説明

展開型アンテナ

【課題】 ケーブルネットワークを支持する梁のヒンジ点の数を減らし、展開信頼性をより向上させた展開型アンテナを得ることを目的とする。
【解決手段】 アンテナリフレクタを形成するための金属メッシュとケーブルネットワークを支持する展開マストを、2〜3段階に折り曲げ可能な展開リブと展開リブ間を接続する展開ヒンジとで構成することにより、収納時はコンパクトに折り畳まれ、軌道上で容易に展開動作可能な展開型アンテナを得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星や宇宙航行体等の宇宙機器に搭載される展開型アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
宇宙用のアンテナは、宇宙利用の拡大に伴い、衛星通信用の移動体端末や高精度の電波観測に用いることの可能な、より開口径の大きい大型な物が望まれている。一方、このようなアンテナは、打ち上げ時のランチャの収納スペースに限りがあるため、小さく畳んだ状態で直径2m〜4m程度のロケットフェアリング内に収納され、打ち上げ後軌道上でアンテナが展開され、反射鏡面を構成する。
【0003】
このような展開型アンテナの一例として、従来、6本の梁が放射状に配置されて構成され、中心部を回動点にして折り畳み又は展開可能に構成される展開型骨組みトラス構造を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この展開型アンテナは、梁を構成する伸展マストの上にメッシュ鏡面を張り、メッシュ鏡面の鏡面形状を形成するケーブルネットワークに張力を付与する。
【0004】
【特許文献1】特開2006−80578号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の展開型アンテナは、ケーブルネットワークを支持する伸展マスト(梁)が複数の展開リブと展開ヒンジから構成されている。この際、展開ヒンジのヒンジ点の数は数100程度と膨大なものとなる。軌道上でのアンテナ展開時に、展開機構の故障は反射鏡面の形成に致命的な影響を与える。展開アンテナにおいては展開ヒンジが全て展開することが必須となるため、展開ヒンジ点の数が膨大になると故障確率が高くなるという問題がある。
【0006】
又、アンテナ展開時における、ケーブルネットワークの絡みも、反射鏡面の形成に致命的な影響を与える。この絡みを防止するためには、従来、鏡面メッシュとからみ防止膜を対向配置して閉鎖空間を形成し、その中にケーブルネットワークのノードやケーブルの結束部等、硬いものが入らないように構成していた。しかし、展開ヒンジ点の数が膨大になると、ケーブル及び鏡面メッシュが展開リブ及び展開ヒンジに複雑に絡み合う可能性が高くなるという問題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、ケーブルネットワークを支持する梁において、ヒンジ点の数を少なくし、展開信頼性をより向上させた展開型アンテナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による展開型アンテナは、アンテナの電波反射面を構成する金属メッシュと、その形状を保持するケーブルと、上記金属メッシュとケーブルを折り畳んだ状態から展開し、展開後は上記金属メッシュとケーブルネットワークを保持するように放射状に配置された展開マストと、上記展開マストを展開する展開ヒンジと、上記展開マストを保持するセンターハブと、を有する展開型アンテナにおいて、上記展開マストは、2〜3段に折り曲げ可能なように相互に展開ヒンジで接続された複数段のリブから構成されるとともに、上記展開マストは、展開前に先端側のリブから順次内側に折り畳まれるように折り曲げ収納され、軌道上にて収納状態から展開することで電波反射面を形成するように構成されたものである。
【0009】
又、この発明による展開型アンテナは、アンテナの電波反射面を構成する金属メッシュと、その形状を保持するケーブルと、上記金属メッシュとケーブルを折り畳んだ状態から展開し、展開後は上記金属メッシュとケーブルネットワークを保持するように放射状に配置された展開マストと、上記展開マストを展開する展開ヒンジと、上記展開マストを保持するセンターハブと、を有する展開型アンテナにおいて、上記展開マストは、2〜3段に折り曲げ可能なように相互に展開ヒンジで接続された複数段のリブから構成されるともに、上記展開マストは、展開前に先端側のリブが外側に配置されるように順次折り曲げ収納され、軌道上にて収納状態から展開することで電波反射面を形成するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、展開マストを構成するヒンジ点の数が劇的に減り、故障の可能性が格段に少なくなるため、信頼性が格段に向上するという効果がある。
【0011】
又、展開マストが2〜3段のリブを組み合わせたシンプルで且つ滑らかな形状をした機構となるので、展開ヒンジや展開リブとケーブル及びメッシュが絡む可能性が低くなるという効果がある。
【0012】
更に、展開ヒンジの周囲を膜状部材で覆うことにより、展開ヒンジやリブとケーブル及びメッシュが絡む可能性が格段に低くなるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
この発明に係る実施の形態1の展開アンテナは、アンテナリフレクタを構成する金属メッシュ及びケーブルネットワークを支持する梁を、2〜3段階に折り曲げ可能な展開リブと展開リブ間を接続する展開ヒンジを有した展開マストで構成することにより、収納時はコンパクトに折り畳まれ、軌道上で容易に展開動作可能な展開型アンテナを得ることが可能となる。
【0014】
以下、図を用いてこの発明に係る実施の形態1について説明する。
図1は実施の形態1に係わる展開型アンテナの一実施例を示す図である。図2は展開型アンテナの展開マストの構造を示す図であり、図2(a)は展開マストの構造を示す断面図、図2(b)は展開マストにおける展開ヒンジの構成を示す部分詳細図である。
【0015】
図において、展開型アンテナは、金属メッシュ1、ケーブル2、センターハブ3、展開マスト4、展開ヒンジ5、副反射鏡10、及び給電ホーン12から構成される。センターハブ3は円筒形状を成し、センターハブ3は図示しない衛星構体に固定される。展開マスト4の根元部は展開ヒンジ5に回転可能に支持され、展開ヒンジ5はセンターハブ3に固定される。これによって、展開マスト4がセンターハブ3に保持される。又、センターハブ3を中心として6本の展開マスト4が放射状に配置される。
【0016】
ケーブル2は複数のノード点で結束され、展開型アンテナの反射鏡面に対向するように網目状に張巡らされて、全体として六角形状のケーブルネットワークを構成する。ケーブルネットワークは、展開マスト4を間に挟むように互いに対向配置された正面ケーブルネットワーク201と背面ケーブルネットワーク202の、2つのサブケーブルネットワークから構成される。正面ケーブルネットワーク201は展開型アンテナの反射鏡面に沿うようにケーブル2が張られて、各ケーブルにテンションが付与されている。背面ケーブルネットワーク202は、正面ケーブルネットワーク201に対して凹面が逆方向となる曲面を形成するようにケーブル2が張られて、各ケーブルにテンションが付与されている。2つのサブケーブルネットワークの有する各ノード点は、複数のタイケーブル203によって展開型アンテナの反射鏡面を突き刺す方向に結束されて、各ケーブルにテンションが付与される。ケーブルネットワークの内周側に位置する一部のノードは、センターハブ3に保持固定される。また、ケーブルネットワークの外周側に位置する一部のノードは、展開マスト4の先端部に設けられた支持棒205にそれぞれ保持固定される。かくして、展開マスト4はケーブルネットワークを支持する梁として機能する。
【0017】
金属メッシュ1は、その一部のノードがケーブル2に結束され、正面ケーブルネットワーク201に保持される。又、背面ケーブルネットワーク202には絡み防止膜(図示せず)が保持され、その一部のノードがケーブル2に結束されている。これによって、金属メッシュ1が理想的な放物面に近接した曲面を形成し、この曲面が展開型アンテナの反射鏡面(リフレクタ)として機能する。副反射鏡10及び給電ホーン12はセンターハブ3に保持される。副反射鏡10、放射状に配置された展開マスト4の根元部に対向して、アンテナ反射鏡面から見て展開型アンテナの中央に配置される。給電ホーン12はセンターハブ3の軸中心に配置され、ホーンの開口部がセンターハブ3の端面から突出するように配置される。
【0018】
展開マスト4は、複数段(2段〜4段)の展開リブ20と、展開リブ20を回転可能に支持する展開ヒンジ21から構成される。隣接する展開リブ20同士の間は展開ヒンジ21によって相互に接続されている。図1、2の例では、3つの展開リブ20を展開ヒンジ21で接続して1つの展開マスト4を構成している。これによって、展開マスト4を簡潔な構造で構成することができる。なお、展開マスト4は、アンテナの大きさに応じて2段乃至4段構成とするのが良い。直径10m程度の大きさであれば、1本の展開リブ20の大きさを2〜4m程度の長さとし、3段のリブで構成することが好ましい。展開リブ20は、例えばCFRP(carbon fiber reinforced plastics)で成形された薄肉の円筒パイプで構成される。円筒パイプは、炭素繊維を60°配向で交差させ複数層積層して、樹脂を含有して成形される。この際、円筒パイプの肉厚は1mm程度で良い。展開マスト4は、根元部の展開リブ20から先端部の展開リブ20に架けて、次第にパイプ径が細くなるように構成するのが望ましい。又、展開マスト4を折り畳んで収納する際、収納効率が上がるように、各展開リブ20は直線形状のパイプで構成すると良い。
【0019】
図2(b)に示すように、展開ヒンジ21及び展開ヒンジ5は、1軸の回転自由度を有した回転機構で構成される。展開ヒンジ21及び展開ヒンジ5には、トルカ23が設けられる。トルカ23は、例えば回転トルクを発生するコイルスプリングが用いられる。かくして、隣接する展開リブ20同士を相対的に回転させ展開リブ20を展開させるための回転トルクを与えることができる。なお、トルカとしては、ダイレクトドライブモータを用いても良いことは言うまでもない。展開ヒンジ21及び展開ヒンジ5の周囲は、メッシュ状の膜7に囲まれて保護される。これによって、ケーブル2が展開ヒンジ21及び展開ヒンジ5に絡む可能性が激減する。
【0020】
図3は3段式の展開リブ20により展開マストが構成される展開型アンテナの、展開動作を示す図である。図3(a)は収納状態を示す図、図3(b)は展開途中の状態を示す図、図3(c)は完全に展開した状態を示す図である。
【0021】
展開型アンテナは、収納状態で搭載する衛星本体とともに打上げランチャのフェアリング内に搭載される。この際、中間部(中段)の展開リブ20は、根元部(最終段)の展開リブ20に対してアンテナの中心に向かう方向に回転して折り畳まれる。又、先端部(初段)の展開リブ20は、更に根元部の展開リブ20に対してアンテナの中心に向かう方向に回転して折り畳まれる。結果的に、先端部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して360°回転した状態で、中間部の展開リブ20に巻き込まれるように折り畳まれ、中間部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して180°回転した状態で折り畳まれる。
【0022】
ランチャの打ち上げ後、衛星本体がランチャから宇宙空間に放出され、所望の軌道上に投入される。その後、展開ヒンジ5及び展開ヒンジ21が展開リブ20に展開トルクを付与して展開マスト4が展開し、展開型アンテナ反射鏡が半開きの状態となる。この場合、先端部の展開リブ20は、中間部の展開リブ20に対して90°回転した状態まで展開し、中間部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して90°回転した状態まで展開する。
【0023】
続いて、展開ヒンジ5及び展開ヒンジ21が展開リブ20に展開トルクを付与して展開マスト4が展開し、展開型アンテナ反射鏡が大口径に展開される。この場合、先端部の展開リブ20は、中間部の展開リブ20に対して180°回転した状態まで展開し、中間部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して180°回転した状態まで展開する。最終的に、先端部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して概ね360°回転することによって展開動作が完了する。この際、展開マスト4の展開に応じて、ケーブル2に張力が印加された順に、各展開ヒンジによって展開リブ20が解放されていく。なお、6本の展開マスト4は、概ね同じ回転角と角速度で展開リブ20が順次展開するように、適宜展開ヒンジ21のトルク調整が行われることは言うまでもない。
【0024】
一般的に、伸展マストを用いた従来の展開型アンテナにおいては、伸展マストを構成する展開リブと展開ヒンジの数が数100程度と非常に多くなる。ここで、図4を用いて、伸展マストを用いた従来の展開型アンテナと、展開マストを用いた実施の形態1による展開型アンテナとの、ヒンジ部分の構造比較を行う。図4(a)は通常の伸展マストの構造を示すであり、図4(b)は実施の形態1によるリブ20と展開ヒンジ21を用いた展開マストの構造を示す。
【0025】
図4(a)において、1本の伸展マストについて展開リブ50を実線で示し、展開ヒンジ51を○印で示している。図は伸展マストを簡略的に図化したものであるが、伸展マストはトラス構造を構成するので、これでも1本の伸展マストについて展開ヒンジ数は32個ある。したがって伸展マストが複数本になると、例えば6本の伸展マストで展開ヒンジ数は200個程度になる。実用的には、更にヒンジ数を増やす必要がある。
【0026】
一方、図4(b)においては、図4(a)と見比べると大幅にヒンジ数を削減できることは明らかである。展開型アンテナにおいては、展開ヒンジ21が全て展開することが必須となるため、ヒンジ点の数が膨大になると故障を起こす確率が高くなる。換言すると、ヒンジ数を少なくすることによって故障を低減し、信頼性を高めることができる。実施の形態1では、梁を構成する最低3段の展開リブ20と、隣接する展開リブ20を相対的に回転させる展開ヒンジ21を設けることで、故障モードの少ない簡単な構造とすることができる。これによって、展開信頼性をより高めることが可能となる。更に、構成が単純であるために、小型化、軽量化も容易である。加えて、ヒンジ点が少ないので、ケーブル2が展開ヒンジ21に絡む確率を格段に低減することができる。
【0027】
次に、反射鏡面を構成する金属メッシュ1について説明する。電波を反射させるためには、反射材が鏡面上に必要になる。大型展開アンテナの場合、軽量化のためにメッシュが用いられることが多い。このメッシュとしては、ケーブルネットワークの張力状態に対する膜面の影響を極力小さくする必要がある。このため、メッシュ状の面内剛性の小さい網目状の編物を用いることによって、非常に小さな力で膜面を張架することを可能にし、ケーブルネットワークの張力状態に与える影響を小さく押えている。編目状の編物は、繊維をループ状に編んでいるため、面内に荷重をかけた場合、このループが変形して伸びるので、使用する繊維の軸方向剛性にあまり影響されずに面内剛性の低い膜を得ることができる。
【0028】
なお、高い周波数帯に対応した反射鏡面を構成する場合、高周波数化に伴って鏡面精度に対する要求が高くなる。L帯やS帯では鏡面精度に対する要求は比較的に緩い。しかし、周波数帯がより高域となるKu帯、Ka帯では、鏡面精度に対する要求は、L帯やS帯よりも更に1桁小さくなる。このため、Ku帯、Ka帯等の高周波数帯では、金属メッシュを使うには限界がある。そこで、金属メッシュ1の代わりに、反射鏡面を構成する部材としてメンブレン材を用いることで、鏡面精度の向上を図っても良い。メンブレン材は、通常は成形時の形状を維持することができる一方で、収納時には膜面を折り曲げて畳むことが可能な柔軟部材である。このメンブレン材としては、例えば平織に薄く編まれた炭素繊維にシリコン樹脂を含浸させて固めた素材を用いるのが良い。シリコンを含有させることによって柔軟性が向上し、メッシュと同様に収納性が良くなる。
【0029】
以上説明した通り、実施の形態1の展開型アンテナでは、2〜3段に折り曲げ可能なように相互に展開ヒンジで接続された複数段のリブから展開マストを構成し、展開前に先端側のリブから順次内側に折り畳まれるように折り曲げ収納され、軌道上にて収納状態から展開することでリフレクタを形成するようにした。
【0030】
これによって、展開マストを構成するヒンジ点の数が劇的に減り、故障の可能性が格段に少なくなるため、信頼性が格段に向上するという効果がある。又、展開マストが2〜3段のリブを組み合わせたシンプルで且つ滑らかな形状をした機構となるので、展開ヒンジや展開リブとケーブル及びメッシュが絡む可能性が低くなるという効果がある。更に、展開ヒンジの周囲を膜状部材で覆うことにより、展開ヒンジやリブとケーブル及びメッシュが絡む可能性が格段に低くなるという効果がある。
【0031】
なお、従来の展開型アンテナでは、トラス構造体を構成する伸展マストを伸展させるためにはキャニスターや押し出し機構が必要であり、その機構を設けるがために全体の重量が重くなるという問題があった。しかし、この実施の形態1による展開型アンテナでは、複数の梁部材(展開リブ)を展開させる展開マストを用いているので、展開リブを伸展させるためのキャニスターや押し出し機構が不要となり、全体の重量をより軽くすることが可能となる。
【0032】
実施の形態2.
以下、図を用いてこの発明に係る実施の形態2について説明する。
図5はこの発明に係わる展開型アンテナの他の一実施例を示す図である。図5(a)と図5(b)はこの展開型アンテナ反射鏡の展開シーケンスを示す図である。図3と同様な構成であるが、ここでは鏡面メッシュ及びケーブルネットワークは記載していない。又、展開マストは1本のみを示している。
【0033】
この展開型アンテナは、収納状態でランチャに搭載され、軌道上に打ち上げられてから展開リブ20と展開ヒンジ21によって大口径に展開される。この際、先端部の展開リブ20が中間部の展開リブ20の外側に配置され、中間部の展開リブ20が根元部の展開リブ20の外側に配置されるように折り畳むことで、展開マストの展開動作がスムーズになり、展開に対する信頼性が更に向上する。すなわち、展開に伴う金属メッシュやケーブルネットワークの移動距離を、実施の形態1より小さくできるだけでなく、金属メッシュやケーブルネットワークの移動と展開リブの移動を分離し易くする。例えば、図5の例では、先端部の展開リブ20は、根元部の展開リブ20に対して概ね180°回転するだけで展開動作が完了する。したがって、図3の例と比べて、先端部の展開リブ20の回転角が半分で済むので、展開時の動作信頼性が更に向上する。
【0034】
実施の形態3.
以下、図を用いてこの発明に係る実施の形態3について説明する。
図6はこの発明に係わる展開型アンテナの他の一実施例を示す図であり、図6(a)は外観図を示し、図6(b)は副反射鏡の折り畳まれた状態を示す図である。
図において、副反射鏡10は、伸展構造部14によって支持される。給電ホーン12は図示しない給電部に接続される。この例では、伸展構造部14がリンク機構によって折畳み可能に構成され、副反射鏡10は給電ホーン12の先端に近接する位置まで折り畳むことができる。伸展構造部14は3本のロッドで構成され、各ロッドは3つのヒンジ11と、ヒンジ11に接続されるリンク15によって構成される。なお、図では屈曲部が1段構成となるリンク機構を示しているが、ヒンジ11とリンク15の数を増やして、屈曲部が多段構成となるリンク機構を構成しても良いことは謂うまでもない。勿論、実施の形態1の図2(b)に示したように、ケーブルとの絡み防止のため、ヒンジ11の周辺を膜面で覆っても良い。
【0035】
打上げ時は、リンク15が回転して伸展構造部14が折れ曲がり、副反射鏡10が給電ホーン12に近接して収納されている。軌道上において伸展構造部14を伸展させることで、副反射鏡10及び給電ホーン12が反射鏡の前面に位置するため、センターフィードカセグレンアンテナを構成することができる。又、打上げ時は伸展構造部14のリンク15が折り畳まれて副反射鏡10が収納されているため、副反射鏡10の配置スペースを小さくすることができる。
【0036】
実施の形態4.
以下、図を用いてこの発明に係る実施の形態4について説明する。
図7はこの発明に係わる展開型アンテナの他の一実施例を示す図であり、図7(a)は衛星構造体に取付けられた展開マストが収納状態から展開状態に移行する状態を示す図、図7(b)は展開後における衛星構体に取付けられた展開型アンテナの反射鏡と副反射鏡の配置例を示す図である。
【0037】
図において、展開ブーム16の一方の端部は衛星構体13の下部(一端部)周辺に接続される。展開ブーム16の他方の端部は展開ヒンジ5に接続される。展開ブーム16は展開マスト4を衛星本体に接続する。給電部17は給電ホーンを備えている。図7(a)では、展開マスト1本のみを示し、鏡面メッシュやケーブルネットワークなどは省略している。
【0038】
この実施の形態では、まず、展開ブーム16を衛星本体から展開させ、次に、順次、展開リブ20を展開することで、衛星側面にアンテナ反射鏡を形成することができる。又、衛星構体13の上部(他端部)に給電部17を構成することで、オフセットリフレクタを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1による展開アンテナの構成を示す図である。
【図2】(a)この発明の実施の形態1による展開マストの構成を示す断面図、(b)この発明の実施の形態1による展開ヒンジの構成を示す部分詳細図である。
【図3】この発明の実施の形態1による展開アンテナの展開動作を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による展開アンテナと従来の展開アンテナとのヒンジ部の構造の違いを説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態2による展開マストの収納状態を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3による副反射鏡の伸展構造部を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4による展開アンテナの衛星本体への取付け配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 金属メッシュ、2 ケーブル、3 センターハブ、4 展開マスト、5 展開ヒンジ、6 収納ケーブル、10 副反射鏡、11 伸展構造部、12 給電ホーン、13 衛星構体、20 展開リブ、21 展開ヒンジ、23 トルカ、16 展開ブーム、17 給電部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの電波反射面を構成する金属メッシュと、
その形状を保持するケーブルと、
上記金属メッシュとケーブルを折り畳んだ状態から展開し、展開後は上記金属メッシュとケーブルネットワークを保持するように放射状に配置された展開マストと、
上記展開マストを展開する展開ヒンジと、
上記展開マストを保持するセンターハブと、
を有する展開型アンテナにおいて、
上記展開マストは、2〜3段に折り曲げ可能なように相互に展開ヒンジで接続された複数段のリブから構成されるとともに、
上記展開マストは、展開前に先端側のリブから順次内側に折り畳まれるように折り曲げ収納され、軌道上にて収納状態から展開することで電波反射面を形成するように構成されたことを特徴とする展開型アンテナ。
【請求項2】
アンテナの電波反射面を構成する金属メッシュと、
その形状を保持するケーブルと、
上記金属メッシュとケーブルを折り畳んだ状態から展開し、展開後は上記金属メッシュとケーブルネットワークを保持するように放射状に配置された展開マストと、
上記展開マストを展開する展開ヒンジと、
上記展開マストを保持するセンターハブと、
を有する展開型アンテナにおいて、
上記展開マストは、2〜3段に折り曲げ可能なように相互に展開ヒンジで接続された複数段のリブから構成されるともに、
上記展開マストは、展開前に先端側のリブが外側に配置されるように順次折り曲げ収納され、軌道上にて収納状態から展開することで電波反射面を形成するように構成されたことを特徴とする展開型アンテナ。
【請求項3】
副反射鏡と、
上記センターハブに対して副反射鏡を支持する伸展構造部と、
上記センターハブに保持された給電ホーンとを有し、
上記伸展構造部は、上記副反射鏡を軌道上で伸展させることを特徴とする請求項1又は2記載の展開型アンテナ。
【請求項4】
上記複数段のリブの少なくとも1本を衛星構体の一端部に接続し、上記衛星構体の他端部に給電ホーン並びに給電部を設けて、オフセットリフレクタを構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の展開型アンテナ。
【請求項5】
上記金属メッシュにメッシュ状繊維織布を用いたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の展開型アンテナ。
【請求項6】
上記展開ヒンジの周囲を膜状部材で覆ったことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の展開型アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−187650(P2008−187650A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21596(P2007−21596)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/(超軽量衛星搭載用展開アンテナ設計技術の研究)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】