説明

工業用織布

決められた幅を有する組織を形成するために機械方向(MD)の糸の配列を螺旋状に曲げ、それから樹脂によって横方向(CD)にMD糸を結合することによって、工業用織製品を形成するための方法。この方法は、抄紙、及び他の工業的応用において形成布、プレス布又は乾燥布として使用されることが出来る通常のように織ったり編んだりして基材を作る方法に代わるものである。製品を形成する装置もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工業用布に関する。より詳しくは、本発明は、糸の配列を螺旋状に曲げ、CD方向に糸を樹脂で結合することに関する。
【0002】
更に本発明は、例えば抄紙機の形成部、プレス部又は乾燥部で用いられる、エンドレス型又は繋ぎ合わせ型の工業用布として使われている、従来は織ったり編まれたりして出来ている基材に関する。しかし、本発明はまた、製紙以外の他の応用における工業用布としても有用である。
【背景技術】
【0003】
製紙過程の間、セルロースの繊維状のウェブは抄紙機の形成部で動いている形成布上に繊維のスラリー、即ちセルロースの繊維が水分散したものを沈積させることによって、形成される。大量の水が形成布を通してスラリーから排出され、セルロースの繊維状のウェブは形成布の表面に残る。
【0004】
新しく形成されたセルロースの繊維状のウェブは形成部から、一連のプレスニップを含むプレス部へと進められる。セルロースの繊維状のウェブはプレス布、又は頻繁にあることだが2つのその様なプレス布の間によって支持されるプレスニップを通過する。プレスニップでセルロースの繊維状のウェブは、水を絞り出し、セルロースの繊維状のウェブが紙シートになるように、ウェブの中のセルロースの繊維を互いに付着させる圧縮力にかけられる。水は単一、又は複数のプレス布によって受けいれられ、理想的には紙シートに戻らない。
【0005】
紙シートは、蒸気によって内部から加熱される少なくとも一連の回転乾燥ドラム又はシリンダーを含む、乾燥部へと最終的に進む。新しく形成された紙シートは、ドラムの表面と近接している紙シートを支える乾燥布によって、一連のドラムを各々巡る蛇行している通路へと向けられる。加熱されたドラムは、蒸発脱水を通してシートの水分含有量を望ましいレベルにまで減少させる。
【0006】
形成布、プレス布、乾燥布の全ては抄紙機においてエンドレス輪の形をしており、及びコンベヤーのような機能をすることは、正しく認識されるべきである。更に、製紙は高速で進行する連続的な過程であることも正しく認識されるべきである。即ち、繊維のスラリーが形成部において形成布へと連続して沈積させられる間、新しく製造された紙シートは乾燥部から出た後に、連続してロールへと巻かれる。
【0007】
製紙において使用される工業用布がエンドレス形でのみ供給されることは、もう一度思い出されるべきである。というのも、新しく形成されたセルロースの繊維状のウェブは、布の非均一性によって傷を付けられる等といった、他の事象の影響を非常に受けやすいからである。
【0008】
それらの要求によって姿を見せた著しい技術的障害にもかかわらず、機械繋ぎ合わせ(on−machine−seamable)布を発展させることが非常に望まれていた。というのも、そういった布は比較的に楽で安全に設置することが出来たからである。最終的に、布の2つの端部の横方向の縁に合わせ輪(seaming loop)を設けることによって形成された繋ぎ目を有する布の発展が達成された。合わせ輪はそれ自身、布の機械方向(MD)の糸によって形成される。その繋ぎ目は、布の2つの端部を1つにすることで布の2つの端部の合わせ輪を互いに絡み合わせることによって、及び布の2つの端部を一緒に固定するために互いに絡み合わされた合わせ輪によって画定された通路の中に、所謂ピン、又はピントルを通すことによって、閉じられる。言うまでもないが、抄紙機にエンドレス布を設置するのに比べて、機械繋ぎ合わせ布を設置することは遥かに簡単で、かかる時間も少ない。
【0009】
そのような繋ぎ目を有する抄紙機に結合され得る布を製造する1つの方法は、布を平織りすることである。この場合、縦糸は布の機械方向(MD)の糸である。合わせ輪を形成するために、布の端部の縦糸が逆戻りさせられ、縦糸と平行する方向で布の本体の中に幾らかの距離戻って織られる。より好ましい他の技術は、エンドレス形織りの修正型であり、それは通常において布のエンドレス形の輪を製造するために使用される。修正されたエンドレス形織りにおいて、横糸は織機を横断するように前後に連続的に織られ、それは、輪を形成するピンの周りを通過することによって織られた布の端部の1つに輪を形成する各々の通路においてなされる。最終的に布のMD糸になる横糸が連続しているとき、その方法で得られた合わせ輪は、平織り布の端部の中に横の端部を戻すように織ることによって製造され得るものよりも強い。
【0010】
プレス布として使用される機械繋ぎ合わせ布の製造における最後の工程は、1つ又はそれ以上のステープルファイバー材の層を、少なくともその外側の表面に打ち込むことである。その打ち込みは、エンドレス輪の形へと結合された布をともなって実行される。布の繋ぎ目の領域は、それらの領域が布の残りの部分と可能な限り近接していることを確かにするために、打ち込み工程によって保護されている。打ち込み工程の結果、布の2つの端部を互いに結合するピントルは除去され、繋ぎ目の領域のステープルファイバー材はその領域を保護するフラップを製造するために切り落とされる。今や開いた端部を有している布は、それから箱詰めにされ、製紙業者のもとへ輸送される。
【0011】
工業用布は一般的に、織工程、熱処理工程及び選択的繋ぎ合わせ工程によって作られる。織工程の間に、例えばモノフィラメントといった生の材料は、「平ら」の、又は四角形の布へと織られるか、他にはエンドレス形、又は「輪形」の布として織られる。その後に熱処理工程があり、それから繋ぎ合わせ工程へと通常は続く。繋ぎ合わせは、布の反対の端部がピンの繋ぎ目又はピンの螺旋形の繋ぎ目といった繋ぎ目を作るやり方で形作られることを要求する。
【0012】
しかし、通常の織工程、熱処理工程及び選択的繋ぎ合わせ工程ではなく、他の方法で工業用織布を製造することも望ましい。
【特許文献1】米国特許第4495680号明細書
【特許文献2】米国特許第3097413号明細書
【特許文献3】米国特許第6491794B2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の第1の目的は、布と言及されてはいるけれども、織ったり編んだりすることによって製造されてはいない、工業用織製品を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、製紙及び他の応用のための、繋ぎ目を有する又は繋ぎ目がない工業用布を製造する方法を提供することである。
【0015】
それらの及び他の目的及び利点は、本発明によって与えられる。その点に関して、本発明は糸の配列を螺旋状に曲げて、CD方向に糸を樹脂で結合させることに向けられている。形成された製品の実施様態は繋ぎ目を有している。この方法は、抄紙、即ちハイドロエンタングリング(水を使うプロセス)、メルトブロー、スパンボンディング、及びエアーレイドニードルパンチングによる不織製品、ダンボール製品、通気乾燥プロセスによって作られるティッシュ及びタオル製品、濡れている又は乾燥しているパルプを使った製品、及びスラッジフィルタや化学洗浄等を使用する抄紙に関すプロセス、において形成布、プレス布又は乾燥布として使用され得る、通常は織ったり編んだりされて出来ている基材の代替物となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による布を製造するための方法はまた、これより記載される。第1に、モノフィラメントといった機械方向(MD)の糸の組織が、水平に取り付けられた2つの平行するロール、繋ぎ目が形成される場合においては、更に「回転する」材料固定機具からなる装置を使用することで、エンドレス形又は繋ぎ合わせ出来るように螺旋状に曲げられている。第2に、MD糸の片面又は両面に直角に重合体を沈積させることによって、CD要素がMD糸の組織上に直接に作られる。CD要素は、全体の構造を固定し、安定化させるための結合部として作用する。それらは布の全幅の長さ、又は全幅より短い長さであり得る。重合体は、ジェット又は目的に適しておりこれより記述される他の方法を使用することで沈積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
従って本発明によって、下記の図と合わせて取られるべき記述を参照することで、その目的及び利点が実現されるであろう。
【0018】
これより図をより詳細に参照するが、図4は本発明に従う工業用織布50の諸部分を示している。有利なことに、布50は糸の配列が螺旋状に曲げられ、CD方向に糸が樹脂で結合することによって形成されている。この方法は、通常の織ったり編んだりすることの代替となる。図よりわかるように、織構造50はMD糸42の組織の上に直接に作られたCD要素40の組織からなる。これらのCD要素40は、例えば、MD糸42の組織の片面又は両面に直角に重合体を沈積することで形成されてよい。この方法では、CD要素40は全体の構造50を固定し、安定化するための結合部として作用する。図よりわかるように、CD要素40の長さは、構造50の全幅と等しい、又はそれより長さが短いこともあり得る。加えて、CD要素40は、MD糸42の全長に沿ってMD糸42を封じたりはせず、局所的な封じ込めのみを提供する。また、MD糸42は、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、目的に適合する他の重合体、又はもし目的に適合するならば金属といった他の材料からなり得ることを注意する。加えて、MD糸42は、例えば円形、正方形、長方形、楕円形、浅裂が入った形及び目的に適合する他の形を取ることが出来る。明らかに、CD要素40は望まれるような形に成形されることが出来る。また、モノフィラメント糸がここにおける例として使用される一方、例えばマルチフィラメント糸、複合糸及び当業者によって知られており目的に適合する他の型も使用されてよい。
【0019】
有利なことに、CD要素40は、織ったり編んだりされた布として機能するのではあるが、ある点においては織ったり編んだりされた製品よりも優れた性能も有する安定構造50を生み出すために、MD糸42の一部を固定する。例えば、MD糸の間隔はCD糸の周りを織ることによって制御されるのではないので、MD糸は初めから間を空けて、又はともに近接するように配置決めされることが出来る。もし本発明による製品がティッシュ又はタオル製品、又は織り目加工された不織製品といったエンボス加工の布として使用されるならば、提供されるもう1つの重要な利点は、パターンを有する布50の製造である。例えば幾らかの重合体をある領域上に残すために重合体が放出される速度を速くする、又は遅くする等して、CD要素40のMD糸組織42上への沈積を制御することによって、そのようなパターン付けが達成される。そうすることで、樹脂を織布上に望ましいパターンで沈積させるだけでなく、布の製造及びパターンが同時に達成される。
【0020】
本発明の織布50を製造する第1の工程は、図1に示されているような装置10を使用してMD糸42の組織を螺旋状に曲げることである。しかし、本発明の1つの実施様態においては、エンドレス形の製品が「回転する」材料固定機具12を除くことによって製造されることを注意する。その場合、MD糸は、繋ぎ目のないMD糸42の組織を作り出すために、2つの平行したロールA及びBの周りに曲げられる、又は覆われる。同様のプロセスが特許文献1に記載されている(例えば特許文献2も参照)。即ち、680の特許が抄紙機のフェルトを作る際に使用されることが出来る、MD糸のみから構成される基礎布を形成するための方法及び装置を示している。基本的に、MD糸は2つの平行するロールの周囲を螺旋状に曲げられている。続いて、繊維のバット材又は他の不織材料が、つまりは横方向の糸がないという「充満していない」抄紙機用フェルトを提供するために、MD糸の螺旋の配列に適用及び接着されている。
【0021】
繋ぎ目のある製品が製造される代わりとなる本発明の更なる実施様態において、装置10は2つの平行するロール及びまた「回転する」材料固定機具12からなる(繋ぎ合わせ可能な配列を作るために使用されるロールの別の例としては、例えば特許文献3を参照)。ロールA及びBは好ましくは水平に取り付けられており、そして乾燥用布による通常の加熱処理において使用される鋼製のロールと同様のものであるが、ロールA及びBは加熱される必要はない。回転する材料固定機具12は、ロールの頂部表面によって形成される平面において、2つのロールの間に平行に配置されている。この回転する材料固定機具12は2つのピンの列を含む、即ちピン列A及びピン列Bである。ピンは、構造50の端部においてMD糸42から繋ぎ目を最終的に形成する糸を「回転」させる。
【0022】
装置10を用いることで、例えば1つ又はそれ以上のモノフィラメントの大きなスプール(不図示)が、覆うプロセスの手段を用いることによって、その2つの端部においてMD糸の組織及び繋ぎ目を作り出す際に使用される。始めに、モノフィラメントのスプールの一端が結ばれる、又はさもなければピン列Aの遠い方の端部にあるピン16に取り付けられる。このモノフィラメントは、それから制御された張力で解かれ、ロールAに向かって垂直に移動する。モノフィラメントは最初にロールAの頂部側面に接触し、その周りを180度に渡り覆い、そしてロールAの底部側面に接触する。それからモノフィラメントはピン列Bの遠い方の端部にあるピン18へと移動する。ピン18は、モノフィラメントがこのプロセスの始まりにおいて取り付けられていたピン列Aにあるピン16の反対側にあることを、注意する。覆うプロセスの間に、モノフィラメントはロールに対し垂直の向きで好ましくは維持されるのであるが、覆う角度は小さくわずかであってもよいことを、更に注意する。この結合において、スペーサ14は、モノフィラメントが覆われるときにモノフィラメントを平行に配置し、間隔を空けることを容易にするために、ピンの近く及び各々のロールの頂部及び底部側面の近くに配置されることが出来る。
【0023】
ピン18に届いた後、モノフィラメントはピン18を越えて又はその周囲に垂れ下がり、そしてロールBから解かれる。モノフィラメントは最初にロールBの頂部側面に接触し、その周りを180度に渡り覆い、そしてロールBの底部側面に接触する。それからモノフィラメントは、ロールAへと運ばれるにつれ、更に解かれていく。モノフィラメントは最初にロールAの底部側面と接触し、それからロールAの周りを180度に渡り覆い、ロールAの頂部と接触する。それからモノフィラメントはピン列Aのピン19から解かれる。ピン19は、モノフィラメントが覆うプロセスの始めにおいて取り付けられているピン16と、隣接していることを注意する。モノフィラメントはピン19の周りを覆い、その覆うプロセスは、MD糸42の組織が構造50の端部の望ましい幅と等しい幅を有するように構築されるまで繰り返される。
【0024】
図2は、ピンの好ましい組織を有する、回転する材料固定機具12を示す。この組織は、主構造26と連続している一連の平行なループ部24を滑るように通過する可動ピントル22から構成される。図2に示されているのは、挿入されたピントル22を有するピン列A、及びピントル22が取り除かれたピン列Bである。ループ部24の間の間隔28は、覆われるべきモノフィラメント(不図示)の配置を容易にすることを注意する。ループ部の幅30は、反対方向から来る繋ぎ目の他の半分を作り出すモノフィラメントの輪として利用可能な間隔を決定することも、更に注意する。その結合において、ループ部の幅30は一般的にモノフィラメントの幅と等しい、又はそれより大きい。しかし、ループ部の幅はまたより小さくすることも出来るのであり、それはモノフィラメントの輪を繋ぎ目にある利用可能な間隔へ適合させるのに順応が必要とされる場合である。
【0025】
図2で示されるピン組織は以下のように機能する。モノフィラメントは望ましいピンの位置まで運ばれたら、主構造26における2つの平行するループ部24の間に配置される。それからピントル22は、モノフィラメントと噛み合う、又はそれを捉えるように前方へ滑って移動する。図2で示されるピン組織は、最終的な織製品において好ましい構成で繋ぎ目を形成するようにモノフィラメントを配置することを可能とするので、好ましい。
【0026】
図3は、ピン列A及びBを有する別様の回転する材料固定機具12を示す。図を見ればわかるように、ピン32は垂直に取り付けられているが、しかし個別で又はグループで回転し水平な位置へと動くことが可能である。ピン32が垂直な位置にあるとき、モノフィラメントはピン32の上に配置、及びそこから取り除かれることが容易に出来る。一方、ピン32が回転して水平な位置へと来たとき、モノフィラメントはピン32の周りに固定、又は捉えられる。ピン32が回転して水平な位置に来た後、そのときモノフィラメントは最終的な繋ぎ目のための好ましい位置にある。
【0027】
MD糸の組織が組立てられた後、次の工程は、図4に示されているように、MD糸組織上のCD要素40の組織を形成することである。CD要素40の組織を作り出す1つの手段は、MD糸42上又はその間にCD方向で硬化性重合体を施すピエゾジェット又は複数のジェットといった重合体沈積装置を利用することである。続いて、重合体を硬化させる(例えば、紫外線光又は熱によって)ことで、CD要素40の硬い組織が出来上がる。重合体はMD糸42の組織の片面又は両面に供給されることが出来ることを注意する。重合体が両面に供給される場合、各々の表面からの重合体は結びつき、続いてそれらが出会った所に接着する。
【0028】
有利なことに、CD要素40は、布の安定性及び空気及び/又は水に対する浸透性、構造的空隙、キャリパー(caliper)且つ同様のものといった他の機能的特性に寄与する。更なる利点は、CD要素の材料として使用される重合体が、安定したモノフィラメントへと容易に押出し成形されないものであることである。また更なる利益として、CD要素40は構造体50の摩擦のある側で「滑り路(shute runners)」として作用し、そうすることでMD糸42を有する層を保護する。この関係において、高い耐磨耗性を持つ重合体が布の耐磨耗性を著しく改善するCD要素の材料として使用される。
【0029】
ジェットを用いること以外のCD要素40を形成する手段には、重合体メルトプロセス、及び硬化重合体プロセスが含まれる。前者のプロセスでは、融解した重合体がMD糸42の上及びその間にCD方向で沈積される。その後、融解した重合体は冷却し、CD要素40の組織へと固化する。後者のプロセスにおいて、硬化重合体はCD方向でMD糸42の上及びその間に沈積される。それに続く重合体の硬化によって、CD要素40の硬い組織が出来上がる。両者の方法ともに、重合体はMD糸42の組織の片面又は両面へと供給されることが出来る。重合体が両面に供給される場合、重合体の結合及びそれに続く接着は製品の安定性を最適にする。
【0030】
CD要素40の組織を作るためのまた別の方法は、いわゆる溶融沈積モデリング(「FDM」)であり、それは原材料としてモノフィラメントを使用する。この方法では、モノフィラメントが溶かされ、そして融解されたモノフィラメントがMD糸42の組織上に噴射された流れとして供給される。重合体は続いて冷却し、CD要素40の硬い組織が出来上がる。また、重合体はMD糸42の片面又は両面に供給されることができ、両面の場合、重合体の結合及びそれに続く接着は端部構造50の安定性を最適にするために望ましい。
【0031】
CD要素40の組織を形成するための更なる方法は、CD要素40として配置されたモノフィラメントを融解及び接着することである。この方法では、「CDモノフィラメント」が最初に単独で又はグループで配置され、次にMD糸42の組織に接触する。それからCDモノフィラメントは加熱されることで変形し、MD糸42と機械的に結合する。続いて、CDモノフィラメントは冷却してCD要素40の硬い組織となる。CDモノフィラメントは、MD糸42の組織の片面、又は好ましくは両面に最初から配置されていることを注意する。両面に配置されている場合、各々の表面からのCDモノフィラメントは互いが結合し、構造50の厚さ方向における中央付近のそれらモノフィラメントが出会う場所において接着するように変形させられる。これは優れた安定性を有する端部構造50を生み出す。CD要素として特に適している重合体はMXD6、又はポリ−m−キシリレンアジパミドであることを注意する。モノフィラメントにおいて、この重合体は、CD糸のように十分な機能的強度を失うことなしに、自分自身に接着されることで、特異的な性能を生み出す。別法では、例えば核の部分よりも融点が低い被覆層からなるといった、複合モノフィラメントが使用されることが出来る。そのようなモノフィラメントはCD又はMD方向のみで、又は好ましくはその両方向で使用されることが出来るが、そうすることで強力な接着性及び最も安定した端部構造50が出来上がる。
【0032】
本発明の繋ぎ合わせする形態としては、CD方向要素40の組織が作られた後、回転する材料固定機具12にあるピントル22は除去され、そして構造50が設置出来るようになることを注意する。そのような設置は、輪を含む布の2つの端部を1つに結合又は噛み合わせ、それからエンドレス布を作るために噛み合わされた輪に新しいピントル22を挿入することによって達成される。
【0033】
ちなみに、構造50がプレス布又は皺ベルト(corrugator belt)として使用される場合、バットは片面又は両面に通常は付加されることを注意する。加えて、他の不織布はバットを有する又はバットがない構造50へと積層されることが出来る。構造50の端部は機械方向(MD)と平行するように整えられていることを、更に注意する。
【0034】
前述の発明は、構造50を作り出す際に広い汎用性を有している。例えば、もし構造50が浸透性を持つようにしなければならない場合、構造50の有する隙間をCD要素の横方向の厚さによって調整することが出来る。もしシートに傷が付くことが問題となるような状況において、滑らかなシート接触面を有することが望ましいのであれば、CD要素の垂直の厚さはMD糸42の厚さと等しくなるように形成されてよい。もし構造50が不浸透性にされるべきならば、その構造は樹脂によってコートされる、又は樹脂をその中に充満させることが出来るし、また他の方法で加工されることも可能である。
【0035】
従って、本発明によってその目的及び利点は実現されるのであり、及び好ましい実施様態がここまで詳細に開示及び記載されてきたのだが、その範囲及び目的はそれによって限定されるものではない。その範囲は付随している請求項によって決められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に従う、MD糸を螺旋状に曲げるために使用される装置の斜視図である。
【図2】本発明の教示に従う、好ましい回転する材料固定機具の斜視図である。
【図3】本発明の教示に従う、回転する材料固定機具の別様態の斜視図である。
【図4】本発明の工業用織布の諸部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 装置
12 材料固定機具
14 スペーサ
16 ピン
18 ピン
19 ピン
24 ループ部
26 主構造
28 間隔
30 ループ部の幅
32 ピン
40 CD要素
42 MD糸
50 布(織構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織構造を形成するための方法であり、
決められた幅を有する組織を形成するために機械方向(MD)の糸を螺旋状に曲げる工程と、
前記MD糸の組織に横方向(CD)の要素のパターンを沈積させる工程と、
からなることを特徴とする前記の方法。
【請求項2】
CD要素は、MD糸の位置を固定し、その構造を安定させるために、MD糸を結合することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
MD糸は、MD糸の長手に沿って、CD要素によって断続的に覆われていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD要素は、前記MD糸の組織の全幅に渡ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CD要素は、前記MD糸の組織の全幅以下の長さであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
形成される織構造は、形成布、乾燥布、TAD布、パルプ形成布、スレッジフィルタ布、化学洗浄布又は工業用布であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
MD糸と結合するCD要素の組織を得るために、前記CD要素は、重合体樹脂を直角に前記MD糸の組織の片面又は両面に沈積させることによって、前記MD糸の組織上に作り上げられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
MD糸の組織上に作り上げられたパターンは、前記重合体の前記沈積を制御することによって、多様性を持つことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記沈積の速度は、前記MD糸の組織に適用される重合体の量を調節するように制御されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
重合体は、1つ又はそれ以上の供給機によって供給されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
重合体は、MD糸の組織の間を結合させ、続いて接着するために、MD糸の組織の両面に供給されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
沈積した重合体は、紫外線光又は熱によって硬化されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
沈積した重合体は、CD要素の硬い組織を得るために続いて硬化されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
沈積した重合体は、溶解した重合体であり、及びCD要素の硬い組織を得るために続いて冷却されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
溶解した重合体は、原材料として使用されるモノフィラメントを溶かすことによって得られることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記CD要素は、前記MD糸の組織の片面又は両面に垂直にCDモノフィラメントを配置することによって、前記MD糸組織上に作り上げられており、前記CDモノフィラメントは加熱することで変形させられ、そしてMD糸と機械的に結合するCD要素の組織を得るために前記CDモノフィラメントは冷却されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
CDモノフィラメントは、前記MD糸の組織の間を結合及び接着するために、MD糸の組織の両面に配置されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CDモノフィラメントは、その機能的強さを維持している間においては、接着性を有していることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記重合体は、MXD6及びポリ−m−キシリレンアジパミドのいずれか1つであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記CDモノフィラメントは、被覆層及び核を有する複合モノフィラメントであり、及びその被覆層の融点は核の融点よりも低いことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
形成される織構造は、機械繋ぎ合わせ型又はエンドレス型であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
MD糸の組織を螺旋状に曲げるための装置であり、
水平に設置され及び互いが平行している、第1のロール及び第2のロールと、
第1及び第2のロールの間に平行に、及び2つのロールの頂部表面によって画定された平面上に配置されており、第1のピンの列と第2のピンの列とを含む、回転手段と、
からなっており、
第1のピン列の一端にある第1のピンに取り付けられた糸はロールに対し直角に解かれており、最初に第1のロールの頂部に接触し、それから前記第1のロールの底部の周囲を螺旋状に進むのであり、そして前記糸は更に最初に第2のロールの底部と接触し、それから前記第2のロールの頂部の周囲を螺旋状に進むように、前記ロールに対して垂直に解かれており、そして前記糸は更に前記ロールに対し直角に解かれており、それから第2のピン列の一端にある第2のピンの周囲をまわり、そして前記糸は更に同様のやり方で第2のロールに対して解かれており、望ましい幅のMD糸の組織が形成されるまで前記の螺旋状に巻く工程は繰り返されることを特徴とする前記の装置。
【請求項23】
螺旋状に巻かれたMD糸の組織に繋ぎ目を形成するための装置であり、
各々が開口部を有する、第1のピン列及び前記第1の列の反対にある第2のピン列と、
前記ピン開口部を滑って通過するための可動ピントルと、
からなり、
それぞれのMD糸は連続的にそれぞれ組を為す隣接するピンの間に配置され、その糸を捉えるようにピントルは前方へと滑り、そのプロセスは繋ぎ目が形成されるまで繰り返されることを特徴とする前記の装置。
【請求項24】
螺旋状に巻かれたMD糸の組織に繋ぎ目を形成するための装置であり、
垂直に取り付けられたピンの第1の列と、
前記第1の列の反対にあり及び前記第1の列と平行している、垂直に取り付けられた第2ピンの第2の列と、
からなり、
各々のMD糸が対応するピン上で輪にされた後、前記ピンは、最終的な繋ぎ目のための場所で糸を固定するために、水平の位置になるように回転させられることを特徴とする前記の装置。
【請求項25】
MD糸の組織を螺旋状に巻くための装置であり、
水平に設置され及び互いが平行している、第1のロール及び第2のロールと、
第1及び第2のロールの間に平行に、及び2つのロールの頂部表面によって画定された平面上に配置されており、第1のピンの列と第2のピンの列とを含む、回転手段と、
からなっており、
糸はロールに対して直角に解かれており、最初に第1のロールの頂部に接触し、それから前記第1のロールの底部の周囲を螺旋状に進むのであり、そして前記糸は更にまず第2のロールの底部に接触し、それから前記第2のロールの頂部の周囲を螺旋状に進むように、前記ロールに対し直角に解かれており、そして前記糸は更に同様のやり方で第1のロールに対する前記ロールに直角に解かれており、望ましい幅のMD糸の組織が形成されるまで前記の螺旋状に巻く工程は繰り返されることを特徴とする前記の装置。
【請求項26】
織構造であって、
決められた幅を有する組織を形成するために機械方向(MD)の糸を螺旋状に巻く工程と、
前記のMD糸の組織上に横方向(CD)要素のパターンを沈積させる工程と、
からなるやり方で作られることを特徴とする前記の織構造。
【請求項27】
CD要素は、MD糸の位置を固定し、及びその構造を安定させるために、MD糸同士を結合することを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項28】
MD糸は、MD糸の長手に沿って、CD要素によって断続的に覆われていることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項29】
CD要素は、前記MD糸の組織の全幅に渡ることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項30】
CD要素は、前記MD糸の組織の全幅以下の長さであることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項31】
MD糸と結合するCD要素の組織を得るために、前記CD要素は、重合体樹脂を直角に前記MD糸の組織の片面又は両面に沈積させることによって、前記MD糸の組織上に作り上げられることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項32】
MD糸の組織上に作り上げられたパターンは、前記重合体の前記沈積を制御することによって、多様性を持つことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項33】
前記沈積の速度は、前記MD糸の組織に適用される重合体の量を調節するように制御されていることを特徴とする請求項32に記載の織構造。
【請求項34】
重合体は、1つ又はそれ以上の供給機によって供給されることを特徴とする請求項31に記載の織構造。
【請求項35】
重合体は、MD糸の組織の間を結合させ、続いて接着するために、MD糸の組織の両面に供給されることを特徴とする請求項31に記載の織構造。
【請求項36】
沈積した重合体は、紫外線光又は熱によって硬化されることを特徴とする請求項31に記載の織構造。
【請求項37】
沈積した重合体は、CD要素の硬い組織を得るために続いて硬化されることを特徴とする請求項36に記載の織構造。
【請求項38】
沈積した重合体は、溶解した重合体であり、及びCD要素の硬い組織を得るために続いて冷却されることを特徴とする請求項31に記載の織構造。
【請求項39】
溶解した重合体は、原材料として使用されるモノフィラメントを溶かすことによって得られることを特徴とする請求項38に記載の織構造。
【請求項40】
前記CD要素は、前記MD糸の組織の片面又は両面に垂直にCDモノフィラメントを配置することによって、前記MD糸組織上に作り上げられており、前記CDモノフィラメントは加熱することで変形させられ、そしてMD糸と機械的に結合するCD要素の組織を得るために前記CDモノフィラメントは冷却されることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項41】
CDモノフィラメントは、前記MD糸の組織の間を結合及び接着するために、MD糸の組織の両面に配置されることを特徴とする請求項40に記載の織構造。
【請求項42】
前記CDモノフィラメントは、その機能的強さを維持している間においては、接着性を有していることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記重合体は、MXD6及びポリ−m−キシリレンアジパミドのいずれか1つであることを特徴とする請求項40に記載の織構造。
【請求項44】
前記CDモノフィラメントは、被覆層及び核を有する複合モノフィラメントであり、及びその被覆層の融点は核の融点よりも低いことを特徴とする請求項40に記載の織構造。
【請求項45】
形成される織構造は、機械繋ぎ合わせ型又はエンドレス型であることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項46】
形成される織構造は、形成布、乾燥布、TAD布、パルプ形成布、スレッジフィルタ布、化学洗浄布又は工業用布であることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項47】
MD糸は、非常に離れた間隔で又は近接して配置されることが可能である請求項26に記載の織構造。
【請求項48】
CD要素は、布の安定、及び空気及び/又は水に対する浸透性、構造的空隙容積又はキャリパーといった他の機能的特質に寄与することを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項49】
CD要素として使用される材料は、容易に押出し成形されないものであることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項50】
CD要素は、構造の摩擦のある側において滑り路として作用し、MD糸を保護することを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項51】
高い耐磨耗性の重合体が、CD要素の材料として使用されることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項52】
バットの層が、構造の片面又は両面に加えられることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項53】
1つ又はそれ以上の不織層が、バットを持つ又は持たない織構造になるように積層されることを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項54】
織構造は、浸透性を有することを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項55】
前記織構造は、滑らかなシート接触面を有することを特徴とする請求項26に記載の織構造。
【請求項56】
前記織構造を不浸透性にする樹脂コーティングを含むことを特徴とする請求項26に記載の織構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−513263(P2007−513263A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541137(P2006−541137)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031278
【国際公開番号】WO2005/056920
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】