説明

布地用水性エマルジョン型樹脂組成物、それを用いてなる布地用水性インキ組成物及び用途

【課題】布地に熱圧着下に転着性・被覆コート性を発揮させ、その樹脂成分に耐洗濯性を有する撥油性等の機能を賦与させる水性エマルジョン型樹脂組成物及びその樹脂成分に更に着色性を持たせてなる布地用水性インキ組成物及びこれらを用いてなる機能性布地及び印刷布地を提供することである。
【解決手段】全重合性モノマー成分100質量%当たりグリシジル基を有する共重合性モノマーの10〜70質量%で得られ、体積基準で表す平均粒子径5〜100nmの超微細ポリマー粒子(A)と、全重合性モノマー成分100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマーの0.1〜20質量%で得られ、体積基準で表す平均粒子径5nm〜1μm超微細ポリマー粒子(B)との化学的相互作用下に、布地に転着又は被覆コートさせる布地用水性エマルジョン型樹脂組成物及びその超微細ポリマー粒子(A)に着色性を持たせてなる布地用水性インキ組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エマルジョン型樹脂組成物に関し、より詳細には、ホットプレス下に布地に転着・被覆コート性を発揮させ且つその転着又は被覆コート樹脂成分に優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性等の機能を賦与させる布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物及びこの水性エマルジョン型樹脂組成物をホットプレス下に布地に被覆コートさせた機能性布地に関する。
【0002】
また、本発明は、このような耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性等の機能を賦与させる水性エマルジョン型樹脂組成物を用いて、更に着色性機能を持たせてホットプレス下に転着性としての印刷性又は転写性を発揮させる布地用の水性インキ組成物及びこの水性インキ組成物を各種印刷法又は転写法で所望する図柄及び/又は文字が印刷又は転写されている印刷布地に関する。
【背景技術】
【0003】
天然繊維及び/又は合成繊維からなる布地に、各種の機能性樹脂又は各種の機能剤を被覆及び/又は含浸させて防水性、撥水性、速乾性、防汚性、帯電防止性等の機能や、また、近年、その機能も益々多様化され、例えば、しわ防止性、形態安定性、防花粉付着性、抗菌防臭性、たばこ防臭性等の機能や、更には、その機能も益々高度化・多機能化されて賦与されている機能性布地が種々検討又は実用化されている。また、従来から、このように布地に賦与させた機能効果について、その耐洗濯性や、耐久・堅牢性を一層向上させる技術対処法も種々検討又は一層待望されていることも事実である。
【0004】
また、このような機能性樹脂等を布地に転着及び/又は含浸させるに際して、これらの機能性樹脂に、例えば、着色性機能を持たせた機能性着色樹脂成分として布地に転着及び/又は含浸させることができる。従来から、このような機能性着色樹脂成分を布地に転着及び/又は含浸させて、所望する図柄及び/又は文字付き布地として実用化されている。すなわち、図柄及び/又は文字が印刷又転写された印刷布地が広く利用されている。
【0005】
そこで、例えば[特許文献1]には、布地に防汚性及び撥水性等の機能を発現させるために、乳化剤としてのアニオン、カチオン及びノニオン界面活性剤を用いて得られるフッ素系ポリマーエマルジョンを主剤に、アクリル樹脂等を含有するエマルジョン型樹脂組成物を機能性表面処理剤として織布又は不織布に塗布させた機能性布地が提案されている。
【0006】
また、[特許文献2]には、湿式成膜法で、セルロース、ポリエステル、ナイロン等の織布又は不織布に塗工させて布地に透湿防水性機能を賦与させる樹脂組成物として、ポリウレタン樹脂溶液に、分子中に尿素結合及びオルガノポリシロキサン基を有するオリゴマー乃至はその粒子径サイズが5μm以下であるその微細粒ポリマー微粒子が分散する透湿防水布地用ポリウレタン樹脂組成物が提案されている。
【0007】
また、被転着体又は被覆コート体、または、被印刷体又は被転写体である布地に、このような機能を賦与させるに、従来から公知の噴霧塗布、ディッピング、スピンコート等の各種の含浸及び被覆コート法や、スクリーン印刷、凸版印刷等の各種の印刷法の他に、近年においては、インクジェット塗工法(IJ塗工法)で、このような機能性樹脂及び/又は機能性着色樹脂成分を転着又は被覆コート、または、印刷又は転写させることが検討又は実用化されている。そのために、転着媒体又は被覆コート媒体、または、印刷媒体又は転写媒体として用いられる布地用水性インキ組成物や、水性被覆コーティング剤などが広く検討されている。
【0008】
例えば[特許文献3]には、印刷用インク、インクジェット(IJ)記録用インク等に用いられる特定単量体を含有する単量体組成物と油溶性染料と有機珪素単量体とを、重合開始剤、反応性乳化剤(又は重合性乳化剤)及び非重合性乳化剤との併用下に乳化重合させた、例えば、平均粒子径が92nmの着色微細粒子を含有する着色樹脂エマルジョンが提案されている。
【0009】
また、[特許文献4]には、水性媒体中に、インクジェット記録紙用の水性印刷インキとして、油溶性染料を含有する体積平均粒子径が70nm以下で、親水性ポリマー部位が10〜40質量%で、且つTg≦0℃で、特にTg≦−15℃の疎水性ポリマー部位が60〜90質量%を併せ持つ着色微粒子を分散させたIJ記録紙用の水性印刷インキが提案されている。
【0010】
更には、[特許文献5]には、Tg≦0℃で、ニトリル基、カルボキシル基及びビニル基等の官能基を有するモノマーを共重合させて得られる樹脂粒子及び顔料粒子を分散する水性エマルジョン型の布地用インキ組成物が提案され、天然繊維及び合成繊維からなる布地に固着力を発揮させ、耐洗濯性を有する布地用インキ組成物であると記載させている。
【0011】
【特許文献1】特開2000−110069号公報
【特許文献2】特開平11−124497号公報
【特許文献3】特開2000−297126号公報
【特許文献4】特開2004−323723号公報
【特許文献5】特開平8−209052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような状況下にあって、布地に機能性樹脂又は各種の機能剤を含浸又は転着又は被覆コートさせて、「防水性、撥水性、速乾性、防汚性、帯電防止性、しわ防止性、形態安定性、防花粉付着性、抗菌防臭性、たばこ防臭性」などの機能を布地に賦与させる技術分野と、併せてこの機能性樹脂成分に着色機能を持たせた機能性着色樹脂成分として布地に転着又は被覆コートさせて、布地に所望する「図柄及び/又は文字」を転着形成させて図柄付き布地にする技術分野とは、機能性樹脂成分又は機能性着色樹脂成分を布地に転着又は被覆コートさせて様々な機能を布地に賦与させる布地の表面処理加工であるとも言える。
【0013】
以上のような観点から、機能性着色樹脂を用いて、布地に図柄及び/又は文字を転着形成させる後者の処理技術は、布地の表面処理加工として布地に所望する図柄及び/又は文字を印刷又は転写させる表面加工と言える。従って、布地に「機能性樹脂成分」を「転着又は被覆コート」させる前者の処理技術と、布地に「機能性着色樹脂成分」を「印刷又は転写」させる後者の処理技術とは、何れも布地面に機能を賦与させる表面処理加工であるとして、その技術的範囲を同じくするものと理解される。
【0014】
また、既に上記する如く、布地に様々な機能を賦与させる表面処理加工は、益々高機能化、多機能化又は多様化の傾向にあって、その技術的課題も、益々微細・薄膜・高性能化の方向にある。また、その技術的課題を達成させるために、近年、「ナノマテリアル」なる素材を用いて成す「ナノテク」技術が不可欠であることも実状である。すなわち、上記する媒体組成物中に含有させる機能性樹脂成分及び/又は着色機能成分は、例えば、その樹脂粒子径サイズ又は転着・被覆コート膜厚サイズが、数100nm以下であって、特に10nm〜数10nmの超微細粒子又は極薄膜をターゲットにする。そのために適材となる「ナノマテリアル」なる機能性樹脂素材又は機能性着色樹脂素材を広く探索しなければならない。
【0015】
そこで、既に上記した[特許文献3]又は[特許文献4]公報には、サブミクロン以下の数10nm程度の超微細粒子で、且つそのTg≦0℃である着色樹脂微粒子が提案されている。また、[特許文献5]公報には、Tg≦0℃で、しかも、ニトリル基、カルボキシル基及びビニル基等の官能基を有する樹脂粒子と顔料粒子を分散させた水性エマルジョン型インキ組成物が、布地に固着力を発揮させて耐洗濯性を有する水性エマルジョン型インキ組成物であると記載されている。
【0016】
しかしながら、従来技術として提案されている着色樹脂微細粒子を含め各種の機能性樹脂組成物が、布地に優れた転着又は被覆コート性を発揮させ、しかも、優れた耐洗濯性を有する樹脂成分として、充分な機能を布地に賦与させ、しかも、その機能効果が充分に耐久性を発揮させる適材であるか否かについて、必ずしも明確に言及又は開示されていないのが実状である。
【0017】
そこで、本発明の目的は、布地に機能性樹脂組成物又は機能性着色樹脂組成物を転着又は被覆コートさせて、例えば、下記する如くの従来技術(1)又は(2)に相違して、布地にホットプレス下に転着性又は被覆コート性を発揮させ、しかも、その樹脂成分に優れた耐洗濯性を有する機能を賦与させる「ナノマテリアル」樹脂成分を提案させることである。しかも、その転着又は被覆コートさせた樹脂成分には、優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性等の機能を発現させて、その発現させた機能効果が、著しく耐久・堅牢性である布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物を提供させることである。
(1)各種の天然繊維及び/又は合成繊維からなる織布又は不織布に、機能性樹脂成分を含浸又は被覆コートさせた後、ホットプレス下にラミネート処理を施して、布地に機能を賦与させてなる機能性布地である。
又は、
(2)予め油溶性又は水溶性染料を用いて図柄及び/又は文字等をパターン染色させた後、樹脂成分を噴霧・塗布・熱圧着させて布地に機能を転写賦与させてなる図柄付き布地である等が一般的である。
【0018】
また、本発明の他の目的は、上記するような特徴を発揮させて、優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性機能を布地に賦与させる水性エマルジョン型樹脂組成物を、ホットプレス下に布地に転着又は被覆コートさせてなる機能性布地を提供させることである。
【0019】
また、更なる本発明の目的は、このように布地に耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性機能を賦与させる布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物を用いて、更に、追加機能として着色性を併せ持たせることで、ホットプレス下に転着性としての印刷性及び転写性を発揮させる布地用の水性インキ組成物を提供させることである。
【0020】
また、更なる本発明の他の目的は、このような特徴及び機能を発揮させる水性インキ組成物を用いて、各種の印刷及び転写法で、様々な織布又は不織布に、所望する画像及び/又は文字を、ホットプレス下に印刷又は転写させた印刷布地を提供させることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、本発明者らは、上記する課題を鋭意検討した結果、特定するグリシジル基を持たせた「ナノマテリアル」なる超微細ポリマー粒子と、特定するカルボキシル基を持たせた「ナノマテリアル」なる超微細ポリマー粒子とを含有する水性エマルジョンを布地に塗布させて、熱圧着下に両者官能基相互間にインタラクションを発現させることに着目したところ、機能性樹脂成分又は機能性着色樹脂成分が効果的に布地に転着されることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0022】
本発明によれば、水性媒体中に分散する樹脂成分が、ホットプレス下に布地に対して転着性又は被覆コート性を発揮させ且つその転着又は被覆コート樹脂成分が、優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性機能を布地に賦与させ、しかも、賦与された機能効果が著しく耐久・堅牢性であることを特徴とする布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物を提供する。
【0023】
すなわち、本発明による布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物中に含有し上記するような特徴及び機能を発揮させる樹脂成分は、全重合性モノマー成分の100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分が10〜70質量%範囲で共重合させて得られる共重合体粒子である。しかも、体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(A)(又は第一樹脂成分)として含有している。
また、全重合性モノマー成分の100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマー成分が0.1〜20質量%範囲で共重合させて得られ、しかも、体積基準で表す平均粒子径が5nm〜1μmの超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(B)(又は第二樹脂成分)として含有している。
このような第一樹脂成分と第二樹脂成分とを含有する水性エマルジョン型樹脂組成物を布地に塗布させた後、ホットプレス下に第一樹脂成分と第二樹脂成分とが持つ官能基相互が、化学的な相互関係下に作用して、布地に転着又は被覆コートさせる。
【0024】
また、本発明によれば、被被覆コート体である天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維のそれぞれ単独繊維及びこれらの少なくとも2種の複合繊維の群から選ばれる何れかの繊維からなる織布又は不織布に、このような特徴及び機能を発揮させる本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物を、ホットプレス下に被覆コートさせることで、その被覆コート樹脂成分には、優れる耐洗濯を有する撥油性や、防汚性機能が賦与されていることを特徴とする機能性布地を提供する。
【0025】
また、本発明によれば、上記するような特徴及び機能を発揮する本発明による布地用の水性エマルジョン型樹脂組成物を用いて、その水性媒体中に分散する第一樹脂成分である超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(A)を、着色性を持たせた着色樹脂成分にすることで、含有するナノマテリアル樹脂成分(B)との係わり下にホットプレスさせることで、被転着体である布地に転着性としての印刷性を発揮させる。しかも、この第一及び第二樹脂成分からなる印刷又は転写着色樹脂成分には、耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性や、防印刷滲み性機能を発揮させることを特徴とする布地用水性インキ組成物を提供する。
【0026】
すなわち、上記するような特徴及び機能を発揮する本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物を用いて、全重合性モノマー成分100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分の10〜70質量%範囲で共重合させて得られる共重合体ポリマー粒子に、油溶性染料の0.1〜50質量%を内包着色させ、しかも、体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル」樹脂成分(A)(又は第一樹脂成分)として含有している。
また、全重合性モノマー成分の100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマー成分が0.1〜20質量%範囲で共重合させて得られ、しかも、体積基準で表す平均粒子径が5nm〜1μmの超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル」樹脂成分(B)(又は第一樹脂成分)として含有している。
このように水性インキ組成物中に分散する第一着色樹脂成分と第二樹脂成分とが、ホットプレス下に、化学的な相互関係下に布地に印刷又は転写性を発揮させる。
【0027】
更には、本発明によれば、このような特徴及び機能を発揮させる本発明による布地用水性インキ組成物は、被印刷体又は被転写体である天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維のそれぞれ単独繊維及びこれらの少なくとも2種の複合繊維の群から選ばれる何れかの繊維からなる織布又は不織布に、ホットプレス下に、例えば、インクジェット法を含めた各種の印刷法又は転写法で印刷及び転写される。しかも、その図柄及び/又は文字として熱圧着された第一及び第に樹脂成分からなる着色樹脂成分には、優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性や、防印刷滲み性等の機能が賦与されていることを特徴とする印刷布地を提供する。
【発明の効果】
【0028】
以上から、本発明による水性エマルジョン型樹脂組成物を、布地に塗布させると、含有する超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(A)の第一樹脂成分と超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(B)の第二樹脂成分とが、布地の繊維微細間隙を含め布地面に、素早く浸透して布地に効果的に馴染み付着する。しかも、グリシジル基を持つナノマテリアル樹脂成分(A)の第一樹脂成分と、カルボキシル基を持つ第二樹脂成分とは、互いに極めて近傍に介在している。更には、このナノマテリアル樹脂成分(A)及びナノマテリアル樹脂成分(B)の超微細ポリマー粒子の表面には、グリシジル基及びカルボキシル基が存在するように形成されている。
【0029】
その結果、布地に水性エマルジョン型樹脂組成物を塗布・熱圧着させることで、第一樹脂成分(A)と第二樹脂成分(B)との両者官能基相互間には、極めて効果的な化学的相互作用(又はインタラクト)を発現させて、第一樹脂成分(A)と第二樹脂成分(B)とを含む樹脂成分が、布地に転着又は被覆コートされる。
【0030】
このようにホットプレス下(又は熱圧着下)に、布地に転着又は被覆コート性を発揮させて布地に転着又は被覆コートされた樹脂成分には、上記するようなインタラクションが活かされて、その転着又は被覆された樹脂成分には優れた耐洗濯性を発揮させる。
【0031】
また、このような転着性又は被覆コート性又は耐洗濯性なる特徴及び機能を発揮させることから、これらの樹脂成分に着色性、撥油性、防汚性等を含めた各種の機能を賦与させることができる。しかも、従来技術による素材に比較して賦与させた機能効果を、著しく持続・堅牢化させる。
【0032】
また、このような水性エマルジョン型樹脂組成物中に含有する機能性樹脂成分又はその樹脂成分を機能性着色樹脂成分にすることで、布地に転着又は被覆コートさせる処理加工、または、印刷又は転写させる処理加工によって、様々な機能性布地や、様々な印刷布地に処理加工することができる。
【0033】
また、特に、本発明による布地用水性インキ組成物においては、ホットプレス下に、布地に印刷又は転写させ、染料を内包着色する超微細ポリマー粒子のナノマテリアル着色樹脂成分(A)に対して、介在する樹脂成分(B)がインタラクトして、インキ成分を内包する着色樹脂成分からのインキ成分の滲み流失を効果的に防止させて、いわゆる「防印刷滲み性」を発揮させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以上から、本発明によるホットプレス下に布地に転着性又は被覆コート性を発揮させる水性エマルジョン型樹脂組成物及びホットプレス下に印刷性又は転写性を発揮させる布地用水性インキ組成物について、その実施に係わる最良の形態について更に説明する。
【0035】
既に説明する如く、布地に対してホットプレス下に転着性又は被覆コート性を発揮させる本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物中に含有する第一樹脂成分及び第二樹脂成分は、
(イ)全重合性モノマー成分の100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分が10〜70質量%の範囲で得られアクリル系共重合体粒子である。
(ロ)そのアクリル系共重合体粒子の体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル」樹脂成分(A)なる第一樹脂成分である。
(ハ)また、全重合性モノマー成分の100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマー成分が0.1〜20質量%範囲で得られ、且つ体積基準で表す平均粒子径が5nm〜1μmの超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル」樹脂成分(B)なる第二樹脂成分であることを特徴としている。
【0036】
また、布地に対してホットプレス下に印刷性又は転写性を発揮させる本発明による布地用水性インキ組成物中に含有する着色樹脂成分は、
(ニ)上記する(イ)〜(ハ)なる特徴に加えて、更なる特徴として、第一樹脂成分に、予め油性染料が0.1〜50質量%の範囲で内包着色されている「着色ナノマテリアル」樹脂成分であることを特徴としている。
【0037】
以上から、本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物又は布地用水性インキ組成物には、
(ホ)布地に塗布させた後のホットプレス(又は熱圧着)下に、含有する第一樹脂成分と第二樹脂成分のそれぞれが持つ官能基相互が、化学的な相互関係下に作用して、布地に転着又は被覆コートさせる。または、印刷又は転写させることを特徴としている。
【0038】
この第一樹脂成分として用いられるアクリル系共重合体粒子は、既に上述する如く、全重合性モノマー成分100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分が10〜70質量%の範囲で共重合させて得られる共重合体ポリマー粒子である。本発明において、このグリシジル基を有する共重合性モノマー成分量が、下限値10質量%未満であると、グリシジル基の含有量が少なく、ホットプレス下の転着性又は被覆コート性が劣り著しく低下させる等から好ましくなく、一方、上限値70質量%を超えると、粘着性成分が少なく、ホットプレス前の定着性を著しく低下させる等から好ましくない。
【0039】
また、このような共重合下に得られる共重合体ポリマー粒子(A)の平均粒子径は、体積基準で表して5〜100nmの超微細粒子であって、好ましくは、10〜60nmの範囲にある「ナノマテリアル」樹脂成分(A)である。この平均粒子径が、下限値5nm未満であると、粒子の形成・生産性が低下させたり、また、繊維への定着性を低下させる等から好ましくなく、一方、この上限値100nmを超えると、粘着成分が低下させてホットプレス前の転着性を著しく低下させる等から好ましくない。
【0040】
更には、第二樹脂成分に用いられるアクリル系ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(B)は、同じく上述する如く、全重合性モノマー成分100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性のアクリル系モノマー成分が0.1〜20質量%範囲で重合させて得られる。このカルボキシル基を有する共重合性モノマー成分量が、下限値0.1質量%未満であると、グリシジル基との反応性が劣り、定着性も低下させる等から好ましくなく、一方、上限値20質量%を超えると、未反応のバインダー成分が残り、べとつき感を呈する等から好ましくない。
【0041】
また、このような共重合下に得られる共重合体ポリマー粒子(B)の平均粒子径は、体積基準で表して5nm〜1μmの超微細粒子であって、好ましくは、20〜500nmの範囲にある「ナノマテリアル」樹脂成分(B)である。この平均粒子径が、下限値5nm未満であると、樹脂粒子が布地の繊維間隙から流れて著しく定着を低下させる等から好ましくなく、一方、この上限値1μmを超えると、繊維間隙に樹脂粒子が浸透し難くなる等から好ましくない。
【0042】
そこで、本発明において、以上のような特徴を有する第一樹脂成分であるアクリル系共重合体粒子(A)の調製に用いるグリシジル基を有するモノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルなどのグリシジル基含有ビニル化合物;β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート;エポキシ基を有するグリシジルビニルエーテル、グリシジルビニルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、本発明において、後述するアクリル酸アルキルエステルを共重合成分とするときには、その共重合成分との共重合性、重合反応率から、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0043】
また、本発明において、上記するような特徴を有する第二樹脂成分としてバインダー性を有するナノマテイアル樹脂成分(B)を調製させるに、用いられるカルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メチレンマロン酸、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノオクチル、 カルボキシアルキルビニルエーテル、カルボキシアルキルビニルエステル、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート、また、これらの誘導体として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。その中でも、本発明において、好ましくは、バインダー性能(又は粘着性)を十分に発揮できる等から、アクリル酸、メタアクリル酸、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマーを適宜好適に用いることができる。
【0044】
また、本発明における第一樹脂成分及び第二樹脂成分を調製させるに際して、共重合性モノマー成分として用いられる官能基を有さないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等のアクリル酸アルコキシエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
【0045】
また、本発明においては、後述する乳化重合法で、本発明による超微細ポリマー粒子(A)又は超微細ポリマー粒子(B)を調製させるに際して、必要に応じて、これらの超微細ポリマー粒子が発現させる上記する特徴及び機能を阻害させない限りにおいて、また、このような超微細ポリマー粒子の形成を阻害させない限りにおいて、架橋構造を導入・形成させることができる。その架橋剤として、多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。その多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等を挙げることができる。
【0046】
また、本発明においては、同様に本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物又は布地用水性インキ組成物の特徴及び機能を阻害させない限りにおいて、転着又は被覆コート性を発揮させる樹脂成分である上記超微細ポリマー粒子(A)及び/又は上記超微細ポリマー粒子(B)に、通常、撥水性等の機能を発揮させるフッ素系化合物を含有させることができる。本発明において、そのフッ素置換(メタ)アクリル系モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル,(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル,(メタ)アクリル酸パ−フルオロメチル,(メタ)アクリル酸ジパ−フルオロメチル等のフッ素置換(メタ)アクリル酸系モノマー等を挙げることができる。
【0047】
このような多官能性モノマーやフッ素置換(メタ)アクリル系モノマーは、超微細アクリル系ポリマー粒子(A)及び(B)の特性を損なわない限りにおいて、併用して本発明による超微細ポリマー粒子を調製でき、これらのモノマーは、0.1〜10質量%の範囲で使用することができる。
【0048】
また、本発明による布地用水性インキ組成物中に分散するナノマテリアル着色樹脂成分は、既に説明するように、水性エマルジョン型樹脂組成物に含有する超微細ポリマー粒子に、油溶性染料を内包させた着色超微細ポリマー粒子(A)を含有している。本発明において、この超微細ポリマー粒子に内包着色させる油溶性染料が、上記するアクリル系モノマーに溶解又は均一に分散する限りにおいて、好ましくは、これらのモノマーより水に溶解し難い油溶性染料であれば特に限定することなく適宜選んで用いられる。
【0049】
その油溶性染料として、例えば、黒色のOlesolol Fast Black,BONJET BLACK CW−1,Solvent Black 27Cr(3価)5%含有,Pigment Black7/水、赤色のVALIFAST RED3306,Olesolol Fast RED BL,Solvent RED8Cr(3価)5.8%含有、青色のカヤセットブルー,Solvent Blue 35、黄色のALIFAST YELLOW4120,Oil Yellow129,Solvent Yellow16,Solvent Yellow33,Disperse Yellow 54、レモン色のPiast Yellow 8005、緑色のOil Green 502,Opias Green502,マゼンダのVALIFAST PINK2310N,Plast RED D−54,Plast RED 8355,Plast RED 8360,Plast Vioiet8850,Disperse Violet 28,Solvent RED149,Solvent RED49,Solvent RED 52,シアンのVALIFAST BLUE2610,VALIFAST BLUE 2606,Oil BLUE650,Plast BLUE8580,Plast BLUE8540,Oil BLUE 5511,オレンジのOil Orange201,VALIFAST ORANGE 3210,Solvent Orange 70,カヤセットオレンジG、ブラウンのVALIFAST BROWN 2402,Solvent Yellow116,Kayaset Flavine FG等を挙げることができる。
【0050】
また、例えば、ソルベントブルー,ソルベントレッド,ソルベントオレンジ,ソルベントグリーン,ルモゲンFオレンジー等が挙げられる。また、例えば、クラリン系、ペリレン系、ジシアノピニル系、アゾ系、キノフタロン系、アミノピラゾール系、メチン系、ジシアノイミダゾール系、インドアニリン系、フタロシアニン系等の筆記記録液に通常使用されている染料や、感熱記録紙や感温色材として用いられるロイコ染料や、また、例えば、ローダミンBステアレート(赤色215号),テトラクロルテトラブロムフルオレセン(赤色218号),テトラブロムフルオレセン(赤色223号),スダンIII(赤色225号),ジブロムフルオレセイン(橙色201号),ジヨードフルオレセイン(橙色206号),フルオレセイン(黄色201号),キノリンエローSS(黄色204号),キニザリングリーンSS(緑色202号),アズリンパープルSS(紫色201号),薬用スカーレット(赤色501号),オイルレッドXO(赤色505号),オレンジSS(橙色403号),エローAB(黄色404号),エローOB(黄色405号),スダンブルーB(青色403号)等の化粧品に使用されているタール系染料をも挙げることができる。
また、本発明において、これらの染料の単独又は2種以上を混合させて使用され、また、必要に応じて各種の直接染料、酸性染料、塩基性染料、アゾイック染料、反応性染料、蛍光染料及び蛍光増白剤等を所望する色調等に応じて適宜選んで使用することができる
【0051】
また、本発明において、これらの染料の単独又は2種以上を混合させて使用され、また、必要に応じて各種の直接染料、酸性染料、塩基性染料、アゾイック染料、反応性染料、蛍光染料及び蛍光増白剤等を所望する色調等に応じて適宜選んで使用することができる。本発明において、質量基準で表わして、既に上述した超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分の100質量%当たり、0.1〜50質量%の範囲で、好ましくは、1〜20質量%の範囲で適宜好適に内包着色させることができる。
【0052】
本発明において、本発明による水性エマルジョン型樹脂組成物又は水性インキ組成物を布地に転着又被覆コートさせる、又は、布地に印刷又は転写させる被転着体、被被覆コート体、被印刷体、被転写体である布地として、例えば、綿・コットン、麻、ウール、シルク、カシミヤ等の天然繊維;レーヨン、キュプラ、テンセル等の再生繊維;アセテート、トリアセテート等の半合成繊維;ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ビニロン、ビニリデン、ポリウレタン、ポリアミド等合成繊維のそれぞれ単独繊維及びこれらの少なくとも2種の複合繊維の群から選ばれる何れかの繊維からなる織布又は不織布等を挙げることができる。
【0053】
また、上記する布地に本発明による水性エマルジョン型樹脂組成物又は水性インキ組成物を転着又は被覆コート、または、印刷又は転写させるには、従来から公知の方法及び装置であるブレードコータ、エアーナイフコート、ロールコート、バーコータ、グラビヤコータ、ロッドブレードコータ、ダイコータ、インクジェット塗工、または、凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等を挙げることができる。
【0054】
<その他の添加剤及び機能剤>
また、本発明による超微細粒ポリマー粒子又は着色超微細粒ポリマー粒子の形成を阻害させたり、そのナノマテリアル樹脂成分が発揮する布地に対する転着性又は被覆コート性、印刷性を阻害させたりしない限りにおいて、必要に応じて、それ自体公知のその他の添加剤(配合剤)を配合させて、これらの添加剤によって反映されるその他の機能を発揮させることができる。本発明において、そのような添加剤として、例えば、熱安定剤、分散剤、防腐剤、撥水剤、粘度調節剤、タレ止め防止剤、表面張力調整剤、pH調整剤、消泡剤、キレート化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗菌・防カビ剤、芳香剤、蛍光剤、有機EL発光剤、各種の薬効成分等を適宜添加させることができる。
【0055】
<本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物の調製>
そこで、このような特徴を有し、熱転写下に布地に転着又は被覆コート性を発揮させ、しかも、優れる耐洗濯性を有し、布地に撥油性や、防汚性や、印刷着色性を賦与させる本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物の調製法について以下に説明する。
【0056】
既に説明する如く、本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物中には、通常の乳化重合法を用いて調製される平均粒子径が5〜100nmである超微細ポリマー粒子の第一樹脂成分の[ナノマテリアル樹脂成分(A)]と、平均粒子径が5nm〜1μmである超微細ポリマー粒子の第二樹脂成分の[ナノマテリアル樹脂成分(B)]とを含有する水性エマルジョン型樹脂組成物である。
本発明によれば、
(1)第一樹脂成分の[ナノマテリアル樹脂成分(A)]は、800〜950質量部の水相中に、例えば、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10〜16質量部と、例えば、水溶性有機溶剤であるメタノール10〜12質量部とを添加して、撹拌下に75〜90℃に昇温させた後、所定量の過硫酸アンモニウムを添加する。
次いで、撹拌下の70〜80℃加温下に、官能基を有さない所定の重合性アクリル系モノマーの所定量と、グリシジル基を有する所定の重合性アクリル系モノマー(又は含グリシジル基モノマー)の所定量との全重合性モノマー成分(含グリシジル基モノマー成分は10〜70質量%)の所定量と、追加所定量の乳化剤と共に、1.5〜3時間を要して注下乳化重合及び熟成させる。
その結果、略100%重合率下に超微細ポリマー粒子としての固形分濃度10〜16%の水性エマルジョン反応物が調製される。また、このように調製される本発明による超微細ポリマー粒子は、体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの範囲にあるナノマテリアル樹脂成分(A)である。
次いで、
(2)第二樹脂成分の[ナノマテリアル樹脂成分(B)]は、800〜950質量部の水相中に、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10〜16質量部と、例えば、メタノール10〜12質量部とを添加させて、撹拌下に75〜90℃に昇温させた後、所定量の過硫酸アンモニウムを添加させる。
次いで、撹拌下の70〜85℃加温下に、官能基を有さない所定の重合性アクリル系モノマーの所定量と、カルボキシル基を有する所定の重合性アクリル系モノマー(又は含カルボキシル基モノマー)の所定量との全重合性モノマー成分(含カルボキシル基モノマー成分は0.1〜20質量%)の所定量と、追加所定量の乳化剤と共に、1.5〜2.5時間を要して注下乳化重合させる。次いで、70〜80℃で30〜40分保持させた後、80〜85℃加温下に、1〜2時間保持熟成させる。その結果、平均粒子径5nm〜1μmの超微細粒子の樹脂成分が、固形分濃度10〜14%として分散する水性エマルジョン反応物が調製される。
【0057】
以上から、本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物は、上記のように調製された第一樹脂成分「ナノマテリアル樹脂成分(A)」と第二樹脂成分「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とが、好ましくは、質量分率で表して「ナノマテリアル樹脂成分(A)」/「ナノマテリアル樹脂成分(B)」=97/3〜60/40の割合で適宜混合させた水性エマルジョン型の樹脂組成物として適宜好適に用いられる。
【0058】
本発明においては、この「ナノマテリアル樹脂成分(A)」と「ナノマテリアル樹脂成分(B)」の混合割合において、既に説明する如く、布地に塗布させた後のホットプレス下に「ナノマテリアル樹脂成分(A)」が97質量%を超えると、バインダー成分である「ナノマテリアル樹脂成分(B)」が少なすぎて、転着性又は被覆コート性を低下させて好ましくない。一方、「ナノマテリアル樹脂成分(A)」が60質量%未満であると、「ナノマテリアル樹脂成分(B)」成分が多すぎて、転着性又は被覆コート性を低下させると共に、耐洗濯性を有する機能を充分に賦与させることができなく、好ましくないことから、本発明において、更に好ましくは、両者の混合割合は90/10〜70/30の範囲になる水性エマルジョン型樹脂組成物を適宜調製することができる。
【0059】
以上のような乳化重合法によって調製される「ナノマテリアル樹脂成分(A)」と「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とを含有する本発明による水性エマルジョン型樹脂組成物は、既に説明する如く、布地に塗布させた後の熱圧着下(又はホットプレス下)に、良好な転着性又は被覆コート性を発揮させる。また、その転着又は被覆コート樹脂成分によって、布地に各種の機能を賦与させることができるのである。
【0060】
そこで、本発明において、上記する乳化重合に用いる乳化剤は、従来から、通常に、乳化剤として使用されているアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤又は必要に応じてノニオン系界面活性剤等から適宜選んで、その単独又は組合わせて使用することができる。例えば、アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート等が挙げられ、カチオン系界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムプロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、また、ノニオン系界面活性剤としては、リピリジニウム等が挙げられる。さらに、アクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性基を有する反応性乳化剤を使用することができる。これらの乳化剤は、特に限定することなく使用される。また、本発明において、これらの乳化剤は、上記するアクリル系モノマー等の重合性モノマー100質量部に対して、1〜50質量部で、好ましくは3〜20質量部の範囲で適宜添加させることができる。この乳化剤は、少ないと得られる樹脂微粒子の粒子径が大きくなる傾向にあり、一方、多いと粒子径が小さくなる傾向にある。本発明においても、所定の撹拌速度下に樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準で表して5〜100nm範囲に適宜調製することができる。
【0061】
また、本発明による水性エマルジョン型樹脂組成物中に含有する水性媒体としては、主水性成分の水相中に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン等から適宜に選ばれる何れかの水溶性有機溶媒を含有させることができる。また、これらの水溶性有機溶媒は、後述するように、乳化重合下に内包着色させる油溶性染料を効果的に内包固定させて染料着色樹脂粒子を形成させに際しての、いわゆる、染料親水化助剤として作用するものと言える。
【0062】
<本発明による布地用水性インキ組成物の調製>
本発明によれば、布地に塗布させた後、熱圧着下に転着性としての印刷性又は転写性を発揮させる本発明による布地用水性インキ組成物は、既に上記した本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物中に、含有する「ナノマテリアル樹脂成分(A)」の超微細ポリマー粒子を、油溶性染料を内包する「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」の着色超微細ポリマー粒子としたものである。以上から熱圧着下に転着性としての印刷性又は転写性を発揮させ、しかも、その印刷又は転写着色樹脂成分には、優れる耐洗濯性を有する撥水性や、防汚性機能や、防印刷滲み性等を発揮させる本発明による水性インキ組成物の調製法について以下に説明をする。
【0063】
本発明によれば、
(1)第一樹脂成分の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」は、800〜950質量部の水相中に、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10〜16質量部と、例えば、メタノール10〜12質量部とを添加させて、撹拌下に75〜90℃に昇温させた後、所定量の過硫酸アンモニウムを添加させる。
次いで、撹拌下の70〜80℃加温下に、官能基を有さない所定の重合性アクリル系モノマーの所定量と、グリシジル基を有する所定の重合性アクリル系モノマー(又は含グリシジル基モノマー)の所定量との全重合性モノマー成分(含グリシジル基モノマー成分は10〜70質量%)の所定量と、追加所定量の乳化剤と、得られる共重合体粒子の100質量%当たり0.1〜50質量%の範囲で内包着色させる所定の油溶性染料と共に、1.5〜3時間を要して注下乳化重合させた後、70〜80℃で30分保持後、85℃に昇温下に1〜2時間保持・熟成させて、着色超微細ポリマー粒子としての固形分濃度10〜15%の水性エマルジョン反応物が調製される。また、このように調製される本発明による着色超微細ポリマー粒子は、体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの範囲にあるナノマテリアル樹脂成分(A)である。
次いで、
(2)第二樹脂成分[ナノマテリアル樹脂成分(B)]は、800〜950質量部の水相中に、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10〜16質量部と、例えば、メタノール10〜12質量部とを添加させて、撹拌下に75〜90℃に昇温させた後、所定量の過硫酸アンモニウムを添加させる。
次いで、撹拌下の70〜85℃加温下に、官能基を持たない所定の重合性アクリル系モノマーの所定量と、カルボキシル基を有する所定の重合性アクリル系モノマー(又は含カルボキシル基モノマー)の所定量との全重合性モノマー成分の100質量%に対して、この含カルボキシル基モノマー成分の0.1〜20質量%範囲の所定量と、追加所定量の乳化剤と共に、1.5〜2.5時間を要して注下乳化重合させる。
次いで、70〜80℃で30〜40分保持させた後、80〜85℃加温下に、1〜2時間保持熟成させる。その結果、平均粒子径5nm〜1μmなる超微細粒の樹脂成分が、固形分濃度10〜14%として分散する水性エマルジョン反応物が調製される。
【0064】
以上から、本発明による布地用水性インキ組成物は、上記のように調製された第一樹脂成分の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」と第二樹脂成分「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とが、好ましくは、質量分率で表して「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」/「ナノマテリアル樹脂成分(B)」=97/3〜60/40の割合で適宜混合させた水性エマルジョン型の水性インキ組成物として適宜好適に用いられる。
【0065】
本発明においては、この「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」と「ナノマテリアル樹脂成分(B)」の混合割合において、既に説明する如く、布地に塗布させた後のホットプレス下に「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」が97質量%を超えると、バインダー成分である「ナノマテリアル樹脂成分(B)」が少なすぎて、印刷性又は転写性を低下させて好ましくない。一方、「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」が60質量%未満であると、「ナノマテリアル樹脂成分(B)」成分が多すぎて、印刷着色濃度を低下させて好ましくないことから、更に好ましくは、両者の混合割合比は90/10〜70/30の範囲になる水性エマルジョン型樹脂組成物に適宜調製することができる。
【0066】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
「ナノマテリアル樹脂成分(A)」と「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とを含有する布地用水性エマルジョン型樹脂組成物を調製させ、木綿製の布地に塗布させ、ホットプレス下に撥油性及び防汚性を布地に賦与させる実施例について以下に説明をする。
<本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物>
(1)「ナノマテリアル樹脂成分(A)」の調製
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤のドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩14質量部、メタノール14質量部を添加し、85℃まで昇温させた後、過硫酸アンモニウムの0.6質量部を添加した。次いで、温度を76〜78℃に保ちながら、
・メタクリル酸メチル(MMA)87質量部と、
・メタクリル酸グリシジル(GMA)13質量部と、
乳化剤のドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部とを2時間かけて注下させて重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温させた後、1.5時間保持した。
その結果、重合率は略100%であり、得られた水性エマルジョン反応物中の固形分は12%で、その固形分の樹脂成分は、平均粒径が30nmの超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル樹脂成分(A)」であるエマルジョン(a)とした。
【0068】
(2)「ナノマテリアル樹脂成分(B)」の調製
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩14質量部、メタノール14質量部を添加し、85℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムを0.6質量部添加した。
次いで、温度を76〜78℃に保ちながら、
・アクリル酸ブチル(BA)の75質量部と、
・アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)の20質量部と、
・メタクリル酸(MAA)の5質量部と、
乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩の1質量部を2時間かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温させて1.5時間保持した。その結果、重合率は略100%であり、固形分は12%、平均粒径は20nmであるエマルジョン(b)とした。
エマルジョン(a)とエマルジョン(b)の固形分比を7:3に調整したものをエマルジョン(c)とした。
【0069】
<機能性布地の調製>
次いで、10cm角の木綿製布地に噴霧器でエマルジョン(c)を均一に塗布し、室温乾燥後、アイロンをかけてホットプレスした。この布地を「洗濯用洗剤で手洗い」⇔「室温乾燥」の洗濯サイクルを10回行った布地上の四箇所に、市販の油性インキ滴をスポットさせた。次いで、3時間放置後、薄い洗剤液中で軽く手洗いした布地には、全く油質の痕跡や、インキ滴による汚染の痕跡が見られなかった。
以上から、本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物を、布地に被覆コートさせてホットプレスすることで、布地に耐洗濯性を有する撥油性、防汚性染を賦与させることができた。
【0070】
(実施例2)
「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」と「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とを含有する布地用水性インキ組成物を調製させ、ポリエステル製の布地に、太字の文字を手書きで印字させた後、アイロンでホットプレスさせた。
次いで、この布地を「洗濯用洗剤で手洗い」⇔「室温乾燥」の洗濯サイクルを10回行った布地の印字文字の色調変化評価法によって、印字文字の印刷性又は転写性及び耐洗濯性を評価しその結果を表1に示した。
また、洗濯する前の布地上の文字に、市販の青色の油性インキで細字を重ね書きした後、室温下に3時間放置後、薄い洗剤液中で軽く手洗いした布地の文字には、全く青色の油質の痕跡や、青色汚染の痕跡が見られなかった。以上から、布地上の印刷文字には、耐撥油性及び防汚性が賦与されていることが理解される。
【0071】
<本発明による布地用水性インキ組成物>
(1)「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」の調製
温度計と窒素導入管とを装着した容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤のドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩14質量部、メタノール11.2質量部を添加し、85℃まで昇温させた後、過硫酸アンモニウムの0.5質量部を添加した。次いで、温度を76〜78℃に保ちながら、
・メタクリル酸メチル(MMA)90質量部と、
・メタクリル酸グリシジル(GMA)10質量部と、
・油溶性染料の「Solvent RED 49」の5質量部と、
乳化剤のドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部とを2時間かけて注下させて重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温させた後、1.5時間保持した。
その結果、重合率は略100%であり、得られた水性エマルジョン反応物中の固形分は12%で、その固形分の樹脂成分は、平均粒径が20nmの超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」のエマルジョン(d)とした。
【0072】
(2)「ナノマテリアル樹脂成分(B)」の調製
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、イオン交換水900質量部と乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩14質量部、メタノール11.2質量部を添加し、85℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムを0.5質量部添加した。
次いで、温度を76〜78℃に保ちながら
・アクリル酸ブチル(BA)の76質量部と、
・アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)の20質量部と、
・メタクリル酸(MAA)の4質量部と、
乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩の1質量部を2時間かけて滴下し滴下重合を行った。さらに76〜78℃で30分保持した後、85℃まで昇温させて1.5時間保持した。その結果、重合率は略100%であり、固形分は12%、平均粒径は26nmであるエマルジョン(e)とした。
そこで、エマルジョン(d)とエマルジョン(e)の固形分比を8:2に調製したものをエマルジョン(i)を実施例2とした。
【0073】
(実施例3、4)
実施例3として、エマルジョン(d)とエマルジョン(e)の固形分比を6:4に調製したものをエマルジョン(j)とした。また、実施例4として、エマルジョン(d)とエマルジョン(e)の固形分比を8.5:1.5に調製したものをエマルジョン(k)とした。
【0074】
(比較例1)
実施例2における「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製するに際して、メタクリル酸グリシジル(GMA)10質量部を、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸10質量部に変えた以外は、実施例2と同様にして「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製した。その結果、重合率は略100%であり、得られた水性エマルジョン反応物中の固形分は12%で、その固形分の樹脂成分は、平均粒径が26nmの超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)−1」であるエマルジョン(f)とした。
【0075】
(比較例2)
実施例2における「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製するに際して、メタクリル酸グリシジル(GMA)10質量部を、ジエチルアミノエチルメタクリレート10質量部に変えた以外は、実施例2と同様にして「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製した。その結果、重合率は略100%であり、得られた水性エマルジョン反応物中の固形分は12%で、その固形分の樹脂成分は、平均粒径が24nmの超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)−2」であるエマルジョン(g)とした。
【0076】
(比較例3)
実施例2における「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製するに際して、メタクリル酸グリシジル(GMA)10質量部を、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部に変えた以外は、実施例2と同様にして「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」を調製した。その結果、重合率は略100%であり、得られた水性エマルジョン反応物中の固形分は12%で、その固形分の樹脂成分は、平均粒径が25nmの超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)−3」であるエマルジョン(h)とした。
【0077】
<色調変化評価法による耐洗濯性の評価法>
エマルジョン(d)、(f)〜(k)の固形分をそれぞれ6%に調整しポリエステルの布に染色、乾燥させた。
・そのまま室温で乾かしたものをブランクとし、
・洗濯用洗剤で手洗いしたもの、アイロンでホットプレスしたのち洗濯用洗剤で手洗いしたもの、更に、
・「洗濯用洗剤で手洗い」⇔「室温乾燥」の洗濯サイクルを10回サイクルさせたもの、
の色調変化を測定機(カラーエースMODEL TC-PIII(東京電色(株)))により測定し、L*a*b*表色系の値(L*値、a*値、b*値)を求め、ブランクとの色差ΔE*=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2により、「印刷性又は転写性」及びその「耐洗濯性」を評価した。
なお、L*値は明度(黒、白)を表し、数値の増加方向は黒方向である。また、a*値及びb*値は色相及び彩度を表すものであり、a*値は赤、緑の指標あって、数値の増加方法は赤方向を示し、b*値は黄、青の指標であり数値の増加方向は黄色を示す。
【0078】
【表1】


表1に示す結果から、本発明による布地用水性インキ組成物のアイロン加熱後のΔE値から、布地に対する転着性として印刷性又は転写性が発揮されている証である。また、その洗濯性サイクル試験後のΔE値が、アイロン加熱後のΔE値に比べて、殆ど差がないことから、布地に印字させたインキ文字は、優れた耐洗濯性を有していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上から、本発明による布地用水性エマルジョン型樹脂組成物、または、布地用水性インキ組成物は、超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル樹脂成分(A)」及び着色超微細ポリマー粒子の「着色ナノマテリアル樹脂成分(A)」に、それぞれ粘着性を発揮させる超微細ポリマー粒子の「ナノマテリアル樹脂成分(B)」とを含有するワンパック・タイプで、極めて取り扱いハンドリング性に優れた水性エマルジョンであって、布地に転着又は被覆コート、または、印刷又は転写させた後、ホットプレスするだけで、各種の天然繊維及び/又は合成繊維からなる織布又は不織布の様々な機能性布地や、様々な図柄及び文字を印刷させた印刷布地を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地にホットプレス下に転着性又は被覆コート性を発揮させ且つその転着又は被覆コート樹脂成分に優れる耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性等の機能を賦与させる布地用水性エマルジョン型樹脂組成物であって、
水性媒体中に、全重合性モノマー成分の100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分が10〜70質量%範囲で得られる共重合体粒子であり、且つ体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(A)と、
全重合性モノマー成分100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマー成分が0.1〜20質量%範囲での共重合下に得られる共重合体粒子であり、且つ体積基準で表す平均粒子径が5nm〜1μmの超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(B)と、
を樹脂成分としてホットプレス下に布地に転着又は被覆コートさせることを特徴とする布地用水性エマルジョン型樹脂組成物。
【請求項2】
質量分率で表して前記ナノマテリアル樹脂成分(A)/前記ナノマテリアル樹脂成分(B)=97/3〜60/40の配合割合で含有していることを特徴とする請求項1に記載の布地用水性エマルジョン型樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する布地用水性エマルジョン型樹脂組成物を、被被覆コート体である天然繊維、再生繊維、半合成繊維及び合成繊維のそれぞれ単独及びこれらの少なくとも2種の複合繊維の群から選ばれる何れかの繊維からなる織布又は不織布に、ホットプレス下に被覆コートさせて、優れる耐洗濯性を有する撥油性及び防汚性機能を賦与されていることを特徴とする機能性布地。
【請求項4】
布地にホットプレス下に地に転着性又は被覆コート性を発揮させ且つ耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性等の機能を賦与させる水性エマルジョン型樹脂組成物を用いてなる布地用水性インキ組成物であって、
水性媒体中に、全重合性モノマー成分100質量%当たり、グリシジル基を有する共重合性モノマー成分が10〜70質量%範囲で得られる共重合体粒子であり、油溶性染料0.1〜50質量%を内包着色する体積基準で表す平均粒子径が5〜100nmの超微細ポリマー粒子の着色ナノマテリアル樹脂成分(A)と、
全重合性モノマー成分100質量%当たり、カルボキシル基を有する共重合性モノマー成分0.1〜20質量%範囲で得られる共重合体粒子で、体積基準で表す平均粒子径が5nm〜1μmの超微細ポリマー粒子のナノマテリアル樹脂成分(B)とを含有し、
被転着体である布地に、ホットプレス下に転着性としての印刷性又は転写性を発揮させる前記(A)及び(B)からなる印刷又は転写樹脂成分に、耐洗濯性を有する撥油性や、防汚性及び防印刷滲み性機能を賦与させることを特徴とする布地用水性インキ組成物。
【請求項5】
請求項4に記載する布地用水性インキ組成物を用いて、ホットプレス下に、被印刷体又は被転写体である天然繊維、再生繊維、半合成繊維及び合成繊維のそれぞれ単独及びこれらの少なくとも2種の複合繊維の群から選ばれる何れかの繊維からなる織布又は不織布に、所望する図柄及び/又は文字が印刷又は転写されていることを特徴とする印刷布地。

【公開番号】特開2007−9351(P2007−9351A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189085(P2005−189085)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】