説明

層状食品製造装置及び方法

【課題】本発明は、層厚の調整を簡単に行うことができ様々な食材の組合せが容易な層状食品製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】層状食品製造装置は、上方が開口した成形用容器4と、成形用容器4に液状生地を供給して成形用容器4内の露出面全体に液状生地を層状形成する生地供給部1と、成形用容器4を収容して液状生地を加熱して焼成する生地焼成部2と、生地供給部1及び生地焼成部2の間で成形用容器4を搬送する搬送部3とを備え、生地供給部1において液状生地を成形用容器4に層状形成した後搬送部3により成形用容器4を生地焼成部2に搬送し、生地焼成部2において液状生地を焼成した後搬送部3により成形用容器4を生地供給部1に搬送する動作を交互に複数回繰り返して層状食品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の生地を複数積層した層状食品の製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バウムクーヘン、ロールケーキ等の層状食品が製造販売されている。バウムクーヘンは、芯棒の周囲に液状の生地を均等に付着させて、芯棒を回転させながらガスや電気による熱源により生地を焼成させ、焼成した生地の周囲に新たに液状の生地を均等に付着させて焼成を行う、というように、液状の生地の付着工程及びその焼成工程を繰り返すことで、円筒状の多層食品であるバウムクーヘンを製造している(特許文献1及び2)。
【0003】
また、ロールケーキは、板状の生地を焼成した後、焼成した生地の上面に生クリーム等の食材を付与して生地を巻き取るように丸めて円柱状に形成することで製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3686671号公報
【特許文献2】特開平5−244855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバウムクーヘンの製造方法では、芯棒を回転させながら焼成した生地全体に液状の生地を均等に掛けなければならず、熟練した技術が必要であった。そのため、生地を収容した容器内に芯棒を浸漬させて生地を付着させることも提案されている。
【0006】
しかしながら、こうしたこれまでのバウムクーヘン等の層状食品の製造方法では、積層する各層の層厚の調整が難しく、また異なる種類の食材を組み合せて積層することを容易に行うことができなかった。さらに、層の間にチョコチップ等の粒状食材を挟んで製造することができず、様々な食材と組み合わせて製造する場合に制約がある。
【0007】
ロールケーキの製造では、焼成した生地表面に様々な食材を載置することで、生地の間に様々な食材を挟んだ層状食品を製造することができるが、バウムクーヘンのように薄層で多層構造にすることができない。
【0008】
そこで、本発明は、層厚の調整を簡単に行うことができ様々な食材の組合せが容易な層状食品製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る層状食品製造装置は、上方が開口した成形用容器と、前記成形用容器の上方から液状生地を供給して前記成形用容器内の露出面全体に液状生地を層状形成する生地供給部と、液状生地が層状形成された前記成形用容器を収容して液状生地を加熱して焼成する生地焼成部と、前記生地供給部及び前記生地焼成部の間で前記成形用容器を搬送する搬送部と、前記生地供給部において液状生地を前記成形用容器に層状形成した後前記搬送部により前記成形用容器を前記生地焼成部に搬送する供給動作及び前記生地焼成部において液状生地を焼成した後前記搬送部により前記成形用容器を前記生地供給部に搬送する焼成動作を交互に複数回繰り返すように各部を制御する制御部とを備えていることを特徴とする。さらに、前記生地供給部は、前記成形用容器を所定の移動方向に移動させる移動手段と、前記成形用容器の移動領域の上方に配置されて当該移動領域の幅方向に所定の細幅で開口するノズルから液状生地を下方に向かって吐出する吐出手段と、前記移動手段の上下方向の位置を調整する位置調整手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記生地焼成部は、前記成形用容器を内部に出入りさせる移送手段と、前記移送手段により移送された前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする。さらに、層状形成された液状生地の上面に固形状の食材を供給する食材供給手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る層状食品製造方法は、上方が開口した成形用容器を所定方向に移動させながら成形用容器の上方から液状生地を供給して成形用容器内の露出面全体に液状生地を層状形成する生地供給工程と、液状生地が層状形成された成形用容器を収容して液状生地を加熱して焼成する生地焼成工程と、前記生地供給工程及び前記生地焼成工程を交互に複数回繰り返し行うように成形用容器を往復搬送して焼成した生地を積層するように成形する成形工程とを備えていることを特徴とする。さらに、前記生地供給工程において、層状形成された前記液状生地の上面に固形状の食材を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のような構成を有することで、成形用容器内の露出面全体に液状生地を層状形成するように生地を供給して層状形成した生地を焼成し、成形用容器を搬送して生地の供給動作及び焼成動作を交互に繰り返すので、焼成した生地を薄板状に複数積層した層状食品を自動的に効率よく製造することができる。
【0012】
そして、生地を供給して層状形成する際に生地の供給量を調整して生地の層厚を容易に調整することができ、薄板状の生地を多数積層した外観及び食感の優れた層状食品を製造することが可能となる。また、生地の間に別の固形状の食材を添加したり、異なる種類の液状生地を供給することも簡単に行うことができ、様々な食材を組み合わせた層状食品を容易に製造することができる。
【0013】
また、成形用容器を所定方向に移動させながら、成形用容器の移動領域の幅方向に所定の細幅で開口するノズルから液状生地を吐出して成形用容器内に供給すれば、液状生地を露出面全体にほぼ均等に層状形成することができる。そして、ノズルからの吐出量を調整することで、層状形成した液状生地の層厚を容易に調整することが可能となる。
【0014】
また、生地供給部の移動手段の上下位置を調整することで、成形用容器内の焼成された生地の層が増加して厚さが厚くなった場合でも、移動手段上の成形用容器の露出面とノズルとの間の間隔が一定になるように成形用容器の位置を設定することができ、ノズルから吐出する液状生地がほぼ均等な層状となるように安定して供給することが可能となる。
【0015】
また、生地焼成部に、成形用容器を内部に出入りさせる移送手段及び成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段を備えることで、搬送された成形用容器を自動的に焼成位置に設定して生地を最適の焼成状態に仕上げることができ、安定した品質の層状食品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態に関する概略平面図である。
【図3】生地供給部における細幅ノズルの周辺部分に関する側面図である。
【図4】細幅ノズルに関する概略断面図である。
【図5】移送機構及び設定機構に関する概略平面図及び概略側面図である。
【図6】生地供給部、生地焼成部及び搬送部を動作制御する概略ブロック構成図である。
【図7】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図8】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図9】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図10】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図11】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図12】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図13】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図14】生地供給部、生地焼成部及び搬送部の動作説明図である。
【図15】製造された層状食品を示す斜視図である。
【図16】粒状の固形食材を含む層状食品を示す斜視図である。
【図17】本実施形態の変形例に関する概略正面図である。
【図18】4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。
【図19】成形用容器を一方向に搬送して層状食品を製造する場合の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略正面図であり、図2は、その概略平面図である。層状食品製造装置は、生地供給部1、生地焼成部2及び搬送部3を備えている。そして、トレイ状の成形用容器4に生地供給部1で液状生地Dを供給し、液状生地Dが供給された成形用容器4を搬送部3により生地焼成部2に搬送し、供給された液状生地Dを生地焼成部2で焼成し、生地が焼成された成形用容器4を搬送部3により生地供給部1に搬送する−といった生地の供給動作及び焼成動作を繰り返すことで層状食品が製造されるようになる。
【0019】
生地供給部1は、機体10に、液状生地を収容するホッパ11、ホッパ11内の液状生地Dを圧送する送給ポンプ12、送給ポンプ12から圧送される液状生地Dを供給又は停止させる開閉弁13及び開閉弁13を通過した液状生地Dを下方に吐出する細幅ノズル14が設けられている。また、細幅ノズル14の下方には、成形用容器4を左右に移動させる搬送コンベヤ15が支持棒16を介して機体10に取り付けられている。
【0020】
搬送コンベヤ15は、一対の搬送ローラ15aに無端状の搬送ベルト15bが張設されており、搬送モータ15cにより一方の搬送ローラ15aを回転駆動することで、搬送ベルト15b上に載置された成形用容器4を左右に移動させる。
【0021】
搬送コンベヤ15を支持する支持棒16は、機体10内に配置された位置調整手段であるサーボモータ等の駆動装置により上下動するように設定されており、支持棒16を上下動することで搬送コンベヤ15の上下位置を調整することができる。
【0022】
図3は、生地供給部1における細幅ノズル14の周辺部分に関する側面図である。細幅ノズル14は、成形用容器4の移動方向と直交する方向に設けられており、細幅ノズル14の吐出口は、成形用容器4の移動領域の幅方向の全幅にわたって細幅で直線状に開口している。
【0023】
図4は、細幅ノズル14に関する概略断面図である。細幅ノズル14は、一対の板状体14a及び14bを所定の隙間を空けて開閉弁13に取り付けられて構成されており、板状体14a及び14bの間に直線状の吐出口が形成されている。
【0024】
開閉弁13は、送給ポンプ12の送出口に接続されるとともに細幅ノズル14の上端開口に接続されて送給ポンプ12から細幅ノズル14に液状生地Dを流通させる流通路が形成された支持体13aを備えている。支持体13aの内部には、液状生地Dの流通路に円筒状の空隙が形成されており、その空隙に円柱状の弁体13bが水密で回転可能に嵌合している。弁体13bは、細幅ノズル14の長手方向に沿って延設されており、全長にわたって長手方向と直交する方向に貫通する開口13cが形成されている。
【0025】
弁体13bの一端部は、支持体13aから長手方向に突出しており、リンク部材13dに一端部に固定されている。リンク部材13dの他端部は、エアシリンダ13fの駆動ロッド13eに回動可能に接続されている。図4(a)では、駆動ロッド13eが右方向に移動してリンク部材13dが弁体13bを中心に反時計回りに回転して設定されている。この状態では、弁体13bの開口13cが支持体13a内の流通路から外れた状態にセットされて液状生地Dの流通が遮断された状態となっている。図4(b)では、駆動ロッド13eが左方向に移動してリンク部材13dが弁体13bを中心に時計回りに回転して設定されている。この状態では、弁体13bの開口13cが支持体13a内の流通路と一致した状態にセットされて液状生地Dが細幅ノズル14に供給されるようになる。細幅ノズル14に供給された液状生地Dは、板状体14a及び14bの間の狭い空間を隙間なく流通していき、細幅ノズル14の下方の開口から全長にわたってほぼ均等に吐出されるようになる。また、板状体14a及び14bは、間隔が調整可能なように取付位置を移動可能にネジ等により固定されている。そのため、板状体14a及び14bの間隔を調整して液状生地の吐出量を調整することで、成形用容器4内に層状形成する層厚を容易に調整することができる。
【0026】
こうして、エアシリンダ13fを駆動制御することで、弁体13bを回転させて液状生地Dの流通路を開閉し、細幅ノズル14から吐出される液状生地Dの吐出制御を行う。
【0027】
生地焼成部2は、筐体20内の上下にガス又は電気による加熱装置が配置されてオーブンとして機能するようになっている。筐体20の前面側に形成された開口部には上下動可能に扉体21が設けられており、扉体21は、上下動装置22により上下動される。上下動装置22は、チェーン22aの下端を扉体21の上部に取り付け、チェーン22aの上端を接続した取付板22bをエアシリンダ22cにより進退駆動することで、扉体21を上下動させて開口部を開閉する。
【0028】
搬送部3は、搬送コンベヤ15の搬送方向に沿って延設されたチェーンコンベヤを備えている。両側に平行に配置された一対の搬送チェーン30が一対の搬送プーリ30aに張設されており、一方の搬送プーリ30aを搬送モータ30bにより回転駆動することで、搬送チェーン30に移送された成形用容器4を左右に往復搬送する。
【0029】
搬送部3内の搬送チェーン30の間には、成形用容器4を生地焼成部2及び搬送チェーン30の間で移送する移送手段である移送機構5が設置されている。移送機構5は、搬送チェーン30により搬送された成形用容器4を生地焼成部2内に送入したり、生地焼成部2から送出された成形用容器4を搬送チェーン30に移送して搬送可能な状態に設定する。
【0030】
図5は、移送機構5及び生地焼成部2内の位置設定手段である設定機構6に関する概略平面図(図5(a))及び概略側面図(図5(b))である。移送機構5は、生地焼成部2への移送方向に配列された3対の移送ローラ50a〜50cを備えており、各移送ローラが固定された回転軸には駆動プーリ51a〜51cが取り付けられている。各駆動プーリは、駆動モータ52に伝達ベルト53を介して連結されており、駆動モータ52を回転駆動することにより各移送ローラが回転し、各移送ローラ上に載置された成形用容器4を移送方向に移動させることができる。移送機構5は、生地焼成部2内に配置された設定機構6に対して筺体20の前面側の開口部25を挟んで対向配置されている。
【0031】
移送ローラ50a〜50c及び駆動モータ52は、支持フレーム54に取り付けられており、支持フレーム54は、エアシリンダ55により上下動されるようになっている。成形用容器4の移送動作を行わない場合には、支持フレーム54は下降して待機位置に設定される。待機位置では、移送ローラ50a〜50cが搬送チェーン30よりも低い位置に設定されており、搬送チェーン30による成形用容器4の搬送動作に対する障害となることはない。また、後述するように、移送ローラ50a〜50cが上昇した場合には、移送ローラ50a及び50bの間を搬送チェーン30が通過するようになるが、移送ローラ50a及び50bの間に張架された伝達ベルト53は別の設定ローラにより下方に引き下げられており、伝達ベルト53が搬送チェーン30に接触することはない。
【0032】
成形用容器4の移送動作では、搬送チェーン30により移送機構5の上方の所定位置に成形用容器4が設置された後、エアシリンダ55を駆動して支持フレーム54を上昇させ、成形用容器4の底面に移送ローラ50a〜50cが接触して持ち上げる移送位置に設定する。移送位置では、成形用容器4が搬送チェーン30から離間しており、搬送チェーン30が移送動作の障害となることはない。そして、駆動モータ52を回転駆動させて移送ローラ50a〜50cを回転させて成形用容器4を移送方向に移動させる。
【0033】
生地焼成部2から成形用容器4が送出される場合には、送出前にエアシリンダ55を駆動して支持フレーム54を持ち上げて移送位置に設定しておく。そして、送出された成形用容器4の底面に移送ローラ50a〜50cが接触し、移送ローラ50a〜50cを駆動モータ52により回転駆動して成形用容器4を搬送チェーン30上に移送する。そして、エアシリンダ55を駆動して支持フレーム54を下降させて待機位置に戻すことで、成形用容器4が搬送チェーン30上に載置されるようになる。
【0034】
設定機構6は、生地焼成部2の筺体20内の上部加熱装置23及び下部加熱装置24の間に配置され、載置板60及び移送コンベヤ61を備えている。載置板60は、移送コンベヤ61の一対の無端状の移送チェーン61aの間に設けられており、載置板60の下面には支持ロッド62が固定されている。そして、支持ロッド62は、駆動モータ63によりラック−ピニオン機構を介して上下動されるようになっている。移送コンベヤ61は、筺体20の前面側の開口部25に向かって一対の移送チェーン61aが配列されており、各移送チェーン61aは一対の移送プーリ61bに張設されている。移送チェーン61aの両端部の移送プーリ61bは、それぞれ回転軸61cに固定されており、一方の回転軸61cの端部には傘歯車が取り付けられている。回転軸61cに取り付けられた傘歯車は、下方に延設された駆動ロッド64の上端に取り付けられた傘歯車に噛み合っている。駆動ロッド64は、その下端が駆動モータ65に固定されており、駆動モータ65を回転駆動することで、移送プーリ61bが回転するようになっている。
【0035】
成形用容器4を筺体20内に移送する場合、移送機構5の移送ローラ50a〜50cの回転により成形用容器4が送入され、成形用容器4の端部が移送チェーン61aに乗り移ることで、移送コンベヤ61により筺体20内に成形用容器4が収容される。そして、成形用容器4が移送コンベヤ61により載置板60の上方に移動して停止した後、駆動モータ63を回転駆動して支持ロッド62を上昇させ載置板60を成形用容器4の底面に接触させて持ち上げ、上部加熱装置23の下方の焼成位置に成形用容器4を設定する。
【0036】
生地を焼成後成形用容器4を筺体20から送出する場合には、駆動モータ63を回転駆動して支持ロッド62を下降させて成形用容器4を載置板60とともに下方に移動し、成形用容器4を移送チェーン61に載置した状態にする。そして、駆動モータ65を回転駆動して移送チェーン61により成形用容器4を開口部25に向かって移動させ、予め上昇させておいた移送機構5の移送ローラ50a〜50cに成形用容器4の端部が乗り移ることで、移送機構5に成形用容器4が送出される。
【0037】
以上のように移送機構5及び設定機構6を動作させることで、生地焼成部2と搬送部3との間において成形用容器4を自動的に往復移動させることができる。なお、生地焼成部2を層状食品を焼成する専用機として使用する場合には、上部加熱装置23を低い位置に配置して移送コンベヤ61の移動動作のみで焼成位置に設定するようにしてもよい。その場合には、載置板60、支持ロッド62及び駆動モータ63を省略することができる。
【0038】
また、上述した生地焼成部2では、層状食品以外の食品を焼成することもでき、例えば、ロールケーキの生地を焼成したり、栗まんじゅうを焼成する際には下方の位置で焼成すればよく、汎用機として使用することも可能である。
【0039】
図6は、上述した生地供給部1、生地焼成部2及び搬送部3を動作制御する概略ブロック構成図であり、図7から図14は、その動作説明図である。制御部100は、生地供給制御部101及び生地焼成制御部102を備えている。
【0040】
生地供給制御部101は、成形用容器4を載置した搬送コンベヤ15を搬送制御して細幅ノズル14の下方を移動させながら、開閉弁13を制御して細幅ノズル14から液状生地Dを吐出させ、成形用容器4内の底面又は焼成した生地の露出面全体に液状生地Dをほぼ均等な厚さで層状形成する(図7〜図9参照)。その際に、搬送コンベヤ15を上昇させて細幅ノズル14の吐出口と液状生地Dを層状形成する露出面との間の間隔が所定の間隔となるように位置制御を行う。
【0041】
細幅ノズル14の吐出口と露出面との間の間隔は10mm程度空けておくことが望ましく、このように間隔を空けておくことで、細幅ノズル14から吐出された液状生地がほぼ均等な厚みで下方に垂れて露出面に付着していくようになる。そのため、露出面全体にほぼ均等な厚さで液状生地が層状形成されるようになる。
【0042】
したがって、成形用容器4内に最初に液状生地Dを層状形成する場合には、成形用容器4の底面との間の間隔が所定の間隔となるように搬送コンベヤ15を上昇させて位置決めし、焼成した生地の層数が増加するに従い生地の露出面の高さに応じて搬送コンベヤ15の上昇位置が低くなるように位置決めして、細幅ノズル14の吐出口と露出面との間の間隔が常に一定となるように制御する。搬送コンベヤ15の上昇位置の位置決め制御は、予め生地の層数に対応した位置データを設定しておき、設定された位置データに基づいてサーボモータ等の駆動装置を制御して搬送コンベヤ15の位置決めを行えばよい。
【0043】
こうした搬送コンベヤ15の上下方向の位置制御を行うことで、液状生地Dを露出面全体にほぼ均等に層状形成して安定した層構造を形成することができる。
【0044】
次に、液状生地Dを層状形成した成形用容器4を搬送部3に向かって移動させる。搬送コンベヤ15を上昇位置から元の位置に戻して搬送制御を行い、成形用容器4の先端部が位置検知センサ70により検知されると、その検知信号に基づいて搬送部3の搬送チェーン30の搬送動作を開始するように制御する(図10参照)。そして、成形用容器4が搬送部3の搬送チェーン30に乗り移り、成形用容器4の後端部を位置検知センサ70が検知すると、搬送コンベヤ15の搬送を停止する。
【0045】
生地焼成制御部102は、搬送部3を搬送制御して、搬送コンベヤ15から乗り移った成形用容器4を移送機構5の上方に移動させる。そして、位置検知センサ71が成形用容器4の端部を検知すると、その検知信号に基づいて搬送部3の搬送を停止する(図11参照)。停止位置では、成形用容器4の底面が移送機構5に対向配置されている。
【0046】
そして、移送機構5を駆動制御して移送ローラ50a〜50cを上昇させて成形用容器4を持ち上げて搬送チェーン30から離間させる。その際に、上下動装置22を駆動制御して扉体21を上昇させて開口部25を開いた状態に設定する。
【0047】
次に、移送ローラ50a〜50cを回転駆動して成形用容器4を生地焼成部2内に送入し、設定機構6の移送コンベヤ61を駆動して成形用容器4を生地焼成部2内に収容する(図12参照)。その際に、上下動装置22を駆動制御して扉体21を下降させて開口部25を閉じた状態に設定する。移送コンベヤ61により成形用容器4を移動させて載置板60の上方に位置決めして移送コンベヤ61の動作を停止した後成形用容器4を載置板60とともに上昇させるように駆動制御して焼成位置に設定する。また、移送機構5は、下降させて、一旦待機位置に戻す。
【0048】
生地焼成制御部102は、上部加熱装置23及び下部加熱装置24を加熱制御して生地焼成部2内の温度を自動的に調整するようになっており、成形用容器4を焼成位置に設定後筺体内を所定の焼成温度に調整し、成形用容器4内に層状形成した層状の液状生地Dを焼成する。所定の焼成時間が経過した後、成形用容器4を載置板60とともに下降させるように駆動制御し、成形用容器4を移送コンベヤ61に載置する。そして、上下動装置22を駆動制御して扉体21を上昇させて開口部25を開いた状態に設定し、移送機構5を上昇させて移送位置にセットするように制御する。次に、移送コンベヤ61及び移送ローラ50a〜50cを制御して、成形用容器4を開口部25に向かって送出するとともに移送機構5に乗り移るように移動させる(図13参照)。
【0049】
位置検知センサ71が成形用容器4の端部を検知すると、その検知信号に基づいて移送ローラ50a〜50cの駆動を停止し、移送機構5を下降させて待機位置に戻す。そして、移送機構5の下降により搬送チェーン30に載置された成形用容器4を搬送コンベヤ15に向かって搬送を開始し、成形用容器4の先端部が位置検知センサ70により検知されると、その検知信号に基づいて搬送コンベヤ15の搬送を開始する(図14参照)。成形用容器4が搬送コンベヤ15に乗り移ってその後端部が位置検知センサ70により検知されると、搬送部3の搬送を停止する。
【0050】
次に、生地供給部101により、図7に示すように、成形用容器4が乗り移った搬送コンベヤ15を上昇させて位置制御を行うとともに成形用容器4を移動させて焼成した生地の露出面に液状生地Dを層状形成するように供給制御する。
【0051】
以上説明した生地供給制御部101による生地供給動作及び生地焼成制御部102による生地焼成動作を繰り返して行うことで、成形用容器4内に薄板状に焼成した生地を複数層積層した層状食品を製造することができる。
【0052】
図15は、製造された層状食品Mを示す斜視図である。層状食品Mは複数の焼成生地M1が薄層で積層されている。各層は、途切れることなく厚さがほぼ揃った状態に仕上げられている。
【0053】
上述した生地供給部1において、従来のバームクーヘンと同様の生地を用いて液状生地を1mm〜2mmの厚さで層状形成して順次生地焼成部2において焼成して、厚さ3mm〜5mmとなった焼成生地を10層から12層積層した層状食品を得ることができた。そして、得られた層状食品は、従来のバームクーヘンと同様にふっくらとした食感に仕上げることができた。
【0054】
また、生地供給部1と生地焼成部2との間に別の固形食材を供給する食材供給部8を設けてもよい。食材供給部8は、固形食材を貯留するホッパ80及び所定量の固形食材を成形用容器4の移動に合わせて落下させる公知の供給機構81を備えている。液状生地を層状形成した成形用容器4内に食材供給機構81から固形食材を液状生地の上面全体にほぼ均等に分布するように落下させれば、固形食材を含む層状食品を簡単に製造することができる。図16は、粒状の固形食材Nを含む層状食品M’を示す斜視図である。固形食材Nを層状食品M’全体に偏ることなくほぼ均等に分布させることができるので、切断した場合でもほぼ同じ量の固形食材Nを切断された層状食品内に含ませることが可能となる。
【0055】
固形食材としては、小豆、甘納豆、果物の果肉、ドライフルーツ、ナッツ、アーモンド、チョコチップ、チーズ、栗そぼろ、ゴマ、ワカメ、桜の花等食材として使用されるもので加熱しても問題ないものはすべて用いることができ、様々な食材を含むバラエティに富んだ層状食品を製造することが可能となる。
【0056】
また、生地供給部1において、生地を投入するホッパ11、ポンプ12、開閉弁13及び細幅ノズル14を複数セット設けておき、異なる種類の液状生地を各ホッパに投入して、異なる種類の生地を積層した層状食品を製造することもできる。例えば、抹茶、コーヒー、チョコレート等をそれぞれ混合した液状生地を用いて、生地の種類を変えながら順次積層していけば、一種類の生地を用いた場合に比べて色々な味わいを楽しめる層状食品を製造することが可能となる。
【0057】
図17は、本実施形態の変形例に関する概略平面図である。この例では、生地焼成部2において成形用容器4を2枚収容可能に構成している。生地焼成部2では、上述した実施形態に示す加熱装置及び設定機構を2セット設け、搬送部3の搬送方向に沿って各セットを配列している。各セットの設定機構6A及び6Bに対向して搬送部3には、移送機構5A及び5Bが配置されている。
【0058】
生地供給部1では、2枚の成形用容器4のうち1枚目をセットし、液状生地を層状形成して搬送部3に移送した後2枚目をセットして液状生地を層状形成する。その間に、1枚目は移送機構5Aから設定機構6Aに移送されて生地焼成部2内に収容される。2枚目についても搬送部3に移送され、移送機構5Bから設定機構6Bに移送されて生地焼成部2内に収容される。2枚の成形用容器4の液状生地の焼成が行われ、1枚目の成形用容器4が移送機構5A及び設定機構6Aにより移送されて搬送部3から生地供給部1に戻り、液状生地を層状形成した後再び生地焼成部2に移送される。1枚目の成形用容器4が生地焼成部2内に収容された後、2枚目の成形用容器4が生地焼成部2から移送されて搬送部3から生地供給部1に戻り、液状生地を層状形成した後再び生地焼成部2に移送される。
【0059】
以上のような生地供給動作及び生地焼成動作を成形用容器毎に交互に繰り返して層状食品を製造する。このように2枚の成形用容器を用いることで生産効率を高めることができる。
【0060】
図18は、4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。生地焼成部2には、2つの設定機構6A及び6Bが配列されており、設定機構6Aには、移送コンベヤを延設して2つの載置板600及び601が移送方向に配列されている。同様に、設定機構6Bにも、移送コンベヤを延設して2つの載置板602及び603が移送方向に配列されている。また、生地供給部1の搬送コンベヤ15は、2枚の成形用容器4に液状生地が供給可能なように搬送方向の長さが長くなるように延設されている。
【0061】
搬送コンベヤ15に載置された1枚目の成形用容器4に液状生地を供給した後搬送コンベヤ15を搬送して位置4Aまで移動しながら、2枚目の成形用容器4に液状生地を供給し、液状生地を層状形成した状態の2枚の成形用容器4が位置4A及び4Bに配置される。そして、2枚の成形用容器4を搬送部3に搬送し、移送機構5Aから設定機構6Aに順次移送する。載置板600及び601に対向する位置に2枚の成形用容器4を位置決めし、生地を焼成する。同様に、移送機構6Bにも2枚の成形用容器4を移送して載置板602及び603に対向する位置に位置決めして焼成する。
【0062】
このように、2枚単位で成形用容器4を移動して生地供給動作及び生地焼成動作を行なうことで、4枚の成形用容器4を用いて層状食品を効率よく製造することができる。同様に、設定機構を移送コンベヤの移送方向に増設していくことで、6枚及び8枚といった4枚以上の成形用容器にも対応することができる。
【0063】
図19は、成形用容器4を一方向に搬送して層状食品を製造する場合の概略平面図である。この例では、生地供給部1において2枚の成形用容器4に順次液状生地を層状形成して搬送部3Aにより矢印の方向に搬送され、各成形用容器4は、移送機構5A及び5Bからそれぞれ設定機構6A及び6Bに移送され、生地焼成部2内に収容される。そして、生地が焼成された後移送機構5C及び5Dに向かって移送されて搬送部3Bにより矢印方向に搬送される。その後、搬送部3Bから搬送部3Cに移送されて再び搬送部3Aに戻り、生地供給部1により液状生地が供給されるようになる。
【0064】
こうして、成形用容器4を搬送部3A〜3Cにより循環させながら生地供給動作及び生地焼成動作を行なって、成形用容器4内に焼成した生地を積層して層状食品を製造することできる。この例では、生地焼成部2を移送方向に延設して複数枚の成形用容器を収容可能とすることで、成形用容器を常時循環させながら層状食品を製造することができ、生産効率を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 生地供給部
2 生地焼成部
3 搬送部
4 成形用容器
5 移送機構
6 設定機構
8 食材供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した成形用容器と、前記成形用容器の上方から液状生地を供給して前記成形用容器内の露出面全体に液状生地を層状形成する生地供給部と、液状生地が層状形成された前記成形用容器を収容して液状生地を加熱して焼成する生地焼成部と、前記生地供給部及び前記生地焼成部の間で前記成形用容器を搬送する搬送部と、前記生地供給部において液状生地を前記成形用容器に層状形成した後前記搬送部により前記成形用容器を前記生地焼成部に搬送する供給動作及び前記生地焼成部において液状生地を焼成した後前記搬送部により前記成形用容器を前記生地供給部に搬送する焼成動作を交互に複数回繰り返すように各部を制御する制御部とを備えていることを特徴とする層状食品製造装置。
【請求項2】
前記生地供給部は、前記成形用容器を所定の移動方向に移動させる移動手段と、前記成形用容器の移動領域の上方に配置されて当該移動領域の幅方向に所定の細幅で開口するノズルから液状生地を下方に向かって吐出する吐出手段と、前記移動手段の上下方向の位置を調整する位置調整手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の層状食品製造装置。
【請求項3】
前記生地焼成部は、前記成形用容器を内部に出入りさせる移送手段と、前記移送手段により移送された前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の層状食品製造装置。
【請求項4】
層状形成された液状生地の上面に固形状の食材を供給する食材供給手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の層状食品製造装置。
【請求項5】
上方が開口した成形用容器を所定方向に移動させながら成形用容器の上方から液状生地を供給して成形用容器内の露出面全体に液状生地を層状形成する生地供給工程と、液状生地が層状形成された成形用容器を収容して液状生地を加熱して焼成する生地焼成工程と、前記生地供給工程及び前記生地焼成工程を交互に複数回繰り返し行うように成形用容器を往復搬送して焼成した生地を積層するように成形する成形工程とを備えていることを特徴とする層状食品製造方法。
【請求項6】
前記生地供給工程において、層状形成された前記液状生地の上面に固形状の食材を供給することを特徴とする請求項5に記載の層状食品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−115087(P2011−115087A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274841(P2009−274841)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【特許番号】特許第4455674号(P4455674)
【特許公報発行日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(390013941)株式会社コバード (30)
【Fターム(参考)】