説明

巡視支援システム

【課題】ベテラン巡視技術員が永年の間に蓄積した暗黙知を何等かの手段で顕在化して、後輩巡視員のスキルアップに利用し、巡視の精度を向上するための巡視支援システムを提供する。
【解決手段】ベテラン巡視技術員が蓄積したノウハウ等の暗黙知をデータベース化して、巡視対象設備/装置近傍にワンセグ等の微弱無線信号送信手段から送信するとともに、巡視技術者が携行する携帯電話機等の携帯端末で受信表示して、巡視の支援を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巡視支援システムに関し、詳細には、ベテラン巡視技術員の豊富な経験によって培われた暗黙知を有効に活用するのに好適な巡視支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力発電所、変電所や大規模プラント等においては、各種の監視装置や遠隔制御装置が整えられ、各設備や装置の状況を監視しながら、異常状態の発生をいち早く発見して、適切な処置を行うことによって事故発生の未然防止に努めている。また、遠隔監視の他、各設備を巡回して、実際に各設備や装置の状態を目視確認して異常の有無を点検する巡視点検も極めて重要な作業である。即ち、巡視点検によれば、単に、遠隔監視による画像監視やメータの数値確認のみならず、可動部分の振動、回転音、温度等の夫々の情報を総合的に勘案して、微かな異常を感じ取って大事故を未然に防止することが可能である。
このような巡視点検を支援する手段として、従来から種々の施策が提案されている。例えば特許文献1には「現場コミュニケーション/サポートシステム」として、中央管理本部に、サーバ、パソコン、カメラ、マイク、スピーカ等を備えた管理端末装置を配置し、各点検現場の作業員が携行する無線端末やPDA(Personal Digital Assistance)を介して、中央管理本部の管理端末とコミュニケーションを図りながら、現場の点検を支援するシステムが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、「機器設備の保守診断システム」が提案されている。これは、各保全対象機器・設備において、点検部位がどの程度の寸法であるかの判断を、ジャッジゲージを用いて行うように構成し、点検作業員は保全部位の寸法情報をジャッジゲージに基づいて判別すると共に、携行する携帯端末から判別したジャッジゲージ情報を管理センタ装置に送信するように構成したもので、管理センタでは、受信したジャッジゲージ情報に対応する保全部位の測定寸法を算出し、その結果に基づいて点検作業員に保守メンテナンス作業等の指示を行うものである。
特許文献3には、「設備点検支援システム」が提案されている。これは、設備点検関連情報を蓄積したデータベースを備えたホストコンピュータと、点検作業員が携行する携帯端通信末と、ホストコンピュータから情報を受信可能な顧客端末とを含んで構成されたものであり、ホストコンピュータから、作業員が携行する携帯通信端末に保守点検に必要な情報を送信すると、作業員は、この指示に従って点検を実施する設備に付されたバーコード等の識別情報を携帯端末で読み取ってホストコンピュータに返送し、ホストコンピュータは、受信した識別信号に基づいて、具体的な点検作業指示情報を携帯通信端末に送信し、作業員はこの指示に従って、点検した結果を、携帯数新端末を介してホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、受信した情報をメモリに蓄積するとともに、顧客端末に、関連する情報を送信するように構成したものである。
【0004】
更に、特許文献4には、「保守支援システムおよび方法」が開示されている。これは、作業員が安全のために被る保安用ヘルメットに取り付けたビデオカメラと携帯端末を携行する作業員と、保守支援管理サーバとをネットワークを介して相互に接続し、作業員は保守作業の所定工程毎に進捗状況をカメラで撮影して、保守支援管理サーバに送信し、保守支援管理サーバからは作業員の携帯端末に各種の支援情報を送信するように構成したものである。
また、特許文献5の「遠隔監視支援システムおよび遠隔監視支援システム用携帯端末装置」には、巡視点検における現場の映像データを携帯端末の映像入力手段によって撮影し、その情報を統括管理サーバに送信して利用するものが提案されている。
【特許文献1】特開2007−80010公報
【特許文献2】特開2006−266816公報
【特許文献3】特開2006−48584公報
【特許文献4】特開2005−216137公報
【特許文献5】特開2005−242830公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の手段はいずれも巡視支援システムとしては有用ではあるが、巡視点検精度や異常検知能力は、巡視点検技術員の技量に依存するものであって、永年経験を積んだベテラン技術員の巡視能力には遠く及ばないものであった。
即ち、永年このような巡視点検業務に携わったベテラン技術員には、豊富な経験に培われた「勘」とも云える、異常感知能力が備わっていることが経験的に知られている。
このような、ベテラン技術員に備わった経験等に基づく知識は、容易に伝承不可能な「暗黙知」であることが多く、文章等のドキュメントとして表現することが困難な場合が多い。特に、同一設備の巡視を永年に亘って担当したベテラン技術員の暗黙知は極めて貴重なものである。従来から、このような暗黙知を伝承するためには、経験の浅い技術員にベテラン技術員が巡視に同行しながら、実際の巡視現場におけるOJT(On-the-Job Training)を通じて、後輩に伝承する他に手段はないのが現状であった。しかし、近年においては、人件費削減や、多くのベテラン技術員の定年退職等によって、OJTによる伝承も困難な状況となっている。
本発明は、このような従来の巡視点検における事情に鑑みてなされたものであって、ドキュメント化が困難なベテラン技術員等の暗黙知を含む、過去の経験によって得られた豊富な巡視支援情報を有用に活用可能な、巡視支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の巡視支援システムでは、巡視点検支援情報を記録したメモリを含む巡視支援サーバと、巡視対象設備/装置近傍に配置した微弱無線信号送信手段と、少なくとも前記微弱無線信号送信手段から送信される信号を受信する受信手段、表示手段、操作手段、を含む携帯端末と、を備えた巡視支援システムにおいて、前記巡視点検支援情報が、前記巡視対象設備/装置に関して、過去の巡視経験に基づく具体的な注目事項、各種状況に応じたチェック事項を、階層的に段階を経て指示するアドバイス情報を含み、前記巡視対象設備/装置近傍に配置した微弱無線信号送信手段から、当該巡視対象設備/装置に関する前記巡視点検支援情報を、無線手段によって送信し、前記携帯端末では、前記微弱無線信号送信手段から送信される前記巡視点検支援情報を受信し、表示するように構成したことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の巡視支援システムにおいて、前記微弱無線信号送信手段が、ワンセグ信号を送信するものであって、前記携帯端末が前記ワンセグ信号を受信する機能をもったものであることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の巡視支援システムにおいて、前記巡視対象設備/装置近傍に当該設備/装置を識別するための符号、番号等が表示された識別情報表示手段が備えられ、前記携帯端末は前記識別情報が入力されると、前記微弱無線信号送信手段から送信される信号のなかから前記識別情報に対応する所要のチャネル信号を受信する機能を備えたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、前記携帯端末が、表示されたメニュー画面の中から所要のものを選択する機能と、選択されたメニューを示す信号を送信する機能とを備え、前記巡視支援サーバは、前記携帯端末が送信した選択メニュー信号を受信して、該当するメニューに対応する巡視点検支援情報又は、更に所要のメニューを選択させるための情報を送出することを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、前記巡視点検支援情報を記録したメモリが着脱式メモリであって、前記巡視支援サーバ、又は、前記微弱無線信号送信手段、又は、前記巡視対象設備/装置近傍に配置したメモリ装着手段に前記メモリを装着することによって、前記巡視支援サーバが、当該メモリに記憶された内容に基づいてアドバイス情報を、携帯端末に提供することを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、上記携帯端末、もしくは上記微弱無線信号送信手段に付加したマイクロホンから取り込んだ巡視技術者の音声信号、又は、携帯端末もしくは微弱無線信号送信手段に付加した操作手段を介して入力された情報から、上記巡視支援サーバにおいてキーワードを抽出し、メモリに蓄積した巡視点検支援情報からキーワードに関連する情報を選択して、微弱電波信号送信手段を介して携帯端末に提供するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述したように構成するので、夫々次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載の発明は、巡視点検支援情報を記録したメモリを含む巡視支援サーバと、微弱無線信号送信手段と、この微弱無線信号を受信する受信手段、表示手段、操作手段、を含む携帯端末からなる巡視支援システムにおいて、上記巡視点検支援情報として、ベテラン技術員等が過去の巡視経験から得た具体的な注目事項、各種状況に応じたチェック事項等の暗黙知に基づいて、階層的に段階を経て指示するアドバイス情報を構築し、この情報を、巡視対象設備/装置近傍に配置した微弱無線信号送信手段から無線手段によって送信する。そして、巡視技術員が携行する携帯端末により、微弱無線信号送信手段から送信される巡視点検支援情報を受信し、表示するように構成したので、永年蓄積された豊富な経験に基づく巡視情報により、ベテラン技術員と同レベルの巡視点検が可能となる。ドキュメント化が困難な情報については、ベテラン技術員が自ら、口述する音声を、デジタルデータ化して利用することもできる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の巡視支援システムにおいて、微弱無線信号送信手段として、ワンセグ信号を送信し、巡視技術員が携行する携帯端末として、ワンセグ信号を受信する機能を備えたので、近年、サービスが開始された携帯電話によるワンセグ放送によるデジタルTVと同様に、画像や音声による情報受信・表示による巡視ガイダンスを受けることが可能となる。なお、携帯端末としては、市販の携帯電話機の他、ワンセグ放送を受信可能なものであれば如何様な形態の端末装置であっても構わない。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の巡視支援システムにおいて、巡視対象設備/装置近傍にその設備/装置を識別するための符号、番号等が表示された識別情報表示手段が備え、携帯端末から上記識別情報を入力することによって、送信される微弱無線信号のなかから識別情報に対応する所要のチャネル信号を自動的に選択受信する機能を備えたので、多数のワンセグ放送チャネルにより種々の情報を送信しておき、上記識別情報により、該当するチャネルを自動的に選択すれば、巡視技術員が、各巡視対象設備/装置について放送しているチャネルを知らなくても、自動的に目的とするチャネルを受信して必要な巡視ガイダンスを聴取することが可能となる。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、上記携帯端末が、表示されたメニュー画面の中から所要のものを選択し、選択されたメニューを示す信号を送信する機能と、を備えるとともに、巡視支援サーバは、上記選択メニュー信号を受信して、該当するメニューに対応する巡視点検支援情報又は、更に所要のメニューを選択させるための情報を送出するように構成したので、巡視技術員は、現場の設備や装置の様子を見ながら、必要な巡視ガイダンスをメニューから選択して聴取可能となる。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、巡視点検支援情報を記録したメモリが着脱式のメモリカードとし、このメモリカードの内容を巡視支援サーバに読み込ませ、メモリに記憶された内容に基づいて巡視アドバイス情報を、携帯端末に提供するように構成したので、同一巡視設備や装置を、異なる項目について別々の巡視員が巡視点検を行う際に、各巡視技術員が自分の点検内容について情報を記録したメモリカードを持参し、点検対象設備や装置の近傍に配置した装置にメモリカードを装着した上で、上述したように、携帯端末を使用しながら巡視点検を実行することができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、携帯端末、又は、微弱無線信号送信手段に付加したマイクロホンにより巡視技術者の音声信号を入力し、音声分析して抽出したキーワード、又は、携帯端末や微弱無線信号送信手段に付加した操作手段から入力された情報から抽出したキーワード、に関連する巡視点検支援情報をメモリから選択して、携帯端末に提供するように構成したので、巡視技術員が現場の設備や装置を観察しながら、その状況を音声や操作手段を操作して、巡視支援サーバに伝達すれば、それらに関連する巡視点検支援情報やアドバイスを、携帯端末に表示したメニューを選択することなく迅速に得ることができる。また、緊急時のキーワードを予め決めておけば、非常事態等を確実に、しかも迅速に伝達する上で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明の一実施形態例に係る巡視支援システムを示す概要ブロック図である。この例に示す巡視支援システムは、主制御装置(CPU)1と、後述するような巡視支援に必要な各種の巡視点検支援情報を記憶したメモリ(MEM)2と、通信回線に各種データを送出し、又は受信する通信インターフェース(IF)3と、を備えた巡視支援サーバ4と、通信回線5を介して接続され、巡視対象設備/装置(図示省略)の近傍に配置された微弱電波送信部(微弱無線信号送信手段)6−1乃至6−nと、この微弱電波送信部6から送信される電波を受信可能であって、表示部と制御部とを備えた携帯端末7と、から構成されている。
この例において、巡視対象設備/装置(図示省略)の近傍に配置される微弱電波送信部(微弱無線信号送信手段)6−1乃至6−nとして、例えば、近年サービスが開始されている、地上デジタルテレビジョン放送の携帯電話向けサービスである、所謂「ワンセグ」のテレビ放送システムを利用することを考える。
【0014】
「ワンセグ」では、周知のように、UHF(Ultra High Frequency)の470MHz〜770MHz帯の300MHz幅を6MHz幅毎に50のチャネル(13ch〜62ch)に分割したうちの何れか一チャネルを使用して放送が行われるが、これに呼応して、近年、「ワンセグ」の電波を受信して、テレビ放送や各種データ放送を視聴できるワンセグ携帯電話機が提供されている。
一方、法律上、一定電力以下の微弱な電波利用に際しては、無線局等の免許を必要としないので、局部的なゾーンでの情報伝達手段として利用されることが多い。「ワンセグ」周波数帯においては、3mの距離における電界強度が35μV/m以下であれば免許を要しない。
そこで、図1に示す実施例において、巡視対象設備/装置の近傍に配置する微弱電波送信部(微弱無線信号送信手段)6−1乃至6−nから、「ワンセグ」電波を送信し、携帯端末7として市販されている携帯電話機を利用するように構成している。なお、「ワンセグ」を利用した微弱電波情報配信システムを、富士通株式会社が「スポットキャスト」として提案しているので、本発明においても利用することが可能であろう。また携帯端末7として、市販の携帯電話機を利用することが可能であるが、第一の実施例では、携帯電話機を単なる「ワンセグ」受信機として利用する場合を説明する。
【0015】
ところで、この実施例の特徴の一つは、メモリ2に記憶された情報として、ベテラン巡視技術員等の経験に基づく暗黙知を含むようにした点にある。上述したように、永年に亘って、例えば発電設備に関する業務に携わった熟練技術者は、極めて多くの暗黙知を会得していることが多い。そこで、これらベテラン技術員が、後輩技術員にOJTにて暗黙知を伝授するようなニュアンスで、巡視技術員に設備/装置の各種状況に対応したアドバイスを提供するように、できる限り多くの状況を想定して、巡視点検支援用のアドバイス情報を構築し、メモリ2に蓄積しておく。
アドバイスとしては、例えば、オイル漏れや錆の発生しやすい箇所の指摘や、見落とし易い隠れた箇所の点検指示等が考えられる。また、火力発電所等では、燃料の残量点検も極めて重要であるが、燃料の残量監視メータの点検に留まらず、燃料タンクを軽く叩いて、その発生音によって燃料の残量を確認し、計器類の故障等を発見することもベテラン技術者ならではの技であり、これらに類した種々のノウハウをアドバイスとして利用する。
このように、実際の巡視現場の設備/装置を目前に(仮想)した状況であれば、永年巡視作業を経験したベテラン技術員しか知ることのできない情報を、例えば、ベテラン技術員が実際に言葉として語る音声をメモリに記録する等により、暗黙知を顕在化することが可能である。この音声アドバイスを、各巡視対象設備/装置毎にデータ化しておき、巡視技術員が個々の設備/装置を巡視する際に携行する携帯端末に送信し、音声に再生して聴取できるようにすれば、ベテラン技術員が随行しながらOJTを行うに等しいアドバイスが可能となる。
【0016】
更に、単なる音声データに留まらず、その内容をジャンル毎に分類し、データ化し、階層化した巡視点検支援情報として構築しておけば、各設備/装置の状況に対応して、より具体的、且つ、詳細にアドバイスできる。
そこで、図1に示した巡視支援サーバ4のメモリ2には、上述したようにベテラン技術員等から得た、各設備/装置に関する巡視点検支援情報を、ジャンル毎に分類し、データ化し、階層化した巡視点検支援情報として記憶しておき、インターフェースIF3と通信回線5を介して、各巡視対象設備/装置近傍に配置した微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−nに供給する。このように構成すれば、巡視技術員が、例えば、市販されているワンセグ受信機能付きの携帯電話機を携帯端末7として携行すれば、微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−nから送信される電波を所要の電界強度以上のレベルで受信できる領域において電波を受信し、画面に表示することが可能である。しかも、微弱電波は局部的な領域でのみ受信可能であるので、所定の距離離れた領域で、繰り返し同一チャネル周波数の電波を利用できることになる。従って、仮に、「ワンセグ」チャネルとして想定されている50チャネルをそのまま利用できると仮定すれば、微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−n夫々において、50種類の情報を送信することができることになる。
【0017】
そこで、チャネル制御が最も簡単な例として、50チャネル夫々に異なる情報を分担させて送信する場合を説明する。
図2は、本発明における携帯端末7の表示画面の一例を示す図である。この例では、上述したように巡視点検支援情報を階層化した場合を想定し、図に示されたch数1,2,3,・・・は(実際の場合と異なっているが)、説明を簡単にするために便宜上付したものである。同図2(a)はチャネル1(以下「ch1」の如く表記する)により送信されるメイン・メニュー画面を示したものである。ch1に限らず各ch信号は巡視支援サーバ4から微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−nに送られ、ワンセグ電波として送信されている。携帯端末(携帯電話機)7を携行する巡視技術員は、夫々の巡視点検対象設備/装置近傍に位置すると、図2(a)が画面に表示されるので、巡視技術者は、今点検しようとする設備/装置に対応するch数を見つけて、そのチャネルに移行する。
例えば、設備Bを点検する場合は、図2(a)のメイン・メニュー画面の「設備B→ch3」に従って、ch3を受信するように携帯端末7を操作する。その結果、図(b)に示すようにch3について、巡視情報が表示され、更に、詳細な項目X、Y、・・・についての巡視点検支援情報を放送しているch数が表示されるので、巡視技術員は必要に応じて、chを選べば、必要なガイダンス等を受信表示することができる。
このように構成し、制御する例では、巡視支援サーバ4の制御は、単に、同一情報を各微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−nに送出すればよく、制御が簡単となる。従って、小規模なシステムや、単一の変電所内の巡視支援システムとして好適であろう。
【0018】
なお、小規模システムや、単一プラント等での巡視支援システムとして、図3に示すように変形することもできる。図3に示す例では、巡視支援サーバ4におけるメモリ2に代えて、着脱式のメモリカードを使用する。即ち、図3において、図1と異なるところは、巡視支援サーバ4にメモリカード装着部8を設け、例えば、巡視技術員が持参するメモリカード9をメモリ装着部8に挿入する。このメモリカード9には、上述した図1、図2と同じような巡視点検支援情報が記録されているので、同様に使用することができる。この例のような着脱式にすることによって、例えば、巡視点検項目が、機械系の技術者による機械的な点検、電気系技術者による電気的な点検、あるいは化学系技術者による化学的点検等、夫々の専門分野毎に異なる技術員が別個に巡視する場合には、夫々の巡視後術員が担当する巡視点検支援情報を記録したメモリカードを持参するような使用方法が考えられる。
【0019】
上記の実施例では、携帯端末が単に受信機能のみを有する場合を説明したが、携帯電話機のように送信機能を備えたものである場合は、相互通信による効率的な巡視支援システムを構築可能である。
例えば、図4に示すように、携帯端末7として送信機能をもった携帯電話機を使用し、携帯電話回線の基地局10を介して、携帯端末7から巡視支援サーバ4に情報を伝達するように構成することができる。そして、巡視対象設備/装置又は、その近傍に配置した微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6−1乃至6−n夫々に、それらを識別する番号や符号等の識別表示プレート11−1乃至11−n(識別情報表示手段)を備えておき、巡視技術員は携行する携帯電話機を操作して、巡視支援サーバを示す、予め決められた電話番号、又は、予め定めたURL(Uniform Resource Locator)やメールアドレスに、上記識別表示プレート11に表記された番号等とともに、必要とするガイダンスを示す情報を送信する。
【0020】
巡視支援サーバ4はこの識別情報を受信すると、識別情報から、何処の微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)であるかを識別して、該当する巡視対象設備/装置に関する巡視点検支援情報を特定し、識別した微弱電波送信部6のアドレスを付して送出するとともに、微弱電波送信部6からワンセグ電波を送信して携帯端末に伝達する。この方法によれば、図1に示した実施例のように、一方的に各微弱電波送信部6から繰り返し、同一情報を送信する必要がなく、携帯端末7では、必要な情報をリアルタイムで視聴可能となる。また、相互通信機能によって、巡視支援サーバ4と携帯端末7とがコミュニケーションを図ることができるので、携帯端末からの質問に、巡視支援サーバから応えるような制御も可能である。このとき、携帯端末7からマイクロホンで巡視技術者の音声を取り込み、これを受信した巡視支援サーバ4において音声分析して、キーワードを抽出し、該当する巡視点検支援情報を返送するような使い方も可能であろう。なお、巡視技術者から巡視支援サーバ側にメッセージを伝える方法としては、携帯電話機から公衆通信回線を介して行う場合の他、例えば、携帯端末7と微弱電波送信部6との夫々に、赤外線、音波、電磁波等の近距離通信手段を備えて、通信回線5を介して情報伝達を行うことも可能であろう。
このように、携帯端末7と巡視支援サーバ4との間の相互通信機能を備えれば、微弱電波送信部(「ワンセグ」電波送信部)6から送信する電波のチャネルとしては、特定のchのみを使用することもできる。即ち、巡視支援サーバ4では、巡視技術員が携行する携帯端末7から必要な巡視点検支援情報が何であるかを知ることができるので、その情報を選択して送出すればよく、また、必要に応じてメニュー画面を表示するデータを送り、その画面から巡視技術員が選択したメニュー情報を得て、更なる情報を送信することを繰返すことにより、階層的に構築した巡視点検支援情報を順次伝達することが可能である。
なお、携帯電話回線では、ワンセグにおける双方向データ通信として、CDMA2000 1x EV-DO(CDMA2000 1x Evolution Data Only:EV-DO)の周波数(800MHz)が使用されるので、法規上許容される場合は、その周波数を使用することも考えられる。
【0021】
図5は、本発明に基づく大規模な巡視支援システムの一実施例を示すブロック図であり、この例では、中央巡視支援センタとしての巡視支援サーバ4と、多数の巡視対象設備/装置領域12−1乃至12−nとが、公衆通信回線やインターネット網13を介して接続された例を示している。この例でも、携帯端末7としては、上述した携帯電話機やその他の通信端末が利用可能である。このように広域的な規模で本発明を実施すれば、例えば、各地に点在する発電所や変電所に対する巡視支援を一括してシステム化することが可能であり、各地で行う巡視結果を、他の巡視支援に反映して、事故の未然防止等の巡視効果を高めることが可能である。
例えば、各地で使用している同種類の設備や装置の不具合が一カ所で発見された場合、その情報をいち早く、他の巡視対象領域に伝達することによって、同様の事故を未然に防止することも可能となる。これらの情報は必ずしも、ベテラン巡視技術員の暗黙知を生かすものではないが、副次的な機能として得られる効果であろう。
このように、本発明において構築する巡視点検支援情報は、継続的に、新しい情報を随時追加更新することによって、ノウハウとして蓄積され、より一層巡視効果を高める上で役に立つものとなるであろう。なお、巡視技術員側から、巡視支援サーバ側に情報を伝達する手段としては、微弱電波送信部6にマイクロホンやメッセージ入力手段を備えて、それらを介して、巡視支援サーバに情報を伝達する手段を用いれば、携帯端末に送信機能を必ずしも必要としないので、携帯電話の電波が届かない地域での利用に都合がよいであろう。
【0022】
以上、本発明の一例について説明したが、この例に限ることなく他のシステムへの適用や、種々変形が可能であることは云うまでもない。
例えば、微弱電波によるワンセグ電波送信に限らず、他の周波数帯の電波を使用すること、あるいは、正式な無線局としての免許を得て、所要の電力にて電波を送信するシステムであってもよい。また、従来技術の特許文献として提示した各公報に開示された手段を併用することも、機能的な巡視支援システムを構築する上で有用であろう。例えば、特許文献4に開示されているように、巡視技術員が着用するヘルメットにカメラを取り付け、撮影した巡視対象設備や装置の映像を、巡視支援サーバに伝送し、その情報から抽出した各種情報に基づいて、必要な巡視点検支援情報を、巡視技術員の携帯端末に供給することもできる。
あるいは、ベテラン技術員のノウハウを、アニメーションとして表現することや、コンピュータグラフィック画面(CG画面)として表わして、巡視対象設備/装置に関連して提供することも、ベテラン技術員の暗黙知を顕在化する手段として有用であろう。また、巡視点検支援情報としては、上述したもの以外にも、前回の巡視結果や、過去の巡視結果を纏めた情報、故障の頻度や経歴、過去のメンテナンス経歴等を付加することもできる。更に、微弱電波送信部6からの送信電波が、巡視対象設備/装置の全域に届かない場合は、法規に適合する範囲であれば、巡視通路に漏洩同軸ケーブルを敷設することや、電波の反射板を設置する等の補助手段を講じることもできる。
【0023】
また、以上説明した巡視支援システムにおける、情報提供処理手順を、コンピュータが制御可能なOSに従ってプログラミングすることにより、そのOSを備えたコンピュータであれば同じ処理方法により制御することができるようにして、そのプログラムや巡視支援情報を、提供することもできる。更に、調整手順を盛り込んだプログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録し、この記録媒体を持ち運び可能にすることにより、何処でもプログラムを稼動することができる。なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る巡視支援システムの一例を示す概要ブロック図。
【図2】本発明の巡視支援システムにおける携帯端末の表示画面の一例を示す図であり、(a)はメイン・メニュー画面を示す図、(b)は特定設備/装置に対する巡視支援画面を示す図。
【図3】本発明に係る巡視支援システムの変形実施例を示す概要ブロック図。
【図4】本発明に係る巡視支援システムの他の変形実施例を示す概要ブロック図。
【図5】本発明に係る巡視支援システムの他の変形実施例を示す概要ブロック図。
【符号の説明】
【0025】
1 主制御装置(CPU)、2 メモリ(MEM)、3 通信インターフェース(IF)、4 巡視支援サーバ、5 通信回線、6、6−1乃至6−n 微弱電波送信部(微弱無線信号送信手段)、7 携帯端末、8 メモリカード装着装置、9 メモリカード、10 携帯電話基地局、11、11−1乃至11−n 識別表示プレート、12、12−1乃至12−n 巡視対象設備/装置領域、13 公衆通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巡視点検支援情報を記録したメモリを含む巡視支援サーバと、
巡視対象設備/装置近傍に配置した微弱無線信号送信手段と、
少なくとも前記微弱無線信号送信手段から送信される信号を受信する受信手段、表示手段、操作手段を含む携帯端末と、を備えた巡視支援システムにおいて、
前記巡視点検支援情報が、前記巡視対象設備/装置に関して、過去の巡視経験に基づく具体的な注目事項、各種状況に応じたチェック事項を、段階的に指示するアドバイス情報を含み、
前記微弱無線信号送信手段から、当該巡視対象設備/装置に関する前記巡視点検支援情報を無線手段によって送信し、
前記携帯端末では、前記微弱無線信号送信手段から送信される前記巡視点検支援情報を受信し、表示するように構成したことを特徴とする巡視支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の巡視支援システムにおいて、前記微弱無線信号送信手段が、ワンセグ信号を送信するものであって、前記携帯端末が前記ワンセグ信号を受信する機能をもったものであることを特徴とする巡視支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の巡視支援システムにおいて、前記巡視対象設備/装置近傍に当該設備/装置を識別するための符号、番号等が表示された識別情報表示手段が備えられ、前記携帯端末は前記識別情報が入力されると、前記微弱無線信号送信手段から送信される信号のなかから前記識別情報に対応する所要のチャネル信号を受信する機能を備えたことを特徴とする巡視支援システム。
【請求項4】
請求項1乃至3何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、前記携帯端末が、表示されたメニュー画面の中から所要のものを選択する機能と、選択されたメニューを示す信号を送信する機能とを備え、前記巡視支援サーバは、前記携帯端末が送信した選択メニュー信号を受信して、該当するメニューに対応する巡視点検支援情報又は、更に所要のメニューを選択させるための情報を送出することを特徴とする巡視支援システム。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載の巡視支援システムにおいて、前記巡視点検支援情報を記録したメモリが着脱式メモリであって、前記巡視支援サーバ、又は、前記微弱無線信号送信手段、又は、前記巡視対象設備/装置近傍に配置したメモリ装着手段に前記メモリを装着することによって、前記巡視支援サーバが、当該メモリに記憶された内容に基づいてアドバイス情報を、携帯端末に提供することを特徴とする巡視支援システム。
【請求項6】
前記携帯端末、もしくは前記微弱無線信号送信手段に付加したマイクロホンから取り込んだ巡視技術者の音声信号、又は、携帯端末もしくは前記微弱無線信号送信手段に付加した操作手段を介して入力された情報から、前記巡視支援サーバにおいてキーワードを抽出し、前記メモリに蓄積した巡視点検支援情報から前記キーワードに関連する情報を選択して、前記微弱電波信号送信手段を介して前記携帯端末に提供するように構成したことを特徴とする請求項1乃至5何れか一項に記載の巡視支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−70173(P2009−70173A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238307(P2007−238307)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】