説明

岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石

【課題】本発明は、岩石の採掘によって生じる岩石のダスト、すなわち未利用資源の岩ズリと循環型資源を推進するため、都市ゴミの溶融施設から排出される溶融物を粉砕したゴミ溶融スラグを利用した、岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石を提供する。
【解決手段】
岩ズリおよびゴミ溶融スラグをそれぞれ粒径250μm以下に微粉砕する。
微粉砕した岩ズリとゴミ溶融スラグを75重量%:25重量%、50重量%:50重量%、25重量%:75重量%の3種類の配合割合で混合し、これらの配合割合の混合物に対して2〜5重量%のセメントを安定材として混合する。
これらを一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練した材料を球状成形型加圧装置により所定の球状に成形し、一定期間(28日)養生後、高温1115〜1160℃で5〜180分間焼成する。これにより、30mm程度の球状の人工石が作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石の採掘によって生じる岩石のダスト、すなわち未利用資源の岩ズリと循環型資源を推進するため、都市ゴミの溶融施設から排出される溶融物を粉砕したゴミ溶融スラグを利用した、岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石に関する。
【背景技術】
【0002】
秋田県男鹿市の岩石は、採掘に伴って、岩石のダスト、いわゆる岩ズリ(粒径5mm以下)が副産物として産出される。しかもこの岩ズリは、ポーラスで吸水膨張性も高いため、土木・建築資材の用途には皆無の状態である。岩ズリは岩石の採掘によって生じるため、年間かなりの量が堆積されているのが現状である。しかしながら、秋田県の地場産業を活性化するためには、豊富な岩石の採掘に伴って生じる岩ズリの有効利用を検討することが是非とも必要である。
また、ゴミ溶融スラグは、秋田市の一般家庭ゴミや事業所のゴミを1800℃〜1900℃の高温で溶融し、再資源化したもので、年間約13,700〜15,260t排出されるが、このうち資源として再利用される量は、主にコンクリートの二次製品など、年間1,000t程度であり、他の用途として用いられることはほぼ皆無の状態である。
従来、都市ゴミの溶融施設から排出される溶融物を粉砕したゴミ溶融スラグを利用した、微粉砕したゴミ溶融スラグと消石灰の混合による路盤改良材が知られている(特許文献1を参照)。この公知技術では、都市ゴミの溶融施設から排出される溶融物を急冷凝固した後、微粉砕した粒径425〜10μmの範囲のゴミ溶融スラグ50重量%と土材料50重量%とからなる混合土に消石灰5〜15重量%添加した路盤改良材である。
その他に、焼却灰を主原料として用い,これに添加剤として消石灰を投入した後,灰溶融炉で焼却灰を燃焼して溶融スラグ化し,これが結晶化して砕石としての製造方法(特許文献2を参照)やCaO分含有廃材および/または鉄鋼製造プロセスで発生するスラグを主原料として炭酸反応により塊状の人工石材を製造する方法(特許文献3を参照)さらに製造コストを押し上げることなく,安定的に高炉スラグ硫黄成分を除去し,所望の着色を得ることができる着色岩石の製造方法が知られている(特許文献4を参照)。
一般にコンクリートに使用される粗骨材の品質は、吸水率が大きいほど骨材自身の膨張が生じ、結果としてコンクリートの劣化が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3936992号公報
【特許文献2】特開2000−302496号公報
【特許文献3】特開2000−203903号公報
【特許文献4】特開平6−329452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、岩石の採掘によって生じる岩石のダスト、すなわち粉砕した岩ズリと都市ゴミの溶融施設から排出される溶融物を粉砕したゴミ溶融スラグを利用した、岩ズリとゴミ溶融スラグの混合によって、硬質で吸水率の小さい人工石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石の製造方法は、岩ズリとゴミ溶融スラグをそれぞれ微粉砕し、これらにセメントを安定材として添加し、一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練材料を球状成形型加圧装置に入れて球状にし、一定期間養生後、焼成して人工石とするものである。
本発明の岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石は、微粉砕した粒径250μm以下の岩ズリ25重量%と微粉砕した粒径250μm以下のゴミ溶融スラグとからなる混合材料に、セメント2〜5重量%の範囲で添加し、一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練材料を球状成形型加圧装置により球状に成形し、一定期間養生後、焼成したものである。
本発明の岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石は、前記球状成形型加圧装置により粒径30mm程度の球状にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の岩ズリとゴミ溶融スラグを所定の配合割合に対して、セメント2〜5重量%の範囲で添加して焼成した人工石(粒径30mm程度)は、通常の石材と比べての密度が小さく、吸水率も小さいため、十分製品化が期待できる。
とりわけ,岩ズリ25重量%,ゴミ溶融スラグ75重量%の配合割合で,セメント2〜5重量%添加で焼成した人工石は、スラグの含有量割合が多いため、全体が緻密に再結晶化し、かつ硬度に富むため、今後製品化・事業展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の球状成形型加圧装置の概略正面図である。
【図2】本発明の球状成形型加圧装置の概略右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石の製造工程を説明する。
岩ズリおよびゴミ溶融スラグをそれぞれ粒径250μm以下に微粉砕する。
微粉砕した岩ズリとゴミ溶融スラグを75重量%:25重量%、50重量%:50重量%、25重量%:75重量%の3種類の配合割合で混合し、これらの配合割合の混合物に対して2〜5重量%のセメントを安定材として混合する。
これらを一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練した材料を球状成形型加圧装置により所定の球状に成形し、一定期間(28日)養生後、高温1115〜1160℃で5〜180分間焼成する。
これにより、30mm程度の球状の人工石が作製される。この人工石は全体が緻密に再結晶化し、かつ硬度に富むものである。
この発明では一般の土木・建築材料としての粗骨材を主眼としている。
【0009】
【表1】

【0010】
図1、図2に本発明の球状成形型加圧装置の概略図を示す。
本発明の球状成形型加圧装置は、空気圧等の流体により作動されるシリンダー1と、該シリンダー1の作動により往復動されるピストンロッド2と、該ピストンロッド2の先端に固定された加圧板3と、該加圧板3により内部の混練材料Mがペレット状に押出成形される成形容器4と、該成形容器4から押し出されたペレット状の混練材料Sを移送するU字状断面の傾斜シュート5と、該傾斜シュート5の先端に上下に配置されたU溝成形主ローラ6及びU溝成形従ローラ7から構成される。
なお、8は機台、9は傾斜調節台、10は空気吹き出し口、Mは混練材料、Sはペレット状混練材料である。
【0011】
次に、本発明の球状成形型加圧装置の操作動作を添付図面に基づいて以下に説明する。
微粉砕した岩ズリとゴミ溶融スラグを75重量%:25重量%、50重量%:50重量%、25重量%:75重量%の配合割合で混合し、この配合割合の混合物に対して2〜5重量%のセメントを安定材として混合し、これらを一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練材料Mを成形容器4に充填する。
シリンダー1を作動させてピストンロッド2を伸長させて加圧板3により前記混練材料Mを押し出して前記成形容器4の下部からペレット状に混練材料Sを傾斜シュート5へ供給する。
前記ペレット状混練材料Sは前記傾斜シュート5を空気吹き出し口10からのエアーにより転動落下し、上下に配置されたU溝成形主ローラ6及びU溝成形従ローラ7間に至り、前記U溝成形主ローラ6及びU溝成形従ローラ7間に挟まれて加圧され粒径30mmの球状に成形される。
【0012】
岩ズリ
使用した岩ズリは秋田県男鹿市寒風山の採石場で採取したものでその物理的性質および化学成分を表2、表3に示す。
【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【0015】
ゴミ溶融スラグ
使用したスラグは秋田市総合環境センターの溶融施設からの排出されたゴミ溶融
スラグであり、物理的性質および化学成分を表4、表5に示す。またスラグ単体による溶出量試験と含有量試験の結果は、いずれも土壌環境基準を満たしている。
【0016】
【表4】

【0017】
【表5】

【0018】
ゴミ溶融スラグの潜在水硬性
二酸化珪素(SiO)が多量に含有し、かつガラス質90%以上含有しており、水またはアルカリ水溶液で反応して水硬性を発揮する。微粉砕によって比表面積が増大、より潜在水硬性が増加する。
【0019】
人工石の作製
1.人工石の材料
・岩ズリを250μmに微粉砕
・ゴミ溶融スラグを250μmに微粉砕
2.実験条件
1)微粉砕した岩ズリとゴミ溶融スラグの配合
・岩ズリ75重量%、ゴミ溶融スラグ25重量%(乾燥重量比)
・岩ズリ50重量%、ゴミ溶融スラグ50重量%(乾燥重量比)
・岩ズリ25重量%、ゴミ溶融スラグ75重量%(乾燥重量比)
2)上記1)の3種類の配合条件下でのセメントの配合割合
・2%、5%の2種類
3.上記2)条件で作製した混合材料の焼成温度と焼成時間
・岩ズリ75重量%、ゴミ溶融スラグ25重量%は、1115〜1145℃で120〜180分
・岩ズリ50重量%、ゴミ溶融スラグ50重量%は、1120〜1145℃で40〜100分
・岩ズリ25重量%、ゴミ溶融スラグ75重量%は、1135〜1160℃で5〜25分
4.電気炉の燃焼の温度段階と燃焼時間
ステップ1:300℃まで2時間燃焼
ステップ2:300℃〜600℃まで2時間
ステップ3:600℃〜900℃まで2時間
ステップ4:900℃〜上記の配合割合による焼成温度まで2時間
ステップ5:ステップ4の焼成温度℃到達後の燃焼時間は、上記の配合割合に依存する。
【0020】
【表6】

セメント2〜5%の範囲で添加して焼成した人工石(粒径30mm程度)は、通常の石材と比べての密度が小さく、吸水率も小さいため、十分製品化が期待できる。
とりわけ、岩ズリ25重量%とゴミ溶融スラグ75重量%の配合割合で、セメント2〜5重量%の添加で焼成した人工石は、スラグの含有量割合が多いため、全体が緻密に再結晶化し、かつ硬度に富むため、今後製品化・事業展開が可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 シリンダー
2 ピストンロッド
3 加圧板
4 成形容器
5 傾斜シュート
6 U溝成形主ローラ
7 U溝成形従ローラ
8 機台
9 傾斜調節台
10 空気吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩ズリとゴミ溶融スラグを微粉砕し、これらにセメントを安定材として添加し、一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練材料を球状成形型加圧装置に入れて球状にし、一定期間養生後、焼成して人工石とすることを特徴とする岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石の製造方法。
【請求項2】
微粉砕した岩ズリと微粉砕したゴミ溶融スラグからなる混合材料に、セメント2〜5重量%の範囲で添加し、一定の水量のもとで練り混ぜ、この混練材料を球状成形型加圧装置により球状に成形し、一定期間養生後、焼成したことを特徴とする岩ズリとゴミ溶融スラグの混合による人工石。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180064(P2010−180064A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22127(P2009−22127)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(501465285)広洋産業 株式会社 (4)
【Fターム(参考)】