説明

巻線型電子部品の製造方法および巻線型電子部品

【課題】 ワイヤの巻回数が正確で、特性にばらつきがない巻線型電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の巻線型電子部品の製造方法は、巻芯部1の両端に鍔部2、3が形成され、鍔部2の外側面2aに端子電極4a、4bが形成されたコア5を準備するコア準備工程と、ワイヤ6を準備するワイヤ準備工程と、ワイヤ6に巻始平坦部6cを形成する巻始平坦部形成工程と、巻始平坦部6cの配置をずらし、巻始平坦部6cの少なくとも一部を鍔部3の内側面3aに当接させる巻始平坦部ずらし工程と、ワイヤ6を巻芯部1に巻回するワイヤ巻回工程と、端子電極4aにワイヤの6の巻始平坦部6cを接続するとともに、端子電極4bにワイヤ6の巻終端部6bを接続するワイヤ両端部接続工程を順に備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線型電子部品の製造方法に関し、更に詳しくは、限られた巻スペース中に規定の回数を最大のワイヤ断面の直径で巻くことができる、もしくは限られた巻スペース中に規定のワイヤ断面の直径で最多の巻数を巻くことができる、特性にばらつきがない巻線型電子部品の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、巻線型電子部品に関し、更に詳しくは、限られた巻スペース中に規定の回数を最大のワイヤ断面の直径で巻くことができる、もしくは限られた巻スペース中に規定のワイヤ断面の直径で最多の巻数を巻くことができる、特性にばらつきがない巻線型電子部品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の巻線型電子部品の製造方法として、特許文献1(特開2007‐165539号公報)に開示された方法がある。
【0004】
図14(A)〜図16(G)に、特許文献1に開示された巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す。
【0005】
まず、図14(A)に示すように、巻芯部101の両端に一対の鍔部102、103が形成され、鍔部102の外側面102aに一対の端子電極104a、104bが形成されたコア105を準備する。
【0006】
次に、図14(B)に示すように、コア105の巻芯部101に、絶縁被覆(図示せず)を有するワイヤ106を巻回する。ワイヤ106は、両端部106a、106bを有する。
【0007】
次に、図14(C)に示すように、ワイヤ106の一方の端部106a近傍を加圧冶具107aで、ワイヤ106の他方の端部106b近傍を加圧冶具107bで加圧する。このとき、加圧冶具107a、107bで加圧するだけではなく、加熱するようにしても良い。また、振動を加えるようにしても良い。
【0008】
この結果、図15(D)に示すように、一方の端部106aの近傍に一方の平坦部106cが、他方の端部106bの近傍に他方の平坦部106dが形成される。なお、加圧冶具107a、107bの加圧などにより、ワイヤ106の絶縁被膜は、平坦部106c、106dの部分において除去されている。
【0009】
次に、図15(E)に示すように、ワイヤ106の一方の平坦部106cを端子電極104a上に配置し、ワイヤ106の他方の平坦部106dを端子電極104b上に配置する。
【0010】
次に、図16(F)に示すように、ヒーターチップ108で加熱し、押圧して、平坦部106cを端子電極104aに、平坦部106dを端子電極104bに熱圧着させる。
【0011】
最後に、図16(G)に示すように、ワイヤ106の一方の端部106aおよび他方の端部106bを切断して、この従来の巻線型電子部品は完成する。
【0012】
なお、この従来の巻線型電子部品の製造方法においては、図14(C)、図15(D)に示すように、ワイヤ106の両端部を端子電極104a、104bに熱圧着させる前に、予めワイヤ106に平坦部106c、106dを形成しているが、これは次の理由による。
【0013】
すなわち、この従来の巻線型電子部品の製造方法よりも前の製造方法においては、断面が円形のワイヤの両端を、ヒーターチップなどで、コアの鍔部に形成された端子電極に押圧し、ワイヤの両端を端子電極に熱圧着させていたが、確実に熱圧着させ、確実に電気的導通をはかるためには、大きな力で押圧しなければならず、鍔部がワレたりカケたりすることがあった。この従来の巻線型電子部品の製造方法は、予めワイヤ106に平坦部106c、106dを形成しておくことにより、平坦部106c、106dと端子電極104a、104bが大きな面積で接触するようにし、小さな力でヒーターチップ108を押圧しても、平坦部106c、106dを端子電極104a、104bに確実に熱圧着させ、確実に電気的導通をはかることができるようにしたものである。小さな力でヒーターチップ108を押圧させることができるので、鍔部102がワレたりカケたりすることがなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007‐165539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した、従来の巻線型電子部品の製造方法には、次のような問題があった。
【0016】
すなわち、図17に示すように、コイル106の断面が円形であるため、コア105の鍔部103の内側面103aと当接する、コイル106の1周目の巻回部分106Fが、本来は当接すべきコア105の巻芯部101から離れてしまい、1周目の巻回部分106Fと巻芯部101との間に、空間Sが形成されてしまうことがあった。
【0017】
この結果、この巻線型電子部品は、コイル106の全長が設計通りにならず、インダクタンス値や直流抵抗値などの特性値が設計からずれてしまうという問題があった。また、場合によっては、コイル106の現実の巻回数が、設計上の巻回数から減じてしまい、特性値が設計から大きくずれてしまうという問題があった。また、場合によっては、コイル106の現実の直径を、設計上の直径より細くせざるを得なくなり、特性値が設計から大きくずれてしまうという問題があった。更に、空間Sが形成されなかった巻線型電子部品と、空間Sが形成されてしまった巻線型電子部品で、特性値が異なるという問題があった。
【0018】
この問題を解消する別の方法として、図18に示すように、コア105の鍔部103の内側面103aの巻芯部101の近傍に溝109を形成し、この溝109内に、コイル106の1周目の巻回部分106Fを収容してしまう方法がある。この方法によれば、コイル106の1周目の巻回部分106Fは、コア105の巻芯部101から離れてしまうことがなく、巻線型電子部品の特性値は安定する。しかしながら、この方法においては、コア105の鍔部103の内側面103aに溝109を形成したり、コイル106を巻回する際に、溝109内にコイル106の1周目の巻回部分106Fを収容したりしなければならず、非常に煩雑な作業が追加されるため、製造に要する時間が増大する、専用の装置を新たに追加しなければならない、製造コストが増大するといった、別の問題があった。更にコアが複雑になり高コストになることとコアの強度が弱くなるといった問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたものであり、その手段として本発明の巻線型電子部品の製造方法は、巻芯部の両端に一対の鍔部が形成され、一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の外側面に少なくとも一対の端子電極が形成されたコアを準備するコア準備工程と、ワイヤを準備するワイヤ準備工程と、ワイヤの巻始端部または巻始端部近傍を加圧して、巻始平坦部を形成する巻始平坦部形成工程と、巻始平坦部の配置をずらし、巻始平坦部の少なくとも一部を、一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の内側面に当接させる巻始平坦部ずらし工程と、ワイヤをコアの巻芯部に巻回するワイヤ巻回工程と、少なくとも一対の端子電極の一方の端子電極に、ワイヤの巻始端部および巻始平坦部の少なくとも一方を接続するとともに、少なくとも一対の端子電極の他方の端子電極に、ワイヤの巻終端部を接続するワイヤ両端部接続工程を、順に備えるようにした。
【0020】
なお、ワイヤ巻回工程の後に、ワイヤの巻終端部または巻終端部近傍を加圧して、巻終平坦部を形成する巻終平坦部形成工程を更に備え、ワイヤ両端部接続工程において、少なくとも一対の端子電極の他方の端子電極に、ワイヤの巻終端部および巻終平坦部の少なくとも一方を接続するようにしても良い。巻始平坦部と巻終平坦部を端子電極に接続する場合には、これらを端子電極に対して、ヒーターチップなどを用いて、小さな力で押圧して、巻始平坦部と巻終平坦部を端子電極に熱圧着させることができるため、端子電極の形成された鍔部がワレたりカケたりすることがない。
【0021】
また、ワイヤの巻始平坦部の絶縁被覆を、巻始平坦部形成工程において端子電極に接続する部分のみ除去し、また、ワイヤの巻終平坦部の絶縁被覆を、巻終平坦部形成工程において除去するようにしても良い。この場合には、生産性良く、巻線型電子部品を製造することができる。
【0022】
また、一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の外側面に、端子電極の少なくとも一部が内部に形成される、少なくとも一対の溝を形成する溝形成工程を更に備えるようにしても良い。この場合には、製造された巻線型電子部品のコアの鍔部の外側面から、端子電極に接続されたワイヤの端部が突出することがなく、巻線型電子部品を低背化できるとともに、ワイヤが断線してしまうことがない。また、巻線型電子部品を基板の電極上などに実装した際に、巻線型電子部品が傾き、基板との接続性を悪化させることがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明の巻線型電子部品の製造方法は、上述した構成としたため、本発明により製造された巻線型電子部品は、ワイヤの巻始平坦部が、コアの鍔部の内側面に安定して配置され、大きな摩擦力を備えてしっかりと当接するため、ワイヤの1周目の巻回部分がコアの巻芯部から離れてしまうことがなく、ワイヤは設計通りの長さ、直径、巻数で正確に巻回され、インダクタンス値や直流抵抗値などの特性値も、設計通り正確なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(A)、(B)は、本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す斜視図である。
【図2】図2(C)、(D)は、図1の続きである。
【図3】図3(E)、(F)は、図2の続きである。
【図4】図4(G)、(H)は、図3の続きである。
【図5】図5(I)〜(K)は、図4の続きである。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品を示す要部断面図である。
【図7】図7(A)〜(C)は、第1実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法の変形例にかかる工程を示す斜視図である。
【図8】図8(A)は、本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品を示す要部断面図である。図8(B)は、図8(A)の変形例である。
【図9】図9(A)、(B)は、本発明の第2実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す斜視図である。
【図10】図10(C)、(D)は、図9の続きである。
【図11】図11(E)、(F)は、図10の続きである。
【図12】図12(G)、(H)は、図11の続きである。
【図13】図13(I)〜(K)は、図12の続きである。
【図14】図14(A)〜(C)は、従来の巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す斜視図である。
【図15】図15(D)、(E)は、図14の続きである。
【図16】図16(F)、(G)は、図15の続きである。
【図17】コイルの1周目の巻回部分がコアの巻芯部から離れてしまった従来の巻線型電子部品を示す要部断面図である。
【図18】他の従来の巻線型電子部品を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1(A)〜図5(K)に、本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す。
【0027】
まず、図1(A)に示すように、巻芯部1の両端に一対の鍔部2、3が形成され、鍔部2の外側面2aに一対の端子電極4a、4bが形成されたコア5を準備する。コア5には、例えば、フェライト、アルミナなどの絶縁材料を用いることができる。端子電極4a、4bは、例えば、Ag、Cr−Cu合金、Cr−Ni合金などからなる下地層と、Sn、Sn−Pb合金、Sn−Cu合金などからなる外部層の2層構造とすることができる。なお、下地層と外部層の間に、Ni、Cuなどの中間層を設けるようにしても良い。
【0028】
次に、図1(B)に示すように、ワイヤ6を準備し、巻始端部6aをクランプ機構(図示せず)などに固定する。ワイヤ6は、例えば、Cu、Agなどからなり、断面が円形で、例えば、ポリウレタンなどからなる絶縁被膜を有している。ワイヤの断面の直径は任意であるが、例えば、0.05mm〜1.00mm程度のものを用いることができる。なお、ワイヤ6の、巻始端部6aはクランプ機構などに固定され、反対側の端部は、ワイヤ供給ノズル(図示せず)につながっている。
【0029】
次に、図2(C)に示すように、加圧冶具7aを用いて、ワイヤ6の巻始端部6a近傍を加圧する。このとき、加圧冶具7aで加圧するだけではなく、加熱するようにしても良い。また、超音波などの振動を加えるようにしても良い。更に、加圧する位置は、ワイヤ6の巻始端部6a近傍ではなく、ワイヤ6の巻始端部6aを含む領域であっても良い。
【0030】
この結果、図2(D)に示すように、ワイヤ6の巻始端部6aの近傍に、巻始平坦部6cが形成される。なお、ワイヤ6の絶縁被膜は、加圧冶具7aの加圧などにより、巻始平坦部6cの一部において除去されていても良い。
【0031】
次に、図3(E)に示すように、ワイヤ6の巻始平坦部6cの配置をずらし、巻始平坦部6cの少なくとも一部を、鍔部3の内側面3aに当接させる。ワイヤ6の巻始平坦部6cの鍔部3の内側面3aへの当接位置は、たとえば、図6に示すように、鍔部3の内側面3aの一辺Eから、巻芯部1の2つ目の角部C2近傍までとする。ただし、当接位置は任意であり、この例には限られない。たとえば、鍔部3の内側面3aに当接した1周目のワイヤ6と、巻芯部1を巻回して巻始めの位置に戻った2周目のワイヤ6が重なる、巻芯部1の1つ目の角部C1近傍の部分Pから、2つ目の角部C2近傍までを、当接位置としても良い。この場合には、ワイヤ6に巻始平坦部6cを形成する位置および長さを調節する。なお、図6は、鍔部3の内側面3aへ巻始平坦部6cが当接したワイヤ6を、コア5とともに示した断面図である。
【0032】
次に、図3(F)に示すように、ワイヤ供給ノズル(図示せず)を操作して、コア5の巻芯部1にワイヤ6を巻回する。なお、ワイヤ6の巻終端部6bを、クランプ機構(図示せず)などに固定しても良い。
【0033】
次に、図4(G)に示すように、加圧冶具7bを用いて、ワイヤ6の巻終端部6b近傍を加圧する。このとき、加圧冶具7bで加圧するだけではなく、加熱するようにしても良い。また、超音波などの振動を加えるようにしても良い。更に、加圧する位置は、ワイヤ6の巻終端部6b近傍ではなく、ワイヤ6の巻終端部6bを含む領域であっても良い。
【0034】
この結果、図4(H)に示すように、ワイヤ6の巻終端部6bの近傍に、巻終平坦部6dが形成される。なお、ワイヤ6の絶縁被膜は、加圧冶具7bの加圧などにより、巻終平坦部6dの一部において除去されていても良い。
【0035】
なお、図4(G)、(H)に示した、ワイヤ6の巻終端部6bまたはその近傍に、巻終平坦部6dを形成する工程は省略することができる。すなわち、ワイヤ6の巻始端部6aまたはその近傍には、コア5の鍔部3の内側面3aに当接させるために、巻始平坦部6cを必ず形成しなければならないが、ワイヤ6の巻終端部6bまたはその近傍の巻終平坦部6dは、省略し、断面を円形のままにしておくことも可能である。
【0036】
次に、図5(I)に示すように、ワイヤ6の巻始平坦部6cを端子電極4a上
に配置し、ワイヤ6の巻終平坦部6dを端子電極4b上に配置する。なお、本実施形態においては、端子電極4a、4b上に、巻始平坦部6c、巻終平坦部6dを配置しているが、本発明においてこれは必須ではなく、図7(A)に示すように、端子電極4a、4b上に、断面が円形のままのワイヤ6の巻始端部6a、巻終端部6bを配置するようにしても良い。
【0037】
次に、図5(J)に示すように、ヒーターチップ8で加熱し、押圧して、巻始平坦部6cを端子電極4aに、巻終平坦部6dを端子電極4bに熱圧着させる。なお、巻始端部6aを端子電極4aに、巻始端部6bを端子電極4bに接続することとした場合には、図7(B)に示すように、断面が円形のままのワイヤ6の巻始端部6a、巻終端部6bを、ヒーターチップ8により、端子電極4a、4bに熱圧着させる。このとき、図7(C)に示すように、熱圧着されたワイヤ6の巻始端部6a、巻終端部6bは、ヒーターチップ8の熱および圧力により平坦になる。
【0038】
最後に、図5(K)に示すように、ワイヤ6の巻始端部6aおよび巻終端部6bを切断して、本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品は完成する。
【0039】
この巻線型電子部品は、図8(A)に示すように、ワイヤ6の巻始平坦部6cが、コア5の鍔部3の内側面3aに、大きな摩擦力を備えてしっかりと当接するため、巻始平坦部6cがコア5の巻芯部1から離れてしまうことがない。すなわち、巻始端部6cと巻芯部1の間に、空間が形成されることがない。この結果、ワイヤ6は設計通りの長さ、直径、巻数で正確に巻回され、インダクタンス値や直流抵抗値などの特性値が、設計通り正確なものとなる。なお、図8(A)は、コア5の巻芯部1に、ワイヤ6を単層に巻回した状態を示しているが、これに代えて、多層に巻回するようにしても良い。図8(B)に、コア5の巻芯部1に、ワイヤ6を二層に巻回した状態を示す。図8(B)から分かるように、この場合にも、ワイヤ6は、コア5の巻芯部1に弛みなく巻回される。
【0040】
以上、本発明の第1実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨を考慮して、種々の変更をなすことができる。たとえば、第1実施形態では、コア5の鍔部2の外側面2aに一対の端子電極4a、4bを形成し、コア5の巻芯部1に1本のワイヤ6を巻回し、巻線型電子部品としてコイルを製造しているが、コア5の鍔部2の外側面に二対の端子電極を形成し、コア5の巻芯部1に2本のワイヤを巻回して、巻線型電子部品としてトランスを製造するようにしても良い。
【0041】
[第2実施形態]
図9(A)〜図13(K)に、本発明の第2実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法において実施される各工程を示す。
【0042】
第2実施形態においては、コアの鍔部の外面側に一対の溝を設け、その溝内に、端子電極の少なくとも一部を形成するようにした。そして、他の構成については、第1実施形態と同様にした。
【0043】
第2実施形態においては、まず、図9(A)に示すように、巻芯部1の両端に一対の鍔部2、3が形成され、鍔部2の外側面2aに一対の溝9a、9bが形成され、その溝内9a、9b内を含めて鍔部2の外側面2aに端子電極14a、14bが形成されたコア5を準備する。
【0044】
次に、図9(B)に示すように、ワイヤ6を準備し、巻始端部6aをクランプ機構(図示せず)などに固定する。
【0045】
次に、図10(C)に示すように、加圧冶具7aを用いて、ワイヤ6の巻始端部6a近傍を加圧する。
【0046】
この結果、図10(D)に示すように、ワイヤ6の巻始端部6aの近傍に、巻始平坦部6cが形成される。なお、ワイヤ6の絶縁被膜は、加圧冶具7aの加圧などにより、巻始平坦部6cの部分において除去されている。
【0047】
次に、図11(E)に示すように、ワイヤ6の巻始平坦部6cの配置をずらし、巻始平坦部6cの少なくとも一部を、鍔部3の内側面3aに当接させる。
【0048】
次に、図11(F)に示すように、ワイヤ供給ノズル(図示せず)を操作して、コア5の巻芯部1にワイヤ6を巻回する。なお、ワイヤ6の巻終端部6bを、クランプ機構(図示せず)などに固定しても良い。
【0049】
次に、図12(G)に示すように、加圧冶具7bを用いて、ワイヤ6の巻終端部6b近傍を加圧する。
【0050】
この結果、図12(H)に示すように、ワイヤ6の巻終端部6bの近傍に、巻終平坦部6dが形成される。
【0051】
次に、図13(I)に示すように、ワイヤ6の巻始平坦部6cを端子電極14
a上に配置し、ワイヤ6の巻終平坦部6dを端子電極14b上に配置する。
【0052】
次に、図13(J)に示すように、ヒーターチップ18で加熱し、押圧して、巻始平坦部6cを端子電極14aに、巻終平坦部6dを端子電極14bに熱圧着させる。
【0053】
最後に、図13(K)に示すように、ワイヤ6の巻始端部6aおよび巻終端部6bを切断して、本発明の第2実施形態にかかる巻線型電子部品は完成する。
【0054】
第2実施形態にかかる巻線型電子部品の製造方法においては、コア5の鍔部2の外側面2aに一対の溝9a、9bを形成し、その溝9a、9b内に端子電極14a、14bの少なくとも一部を形成するようにしている。この結果、製造された巻線型電子部品のコア5の鍔部2の外側面2aから、ワイヤ6の巻始端部6cや巻終端部6dが突出することがなく、巻線型電子部品を低背化できる。また、ワイヤ6が鍔部2の角部などにおいて断線することがない。更に、この巻線型電子部品を基板の電極上などに実装した際に、ワイヤ6により、巻線型電子部品が傾き、基板との接続性を悪化させることがない。
【符号の説明】
【0055】
1:巻芯部
2、3:鍔部
2a:外側面
3a:内側面
4a、4b、14a、14b:端子電極
5:コア
6:ワイヤ
6a:巻始端部
6b:巻終端部
6c:巻始平坦部
6d:巻終平坦部
7a、7b:押圧冶具
8、18:ヒーターチップ
9a、9b:溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯部の両端に一対の鍔部が形成され、前記一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の外側面に少なくとも一対の端子電極が形成されたコアを準備するコア準備工程と、
ワイヤを準備するワイヤ準備工程と、
前記ワイヤの巻始端部または巻始端部近傍を加圧して、巻始平坦部を形成する巻始平坦部形成工程と、
前記巻始平坦部の配置をずらし、前記巻始平坦部の少なくとも一部を、前記一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の内側面に当接させる巻始平坦部ずらし工程と、
前記ワイヤを前記コアの前記巻芯部に巻回するワイヤ巻回工程と、
前記少なくとも一対の端子電極の一方の端子電極に、前記ワイヤの前記巻始端部および前記巻始平坦部の少なくとも一方を接続するとともに、前記少なくとも一対の端子電極の他方の端子電極に、前記ワイヤの巻終端部を接続するワイヤ両端部接続工程を、順に備えてなる巻線型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記ワイヤ巻回工程の後に、前記ワイヤの巻終端部または巻終端部近傍を加圧して、巻終平坦部を形成する巻終平坦部形成工程を更に備え、
前記ワイヤ両端部接続工程において、前記少なくとも一対の端子電極の他方の端子電極に、前記ワイヤの前記巻終端部および前記巻終平坦部の少なくとも一方を接続する、請求項1に記載された巻線型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記ワイヤが絶縁被覆を有し、前記巻始平坦部の前記絶縁被覆が、前記巻始平坦部形成工程において除去される、または/および、前記巻終平坦部の前記絶縁被覆が、前記巻終平坦部形成工程において除去される、請求項1または2に記載された巻線型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の外側面に、前記端子電極の少なくとも一部が内部に形成される、少なくとも一対の溝を形成する溝形成工程を更に備えた、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された巻線型電子部品の製造方法。
【請求項5】
巻芯部の両端に一対の鍔部が形成され、前記一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の外側面に少なくとも一対の端子電極が形成されたコアと、
前記コアの前記巻芯部に巻回され、一方の端部が前記少なくとも一対の端子電極の一方の端子電極に接続され、他方の端部が前記少なくとも一対の端子電極の他方の端子電極に接続されたワイヤを備えてなる巻線型電子部品であって、
前記ワイヤの一方の端部または一方の端部近傍に平坦部が形成され、前記平坦部の少なくとも一部が、前記一対の鍔部のいずれか一方の鍔部の内側面に当接している巻線型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−8739(P2013−8739A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138661(P2011−138661)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】