工業用加熱装置
【課題】ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとする。
【解決手段】再生器11と、再生器13と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する熱利用装置10とを備え、前記熱利用装置10内の第1系統加熱要素を凝縮器12とし、第2系統加熱要素を吸収器14とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、前記再生器11において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器12において凝縮させ、凝縮液を前記再生器13に移行させ、その再生器13において蒸発した蒸気を吸収器14において吸収させ、前記吸収器14から希吸収液を前記再生器11へ移行させ、前記再生器11から濃吸収液を前記吸収器14へ移行させるよう組み合わせてある。
【解決手段】再生器11と、再生器13と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する熱利用装置10とを備え、前記熱利用装置10内の第1系統加熱要素を凝縮器12とし、第2系統加熱要素を吸収器14とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、前記再生器11において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器12において凝縮させ、凝縮液を前記再生器13に移行させ、その再生器13において蒸発した蒸気を吸収器14において吸収させ、前記吸収器14から希吸収液を前記再生器11へ移行させ、前記再生器11から濃吸収液を前記吸収器14へ移行させるよう組み合わせてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置、蒸発装置などの加熱要素を備えた熱利用装置と、ヒートポンプの要素とを組み合わせた工業用の加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収(式)ヒートポンプは、熱効率がよいために冷暖房装置などへの適用例が多くなっている。
また、吸収ヒートポンプは無機塩溶液への水蒸気の吸収熱を利用するもので、圧縮機などを用いない熱機関であるため運転操作が容易である。さらに、熱媒体として無機塩の水溶液(通常臭化リチウム−水系)などを利用できるので、環境的にも負荷の少ないシステムを実現できる。
吸収ヒートポンプは特に吸収冷凍機のかたちで広く実用化されているが、サイクルを逆向きとした加熱装置としての応用も広がってきている。加熱装置を目的とするヒートポンプは「増熱型」と呼ばれ、第一種ヒートポンプとして区分される。これに対して、排熱の「温度を上げて」熱利用の価値を上げる「ヒートトランスフォーマー」と呼ばれる第二種ヒートポンプがある。
従来、ヒートポンプは便宜上独立した装置として製作され、発生あるいは回収された熱は温水あるいは水蒸気を熱媒体とすることで装置から取り出され、熱の利用先である別の熱利用装置へと搬送される必要があった。そのため、熱利用装置へ熱媒体の移送システムが必要になり、ヒートポンプ側と熱利用装置側の両者に伝熱面(熱交換器)が必要となり、システムが複雑となり設備の費用もかかるものになった。さらに伝熱のために必要な温度差も大きくなり、総合的な熱の利用効率が低下することになった。
一方、特許文献1又は特許文献2には、圧縮機を利用したヒートポンプ式の熱利用装置が開示されているが、圧縮機の駆動動力コストの点で特別に有利な改良とは考えがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−331210号公報
【特許文献2】特許3681049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題の一つは、熱利用装置(被加熱装置)の伝熱面をそれぞれ独立した二群に分け、それらをヒートポンプにおける凝縮器、吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする主たる他の課題は、別体としての少なくとも2つの熱利用装置において、その一方の熱利用装置の加熱器を凝縮器、他方の熱利用装置の加熱器を吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することにある。
【0006】
より具体的には、凝縮器、吸収器が熱利用装置の伝熱器として組み込まれることで、機能的にヒートポンプと共用されることになり、伝熱の際の温度差を縮小し、さらに設備のコストを大幅に下げることが可能となる工業用加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
再生器と、蒸発器と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置とを備え、前記熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【0008】
(作用効果)
請求項1記載の発明(本発明1)においては、単一の熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器として、吸収式ヒートポンプの構成要素として組み込むものである。したがって、吸収式ヒートポンプを構成するのに、凝縮器及び吸収器を別途製作することが不要となり、その分、コストの低減を図ることができるとともに、システムとしての機器構成が簡素となる結果、熱利用効率が向上する。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
再生器と、蒸発器と、それぞれ熱媒体を流通させて加熱を行う加熱要素を有する別体としての少なくとも2つの熱利用装置とを備え、
第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【0010】
(作用効果)
請求項2記載の発明(本発明2)においては、別体としての少なくとも2つの熱利用装置の加熱要素をそれぞれ利用するものである。すなわち、第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器として、吸収式ヒートポンプを構成するものである。したがって、請求項2記載の発明においても、吸収式ヒートポンプを構成するのに、凝縮器及び吸収器を別途製作することが不要となり、その分、コストの低減を図ることができるとともに、システムとしての機器構成が簡素となる結果、熱利用効率が向上する作用効果を奏する。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記吸収器として薄膜流下式熱交換器を使用している請求項1又は2記載の工業用加熱装置。
【0012】
(作用効果)
吸収器では、蒸気を濃吸収液に吸収させる必要があり、その吸収を効率的に行わせるため、また吸収熱の発生面と伝熱面の間の吸収液膜での熱移動の抵抗を少なくするために、薄膜流下式熱交換器を使用するのが適している。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記熱利用装置がディスク型加熱装置であり、一方のシャフトを凝縮器、他方のシャフトを吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【0014】
(作用効果)
熱利用装置としてディスク型加熱装置(ディスク型乾燥装置)の場合がある。この場合の伝熱面は筐体(ケーシング)の外面に加熱媒体を通すジャケットと、加熱媒体を通すディスクを複数備えたシャフトとがある。処理物に効率的に攪拌効果を与え、機内での搬送伝熱効率の向上を図るために、通常は2軸あるいは4軸の偶数軸のシャフトを用いる。ジャケット部は、蒸気を濃吸収液に吸収させる効率の点で吸収器として機能させるのは難しいので、凝縮器として利用するのが適当であるが、シャフトであれば吸収器として利用でき、たとえば偶数本のシャフトの半数を吸収器、他の半数を凝縮器として利用できる。
【0015】
〔請求項5記載の発明〕
前記熱利用装置が多管式回転加熱装置であり、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【0016】
(作用効果)
熱利用装置が多管式回転加熱装置、たとえばスチームチューブドライヤーと称呼される加熱装置(乾燥装置)があるが、ディスク型加熱装置のシャフトと同様に、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、熱利用装置(被加熱装置)の伝熱面をそれぞれ独立した二群に分け、それらをヒートポンプにおける凝縮器、吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することができる。
【0018】
また、別体としての少なくとも2つの熱利用装置において、その一方の熱利用装置の加熱器を凝縮器、他方の熱利用装置の加熱器を吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することができる。
【0019】
より具体的には、凝縮器、吸収器が熱利用装置の伝熱器として組み込まれることで、機能的にヒートポンプと共用されることになり、伝熱の際の温度差を縮小し、さらに設備のコストを大幅に下げることが可能となる工業用加熱装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明1の基本概念図である。
【図2】本発明1のディスク型加熱装置への適用例を示す概要図である。
【図3】その水平断面図である。
【図4】その縦断面平面図である。
【図5】概要横断面図である。
【図6】本発明1の蒸発装置への適用例を示す縦断面図である。
【図7】本発明1の多管式回転加熱装置への適用例を示す縦断面図である。
【図8】左側面図である。
【図9】右側面図である。
【図10】吸収器のチューブ構造の第1例の縦断面図である。
【図11】吸収器のチューブ構造の第2例の縦断面図である。
【図12】吸収器のチューブ構造の第3例の縦断面図である。
【図13】吸収器のチューブ構造の第4例の縦断面図である。
【図14】本発明2の基本概念図である。
【図15】本発明2の多管式回転加熱装置への適用例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
まず、請求項1に係る本発明1の「単一の熱利用装置」を有する工業用加熱装置の例のいくつかを説明した後に、請求項2に係る本発明2の「別体としての少なくとも2つの熱利用装置」を有する工業用加熱装置の例について説明する。
なお、本発明の作動媒体としては冷媒及び吸収剤として適宜のものを選択して使用でき、たとえば吸収剤として臭化リチウム、冷媒として水、吸収剤としてアンモニア、冷媒として水などを挙げることができるが、効率の向上のために高温領域での使用が可能なことが望まれる観点から、本発明者は、53%LiNO3+28%KNO3+19%NaNO3+(「ORNL 85−22013」)を使用するのが最適であることを知見している。
【0022】
<本発明1の第1形態>
図1は、「単一の熱利用装置」を有する工業用加熱装置の基本例としての第1例を概要的に図示したものである。この形態は、物理的に単一の装置とみなすことができる熱利用装置10と、再生器11と、蒸発器13とを組み合わせたものである。熱利用装置10とは、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素、すなわち通常の使用形態では蒸気などの熱媒体を流通させて加熱を行う型式の、複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置を意味している。
【0023】
この熱利用装置の具体例としては、ディスク型加熱装置(乾燥装置)、多管式回転加熱装置(乾燥装置)、たとえばスチームチューブドライヤーと呼ばれる間接加熱型回転乾燥装置、蒸発装置などがある。これらの熱利用装置は、被処理物との間で伝熱を行う熱交換器として機能するディスク・シャフト、ジャケット、加熱管、加熱板などの加熱器を有する。本発明の装置は、その熱利用装置10内の第1系統加熱要素を凝縮器12とし、第2系統加熱要素を吸収器14とし、熱媒体として作動流体を使用する装置である。
【0024】
さらに、再生器11において図示しない高温蒸気、燃焼式の加熱装置、あるいはボイラー排熱などの外部駆動加熱源31からの熱を受けて作動流体の蒸発を行い、中圧蒸気として凝縮器12に管路22を介して移行させ、その凝縮器12において凝縮させる。凝縮液は、管路23を介して蒸発器13に移行させる。蒸発器13において排熱回収などが利用できる低温加熱源32による熱を与えて、蒸発した低圧蒸気は、管路24を介して吸収器14に移行させ、その吸収器14において吸収させ、高温を発生させる。
【0025】
吸収器14から希吸収液25は吸収液ポンプ26により再生器11へ移行させ、再生器11から濃吸収液27は吸収器14へ移行させるよう組み合わせてある。さらに、希吸収液25と濃吸収液27とは熱交換器28により熱交換を図り効率を向上させる。なお、蒸発器13には凝縮液を循環させる循環ポンプ29が設けられ、蒸発器13内上部から散布するようにしてある。
【0026】
図示例の工業用加熱装置では、被加熱体40を、たとえば下部の入口41から受け入れ、吸収器14及び凝縮器12により加熱し、たとえば上部の出口42から排出するものである。
【0027】
<本発明1の第2形態>
図2は、第1例の延長線上の第2例を示したもので、図3〜図5は熱利用装置10の詳細を示してある。
図示例の熱利用装置10は2軸のディスク型加熱装置である。すなわち、ケーシング10A内にディスク12Bを有するシャフト12A、並びにディスク14Bを有するシャフト14Aが平行に設けられている。ディスク12B及びディスク14Bは一部が重なるように配置され、駆動モータ10C及び伝動機構10Dにより回転し、ケーシング10A内に装入される被処理物たる被加熱体40を撹拌しつつ、ディスク12B、14B、シャフト12A、14Aから伝熱加熱するようになっている。
【0028】
この場合、一方のシャフト12Aを凝縮器12、他方のシャフト14Aを吸収器14とし、再生器11及び蒸発器13と、第1例と同様に組み合わせている(組み合わせの詳細は第1例と同様であるために説明を省略する。)。
【0029】
この場合、ケーシング10Aのジャケットには、他の熱媒体を流通させることができる。なお、必要によりそのジャケットを凝縮器12として利用することができる。また、図示例は2軸のものであるが、4軸や6軸などの場合には、偶数本のシャフトの半数を吸収器14、他の半数を凝縮器12として利用できる。
【0030】
他方、凝縮器12を構成するシャフトは一般に蒸気加熱に使用されている方式と同様のものをそのまま使用できる。これに対し、この種のディスク型加熱装置における処理物の流れ方向に勾配をもたせているので、吸収器14を構成するシャフト14Aへの液の供給形態として、シャフト14Aの上流側からロータリージョイント14Cを経由して濃吸収液27と被吸収蒸気を供給することで、各ディスク14Bに均等に濃吸収液27と蒸気を供給し、発生した希吸収液がディスク14B内からシャフト14Aへ汲み上げられるような構造となっている。そして、シャフト14Aの下端から吸収液を、ロータリージョイント14Dを経由して抜き出す構造とすることができる。シャフト14Aが回転されることによりディスク14B内面では吸収液が薄膜化され、発生した吸収熱の伝熱も効率よく行える。図3の符号12Cは凝縮液の抜き出し用ロータリージョイントである。
【0031】
吸収器14のディスク14B、凝縮器12のディスク12Bの形式は皿状に限らず、等厚円盤、傾斜円盤、切り欠きつき円盤など多様な形態のいずれも使用できる。
【0032】
<本発明1の第3形態>
図6は、水溶液の濃縮などに利用される蒸発装置を熱利用装置10とする例である。
この場合、被加熱流体は加熱器12X、14Xと蒸発缶10Bの間を循環ポンプ10a、10bにより循環することで加熱、蒸発を連続的に行うものである。加熱器14Xは吸収器14、加熱器12Xは凝縮器12として分離されている形態である。しかし、被加熱流体の循環の中に異なる形式の伝熱器が配置されていると見なすことができ、基本的に図6の加熱器12X、14Xと蒸発缶10Bとの全体で単一の熱利用装置とみなすことができるもので、図1に示した基本構成概念内のものである。
【0033】
加熱器12Xは通常の蒸気加熱の熱交換器と同様の一般的な形式のものを使用できるが蒸発装置としては多管式の熱交換器が適当である。加熱器14Xは粘度の高い濃吸収液を薄膜状に展開させて蒸気を吸収させる必要から、薄膜降下型の熱交換器形式を選択するのが望ましい。濃吸収液は分散器によりチューブ内に薄膜を形成するように供給され、チューブ内壁で(水)蒸気を吸収させることで生成した吸収熱は、薄膜からチューブを介してチューブ外の被加熱流体に伝熱される。加熱された被加熱流体は、加熱器14Xで加熱された被加熱流体とともに蒸発缶10Bに導入され、そこでの減圧条件に応じて沸騰蒸発し流体は濃縮される。
【0034】
<本発明1の第4形態>
図7〜図9は、熱利用装置10が多管式回転加熱装置10S、たとえばスチームチューブドライヤーと称呼される加熱装置(乾燥装置)の例である。
多管式回転加熱装置10Sは、所定本数(多数本数)の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群12Yを凝縮器12とし、第2系統加熱管群14Yを吸収器14としたものである。本形態では内側の第2系統加熱管群14Yを吸収器14、外側の第1系統加熱管群12Yを凝縮器12となるようにしてある。それぞれが出口側にマニフォールドと呼ばれるヘッダーを有している。
【0035】
この多管式回転加熱装置10Sの構造としては種々公知のものが存在するが、図示例は、図面左側から被処理物たる被加熱体(たとえば粒状体)40が供給筒61内に装入され、スクリュウコンベア62によりケーシング10Sc内に装入される。凝縮器12及び吸収器14からの伝熱により乾燥操作を終えた処理品は排出筒63内をスクリュー64により排出され、固定ケーシング65の下部排出口から排出される。キャリアガスは、固定ケーシング65の上部吹込口65aから排出筒63を通してケーシング10Sc内に吹き込まれ、供給筒61の排気口61aから蒸発蒸気とともに排気される。
【0036】
一方、凝縮器12を構成する第1系統加熱管群12Yは一般に蒸気加熱に使用されている方式と同様のものをそのまま使用できる。しかし、第2の形態のディスク型加熱装置の場合と同様に、この種の多管式回転加熱装置10Sは、通常は、その処理物の流れ方向に勾配をもたせて配置しているので、吸収器14を構成する第2系統加熱管群14Yへの液の供給形態として、第2系統加熱管群14Yの上流側からロータリージョイント14C介し、スクリュウコンベア62の軸内を経由して濃吸収液27と被吸収蒸気を供給し、第2系統加熱管群14Yには均等に濃吸収液27と蒸気が供給されるような構造となっている。その際、スクリュウコンベア62の軸と、第2系統加熱管群14Yとの間には、中継ロータリージョイント14Eを設けて連結できる。14Fは、中継ロータリージョイント14Eは支持部材である。
【0037】
他方、通常のスチームチューブドライヤーは蒸気加熱であるため、蒸気供給およびコンデンセート(凝縮液)排出のための二重ロータリージョイントが一基あればよい。しかし本発明の形態では、入口側に、吸収器14への濃吸収液と被吸収蒸気の供給ために二重ロータリージィント14Cが一基、また出口側に凝縮器12への蒸気とそれのコンデンセート排出と、吸収器14からの希吸収液の排出のための三重ロータリージョイント14Gが必要となる。吸収器14のチューブの入口側では吸収液と被吸収蒸気を各チューブに均等に分配するヘッダー14Hが必要である。
【0038】
<加熱管の形態>
現状の吸収ヒートポンプにおいては、チューブなどの外表面に吸収液を薄膜を形成させたり、チューブの表面にヒダをつけたりして、吸収面の面積の拡大あるいは発生した吸収熱を直ちにチューブなどの内面に伝熱することを考慮している。
【0039】
本発明では、チューブなどの伝熱面の内面に吸収液を通し、外面を流動する被加熱物処理物への伝熱を行うことから、同様な手法で同様な効果を発揮するのは困難である。そこで、たとえば図10〜図13の手段を採用して、チューブあるいはチューブを含む筐体を回転させることより、伝熱面内面での吸収液の薄膜化や水蒸気の吸収の促進、あるいは伝熱面での熱移動の促進を行うことを図るものである。
【0040】
図10は、チューブに細かいメッシュ状の円筒71をチューブに内接させて挿入し、吸収液の保持を図るものである。
図11は、濃吸収液は圧力をもって吸収器14に供給されるので、チューブ内に噴霧ノズル72によりスプレーさせることでチューブ内面に薄膜を形成させることができるようにしたものである。
図12は、細いスプリング状の線材73をチューブ内に内挿し液膜の保持をさせるものである。チューブを回転させる際は、螺旋の向きは液の流れ方向に逆らう方向に回し、チューブ内壁に液膜が均一に保持させるとともに吸収液の攪拌による伝熱の促進効果がある。
図13は、ダムリング74を一定間隔で内挿し、吸収液が流れ落ちるのを防止して、チューブの回転によりチューブ内壁に薄膜が形成されるようにする。
以上の手段は、運転条件での吸収液の温度や濃度、あるいは伝熱面の規模や形状や流れ方向への長さ、傾きによって選択できる。
【0041】
<本発明2の第1形態>
本発明2の「別体としての少なくとも2つの熱利用装置」を有する工業用加熱装置も提案される。すなわち図14に示すとおり、2つの熱利用装置51、52と組み合わせる例であり、熱利用装置51の加熱要素を凝縮器12とし、熱利用装置52の加熱要素を吸収器14とし、再生器11と、蒸発器13とを組み合わせたものである。この場合、図示例では、被加熱体40を個別に加熱しているが、一方の熱利用装置により加熱したものを、他方の熱利用装置に送り、さらに加熱を行うように、被加熱体40の流れを取るようにすることもできる。
【0042】
<本発明2の第2形態>
図15は、本発明2を多管式回転加熱装置51、52に適用した具体例を示したものでえあり、多管式回転加熱装置51の加熱管群は凝縮器12として動作させ、多管式回転加熱装置52の加熱管群は吸収器14として動作させるようにしたものである。
多管式回転加熱装置51、52の構造は、図7の例で説明したので、説明を省略しても判るであろう。
【符号の説明】
【0043】
10…熱利用装置、10A…ケーシング、10B…蒸発缶、10S…多管式回転加熱装置、11…再生器、12…凝縮器、13…蒸発器、14…吸収器、25…希吸収液、27…濃吸収液、51…熱利用装置、52…熱利用装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置、蒸発装置などの加熱要素を備えた熱利用装置と、ヒートポンプの要素とを組み合わせた工業用の加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収(式)ヒートポンプは、熱効率がよいために冷暖房装置などへの適用例が多くなっている。
また、吸収ヒートポンプは無機塩溶液への水蒸気の吸収熱を利用するもので、圧縮機などを用いない熱機関であるため運転操作が容易である。さらに、熱媒体として無機塩の水溶液(通常臭化リチウム−水系)などを利用できるので、環境的にも負荷の少ないシステムを実現できる。
吸収ヒートポンプは特に吸収冷凍機のかたちで広く実用化されているが、サイクルを逆向きとした加熱装置としての応用も広がってきている。加熱装置を目的とするヒートポンプは「増熱型」と呼ばれ、第一種ヒートポンプとして区分される。これに対して、排熱の「温度を上げて」熱利用の価値を上げる「ヒートトランスフォーマー」と呼ばれる第二種ヒートポンプがある。
従来、ヒートポンプは便宜上独立した装置として製作され、発生あるいは回収された熱は温水あるいは水蒸気を熱媒体とすることで装置から取り出され、熱の利用先である別の熱利用装置へと搬送される必要があった。そのため、熱利用装置へ熱媒体の移送システムが必要になり、ヒートポンプ側と熱利用装置側の両者に伝熱面(熱交換器)が必要となり、システムが複雑となり設備の費用もかかるものになった。さらに伝熱のために必要な温度差も大きくなり、総合的な熱の利用効率が低下することになった。
一方、特許文献1又は特許文献2には、圧縮機を利用したヒートポンプ式の熱利用装置が開示されているが、圧縮機の駆動動力コストの点で特別に有利な改良とは考えがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−331210号公報
【特許文献2】特許3681049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題の一つは、熱利用装置(被加熱装置)の伝熱面をそれぞれ独立した二群に分け、それらをヒートポンプにおける凝縮器、吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする主たる他の課題は、別体としての少なくとも2つの熱利用装置において、その一方の熱利用装置の加熱器を凝縮器、他方の熱利用装置の加熱器を吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することにある。
【0006】
より具体的には、凝縮器、吸収器が熱利用装置の伝熱器として組み込まれることで、機能的にヒートポンプと共用されることになり、伝熱の際の温度差を縮小し、さらに設備のコストを大幅に下げることが可能となる工業用加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
再生器と、蒸発器と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置とを備え、前記熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【0008】
(作用効果)
請求項1記載の発明(本発明1)においては、単一の熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器として、吸収式ヒートポンプの構成要素として組み込むものである。したがって、吸収式ヒートポンプを構成するのに、凝縮器及び吸収器を別途製作することが不要となり、その分、コストの低減を図ることができるとともに、システムとしての機器構成が簡素となる結果、熱利用効率が向上する。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
再生器と、蒸発器と、それぞれ熱媒体を流通させて加熱を行う加熱要素を有する別体としての少なくとも2つの熱利用装置とを備え、
第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【0010】
(作用効果)
請求項2記載の発明(本発明2)においては、別体としての少なくとも2つの熱利用装置の加熱要素をそれぞれ利用するものである。すなわち、第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器として、吸収式ヒートポンプを構成するものである。したがって、請求項2記載の発明においても、吸収式ヒートポンプを構成するのに、凝縮器及び吸収器を別途製作することが不要となり、その分、コストの低減を図ることができるとともに、システムとしての機器構成が簡素となる結果、熱利用効率が向上する作用効果を奏する。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
前記吸収器として薄膜流下式熱交換器を使用している請求項1又は2記載の工業用加熱装置。
【0012】
(作用効果)
吸収器では、蒸気を濃吸収液に吸収させる必要があり、その吸収を効率的に行わせるため、また吸収熱の発生面と伝熱面の間の吸収液膜での熱移動の抵抗を少なくするために、薄膜流下式熱交換器を使用するのが適している。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記熱利用装置がディスク型加熱装置であり、一方のシャフトを凝縮器、他方のシャフトを吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【0014】
(作用効果)
熱利用装置としてディスク型加熱装置(ディスク型乾燥装置)の場合がある。この場合の伝熱面は筐体(ケーシング)の外面に加熱媒体を通すジャケットと、加熱媒体を通すディスクを複数備えたシャフトとがある。処理物に効率的に攪拌効果を与え、機内での搬送伝熱効率の向上を図るために、通常は2軸あるいは4軸の偶数軸のシャフトを用いる。ジャケット部は、蒸気を濃吸収液に吸収させる効率の点で吸収器として機能させるのは難しいので、凝縮器として利用するのが適当であるが、シャフトであれば吸収器として利用でき、たとえば偶数本のシャフトの半数を吸収器、他の半数を凝縮器として利用できる。
【0015】
〔請求項5記載の発明〕
前記熱利用装置が多管式回転加熱装置であり、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【0016】
(作用効果)
熱利用装置が多管式回転加熱装置、たとえばスチームチューブドライヤーと称呼される加熱装置(乾燥装置)があるが、ディスク型加熱装置のシャフトと同様に、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、熱利用装置(被加熱装置)の伝熱面をそれぞれ独立した二群に分け、それらをヒートポンプにおける凝縮器、吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することができる。
【0018】
また、別体としての少なくとも2つの熱利用装置において、その一方の熱利用装置の加熱器を凝縮器、他方の熱利用装置の加熱器を吸収器として使用することにより、ヒートポンプと熱利用装置(被加熱装置)を組み合わせ、もって効率的な熱利用システムとしての工業用加熱装置を提供することができる。
【0019】
より具体的には、凝縮器、吸収器が熱利用装置の伝熱器として組み込まれることで、機能的にヒートポンプと共用されることになり、伝熱の際の温度差を縮小し、さらに設備のコストを大幅に下げることが可能となる工業用加熱装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明1の基本概念図である。
【図2】本発明1のディスク型加熱装置への適用例を示す概要図である。
【図3】その水平断面図である。
【図4】その縦断面平面図である。
【図5】概要横断面図である。
【図6】本発明1の蒸発装置への適用例を示す縦断面図である。
【図7】本発明1の多管式回転加熱装置への適用例を示す縦断面図である。
【図8】左側面図である。
【図9】右側面図である。
【図10】吸収器のチューブ構造の第1例の縦断面図である。
【図11】吸収器のチューブ構造の第2例の縦断面図である。
【図12】吸収器のチューブ構造の第3例の縦断面図である。
【図13】吸収器のチューブ構造の第4例の縦断面図である。
【図14】本発明2の基本概念図である。
【図15】本発明2の多管式回転加熱装置への適用例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。
まず、請求項1に係る本発明1の「単一の熱利用装置」を有する工業用加熱装置の例のいくつかを説明した後に、請求項2に係る本発明2の「別体としての少なくとも2つの熱利用装置」を有する工業用加熱装置の例について説明する。
なお、本発明の作動媒体としては冷媒及び吸収剤として適宜のものを選択して使用でき、たとえば吸収剤として臭化リチウム、冷媒として水、吸収剤としてアンモニア、冷媒として水などを挙げることができるが、効率の向上のために高温領域での使用が可能なことが望まれる観点から、本発明者は、53%LiNO3+28%KNO3+19%NaNO3+(「ORNL 85−22013」)を使用するのが最適であることを知見している。
【0022】
<本発明1の第1形態>
図1は、「単一の熱利用装置」を有する工業用加熱装置の基本例としての第1例を概要的に図示したものである。この形態は、物理的に単一の装置とみなすことができる熱利用装置10と、再生器11と、蒸発器13とを組み合わせたものである。熱利用装置10とは、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素、すなわち通常の使用形態では蒸気などの熱媒体を流通させて加熱を行う型式の、複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置を意味している。
【0023】
この熱利用装置の具体例としては、ディスク型加熱装置(乾燥装置)、多管式回転加熱装置(乾燥装置)、たとえばスチームチューブドライヤーと呼ばれる間接加熱型回転乾燥装置、蒸発装置などがある。これらの熱利用装置は、被処理物との間で伝熱を行う熱交換器として機能するディスク・シャフト、ジャケット、加熱管、加熱板などの加熱器を有する。本発明の装置は、その熱利用装置10内の第1系統加熱要素を凝縮器12とし、第2系統加熱要素を吸収器14とし、熱媒体として作動流体を使用する装置である。
【0024】
さらに、再生器11において図示しない高温蒸気、燃焼式の加熱装置、あるいはボイラー排熱などの外部駆動加熱源31からの熱を受けて作動流体の蒸発を行い、中圧蒸気として凝縮器12に管路22を介して移行させ、その凝縮器12において凝縮させる。凝縮液は、管路23を介して蒸発器13に移行させる。蒸発器13において排熱回収などが利用できる低温加熱源32による熱を与えて、蒸発した低圧蒸気は、管路24を介して吸収器14に移行させ、その吸収器14において吸収させ、高温を発生させる。
【0025】
吸収器14から希吸収液25は吸収液ポンプ26により再生器11へ移行させ、再生器11から濃吸収液27は吸収器14へ移行させるよう組み合わせてある。さらに、希吸収液25と濃吸収液27とは熱交換器28により熱交換を図り効率を向上させる。なお、蒸発器13には凝縮液を循環させる循環ポンプ29が設けられ、蒸発器13内上部から散布するようにしてある。
【0026】
図示例の工業用加熱装置では、被加熱体40を、たとえば下部の入口41から受け入れ、吸収器14及び凝縮器12により加熱し、たとえば上部の出口42から排出するものである。
【0027】
<本発明1の第2形態>
図2は、第1例の延長線上の第2例を示したもので、図3〜図5は熱利用装置10の詳細を示してある。
図示例の熱利用装置10は2軸のディスク型加熱装置である。すなわち、ケーシング10A内にディスク12Bを有するシャフト12A、並びにディスク14Bを有するシャフト14Aが平行に設けられている。ディスク12B及びディスク14Bは一部が重なるように配置され、駆動モータ10C及び伝動機構10Dにより回転し、ケーシング10A内に装入される被処理物たる被加熱体40を撹拌しつつ、ディスク12B、14B、シャフト12A、14Aから伝熱加熱するようになっている。
【0028】
この場合、一方のシャフト12Aを凝縮器12、他方のシャフト14Aを吸収器14とし、再生器11及び蒸発器13と、第1例と同様に組み合わせている(組み合わせの詳細は第1例と同様であるために説明を省略する。)。
【0029】
この場合、ケーシング10Aのジャケットには、他の熱媒体を流通させることができる。なお、必要によりそのジャケットを凝縮器12として利用することができる。また、図示例は2軸のものであるが、4軸や6軸などの場合には、偶数本のシャフトの半数を吸収器14、他の半数を凝縮器12として利用できる。
【0030】
他方、凝縮器12を構成するシャフトは一般に蒸気加熱に使用されている方式と同様のものをそのまま使用できる。これに対し、この種のディスク型加熱装置における処理物の流れ方向に勾配をもたせているので、吸収器14を構成するシャフト14Aへの液の供給形態として、シャフト14Aの上流側からロータリージョイント14Cを経由して濃吸収液27と被吸収蒸気を供給することで、各ディスク14Bに均等に濃吸収液27と蒸気を供給し、発生した希吸収液がディスク14B内からシャフト14Aへ汲み上げられるような構造となっている。そして、シャフト14Aの下端から吸収液を、ロータリージョイント14Dを経由して抜き出す構造とすることができる。シャフト14Aが回転されることによりディスク14B内面では吸収液が薄膜化され、発生した吸収熱の伝熱も効率よく行える。図3の符号12Cは凝縮液の抜き出し用ロータリージョイントである。
【0031】
吸収器14のディスク14B、凝縮器12のディスク12Bの形式は皿状に限らず、等厚円盤、傾斜円盤、切り欠きつき円盤など多様な形態のいずれも使用できる。
【0032】
<本発明1の第3形態>
図6は、水溶液の濃縮などに利用される蒸発装置を熱利用装置10とする例である。
この場合、被加熱流体は加熱器12X、14Xと蒸発缶10Bの間を循環ポンプ10a、10bにより循環することで加熱、蒸発を連続的に行うものである。加熱器14Xは吸収器14、加熱器12Xは凝縮器12として分離されている形態である。しかし、被加熱流体の循環の中に異なる形式の伝熱器が配置されていると見なすことができ、基本的に図6の加熱器12X、14Xと蒸発缶10Bとの全体で単一の熱利用装置とみなすことができるもので、図1に示した基本構成概念内のものである。
【0033】
加熱器12Xは通常の蒸気加熱の熱交換器と同様の一般的な形式のものを使用できるが蒸発装置としては多管式の熱交換器が適当である。加熱器14Xは粘度の高い濃吸収液を薄膜状に展開させて蒸気を吸収させる必要から、薄膜降下型の熱交換器形式を選択するのが望ましい。濃吸収液は分散器によりチューブ内に薄膜を形成するように供給され、チューブ内壁で(水)蒸気を吸収させることで生成した吸収熱は、薄膜からチューブを介してチューブ外の被加熱流体に伝熱される。加熱された被加熱流体は、加熱器14Xで加熱された被加熱流体とともに蒸発缶10Bに導入され、そこでの減圧条件に応じて沸騰蒸発し流体は濃縮される。
【0034】
<本発明1の第4形態>
図7〜図9は、熱利用装置10が多管式回転加熱装置10S、たとえばスチームチューブドライヤーと称呼される加熱装置(乾燥装置)の例である。
多管式回転加熱装置10Sは、所定本数(多数本数)の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群12Yを凝縮器12とし、第2系統加熱管群14Yを吸収器14としたものである。本形態では内側の第2系統加熱管群14Yを吸収器14、外側の第1系統加熱管群12Yを凝縮器12となるようにしてある。それぞれが出口側にマニフォールドと呼ばれるヘッダーを有している。
【0035】
この多管式回転加熱装置10Sの構造としては種々公知のものが存在するが、図示例は、図面左側から被処理物たる被加熱体(たとえば粒状体)40が供給筒61内に装入され、スクリュウコンベア62によりケーシング10Sc内に装入される。凝縮器12及び吸収器14からの伝熱により乾燥操作を終えた処理品は排出筒63内をスクリュー64により排出され、固定ケーシング65の下部排出口から排出される。キャリアガスは、固定ケーシング65の上部吹込口65aから排出筒63を通してケーシング10Sc内に吹き込まれ、供給筒61の排気口61aから蒸発蒸気とともに排気される。
【0036】
一方、凝縮器12を構成する第1系統加熱管群12Yは一般に蒸気加熱に使用されている方式と同様のものをそのまま使用できる。しかし、第2の形態のディスク型加熱装置の場合と同様に、この種の多管式回転加熱装置10Sは、通常は、その処理物の流れ方向に勾配をもたせて配置しているので、吸収器14を構成する第2系統加熱管群14Yへの液の供給形態として、第2系統加熱管群14Yの上流側からロータリージョイント14C介し、スクリュウコンベア62の軸内を経由して濃吸収液27と被吸収蒸気を供給し、第2系統加熱管群14Yには均等に濃吸収液27と蒸気が供給されるような構造となっている。その際、スクリュウコンベア62の軸と、第2系統加熱管群14Yとの間には、中継ロータリージョイント14Eを設けて連結できる。14Fは、中継ロータリージョイント14Eは支持部材である。
【0037】
他方、通常のスチームチューブドライヤーは蒸気加熱であるため、蒸気供給およびコンデンセート(凝縮液)排出のための二重ロータリージョイントが一基あればよい。しかし本発明の形態では、入口側に、吸収器14への濃吸収液と被吸収蒸気の供給ために二重ロータリージィント14Cが一基、また出口側に凝縮器12への蒸気とそれのコンデンセート排出と、吸収器14からの希吸収液の排出のための三重ロータリージョイント14Gが必要となる。吸収器14のチューブの入口側では吸収液と被吸収蒸気を各チューブに均等に分配するヘッダー14Hが必要である。
【0038】
<加熱管の形態>
現状の吸収ヒートポンプにおいては、チューブなどの外表面に吸収液を薄膜を形成させたり、チューブの表面にヒダをつけたりして、吸収面の面積の拡大あるいは発生した吸収熱を直ちにチューブなどの内面に伝熱することを考慮している。
【0039】
本発明では、チューブなどの伝熱面の内面に吸収液を通し、外面を流動する被加熱物処理物への伝熱を行うことから、同様な手法で同様な効果を発揮するのは困難である。そこで、たとえば図10〜図13の手段を採用して、チューブあるいはチューブを含む筐体を回転させることより、伝熱面内面での吸収液の薄膜化や水蒸気の吸収の促進、あるいは伝熱面での熱移動の促進を行うことを図るものである。
【0040】
図10は、チューブに細かいメッシュ状の円筒71をチューブに内接させて挿入し、吸収液の保持を図るものである。
図11は、濃吸収液は圧力をもって吸収器14に供給されるので、チューブ内に噴霧ノズル72によりスプレーさせることでチューブ内面に薄膜を形成させることができるようにしたものである。
図12は、細いスプリング状の線材73をチューブ内に内挿し液膜の保持をさせるものである。チューブを回転させる際は、螺旋の向きは液の流れ方向に逆らう方向に回し、チューブ内壁に液膜が均一に保持させるとともに吸収液の攪拌による伝熱の促進効果がある。
図13は、ダムリング74を一定間隔で内挿し、吸収液が流れ落ちるのを防止して、チューブの回転によりチューブ内壁に薄膜が形成されるようにする。
以上の手段は、運転条件での吸収液の温度や濃度、あるいは伝熱面の規模や形状や流れ方向への長さ、傾きによって選択できる。
【0041】
<本発明2の第1形態>
本発明2の「別体としての少なくとも2つの熱利用装置」を有する工業用加熱装置も提案される。すなわち図14に示すとおり、2つの熱利用装置51、52と組み合わせる例であり、熱利用装置51の加熱要素を凝縮器12とし、熱利用装置52の加熱要素を吸収器14とし、再生器11と、蒸発器13とを組み合わせたものである。この場合、図示例では、被加熱体40を個別に加熱しているが、一方の熱利用装置により加熱したものを、他方の熱利用装置に送り、さらに加熱を行うように、被加熱体40の流れを取るようにすることもできる。
【0042】
<本発明2の第2形態>
図15は、本発明2を多管式回転加熱装置51、52に適用した具体例を示したものでえあり、多管式回転加熱装置51の加熱管群は凝縮器12として動作させ、多管式回転加熱装置52の加熱管群は吸収器14として動作させるようにしたものである。
多管式回転加熱装置51、52の構造は、図7の例で説明したので、説明を省略しても判るであろう。
【符号の説明】
【0043】
10…熱利用装置、10A…ケーシング、10B…蒸発缶、10S…多管式回転加熱装置、11…再生器、12…凝縮器、13…蒸発器、14…吸収器、25…希吸収液、27…濃吸収液、51…熱利用装置、52…熱利用装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器と、蒸発器と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置とを備え、前記熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【請求項2】
再生器と、蒸発器と、それぞれ熱媒体を流通させて加熱を行う加熱要素を有する別体としての少なくとも2つの熱利用装置とを備え、
第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【請求項3】
前記吸収器として薄膜流下式熱交換器を使用している請求項1又は2記載の工業用加熱装置。
【請求項4】
前記熱利用装置がディスク型加熱装置であり、一方のシャフトを凝縮器、他方のシャフトを吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【請求項5】
前記熱利用装置が多管式回転加熱装置であり、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【請求項1】
再生器と、蒸発器と、熱媒体を流通させて加熱を行う複数の加熱要素を有する単一の熱利用装置とを備え、前記熱利用装置内の第1系統加熱要素を凝縮器とし、第2系統加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【請求項2】
再生器と、蒸発器と、それぞれ熱媒体を流通させて加熱を行う加熱要素を有する別体としての少なくとも2つの熱利用装置とを備え、
第1の熱利用装置の加熱要素を凝縮器とし、第2の熱利用装置の加熱要素を吸収器とし、前記熱媒体として作動流体を使用する装置であって、
前記再生器において外部駆動加熱源からの熱を受けて前記作動流体の蒸発を行い、前記凝縮器において凝縮させ、凝縮液を前記蒸発器に移行させ、その蒸発器において蒸発した蒸気を吸収器において吸収させ、前記吸収器から希吸収液を前記再生器へ移行させ、前記再生器から濃吸収液を前記吸収器へ移行させるよう組み合わせてあることを特徴とする工業用加熱装置。
【請求項3】
前記吸収器として薄膜流下式熱交換器を使用している請求項1又は2記載の工業用加熱装置。
【請求項4】
前記熱利用装置がディスク型加熱装置であり、一方のシャフトを凝縮器、他方のシャフトを吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【請求項5】
前記熱利用装置が多管式回転加熱装置であり、所定本数の加熱管群を第1系統及び第2系統に分類し、第1系統加熱管群を凝縮器とし、第1系統加熱管群を吸収器とした請求項1記載の工業用加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−7404(P2011−7404A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150471(P2009−150471)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]