説明

工作機械用割出し回転テーブル

【課題】ブレーキ付の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、クランプ部材を強制的に解放して、クランプ、又はアンクランプの動作を確実に、かつ応答速度を速くする。
【解決手段】環状ピストン42をフリーにすることにより、ピストン戻しバネ54が環状ピストン42の環状溝50を押すことになる。環状ピストン42が後方に後退し、フローティングパッド引込み板62は、フローティングパッド60の底面64に接触し、フローティングパッド60を後方に駆動する。フローティングパッド60の後方への駆動により、フローティングパッド60は強制的にブレーキディスク66から引き離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械に用いられる旋回テーブル、割出し円テーブル等と呼ばれている工作機械用割出し回転テーブルに関し、特に、回転軸を所定の回転角度位置で、正確に位置決めできる割出し装置を有する工作機械用割出し回転テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用の回転テーブル割出し装置は、駆動モータで、円テーブル連結されている軸を駆動して、所望の角度位置に正確に位置決めしてクランプしなければならない。また、この駆動モータをDD(Direct Drive)モータを使用し、この位置決めクランプ機構を、摩擦ブレーキに加えて、電磁ブレーキを採用したものも知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、クランプ機構の摩擦ブレーキは、例えば、回転軸に一体的に設けられたブレーキディスクと、このブレーキディスクを押圧するクランプ部材とを備え、空気圧で作動するピストンにより、このクランプ部材を駆動してブレーキディスクを加圧して、所定位置角度位置に円テーブルをクランプする円テーブル装置は知られている(特許文献2)。この円テーブル装置は、可動側のクランプ部材を駆動してブレーキディスクに加圧してクランプした後、クランプ部材を解放して元の位置に戻すためにリターンばねを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−125640号公報
【特許文献2】特許第3713190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このリターンばねにより、クランプ部材を解放して元の位置に戻すことは、あまり好ましくはない。その理由は、リターンばねの劣化等による金属疲労等からその作動が不安定になったり、又、潤滑不良等の機械的なトラブルで、クランプ部材の作動が遅れたりすることがあるからである。このために、リターンばねのバネ定数を大きくする等の対策も行われているが、機械設計の観点から限界がある。
【0006】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
本発明の目的は、クランプ部材を強制的に解放して、クランプ、又はアンクランプの動作を確実にした割出し装置を有する工作機械用割出し回転テーブルを提供することにある。
本発明の他の目的は、クランプ部材を強制的に解放して、クランプ、又はアンクランプ動作の応答速度を速くした割出し装置を有する工作機械用割出し回転テーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の工作機械用割出し回転テーブルは、
本体(2)と、
前記本体(2)に回転自在に軸受で支持されたスピンドル(4)と、
前記本体(2)に固定されるモータ(12)用のステータ(21)と、
前記ステータ(21)に対向して前記スピンドル(4)に固定された前記モータ用のロータ(13)と、
前記スピンドル(4)に固定された面板(3)と、
前記モータ(12)で駆動され、割出しされた前記面板(3)の停止角度位置を、前記ロータ(13)に固定されたブレーキディスク(66)にフローテングパッド(60)を押圧して、前記ロータ(13)を前記本体(2)にクランプするためのクランプ装置(39,70)と
を備えた工作機械用の割出し回転テーブルにおいて、
前記クランプ装置(39,70)は、
流体圧で駆動されるピストン(42)及びブレーキハウジング(30)に形成され前記ピストン(42)を収容するシリンダ室(40)とからなるシンリダ駆動手段(39)と、
前記ピストン(42)の前進による力を増力して前記フローテングパッド(60)を駆動するために増力機構(70)と、
前記ピストンの後退により前記クランプを解除するときに前記フローテングパッド(60)に係合して、前記フローテングパッド(60)を強制的にアンクランプ状態にするためのフローティングパッド解除手段と
からなる。
【0008】
本発明2の工作機械用割出し回転テーブルは、本発明1の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記フローティングパッド(60)は、その中央部に形成された円筒形の穴(61)と該穴内に延びる受け板(64)とを有し、
前記フローティングパッド解除手段は、前記ピストン(42)に一体に固定され、前記フローティングパッド(60)の円筒形の穴(61)内にあって、前記ピストン(42)の後退時に前記フローテイングパッド(60)の受け板(64)に係合可能なフローティングパット引き込み板(62)を備えている
ことを特徴とする。
【0009】
本発明3の工作機械用割出し回転テーブルは、本発明1又は2の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記シンリダ駆動手段(39)は、前記ピストン(42)を作動させて前記フローティングパッド(60)を押圧してクランプした後に、アンクランプ状態にするときに、前記ピストン(42)を前記押圧前の位置に戻すためのバネ(54)を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明4の工作機械用割出し回転テーブルは、本発明1又は2の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記増力機構(70)は、
前記ピストン(42)の前部の外周面に形成された傾斜角度(α)の第1テーパーカム面(72)と、
ブレーキハウジング(30)の前部の内周面に形成された、前記第1テーパーカム面の傾斜角度(α)より大きい傾斜角度(β)の第2テーパーカム面(71)と、
前記第1テーパー面(72)及び前記第2テーパーカム面(71)により形成される周状凹部の全周に亘って配置され前記第1及び第2のテーパーカム面と前記フローティングパッド(60)の後面に接触する複数のボール(75)と
からなることを特徴とする
【0011】
本発明5の工作機械用割出し回転テーブルは、本発明4の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記第1テーパーカム面(72)の前側部分に前記傾斜角度(α)より大きい傾斜角度(γ)の予備的テーパー面(73)が付加的に形成されており、前記ボールは前記ピストン(42)の前進移動の最初の段階で前記予備的テーパー面(73)に接触し、また前記ピストン(42)の前進移動のその後の段階で前記第1テーパーカム面(72)に接触し、それによって適切なばね力において前記ピストンのストロークを短くするようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明6の工作機械用割出し回転テーブルは、本発明3の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記バネ(50)は、波状の圧縮板バネであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の割出し装置を有する工作機械用割出し回転テーブルは、クランプ部材を強制的に解放して、そのクランプ、又はアンクランプ動作を確実に、かつ速くできるので、割出し位置の精度が良く、しかも確実に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の工作機械用割出し回転テーブルの実施の形態であり、その外観図である。
【図2】図2は、図1をII−II線で切断した断面図である。
【図3】図3は、本体2の後端部の断面拡大図である。
【図4】増力機構70の部分拡大図であり、(A)は環状ピストン42の移動の前段階を、(B)は環状ピストン42の移動の後段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、2に示すものは、本発明による工作機械用割出し回転テーブルの一実施形態であり、図1は外観を示し、図2は図1をII−II線で切断した断面図である。本発明の工作機械用割出し回転テーブル1は、本体(housing)2と、工作機械で加工されるワークが取り付けられる面板(face plate)3と、本体2に対し回転可能に支持された支持軸としてのスピンドル4等からなる。本体2の下部には、工作機械のテーブルの所定位置にボルト、治具等で固定可能な固定足5を有している。
【0016】
本体2内のステーター固定フランジ15は、主軸受(例えば、ローラベアリング)11によって、スピンドル4を回転可能に支持している。スピンドル4の略中央部の外周には、DDモータ12を構成するロータ13が挿入され固定されている。この固定は、複数のボルト14により固定されており、このボルト14はスピンドル4の中心線cを中心とする外周位置で、等ピッチ角度間隔に配置されている。更に、スピンドル4の前端面には、面板3がこれに等ピッチ角度間隔に形成された貫通孔に挿入されたボルト(図示せず)によって固定されている。
【0017】
スピンドル4の前部の外周16には、主軸受11の内輪17が挿入され固定されている。また、本体(housing)2の内孔5には、環状の部材であるステーター固定フランジ15がボルト(図示せず)により固定されている。このステーター固定フランジ15の最前方の内孔の内周面18には、主軸受11の外輪19が挿入され固定されている。従って、スピンドル4の前部は、主軸受11を介してステーター固定フランジ15に回転自在に支持されている。ステーター固定フランジ15の後部には内孔が形成されており、この内孔の内周面20には、コイル(図示せず)を有しDDモータ12を構成するステータ21が挿入され固定されている。
【0018】
前述したロータ13及びステータ21は、DDモータ12を構成する。ステータ21の外周面には、螺旋状の冷却溝22が形成されている。冷却溝22に冷媒油、水等の冷却媒体が冷却ユニット(図示せず)から流されているので、ステータ22が一定温度以上にならないように、冷却することができる。ステーター固定フランジ15の前端面23には、前面ラビリンス板25がボルトで固定されている。
【0019】
前面ラビリンス板25は、主軸受11の外輪19を側面から押さえて、ステーター固定フランジ15に固定する機能を有している。更に、前面ラビリンス板25の前面26は、面板3の後端面27との間にパッキン、及び僅かな隙間を有して配置されている。この隙間は、いわゆる流体の流路を狭めるラビリンスを構成する隙間であるので、切削中の冷却液等が侵入しにくい構造である。結局のところ、前面ラビリンス板25は、主軸受11の固定とラビリンスを形成するための部材である。
【0020】
図3は、本体2の後端部の部分を拡大した断面図である。他方、本体2の後端部には、円盤状のブレーキハウジング30が配置されている。ブレーキハウジング30の前部は、本体2の内孔の内周面31に挿入されている。ブレーキハウジング30は、ボルト(図示せず)で、本体2に固定されている。ブレーキハウジング30の中心部の内孔の内周面33には、ローラベアリングであるリア軸受34の外輪35が挿入され固定されている。
【0021】
リア軸受34の内輪36は、スピンドル4の後端部の外周に挿入されている。従って、スピンドル4の後端部は、ブレーキハウジング30にリア軸受34を介して回転自在に支持されている。ブレーキハウジング30には、中心線cを中心として、前部が開口した環状のシリンダ室40が区画され、形成されている。シリンダ室40には、環状ピストン42が挿入されており、環状ピストン42はスピンドル4の中心線c方向に前後移動自在である。
【0022】
環状ピストン42の内周面及び外周面に設けられた環状凹溝にそれぞれOリング43,44が配置され、シリンダ室の内周面及び外周面と環状ピストン42との隙間を密封し気密を保持している。また、ブレーキハウジング30と環状ピストン42との間には、空気室45を形成している。従って、シリンダ室40及び環状ピストン42は、本例では空気圧で駆動されるシリンダ駆動装置39を構成する。空気室45には、空気供給口46から加圧空気が供給され、環状ピストン42をシリンダ室40内で駆動する。
【0023】
環状ピストン42の前端面には、スピンドル4の中心線cを中心として、環状で凹状の溝である環状溝50が形成されている。この環状溝50の前面には、この環状溝50を前面から覆うように、円板状のスプリングリテイナー51が配置されている。スプリングリテイナー51は、円周状に配置された複数のボルト52によりブレーキハウジング30に固定されている。スプリングリテイナー51の後端面53と環状溝50との間には、環状形状のピストン戻しバネ54が配置されている。
【0024】
ピストン戻しバネ54は、波形形状であり圧縮バネである。従って、このピストン戻しバネ54は、環状ピストン42を後方側、即ち空気室45側に常時押していることになる。環状ピストン42は、空気供給口46から加圧空気が供給されたときのみ、前方に駆動される。スプリングリテイナー51の外周には、円板状のフローティングパッド60が配置されている。フローティングパッド60は、一種のブレーキパッドである。フローティングパッド60はその中央部の前方には円筒状の穴61が形成され、後側で穴内に延びる受け板を有している。
【0025】
穴61内には、環状の円板であるフローティングパッド引込み板62が配置されている。フローティングパッド引込み板62は、複数の皿ビス63で環状ピストン42に固定されている。フローティングパッド引込み板62の外周部は、環状ピストン42が後方に移動するとき、フローティングパッド60の受け板64に係合し、フローティングパッド60を後方に駆動する。本実施の形態では、約0.6mm程度強制的にフローティングパッド60を後方に駆動する。
【0026】
フローティングパッド60の前面には、円板状のブレーキディスク66が配置され、このブレーキディスク66の中心部はスピンドル4にビス(図せず)により固定され、通常はブレーキディスク66の前面68がハウジング2に形成された対向する面69からわずかな距離だけ離れていて、ブレーキディスク66がスピンドルとともに自由に回転できるようになっている。従って、フローティングパッド60が環状ピストン42により、前方向に駆動されると、フローティングパッド60の前面65が、ブレーキディスク66の側面67側に押される。
【0027】
この押圧により、ブレーキディスク66の前側面68は、本体2に形成された環状の周面69に接触し、ロックされる。このために、スピンドル4と一体に回転しているブレーキディスク66は、本体2にロックされ、スピンドル4の回転に制動をかけて回転を止めて、スピンドル4を本体2にロックすることになる。
【0028】
[増力機構70]
図4A及び図4Bは、増力機構70の拡大図であり、図4Aは環状ピストン42の移動の前段階、図4Bは環状ピストン42の移動の後段階を示している。
フローティングパッド60は、増力機構70を介して環状ピストン42により駆動され、増力機構70は環状ピストン42による駆動力を増す作用を有し、以下の構造をもつものである。
【0029】
ブレーキハウジング30の前部の内周面には、テーパー穴の内周面である傾斜角度βのテーパーカム面71が形成されている。また、環状ピストン42の外周面には、前方向に行くにしたがい直径が小さくなる、テーパーである傾斜角度αのテーパーカム面72が形成されている。図4A及び図4Bに示す実施形態では、テーパーカム面72の前部により大きい傾斜角の予備的テーパーカム面73が付加的に形成されている。この予備的テーパーカム面73の詳細については後述する。
【0030】
複数のボール75が前記テーパーカム面71と72とで形成される周状凹溝の全周に亘って配置されている。ボール75は、テーパーカム面71、72及びフローティングパッド60の側面76に接している。
【0031】
環状ピストン42からフローティングパッド60への動力伝達の過程について説明する。図4Bに示すように、環状ピストン42のある移動過程でボール75がテーパーカム面71,72とフローティングパッド60の後面とに接している状況を考える。環状ピストンの前方方向の押圧力をFと仮定すると、テーパーカム面72とボール75との当接部Pにおいて、押圧力Fは、テーパーカム面72のカム作用により、半径方向の外方に向く力Fに増力されてボール75に伝達される。すなわち、この増力部において、力Fから力Fに増力される。
【0032】
次に、ボール75とフローティングパッド60との当接部Pにおいて、上記力Fは、テーパーカム面71のカム作用により、前方方向の力である押圧力Fに増力されてフローティングパッド60に伝達される。これに伴いフローティングパッド60は前方向に移動し、ブレーキディスク66の前側面68を、本体2の環状面69に押圧してスピンドル4を本体2にロックすることになる。
【0033】
カム作用による増力の際に、テーパーカム面72の傾斜角度αが小さいほどより大きい力がボール75に伝達されるが、その結果として同じ距離だけフローティングパッド60を移動させるのに必要なピストンのストロークは増大する。
【0034】
この状況を改善するために、予備的カム面73を用いるのがよい。予備的テーパーカム面73を用いるのは、特にブレーキディスク66がハウジング2の対向する面69に接する時、すなわちピストン42の前進の後半段階において強い力が必要とされ、前段階でフローティングパッドに伝達される力はそれほど強くする必要はないということに基づいている。
【0035】
そのため、最初に環状ピストン42が図4Aに示される位置にあって、ボール75が環状ピストン42の前部の予備的テーパーカム面73、即ち、傾斜角度γであるテーパーカム面73に接触するように形成されている。この予備的テーパーカム面73の傾斜角度γと、環状ピストン42のテーパーである傾斜面の72の傾斜角度αとの関係は、α<γの関係がある。この場合、カム面73からボール75に伝達される半径方向外方の力はカム面72により伝達される力より小さいが、フローティングパッド60は環状ピストン42の同じストロークでより長い距離だけ移動する。
【0036】
また環状ピストン42の後半段階で、ブレーキディスク66がハウジング2の対向する面69に接する前に、図4Bに示すようにボール75がテーパーカム面72に接触するようにしてある。このようにして、環状ピストン42の前進の後半段階では前述したように強い力がカム面72からボール75に伝達される。
【0037】
また、本発明の工作機械用割出し回転テーブル1は、スピンドル4の回転角度を検出するエンコーダ等の回転位置検出装置80を備える。この回転位置検出装置80は、スピンドル4に固定され、このスピンドル4と共に回転する回転部分81と、本体2に固定されたディスク82とからなる。ディスク82は、複数の箇所においてボルトにより本体2に組み付けられており、本体2に対し回転不能となっている。
【0038】
そして、この回転位置検出装置80では、スピンドル4が回転すると、それに伴って回転部分81が回転するため、ディスク82側のセンサー(図示せず)がその回転量を電気的手段で検出し、その回転量に相当するパルス信号を図示しない工作機械の制御装置(図示せず)等に送り出す。そして、工作機械の制御装置は、この回転位置検出装置80から出力されるパルス信号に基づいて、回転後のスピンドル4の回転角度を把握する
【0039】
(実施の形態1の動作)
次に、前述した実施の形態1の動作を説明する。
(1)DDモータ12のロータ13は、回転駆動され、これにより面板3上のワークの回転角度が変更される。所定角度回転後、スピンドル4をクランプする場合には、クランプ用空気室45に空気を圧入すると、環状ピストン42をクランプ側(前方方向)に移動させる。
【0040】
(2)図3は、クランプをしようとしている状態であり、ブレーキディスク66に対してフローティングパッド60が若干押圧している。この状態から更に、で環状ピストン42をクランプ側に移動させると、ブレーキディスク66の前側面68は、本体2に形成された環状の周面69に接触し、スピンドル(4)がロックされる。
【0041】
(3)この環状ピストン42の前方方向の移動により、押圧力Fは、テーパーカム面72のカム作用により、半径方向の外方に向く力Fに増力される(図4参照)。
(4)この力Fは、テーパーカム面71により力Fに増力されて、フローティングパッド60に伝達される。
【0042】
(5)これに伴いフローティングパッド60は前方向に移動し、ブレーキディスク66をブレーキディスク66の前側面68に増力された力Fで押圧して、スピンドル4を本体2にロックすることになる。
(6)アンクランプする場合は、電磁弁(図示せず)を切替えて、空気室45の加圧空気を抜いて、環状ピストン42をフリーにする。
【0043】
(7)環状ピストン42をフリーにすることにより、ピストン戻しバネ54が環状ピストン42の環状溝50の面を押すことになる。これにより、環状ピストン42が後方に後退する。このとき、環状ピストン(42)に取り付けられたフローティングパッド引込み板62は、フローティングパッド60の底面64に接触し、フローティングパッド60を後方に駆動する。本実施の形態では、環状ピストン42を後方に約3mm程度駆動し、約0.6mm程度フローティングパッド60を後方に駆動している。
【0044】
(8)このフローティングパッド60の後方への駆動により、フローティングパッド60は強制的にブレーキディスク66から引き離される。
本発明を特定の実施形態について説明したが、本発明は実施例に限定されるものではなく、その思想を逸脱せずに種々の変更がなされよう。
【符号の説明】
【0045】
1…工作機械用割出し回転テーブル
2…本体
3…面板
4…スピンドル
11…主軸受
12…DDモータ
13…ロータ
15…ステーター固定フランジ
21…ステータ
25…前面ラビリンス板
30…ブレーキハウジング
40…シリンダ室
42…環状ピストン
60…フローティングパッド
62…フローティングパッド引込み板
66…ブレーキディスク
70…増力機構
75…ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(2)と、
前記本体(2)に回転自在に軸受で支持されたスピンドル(4)と、
前記本体(2)に固定されるモータ(12)用のステータ(21)と、
前記ステータ(21)に対向して前記スピンドル(4)に固定された前記モータ用のロータ(13)と、
前記スピンドル(4)に固定された面板(3)と、
前記モータ(12)で駆動され、割出しされた前記面板(3)の停止角度位置を、前記ロータ(13)に固定されたブレーキディスク(66)にフローテングパッド(60)を押圧して、前記ロータ(13)を前記本体(2)にクランプするためのクランプ装置(39,70)と
を備えた工作機械用の割出し回転テーブルにおいて、
前記クランプ装置(39,70)は、
流体圧で駆動されるピストン(42)及びブレーキハウジング(30)に形成され前記ピストン(42)を収容するシリンダ室(40)とからなるシンリダ駆動手段(39)と、
前記ピストン(42)の前進による力を増力して前記フローテングパッド(60)を駆動するために増力機構(70)と、
前記ピストンの後退により前記クランプを解除するときに前記フローテングパッド(60)に係合して、前記フローテングパッド(60)を強制的にアンクランプ状態にするためのフローティングパッド解除手段と
からなる工作機械用割出し回転テーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記フローティングパッド(60)は、その中央部に形成された円筒形の穴(61)と該穴内に延びる受け板(64)とを有し、
前記フローティングパッド解除手段は、前記ピストン(42)に一体に固定され、前記フローティングパッド(60)の円筒形の穴(61)内にあって、前記ピストン(42)の後退時に前記フローテイングパッド(60)の受け板(64)に係合可能なフローティングパット引き込み板(62)を備えている
ことを特徴とする工作機械用割出し回転テーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記シンリダ駆動手段(39)は、前記ピストン(42)を作動させて前記フローティングパッド(60)を押圧してクランプした後に、アンクランプ状態にするときに、前記ピストン(42)を前記押圧前の位置に戻すためのバネ(54)を含むことを特徴とする工作機械用割出し回転テーブル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記増力機構(70)は、
前記ピストン(42)の前部の外周面に形成された傾斜角度(α)の第1テーパーカム面(72)と、
ブレーキハウジング(30)の前部の内周面に形成された、前記第1テーパーカム面の傾斜角度(α)より大きい傾斜角度(β)の第2テーパーカム面(71)と、
前記第1テーパー面(72)及び前記第2テーパーカム面(71)により形成される周状凹部の全周に亘って配置され前記第1及び第2のテーパーカム面と前記フローティングパッド(60)の後面に接触する複数のボール(75)と
からなることを特徴とする工作機械用割出し回転テーブル。
【請求項5】
請求項4に記載の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、前記第1テーパーカム面(72)の前側部分に前記傾斜角度(α)より大きい傾斜角度(γ)の予備的テーパー面(73)が付加的に形成されており、前記ボールは前記ピストン(42)の前進移動の最初の段階で前記予備的テーパー面(73)に接触し、また前記ピストン(42)の前進移動のその後の段階で前記第1テーパーカム面(72)に接触し、それによって適切なばね力において前記ピストンのストロークを短くするようにしたことを特徴とする工作機械用割出し回転テーブル。
【請求項6】
請求項3に記載の工作機械用割出し回転テーブルにおいて、
前記バネ(50)は、波状の圧縮板バネであることを特徴とする工作機械用割出し回転テーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−214492(P2010−214492A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62071(P2009−62071)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】