説明

差込式端末接続部、及び、差込式端末接続部の製造方法

【課題】本発明は、弾性部材からなる絶縁部に膨らみが形成されることがなくなることで、部分放電等の悪影響が生じることなく、安定した電気特性の差込式端末接続部及び差込式端末接続部の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】差込式端末接続部1は、底板部23と、前記底板部23の周縁に連なる筒状の周板部24と、を有する端子2と、弾性部材からなり、前記端子2に一体成型された筒状の絶縁部3と、を備え、電線5が前記絶縁部3から差し込まれると、前記電線5から露出した芯線51が前記端子2の内側に位置付けられる。前記周板部24には、当該周板部24を貫通する孔部2aが設けられ、前記端子2の内側に前記芯線51が位置付けられた状態で、前記孔部2aが設けられた前記周板部24の一部が前記周板部24の外側から圧縮された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込式端末接続部、及び、差込式端末接続部の製造方法に係り、ケーブル電線が差し込まれる差込式端末接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の差込式端末接続部の一部断面を示す側面図である。図9に示された、従来の差込式端末接続部101は、ケーブル電線(図示しない)が取り付けられる取付部121と、相手方の端子に接続される接続部122と、を備えた端子102と、弾性部材からなり、内側に前記ケーブル電線が差し込まれる筒状のゴムとう管103と、ストレスコーン部104と、を備えている。これら端子102とゴムとう管103とストレスコーン部104とは、一体成形されている。図9中の矢印Yは、端子102及びゴムとう管103に、ケーブル電線が差し込まれる方向を示している。
【0003】
上記ストレスコーン部104は、ゴムとう管103の矢印Yに沿う端子102から離れた側に埋設されている。また、ストレスコーン部104は、ゴムとう管103の内側にケーブル電線が矢印Yに沿って差し込まれると、ゴムとう管103とケーブル電線との間に位置付けられる。また、ストレスコーン部104は、ゴムとう管103の内側にケーブル電線が差し込まれた状態でケーブル電線に課電されると、ケーブル電線の端末における電界の集中を緩和するために設けられている。
【0004】
上記ケーブル電線の被覆部の外径は、差込式端末接続部101のゴムとう管103の内径よりも僅かに大きく(太く)形成されている。この差込式端末接続部101にケーブル電線を取り付けるには、まず、皮剥ぎされて露出した芯線を、ゴムとう管103の端子102から離れた側の開口から差し込む。すると、前記ケーブル電線の露出した芯線が端子102の内側に位置付けられるとともに、前記ケーブル電線の被覆部がゴムとう管103の内側に位置付けられる。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−33899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の差込式端末接続部101においては、以下に示す問題があった。即ち、従来の差込式端末接続部101においては、ケーブル電線の被覆部の外径は、ゴムとう管103の内径よりも大きく(太く)形成されているので、ケーブル電線がゴムとう管103から差し込まれる(圧入される)と、ゴムとう管103の内側に溜まっている空気の逃げ場がなくなり、その空気によってゴムとう管103が膨らんでしまう問題があった。また、ゴムとう管103の内側に溜まっている空気が、ストレスコーン部104側に逆流してストレスコーン部104とケーブル電線との間に隙間ができてしまうことがある。この状態で、ケーブル電線に課電されると、電界が均一に緩和されず局部的に電界が集中することとなり、そのために、電界が集中している部分が短絡(放電、または、部分放電)し易くなり、電気特性への悪影響が生じる虞れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、弾性部材からなる絶縁部に膨らみが形成されることがなくなることで、部分放電等の悪影響が生じることなく、安定した電気特性の差込式端末接続部及び差込式端末接続部の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、底板部と、前記底板部の周縁に連なる筒状の周板部と、を有する端子と、弾性部材からなり、前記端子に一体成型された筒状の絶縁部と、を備え、電線が前記絶縁部から差し込まれると、前記電線から露出された芯線が前記端子の内側に位置付けられる差込式端末接続部において、前記周板部には、当該周板部を貫通する孔部が設けられ、前記端子の内側に前記芯線が位置付けられた状態で、前記孔部が設けられた前記周板部の一部が前記周板部の外側から圧縮されることを特徴とする差込式端末接続部である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記孔部にねじ込まれるネジ部材を備え、前記ネジ部材が前記孔部にねじ込まれた状態で前記ネジ部材が圧縮されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の差込式端末接続部の製造方法であって、前記端子と前記絶縁部とを一体成形する第1工程と、前記周板部の内側に前記電線を差し込む第2工程と、前記ネジ部材を前記孔部にねじ込んだ状態で、前記ネジ部材を前記周板部の外側から圧縮する第3工程と、を順次行うことを特徴とする差込式端末接続部の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、底板部と、前記底板部の周縁に連なる筒状の周板部と、を有する端子と、弾性部材からなり、前記端子に一体成型された筒状の絶縁部と、を備え、電線が前記絶縁部から差し込まれると、前記電線から露出された芯線が前記端子の内側に位置付けられる。前記周板部には、当該周板部を貫通する孔部が設けられており、前記端子の内側に前記芯線が位置付けられると、前記孔部から絶縁部の内側に溜まった空気が抜ける。前記孔部から絶縁部の内側に溜まった空気が抜けた状態で、前記孔部が設けられた前記周板部の一部が前記周板部の外側から圧縮されて前記孔部は塞がれる。よって、絶縁部に膨らみが形成されることがなくなるので、電線の端末に部分放電等の悪影響が生じることがなくなり、安定した電気特性の差込式端末接続部を提供することができる。
【0012】
請求項2、請求項3に記載の本発明によれば、前記孔部にねじ込まれるネジ部材を備え、前記ネジ部材が前記孔部にねじ込まれた状態で前記ネジ部材が周板部の外側から圧縮されるので、圧縮されることでネジ部材と端子とは一体化されることとなり、よって、防水性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる差込式端末接続部の断面図である。
【図2】図1に示された差込式端末接続部の側面図である。
【図3】図1に示された差込式端末接続部を構成するケーブル電線が段剥ぎされた状態を示す側面図である。
【図4】図1に示された差込式端末接続部の組み立て作業を説明するための説明図であり、差込式端末接続部を構成する、圧縮される前の状態の端子にネジ部材がねじ込まれる様子を示す説明図である。
【図5】図1に示された差込式端末接続部の組み立て作業を説明するための説明図であり、図4に示された端子にケーブル電線が差し込まれて、端子にネジ部材がねじ込まれた状態を示す断面図である。
【図6】図5に示された端子にケーブル電線が差し込まれて、端子にネジ部材がねじ込まれた状態を示す側面図である。
【図7】図6中に示すI−I線に沿う断面図である。
【図8】図7に示された端子を圧縮した状態を示す断面図である。
【図9】従来の差込式端末接続部の一部断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態にかかる差込式端末接続部を、図1乃至図8に基づいて説明する。図1などに示された差込式端末接続部1は、電線としてのケーブル電線5が取り付けられる取付部21と、相手方の端子に接続される接続部22と、を備えた端子2と、弾性部材からなり、内側にケーブル電線5が差し込まれる筒状の絶縁部としてのゴムとう管3と、ストレスコーン部6と、を備えている。これら端子2とゴムとう管3とストレスコーン部6とは、一体成形されている。また、図1中の矢印Yは、ケーブル電線5、端子2及びゴムとう管3の長手方向を示すとともに、ケーブル電線5が端子2及びゴムとう管3に差し込まれる方向を示している。
【0015】
上記ケーブル電線5は、図1、図3に示すように、導電性の芯線51と、芯線51を覆う絶縁性の被覆部52と、前記被覆部52を覆う導電性の金属テープ53と、前記金属テープ53を覆う絶縁性の外皮シース54と、によって構成されている。ケーブル電線5の被覆部52の外径は、後述するゴムとう管3の内径よりも僅かに大きく(太く)形成されている。
【0016】
上記端子2は銅や銅合金などの導電性の金属から構成されている。また、端子2はゴムとう管3の前記長手方向(矢印Y方向)の一端に設けられている。上記取付部21は、底板部23と、前記底板部23の周縁に連なる周板部24と、によって有底筒状に形成されている。
【0017】
上記周板部24は、図2、図4に示すように、底板部23に連なる第1周板部2Aと、前記第1周板部2Aに連なる第2周板部2Bと、前記第2周板部2Bに連なる第3周板部2Cと、を備えている。
【0018】
上記第2周板部2Bは、図5に示すように、内側にケーブル電線5の芯線51が位置付けられた状態で当該第2周板部2Bの外側から圧縮される。第2周板部2Bは、特許請求項の範囲に示された「周板部の一部」に相当する。また、図4〜図6に示すように、圧縮される前の第2周板部2Bの外径は、第1周板部2A、第3周板部2Cよりも径が大きく(太く)形成されている。また、第2周板部2Bには、当該第2周板部2Bを貫通する孔部としてのネジ切り穴2aが設けられている。
【0019】
上記ネジ切り穴2aは、図7に示すように、当該ネジ切り穴2aの内面に、螺旋状の溝が形成された雌ねじ状に形成されており、例えば、銅や銅合金などの導電性の金属からなるネジ部材4と螺合する。また、上記ネジ部材4の外径は、ネジ切り穴2aの内径よりも僅かに小さく形成されており、ネジ部材4がネジ切り穴2aにねじ込まれた後、ネジ部材4が第2周板部2Bの外側から圧縮されると、ネジ部材4と第2周板部2B(即ち、端子2)とは一体化する。すると、第2周板部2Bは、図8に示すように、前記長手方向(矢印Y方向)に対して交差する方向の断面形状が正六角形に形成される。
【0020】
上記第3周板部2Cの外側には、後述するゴムとう管3が取り付けられる。
【0021】
上記接続部22は板状に形成されている。また、接続部22は、第1周板部2Aの外表面から、矢印Yに沿って突出するように設けられている。
【0022】
上記ゴムとう管3は、図5、図6に示すように、本体部31と、前記本体部31の外表面からフランジ状に延在する複数のフランジ部32と、を備えている。また、上記複数のフランジ部32は、矢印Y沿って、互いに間隔をあけて設けられている。
【0023】
上記ストレスコーン部6は、矢印Y方向のゴムとう管3の端子2から離れた他端に埋設されている。また、ストレスコーン部6は、ゴムとう管3の内側にケーブル電線5が差し込まれると、ゴムとう管3とケーブル電線5との間に位置付けられる。また、ストレスコーン部6は、内側にケーブル電線5を通す筒状に形成された筒状部61と、前記筒状部61から端子2に向かうにしたがってケーブル電線5から離れる方向に拡径する拡径部62と、を備えている。ストレスコーン部6は、ゴムとう管3にケーブル電線5が差し込まれた状態でケーブル電線5に課電された際に、ケーブル電線5の端末における電界の集中を緩和するために設けられている。上記筒状部61は、ゴムとう管3の内側にケーブル電線5が差し込まれると、ケーブル電線5の外表面と隙間なく密着する。
【0024】
上述した差込式端末接続部1の製造方法について説明する。まず、予め、端子2とゴムとう管3とストレスコーン部6とを一体成形する(第1工程に相当する)。次に、ケーブル電線5の外皮シース54と金属テープ53と被覆部52とを段剥ぎすることで、芯線51と被覆部52とを露出する。この際、露出した芯線51の矢印Yに沿う寸法は、前述した第2周板部2Bと略等しい寸法に露出され、露出した被覆部52の矢印Yに沿う寸法は、前述したゴムとう管3と略等しい寸法に露出されている。さらに、露出した芯線51をゴムとう管3の開口から矢印Yに沿って差し込む(第2工程に相当する)。すると、ゴムとう管3の内側に溜まっている空気がネジ切り孔2aから抜ける、と同時に、露出した芯線51が、第2周板部2Bの内側に位置付けられるとともに、露出した被覆部52が、ゴムとう管3の内側に位置付けられる。次に、第2周板部2Bの孔部としてのネジ切り穴2aにネジ部材4をねじ込んで、当該ネジ部材4が前記ネジ切り穴2aにねじ込まれた状態でネジ部材4を第2周板部2Bの外側から圧縮する(第3工程に相当する)。すると、第2周板部2B(即ち、端子2)とネジ部材4とが一体化する。こうして、差込式端末接続部1に、ケーブル電線5が、機械的及び電気的に接続される。
【0025】
上述した実施形態によれば、底板部23と、前記底板部23の周縁に連なる筒状の周板部24と、を有する端子2と、弾性部材からなり、端子2に一体成型された筒状の絶縁部としてのゴムとう管3と、を備え、電線としてのケーブル電線5がゴムとう管3から差し込まれると、ケーブル電線5から露出された芯線51が端子2の内側に位置付けられる差込式端末接続部1において、周板部24(第2周板部2B)には、当該周板部24(第2周板部2B)を貫通する孔部としてのネジ切り穴2aが設けられ、端子2の内側に芯線51が位置付けられた状態で、ネジ切り穴2aからゴムとう管3の内側に溜まった空気が抜けた後に、ネジ切り穴2aが設けられた周板部24の一部(第2周板部2B)が周板部24の外側から圧縮されてネジ切り穴2aは塞がれる。よって、ゴムとう管3に膨らみが形成されることがなくなり、ストレスコーン部6とケーブル電線5との間に隙間ができてしまうこともなくなるので、ケーブル電線5の端末に部分放電等の悪影響が生じることがなくなり、安定した電気特性の差込式端末接続部1を提供することができる。
【0026】
また、ネジ切り穴2aにねじ込まれるネジ部材4を備え、ネジ部材4がネジ切り穴2aにねじ込まれた状態でネジ部材4が第2周板部2Bの外側から圧縮されるので、圧縮されることでネジ部材4と端子2とは一体化されることとなり、よって、防水性の向上を図ることができる。
【0027】
なお、上述した実施形態によれば、第2周板部2Bにはネジ切り穴2aが設けられており、ネジ切り穴2aが設けられた周板部24の一部(第2周板部2B)のみが圧縮されているが、本発明はこれに限ったものではなく、周板部24(周板部2A、2B、2C)全体が圧縮されていてもよい。即ち、ネジ切り穴2aは、周板部24全体のうち圧縮される部位に設けられていれば、第1周板部2Aに設けられていても、第3周板部2Cに設けられていてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態によれば、ネジ切り穴2aにはネジ部材4がねじ込まれるが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、ネジ切り穴2aが設けられた周板部24の一部(第2周板部2B)が周板部24の外側から圧縮されると当該ネジ切り穴2aが塞がれる程度の大きさの穴であればネジ部材4はなくてもよい。
【0029】
また、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 差込式端末接続部
2 端子
23 底板部
24 周板部
2a ネジ切り穴(孔部)
3 ゴムとう管(絶縁部)
4 ネジ部材
5 ケーブル電線(電線)
51 芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、前記底板部の周縁に連なる筒状の周板部と、を有する端子と、
弾性部材からなり、前記端子に一体成型された筒状の絶縁部と、を備え、
電線が前記絶縁部から差し込まれると、前記電線から露出された芯線が前記端子の内側に位置付けられる差込式端末接続部において、
前記周板部には、当該周板部を貫通する孔部が設けられ、
前記端子の内側に前記芯線が位置付けられた状態で、前記孔部が設けられた前記周板部の一部が前記周板部の外側から圧縮されることを特徴とする差込式端末接続部。
【請求項2】
前記孔部にねじ込まれるネジ部材を備え、
前記ネジ部材が前記孔部にねじ込まれた状態で、前記ネジ部材が前記周板部の外側から圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の差込式端末接続部。
【請求項3】
請求項2に記載の差込式端末接続部の製造方法であって、
前記端子と前記絶縁部とを一体成形する第1工程と、
前記周板部の内側に前記電線を差し込む第2工程と、
前記ネジ部材を前記孔部にねじ込んだ状態で、前記ネジ部材を前記周板部の外側から圧縮する第3工程と、
を順次行うことを特徴とする差込式端末接続部の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−222935(P2012−222935A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85416(P2011−85416)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】