説明

工業用途に有用な電気分解装置及び方法

本開示内容は、工業用途、特に無菌包装用途における分割及び単一電池の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本願の開示内容は、工業用途、詳細には無菌包装用途に有用な電池の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
食料品、飲料品及び乳製品市場では、常温保存可能な包装された液体及び半液体食料が豊富に存在する。常温保存可能な食料は、有用な保存期間を有しながらシール容器内において安全に貯蔵され、かつ非冷蔵貯蔵条件下で販売されることができるように処理されている食品である。これらの食料は、缶詰のスープから高酸性化炭酸飲料及びスポーツドリンクまで多岐にわたる。常温保存可能な食料を製造するために様々な技術が使用されている。そのような技術の一つは無菌包装である。典型的な無菌包装手順では、液体食品が加熱殺菌される一方で、食品包装が個別に化学殺菌される。次に、殺菌食品及び殺菌包装はまとめられ、殺菌条件下で殺菌封止される。結果として、常温保存可能な食品が得られる。
【0003】
食品包装の化学殺菌は、無菌包装フィラー中で行なわれることが多い。無菌包装フィラーは、化学滅菌剤を利用して、食品包装を殺菌する。典型的な無菌フィラーとしては、使い捨てフィラー及び再利用又は再循環フィラーが挙げられる。使い捨てフィラーは、殺菌剤の原液を利用するものである。フィラーは、包装の内側、そして時には外側に殺菌剤を堆積させて、包装を殺菌する。殺菌剤は、堆積点で加熱されることができるか、又は包装上へ堆積される前に予熱されることができる。また、特定の実行条件(例えば、温度、接触時間及び濃度)は、包装が市販可能なほど殺菌されている状態になるように選択される。包装内に堆積した後、使用済み殺菌剤は、包装から排出され、フィラーにより排出部又は異なる処理(包装の外部の処理など)のための機械の他の部分のいずれかへ運び出される。使い捨てフィラーでは、殺菌剤は使用されると直ぐに捨てられる。
【0004】
再利用又は再循環フィラーは、殺菌剤の溜め槽を含む。この溜め槽は、殺菌剤も所望の温度で維持されるように、所望の温度で保持される。フィラーは、この溜め槽から殺菌剤を吸引し、それを利用して、食品包装の内部及び/又は外部を殺菌する。次に、殺菌剤は、包装から吸い出され、集められ、元々あった同一溜め槽へ戻される。
【0005】
いずれかの種類のフィラーにより包装が処理された後に、包装は、微生物学的に純粋な水ですすがれ、食品を充填され、そして封止される。これらの工程の全ては、フィラーの内部で殺菌条件下において起こる。
【0006】
一般に使用される化学滅菌剤は過酸溶液である。この溶液では、過酸は、その対応するカルボン酸及び過酸化水素と平衡状態で存在する。平衡は、所定の溶液中に存在する反応物又は生成物の濃度に基づいて、化学平衡式の反応物側又は生成物側へ移る。
【0007】
通常、過酸溶液は、平衡濃縮物として最終使用者へ提供され、そして最終使用者は、彼らの対象とする表面の微生物処理に必要な濃度まで濃縮物を希釈する。過酸溶液が、循環しているフィラー内で使用されるとき、それらは、長時間に亘って再循環されて溜め槽へ戻される。時間とともに、溜め槽内の過酸は、徐々に分解するか、又はカルボン酸及び過酸化水素へ戻って平衡化する。結果として、溜め層は、より高濃度の過酸化水素及びカルボン酸を集める。フィラー操作者が、溜め槽中の過酸化水素又はカルボン酸の最大濃度について説明されている仕様説明書を有する。溜め槽がそれらの最大濃度へ達しそうになった場合には、フィラーは、停止され、吸引され、未使用溶液を再充填されなければならない。他のフィラー操作者は、フィラーが特定のブリードオフ速度を有するようにフィラーを設定する。ブリードオフ速度の調整は、溜め槽中の過酸化物及びカルボン酸の蓄積速度を、フィラーが長時間に亘って稼動できるように改良する。
【0008】
さらに、他の操作者は、過酸溶液中の過酸化水素を減らすために、カタラーゼ酵素を過酸溶液中に含有させる。そのような場合には、操作者は、過酸化水素濃度を厳密に監視し、過酸化水素が特定の濃度に達するときに、溶液中に酵素を定期的に加えなければならない。また、その溶液は、これらの酵素を機能させるために、特定温度で、かつ一定のpH範囲内で提供されなければならない。
【0009】
さらに、例えば純水により、包装がすすがれると直ぐに、すすぎ液に殺菌剤由来の残留物が蓄積するため好ましくなく、すすぎ液は装置から除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの手順の全ては、無菌フィラーを操作するために必要な水、エネルギー及び複雑さの量を不必要に増やす。このような背景に対して、本開示内容が達成された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
定義
下記で定義される用語については、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書中のどこかで示されない限りは、これらの定義が適用されるものとする。
【0012】
本明細書で使用されるときには、用語「分割セル(split cell)」又は「電気分割セル(electrical split cell)」は、アノードとカソードの間の電流のフローを許容するが、セルの一方から他方へのバルク液体の大規模な送達を抑制する塩橋により、アノード及びカソードが互いに分離している電解槽を意味する。本技術分野において知られている任意の塩橋又は半透過膜(イオン選択膜、高密度繊維メッシュ、及びゲルなどを含む)が、使用されることができる。
【0013】
本明細書で使用されるときには、用語「単一セル」又は「電気単一セル」は、アノード及びカソードがそのセル内に含まれている電解槽を意味する。
【0014】
用語「アノード」とは、正に帯電した任意の電極をいい、そして用語「カソード」とは、負に帯電した任意の電極をいう。
【0015】
本明細書では、全ての数値は、明示されているかどうかによらず、用語「約」で修飾されていると見なされる。一般に、用語「約」とは、当業者が、記載された値と等しいと見なすであろう(すなわち、同じ機能又は結果を有する)数値範囲をいう。多くの場合には、用語「約」は、最も近い有効数字へ四捨五入される数を含んでよい。
【0016】
質量割合、質量パーセント、質量%、wt%などは、物質の質量を組成物の質量で割ってから100を掛けたものとして当該物質の濃度を表す類語である。
【0017】
端点による数値範囲の記載は、その範囲に含まれる全ての数を含むものとする(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、単数形は、内容が明らかに別の意味を示さない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「(単数の)化合物」を含む組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「又は」は、内容が明らかに別の意味を示さない限り、「及び/又は」を含む意味で概ね利用される。
【0019】
本願における用語「抗菌」の使用は、任意の生成物が、抗菌剤としての使用に限り承認されるということを意味するものではない。
【0020】
概要
最初に、驚くべきことに、分割セル中の電気の使用が、過酸組成物中の過酸化水素を選択的に分解するのに特に有効であることが発見された。また、そのような電気分解プロセスが、無菌充填操作などの工業的操作に使用されるときに特に有利であることも発見された。
【0021】
過酸溶液がフィラー中で再循環させられるときに、過酸化物は時間とともに濃度が高まるので、無菌充填操作において過酸化水素を選択的に分解するために分割セル中で電気を使用することが効果的である。これは2つの課題を生む。第一に、幾つかの点では、過酸化物は、もはや処理済みの瓶から効果的に洗浄されないか、又はすすぎ水のろ過によっては除去されない場所へ蓄積する。これらの問題を解決するために、過酸溶液の全て又は一部は、未使用の水及び未使用の過酸化学薬品で希釈されなければならず、それらは、水及び化学薬品の両方の廃棄物を形成している。第二に、過酸:過酸化水素の比が5:1を下回るようにし続けることにより、微生物効果の最適化が維持されることができる。再循環された系では、これは、過酸化水素を選択的に分解する幾つかの手段なしでは維持されることができない。溶液へのカタラーゼの添加は、時間とともに過酸化物が増加することを修正するための可能な手段として認識されているが、それは、安定性が限られていることを問題とし、その用量は綿密に監視され、かつ制御されなければならない。過酸化水素をなくす電解法は、それが安定であり、用量制御を要さず、かつ上記で概説されたような過酸化水素の悪影響を軽減するために第二の化学薬品を添加する必要がないので、有効である。
【0022】
それ故に、本開示内容は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含む抗菌組成物を提供する工程、カルボン酸及び過酸を分解せずに過酸化水素を分解するために、該抗菌組成物と流体連通している分割セルを提供する工程を含む、抗菌組成物中で過酸化水素を選択的に分解する方法に関する。幾つかの場合には、分割セルは、少なくとも500pmの過酸化水素を15分未満で分解するために使用される。他の場合には、分割セルは、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するために使用される。過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量は:
約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
であることができる。
【0023】
ある実施形態では、分割セルは、塩橋及び第一の回路と第二の回路の間に電位を送る電源を用いて、互いに電気接続している第一の回路及び第二の回路を含み、該第一の回路はカソードを含み、該第二の回路はアノードを含み、そして該第一の回路は抗菌組成物を含み、そして該第二の回路は還元溶液を含み、該還元溶液は、該抗菌組成物から電子を受け入れ、かつ塩橋を通じて該第一の回路中へ電流を送ることができる。本方法は、過酸化水素、カルボン酸及び/又は過酸の量を監視して、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するために電位を調整する工程をさらに含むことができる。多くの場合には、本方法は、無菌包装法の一部分である。
【0024】
また、抗菌組成物中の過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するための装置も提供され、その装置は、塩橋及び該第一の回路と該第二の回路の間に電位を送る電源を用いて、互いに電気接続している第一の回路及び第二の回路を含む分割セルを含み、該第一の回路はカソードを含み、該第二の回路はアノードを含み、該第一の回路は抗菌組成物を含み、抗菌溶液は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を含み、そして第二の回路は、還元溶液を含み、そして該還元溶液は、該抗菌組成物から電子を受け入れ、かつ塩橋を通じて該第一の回路中へ電流を送ることができる。過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量は:
約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
であることができる。
【0025】
さらに、幾つかの場合には、前記カルボン酸は、酢酸、オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして前記過酸は、過酢酸、過オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。装置は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するために、過酸化水素及び/又は過酸の量を測定して、電位を調整する調整器をさらに含むことができる。
【0026】
また、無菌包装により包装を殺菌する方法も提供され、その方法は、複数の所望の成分を有する抗菌組成物を提供する工程、食品包装に入れられた最終食品を非冷蔵貯蔵条件下での供給販売に適したものにするために十分な量で、該抗菌組成物を該食品包装の表面に適用する工程、該抗菌組成物と流体連通している分割セルを提供する工程、及び該分割セルを使用して、該抗菌組成物中の複数の所望の成分の所定量を維持する工程を含む。特定の場合には、複数の所望の成分は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸である。過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量は:
約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
であることができる。
【0027】
また、カルボン酸は、酢酸、オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして過酸は、過酢酸、過オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択されることができる。
【0028】
また、無菌包装装置も提供され、その無菌包装装置は、溜め槽;殺菌領域;該溜め槽から該殺菌領域へ、複数の所望の成分の所定量を含む抗菌組成物を送達する第一のライン;該殺菌領域から該溜め槽又はドレーンへ該抗菌組成物を戻す第二のライン;該第二のライン及び/又は該第一のラインに組み込まれている1つ以上の任意の加熱器;並びに該溜め槽、該第一のライン、該第二のライン又は該1つ以上の任意の加熱器に組み込まれている分割セルを含み、そして該分割セルは、該抗菌組成物中の該複数の所望の成分の所定量を維持する。複数の所望の成分は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸でよい。また、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量は:
約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
であることができる。
【0029】
また、カルボン酸は、酢酸、オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして過酸は、過酢酸、過オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択されることができる。
【0030】
無菌包装装置の分割セルは、塩橋を用いて互いに電気接続している第一の回路及び第二の回路、並びに該第一の回路と該第二の回路の間に電位を送る電源を含むことができ、該第一の回路はカソードを含み、該第二の回路はアノードを含み、該第一の回路は抗菌組成物を含み、そして該第二の回路は還元溶液を含み、該還元溶液は、該抗菌組成物から電子を受け入れ、かつ塩橋を通じて該第一の回路中へ電流を送ることができる。無菌包装装置は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するために、過酸化水素及び/又は過酸の量を測定して、そして電位を調整する調整器をさらに含むことができる。
【0031】
無菌包装により包装を殺菌する方法も提供され、その方法は:過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含む抗菌組成物を溜め槽中で形成する工程;無菌ラインを用いて該溜め槽から包装へ該抗菌組成物を送達する工程;食品包装に入れられた最終食品を非冷蔵貯蔵条件下での供給販売に適したものにするために十分な量で、該組成物を該食品包装の表面へ適用する工程;該無菌ラインに分割セルを組み込む工程;並びに該分割セルを使用して、該抗菌組成物中の過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持する工程を含む。本方法は、過酸化水素、カルボン酸及び/又は過酸の量を感知するセンサーからの測定値に応じて該分割セルを駆動する工程、又は時間を基準にして該分割セルを駆動する工程をさらに含むことができる。
【0032】
第二に、無菌充填操作などの工業用途に使用される溶液中の複数の所望の成分を分解するのに有効な単一セルの電気を使用することが発見された。例えば、単一セルは、特定の溶液中で過酸化水素及び過酸を分解するために使用されることができる。一実施形態では、溶液中の過酸化水素及び過酸を非選択的に分解する方法が提供され、その方法は、過酸化水素及び過酸を含む溶液を提供する工程;並びに該溶液と流体連通している単一電解槽を提供して、該過酸化水素及び該過酸の所定量を分解する工程を含む。溶液は、無菌包装用途に由来するすすぎ液などの工業溶液、又は産業廃液でよい。
【0033】
別の実施形態では、無菌包装により包装を殺菌する方法が提供され、その方法は、複数の所望の成分を有する抗菌組成物を提供する工程;食品包装に入れられた最終食品を非冷蔵貯蔵条件下での供給販売に適したものにするために十分な量で、該抗菌組成物を該食品包装の表面に適用する工程;該抗菌組成物を該食品包装の表面に適用してから、すすぎ液を該食品包装の表面に適用する工程;並びに単一セルを用いて、使用済みすすぎ液中の複数の所望の成分の所定量を分解する工程を含む。幾つかの場合には、抗菌組成物は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含み、そして使用済みすすぎ液中の複数の所望の成分は、過酸化水素及び過酸を含む。
【0034】
他の実施形態では、無菌包装装置が提供され、その無菌包装装置は、殺菌領域;複数の所望の成分の所定量を含む抗菌組成物を殺菌領域へ送達する第一のライン;該殺菌領域から該抗菌組成物を送り出す第二のライン;該殺菌領域へすすぎ液を送達する第三のライン;該殺菌領域から使用済みすすぎ液を送り出す第四のライン;並びに該第三のライン又は該第四のラインに組み込まれている単一セルを含み、そして該単一セルは、使用済みすすぎ液中の複数の所望の成分の所定量を分解する。幾つかの場合には、該抗菌組成物の複数の所望の成分は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸であり、そして該使用済みすすぎ液の複数の所望の成分は、過酸化水素及び過酸である。
【0035】
下記の幾つかの実施形態の詳細な説明を考慮すれば、これらの及び他の実施形態は当業者及び他者にとって明らかになるであろう。しかしながら、本概要及び詳細な説明は、様々な実施形態の幾つかの例を示しているにすぎず、特許請求の範囲に記載されている本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】例示的な分割セルの概略図を示す図である。
【図2】例示的な瓶詰め操作の概略図を示す図である。
【図3】分割セルを無菌包装操作に組み込む一実施形態の概略図を示す図である。
【図4】例示的な単一セルの概略図を示す図である。
【図5】単一セルを無菌包装操作へ組み込む一実施形態の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
幾つかの実施形態の詳細な説明
本開示内容では、抗菌組成物中の複数の所望の成分を選択的に分解するために分割セルを使用する。ある実施形態では、分割セルは、過酸、カルボン酸及び過酸化水素を含む組成物中の過酸化水素を分解する。分割セル中の電気は、過酸化水素を水及び酸素へ酸化する。電気の使用は、それが容易に適用され、制御可能であり、再循環している組成物中に第二の化学物質を導入する必要がないので好ましい。このプロセスに第二の化学物質を含有させることは、第二の用量制御、ハンドリング、監視及び第二の化学物質の予想可能な残留物に関する追加の規制認可を必要とするので好ましくない。
【0038】
ある実施形態では、抗菌組成物を提供する工程、及び電気分割セルを使用して、組成物中の複数の所望の成分の濃度を抑制する工程を含む方法が提供される。分割セルは、セルを複数の所望の成分と相互作用させて複数の所望の成分を分解させる態様で、抗菌組成物と流体連通している。
【0039】
図1では例示的な分割セルが示される。分割セル10は、アノード3を含む第一の回路1とカソード4を含む第二の回路2を含む。第一の回路1及び第二の回路2は、塩橋6を介して電気接続している。電源5は、アノード3及びカソード4のそれぞれに接続しており、第一の回路1と第二の回路2の間に電位を送る。第一の回路1は、所定量の特定の複数の所望の成分を有する抗菌組成物を含む。第二の回路2は、塩橋6を介して電子を吸引し、抗菌組成物へプロトンを供与する還元溶液を含む。幾つかの実施形態では、この溶液は塩、酸又は塩基であることができる。特定の場合には、溶液は、過酸溶液中のカルボン酸のアルカリ土類塩(例えば、ナトリウム又はカリウムの酢酸塩又はオクタン酸塩など)を含む。
【0040】
分割セルは、特定の複数の所望の成分を選択的に分解することが好ましい任意の工業用途に使用されることができる。そのような用途としては、ヘルスケア、食料及び飲料、物品洗浄、洗濯、排水処理並びに家事用途が挙げられる。例えば、ヘルスケア分野では、手術器具及び内視鏡のような医療器具及び装置を殺菌するために使用される成分を選択的に分解するために、分割セルは使用されることができる。食料及び飲料分野では、装置(例えば、乳製品又は配送タンクに見られるような現場洗浄(clean-in-place)装置)を殺菌するために使用される成分を選択的に分解するために、分割セルは使用されることができる。物品洗浄及び洗濯用途では、物品洗浄洗剤、殺菌剤、又はすすぎ助剤、又は洗濯洗剤、殺菌剤、漂白剤、又は軟化剤などの使用サイクル中に使用される成分を選択的に分解するために、分割セルは使用されることができる。排水処理領域では、排水を処理するために使用される成分を選択的に分解するために、又は処理法の一部分として排水自体を選択的に分解するために、分割セルは使用されることができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、分割セルは、抗菌組成物中の過酸化水素を選択的に分解するために使用される。抗菌組成物は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含むことができる。任意の既知のカルボン酸及び過酸が、使用されることができ、下記でより詳しく検討されている。幾つかの場合には、カルボン酸は、酢酸、オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして過酸は、過酢酸、過オクタン酸、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0042】
カルボン酸及び過酸を分解することなく、過酸化水素を分解するために、分割セルは、抗菌組成物と流体連通して提供される。分割セルは、過酸化水素を任意の所望の速度で分解するように、例えば500ppmの過酸化水素を15分未満で分解するように、調整されることができる。また、分割セルは、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するために使用されることもできる。幾つかの場合には、その所定量は:
約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
であることができる。
【0043】
幾つかの場合には、これらの所定量を維持するために、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の量を監視して調整する調整器が提供される。調整器は、任意の所望の態様で調整機能を果たすことができる。幾つかの場合には、調整器は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の量の特定の測定値を得るのに応じて、電位を調整する。他の場合には、調整器は、時間を基準として電位を調整する。
【0044】
ある実施形態では、分割セルは、無菌包装操作に使用される。それ故に、複数の所望の成分を有する抗菌組成物を提供する工程;食品包装に入れられている最終食品を非冷蔵貯蔵条件下での供給販売に適したものにする量で、抗菌組成物を包装表面へ適用する工程;抗菌組成物と流体連通している分割セルを提供する工程;及び分割セルを使用して、抗菌組成物中の複数の所望の成分の所定量を維持する工程を含む、無菌包装を用いて包装を殺菌する方法が提供される。また、複数の所望の成分は、上述の通り、過酸化水素、カルボン酸及び過酸でよい。
【0045】
特定の場合には、無菌包装装置が提供される。図2では、無菌包装装置の実施形態の概略図が示される。図2では、殺菌管理のために、任意の所望の容器に抗菌組成物を接触させることができるプラント100が示される。図2では、複数の容器110が、殺菌トンネル102を通過させられる。次に、殺菌された複数の容器110aは、すすぎトンネル103を通過し、そして殺菌及びすすぎの済んだ複数の容器110bとして現れる。
【0046】
処理されることができる容器の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルミニウム、単層若しくは多層のフィルム若しくはポーチ、板紙、鋼鉄、ガラス、多層瓶、他のポリマー包装材料;フィルム、ポーチ、瓶におけるこれらの材料の組み合わせ;又は他の食料包装材料が挙げられる。
【0047】
このプロセスでは、抗菌組成物は、貯蔵タンク又は溜め槽101に加えられる。この組成物は、溜め槽101内で所望の温度で保持されることができる。この組成物は、無菌ライン112を介して送達され、加熱器108を通過させられて、所望の温度に到達する。次に、加熱された組成物は、殺菌トンネル102へポンプ送達されて、複数の容器110の全表面中へ、又は複数の容器110の全表面上へ噴霧される。この組成物は、所望の速度で溜め槽101から複数の容器表面へポンプ送達されることができる。
【0048】
容器と抗菌組成物の接触は、約0℃以上、25℃以上、又は約40℃以上の温度でよい。約40℃〜90℃の温度が使用されることができる。ある実施形態では、少なくとも5秒間又は少なくとも約10秒間に亘る40℃〜60℃での接触が利用される。
【0049】
次に、殺菌された複数の容器110aは、過剰な組成物を吸引され、次に未使用水すすぎトンネル103を通過させられる。未使用水の準備工程からトンネル103中へ未使用水108が提供される。また、未使用水は、すすぎ添加剤を含むことができる。トンネル103内では、殺菌された複数の容器110aは、未使用水で十分にすすがれる。次に、すすぎ及び殺菌の済んだ複数の容器110bは、すすぎトンネルから取り出される。過剰な水は、ドレーン106を介してトンネルから排出される。
【0050】
溜め槽101、殺菌トンネル102及びすすぎトンネル103の全ては、装置部品から蒸気又はガスを除去するために、湿式スクラッバ又は通気口111a、111b若しくは111cをそれぞれ取り付けられている。噴霧されて複数の容器110aから吸い出された抗菌組成物は、スプレートンネル102の底部に集積し、次に(a)再利用ライン114及び加熱器107を介して溜め槽101へと再利用されるか、(b)装置からドレーンへと運び出されるか、又は(c)プラントの別の部分へ送り出される。
【0051】
図3では、図2のプラント100と結合する分割セル10が示される。図3では、分割セル10は、プラント100の無菌ライン112と結合させられる。しかし、当業者は、セル10が、プラント100の他の部分(例えば、再利用ライン114、複数の加熱器107,108、又は溜め槽101など)と結合することができるものであると理解するであろう。同様に、プラント100は、必ずしも1つだけの分割セル10を含むわけではない任意の所望の設計でよく、任意の数の分割セルは、プラント100の様々な部分と結合できる。
【0052】
図3において結合した分割セル10では、第一の回路1は、無菌ライン112と流体連通している。無菌ライン112中の抗菌組成物は、回路1を介して移動する。組成物が回路1を介して移動するとき、電源による電流の適用により組成物は電子を失う(図示せず)。電流は、これらの電子をセルの回路2へ送り、回路2では、これらの電子が、塩橋6の他方に存在する塩/酸溶液を還元する。これが起こると、特定の複数の所望の成分が組成物から分解され、他の複数の所望の成分の所定量が維持されて無菌ライン112へ戻される。
【0053】
同時に、還元溶液が、容器118に存在し、ライン116を介して第二の回路2を進む。還元溶液が回路2を進むとき、それは電子を受け取る。回路1と回路2の間の電流のフローは、回路1と回路2の間の膜/塩橋界面により促進される。次に、還元溶液は、容器118へ戻るか、さもなければ装置から排出される。幾つかの実施形態では、還元溶液は、再循環しない使い捨て溶液である。他の実施形態では、還元溶液は、再循環している溶液である。還元溶液の置換/補充は、オーバーフロー/ブリードオフ装置の含有により自動的に制御されることができるので、それにより、還元溶液の一部分は、未使用溶液を連続的に補充される。それは、集積部と関連しているタイミング機構と充填機構とに基づいて手動で、又は自動的に変更されることができるか、又はpH、伝導度若しくは他の適切なセンサーにより外的に制御されることができる。
【0054】
様々な過酸抗菌組成物が、本方法に使用されることができる。特定の場合には、組成物は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含む。これらの成分の各々は、後述されるものである。
【0055】
過酸化水素
抗菌組成物は過酸化水素を含む。過酸化水素(H)は、その低分子量(34.014g/モル)のために高比率の活性酸素を有し、かつ弱酸性、透明及び無色の液体であるために、本方法により処理されることができる多数の物質と混合可能であるという利点を提供する。
【0056】
過酸化水素の別の利点は、それが水及び酸素へと分解することである。これらの分解生成物は、これらが被処理物質と概ね混合可能であるために有利である。例えば、分解生成物は、金属物質(例えば、実質的に非腐食性)及び食品(例えば、食品の色、風味、又は栄養価を実質的に変えない)と概ね混合可能であり、そして分解生成物は、ヒトと偶然に接触しても概ね無害であり、かつ環境的に安全である。
【0057】
好ましくは、組成物は、カルボン酸、過酸化水素及び過酸の平衡を維持するために有効な量で過酸化水素を含む。過酸化水素の量は、組成物の抗菌作用に悪影響を及ぼすであろう量を超えるべきではない。好ましくは、組成物は、過酸化水素を最小濃度で含む。
【0058】
典型的には、過酸化水素は、約2500ppm以下、好ましくは約3ppm〜約1850ppm、より好ましくは約6ppm〜約1250ppmの量で、使用溶液に存在することができる。
【0059】
カルボン酸
本開示内容の過酸抗菌組成物は、カルボン酸も含む。カルボン酸としては、式R−(COOH){式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、脂環式基、アリール、ヘテロアリール、又は複素環式基でよく、そしてnは1、2、又は3である}の任意の化合物が挙げられる。好ましくは、Rとしては、水素、アルキル、又はアルケニルが挙げられる。
【0060】
用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル(1−メチルエチル)、ブチル、tert‐ブチル(1,1−ジメチルエチル)などを含む。
【0061】
用語「アルケニル」は、2〜12個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素鎖、例えば、エテニル基、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−メチル−1−プロペニルなどを含む。
【0062】
上記アルキル又はアルケニルは、ヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄、又は酸素原子など)により末端で置換されて、アミノアルキル、オキシアルキル、又はチオアルキル、例えば、アミノメチル、チオエチル、オキシプロピルなどを形成することができる。同様に、上記アルキル又はアルケニルは、ヘテロ原子が鎖に介在して、アルキルアミノアルキル、アルキルチオアルキル、又はアルコキシアルキル、例えば、メチルアミノエチル、エチルチオプロピル、メトキシメチルなどを形成することができる。
【0063】
用語「脂環式」は、3〜8個の炭素原子を含む任意の環状ヒドロカルビルを含む。適切な脂環式基の例としては、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンタニルなどが挙げられる。
【0064】
用語「複素環式」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄、又は酸素原子など)が介在している炭素原子数3〜8の任意の環状ヒドロカルビルを含む。適切な複素環式基の例としては、テトラヒドロフラン、フラン、チオフェン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピロール、ピコリン、クマリン(coumaline)などから誘導される基が挙げられる。
【0065】
アルキル、アルケニル、脂環式基及び複素環式基は、非置換であるか、又は例えば、アリール、ヘテロアリール、C1〜4アルキル、C1〜4アルケニル、C1〜4アルコキシ、アミノ、カルボキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、−SOH、ホスホノ、若しくはヒドロキシにより置換されていることができる。アルキル、アルケニル、脂環式基又は複素環式基が置換されているとき、好ましくは、置換基は、C1〜4アルキル、ハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、又はホスホノである。一実施形態では、Rとしては、ヒドロキシで置換されているアルキルが挙げられる。
【0066】
用語「アリール」は、縮合した芳香族環(例えば、フェニル及びナフチルなど)を含む芳香族ヒドロカルビルを含む。
【0067】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、又は硫黄など)を有する複素環式芳香族誘導体を含み、そして例えば、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、ピリジル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリルなどを含む。
【0068】
また、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である縮合環(例えば、インドリル、プリニル、ベンゾフリルなど)も含む。
【0069】
アリール及びヘテロアリール基は、非置換であるか、又は例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アミノ、カルボキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、−SOH、ホスホノ、若しくはヒドロキシにより環上で置換されていることができる。アリール、アラルキル又はヘテロアリールが置換されているとき、好ましくは、置換基は、C1〜4アルキル、ハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、又はホスホノである。一実施形態では、Rとしては、C1〜4アルキルで置換されているアリールが挙げられる。
【0070】
適切なカルボン酸の例としては、様々なモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸が挙げられる。
【0071】
モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、マンデル酸などが挙げられる。
【0072】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フマル酸、グルタル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸などが挙げられる。
【0073】
トリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、トリメリット酸、イソクエン酸、アガリシン酸(agaicic acid)などが挙げられる。
【0074】
組成物に使用されるのに適したカルボン酸は、その溶解性、コスト、食品添加物としての認定、臭気、純度などについて選択されることができる。
【0075】
特に有用なカルボン酸としては、水溶性カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、マンデル酸、グルタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸などが挙げられる。また、水溶性カルボン酸は、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸などのような食品添加物になることができるので、これらのカルボン酸は、有用になることができる。
【0076】
好ましくは、組成物は、酢酸、オクタン酸、又はプロピオン酸、乳酸、ヘプタン酸、又はノナン酸を含む。
【0077】
組成物は、無菌包装プロセスのすすぎ工程中に無菌フィラーにおいて包装の内外部から効果的に除去されることができる量のカルボン酸を含むことができる。典型的には、カルボン酸は、40000ppm未満、好ましくは30000ppm未満、より好ましくは20000ppm未満の量で使用溶液中に存在することができる。
【0078】
過酸
本組成物は過酸も含む。過酸は、当技術分野ではペルカルボン酸、ペルオキシ酸、及びペルオキシカルボン酸としても知られている。
【0079】
過酸としては、式R−(COOOH){式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、脂環式基、アリール、ヘテロアリール、又は複素環式基でよく、そしてnは、1、2、又は3である}の任意の化合物が挙げられる。好ましくは、Rとしては、水素、アルキル、又はアルケニルが挙げられる。
【0080】
用語「アルキル」、「アルケニル」、「脂環式基」、「アリール」、「ヘテロアリール」及び「複素環式基」は、上記で定義された通りである。
【0081】
組成物に使用される過酸としては、上述のカルボン酸と上述の過酸化水素の間の酸触媒平衡反応から調製されることができる任意のペルオキシカルボン酸が挙げられる。好ましくは、組成物は、ペルオキシ酢酸、ペルオキシオクタン酸、又はペルオキシプロピオン酸、ペルオキシ乳酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、又はペルオキシノナン酸を含む。
【0082】
また、ペルオキシカルボン酸は、アルデヒドの自動酸化により、又は過酸化水素と酸塩化物、酸水素化物、カルボン酸無水物、若しくはナトリウムアルコラートとの反応により調製されることができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、Rが1〜4個の炭素原子のアルキルである少なくとも1つの水溶性ペルオキシカルボン酸を含む。例えば、一実施形態では、ペルオキシカルボン酸はペルオキシ酢酸を含む。別の実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、ヒドロキシで置換されている炭素原子数1〜4のアルキルであるRを有する。
【0084】
ペルオキシ酢酸の製造方法は、参照により本明細書に援用される米国特許第2,833,813号明細書に記述されているものなどが当業者に知られている。
【0085】
Rが炭素原子数1〜4のアルキルを含むペルオキシカルボン酸を用いる一つの利点は、そのようなペルオキシカルボン酸は、炭素原子数が4を超えるアルキルであるRを有するペルオキシカルボン酸よりも低いpKaを伝統的に有することである。より低いpKaは、ペルオキシカルボン酸平衡のより速い速度に貢献することができ、例えば、石灰−スケール及び/又は汚物除去の改良に有利になることがある酸性pHを、本開示内容の組成物に提供するのに有効になることができる。
【0086】
他の実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、Rが5〜12個の炭素原子のアルキルを含む水溶性の抑制された少なくとも1つのペルオキシカルボン酸、及びRが1〜4個の炭素原子のアルキルを含む少なくとも1つの水溶性ペルオキシカルボン酸を含む。例えば、一実施形態では、ペルオキシカルボン酸は、ペルオキシ酢酸、及び上記で列挙されたような少なくとも1つの他のペルオキシカルボン酸を含む。好ましくは、組成物は、ペルオキシ酢酸及びペルオキシオクタン酸を含む。
【0087】
水溶性カルボン酸又はペルオキシカルボン酸に、水溶性の抑制されたカルボン酸又はペルオキシカルボン酸を合わせる一つの利点は、水溶性カルボン酸又はペルオキシカルボン酸が、水溶性のほとんどないカルボン酸及びペルオキシカルボン酸に屈水作用を提供し、分散体の均質化及び/又はその結果として起こる組成物内の物理的安定性を促進できることである。
【0088】
ペルオキシカルボン酸のこのような組み合わせの別の利点は、その組み合わせが、有機物汚れ処理量の高い場合に、本開示内容の組成物に好ましい抗菌活性を提供できることである。
【0089】
組成物は、ペルオキシカルボン酸又はそれらの組み合わせを、無菌フィラー中の食品包装の内部及び外部の表面上並びにフィラー自体の筐体内における公衆衛生及び腐敗水準のための細菌及び真菌胞子の殺菌に有効な量で含むことができる。典型的には、ペルオキシカルボン酸は、約500ppm〜約6000ppm、好ましくは約1000ppm〜5000ppm、より好ましくは約1500ppm〜約4000ppmの量で、この組成物中に存在することができる。
【0090】
追加の選択的材料
所望により、組成物を強化するために、組成物は、安定化剤、ヒドロトロープ、界面活性剤、消泡剤、腐食防止剤、レオロジー改質剤、染料、及び香料を含む追加の含有物を含むことができる。
【0091】
安定化剤
所望により、組成物は、過酸及び過酸化水素を安定化し、かつ組成物内の構成成分の早過ぎる酸化を防止するために、安定化剤を含むことができる。
【0092】
本組成物中の安定化剤として一般に有用なキレート剤又は金属イオン封鎖剤としては、ホスホン酸及びホスホネート、ホスフェート、アミノカルボキシレート及びそれらの誘導体、ピロリン酸塩、エチレンジアミン及びエチレントリアミン誘導体、ヒドロキシ酸、並びにモノ−、ジ−及びトリ−カルボキシレート、並びにそれらの対応する酸が挙げられる。他のキレート剤としては、ニトリロアセテート(nitroloacetate)及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物が挙げられる。アミノカルボキシレートの例としては、アミノアセテート及びそれらの酸が挙げられる。適切なアミノアセテートとしては:N−ヒドロキシエチルアミノ二酢酸;ヒドロキシエチレンジアミン四酢酸;ニトリロ三酢酸(NTA);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA);テトラナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA);ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA);NaEDG、エタノールジグリシン、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、L−グルタミン酸N,N−二酢酸(GLDA)の塩、N,N−ビス(カルボキシラートメチル)−L−グルタマート;EDDS、[S−S]−エチレンジアミンジコハク酸;及び3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジスクシネート、アラニン−N,N−二酢酸;n−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など;それらのアルカリ金属塩;並びにそれらの混合物が挙げられる。適切なアミノホスフェートとしては、ニトリロトリスメチレンホスフェート及び炭素原子数が8未満のアルキル又はアルカリ性基を有する他のアミノホスフェートが挙げられる。例示的なポリカルボキシレートとしては、イミノジコハク酸(IDS)、ナトリウムポリアクリレート、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、それらの塩、それらの混合物などが挙げられる。さらなるポリカルボキシレートとしては、クエン酸又はクエン酸塩型キレート剤、高分子ポリカルボキシレート、及びアクリル酸又はポリアクリル酸型キレート剤が挙げられる。さらなるキレート剤としては、ポリアスパラギン酸、又はアスパラギン酸と他のアミノ酸の共縮合物、C〜C25モノ又はジカルボン酸及びC〜C25モノ又はジアミンが挙げられる。例示的な高分子ポリカルボキシレートとしては、ポリアクリル酸、マレイン酸/オレフィンコポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸コポリマー、ポリアクリルアミド加水分解物、ポリメタクリルアミド加水分解物、ポリアミド加水分解物−メタクリルアミドコポリマー、ポリアクリロニトリル加水分解物、ポリメタクリロニトリル加水分解物、アクリロニトリル加水分解物−メタクリロニトリルコポリマーなどが挙げられる。
【0093】
キレート剤は、約0.01〜約5質量%、約0.05〜約3質量%、及び約0.1〜約1.5質量%の量で存在することができる。
【0094】
ヒドロトロープ
所望により、組成物は、ヒドロトロープカップリング剤又は可溶化剤を含むことができる。そのような材料は、組成物が相を安定かつ単純な高活性水溶液形態に確実に保てるように、使用されることができる。そのようなヒドロトロープ可溶化剤又はカップリング剤は、相安定性を維持するが、好ましくない複合相互作用にはならない濃度で使用されることができる。
【0095】
ヒドロトロープ可溶化剤又はカップリング剤の代表的な種類としては、アニオン性界面活性剤、例えば、アルキルスルフェート、アルキル又はアルカンスルホナート、直鎖アルキルベンゼン又はナフタレンスルホナート、二級アルカンスルホナート、アルキルエーテルスルフェート又はスルホナート、アルキルホスフェート又はホスホネート、ジアルキルスルホコハク酸エステル、糖類エステル(例えば、ソルビタンエステル)及びC8〜10アルキルグルコシドなどが挙げられる。
【0096】
また、カップリング剤は、n−オクタンスルホナート、芳香族スルホナート、例えばアルキルアリールスルホナート(例えば、ナトリウムキシレンスルホナート又はナフタレンスルホナート)など、及びアルキル化ジフェニルオキシドジスルホン酸、例えば商品名「DOWFAX(商標)」として販売されているものなど、好ましくはこれらのヒドロトロープの酸形態を含むことができる。
【0097】
本開示内容に有用なヒドロトロープの濃度は、一般に、約0.1〜約20質量%、好ましくは約2〜約18質量%、最も好ましくは、約3〜約15質量%の範囲にある。
【0098】
界面活性剤
所望により、組成物は、界面活性剤、又は複数の界面活性剤の混合物を含むことができる。界面活性剤としては、市販されているアニオン性、非イオン性、カチオン性及び両イオン性界面活性剤、並びにそれらの混合物を挙げることができる。実施形態では、界面活性剤は、非イオン性又はアニオン性界面活性剤を含む。界面活性剤の検討のためには“Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology,Third Edition,volume 8,pages 900-912”を参照されたい。
【0099】
非イオン性界面活性剤は、界面活性剤分子の一部分としてポリアルキレンオキシドポリマーを有するものを含むことができる。これらの界面活性剤は、キャッピングされているか否かを問わない。そのような非イオン性界面活性剤としては、例えば、塩素−、ベンジル−、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−及びアルキルなどの他の基でキャッピングされた脂肪族アルコールのポリエチレングリコールエーテル;ポリアルキレンオキシドを含まない非イオン性物質、例えばアルキルポリグリコシドなど;ソルビタン及びスクロースエステル並びにそれらのエトキシレート;アルコキシル化エチレンジアミン;アルコールアルコキシレート、例えばアルコールエトキシレートプロポキシレート、アルコールプロポキシレート、アルコールプロポキシレートエトキシレートプロポキシレート、アルコールエトキシレートブトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート(例えば、トリデシルアルコールアルコキシレート、エチレンオキシド付加物)など;ノニルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレングリコールエーテルなど;カルボン酸エステル、例えばグリセロールエステル、ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸のエトキシル化物及びグリコールエステルなど;カルボン酸アミド、例えばジエタノールアミン縮合物、モノアルカノールアミン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなど;並びにエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーを含むポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、例えば、商標「プルロニック(PLURONIC)」(BASF社、ワイアンドット)として市販されているものなど;トーマ(Tomah)社から市販されているエトキシル化アミン及びエーテルアミン、並びに非イオン性化合物のような他の物質が挙げられる。また、ABIL B8852(ゴールドシュミット(Goldschmidt)社)などのシリコーン界面活性剤も使用されることができる。
【0100】
非イオン性界面活性剤は、直鎖及び二級アルコールエトキシレート(脂肪族アルコールエトキシレート、例えばトリデシルアルコールアルコキシレート、エチレンオキシド付加物など)、アルキルフェノールエトキシレート、エトキシ/プロポキシブロック界面活性剤などを含むことができる。好ましい直鎖及び二級アルコールエトキシレート(脂肪族アルコールエトキシレート、例えばトリデシルアルコールアルコキシレート、エチレンオキシド付加物)の例としては、直鎖一級の炭素数12〜14のアルコールの5モルのエトキシレート(C12〜1425〜29)−O−(CHCHO)H{その1つは、LAE24−5の商品名で販売されている}、直鎖一級の炭素数12〜14のアルコールの7モルのエトキシレート(C12〜1425〜29)−O−(CHCHO)H{その1つは、LAE24−7の商品名で販売されている}、直鎖一級の炭素数12〜14のアルコールの12モルのエトキシレート(C12〜1425〜29)−O−(CHCHO)12H{その1つは、LAE24−12の商品名で販売されている}などが挙げられる。
【0101】
アニオン性界面活性剤は、例えば、カルボキシレート、例えばアルキルカルボキシレート(カルボン酸塩)及びポリアルコキシカルボキシレート、アルコールエトキシレートカルボキシレート、ノニルフェノールエトキシレートカルボキシレートなど;
スルホナート、例えばアルキルスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート(例えば、鎖状ドデシルベンゼンスルホン酸又はそれらの塩)、アルキルアリールスルホナート、スルホン酸化された脂肪酸エステルなど;スルフェート、例えば硫酸化アルコール、硫酸化アルコールエトキシレート、硫酸化アルキルフェノール、アルキルスルフェート、スルホスクシネート、アルキルエーテルスルフェートなど;並びにリン酸エステル、例えばアルキルリン酸エステル、エトキシ化アルコールリン酸エステルなどを含むことができる。好ましいアニオン性物質としては、ナトリウムアルキルアリールスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート(例えば、鎖状ドデシルベンゼンスルホン酸又はそれらの塩)などが挙げられる。
【0102】
界面活性物質は、分子の親水性部分の電荷が正であるならばカチオン性として分類される。また、pHが中性以下の付近まで下がらなければ親水性物質が電荷を運ばないが、カチオン性である界面活性剤(例えば、アルキルアミン)もこの分類に含まれる。
【0103】
カチオン性界面活性剤は、少なくとも1つの炭素長鎖疎水性基及び少なくとも1つの正に帯電した窒素を含む化合物を含むことができる。炭素長鎖基は、単純な置換により窒素原子へ直接に結合するか、又はいわゆる中断されたアルキルアミン及びアミドアミンにおいて単数又は複数の架橋官能基により窒素原子へ間接的に結合してよい。そのような官能基は、分子をより親水性にするか、及び/又はより水分散性にするか、共界面活性剤混合物によって更に水溶化され易くするか、及び/又は水溶性にすることができる。水溶性の向上のために、追加の一級、二級又は三級アミノ基が導入されることができるか、又はアミノ窒素が低分子量アルキル基により四級化されることができる。さらに、窒素は、不飽和度を変える分岐鎖又は直鎖部分の一部分、又は飽和若しくは不飽和複素環の一部分でよい。さらに、カチオン性界面活性剤は、1つ以上のカチオン性窒素原子を有する錯体結合を含んでよい。
【0104】
カチオン性界面活性剤は、四級アンモニウム界面活性剤、例えば獣脂四級アンモニウム界面活性剤(獣脂アミンエトキシレート四級アンモニウム化合物など)などを含むことができる。例えば、獣脂アミンエトキシレート四級アンモニウム化合物は、メチル基に結合した四級窒素、獣脂部分、及び2つのエトキシレート部分を含むことができる。エトキシレート部分は、6〜10個のエトキシレート基を含むことができる。実施形態では、本組成物は、約1〜約10質量%又は約5質量%のそのようなカチオン性界面活性剤を含むことができる。
【0105】
アミンオキシド、両性物質及び両性イオンとして分類される界面活性剤化合物は、中性〜酸性pH付近の溶液において典型的にはそれ自体でカチオン性であり、界面活性剤の分類と重複することがある。一般に、ポリオキシエチル化カチオン性界面活性剤は、アルカリ性溶液中では非イオン性界面活性剤のように機能し、そして酸性溶液中ではカチオン性界面活性剤のように機能する。
【0106】
大規模な工業用カチオン性界面活性剤の大半は、例えば“Surfactant Encyclopedia”, Cosmetics & Toiletries, Vol.104 (2) 86-96 (1989)に記述されている通り、4つの主要な分類と追加のサブグループに細分化されることができる。第一の分類は、アルキルアミン及びそれらの塩を含む。第二の分類は、アルキルイミダゾリンを含む。第三の分類は、エトキシル化アミンを含む。第四の分類は、第四級物質、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンゼン塩、複素環式アンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを含む。カチオン性界面活性剤は、本組成物に効果的になることがある様々な性質を有することが知られている。これらの好ましい性質としては、洗浄性、抗菌効率などが挙げられることができる。
【0107】
消泡剤
所望により、組成物は消泡剤を含むことができる。一般に、消泡剤は、シリカ及びシリコーン;脂肪族酸又はエステル;アルコール;スルフェート又はスルホナート;アミン又はアミド;ハロゲン化化合物、例えばフルオロクロロ炭化水素など;植物油、ワックス、鉱油並びにそれらの硫酸化誘導体;並びにホスフェート及びリン酸エステル、例えばアルキル及びアルカリ性ジホスフェート、とりわけトリブチルホスフェート;並びにそれらの混合物を含むことができる。
【0108】
食品等級の消泡剤が好ましい。この目的を達成するために、より有効な消泡剤の1つは、シリコーンを含む。全てのシリコーン(例えばジメチルシリコーン、グリコールポリシロキサン、メチルフェノールポリシロキサン、トリアルキル又はテトラアルキルシラン、疎水性シリカ消泡剤及びそれらの混合物など)は、脱泡用途において使用されることができる。一般に入手可能な工業用消泡剤としては、有機エマルション内に組み込まれているシリコーンであるアーマー・インダストリアル・ケミカル社(Armour Industrial Chemical Company)製アルデフォーム(Ardefoam)(登録商標);シリコーン及び非シリコーン型消泡剤並びにシリコーンエステルであるクルセイブル・ケミカル社(Krusable Chemical Company)から入手可能なフォーム・キル(Foam Kill)(登録商標)又はクレッセオ(Kresseo)(登録商標);とりわけ、ダウ・コーニング社(Dow Coming Corporation)製アンチフォーム(Anti−Foam)A(登録商標)及びDC−200(これらの両方とも食品等級型シリコーンである)などのシリコーンが挙げられる。これらの消泡剤は、約0.01質量%〜5質量%、好ましくは約0.01質量%〜2質量%、最も好ましくは約0.01質量%〜約1質量%の範囲の濃度で存在することができる。
【0109】
腐食防止剤
所望により、組成物は腐食防止剤を含むことができる。有用な腐食防止剤としては、ポリカルボン酸、例えば短鎖カルボキシル二塩基酸、三塩基酸、及びリン酸エステル並びにそれらの組み合わせなどが挙げられる。有用なリン酸エステルとしては、アルキルリン酸エステル、モノアルキルアリールリン酸エステル、ジアルキルアリールリン酸エステル、トリアルキルアリールリン酸エステル、及びそれらの混合物、例えばヴィトコ・ケミカル社(Witco Chemical Company)から入手可能なEmphos PS 236などが挙げられる。他の有用な腐食防止剤としては、トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール及びメルカプトベンゾチアゾールなど、並びにホスホネートとの組み合わせ、例えば1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、並びに界面活性剤、例えばオレイン酸ジエタノールアミド及びナトリウムココアンホヒドロキシプロピルスルホナートなどが挙げられる。有用な腐食防止剤としては、ジカルボン酸などのポリカルボン酸が挙げられる。好ましい酸としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸及びそれらの混合物が挙げられる。最も好ましいものは、アジピン酸、グルタル酸及びコハク酸の混合物であり、その混合物は、BASF社により名称「SOKALAN(登録商標) DCS」として販売されている原料である。
【0110】
レオロジー改質剤
所望により、組成物は1つ以上のレオロジー改質剤を含むことができる。有用な水溶性又は水分散性レオロジー改質剤は、無機物又は有機物として分類されることができる。さらに、有機増粘剤は、天然ポリマー及び合成ポリマーに細分化されることができ、さらに後者は、合成天然物を主成分とするもの及び合成石油を主成分とするものに細分化される。
【0111】
一般に、無機増粘剤は、コロイドマグネシウムケイ酸アルミニウム(VEEGUM(登録商標))、コロイドクレイ(Bentonites)、又はシリカ(CAB−O−SILS(登録商標))などのように、燻蒸又は沈殿させられて表面積対寸法の比が大きい粒子を形成している化合物である。適切な天然ヒドロゲル増粘剤は、主として植物由来の滲出物である。例えば、トラガカント、カラヤガム、アカシアガム;並びにカラギーナン、イナゴマメガム、グアーガム及びペクチンなどの抽出物;又はキサンタンガムなどの純粋培養酵母生成物である。化学的には、これらの材料の全ては、アニオン性多糖類複合体の塩である。有用な合成天然系増粘剤は、鎖状グルコースポリマー無水物の遊離ヒドロキシル基がエーテル化又はエステル化されて、水中で溶解する種類の物質を提供し、かつ粘性溶液を提供しているセルロース誘導体である。この材料の基としては、アルキル及びヒドロキシルアルキルセルロース、具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。合成石油系水溶性ポリマーは、適切なモノマーの直接重合により調製され、そして適切なモノマーの中でも、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、並びにポリエチレンイミンが代表的である。
【0112】
染料及び香料
所望により、組成物は、様々な染料、香料を含む着臭剤、及び他の審美性強化剤を含むことができる。好ましい染料としては、FD&C染料、D&C染料などが挙げられる。
【0113】
充填可能な容器の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルミニウム、単層若しくは多層のフィルム若しくはポーチ、板紙、鋼鉄、ガラス、多層瓶、他のポリマー包装材料、フィルム、ポーチ、瓶におけるこれらの材料の組み合わせ、又は他の食品包装材料が挙げられる。
【0114】
また、本開示内容では、単一セルを使用して、溶液中の複数の所望の成分を分解する。図4では、例示的な単一セルが示される。単一セル20は、同一セル内にアノード3及びカソード4を含む。アノード3及びカソード4は、両方とも電源5に接続されている。この単一セル20は、溶液中の特定の成分を分解するために、工業用途で使用されることができる。例えば、無菌包装操作では、単一セル20は、すすぎ液の特定の成分を分解するために、すすぎ液と流体連通して提供されることができる。幾つかの場合には、過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含む抗菌組成物が、食品包装を殺菌するために使用され、そしてすすぎ液は、すすぎ工程中に過酸化水素及び過酸を集める。この場合には、単一セル20は、すすぎ液中の過酸化水素及び過酸の所定量を分解するために使用されることができる。
【0115】
図5では、図2のプラント100と結合された単一セル20が示される。図5では、単一セル20は、プラント100のドレーン106と結合されている。しかしながら、当業者は、セル20は、代わりにプラント100の他の部分と結合されることができると理解するであろう。同様に、プラント100は、任意の所望の設計でよく、必ずしも単一セル20を1つだけ含むわけではない。
【0116】
図5の結合された単一セルでは、セルはドレーン106と流体連通している。ドレーン106中のすすぎ溶液は、セル20を進む。これが起こると、特定の複数の所望の成分が、すすぎ液から分解され、そのままドレーン106を介して分解されて、再利用されてプラント100へ戻るか、又はプラント100から除去される。
【実施例】
【0117】
本開示内容をより詳細に理解するために、下記実施例を提供して、幾つかの実施形態を説明する。これらの実施例及び実験は、説明的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。
【0118】
実施例
実施例1(単一セル実験)
実施例1では、単槽電池がペルオキシ酢酸(「POAA」)の存在下で過酸化水素を選択的に分解する能力を試験した。この実施例のために、2つの1インチ×3インチ×0.25インチの導電性グラファイト電極を、15%POAA平衡濃縮物のサンプルから形成されたPOAA溶液を含む単一ビーカーに入れて保持した。ビーカーをマグネチックスターラー(stirplate)上に置き、これらの電極をワイヤーにより可変出力電源に接続した。試験期間中は試験装置を室温に保った。
【0119】
0.08Aの電流で12VDCの電圧を溶液に掛けて、過酸化水素及びPOAAの濃度を0、1及び6時間の時点で滴定により測定した。約100mLの氷水中で希釈された試験溶液の10mLアリコートの滴定により、それぞれの濃度を測定した。2〜3滴のデンプン指示薬とともに1〜2mLの10.0%KI溶液を加える必要があるヨウ素還元滴定と、その後の0.1Nチオ硫酸ナトリウムによる無色の最終点までの滴定により、POAA濃度を測定する。1〜2mL濃硫酸及び4〜5滴の酸素触媒(モリブデン酸アンモニウムの飽和溶液)を同一溶液に加え、その後に、0.1Nチオ硫酸ナトリウムにより無色の最終点まで滴定することにより、過酸化物含有量を測定する。
【0120】
POAA濃度は、下記式により算出される:
【数1】

過酸化物濃度は、下記式により算出される:
【数2】

【0121】
過酸化水素及びPOAAの濃度を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1では、この実験においてPOAA及び過酸化水素の分解には選択性がほとんどないことが示されている。これは、アノード及びカソードの両方が同一ビーカー内にあるので、酸化電位及び還元電位の両方が溶液に存在するという事実による可能性が高い。したがって、表1では、単一セルは過酸化水素を選択的に分解しないことが示されている。しかしながら、単一セルが、過酸化水素及びPOAAの両方を分解するのに効果的であることは確かである。
【0124】
実施例2(分割セル実験)
実施例2では、分割電気セルがPOAAの存在下で過酸化水素を選択的に分解する能力を比較した。この実験は、アノード及びカソードを2つの別のビーカーに分けたことを除いて、実施例1の実験と同様であった。
【0125】
1LのPOAA/過酸化水素溶液を2つのビーカー間で均一に分けた。次に、2つのビーカーを塩橋により接続した。硝酸ナトリウムの1.0N溶液を形成し、1.0%寒天でその溶液を凝固させることにより、塩橋を形成した。この混合物を熱いままで1/2インチのプラスチック管に注いで、凝固させた。この管の一端を、アノードを含むビーカーに入れ、他方を、カソードを含むビーカーに入れて、2つのビーカー/セル間に塩橋を形成した。
【0126】
電力源は、またも可変電源に接続された複数の1インチ×3インチ×0.25インチの導電性グラファイト電極であった。0.04Aの電流で22VDCの電圧を溶液に掛けて、幾つかの時点でアノード(正の接続部)での滴定及びカソード(負の接続部)での滴定により、POAA及び過酸化水素の濃度を測定し、POAA及び過酸化水素の両方の安定性に電位が与える影響を決定した。実施例1で概説されたものと同様の方法で、0及び5時間の時点で、POAA及び過酸化水素の濃度を測定した。POAA及び過酸化水素の両方の濃度を表2に示す。また、複数の対照サンプルを示したが、それらは、電位を掛けなかったPOAA溶液のサンプルである。
【0127】
【表2】

【0128】
表2に示されたアノード対カソードセルにおける過酸及び過酸化物濃度の比較から、分割セルは、アノードでは、POAAの存在下において、実際にはPOAA濃度の安定性に影響を与えることなく、過酸化水素を選択的に分解することができることが示される。表2では、意図した技術的効果を達成し、かつ過酸化物を選択的に分解するために、カソード反応からアノード反応を分離する必要があることも示されている。表1では、アノード及びカソードを同一セルに置くと、それらは、より少量の過酸化水素及び過酸の両方を分解することが示されている。一方で、アノードとカソードを塩橋により2つのセルに分離すると、カソード側は、過酸化物よりも過酸を選択的に分解し、そしてアノード側は、過酸よりも過酸化物を選択的に分解する。したがって、分割セルは、過酸の存在下での過酸化物の選択的電気化学分解に必要である。また、好ましくは、分割セルのアノード部分は、過酸化物を選択的に分解できるように、過酸/過酸化物溶液と直接的に流体連通しているべきである。一方で、セルのカソード部分は、塩橋を介して過酸溶液と電気接続するものであるが、そうでないならば、それが過酸溶液を還元しないように、過酸溶液から分離され続けるものである。
【0129】
前述の概要、詳細な説明及び実施例は、本明細書及び本明細書の特定の実施例の実施形態を理解するための信頼に足る根拠を提供する。本発明は様々な実施形態を含むことができるので、上記情報は、何らかの限定を目的とするものではない。本発明は特許請求の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)過酸化水素、カルボン酸及び過酸を含む抗菌組成物を提供する工程;
(b)該抗菌組成物と流体連通している分割セルを提供する工程
を含む、抗菌組成物中で過酸化水素を選択的に分解する方法。
【請求項2】
前記分割セルを使用して、少なくとも500ppmの前記過酸化水素を15分未満で分解する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分割セルを使用して、前記過酸化水素、前記カルボン酸及び前記過酸の所定量を維持する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記過酸化水素、前記カルボン酸及び前記過酸の所定量は:
(i)約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
(ii)約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
(iii)約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記分割セルは、塩橋を用いて互いに電気接続している第一の回路及び第二の回路を含み、該第一の回路は、アノードを含み、該第二の回路は、カソードを含み、該アノード及び該カソードは、該第一の回路と該第二の回路の間に電位を送る電源に接続されており;該第一の回路は、前記抗菌組成物を含み、そして第二の回路は、前記抗菌組成物から電子を受け入れることができる還元溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記過酸化水素、前記カルボン酸又は前記過酸の量を監視する工程、並びに前記電位を調整して、前記過酸化水素、前記カルボン酸及び前記過酸の所定量を維持する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
無菌包装法の一部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電位は、調整器により調整される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
塩橋を用いて互いに電気接続している第一の回路及び第二の回路を含む分割セルであって、該第一の回路はアノードを含み、そして該第二の回路はカソードを含む、分割セル;
該第一の回路と該第二の回路の間に電位を送る電源;
を含む、抗菌組成物中の過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持するための装置であって、該第一の回路は抗菌組成物を含み、該抗菌溶液は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を含み;該第二の回路は還元溶液を含み、そして該還元溶液は、該抗菌溶液から電子を受け入れ、かつ該塩橋を介して該第一の回路中へ電流を送ることができる、装置。
【請求項10】
前記過酸化水素、前記カルボン酸及び前記過酸の所定量は:
(i)約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
(ii)約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
(iii)約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記カルボン酸は、酢酸、オクタン酸及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして前記過酸は、過酢酸、過オクタン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
過酸化水素又は過酸の量を測定し、前記電位を調整して過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持する調整器をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
溜め槽;
殺菌領域;
複数の所望の成分の所定量を含む抗菌組成物を該溜め槽から該殺菌領域へ送達する第一のライン;
該殺菌領域から該溜め槽又はドレーンへ該抗菌組成物を戻す第二のライン;
該溜め槽、該第一のライン又は該第二のラインに組み込まれている分割セルであって、該抗菌組成物中の複数の所望の成分の所定量を維持する分割セル;
該殺菌領域へすすぎ液を送達する第三のライン;
該殺菌領域から使用済みすすぎ液を送り出す第四のライン;及び
該第四のラインに組み込まれている単一セルであって、使用済みすすぎ液中の複数の所望の成分の所定量を分解する単一セル
を含む、無菌包装装置。
【請求項14】
前記抗菌組成物の複数の所望の成分は、過酸化水素、カルボン酸及び過酸であり、
そして前記使用済みすすぎ液の複数の所望の成分は、過酸化水素及び過酸である、請求項13に記載の無菌包装装置。
【請求項15】
無菌であるか、又は保存期間の長い充填装置によって包装を殺菌する方法であって:
(a) (i)過酸化水素;
(ii)カルボン酸;及び
(iii)過酸;
を含む抗菌組成物を溜め槽中で形成する工程;
(b)無菌ラインを用いて該溜め槽から包装へ該抗菌組成物を送達する工程;
(c)食品包装に入れられた最終食品を非冷蔵貯蔵条件下での供給販売に適したものにするために十分な量で、該組成物を包装ライン上の食品包装の表面へ適用する工程;
(d)分割セルを該包装ラインに組み込む工程;並びに
(e)該分割セルを用いて、該抗菌組成物中の過酸化水素、カルボン酸及び過酸の所定量を維持する工程
を含む方法。
【請求項16】
前記分割セルは:
塩橋を用いて互いに流体連通している第一の回路及び第二の回路であって、該第一の回路はアノードを含み、そして該第二の回路はカソードを含む、第一の回路及び第二の回路;並びに
該第一の回路と該第二の回路の間に電位を送る電源;
を含み、該第一の回路は、前記抗菌組成物を含み、該第二の回路は、該第二の回路と流体連通している還元溶液を含み、そして該還元溶液は、該抗菌組成物から電子を受け入れ、かつ塩橋を介して該第一の回路中へ電流を送ることができる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
過酸化水素、カルボン酸又は過酸の量を感知するセンサーからの測定値に応じて、前記分割セルを駆動する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
時間を基準として前記分割セルを駆動する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記過酸化水素、前記カルボン酸及び前記過酸の所定量は:
(i)約0.00001質量%〜約0.5質量%の過酸化水素;
(ii)約0.1質量%〜約20.0質量%のC〜C10カルボン酸;及び
(iii)約0.1質量%〜約2.0質量%のC〜C10過酸
である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボン酸は、酢酸、オクタン酸及びそれらの混合物から成る群から選択され、そして前記過酸は、過酢酸、過オクタン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
(f)前記抗菌組成物を前記食品包装の表面に適用してから、すすぎ液を前記食品包装の表面に適用する工程;
(g)前記過酸化水素及び前記過酸を含む使用済みすすぎ液を集める工程;
(h)すすぎラインを用いて前記食品包装から該使用済みすすぎ液を送り出す工程;
(i)単一セルを該すすぎラインに組み込む工程;並びに
(j)単一セルを用いて、該使用済みすすぎ液中の前記過酸化水素及び前記過酸の所定量を分解する工程
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
(a)過酸化水素及び過酸を含む溶液を提供する工程;並びに
(b)該溶液と流体連通している単一電解槽を提供して、該過酸化水素及び該過酸の所定量を分解する工程
を含む、溶液中の過酸化水素及び過酸を非選択的に分解する方法。
【請求項23】
前記溶液は、無菌包装の適用に由来するすすぎ液である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記溶液は産業廃液である、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503682(P2013−503682A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527431(P2012−527431)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053891
【国際公開番号】WO2011/027288
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(510250467)イーコラブ ユーエスエー インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】