説明

左右連動操作装置

【課題】左右グリップの間に操作ガタを発生し難くすることができる左右連動操作装置を提供する。
【解決手段】左右連動操作装置のグリップは、グリップ支持部に連結されたアーム9に回動可能に支持されている。アーム9とアームシャフト34との間の空隙部36aには、磁性流体38が充填されている。そして、グリップが過荷重操作されたときには、コイル39を通電することにより磁性流体38に磁界をかけ、磁性流体38を固化する。よって、グリップがアーム9に固定され、過荷重がアームシャフト34の先のユニバーサルジョイント4に至らなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のグリップが連動して動く左右連動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の乗り物の入力操作装置として、例えば図13に示す左右連動操作装置81(特許文献1,2等参照)が考案されている。左右連動操作装置81には、左右に一対のグリップ82,82が設けられている。グリップ82,82は、それぞれのグリップ支持部83にユニバーサルジョイント84を介して連結されている。このため、グリップ82,82は、左右方向の回動操作と、上下方向の傾倒操作とが可能である。本例の場合、グリップ82,82の左右回動操作が操舵操作に、グリップ82,82の上下傾倒操作が加減速操作に割り当てられている。
【0003】
左右のグリップ82,82は、4本のワイヤーケーブル85a〜85dによって連結されている。これら4本のワイヤーケーブル85a〜85dのうち、一対の85a,85bが操舵伝達用であり、一対の85c,85dが加減速伝達用となっている。例えば、右グリップ82aが中立位置から右操舵されると、一対のケーブル85a,85bのうち一方が引き込まれるとともに他方が押し出されることにより、右方向の回転力が左グリップ82bに伝達される。よって、左グリップ82bが右グリップ82aに追従して右回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−93415号公報
【特許文献2】特開2009−93416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、左右連動操作装置81では、グリップ82a,82bの回動操作のとき、例えば図14(a)に示すように、グリップ82a,82bを互いに逆方向に操作したり、或いは図14(b)に示すように、グリップ82a,82bの一方を固定した状態で他方を操作したりすると、グリップ82a,82bに過荷重が加わってしまう。この過荷重は、部品として耐久性の高くないユニバーサルジョイント84に集中するため、ユニバーサルジョイント84が変形する可能性がある。こうなると、ユニバーサルジョイント84にガタが発生し、左右のグリップ82a,82bが連動しない問題に繋がる。
【0006】
なお、この問題は、左右のグリップ82a,82bが4本のワイヤーケーブル85a〜85dで繋がる型に限らず、種々の型のものにも同様に言えることである。また、この問題は、一方のグリップの操作力を他方のグリップにワイヤーケーブル85a〜85dに伝達する型に限定されず、例えばモータ等のアクチュエータによってグリップを動かす型のものにも同様に言えることである。
【0007】
本発明の目的は、左右グリップの間に操作ガタを発生し難くすることができる左右連動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、前記グリップが操作されるときの摺動部位に充填された機能性流体と、前記グリップにおける過荷重の有無を検出する検出手段と、前記検出手段が過荷重を検出したとき、前記機能性流体を固化することにより、前記グリップの動きを制限する制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、グリップが過荷重操作されたことが検出手段により検出されると、制御手段によって機能性流体が液状から固化され、グリップが装置本体側に固定される。よって、グリップに過荷重が加えられても、この過荷重が装置本体側に伝達されないので、過荷重が左右連動操作装置の各種部品に至り難くなる。このため、過荷重を要因とする部品変形が生じ難くなるので、左右のグリップの間に操作ガタを生じ難くすることが可能となる。なお、定義として固化とは、きっちり固まった状態に限らず、粘性を持つ状態も含む。
【0010】
本発明では、前記機能性流体は、磁界を受けると固化する磁性流体であることを要旨とする。
この構成によれば、グリップが過荷重操作されたときには、磁性流体に磁界をかけて磁性流体を固化することにより、グリップを支持箇所に固定する。よって、磁性流体に磁界をかける又はかけないという簡単な制御によって、支持部材へのグリップの固定/非固定を切り換えることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記機能性流体は、回動可能な前記グリップから延びる回動軸と、当該回動軸を回動可能に支持する回動支持部との間の空隙部に充填されていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、グリップの根元付近でグリップの動きが固定されるので、その先に存在する多数の部品に過荷重を至り難くすることが可能となる。よって、例えばユニバーサルジョイント等の耐荷重がさほどよくない部品に変形を生じ難くすることが可能となるので、より効果的に操作ガタを抑制することが可能となる。
【0013】
本発明では、左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、一方のグリップの操作力をケーブル線にて機械的に他方のグリップに伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップを連動させることが可能となる。
【0015】
本発明では、左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、一方のグリップに加えられた操作力を、2本(一対)のケーブル線の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方のグリップに伝達することにより、左右のグリップの一方を他方に追従させるので、応答性よく左右のグリップを連動させることが可能となる。
【0017】
本発明では、左右の前記グリップの各々に該グリップの操作量を検出する操作量検出部を設け、当該検出部の検出量を基に、左右の前記グリップの各々に設けた駆動手段を駆動することにより、左右の前記グリップを連動させることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、ケーブル線を使用するのではなく、駆動手段によって左右グリップを連動させる。よって、左右連動操作装置にケーブル線が不要となるので、装置の配置位置がケーブル線に制限を受けなくなり、結果、装置の配置自由度が増すことになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、左右のグリップが連動する左右連動操作装置において、左右グリップの間に操作ガタを発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の左右連動操作装置の斜視図。
【図2】左グリップの斜め後方から見た拡大斜視図。
【図3】グリップのかさ歯車付近の拡大斜視図。
【図4】グリップ回転操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図5】グリップ傾倒操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図6】傾倒操作戻し機構の構成を示し、(a)はグリップが中立位置のときの側面図、(b)はグリップを下方向に倒し操作したときの側面図。
【図7】左右連動操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図8】磁性流体の充填構造を示すグリップ根元の断面図。
【図9】磁性流体が液状をとったときのグリップの操作状態を示す断面図。
【図10】磁性流体が固化したときのグリップの操作状態を示す断面図。
【図11】第2実施形態の左右連動操作装置の斜視図。
【図12】左右連動操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図13】従来の左右連動操作装置の斜視図。
【図14】(a)はグリップが逆操作されたときの状態を示す背面図、(b)はグリップが片側操作されたときの状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した左右連動操作装置の第1実施形態を図1〜図10に従って説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、左右連動操作装置1には、ワイヤーケーブル2(本例は4本の2a〜2d)の両先端にグリップ3,3が取り付けられている。本例の場合、2つのグリップ3,3の一方を右グリップ3aと称し、他方を左グリップ3bと称する。なお、左右のグリップ3a,3bの構造は部品配置が左右対称をとるものの、基本的な構造は同じであるので、ここでは左右をまとめて説明する。また、ワイヤーケーブル2がケーブル線に相当する。
【0023】
グリップ3は、ユニバーサルジョイント4を介してグリップ支持部5のジョイント連結部6に回動自在に連結されている。ユニバーサルジョイント4は、2部品がある角度で交わっていても一方から他方に動力を伝達可能な継ぎ手、いわゆる自在継ぎ手の一種である。ユニバーサルジョイント4には、略カップ状のヨーク本体7に可動ヨーク8が回動可能に取り付けられている。本例のグリップ3は、ヨーク本体7における出力軸7aの軸心L1回り(左右方向)の回動操作と、可動ヨーク8における連結軸8aの軸心L2回り(上下方向)の傾倒操作が可能となっている。グリップ3は、中立位置を基点に左右に略±40度まで回動操作が可能である。なお、軸心L1回りが軸回りに相当し、これと交わる方向が軸交差方向に相当する。
【0024】
本例の場合、グリップ3を中立位置から右に回動操作すると、車両が右旋回し、グリップ3を中立位置から左に回動操作すると、車両が左旋回する。また、グリップ3を中立位置から下方に傾倒操作すると、車両が加速し、下方に倒し込んだグリップ3を上方に傾倒操作すると、車両が減速する。
【0025】
ワイヤーケーブル2a〜2dは、一方のグリップ3が中立位置から回動操作(操舵操作)されたとき、その操舵操作力を他方のグリップ3に伝達する操舵操作力伝達用の2a,2bと、一方のグリップ3が中立位置から傾倒操作(加減速操作)されたとき、その加減速操作力を他方のグリップ3に伝達する加減速操作力伝達用の2c,2dとからなる。ワイヤーケーブル2a〜2dには、1本のケーブル線で操作側の引き動作及び押し動作の両方を相手側に伝達することが可能なプッシュプルケーブルが使用されている。
【0026】
グリップ支持部5の先端には、グリップ3と一体に上下方向に傾倒するアーム9が枢支されている。アーム9には、ユニバーサルジョイント4の軸方向に孔の開いた貫通孔10(図2参照)が形成され、この貫通孔10にユニバーサルジョイント4の可動ヨーク8が軸支されている。なお、アーム9が回動支持部に相当する。
【0027】
図3に示すように、ユニバーサルジョイント4の基端には、かさ歯車11を介して略円板状の可動片12が連結されている。可動片12は、中心軸13がグリップ3の幅方向(図1のX軸方向)を向き、中心軸13回りに回動可能である。また、かさ歯車11は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aの端部に形成された駆動歯車14が、可動片12に形成された従動歯車15に噛合されている。かさ歯車11は、ユニバーサルジョイント4の図3における矢印A方向の回転力を、略90度向きが異なる可動片12の同図の矢印B方向の回転力に変換して可動片12に伝達する。
【0028】
図4及び図5に示すように、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aの一端は、右グリップ3aの可動片12の上部に連結された回動継ぎ手16に連結され、左グリップ3bの可動片12の上部に連結された回動継ぎ手16に他端が連結されている。操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bの一端は、右グリップ3aの可動片12の下部に連結された回動継ぎ手17に一端が連結され、左グリップ3bの可動片12の下部に連結された回動継ぎ手17に他端が連結されている。
【0029】
また、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cの一端は、右グリップ3aのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に連結され、左グリップ3bのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に他端が連結されている。加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dの一端は、右グリップ3aのアーム9の下部に連結された回動継ぎ手19に連結され、左グリップ3bのアーム9の上部に連結された回動継ぎ手18に他端が連結されている。つまり、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2c,2dは、左右のグリップ3a,3bに上下が入れ換えて接続されている。
【0030】
図4(a)に示すように、右グリップ3aが例えば右に回転操作されると、ユニバーサルジョイント4が同図の矢印C1方向に回転するとともに、可動片12が同図の矢印D1方向に回転する。よって、右グリップ3aでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが奥に押されるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが手前に引き込まれる。このため、左グリップ3bでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが手前に引き込まれるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが奥に押される。従って、可動片12が図4(b)の矢印D2方向に回転するため、左グリップ3bのユニバーサルジョイント4が右グリップ3aと同じ矢印C1方向に回転し、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して右転する。
【0031】
また、図5(a)に示すように、右グリップ3aが例えば下方向に傾倒操作されると、グリップ3a及びアーム9が一体となって同図の矢印C2方向に傾倒する。このとき、右グリップ3aでは、上の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cが手前に引き込まれ、下の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dが奥に押し込まれる。よって、図5(b)に示すように、左グリップ3bでは、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dによって上部が押されるとともに、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cによって下部が引き込まれる。このため、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して下方に傾倒する。
【0032】
図1及び図2に示すように、グリップ3とアーム9との間には、グリップ3の回転量を規制するストッパ部20が形成されている。グリップ3が中立位置から目一杯回動操作されると、ストッパ部20がアーム9の規制片21に当接して、それ以上の回動操作が不可となる。なお、規制片21は、右回動操作時及び左回動操作時の一対ある。
【0033】
図2及び図4(b)に示すように、グリップ3とアーム9との間には、左右方向に回動操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる戻し付勢部材22が設けられている。戻し付勢部材22は、例えばトーションばね等が使用され、両端がアーム9とストッパ部20に引っ掛かった状態にある。
【0034】
図6(a),(b)に示すように、グリップ3には、上下方向に傾倒操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる傾倒操作戻し機構23が設けられている。この場合、グリップ支持部5とアーム9との間には、一対の戻しアーム部材24,25が枢支されている。第1戻しアーム部材24は、中立位置から下方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸24a回りに回動可能である。第1戻しアーム部材24の下端には、第1戻しアーム部材24に復帰力を付与する戻し付勢部材26が取り付けられている。戻し付勢部材26は、例えばコイルばねが使用される。
【0035】
また、第2戻しアーム部材25は、中立位置から上方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸25a回りに回動可能である。第2戻しアーム部材25の上端には、第2戻しアーム部材25に復帰力を付与する戻し付勢部材27が取り付けられている。戻し付勢部材27は、例えばコイルばねが使用される。
【0036】
一方、アーム9には、グリップ3の加減速操作時に戻しアーム部材24,25を押し込む係止ピン29が突設されている。係止ピン29は、グリップ3が中立位置のとき、一対の戻しアーム部材24,25に挟まれるように配置される。
【0037】
図6(a)に示す状態のとき、例えばグリップ3が下方に傾倒操作されると、係止ピン29が第1戻しアーム部材24を上方に押し上げることにより、第1戻しアーム部材24が同図の矢印E1方向に回動する。そして、図6(b)に示す下方向の傾倒操作後、グリップ3から手が離されると、第1戻しアーム部材24が戻し付勢部材26の付勢力によって同図の矢印E2方向に回動することにより、第1戻しアーム部材24が係止ピン29を下に押し、グリップ3が元の中立位置に復帰する。
【0038】
図3に示すように、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aには、ジョイント連結部6の内部において操舵操作側ポテンショメータ30が接続されている。操舵操作側ポテンショメータ30は、ユニバーサルジョイント4の出力軸7aの回転量を検出することにより、グリップ3の操舵量を検出する。また、アーム9には、複数のギヤからなるギヤ機構31を介して加減速操作側ポテンショメータ32が接続されている。加減速操作側ポテンショメータ32は、グリップ加減速時におけるギヤ機構31のギヤ回転量を検出することにより、グリップ3の加減速操作量を検出する。なお、ポテンショメータ30,32が検出手段及び操作量検出部を構成する。
【0039】
図7に示すように、左右連動操作装置1には、左右連動操作装置1を統括制御するコントローラ33が設けられている。コントローラ33には、ポテンショメータ30,32が接続されている。コントローラ33は、ポテンショメータ30,32から出力される検出信号を基に左右のグリップ3a,3bの操舵量及び加減速操作量を演算し、これら情報を必要とする他のECUに操舵量及び加減速操作量の情報を出力する。また、コントローラ33は、ポテンショメータ30,32から入力する検出信号を基に、左右のグリップ3a,3bが正しく連動しているか否かを常時監視する。
【0040】
図8に示すように、各グリップ3a,3bにおいてアーム9の各貫通孔10には、グリップ3から延びる円柱状のアームシャフト34が挿通されている。アームシャフト34は、グリップ3の左右方向の回動軸である。アームシャフト34は、軸方向に並び配置されている一対のベアリング35,35を介してアーム9の内周面に回動可能に支持されている。一対のベアリング35は、一方が貫通孔10の開口端に位置し、他方がユニバーサルジョイント4の手前に位置する。なお、アームシャフト34が回動軸に相当する。
【0041】
貫通孔10とアームシャフト34との摺動部位36には、アームシャフト34の周方向一帯に若干の隙間により空隙部36aが形成されている。空隙部36aは、アームシャフト34の軸方向両端に位置する一対のシール部材37,37によって密封されている。シール部材37は、例えばOリングが使用される。
【0042】
空隙部36aには、磁界を加えると固化する磁性流体38が隙間なく充填されている。アームシャフト34の外周には、磁性流体38に磁界を印加するコイル39が複数巻回されている。そして、コイル39に電流が流されると、コイル39から磁界が発生し、この磁界によって磁性流体38が固化する。磁性流体38が固化すると、固化した磁性流体38によってアームシャフト34がアーム9に固定されることから、グリップ3の回動操作が不可となる。なお、磁性流体38が機能性流体に相当する。
【0043】
図7に示すように、コントローラ33には、コイル39への通電を管理することにより、磁性流体38の状態を制御するコイル通電部40が設けられている。コイル通電部40は、各操舵操作側ポテンショメータ30から出力される検出信号を基に、回転操作時のグリップ3に発生する操作荷重(トルク荷重)を求め、操作荷重が閾値以上となると、グリップ3に過荷重が加わったと認識する。そして、コイル通電部40は、コイル39に電流を流して磁性流体38に磁界を印加し、磁性流体38を固化させることにより、グリップ3をアーム9に固定する。なお、コイル通電部40が制御手段に相当する。
【0044】
次に、本例の左右連動操作装置1の作用/効果を説明する。
例えば、左右のグリップ3a,3bが通常荷重で回動操作(操舵操作)されたとき、コイル通電部40は、操舵操作側ポテンショメータ30の検出信号を基に、今の操作が通常操作であることを認識する。よって、図9に示すように、コイル通電部40は、コイル39に電流を流さず、磁性流体38を流体のままとする。このため、アーム9に対するグリップ3の回動が許容されるので、グリップ3を回動操作したときには、その操作方向に両方のグリップ3a,3bが同様に回動する。
【0045】
一方、左右のグリップ3a,3bが逆操作や片側操作されたとき、操舵操作側ポテンショメータ30からは、高操作荷重の検出信号がコントローラ33に出力される。このため、コイル通電部40は、操舵操作側ポテンショメータ30の検出信号が閾値以上となることによって、今の操作が過荷重操作であることを認識する。よって、図10に示すように、コイル通電部40は、操舵操作側ポテンショメータ30の検出信号が閾値以上となる間、コイル39に電流を流して磁性流体38に磁界をかけることにより、磁性流体38を一時的に固化する。よって、グリップ3がアーム9に固定されて動かなくなるので、グリップ3に加えられた過荷重が、耐荷重のさほどよくないユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2に伝達されない。
【0046】
固化した磁性流体38によりグリップ3が固定されると、操作荷重が一時的に低下する。コイル通電部40は、操舵操作側ポテンショメータ30から求まる操作荷重(トルク荷重)が、閾値を下回ることを確認すると、コイル39への通電を停止する。よって、磁性流体38に磁界がかからなくなるので、磁性流体38が流体に復帰し、グリップ3が回動可能となる。このため、グリップ3が戻し付勢部材22の付勢力によって、中立位置に復帰するよう回転する。
【0047】
以上により、本例においては、アーム9とアームシャフト34とで囲まれた空隙部36aに磁性流体38を充填し、グリップ3が過荷重操作されたとき、コイル39を通電して磁性流体38に磁界を印加することにより、磁性流体38を固化する。このため、グリップ3が過荷重操作されたときには、グリップ3がアーム9に固定されて回動できなくなるので、過荷重がユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2a,2bに伝達されない。よって、ユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2に、過荷重による変形が生じ難くなるので、左右に操作ガタが発生し難くなる。従って、左右のグリップ3a,3bの連動性を確保することが可能となる。
【0048】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)グリップ3の回動操作時、グリップ3が過荷重操作されたことが操舵操作側ポテンショメータ30により検出されると、コイル39が通電されて磁性流体38に磁界が加えられ、磁性流体38が固化される。これにより、グリップ3がアーム9に固定されて、回動操作が不可となる。このため、過荷重がユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2a,2bに伝達されないので、過荷重を要因とする変形がこれら部品に生じ難くなる。つまり、ユニバーサルジョイント4の形状変形や、ワイヤーケーブル2a,2bの伸びが防止される。よって、左右のグリップ3a,3bの間に操作ガタを生じ難くすることができ、ひいてはグリップ3a,3bの連動性を確保することができる。
【0049】
(2)磁性流体38を使用してグリップ3をアーム9に固定可能とするので、コイル39を通電又は非通電とする簡単な制御によって、アーム9へのグリップ3の固定/非固定を切り換えることができる。
【0050】
(3)グリップ3の根元部分を磁性流体38によりアーム9に固定可能とするので、グリップ3が過荷重操作されても、アームシャフト34の先端側に存在するユニバーサルジョイント4に過荷重を至り難することが可能となる。よって、総じて耐荷重が高くないユニバーサルジョイント4を過荷重から保護することができる。
【0051】
(4)空隙部36aの両側にシール部材37を設けたので、空隙部36aの密封性を高めることができる。よって、空隙部36aからの磁性流体38の漏れを生じ難くすることができる。
【0052】
(5)左右のグリップ3a,3bの連動性が確保されるので、左右のグリップ3a,3bのポテンショメータ30,32の出力に誤差を生じ難くすることができる。
(6)左右のグリップ3a,3bの一方の操作力をワイヤーケーブル2にて機械的に他方に伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。また、グリップ3a,3bの一方の回動操作力(操舵操作力)又は傾倒操作力(加減速操作力)を、2本(一対)の組のワイヤーケーブル2a,2b(2c,2d)の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方に伝達することにより、左右のグリップ3a,3bの一方を他方に追従させる。よって、例えば、単に1本のワイヤーケーブルで操作力を伝達するよりも、高い追従性にて相手が連れ動きするので、応答性よく左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。
【0053】
(7)グリップ3の回動操作を制限するストッパ部20をグリップ3の根元に設けたので、グリップ3の回転を適度な位置でストッパ部20により止めることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、第2実施形態は、左右連動操作装置1をケーブル接続式ではなくモータ駆動式とした点が第1実施形態と異なるのみで、他の基本的構成は同じである。よって、第1実施形態と同一箇所は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
図11に示すように、グリップ3の出力軸7aには、減速機51を介して操舵操作用モータ52が連結されている。また、アーム9には、減速機53を介して加減速操作用モータ54が連結されている。これらモータ52,54は、例えばDCモータが使用される。減速機51,53は、各モータ52,54の回転力を減速してグリップ3に伝達する。なお、モータ52,54が駆動手段に相当する。
【0055】
操舵操作側ポテンショメータ30は、減速機51のギヤ回転量を計測することにより、グリップ3の操舵量を検出する。また、加減速操作側ポテンショメータ32は、減速機53のギヤ回転量を計測することにより、グリップ3の加減速操作量を検出する。
【0056】
図12に示すように、これらモータ52,54は、コントローラ33に接続され、回転動作がコントローラ33にて制御される。コントローラ33は、各ポテンショメータ30,32から出力される検出信号を基に、左右のグリップ3a,3bの操作量を把握し、グリップ3a,3bの一方が他方に追従するようにモータ52,54を制御することにより、左右のグリップ3a,3bの操作量を同一にする。
【0057】
例えば、右グリップ3aが主グリップとして例えば右方向に回動操作されると、コントローラ33は、右グリップ3aの操舵操作側ポテンショメータ30の検出信号から右グリップ3aの右操舵操作量を把握する。そして、コントローラ33は、左グリップ3bが右グリップ3aと同量の右方向の操舵量をとるように左グリップ3bの操舵操作用モータ52を右方向に回動させ、左グリップ3bを右グリップ3aの右操舵に追従させる。
【0058】
ところで、左右連動操作装置1をモータ駆動式の場合、例えば操舵操作用モータ52の制動トルクが弱いと、グリップ3が過荷重で回動操作されると、グリップ3が簡単に動いてしまう可能性が高い。ここで、制動トルクを増すためには、よりサイズの大きなモータを使用すればよいが、この場合は、モータを搭載するための広い部品配置スペースが必要となり、現実的ではない。また、高トルクなモータを使用することも想定されるが、このようなモータは、初動における操作が重くなるため、左右のグリップ3a,3bの連動性が低下するおそれに繋がる。
【0059】
そこで、本例においては、アーム9とアームシャフト34との間の空隙部36aに磁性流体38を充填し、グリップ3が過荷重操作されたときには、磁性流体38を固化してグリップ3をアーム9に固定することにより、過荷重がユニバーサルジョイント4やワイヤーケーブル2に伝達されないようにする。よって、サイズの大きなモータや、高トルクのモータを使用することなく、過荷重による部品変形を生じ難くすることが可能となる。
【0060】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(5),(7)に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)左右連動操作装置1がモータ駆動式のものでも、アーム9とアームシャフト34との間の空隙部36aに充填した磁性流体38で過荷重を吸収することにより、左右のグリップ3a,3bの連動性を確保することができる。
【0061】
(9)本例の左右連動操作装置1はワイヤーケーブル2が不要であるので、装置の配置位置がワイヤーケーブル2によって制限を受けなくなる。よって、左右連動操作装置1の配置自由度を増すことができる。
【0062】
(10)サイズの大きなモータや、制動トルクの高いモータや使用しなくても、グリップ3の各種部品を高負荷から保護することができる。
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
【0063】
・各実施形態において、磁性流体38の配置箇所は、グリップ3の根元位置に限定されず、例えば出力軸7aの先端など、他の箇所に変更してもよい。
・各実施形態において、磁性流体38の配置箇所は、グリップ3の回動操作側に限定されず、例えばグリップ3の傾倒操作側でもよい。つまり、グリップ3の傾倒操作時、グリップ3に過荷重が加わったとき、磁性流体38を固化して、グリップ3の傾倒操作を不可としてもよい。
【0064】
・各実施形態において、磁性流体38は、左右のグリップ3a,3bの両方に設けることに限らず、片側にのみ設けてもよい。
・各実施形態において、シール部材37は、Oリングに限定されず、他の種類のものを採用してもよい。
【0065】
・各実施形態において、検出手段は、操舵操作側ポテンショメータに限らず、他のセンサやスイッチを使用してもよい。
・各実施形態において、過荷重か否かの判定閾値は、適宜変更可能である。
【0066】
・各実施形態において、機能性流体は、磁性流体に限らず、他の固化可能な流体を使用してもよい。
・各実施形態において、グリップ3は、中立位置から下方向(上方向)にのみ傾倒操作可能としてもよい。
【0067】
・各実施形態において、グリップ3の操作態様は、左右方向の回動操作や、上下方向の傾倒操作に限定されず、例えば左右方向の傾倒操作など、他の態様を採用することも可能である。よって、グリップ3の傾倒操作方向は、上下方向に限らず、例えば左右方向としてもよい。
【0068】
・第1実施形態において、ケーブル線は、プッシュプル式のワイヤーケーブル2に限定されず、他の素材の線が使用可能である。
・第1実施形態において、左右連動操作装置1は、ワイヤーケーブル2が合計4本ある構造のものに限定されず、例えばグリップ3の回動操作及び傾倒操作のそれぞれにワイヤーケーブル2が1本のみ存在する計2本のものでもよい。
【0069】
・第2実施形態において、グリップ3の回動/傾倒の駆動源は、モータに限らず、例えばシリンダ等の他のアクチュエータを使用してもよい。
・第2実施形態において、過荷重の有無を見るセンサと、左右のグリップ3a,3bの連動(操作量)を見るセンサとを、別々に設けてもよい。
【0070】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、グリップ3が回動操作及び傾倒操作の両方が可能なものに限らず、例えば回動操作又は傾倒操作の一方のみが可能なものでもよい。
【0071】
・各実施形態において、左右連動操作装置1は、車両に適用されることに限定されず、他の乗り物に使用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0072】
(イ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記グリップとこれを摺動可能に支持する支持部とにより囲まれた空隙部はその両側がシール部材によって封止され、当該空隙部に前記機能性流体が充填されている。
【0073】
(ロ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記グリップを操作して当該グリップから手を離したとき、当該グリップを元の中立位置に復帰させる復帰機構を備えた。この構成によれば、操作したグリップを元の中立位置に自動で戻すことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1…左右連動操作装置、2(2a〜2d)…ケーブル線としてのワイヤーケーブル、3(3a,3b)…グリップ、9…回動支持部としてのアーム、30,32…検出手段及び操作量検出部を構成するポテンショメータ、34…回動軸としてのアームシャフト、36…摺動部位、36a…空隙部、38…機能性流体としての磁性流体、40…制御手段としてのコイル通電部、52,54…駆動手段としてのモータ、L1…軸としての軸心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、
前記グリップが操作されるときの摺動部位に充填された機能性流体と、
前記グリップにおける過荷重の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段が過荷重を検出したとき、前記機能性流体を固化することにより、前記グリップの動きを制限する制御手段と
を備えたことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項2】
前記機能性流体は、磁界を受けると固化する磁性流体である
ことを特徴とする請求項1に記載の左右連動操作装置。
【請求項3】
前記機能性流体は、回動可能な前記グリップから延びる回動軸と、当該回動軸を回動可能に支持する回動支持部との間の空隙部に充填されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左右連動操作装置。
【請求項4】
左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の左右連動操作装置。
【請求項5】
左右の前記グリップは、軸回りの回動操作と軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されている
ことを特徴とする請求項4に記載の左右連動操作装置。
【請求項6】
左右の前記グリップの各々に該グリップの操作量を検出する操作量検出部を設け、当該検出部の検出量を基に、左右の前記グリップの各々に設けた駆動手段を駆動することにより、左右の前記グリップを連動させる
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の左右連動操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−99043(P2012−99043A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248131(P2010−248131)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】