説明

屋根膜取付構造

【課題】小面積屋根から大面積屋根まで熟練を要することなく容易に屋根膜材を張ることができる屋根膜取付構造を提供する。
【解決手段】屋根の骨組みを形成するトラス構造等の各継手2に貫通孔4が形成され、貫通孔4にナット5により上下動する張力調整用ボルト3が貫通し、張力調整用ボルト3の先端に張力調整用ボルト3の上下動に伴って共に上下動する屋根膜材6を取り付ける膜取付材7が固着され、張力調整用ボルト3の上下動により膜取付材が上下動して屋根膜材に張力が付与される屋根膜取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の骨組みに屋根膜材を取り付ける屋根膜取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根の骨組みを形成した後に骨組みにテント布などの屋根膜材を張って屋根を形成する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、屋根膜材の下に対角線上に弓形の張力導入フレームを取り付けた複数の枠形フレームを梁上に固定し、梁の下からケーブルを引いて連結ロッドを押し上げ、張力導入フレームを突き上げて屋根膜材を押し上げて張設する屋根膜ユニットが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、屋根の中央部の一点を押し上げて束部材を上方に変位させ、軸体における隣り合うもの同士の間の開き角度を増大させることで、屋根膜材に所定の張力を均等に付与して展張されるようにした屋根が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、屋根膜材の両側縁に設けたロープ状エッジを、屋根の傾斜方向に配置した膜止着材の膜止着用溝に通して支持するとともに、屋根膜材の中間位置に設けた長手方向にロープ状エッジを膜引張り材の膜止着用溝に通して支持させ、膜引張り材を下方へ引張って膜材に張力を付与して固定する膜屋根が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−160379号公報
【特許文献2】特開2001−49783号公報
【特許文献3】特開2001−49906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の屋根膜ユニットでは、屋根膜材が大面積になるほどケーブルが長くなり、ケーブルの伸び等により屋根膜材に均一な張りを施すことが困難である。また、施工後もケーブルの伸びにより屋根膜材の張りが弛む恐れがあり、定期的に管理が必要となる。さらに、屋根膜材が枠形フレームごとに分割されているため、分割部分の止水が相当量必要となる。
【0007】
特許文献2の屋根は、大面積屋根の場合には屋根膜材の面積も軸体の大きさも大きくなるので、屋根の中央部の一点を押し上げるだけでは大面積の屋根膜材全体を張ることは容易ではなく、また、軸体を押し上げることも容易ではない。また、屋根膜材の中央部の一点を押し上げるため、特にその部分の屋根膜材が強く張られ、屋根膜全体に均一な張りを施すことが困難で屋根膜材の寿命にも悪影響がある。また、中央部の一点を押し上げるだけなので、屋根形状が限定される。
【0008】
特許文献3の膜屋根は、屋根膜材を張るためのウインチやガイドシーブ等が必要なことや膜材取付けのためのロープ状エッジや膜止着材、膜引張材等複雑な加工と精度を要する長尺な構成部材が必要であり、また、膜引張り材の引き下げ長さの調整ができないので、現場に応じた最適の張力を屋根膜材に与えることは難しい。さらに、膜材を取り付ける場合、あるいは、膜材の耐用年数が過ぎて屋根膜材を張り替える場合に熟練を要し、相当な手間がかかる。
【0009】
そこで、本発明は、小面積屋根から大面積屋根まで熟練を要することなく容易に屋根膜材を張ることができる屋根膜取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の屋根膜取付構造は、屋根の骨組みを形成するトラス構造の各継手に貫通孔が形成され、貫通孔にナットにより上下動する張力調整用ボルトが貫通し、張力調整用ボルトの先端に張力調整用ボルトの上下動に伴って共に上下動する屋根膜材を取り付ける膜取付材が固着され、張力調整用ボルトの上下動により膜取付材が上下動して屋根膜材に張力が付与されることを特徴とする。さらに、継手に固定された支持板に弓形の膜支持材の両端を固着してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は次のとおりである。
【0012】
(1)トラス構造等の骨組みの継手を利用し、屋根膜材を長尺の膜取付材に係止して張力を与えるので、例えば、トラス構造を利用するガレージ、公園の休憩場所などの小面積屋根から体育館、ホール、展示場などの大面積屋根まで、屋根膜材に均一な張りを与えることができる。それにより膜材の寿命も長くなる。
【0013】
(2)膜取付材に屋根膜を係止し、支持部材をネジにより上下させるだけなので、屋根膜材の張り施工に特別な熟練を必要とせず、施工後の屋根膜材の張り調整も容易にできる。
【0014】
(3)施工のために、ウインチやシーブの取付などの準備を必要としないので、屋根膜材の張り施工を従来よりも早くすることができる。
【0015】
(4)屋根膜材を膜取付材から取り外し、新しい膜材を係止して張力を与えるだけなので、屋根膜材の張り替えも容易にできる。
【0016】
(5)屋根膜材取付けのための膜取付材が単純な構造で構成できるため安価にできる。
【0017】
(6)屋根膜材を引き下げて張ることも押し上げて張ることもできるので、現場に応じた最適な張力を屋根膜材に与えることができる。
【0018】
(7)屋根膜材を引き下げて張る場合、あるいは屋根膜材を押し上げて張る場合、張力調整用ボルトの締め付けナットをそれぞれあらかじめ所定の位置にセットしておけば張力調整ボルトの締め付け長さを全て同じにすることができ、屋根膜材全体に均一な張りを施すことが容易にでき作業も早くできる。
【0019】
(8)継手部分で張力を与えるので、継手の配置に応じて屋根の仕上がり形状が多様にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1に使用する屋根膜構造の要部を示す斜視図、図2は継手部分の拡大図、図3は張力を付与した状態を示す図である。
【0022】
図1に示す例は、骨組みとして、トラス部材1を継手2で次々に連結して組み立てたトラス構造で、この構造は平屋根あるいはアーチ形屋根に形成することができる。
【0023】
図2に示すように、継手2には、張力調整用ボルト3が上下方向に移動可能であるように貫通孔4が設けられている。継手2には従来からトラス構造に利用されているボールジョイントなど、張力調整用ボルト3の貫通孔4を形成できる継手を利用することができる。施工の際には張力調整用ボルト3は、継手2を挟んで螺合しているナット5を回転させて高さが調整される。
【0024】
張力調整用ボルト3の上端には、屋根膜材6を取り付けるために、剛性を有する、例えば鋼管からなる膜取付材7が溶接等により固定される。膜取付材7には継ぎ足し可能とするため必要に応じてジョイントを設ける。屋根膜材6を膜取付材7に取り付けるため、屋根膜材6には、膜取付材7に沿うように一対の取付バンド6aが直線状に膜取付材7を挟み込むように設けられている。各取付バンド6aには取付バンド6aを膜取付材7に係止するためのヒモ6cを通すハトメ6bが間隔をおいて設けられている。屋根膜材6としては、耐候性、非透水性、耐久性などを有する、例えば、テントなどに使用されている、A種、B種、C種の膜材料などを利用することができる。
【0025】
本実施例の施工方法は次のとおりである。
【0026】
トラス部材1を継手2に連結して屋根の骨組みを完成させる。次いで、膜取付材7に上端が溶接により固着されている張力調整用ボルト3を、継手2の貫通孔4に挿入、貫通させて膜取付材7を骨組みに取り付ける。その後、屋根膜材6を膜取付材7の上に被せ、屋根膜材6の取付バンド6aのハトメ6bにヒモ6cを通して屋根膜材6を膜取付材7に係止する。
【0027】
次いで、隣り合う列の膜取付材7のうち、一方の列の膜取付材7aに固着されている各張力調整用ボルト3を上下のナット5を回転させて継手2に締め付けて張力調整用ボルト3を低いレベルに調整する。
【0028】
レベルを調整した後、他方の列の膜取付材7bに固着されている各張力調整用ボルト3のナット5を回転させて各張力調整用ボルト3を上昇させ、それに伴い膜取付材7bが低いレベルにある膜取付材7aの高さより上に上昇する。同様にして、膜取付材7bをひとつおきに張力調整用ボルト3を上昇させ、それに伴い膜取付材7bが低いレベルにある膜取付材7aの高さより上に上昇させる。その結果、屋根膜材6に張力が付与されて波形に張設される。
【0029】
なお、膜取付材を隣り合う膜取付材のうち、一方の張力調整用ボルトを高いレベルに設定し、他方の張力調整用ボルトを下降させて張力を付与して波形に張設してもよい。
【0030】
本実施例より、図6(a)に示す平屋根、あるいは(b)に示すアーチ形屋根を形成することができる。
【実施例2】
【0031】
図4は実施例2に使用する継手部分の拡大図、図5は実施例2の屋根膜材に張力を付与した状態を示す図で、図1〜図3と同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。本実施例2は、屋根膜材6を弓形の膜支持材8に沿って弓形に張設するものである。
【0032】
図4において、実施例1とは、弓形の膜支持材8を継手2の支持板9に固定する点が異なるだけで、実施例1と同様に、膜取付材7には予め各張力調整用ボルト3の上端が固着され、屋根膜材6が取り付けられる。
【0033】
本実施例の施工方法は次のとおりである。
【0034】
トラス部材1を継手2に連結して屋根の骨組みを完成させる。次いで、膜取付材7に上端が溶接により固着されている張力調整用ボルト3を、弓形の膜支持材8を取り付けた支持板9の貫通孔に入れ込んだ後、継手2の貫通孔4に入れ込み、膜取付材7及び膜支持材8を骨組みに取り付ける。その後、屋根膜剤6を膜取付材7及び膜支持材8の上に被せ、屋根膜材6の取付バンド6aのハトメ6bにヒモ6cを通して屋根膜材6を膜取付材7に係止する。
【0035】
次いで、各張力調整用ボルト3のナット5を回転させて各継手2の張力調整用ボルト3を下降させ、それに伴い膜取付材7が下降する。その結果、屋根膜材6に弓形の膜支持材8に沿って張力が付与されて張設される。
【0036】
本実施例より、図6(c)、(d)に示すように弓形が連続した屋根を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1に使用する屋根膜構造の要部を示す斜視図。
【図2】図1の継手部分の拡大図。
【図3】実施例1の屋根膜材に張力を付与した状態を示す図。
【図4】実施例2に使用する継手部分の拡大図。
【図5】実施例2の張力を付与した状態を示す図。
【図6】実施例1,2の屋根膜材に張力を付与した状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1:トラス部材
2:継手
3:張力調整用ボルト
4:貫通孔
5:ナット
6:屋根膜材
6a:取付バンド
6b:ハトメ
6c:ヒモ
7:膜取付材
8:弓形の膜支持材
9:支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の骨組みの各継手に貫通孔が形成され、貫通孔にナットにより上下動する張力調整用ボルトが貫通し、張力調整用ボルトの先端に張力調整用ボルトの上下動に伴って共に上下動する屋根膜材を取り付ける膜取付材が固着され、同一列の張力調整用ボルトの上下動により同一列の膜取付材が上下動して屋根膜材に張力が付与されることを特徴とする屋根膜材取付構造。
【請求項2】
継手に固定された支持板に弓形の膜支持材の両端を固着したことを特徴とする請求項1記載の屋根膜材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183356(P2006−183356A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379265(P2004−379265)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(593145135)株式会社田中鉄工所 (3)
【Fターム(参考)】