説明

屋根

【課題】施工が煩雑にならずに防水性を確保することができる屋根を提供する。
【解決手段】金属板10の裏面側に断熱材12を設けた複数の屋根パネル1、1…を固定具2で屋根下地3に固定して形成される屋根に関する。複数の屋根パネル1、1…の表面側全体を被覆するカバー体4を屋根パネル1に載置する。屋根パネル1、1の継ぎ目部分や固定具2の打ち込み部分に隙間が生じていてもカバー体4で被覆することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や工場などの屋根であって、高い防水性能が要求される屋根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図6に示すように、複数枚の屋根パネル1、1…を軒棟方向及びこれに直交する方向に並設して母屋などの屋根下地3に載設することによって屋根を形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示すように、屋根パネル1は角波状に折り曲げられた金属外皮10の裏面の略全面に発泡ウレタン樹脂などの合成樹脂層の断熱材12が裏打ちされ、かかる断熱材12の裏面にも金属外皮11が裏打ちされている。そして、屋根パネル1の軒側においては裏面側の金属外皮11及び断熱材12が切除され、断熱材12の軒側端面から金属外皮10が延出されて重ね接続部15が形成されている。かかる重ね接続部15の長さは200〜400mm程度である。屋根パネル1の棟側においては、金属外皮10、11及び断熱材12の端面が揃えられている。
【0004】
図6に示すように、チャンネル材などの屋根下地3、3…は軒棟方向に間隔が隔てられて略平行に配設された母屋などであって、かかる屋根下地3、3…が緩やかに傾斜されて緩やかな屋根勾配が構成されるようになされている。そして、屋根パネル1,1同士を接続するのに、屋根下地3の上に軒側の屋根パネル1が載置され、この軒側の屋根パネル1の棟側端部の表面に、棟側の屋根パネル1の重ね接続部15が重ね接続される。かかる場合、図8に示すように、棟側と軒側の屋根パネル1,1における接続箇所の下面に塞ぎ板35が屋根下地3,3間にわたって敷設され、塞ぎ板35の表面側で断熱材12,12の端面間に隙間dが構成される。そして、かかる隙間dに水密充填材36を充填するのである。水密充填材36は断熱材12と同じ配合量の発泡ウレタン樹脂が好ましいが、他の材質のものでもよいものである。
【0005】
また、重ね接続された重ね接続部15においてセルフドリリングビス(テクス)などの固定具2をねじ込むのであり、周知の盲リベット40にて固定するのである。図8中、38はパッキン、20はシーリングシートである。図9(a)は屋根パネル1の波方向(軒棟方向と直交する方向)の断面図を示し、図9(b)はかかる方向の接続形態を示している。図中39はパッキンである。
【0006】
しかし、上記の屋根では、施工現場で屋根パネル1の断熱材12の一部を除去して重ね接続部15を形成したり、シーリングシート20を屋根パネル1の表面に敷設したりしなければならず、施工が煩雑になるという問題があった。また、固定具2を屋根下地3にまで充分に打ち込まなかったり固定具2を屋根パネル1の厚み方向に対して傾いて打ち込んだりした場合では、重ね接続部15とシーリングシート20の間や隣接する屋根パネル1、1の嵌合部の間に隙間が発生し、隣接する屋根パネル1、1の継ぎ目28から雨水が浸入し、防水性が低下する恐れがあった。また、シーリングシート20、水密充填材36、パッキン38、39の敷設不良による漏水の恐れがあった。
【特許文献1】特許第2651106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、施工が煩雑にならずに防水性を確保することができる屋根を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の屋根は、金属板の裏面側に断熱材12を設けた複数の屋根パネル1、1…を固定具2で屋根下地3に固定して形成される屋根において、複数の屋根パネル1、1…の表面側全体を被覆するカバー体4を屋根パネル1に載置して成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明にあっては、屋根パネル1に係止部5を設けると共にカバー体4に被係止部6を形成し、係止部5に被係止部6を係止させてカバー体4を屋根パネル1に載置することができる。
【0010】
また、本発明にあっては、屋根パネル1がサンドイッチパネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、複数の屋根パネル1、1…の表面側全体を被覆するカバー体4を屋根パネル1に載置するので、隣接する屋根パネル1、1の継ぎ目及び固定具2をカバー体4で被覆することができ、屋根パネル1を屋根下地3に固定するための固定具2を屋根下地3に充分に打ち込まなかったり、屋根パネル1の厚み方向に対して傾いて打ち込んだりしたことが原因で、屋根パネル1、1の継ぎ目部分や固定具2の打ち込み部分に隙間が生じていても、その部分をカバー体4で被覆することによって屋根の防水性を確保することができるものである。また、従来の重ね接続部15やシーリングシート20が必要でなく、施工が煩雑にならないようにすることができるものである。しかも、屋根パネル1、1の継ぎ目部分や固定具2の打ち込み部分だけでなく、屋根全体をカバー体4で被覆することができ、防水性を向上させることができるものである。
【0012】
また、屋根パネル1の係止部5とカバー体4の被係止部6とを係止してカバー体4を屋根パネル1に取り付けることができ、カバー体4の施工を簡単に行うことができるものである。
【0013】
また、屋根パネル1としてサンドイッチパネルを用いることにより、屋根の断熱性と強度を向上させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0015】
図2(a)(b)に示すように、本発明で用いる屋根パネル1は金属板(金属外皮10)の裏面側に断熱材12を設けて断熱性を有する断熱パネルとして形成されるものであって、例えば、二枚の金属外皮10、11の間に断熱材12を充填して形成されるサンドイッチパネルを用いることが強度向上の面などで好ましい。金属外皮10、11は、例えば、ステンレス鋼板、亜鉛めっき鋼板、塗装鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)などの金属板で形成することができ、断熱材12としては、例えば、ロックウールやグラスウールなどの無機繊維板あるいはフェノールフォームやウレタンフォームやイソシアヌレートフォームなどの樹脂発泡体などを用いることができる。尚、本発明では、屋根パネル1の金属外皮10はカバー体4で覆われて外部から見えないので、余材で任意の色のものを採用することができる。
【0016】
図1に示すように、屋根パネル1の上面には施工時に軒棟方向と略平行に向けて配置される複数本の山部13が突設されている。この山部13は断面略台形であって、図2(a)に示すように、その側面上部に凹溝状の係止部5が形成されている。また、屋根パネル1の両端部には山部13よりも高さが低い接続山部14が設けられており、この接続山部14の幅寸法は山部13の幅寸法の略半分に形成されている。尚、山部13と接続山部14は同じ高さであってもよく、山部13と接続山部14の高さ及び幅は適宜設定可能である。また、隣接する山部13、13の間及び隣接する山部13と接続山部14との間の部分は平坦な谷部16として形成されている。
【0017】
図1及び図2(a)(b)に示すように、カバー体4は金属外皮10、11と同様の金属板を用いて折り曲げ加工等により形成されている。また、カバー体4の断面形状は上側の金属外皮10とほぼ同等の形状を有しており、山部13や接続山部14を覆うための山部カバー部17と、谷部16を覆うための谷部カバー部18とを交互に連設して形成されるものである。また、カバー体4の両端部には山部カバー部17の略半分の幅寸法を有するカバー接続部19が形成されている。山部カバー部17とカバー接続部19とは谷部カバー部18よりも上面側に突出するように形成されている。尚、山部カバー部17とカバー接続部19がほぼ同一の幅寸法であっても良い。また、カバー体4の幅寸法(軒棟方向と直交する方向の寸法)は施工性や負圧等を考慮すると、金属外皮10よりも幅狭(例えば、金属外皮10の幅寸法の1/2)であることが好ましいが、金属外皮10と同等かそれ以上であってもよく、特に制限はない。
【0018】
そして、本発明の屋根を形成するにあたっては、次のようにして行う。まず、図1に示すように、屋根下地3に複数枚の屋根パネル1を載置する。ここで、屋根下地3は母屋などの建物の構造材などで構成することができる。また、軒棟方向に隣接する屋根パネル1、1を接続するにあたっては、図3に示すように、軒側の屋根パネル1の棟側端部と棟側の屋根パネル1の軒側端部とを突き合わせるようにする。また、図2(b)に示すように、軒棟方向と直交する方向に隣接する屋根パネル1、1を接続するにあたっては、接続山部14、14同士を突き合わせるようにしているが、接続山部14、14の間には断熱性確保等のためにパッキン21を介在させている。そして、接続山部14及び一部の山部13の上側からテクスや釘などの固定具2を屋根下地3にまで打ち込むことにより、図1に示すように、屋根パネル1、1…を屋根下地3に固定することができる。
【0019】
上記のようにして複数枚の屋根パネル1、1…を屋根下地3に固定した後、図1に示すように、複数枚のカバー体4を屋根パネル1に載設する。ここで、カバー体4は施工現場において金属板から成形される。また、カバー体4は、施工される屋根の軒棟方向の全長と同等の長さを有するように形成するものである。従って、本発明では、屋根の軒棟方向と直交する方向に複数枚のカバー体4を並設することはあるが、屋根の軒棟方向においては、複数枚のカバー体4を並設せず、軒棟方向で継ぎ目のない一枚のカバー体4で被覆するのである。また、図2(a)に示すように、カバー体4はその被係止部6を屋根パネル1の係止部5に係止することによって、屋根パネル1に固定される。さらに、屋根の軒棟方向と直交する方向で隣接するカバー体4、4は、図2(b)に示すように、カバー接続部19、19の端部同士をハゼ継ぎ27で連結することによって接続することができる。尚、屋根の軒棟方向と直交する方向で隣接する屋根パネル1、1の接続山部14、14の間には、固定具2により屋根下地3に取り付けられた取付片23が設けられており、この取付片23の上端部をカバー接続部19、19の間に介在させて上記のようにハゼ継ぎ27で連結するものであり、これにより、取付片23を介してカバー体4、4を屋根下地3にビスなどの固定具を用いずに固定することができる。
【0020】
そして、本発明の屋根は、図1に示すように、屋根下地3に固定した全ての屋根パネル1、1…の表面側(上面側)全体を被覆するようにして複数枚のカバー体4、4…を施工するものであり、これにより、軒棟方向及び軒棟方向と直交する方向で隣接する屋根パネル1、1の継ぎ目と固定具2とをカバー体4で被覆することができる。従って、屋根パネル1、1の継ぎ目部分や固定具2の打ち込み部分に隙間が生じていてもこれらをカバー体4で被覆することができ、固定具2を充分に打ち込まなかったり固定具2を傾いて打ち込んだりした場合でも、防水性を確保することができるものである。また、積雪量の多い地域では、すが漏れを防止することができる。さらに、本発明では、従来のようにの屋根パネル1に重ね接続部15を形成したりシーリングシート20を設けたりする必要が無く、この結果、従来に比べて屋根パネル1に対する加工や施工の手間を少なくすることができ、施工が煩雑にならないようにすることができる。
【0021】
上記の実施の形態では、山部13の側面上部に凹溝状の係止部5を設けるようにしたが、これに限らず、図4に示すように、山部13の上面に板状の係止部材25を固定具2で取り付け、山部13の上面よりも外側(側方)に突出する係止部材25の側端部で係止部5を形成するようにしても良い。
【0022】
また、上記の実施の形態では、隣接するカバー体4、4はハゼ継ぎ27により接続したが、これに限らず、図5に示すように、山部13に係止して接続するようにしてもよい。この場合、カバー体4の両端部に断面略U字状のカバー接続部19を形成し、カバー接続部19の端部とこれに対向する位置とに被係止部6、6を形成し、隣接するカバー体4、4のうち、一方のカバー体4のカバー接続部19を山部13の上に被せると共にその被係止部6、6を山部13の係止部5に係止し、この後、他方のカバー体4のカバー接続部19を山部13に被せたカバー接続部19の上に被せると共にその被係止部6、6を山部13に被せたカバー接続部19の被係止部6の外側に係止するものである。また、上下に重なったカバー接続部19、19の間には水密パッキン26を介在させる。このように接続すると、ハゼ継ぎのような折曲げ加工が不要であり、隣接するカバー体4、4の接続を容易に行うことができる。
【0023】
本発明は新築家屋だけでなく、既存家屋の屋根を上記屋根パネル1として用いたリフォームにも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、一部が破断した斜視図である。
【図2】(a)(b)は同上の屋根パネルとカバー体の接続状態の一例を示す一部の断面図である。
【図3】同上の屋根パネルの軒棟方向の接続状態を示す一部の断面図である。
【図4】同上の屋根パネルとカバー体の接続状態の他例を示す一部の断面図である。
【図5】同上の屋根パネルとカバー体の接続状態の他例を示す一部の断面図である。
【図6】従来例の屋根パネルの施工を示す一部の斜視図である。
【図7】(a)は従来例の分解斜視図、(b)は従来例の棟側の屋根パネルを反転させた斜視図である。
【図8】従来例の屋根パネルの軒棟方向の接続状態を示す一部の断面図である。
【図9】(a)は従来の屋根パネルの波方向の断面図、(b)は従来例の波方向の接続箇所の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 屋根パネル
2 固定具
3 屋根下地
4 カバー体
5 係止部
6 被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の裏面側に断熱材を設けた複数の屋根パネルを固定具で屋根下地に固定して形成される屋根において、複数の屋根パネルの表面側全体を被覆するカバー体を屋根パネルに載置して成ることを特徴とする屋根。
【請求項2】
屋根パネルに係止部を設けると共にカバー体に被係止部を形成し、係止部に被係止部を係止させてカバー体を屋根パネルに載置して成ることを特徴とする請求項1に記載の屋根。
【請求項3】
屋根パネルがサンドイッチパネルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−40027(P2007−40027A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227093(P2005−227093)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】