前記支持壁3に対してオーバーハングすることとなり、人が前記屋上部1aから外部へと移動しにくくなる。特に子供の手摺りの乗り越えを確実に防ぐことができ、安全性に優れる。
【0067】
なお、本実施の形態の建物本体1は、上面に屋上部1aが設けられた直方体の単純な構造のものでよいし、本実施の形態の建物Aは、この直方体の建物本体1に勾配屋根4が設けられるような単純なものでもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。すなわち、前記建物Aは平屋の建物であってもよいし、建物上階部2として、居住区域を形成せずに高さ制限の対象外となる階段室としての塔屋を設けてもよいし、前記屋上部1aはルーフバルコニーではなく単なる陸屋根でもよい。
【0068】
(第2の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した第1の実施の形態とは異なる構成部分のみについて説明する。
【0069】
すなわち、本実施の形態の屋根材21は、スレート等からなる薄板状のものであり、この屋根材21は、前記屋根本体4の上面に設けられるにあたって、下方に位置する屋根材21の上端部に、上方に位置する屋根材21が重なり合うようにして複数葺かれることで、これら屋根材21上を流れる雨水が屋根材21裏に浸入しないようになっている。
なお、前記勾配屋根4の屋根本体4aの上面には予め防水シート(図中の破線)が敷設されており、この防水シートの上面に前記複数の屋根材21が設けられている。
【0070】
また、これら複数の屋根材21のうち、最も上方に位置する屋根材21は、図7(a)に示すように、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部と、この上端部に固定される下地材21aとの間に挟みこまれるようにして設けられている。
【0071】
そして、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、この勾配屋根4の屋上部1a側端面に取り付けられる化粧板材5の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材21のうち、最も上方に位置する屋根材21の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材32が設けられている。
【0072】
このカバー部材32は、アルミ等の金属からなり、前記化粧板材5の垂直方向の上端部を覆う第1覆い部32aと、前記屋根材21の傾斜方向の上端部を覆う第2覆い部32bと、これら第1覆い部32aと第2覆い部32bとの間に位置する中間覆い部32cとを備えている。また、前記第1覆い部32aは、前記化粧板材5の上端に固定される受け材32dに接続されている。
【0073】
さらに、前記中間覆い部32cは、水平面または前記屋上部1aに向かって下がるように傾斜する傾斜面となっている。
これによって、例えば、このような中間覆い部32cがない場合に比して、前記第1覆い部32aと第2覆い部32bとの間の角部付近が鋭利でない状態となり、人が手を載せやすくなる。また、この中間覆い部32cがない場合に比して、前記屋上部1aから前記上カバー部材32の最上部までの高さが低くなるので、前記屋上部1aから見える景色が広がるとともに、前記屋上部1aに向かって注がれる日差しを多く取り込めるようになっている。
また、前記中間覆い部32cが水平面となっていれば、例えばコップやグラス等を置いてテーブル代わりに用いることができ、前記中間覆い部32cが前記屋上部1aに向かって下がる傾斜面となっていれば、例えば洗濯バサミ等の物品を落とした時に、この物品が前記屋上部1a側に落ちやすくなる。
【0074】
一方、前記複数の屋根材21のうち、前記勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材21は、図7(c)に示すように、前記勾配屋根4の幅方向の最も側方の端部に沿って固定される下地材21bに沿って配置されている。
そして、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、この最も側方に位置する屋根材21の側端部とを包み込む側カバー部材41が設けられている。
【0075】
このように前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根4の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材6の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根4の上面に設けられる複数の屋根材21のうち、この勾配屋根4の幅方向の最も側方に位置する屋根材21の側端部とを包み込む側カバー部材41が設けられているので、この側カバー部材41によって、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方から雨水等が浸入することを確実に防ぐことができる。
【0076】
なお、この側カバー部材41は、この側カバー部材41の裏面側に、前記下地材21bを被覆するとともに、前記屋根本体4aの上面を被覆する防水下地材41aと一組で前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方に取り付けられるものとする。
すなわち、前記側カバー部材41は、前記防水下地材41aを介して前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方に取り付けられることとなる。これによって、前記勾配屋根4の幅方向両端部の少なくとも一方から雨水等が浸入することを、より確実に防ぐことができるようになっている。
【0077】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同じ効果を得ることができるとともに、第1の実施の形態とは異なる屋根材21を用いた場合でも、建物Aの雨仕舞を向上させることができる。
【0078】
(第3の実施の形態)
次に、図面を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述した第1および第2の実施の形態とは異なる構成部分のみについて説明する。
すなわち、本実施の形態においては、図8に示すように、前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部に、人の手で握持可能な補助手摺り12が取り付けられている。
【0079】
そして、このように前記勾配屋根4の傾斜方向の上端部には、人の手で握持可能な補助手摺り12が取り付けられているので、例えば、前記屋上部1aに立ち入る人が、この補助手摺りを握持しながら前記屋上部1aを安全に歩行できたり、前記屋上部1aで洗濯物を干す際に洗濯干しロープを巻き付けたり、子供が背伸びをして外の風景を見るときの補助とするなどの利点がある。
【0080】
なお、本実施の形態の屋根材を、第2の実施の形態と同様野の屋根材21とし、これに伴って、上カバー部材32や側カバー部材41等を図示したが、これに限られるものではなく、第1の実施の形態と同様の屋根材20や上カバー部材30,31、側カバー部材40等でもよいものとする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の建物を示す側断面図である。
【図2】本発明の建物を示す平断面図である。
【図3】本発明の建物を示す平断面図である。
【図4】勾配屋根の傾斜方向の上端部付近の構成の一例を示すものであり、(a)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の側断面図であり、(b)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の上カバー部材を取り付けない状態の端面図であり、(c)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の正面側の断面図である。
【図5】勾配屋根の傾斜方向の上端部付近の構成の一例を示すものであり、覆いプレートと通気部とを示す側断面図である。
【図6】勾配屋根の傾斜方向の上端部付近の構成の一例を示すものであり、(a)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の側断面図であり、(b)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の上カバー部材を取り付けない状態の端面図であり、(c)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の正面側の断面図である。
【図7】勾配屋根の傾斜方向の上端部付近の構成の一例を示すものであり、(a)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の側断面図であり、(b)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の上カバー部材を取り付けない状態の端面図であり、(c)は勾配屋根の傾斜方向の上端部の正面側の断面図である。
【図8】勾配屋根の傾斜方向の上端部付近の構成の一例を示すものであり、補助手摺りを示す側断面図である。
【符号の説明】
【0082】
A 建物
1 建物本体
1a 屋上部
1b 外壁
3 支持壁
4 勾配屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が立ち入り可能であるとともに外部に向かって開放される屋上部を有する建物本体に、この建物本体の外壁の上端部に連結されるとともに、上部が、前記屋上部に立設される支持壁によって前記屋上部の上方に支持される勾配屋根が設けられており、
この勾配屋根の傾斜方向の下端部は、前記建物本体の外壁よりも外部側に突出しており、
この勾配屋根の傾斜方向の上端部は、前記支持壁よりも屋上部側に突出することによって、前記屋上部に立ち入る人のための手摺りとされていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根の傾斜方向の上端部の屋上部側端面と、前記勾配屋根の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方には、これら屋上部側端面および側端面の長さ方向に沿って、それぞれ化粧板材が取り付けられており、
これら化粧板材の垂直方向の下端部は、前記勾配屋根の下面の高さ位置よりも下垂していることを特徴とする屋根構造。
【請求項3】
請求項2に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根の傾斜方向の上端部には、前記屋上部側端面に取り付けられる化粧板材の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根の上面に設けられる複数の屋根材のうち、最も上方に位置する屋根材の傾斜方向の上端部とを包み込む上カバー部材が設けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項4】
請求項3に記載の屋根構造において、
前記上カバー部材は、前記化粧板材の垂直方向の上端部を覆う第1覆い部と、前記屋根材の傾斜方向の上端部を覆う第2覆い部と、これら第1覆い部と第2覆い部との間に位置する中間覆い部とを備えており、
この中間覆い部は、水平面または前記屋上部に向かって下がるように傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする屋根構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根の幅方向両端部の少なくとも一方には、前記勾配屋根の幅方向両端部に位置する側端面の少なくとも一方に取り付けられる化粧板材の垂直方向の上端部と、前記勾配屋根の上面に設けられる複数の屋根材のうち、この勾配屋根の幅方向の最も側方に位置する屋根材の側端部とを包み込む側カバー部材が設けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記化粧板材は、この化粧板材が取り付けられる前記勾配屋根の屋上部側端面および側端面との間に固定金具を介して取り付けられており、
この固定金具は、前記化粧板材の取付面に形成される被係合部に係合する係合部を備えていることを特徴とする屋根構造。
【請求項7】
請求項6に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根は、この勾配屋根の内部空間を利用した換気通路と、前記屋上部側に突出する勾配屋根の傾斜方向の上端部において下方に開口して前記換気通路と外部とを連通する換気口とを備えており、
前記勾配屋根の傾斜方向の上端部の屋上部側端面に取り付けられる固定金具の下端部には、前記換気口を除く前記勾配屋根の傾斜方向の上端部の下面を覆う覆いプレートが一体的に設けられており、
この覆いプレートには、前記支持壁の屋上部側表面の上端部を覆うとともに、前記支持壁の屋上部側表面から所定の隙間をあけて設けられる通気部が接続されており、
この通気部は、前記隙間に向かって水平方向に開口する開口部を有しており、この開口部と前記換気口とを介して前記換気通路と屋外とが連通していることを特徴とする屋根構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記屋上部と勾配屋根と支持壁とで囲まれる空間に収納庫が設けられており、
前記支持壁には、前記収納庫内に収納される物品の出し入れを行うための出し入れ口が形成されていることを特徴とする屋根構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の屋根構造において、
前記勾配屋根の傾斜方向の上端部には、人の手で握持可能な補助手摺りが取り付けられていることを特徴とする屋根構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の屋根構造を備える建物であって、
前記建物本体の上部に、この建物本体の上階層となる建物上階部が設けられており、
この建物上階部の上部には、前記勾配屋根と離間して配置される上階屋根が設けられており、
この建物上階部の外壁には、この建物上階部の内部と前記屋上部とを連通する開口部が形成されていることを特徴とする建物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−77629(P2010−77629A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245479(P2008−245479)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】