説明

層状化合物−金属粒子複合体及びその製造方法、並びにこれを用いたサスペンション、薄膜及びフレキシブル太陽電池

【課題】低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体及びその製造方法、並びにこれを用いた塗工液、塗工膜及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】層状化合物の層間に有機イオンをインターカレーションして形成した有機変性層状化合物1に、金属粒子が金属コロイドとして水中に分散した金属コロイド水溶液2と、前記金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物1の膨潤性に優れた非水溶媒とを添加する。これにより、層状化合物−金属粒子複合体3が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状化合物−金属粒子複合体及びその製造方法、並びにこれを用いた層状化合物−金属粒子複合体サスペンション、層状化合物−金属粒子複合体薄膜及びフレキシブル太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属微粒子と粘土系層間化合物との複合体を、センサーに利用する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、スメクタイトに代表される流動性マトリックス中にて貴金属ナノ粒子を凝集させて凝集状態を安定化した複合体を、SERS(表面増強ラマン散乱)を利用したラマン分光法で用いるSERS基質として用いる技術が開示されている。流動性マトリックス中にて貴金属ナノ粒子の凝集状態を安定化することで、再現性の良い検出が可能となる。
【0003】
この種の複合体の製造方法として、スメクタイト等の板状微粒子を水溶液又は高極性溶媒に分散させた分散液中で貴金属粒子を生成させることで、貴金属微粒子と板状微粒子との複合ゾル(複合体)を得る技術が知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184247号公報
【特許文献2】特開平11−61209号公報
【特許文献3】特開平10−182142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粘土系層状化合物の代表例であるモンモリロナイト群鉱物(スメクタイト等)は、正八面体を基本骨格とする3層構造の繰り返しにより構成される層状構造を有し、層間にアルカリ金属イオンを交換性陽イオンとして有している。また、モンモリロナイト群鉱物は、その表面及び層間が概して親水的であるため、水やジメチルホルムアミド等の極性溶媒に代表される高極性物質との親和性に優れる一方、トルエンやケトン系溶剤等の低極性溶媒に代表される低極性物質との親和性に欠ける。
このため、特許文献2及び3記載の方法では、高極性物質と親和性のある層状化合物−金属粒子複合体を得ることはできても、低極性物質と親和性のある層状化合物−金属粒子複合体を得ることは難しい。
よって、層状化合物−金属粒子複合体を揮発性に優れた低極性の有機溶媒に分散させてペースト状とし、これを基材上に塗布して所望のデバイスを製造するといった、生産性に優れた成膜方法に適用することができない。特に、上記ペーストの印刷や塗布により多層構造体を製造する場合、作業効率や経済性の点で問題がある。
【0006】
また、特許文献2及び3記載の方法で得られた層状化合物−金属粒子複合体は、低極性物質との親和性がないことから、該層状化合物−金属粒子複合体を有機物と組み合わせてデバイス化する際に問題となり、その用途は限定される。
例えば、有機太陽電池のバルクヘテロ層中に層状化合物−金属粒子複合体を分散させて、金属ナノ粒子のプラズモニックな機能により光電変換率を向上させる場合、バルクへテロ層を構成する有機半導体との層状化合物−金属粒子複合体との親和性がないと、金属ナノ粒子をバルクヘテロジャンクションに近づけることが難しく、光電変換効率の改善効果が十分に得られない。よって、特許文献2及び3の方法で得られた層状化合物−金属粒子複合体を、光電変換効率の改善のために、有機太陽電池のバルクヘテロ層に導入することは難しい。
また、同様な理由から、特許文献2及び3の方法で得られた層状化合物−金属粒子複合体を、イオン液体等の非水溶媒を用いる電気2重層型キャパシタの電極材料に適用することは難しい。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体及びその製造方法、並びにこれを用いた塗工液、塗工膜及び電子デバイスならびに光電変換デバイスとその性能制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、当初、水溶液又は高極性溶媒を用いた溶液の均一相中で層状化合物−金属粒子複合体を製造する特許文献2及び3の手法を応用して、有機イオンのインターカレーションにより親油化した有機変性層状化合物と金属コロイドとを非水溶媒からなる均一相中で複合化させようと試みた。すなわち、親水性である金属コロイドと疎水性である有機変性層状化合物とを均一相中で接触させて複合化するために、極性が比較的大きく水と相溶する溶媒を金属コロイド水溶液と混合し、この混合液体に有機変性層状化合物を添加した。ところが、予想に反して、金属コロイドと有機変性層状化合物とが上記混合溶媒中で共存しているにもかかわらず、複合化が起こらず、それぞれが単独で安定した状態を維持することが分かった。
【0009】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、有機イオンのインターカレーションにより親油化した有機変性層状化合物に、金属コロイド水溶液と、その金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒とを添加すると、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体が得られることが明らかになった。特に、水に相溶しない程度に極性が低い非水溶媒を用いる場合、金属コロイドが分散した水相と有機変性層状化合物が分散した有機相(非水溶媒)とが相分離した状態になるが、驚くべきことに、金属コロイドと有機変性層状化合物との複合化が水相と有機相との界面において進行し、その複合体が有機相中に移行することが分かった。
この現象は、次のような理由で起こると推察される。有機変性層状化合物は、有機イオンのインターカレーションによって、疎水性に改質されるとともに、表面又は層間に有機イオン由来の過剰のチャージを帯びている。一方、金属コロイド水溶液に含まれる金属コロイドは、水との親和性を高めるためにクエン酸等によって表面修飾されているのが通常であり、その表面は、場所によって、金属粒子の本来の疎水性を示したり、表面修飾剤の親水基に起因して親水性を示したりする。このため、金属コロイドと有機変性層状化合物との間に、疎水性相互作用あるいは静電相互作用が働き、金属コロイドと有機変性層状化合物との複合体が形成されると考えられる。
【0010】
本発明に係る層状化合物−金属粒子複合体の製造方法は、本発明者らによる上記知見に基づくものであり、層状化合物と金属粒子との複合体を製造する方法であって、前記層状化合物の層間に有機イオンをインターカレーションして、有機変性層状化合物を形成するステップと、前記有機変性層状化合物に、前記金属粒子が金属コロイドとして水中に分散した金属コロイド水溶液と、前記金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、前記有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒とを添加するステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
この層状化合物−金属粒子複合体の製造方法によれば、金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒を用いることで、有機イオンのインターカレーションにより親油化した有機変性層状化合物と、金属コロイド水溶液中の金属コロイドとの複合化を進行させることができる。これにより、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体が得られる。
【0012】
上記層状化合物−金属粒子複合体の製造方法において、前記非水溶媒は、前記金属コロイドとのSP(溶解度パラメータ)値の差が9MPa1/2以上であることが好ましく、13Pa1/2以上であることがより好ましく、21MPa1/2以上であることがさらに好ましい。
このように、金属コロイドに対する溶解度が十分に小さい非水溶媒を用いることで、有機変性層状化合物と金属コロイドとの複合化をより確実に進行させることができる。
【0013】
上記層状化合物−金属粒子複合体の製造方法において、前記非水溶媒及び前記金属コロイド水溶液に加えて、前記金属コロイド水溶液の溶媒である水と前記非水溶媒との両方に対して親和性に優れる両親媒性溶媒を前記有機変性層状化合物に添加することが好ましい。
両親媒性溶媒を用いることで、水との親和性が高い金属コロイドと、非水溶媒との親和性が高い有機変性層状化合物との接触頻度を増大させて、金属コロイドと有機変性層状化合物との複合体の形成を促進できる。
【0014】
この場合、前記非水溶媒は、前記両親媒性溶媒よりも誘電率が低いことが好ましい。
これにより、有機変性層状化合物と金属コロイドとの複合化をより確実に進行させることができる。
【0015】
上記層状化合物−金属粒子複合体の製造方法において、前記金属粒子は、Au、Ag、Cu、Al及びPtの少なくとも一つを含んでいてもよい。
また前記有機イオンは、任意の構造の有機カチオン又は有機アニオンを用いることができ、水に難溶性又は不溶性の第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、蛍光性のカチオン染料又はオキソニウム塩の少なくとも一つであってもよい。
また、前記層状化合物は、交換性イオンを層間に有する層状の化合物であれば特に限定されないが、例えば、モンモリロナイト鉱物群あるいは雲母群に属する層状粘土化合物を好適に使用できる。
【0016】
本発明に係る層状化合物−金属粒子複合体は、上述の製造方法により得られることを特徴とする。
上述の製造方法により得られる層状化合物−金属粒子複合体は、低極性物質との親和性に優れるから、揮発性に優れる低極性溶媒に分散してペースト化することで、印刷や塗布等の作業効率及び経済性に優れる成膜方法を利用して、所望のデバイスに組み込むことができる。また、低極性物質との親和性に優れるため、この層状化合物−金属粒子複合体を有機物と組み合わせて、様々な機能を有するデバイスを得ることができる。
【0017】
本発明に係る層状化合物−金属粒子複合体サスペンションは、上述の層状化合物−金属粒子複合体と、前記層状化合物−金属粒子複合体の分散媒としての有機溶媒とを含むことを特徴とする。
この層状化合物−金属粒子複合体サスペンションでは、上述のように低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体を有機溶媒に分散させるため、複合体が安定に分散したサスペンションが得られる。
なお、分散媒としての有機溶媒は、上記層状化合物−金属粒子複合体を形成する際に用いた「非水溶媒」であってもよい。
【0018】
上記層状化合物−金属粒子複合体サスペンションにおいて、有機色素、ホール輸送性物質、p型半導性物質、電子輸送性物質、n型半導性物質及び架橋性物質の少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。
有機色素、ホール輸送性物質、p型半導性物質、電子輸送性物質、n型半導性物質をサスペンションに含有させることで、種々の機能を有する機能膜の形成が可能になる。また、架橋性物質をサスペンションに含有させることで、形成した機能膜の強度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係る層状化合物−金属粒子複合体薄膜は、上述の層状化合物−金属粒子複合体サスペンションを塗布してなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、層状化合物−金属粒子複合体薄膜を複数含む積層体からなり、複数の層状化合物−金属粒子複合体薄膜は、互いに異なる特性を有することを特徴とする。
このように、異なる特性を有する複数の層状化合物−金属粒子複合体薄膜を積層することで、様々な機能を発現させることができる。
【0021】
上記層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、表面抵抗が100kΩ/□以上の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる絶縁層と、前記絶縁層の表面側及び裏面側にそれぞれ配置され、表面抵抗が1kΩ/□以上100kΩ/□未満の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる一対の誘電層と、最表層に配置され、表面抵抗が10Ω/□以下の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる集電極層とを含んでいてもよい。
これにより、絶縁層の両側に積層された誘電層が分極性電極として働き、最表層の集電極層が集電極として働くので、多層機能膜全体としてコンデンサ機能が実現される。さらに、電解質を含む電解液を組み合わせると、電気2重層型のキャパシタ(大容量のコンデンサ)として用いることもできる。
【0022】
前記集電極層の一方及びこれに隣接する層に光電変換用の色素が添加されていてもよい。その場合には新規な光誘起性の電気2重層型キャパシタとして利用できる。
これにより、層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜を、例えば太陽電池や水の光分解デバイス等の光電変換現象を利用したデバイスに利用できる。なお、層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜を水の光分解デバイスに利用する場合、前記色素により光還元される電子受容体を前記絶縁層(分極性電極の間に設けられた絶縁層)もしくは前記絶縁層及び前記誘電層に添加してもよい。
【0023】
また、前記絶縁層に隔てられた対称の層構成を有し、前記集電極層の一方及びこれに隣接する層と、前記集電極層の他方及びこれに隣接する層とに、分光感度又は光吸収波長の極大が20nm以上異なる2種類の光電変換用の色素をそれぞれ添加してもよい。
このように分光感度又は光吸収波長の極大が異なる色素を用いることで、光合成類似の2光子吸収による光酸化還元反応過程を進行させて、水の光分解機能を実現できる。
【0024】
この場合、前記絶縁層の一方の側に積層される層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、前記金属粒子としてPtを含み、前記絶縁層の他方の側に積層される層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、前記金属粒子としてAu、Ag、Cu及びAlの少なくとも一つを含んでいてもよい。
このように、(光)還元側には水の還元ポテンシャルを有するPtを配置し、(光)酸化側にはPtと仕事関数の異なるプラズモニック金属種(Au、Ag、Cu、Al)を配置することで、水の光分解を確実に行うことができる。
【0025】
本発明に係るフレキシブル太陽電池は、金属粒子が50wt%未満である上述の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜からなる誘電層又は固体電解質層を一方の電極として備え、他方の電極は炭素繊維電極であってもよい。すなわち、金属粒子のプラズモン増強効果を有する一方の電極を光入射側電極として機能させるため、他方は必ずしも光透過性を必要条件としない。このため、低コスト性、フレキシブル性、導電性などの特性を従来以上に向上させた電極素材を積極的に導入することができる。その代表例として炭素繊維電極を挙げれば、これは、フレキシブルな積層体の実現に貢献するとともに、安価であることに加えて、繊維構造による電極表面積が平板に比べて圧倒的に広いことによる電流の流れ易さという利点がある。さらに、炭素繊維電極は、光吸収性の黒体であるから、熱(赤外線)を有効利用しうる点でも有利である。なお、当然ながら、炭素繊維電極に替えて、Al箔等の任意の電極を用いることも可能である。
また、水の光分解デバイスで示した2光子吸収型の光酸化還元機構においては、両電極共に金属粒子のプラズモン増強効果を利用する必要があるため、2種類の光透過性を具備した本発明に係る上記層状化合物−金属粒子複合体からなる電極を誘電層もしくは固体電解質を挟む構成で用いることもできる。この際、両電極および電層もしくは固体電解質の素材は厚さを適正に選ぶことにより、デバイスとしてのフレキシブル性を持たせることもできる。
【0026】
本発明に係る複合体、及びその高濃度分散体ペースト及びこのペーストから成膜される薄膜並びに2層以上の積層構造物は、金属粒子と、該金属粒子が吸着する無機物又は無機−有機ハイブリッド化合物とからなり、非水溶媒中で分散状態を維持しうることを特徴とする。
なお、金属粒子の配合量、凝集の度合いに応じてその導電性、プラズモン共鳴性または光学吸収特性が制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒を用いることで、有機イオンのインターカレーションにより親油化した有機変性層状化合物と、金属コロイド水溶液中の金属コロイドとの複合化を進行させることができる。これにより、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る層状化合物−金属粒子複合体の製造方法を説明するための図である。
【図2】第2実施形態に係る層状化合物−金属粒子複合体の製造方法を説明するための図である。
【図3】実施例1における金ナノコロイド水溶液の透過吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例1における金コロイドの水相から有機相に移行する様子を示す写真である。
【図5】実施例1における赤紫残渣のFTIRの測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例2における金ナノ粒子のTEM観察結果を示す写真である。
【図7】実施例3における有機相の吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例4で作製したフィルムの吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例6で得られた着色粉末のFT−IRの測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例11で作製した電気2重層型キャパシタの構成を示す図である。
【図11】実施例13で作製した5層構造の光キャパシタの構成を示す図である。
【図12】実施例14で作製したフィルム状太陽電池の構成を示す図である。
【図13】実施例15で作製した水の光分解デバイスの構成を示す図である。
【図14】実施例15で使用した反応セルの構成を示す図である。
【図15】実施例16におけるラマン散乱観測用の実験装置の構成を示す図である。
【図16】実施例16におけるラマン散乱観測結果を示すグラフである。
【図17】層状化合物−金属粒子複合体の作製を伴う実施例及び比較例について、複合化条件と複合化現象との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る層状化合物−金属粒子複合体の製造方法について説明する。図1は、本実施形態の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法を説明するための図である。
【0030】
本実施形態では、図1に示すように、層間への有機イオンのインターカレーションにより親油化された有機変性層状化合物1に、金属コロイド水溶液2及び非水溶媒を添加することで、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体3を形成する。
【0031】
有機変性層状化合物1の親油化前の層状化合物は、交換性イオンを層間に有する層状の化合物であれば特に限定されないが、例えば、モンモリロナイト鉱物群あるいは雲母群に属する層状粘土化合物を好適に使用できる。モンモリロナイト鉱物群は、次の一般式(X,Y)2〜310(OH)・mHO・(W1/3)で表される粘土鉱物である(ただし、X=Al,Fe(III),Mn(III)又はCn(III)であり、Y=Mg,Fe(II),Mn(II),Ni,Zn又はLiであり、Z=Si又はAlであり、W=K,Na又はCaであり、HOは層間水であり、mは整数である)。ここで、X及びYの組合わせと置換数の違いにより、モンモリロナイト、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイト、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロナイト、アルミニアンノントロナイト、サポナイト、アルミニアンサポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等の多くの種類が天然物として存在するが、これら天然物の他に上記式中のOH基がフッ素等のハロゲンで置換された合成品等も市販されており、いずれも使用することができる。
【0032】
有機変性層状化合物1の親油化に用いる有機イオンは、任意の構造の有機カチオン又は有機アニオンを用いることができ、水に難溶性又は不溶性の第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、蛍光性のカチオン染料又はオキソニウム塩等のオニウム塩であってもよい。より具体的には、4つのアルキル基の炭素数が4以上のバルキーな陽イオンを有する第4級アンモニウム塩や、アルキルホスホニウムイオン,アリールホスホニウムイオン等のバルキーな陽イオンを有するホスホニウム塩や、過塩素酸塩陰イオンの対イオンとしてのバルキーな陽イオンを有するオキソニウム塩を好適に用いることができる。
【0033】
金属コロイド水溶液2は、金属コロイド(金属粒子又は表面の少なくとも一部がクエン酸等の分散剤で覆われた金属粒子)が分散媒としての水中に分散した分散系である。金属粒子の金属種や粒径や形状は、所望の機能が発現するように適宜選択すればよい。例えば、Au、Ag、Cu、Al、Pt等の金属種を用い、数nm〜数百nmの範囲から粒径を選択し、球形状やロッド形状等の粒子形状を選択してもよい。
【0034】
非水溶媒は、金属コロイド相溶液2中の金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物1の膨潤性に優れた溶媒を用いる。具体的には、金属コロイドとのSP(溶解パラメータ)値の差が十分に大きい溶媒を非水溶媒として用いる。
金属コロイドと非水溶媒とのSP値の差は、9MPa1/2以上が好ましく、13MPa1/2以上がより好ましく、21MPa1/2以上がさらに好ましい。このように、金属コロイドに対する溶解度が十分に小さい非水溶媒を用いることで、有機変性層状化合物1と金属コロイドとの複合化をより確実に進行させることができる。
【0035】
本実施形態の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法によれば、金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物1の膨潤性に優れた非水溶媒を用いることで、有機イオンのインターカレーションにより親油化した有機変性層状化合物1と、金属コロイド水溶液2中の金属コロイドとの複合化を進行させることができる。これにより、低極性物質との親和性に優れる層状化合物−金属粒子複合体3が得られる。
【0036】
層状化合物−金属粒子複合体3は、非水溶媒中で高度に安定な分散安定性を示すから、非水溶媒を分散媒とするサスペンション(ペーストも含む)の形態にて提供可能である。また、層状化合物−金属粒子複合体3又はそのサスペンションを用いて種々の機能材を形成することができる。例えば、高度な耐久性を備えた色材はもとより、プラズモニクスに基づく太陽電池やCCDセンサ、LPRセンサ等の増感薄膜として用いたり、キャパシタ等のエレクトロニクス素子もしくは電極材料のみならず、光合成類似の増感剤や電子伝達機能と組み合わせられるとその光酸化還元作用の応用が見込まれる実用的な蓄電素子や水の光分解デバイスが構築される。
【0037】
なお、極性が非常に小さい酢酸エチル又はトルエンを非水溶媒として用いる場合、金属コロイド水溶液2と非水溶媒との混合溶媒が水相と有機相とに相分離し、複合体が有機相に移行するか、あるいは、水相と有機相との間に複合体の凝縮層が形成されるかのいずれかの現象が起きる傾向がある。一方、酢酸エチルやトルエンに比べて極性が大きいアセトンやエタノールを非水溶媒として用いる場合、金属コロイド水溶液と非水溶媒との混合溶媒の相分離はみられず、複合体が沈殿するという現象が起きる傾向がある。
前者の場合には、複合体が分散した有機相を水相から分離するか、水相と有機相との間の複合体の凝縮層を取り出して有機溶媒に分散させることで、任意の複合体濃度のサスペンション(ペースト、希釈液等)を得ることができる。なお、有機相に複合体を抽出しても、一回の抽出操作では十分な複合体濃度のサスペンションが得られないことがある。この場合、複合体が抽出された有機相を水相から分離した後、再度、金属コロイド水溶液を添加して有機相に金属コロイドを移行させることで複合体を濃縮することができる。なお、抽出操作は、必要に応じて何度でも繰り返してもよい。
一方、後者の場合には、沈殿・析出した複合体を有機溶媒に分散させて、任意の複合体濃度のサスペンション(ペースト、希釈液等)を得ることができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る層状化合物−金属粒子複合体の製造方法について説明する。図2は、本実施形態の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法を説明するための図である。本実施形態は、非水溶媒とは別の両親媒性溶媒をさらに添加する点を除けば、第1実施形態と同様である。そこで、ここでは第1実施形態と共通する内容については説明を省略し、第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、金属コロイド水溶液2及び非水溶媒だけでなく、両親媒性溶媒を有機変性層状化合物1に添加する。
このように両親媒性溶媒を用いることで、水との親和性が高い金属コロイドと、非水溶媒との親和性が高い有機変性層状化合物1との接触頻度を増大させて、金属コロイドと有機変性層状化合物1との複合化を促進できる。
【0040】
両親媒性溶媒は、金属コロイド水溶液2の溶媒である水と非水溶媒との両方に対して親和性に優れる溶媒を用いる。具体的には、誘電率が水よりも小さく、非水溶媒よりも大きい溶媒を好適に用いることができる。例えば、非水溶媒としてアセトン、酢酸エチル、トルエン等を用いる場合、両親媒性溶媒としてメタノールやエタノールを用いてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
以下に示す手順で、上述の実施形態に係る方法で層状化合物−金属粒子複合体を作製した。
最初に、参考文献(G. Frens et al., Nat. Phys. Sci., (1973))に従って、次のように金ナノコロイド水溶液を調製した。6mlのHAuCl・4HO(1wt%)を594mlの超純水に溶かして加熱還流し、沸騰後、1wt%のクエン酸3ナトリウム水溶液を4.92ml加えて還流を続けた。溶液は薄黄色から赤色に変化した。1時間後還流を止め、自然冷却後、常温で遮光し保存した。このようにして得た金ナノコロイド水溶液の透過吸収スペクトルを測定したところ、図3に示す結果が得られた。透過吸収スペクトルの測定結果によればプラズモン吸収が534nmであったことから、金ナノ粒子の直径は55〜60nm程度の大きさであると推定された。
次に、親油化したコープケミカル株式会社製親油化合成スメクタイトSPNの1wt%エタノール溶液を100mlスクリュー管瓶に0.15ml採取し、これに酢酸エチル10mlを加えて超音波照射により分散させた。この分散液に上記金ナノコロイド水溶液50mlを加えたところ、50mlの水を主体とする水相と、10mlの酢酸エチルを主体とする有機相とに分離した液体が得られた(図4の左側の瓶)。このとき、水相が赤色であったのに対し有機相が透明であった。この液体を30秒間激しく攪拌し、10分間静置したところ、有機相が赤色に着色し水相が透明になった(図4の右側の瓶)。各相の色の変化から、有機相(10ml)のほうが水相(50ml)よりも溶媒量が少ないにもかかわらず、酢酸エチル存在下での金ナノコロイド水溶液添加後の攪拌によって、殆どの金コロイドが水相から有機相に移行することが確認された。
最終的に得られた液体(図4の右側の瓶)から有機相を分離し、その溶媒を留去したところ赤紫の残渣が回収された。この赤紫残渣のFTIRを測定したところ、図5に示す結果が得られた。赤紫残渣のFTIR測定結果によれば3320cm−1付近にスメクタイト由来の−OH伸縮運動の吸収が認められた。よって、上記赤紫残渣は、金ナノ粒子とスメクタイトとの複合体であることが確認された。
【0043】
[比較例1]
スメクタイトとして親油化処理をしていないコープケミカル株式会社製親水性スメクタイトSWNを用いた以外は、実施例1と同一の条件で、親水性スメクタイトのエタノール溶液に、酢酸エチル、金ナノコロイド水溶液を順に加えた。ところが、金コロイドはそのまま水相に止まり、有機相への移行は認められなかった。このことから、実施例1において確認された金コロイドの水相から有機相への移行は、スメクタイトの層間あるいは表面の親油化処理によりもたらされたことが判明した。
【0044】
[実施例2]
2.4×10−4M(0.56wt%)のHAuCl・4HOに替えた以外は、実施例1と同様の手法で、金ナノコロイド溶液を調製した。この金ナノコロイド溶液の透過吸収スペクトルを測定したところ、プラズモン吸収が520nmであったので、金ナノ粒子の直径は約20nmであると推定された。実際に、金ナノ粒子のTEM観察を行ったところ、図6に示すように、その粒子径は20±2nmであった。
この金ナノコロイド溶液を用いて、実施例1と同様の手順で、水相と有機相とに分離した液体を得た。このとき、実施例1と同様に、金ナノ粒子の水相から有機相への移行が確認され、最終的な有機相の色は赤紫であった。
【0045】
[実施例3]
1wt%スメクタイトSPNのエタノール溶液に金コロイド水溶液と酢酸エチルを添加する順番を変更した以外は、実施例2と同様にして、水相と有機相とに分離した液体を得た。
具体的には、1wt%スメクタイトSPNのエタノール溶液0.15mlを100mlスクリュー管瓶に採取し、先に金コロイド水溶液50mlを加えて、やや濁った不均一な分散液を得た。この後、酢酸エチル10mlを加えて30秒間激しく攪拌し、10分静置した。これにより、金ナノ粒子の水相から有機相への移行が確認され、最終的な有機相の色は青紫であった。この有機相の吸収スペクトルを測定したところ、図7に示すように、近赤外領域まで吸収のブロード化が起こっており、金コロイドの凝集が起こっていることが判明した。
【0046】
[実施例4]
親油化したコープケミカル株式会社製親油化合成スメクタイトSANをトルエン10mlに溶解させて、スメクタイト濃度が0.05wt%のトルエン溶液を調製し、超音波照射により均一な微粒子分散液を得た。この分散液に実施例2と同一の金コロイド水溶液50mlを加えて、実施例2と同様な抽出操作を施して赤色の有機相を得た。殆ど色のない水相を捨て、新たに50mlの金コロイド水溶液を加え抽出するという操作を7回繰り返し、有機相の金コロイドを濃縮せしめ、さらにホットプレート上で100℃以上に3時間保ち、有機相中から水分を除いて粘性の高い赤色ペーストを得た。このペーストにポリメチルメタクリレート(PMMA、アルドリッチ社製、数平均分子量=44700)の0.1g/L溶液3mlを加えてロールミルで1昼夜混練して塗料とし、ドクターブレードを用いて基材フィルムに塗布し、100℃のオーブンに1時間放置して溶媒を除いて基材フィルムから剥離したところ、厚みが約0.4μmで青く色づいた10cm角程度の透明なフィルムを得た。このフィルムの吸収スペクトルを測定したところ、図8に示すように、溶液中とは異なり700nm付近にプラズモンバンドが確認された。プラズモンバンドの半値幅が大きいことから、粒子間の凝集が進み、粒子径に分布が生じたことが分かる。このことは、光劣化が懸念される色素によらずに光増感波長域拡大作用を得られることを意味し、色素を用いずに、高度の耐久(耐候)性を指向する場合であっても、広い波長域において光増感作用を得ることができる点で有利である。
上記透明のフィルムをガラス板上に移し、4端子による表面抵抗を測定したところ50Ω/□の値であり、いわゆる分極性(誘電性)電極として使用できることが判明した。
【0047】
[実施例5]
参考文献(P. C. Lee et al., J. Phys. Chem.B (1982))に従って、次のように銀コロイド水溶液を調製した。54mgのAgNOを300mLの水に溶解させて無色の液体を得て、これを脱気下で還流し沸騰させた。この後、15分間脱気した10wt%のクエン酸3ナトリウム水溶液6mLを添加した。数分後に溶液が黄色に変化し、15〜20分後に溶液の色は黄色がかった灰色に変化した。その後、還流を続けたが溶液の色は変化しなかったので、クエン酸3ナトリウム添加から約1時間経過後、還流を停止し、一晩放置した後、遮光下、室温で保存した。このようにして得られた銀コロイド水溶液の透過吸収スペクトルを測定したところ、プラズモン吸収が410nm付近に認められた。また、銀ナノ粒子のTEM観察結果から、銀ナノ粒子の直径は50nm程度であることが分かった。
親油化されたコープケミカル株式会社製親油化合成スメクタイトSTNの1wt%アセトン溶液2.5mlに上記銀コロイド水溶液30mを加えたところ、直ちに緑褐色の沈殿が析出した。沈殿物を濾取して回収し、メタノールで洗浄して室温で乾燥させた後、これをγブチロラクトンに超音波分散した。この分散液は、見かけ緑色で透明化し、2ヶ月放置しても沈殿が生じなかった。
【0048】
[比較例2]
スメクタイトとして親油化処理をしていないコープケミカル株式会社製親水性スメクタイトSWNを用いた以外は、実施例5と同一の条件で実験を行ったが、銀コロイド水溶液には何の変化も認められず、安定な分散状態が保たれた。このことから、実施例5における緑褐色の沈殿物の析出はスメクタイトの親油化処理によってもたらされたことが判明した。
【0049】
[実施例6]
実施例5に示した方法で調製した銀コロイド水溶液50mlにコープケミカル株式会社製親油化合成スメクタイトSANの1wt%トルエン溶液5mlを加えて激しく攪拌して放置したところ、上層の有機相と下層の水相とに分離し、上層の有機相は緑色に着色した。この後、有機相を回収し、減圧下で溶媒を留去し、多量のメタノールを加えたところ、濃緑色の沈殿が生じた。沈殿物を濾取して60℃で乾燥させて粉末を得た。この着色粉末のFT−IRを測定し、スメクタイトSAN単体のFT−IRと比較したところ、図9に示すように、どちらもほぼ同じ波数にピークを有していた。このことから、上記着色粉末が親油化スメクタイトと銀コロイド粒子との複合体であることが判明した。
【0050】
[実施例7]
クマリン系のカチオン染料である7-N,N-dimethylamino-4-methylcoumarin(略号:Coumarin 311 Aldrich社 Laser grade)の10−4mol/lエタノール溶液を調製し、この溶液にモンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ鉱業社製)の水分散液を加え、生じた着色沈殿物を回収した。この着色沈殿物を乾燥させた後でアセトン中に固形分が10wt%になるように調製し、0.3φのジルコニア粒子を粉砕材として用いるサンドミルにて1時間微粒子分散させた。得られた分散液に実施例5にて調整した銀ナノコロイド水溶液を滴下したところ、直ちに緑灰色の沈殿が生じたのでこの着色沈殿物を回収し下記重量組成の混合液として一昼夜ロールミル処理を行い、ベージュ色のペーストを得た。
<ペースト組成物>
銀ナノコロイドークマリン染料修飾モンモリロナイト複合体 125 重量部
アゾビスイソブチロ二トリル 3 重量部
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業) 25 重量部
酢酸エチル 100 重量部
このペーストを厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上にドクターブレードを用いて塗布し、100℃で5分加熱乾燥し、厚さ1μmの淡黄緑色白濁層を基材フィルム上に形成してラミネートフィルムを得た。この薄層の基材フィルム込みの全光線透過率は47%であった。次にこの白濁層を浜松ホトニクス株式会社製Siフォトダイオード(S2386−18K)の反射防止膜上に重ね、60℃で3分間加熱押圧した後に基材フィルムを剥離し、フォトダイオード上にラミネート層を形成した。このラミネート済みのフォトダイオードについて光電流を測定し、ラミネートしなかったSiフォトダイオードの光電流に対する比(光電流増強比)を求めたところ、ラミネート層が転写されたことで光電流は1.5倍になった。
【0051】
[実施例8]
親油化合成スメクタイトSTNに替えて親油化合成雲母(商品名:ソマシフMPE、コープケミカル社製)を用いた以外は、実施例5と全く同じ方法で実験を行い、Ag-合成雲母複合体のγブチロラクトン分散溶液を得た。一方、ITO付き硝子基板上の透明電極面上に、PEDOT:PSSの水溶液をスピンコートにより塗布して、乾燥することでp型導電性高分子(ホール輸送層)を成膜した。このp型導電性高分子の上に、先に調製しておいたAg-合成雲母複合体のγブチロラクトン分散溶液をスピンコートした。さらにその上にPCBM及びP3HTの混合溶液(溶媒:クロロベンゼン)をスピンコートで塗布して、光電変換層を形成し、最後に、真空蒸着により表層にアルミニウム電極を形成して、有機太陽電池サンプルを得た。なお、このサンプルにおける透明電極の表面に対するAg-雲母複合ナノ粒子の被覆率を算出したところ、60%であった。また、このサンプルにおいて、複合ナノ粒子の平均粒径dは約55nmであり、金属ナノ粒子の存在しない場所におけるホール輸送層の膜厚tは40nmであった。
上記有機太陽電池サンプルのIPCEを測定し、Ag-雲母複合ナノ粒子層の有無によるIPCEを比較したところ、複合粒子層を設けたことでIPCEが2.1倍に増大することが判明した。
【0052】
[実施例9]
PCBM及びP3HTの混合溶液(溶媒:クロロベンゼン)に、固形分に対して10wt%の比率で実施例6にて作製したAg-親油化スメクタイト複合体を添加してボールミル分散を行った。一方、ITO付き硝子基板上の透明電極面上に、PEDOT:PSSの水溶液をスピンコートにより塗布して、乾燥することでp型導電性高分子(ホール輸送層)を成膜した。このp型導電性高分子の上に、先に調製しておいたAg-親油化スメクタイト複合体、PCBM及びP3HTの分散液をスピンコートして、光電変換層を形成した。最後に、真空蒸着により表層にアルミニウム電極を形成して、有機太陽電池サンプルとした。
この有機太陽電池サンプルのIPCEを測定し、Ag-スメクタイト複合ナノ粒子層の有無によるIPCEを比較したところ、複合粒子層を設けたことでIPCEが1.5倍に増大することが判明した。
【0053】
[実施例10]
予めポリメチルメタクリレート(略号:PMMA、アルドリッチ社製:数平均分子量 44700)の0.1g/lトルエン溶液3mlに、コープケミカル社製親油化合成スメクタイトSAN(商品名)を1wt%含む分散液を4μl加えて超音波を照射し均一な微粒子分散混合液を得た。次にこの分散液に実施例2で示した金コロイド水溶液50mlにクエン酸3ナトリウム塩10mgを添加したコロイド溶液を加えて抽出したところ、水相−有機相の界面に赤褐色色に見える金属コロイドが濃縮された。さらに室温で一夜放置して上層のトルエンを乾燥したところ、金色の光沢ある皮膜がスクリュー管壁から分離して水相に浮いていた。次にスクリュー管をホットプレート上で95℃に1時間保ったところ、厚みが0.3μm程度で青く色づきつつもハーフミラー的な金属光沢を示す3cm径程度の透明な自立性(触れても崩れたり変形することがなく、膜としての取り扱いが可能な状態)のフィルムを得た。そのフィルムを注意しながら取り扱いつつガラス板上に移し、水相側面を4端子による表面抵抗を測定したところ4Ω/□の値を示し、いわゆる集電極としての使用が可能であることが判明した。空気側の面は対照的に数MΩ/□以上の値を示し電導性に異方性があることが判明した。
【0054】
[比較例3]
親油化スメクタイトSANを含まない以外は実施例10とまったく同じ操作を施したところ、実施例10とは対照的に金属コロイドはその水―有機相の界面にはまったく集合せず、水相はコロイド特有の赤色を呈したままで有機相は無色のままであった。このことから、実施例10に示す金属コロイドの界面への集合が親油化したクレイの有機相への微量の添加によりもたらされたことが判明した。
【0055】
[実施例11]
ニッポン高度紙工業社のキャパシタ用セパレータ(厚さ50μm程度)にテトラエチルアンモニウムクロリド0.3Mを含むγブチロラクトンを含浸させて、その両側から実施例10にて作製した厚さ0.4ミクロン程度のAu集電極フィルムの電導性の面が含浸した液体を覆うように接触させた状態で圧着して電気2重層型キャパシタを構成した。図10にその概略構成を示す。図10に示すように、電気2重層型キャパシタ10は、PMMA樹脂12とAu集電極14とからなる集電極フィルム16でセパレータ18を挟んだ構成を有する。
この電気2重層型キャパシタの両集電極にリード線を接触させて末端のPt板で導通を取りつつ充放電器を用いて両電極間に2.5Vの電位差(DC)を室温で5分間印加したところ、その放電曲線より数F/cm3の容量を示したことから、この素子が電気2重層型キャパシタとして動作することが判明した。
【0056】
[実施例12]
50mlのスクリュー管瓶に実施例5で示した銀ナノコロイド水溶液20mlを入れ、トルエン溶液3mlにコープケミカル社製親油化合成スメクタイトSAN(商品名)を1wt%含む分散液を5μl加えて微粒子分散した溶液を加え、激しく振とうして静置したところ、水相−有機相間に黄金の光沢を放つ界面が形成された。界面上下の無色透明の有機相と水相をスポイトで回収して捨て、金属光沢膜を硝子プレートに写し取って100℃で1時間乾燥したところ銀色の皮膜が形成された。この操作を5回繰り返して表面抵抗をテスタで測定したところ、10Ω/cmを示し、集電極に用いられることが分かった。
そこで、スケールを50倍にアップして1リットルの銀コロイド水溶液から同様な操作にて界面の金属皮膜を容積で約0.5ml回収して水-メタノール(1/7vol比)混合溶媒5mlに1時間超音波分散して緑色のペーストを得た。このペーストをワイヤーバーを用いて硝子基板上に湿潤時の厚みが5μm程度になるように塗布して100℃の熱風で乾燥したところ、緑灰色に見える透明感ある光沢皮膜が得られた。その皮膜の表面抵抗は5Ω/cm程度であった。
【0057】
[実施例13]
厚さ90μmのセルロース基材のミリポアフィルタにコープケミカル社製親油化合成スメクタイトSPN(商品名)の35wt%エタノール溶液を含浸させて室温で2時間乾燥して親油化クレイを担時させて絶縁層とした。次に帯電防止剤樹脂として知られるBN複合化樹脂(ボロンインターナショナル社製:ハイボロンBN-2)を70wt%含むエタノール溶液を調製し、下記構造の光酸化還元性の化合物(ZnP(6)V)を樹脂分に対して0.02mmolになるように添加し、さらに実施例5にて調製したAg-スメクタイト複合体の分散液をその成分中の複合体が樹脂分に対して10wt%になるように混合した液を光誘電層として先の絶縁層層の片側面に乾燥厚10μmになるように塗布した。反対側の面には光酸化還元性化合物をまったく含まないBN複合化樹脂(ハイボロンBN-2)とAg-スメクタイト複合体の混合層を同じ厚みで設け誘電層とした。テスタをこの光誘電層/誘電層の両界面に当てると厚み方向の抵抗は20kΩを示した。この誘電層の両側面上に実施例10に製法を示した青色に着色したフィルム(Au集電極フィルム)を積層し、図11に概略構成を示す5層構造の光キャパシタを構成した。同図に示すように、光キャパシタ20は、光入射面側から順に集電極フィルム16、光誘電層22、絶縁層24、誘電層26、集電極フィルム16が積層されている。そして、回折格子を用いてXe光から取り出した430nmの単色光を光入射面側から照射したところ、瞬間的に1μA/cm程度の光電流が観測され両電極間に約0.2Vの起電力が生じた。光照射を止めても電位は24時間以上保持され、外部回路を繋ぐことによって始めて0電位となった。
<光酸化還元性の化合物ZnP(6)Vの構造>
【化1】

【0058】
[実施例14]
実施例6で示したAg-スメクタイト複合体を固体状のBN複合樹脂であるBN−4を70wt%で含むメチルエチルケトン溶液中に固形分の30wt%になるようにロールミルを用いて練り合わせて濃厚ペーストを得た。ナノメンブレン社の0.1ミクロン厚の固体電解質膜をAl箔上に形成したフィルムを用い、その固体電解質側面上に上記ペーストを塗布した後に100℃で1時間加熱することで、ペーストを含浸させてから室温に冷却した。さらにAlと反対側面に実施例12に示した透明電極膜を張り合わせて150℃で熱圧着させて可撓性に富み、厚みが数μm程度のフィルム状太陽電池を得た。なお、両電極間の室温での抵抗値は1MΩ程度であった。
図12は、本実施例14で作製したフィルム状太陽電池の構成を示す図である。同図に示すように、太陽電池30は、光入射側から順に、Ag集電極(実施例12の透明電極膜)32、実施例6の複合体を含むペーストを含浸させた固体電解質膜34、Al箔36が積層された構造である。
このフィルム状太陽電池に対し、透明電極側からXe光を0.3W/cmの光強度で全光線照射すると数mA/cm程度のカソーディックな光電流が得られた。
【0059】
[実施例15]
コープケミカル社の親水性クレイSWNを10wt%、及びボロンインタナショナル社製架橋剤(ハイボロンB―1)を3wt%とポリビニルアルコール2wt%とを混合して均一なスラリー溶液を調製した。このスラリー溶液に、ニッポン高度紙工業社のキャパシタ用セパレータ(厚み50μm程度)を15分間室温で浸漬した後に引き上げ、熱風で乾燥した。この紙ベースのイオン交換体を50mMのメチルビオローゲンの溶液中に1時間再浸漬して引き上げ、多量の水で洗浄した後に乾燥し、ビピリジニウム骨格をイオン交換にてクレイ(固体電解質)中に固定した。次に、実施例12の集電極フィルムを下記色素5mM含むTHF溶液に一昼夜浸漬して色素を吸着させてから引き上げ、多量のエタノールで余剰の色素を洗浄して先の多孔質紙-クレイ-ビオローゲン複合紙の片側に150℃で熱圧着させた。次に田中貴金属社製のPtコロイド溶液(溶媒はトルエン)に実施例13で示した化合物(Zn(v)6)を5mM含むエタノール溶液を加えた後に先の集電極付き複合膜の反対側面に筆で薄く塗布して乾燥し、図13に示す構成のサンプルを得た。同図に示す光分解デバイス40は、色素(Dye1)を吸着させたAg集電極(アノード)32、メチルビオローゲンを固定した固体電解質42、光酸化還元性化合物ZnP(6)V(Dye2)を含むPt電極(カソード)44が積層された構成を有する。
この光分解デバイスを、図14に構造(半分)を示す反応セルの中央に挟んで両側の水槽に蒸留水を満たした。そして、中央の複合膜の両側からXe光を照射したところ、照射開始直後から膜と水との界面で気泡が発生し始め、経時と共に泡の発生量が増加した。発生した気体を捕集瓶に集めガスクロマトグラフィーにて分析したところ、Au電極側で酸素が、Pt電極側で水素が発生したことが判明した。
<Ag集電極フィルムに吸着させた色素の構造>
【化2】

【0060】
[実施例16]
カバーグラス上に実施例1及び5でそれぞれ作製したAu及びAgの粘土複合体ペーストを微量スポッティングした後に130℃で15分間乾燥した後に図15に示す構成でスポットの周囲にローダミン6G(コダック社製:レーザグレード)の非水溶液を満たし、上部からガラス越しに(He-Ne)レーザ光を照射してその表面でのラマン散乱を観測した。
その観測結果を図16にまとめて示すが、ローダミン色素単独の時に比べて金属―粘土複合体の表面ではそのラマン散乱が有機溶媒中で著しく増強されることが明らかとなり、金属ナノ粒子表面における電場増強効果を利用した表面増強ラマン分光法(SERS)への適用が可能であることが判明した。
【0061】
[実施例のまとめ]
次に、上記実施例について、層状化合物−金属粒子複合体の複合化条件と複合化が起こる様子との関係を整理する。図17は、層状化合物−金属粒子複合体の作製を伴う実施例及び比較例について、複合化条件と複合化現象との関係を示す表である。
【0062】
図17に示すように、実施例1〜8、10及び12では、有機イオンのインターカレーションによって親油化された有機変性層状化合物を用い、金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒を金属コロイド水溶液とともに添加した。これにより、有機変性層状化合物と金属コロイドとの複合化が進行し、層状化合物−金属粒子複合体が得られた。なお、実施例1〜8、10及び12では、いずれも、金属コロイドと非水溶媒とのSP値の差は21MPa1/2以上であった。SP値の差の算出方法については、後述する。
一方、親油化していない層状化合物を用いた(あるいは、層状化合物自体を用いなかった)比較例1〜3では、層状化合物と金属コロイドとの複合化が進行しなかった。
【0063】
また、極性が非常に小さい酢酸エチル又はトルエンを非水溶媒として用いた実施例1〜4、10及び12では、金属コロイド水溶液と非水溶媒(及び両親媒性溶媒)との混合溶媒が水相と有機相とに相分離し、複合体が有機相に移行するか、あるいは、水相と有機相との間に複合体の凝縮層が形成されるかのいずれかの現象が確認された。一方、酢酸エチルやトルエンに比べて極性が大きいアセトンやエタノールを非水溶媒として用いた実施例5〜8では、金属コロイド水溶液と非水溶媒との混合溶媒の相分離はみられず、複合体が沈殿するという現象が確認された。
すなわち、添加される非水溶媒によって、複合体の大部分を安定分散する有機相と複合体をほとんど含まない水相とに相分離する現象が起こる場合(実施例1〜4、10及び12)と、全ての溶媒が均一の相溶した状態で複合体が析出し沈殿する場合(実施例5〜8)とに分かれる。なお、前者の場合、有機相を構成する非水溶媒に複合体が安定分散したサスペンションが直接得られるため、その後のプロセス(有機溶媒に複合体を分散させた後、塗布により機能膜を形成する)が簡素化されるため、効率的である。
【0064】
なお、非水溶媒に加えて、両親媒性溶媒としてエタノールを添加した実施例1〜3では、金属コロイドと親油化層状化合物との複合化が促進された。このように、非水溶媒だけでなく両親媒性溶媒を添加する場合、以下のように複合化が進行するものと考えられる。
比較的水と相溶しやすい両親媒性溶媒と金属コロイド水溶液とが混合されると、水および両親媒性溶媒の混合溶媒が有機変性層状化合物の層間を膨潤又は表面に吸着し、金属粒子はバルクの混合溶媒中だけでなく有機変性層状化合物の層間又は表面に存在すると考えられる。そして、この混合溶媒に非水溶媒がさらに添加されると、疎水性である有機変性層状化合物の層間又は表面から水が排除され、バルクの混合溶媒は水相と有機相とに分離し、層状化合物−金属粒子複合体はこれとの親和性が高い有機相に移行するものと考えられる。
【0065】
[SP値の差の算出方法]
ここで、図17における「SP値の差」の算出方法について説明する。非水溶媒のSP値(MPa1/2)は、酢酸エチルが18.6、トルエンが18.2、アセトンが20.3を用いた。一方、金属コロイド水溶液の金属コロイドのSP値は、次のような仮定の下、以下のような手順で基準溶媒(水、エタノール、メタノール)への溶解度から算出した。
仮定1:金属コロイドのSP値は、表面修飾剤(分散剤)であるクエン酸3ナトリウムのSP値と同一である。
仮定2:SP値は加成性がある。
分散剤であるクエン酸3ナトリウム塩の2水和物の水への溶解度720g/L(25℃)から、実験室温度(16℃)の溶解度を500g/Lと見積もった。そして、クエン酸3ナトリウム塩の2水和物500gが水1Lに対して全て溶解することを確認した。
水とエタノールを混合して、混合比(水:エタノール)を9:1としたもの(混合溶媒1)と、混合比(水:エタノール)を8:2としたもの(混合溶媒2)を準備した。そして、この混合溶媒1及び2にクエン酸3ナトリウム塩の2水和物を500g/Lの濃度で溶解させた。その結果、混合溶媒1ではクエン酸3ナトリウム塩の2水和物がほぼ全て溶解し、ごく一部のみ沈殿がみられたのに対し、混合溶媒2では大部分が沈殿した。
同様に、水とメタノールを混合して、混合比(水:メタノール)を9:1としたもの(混合溶媒3)と、混合比(水:メタノール)を8:2としたもの(混合溶媒4)を準備した。そして、この混合溶媒3及び4にクエン酸3ナトリウム塩の2水和物を500g/Lの濃度で溶解させた。その結果、混合溶媒3ではクエン酸3ナトリウム塩の2水和物が全て溶解したのに対し、混合溶媒4ではごく一部が沈殿した。
この結果に基づき、クエン酸3ナトリウムのSP値を、既知である水、エタノール、メタノールのSP値から次のように推定した。水、エタノール、メタノールのSP値は、それぞれ、47.9MPa1/2、26.0MPa1/2、29.7MPa1/2を用いた。
(クエン酸3ナトリウムのSP値)=0.9×(水のSP値)+0.1×(エタノールのSP値)=45.7
(クエン酸3ナトリウムのSP値)=0.8×(水のSP値)+0.2×(メタノールのSP値)=44.3
そして、クエン酸3ナトリウムのSP値、すなわち金属コロイドのSP値として、エタノール法で推定したSP値(=45.7)とメタノール法で推定したSP値(=44.3)との平均値45.0MPa1/2を得た。
【符号の説明】
【0066】
1 有機変性層状化合物
2 金属コロイド水溶液
3 層状化合物−金属粒子複合体
10 電気2重層型キャパシタ
12 PMMA樹脂
14 Au集電極
16 集電極フィルム
18 セパレータ
20 光キャパシタ
22 光誘電層
24 絶縁層
26 誘電層
30 太陽電池
32 Ag集電極
34 固体電解質膜
36 Al箔
40 光分解デバイス
42 固体電解質
44 Pt電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状化合物と金属粒子との複合体を製造する方法であって、
前記層状化合物の層間に有機イオンをインターカレーションして、有機変性層状化合物を形成するステップと、
前記有機変性層状化合物に、前記金属粒子が金属コロイドとして水中に分散した金属コロイド水溶液と、前記金属コロイドに対する貧溶媒であり、且つ、前記有機変性層状化合物の膨潤性に優れた非水溶媒とを添加するステップとを備えることを特徴とする層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項2】
前記非水溶媒は、前記金属コロイドとのSP値の差が9MPa1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項3】
前記非水溶媒及び前記金属コロイド水溶液に加えて、前記金属コロイド水溶液の溶媒である水と前記非水溶媒との両方に対して親和性に優れる両親媒性溶媒を前記有機変性層状化合物に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項4】
前記非水溶媒は、前記両親媒性溶媒よりも誘電率が低いことを特徴とする請求項3に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項5】
前記金属粒子は、Au、Ag、Cu、Al及びPtの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項6】
前記有機イオンは、水に難溶性又は不溶性の第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、蛍光性のカチオン染料又はオキソニウム塩の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項7】
前記層状化合物は、モンモリロナイト鉱物群あるいは雲母群に属する層状粘土化合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の層状化合物−金属粒子複合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法により得られる層状化合物−金属粒子複合体。
【請求項9】
請求項8に記載の層状化合物−金属粒子複合体と、
前記層状化合物−金属粒子複合体の分散媒としての有機溶媒とを含むことを特徴とする層状化合物−金属粒子複合体サスペンション。
【請求項10】
有機色素、ホール輸送性物質、p型半導性物質、電子輸送性物質、n型半導性物質及び架橋性物質の少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の層状化合物−金属粒子複合体サスペンション。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の層状化合物−金属粒子複合体サスペンションを塗布してなることを特徴とする層状化合物−金属粒子複合体薄膜。
【請求項12】
請求項11に記載の層状化合物−金属粒子複合体薄膜を複数含む積層体からなり、
複数の層状化合物−金属粒子複合体薄膜は、互いに異なる特性を有することを特徴とする層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項13】
表面抵抗が100kΩ/□以上の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる絶縁層と、
前記絶縁層の表面側及び裏面側にそれぞれ配置され、表面抵抗が1kΩ/□以上100kΩ/□未満の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる一対の誘電層と、
最表層に配置され、表面抵抗が10Ω/□以下の層状化合物−金属粒子複合体薄膜からなる集電極層とを含むことを特徴とする請求項12に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項14】
前記集電極層の一方及びこれに隣接する層に光電変換用の色素が添加されていることを特徴とする請求項13に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項15】
前記色素により光還元される電子受容体を前記絶縁層もしくは前記絶縁層及び前記誘電層に添加したことを特徴とする請求項14に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項16】
前記絶縁層に隔てられた対称の層構成を有し、
前記集電極層の一方及びこれに隣接する層と、前記集電極層の他方及びこれに隣接する層とに、分光感度又は光吸収波長の極大が20nm以上異なる2種類の光電変換用の色素をそれぞれ添加してなることを特徴とする請求項13に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項17】
前記絶縁層の一方の側に積層される層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、前記金属粒子としてPtを含み、
前記絶縁層の他方の側に積層される層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜は、前記金属粒子としてAu、Ag、Cu及びAlの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項16に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜。
【請求項18】
金属粒子が50wt%未満である、請求項12に記載の層状化合物−金属粒子複合体多層機能膜からなる誘電層又は固体電解質層を一方の電極として備え、
他方の電極が炭素繊維電極であることを特徴とするフレキシブル太陽電池。
【請求項19】
金属粒子と、該金属粒子が吸着する無機物又は無機−有機ハイブリッド化合物とからなり、非水溶媒中で分散状態を維持しうる複合体、及びその高濃度分散体ペースト及びこのペーストから成膜される薄膜並びに2層以上の積層構造物。
【請求項20】
金属粒子の配合量、凝集の度合いに応じてその導電性、プラズモン共鳴性または光学吸収特性が制御されることを特徴とする請求項19に記載の複合体、及びその高濃度分散体ペースト及びこのペーストから成膜される薄膜並びに2層以上の積層構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−166145(P2012−166145A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29216(P2011−29216)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(596134367)財団法人九州先端科学技術研究所 (12)
【Fターム(参考)】