希土類磁石用合金薄帯及び製造方法、希土類磁石用合金
【課題】高価な希少金属であるTb、DyやHoを用いることなく、かつ磁気特性および熱安定性に優れる希土類磁石を提供する。
【解決手段】プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップを実行する。上記希土類磁石用合金薄帯の製造方法を実施することにより、組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却により結晶化された結晶構造である希土類磁石用合金薄帯が得られる。
【解決手段】プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップを実行する。上記希土類磁石用合金薄帯の製造方法を実施することにより、組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却により結晶化された結晶構造である希土類磁石用合金薄帯が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気特性、特に熱安定性を向上させた希土類磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石は、磁石粉末を樹脂やゴムで固めて作製されるものであるため、その形状の制御が自在であり、寸法精度を容易に高めることが可能である。このため、前記ボンド磁石は、電気製品や自動車部品等の各種用途に広く使用されている。
【0003】
近年、電気製品や自動車部品については、その小型化・軽量化が求められており、これらに使用されるボンド磁石に対しては、磁気特性を低下させずに小型化を実現することが強く要求されている。この要求に応えるためには、磁石の高性能化が必要である。具体的には、残留磁束密度および保磁力を向上させ、最大エネルギー積を高めることが求められる。
【0004】
磁気特性を高めるための方策として、磁石粉末の磁石組成や磁石構造の改良が提案されている。磁石組成に関しては、マグネトプランバイト型フェライトを用いたフェライトボンド磁石が汎用されていた。しかし、フェライトボンド磁石の磁気特性は、残留磁束密度Br、保磁力HcJ、および最大エネルギー積(BH)maxが比較的低い。このため、最大エネルギー積がフェライトボンド磁石の倍以上になるNd2Fe14B系ボンド磁石が普及した。Nd2Fe14B系ボンド磁石は、原料合金の溶湯を回転ロールに供給して得られる急冷薄帯を用いて製造される。
【0005】
磁石構造の改良に関しては、交換スプリング磁石が、新たな磁石材料として注目を集めている。前記交換スプリング磁石は、永久磁石相(ハード相)と軟磁性相(ソフト相)とがナノサイズで混在する構造のものである。前記交換スプリング磁石は、高い磁束密度を有するソフト相を含有するため、磁石全体としての磁束密度が向上し、磁気特性の向上が図れる。
【0006】
上述のような改良により磁気特性の向上が進行しているが、上述した希土類ボンド磁石に対しては、熱安定性に劣るという課題が指摘されている。前記希土類ボンド磁石が自動車の駆動系などの高温環境下に曝される部位に適用される場合には、前記希土類ボンド磁石に対しては、熱安定性に優れ、不可逆減磁率が小さいことが特に求められる。
【0007】
前記希土類ボンド磁石の熱安定性を向上させる手段としては、磁石粉末の表面に、複数の凸条または溝を形成することによって、熱安定性を向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。ただし、特許文献1に開示された技術には、自動車の駆動系などの高温環境下における使用を考えた場合、より一層の熱安定性の向上が求められる。
【0008】
希土類ボンド磁石の熱安定性を向上させる他の手段としては、磁石組成、急冷薄帯の製造条件、急冷薄帯の熱処理条件を制御することによって熱安定性を向上させる方法が、本発明者らの一人によって開発されている(非特許文献2および非特許文献3参照)。
【0009】
非特許文献2は、Pr−Nd−Fe−Co−Bに、NbおよびVを加えた交換スプリング磁石を対象とするものであり、非特許文献2では、交換スプリング磁石の磁石組成、急冷薄帯製造時のロール周速度、急冷薄帯の熱処理温度、および急冷薄帯の熱処理時間を変化させて、各条件が磁気特性に与える影響を調査し、熱安定性を向上させる技術が開示されている。また、Pr−Nd−Fe源として安価なジジムが使用できることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献2に開示された交換スプリング磁石においては、自動車の駆動系などの高温環境下における使用を考えた場合、より一層の熱安定性の向上が求められる。
【0011】
非特許文献3においては、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−V−BにTbを加えた交換スプリング磁石について、磁石組成、急冷薄帯製造時のロール周速度、急冷薄帯の熱処理温度、および急冷薄帯の熱処理時間を変化させて、各条件が磁気特性に与える影響を調査し、熱安定性を向上させる技術が開示されている。またPr−Nd−Fe源として安価なジジムが使用できることを示している。
【0012】
しかしながら、非特許文献3に開示された交換スプリング磁石においては、熱安定性を付与するために添加しているTbは埋蔵量が非常に少ない高価な希少元素であるため、磁石の大幅なコストアップをもたらす。そこでTbを使用せずに熱安定性を十分向上させることが望ましい。
【特許文献1】特許第3277932号
【非特許文献1】山元,古澤,電気学会論文誌A,125巻,12号 (2005)
【非特許文献2】K. Furusawa, H. Yamamoto,IEEE TRANSACTION ON MAGNETICS, VOL.41,NO.10,OCTOBER 2005
【0013】
本発明の目的は、高価な希少金属であるTb、DyやHoを用いることなく、かつ磁気特性および熱安定性に優れる希土類磁石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法は、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップを実行することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法を実施することにより、組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造である希土類磁石用合金薄帯が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、高価な希少金属である、Tb、DyやHoを用いることなく、磁気特性に優れ、熱安定性に優れる希土類ボンド磁石および、そのボンド磁石に適用して最適な磁性合金を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法は基本的構成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明者らは、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金にYを添加すること、及び前記合金からなる急冷薄帯を結晶化させるための熱処理工程において、昇温速度を所定範囲に制御することによって、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを見出した。
【0020】
本発明の実施形態1に係る製造方法を具体的に説明する。先ず、合金原料を溶解させて母合金を作製する。前記合金原料には、Pr,Nd,Fe,Co,Nb,B及びYの成分が含まれている。
【0021】
次に、前記母合金を溶かして、その溶融している合金を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る。前記急冷薄帯を得るにあたって、本発明の実施形態では、合金溶湯を回転するロールの上に噴射して、前記合金溶湯合金を前記ロール上で急冷し、リボン状の合金薄帯を製造する液体急冷法を用いている。前記液体急冷法を用いるにあたって、その種類、ロールの材質、ロールの大きさなどについては、特に限定されない。例えば、前記ロールとしては、Crメッキを施した銅製のロールを用いることが可能である。前記ロールの大きさは、製造スケールに応じて決定することが望ましいものである。
【0022】
用いられる合金原料は、合金薄帯の組成に応じて決定される。所望する組成となるように、合金原料を配合するとよい。本発明の実施形態に希土類磁石用合金薄帯は、その組成にPr,Nd,Fe,Co,Nb,Y,Bを含む希土類磁石から構成されるものである。前記母合金は、組成Pr−Nd−Fe−Co−Nb−Bの合金にYを添加することによって作製されるため、前記母合金としては、比較的安価でかつ熱安定性に優れる希土類磁石合金を用いることが可能である。
【0023】
Nd2Fe14B系磁石の熱安定性向上のための一つの手段として、保磁力を増大させることが有効である。保磁力の向上は、R2Fe14B結晶相のRサイトをTb、DyやHoなどの元素で置換することで実現される場合がある。このことは次のように理解される。すなわち、Tb2Fe14B結晶相やDy2Fe14B結晶相、Ho2Fe14B結晶相が大きな異方性磁場を有するため、一部のRサイトがTb、DyやHoで置換されたR2Fe14B結晶相も異方性磁場が高められることに起因しているものとして理解される(非特許文献4 佐川,広沢,山本,松浦,藤村,固体物理21,(1986),37)。
【0024】
これに対して、前記非特許文献4によれば、RサイトをYで置換したY2Fe14B結晶の異方性磁場は非常に小さく、RサイトをYで置換したことが、保磁力向上ひいては耐熱性向上へ寄与するものとは考え難い。
【0025】
上述した一般的な磁石の常識に反して、本発明者は、希土類元素であるYを、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金に添加することにより、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを見出した。しかしながら組成に占めるYの比率が小さいことから、合金中にYの存在形態を特定することはできなかった。
【0026】
しかし、以下に示す実験結果から明らかなように、本発明者は、希土類元素であるYを、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金に添加することにより、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを実験に基づいて立証した。本発明による希土類磁石は、非特許文献4に示されているR2Fe14B結晶相のRサイトをYにより元素置換することは異方性磁場を増大させる可能性が低いという希土類磁石の技術分野での一般常識を覆した点に特異性がある。本発明による熱安定性に優れる希土類磁石が得られるメカニズムは、RサイトをYで元素置換した結晶相にYの存在形態を特定することができなかったため、明らかでない。但し、実験により立証されているのであるから、R2Fe14B結晶相のRサイトへのTb,Dy及び/又はHoの元素置換による異方性磁場の増大のメカニズムとは別のメカニズムによるものであると推測される。
【0027】
本発明の実施形態において、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−Y−B系磁石を得るには、合金薄帯中に、Pr、Nd、Fe、Co、Nb、Y、およびBが含有されるように合金原料を配合する。PrならびにNdの単体を用いる代わりに、工業的に安価である、ジジム(Didymium、以下Diと表記する)を用い、その他の組成成分であるFe,Co,Nb,Y,Bを単体で前記組成比に応じて配合することもできる。このDiには、Fe成分を含むDidymium−Fe合金、あるいはFe成分を含まないDidymium合金のいずれを用いてもよい。Fe成分を含むDidymium-Fe合金を用いた場合には、この合金にFe成分が含まれているため、単体で含ませるFe成分の組成比は、合金に含まれるFe成分の組成比を差引いたものに設定する。また、Diとしては、Ndを77〜79重量%,Prを21〜23重量%含有するDiを用いることが可能である。Diを用いる場合には、実施例にて後述するような微量な成分を含むものである。
【0028】
また、場合によっては、磁気特性を向上させるために他の元素が含有されてもよい。合金薄帯は合金材料であるため、微量の不純物が混入することは止むを得ないが、不純物量は少量であるほど好ましく、1質量%未満であることが好適である。
【0029】
本発明の実施形態に係る合金薄帯の組成は、組成式RaFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBeにおいて、
a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=6〜10、好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.3〜0.8、e=5.5〜10、さらに好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.5〜0.8、e=5.5〜10である。但し、Rは少なくともNd及びPrを含む。
【0030】
合金薄帯の組成を前記範囲に設定することにより、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)に優れる合金薄帯が得られる。なお、合金薄帯は合金であるため、ある程度の不純物が混入することは避けがたい。したがって、本発明においては、「合金薄帯の組成」とは、混入する不純物を除いた他の成分についての組成を意味する。
【0031】
合金の組成は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法などの測定装置を用いて測定されうる。合金の組成は、用いられる合金材料の配合比から推定することも可能である。
【0032】
本発明の実施形態に係る希土類磁石用合金薄帯は、少なくともα−Fe系ソフト磁性相とNd2Fe14B系ハード磁性相を含む。
【0033】
α−Fe系ソフト磁性相とは、Feの一部が他の元素で置換されている形態も包含する概念である。Feの一部がCo等の他の遷移金属元素で置換されていてもよい。特にFeの一部をCoに置換した場合は、α−Fe系ソフト磁性相のキュリー温度を上昇させ、希土類磁石合金の耐熱温度が向上し、使用温度範囲を拡大させることができる。
【0034】
Nd2Fe14B系ハード磁性相とは、Ndの一部がPrで置換されている形態も包含する概念である。一方、Feの一部がCo等の他の遷移金属元素で置換されていてもよい。特にFeの一部をCoに置換した場合は、Nd2Fe14B系ハード磁性相のキュリー温度を上昇させ、希土類磁石用合金の耐熱温度が向上し、使用温度範囲を拡大させることができる。
【0035】
本発明の実施形態に係る希土類磁石用薄帯は少なくともα−Fe系ソフト磁性相とNd2Fe14B系ハード磁性相からなる複合組織構造を有することから、合金薄帯に添加されたCoの分布の割合は明らかでないが、合金薄帯中の置換されるFeの量は、Feに対して0.01at%以上、30at%以下であることが好ましい。0.01at%未満であると、置換による効果が不十分となるおそれがある。30at%を超えると、磁化の低下が大きくなる恐れや、保磁力の低下が大きくなるおそれがある。
【0036】
本発明の実施形態に係る液体急冷法においては、合金溶湯を回転するロールに供給することによって急冷薄帯を得る。この場合、ロール周速度は15〜22.5m/sec、好ましくは17.5〜21m/secの範囲に設定することが望ましものである。さらに、前記ロール周速度は、好ましくは19.0〜20.5m/secの範囲に設定することが望ましいものである。ロール周速度を前記範囲に設定することによって、保磁力(HcJ;HcB)、残留磁束密度(Br)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。ロール周速度が小さすぎると、急冷薄帯の内部組織が粗大なものとなり、均質性も失われ、磁石特性が低下してしまう。ロール周速度が大きすぎると、この後行う熱処理工程の条件設定が難しくなる。
【0037】
前記液体急冷法により得られた急冷薄帯を熱処理することによって、結晶化させる。結晶化させるための熱処理条件によって、得られる合金の磁気特性が変化する。前記熱処理における昇温速度を所定の範囲に制御することによって、熱安定性を大きく向上させうることがわかった。本発明の実施形態においては、前記昇温速度を、150〜250℃/min、好ましくは180〜220℃/minの範囲に設定し、その昇温速度で急冷薄帯を熱処理して、急冷薄帯を結晶化させる。このような昇温速度で熱処理することによって、保磁力などの磁石特性に優れる磁石合金を得ることができる。そして、製造される磁石の高温での不可逆減磁率を低減することが可能である。つまり、高温環境下で使用しても、磁気特性が低下しにくい磁石が得られる。
【0038】
急冷薄帯の熱処理は、大きな昇温速度が実現できる装置を用いて行われることが好ましい。例えば、赤外線ゴールドイメージ炉が用いられる。熱処理の熱処理温度は、600〜675℃であり、好ましくは625〜660℃であり、さらに好ましくは640〜660℃である。この範囲の温度で熱処理することによって、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。熱処理温度が低すぎると、磁性を担うNd2Fe14B型結晶相の析出および成長を十分に進めることができず、十分な磁石特性を得ることができない。熱処理温度が高すぎると、Nd2Fe14B型結晶相およびαFe型結晶相が必要以上に粗大化し、十分な磁石特性を得ることができない。
【0039】
熱処理の熱処理時間は、0〜15minであり、好ましくは5〜12.5minであり、さらに好ましくは7.5〜12.5minである。ここで、熱処理時間0minとは、熱処理温度到達後に温度を保持することなく、直ちに冷却を開始することを意味する。この範囲の熱処理時間とすることによって、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。なお、熱処理時間は、目的とする熱処理温度範囲において保持される時間を意味する。例えば、熱処理温度が600℃である場合、600℃で3分保持したのち冷却したら、熱処理時間は3分である。なお、熱処理時に温度を完全に一定に保つことは困難であるので、熱処理時間の算定にあたっては、ある程度の温度幅を考慮すべきである。本願においては、±3℃の範囲の温度の変動は、熱処理時間の算定にあたっては考慮しないものとする。例えば、目的とする熱処理温度が600℃である場合、600℃±3℃の温度範囲である時間の合計を、熱処理の熱処理時間とする。
【0040】
熱処理によって希土類磁石原料となる合金薄帯が得られるが、合金薄帯は、永久磁石相(ハード相)と軟磁性相(ソフト相)とがナノサイズで混在する交換スプリング磁石であることが好ましい。交換スプリング磁石は、高い磁束密度を有するソフト相を含有するため、磁石全体としての磁束密度が向上し、磁気特性の向上が図れる。
【0041】
熱処理が施された合金薄帯を用いてボンド磁石を製造する方法については、特に限定されない。通常は、合金薄帯を粉砕して得られる合金粉末を用いてボンド磁石が製造される。合金粉末の粉砕方法やボンド磁石の製造方法については、公知技術が適宜援用されうる。
【0042】
(実施形態2)
次に、上述した本発明の実施形態1に係る製造方法により得られる希土類磁石用合金薄帯について、実施形態2として説明する。
【0043】
本発明の実施形態2に係る希土類磁石用合金薄帯は、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給し、その得られた急冷薄帯を150〜250℃/minの範囲の昇温速度、好ましくは180〜220℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化した組織構造として得られるものである。
【0044】
本発明の実施形態2に係る希土類磁石用合金薄帯は、上述した本発明の実施形態1に係る製造方法によって得られるが、本発明の実施形態1に係る製造方法により得られる構造および同相の組成を有している限り、他の製造方法を用いて製造されたものであってもよいものである。本発明の実施形態2に係る合金薄帯は、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性、および熱安定性に優れる。
【0045】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成は、本発明の実施形態1において説明したとおりである。すなわち、本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成は、好ましくはRaFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBeにおいて、
a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=5.5〜10、好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.3〜0.8、e=6〜10、さらに好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.5〜0.8、e=5.5〜10である。但し、Rは少なくともNd及びPrを含む。
【0046】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成を前記範囲に設定することにより、高価な希少金属である、Tb、DyおよびHoを用いることなく、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)に優れる合金薄帯が得られる。因みに、元素のクラーク数について説明すると、Yはクラーク数0.003%であり、Tbはクラーク数0.00008%であり、Dyはクラーク数0.0004%であり、Hoはクラーク数0.0001%である。
【0047】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の結晶化構造を得るために必要なロール周速度、熱処理の昇温速度、熱処理温度、熱処理時間などの製造条件については、本発明の実施形態1において説明した通りである。具体的には、ロール周速度が15.0〜22.5m/secであり、好ましくは17.5〜21m/secであり、さらに好ましくは19.0〜20.5m/secであり、熱処理の昇温速度が150〜250℃/min、好ましくは180〜220℃/minであり、熱処理の熱処理温度が600〜675℃であり、好ましくは625〜660℃であり、さらに好ましくは640〜660℃であり、熱処理の熱処理時間が0〜15minであり、好ましくは5〜12.5minであり、さらに好ましくは7.5〜12.5minである。それぞれの条件の詳細については、本発明の第1において説明したため、ここでは説明を省略する。
【0048】
前記合金薄帯の磁気特性としては、等方性であっても異方性であってもよい。また、合金薄帯は、磁気特性を考慮すると、少なくともα−Fe型ソフト相、およびNd2Fe14B型ハード相を含む交換スプリング磁石であることが好ましい。
【0049】
前記合金薄帯の結晶構造は、多数の結晶粒から構成される。前記結晶粒の平均粒径は、好ましくは30〜60nmの範囲に設定することが望ましいものである。前記結晶粒の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定されうる。具体的には、TEM写真において確認される結晶粒100個の結晶粒を任意に選び、各粒子の長径を測定し、長径の平均値が平均粒径とされる。
【0050】
前記合金薄帯の原料のうち、Pr源およびNd源としては、目的の組成が達成されるのであれば、何を用いてもよいが、好ましくは工業的に安価であるジジムを用いる。
【0051】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯は、高価な希少金属である、Tb、DyおよびHoを用いることなく、保磁力などの磁石特性を向上することが可能である。具体的に、前記保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることが好ましく、好ましくは1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることが望ましい。このことにより、前記合金薄帯は125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−2.0%未満である高温での熱安定性に優れた磁石材料や、150℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−3.6%未満である高温での熱安定性に優れた磁石材料の原料として使用することが可能となる。不可逆減磁率(%)は、例えば4.8MA/mでパルス着磁した後の磁束(F1)、および所定の温度で磁石材料を保持し、更に常温に冷却した後の磁束(F2)に基づいて、(F1−F2)×100/F1により算出されうる。磁束は、デジタルフラックスメータなどの磁気特性評価装置を用いて測定されうる。所定の温度に保持するには、恒温槽において例えば1時間保持される。常温での冷却は、例えば大気中に1時間保持される。
【0052】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態1及び2に係る合金薄帯を利用したボンド磁石を実施形態3として説明する。
【0053】
本発明の実施形態1及び2に係る合金薄帯を粉砕することによって、前記結晶構造を有する合金粉末が得られる。前記合金粉末は、必要に応じて分級された後、樹脂と混合され、成形されてボンド磁石として構成される。合金薄帯の粉砕手段、粉末の粒径、樹脂などの、ボンド磁石を作製する手段は、特に限定されない。公知のボンド磁石の製造方法が適宜用いられうる。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ナイロン樹脂などが用いられる。成形は、圧縮成形や射出成形などの公知手段が用いられる。
【0054】
本発明の実施形態3に係るボンド磁石は、耐熱性に優れる磁石合金を原料として作製されるため、耐熱性に優れる。具体的には、本発明の実施形態3に係るボンド磁石は、125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、好ましくは−2.0%未満であることが望ましいものである。150℃まで加熱した際の前記ボンド磁石の不可逆減磁率は、好ましくは−3.6%未満であることが望ましいものである。前記ボンド磁石の不可逆減磁率(%)は、例えば4.8MA/mでパルス着磁した後の磁束(F1)、および所定の温度でボンド磁石を保持し、更に常温に冷却した後の磁束(F2)に基づいて、(F1−F2)×100/F1により算出されうる。磁束は、デジタルフラックスメータなどの磁気特性評価装置を用いて測定されうる。所定の温度に保持するには、恒温槽において例えば1時間保持される。常温での冷却は、例えば大気中に1時間保持される。
【0055】
(実施形態4)
次に、前記合金薄帯を構成する希土類磁石用合金について実施形態4として説明する。
【0056】
本発明の実施形態4に係る希土類磁石用合金は、保磁力の大きな希土類磁石用合金であって、その組成に、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mである希土類磁石用合金である。前記合金は、薄帯状であってもよいし、粉末状であってもよい。本発明の実施形態4に係る、前記組織構造をもつ保磁力の大きな合金を用いることによって、熱安定性に優れる125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−2.0%未満である磁石や150℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−3.6%未満である高温での熱安定性に優れた磁石が製造される。磁石合金は、保磁力などの磁気特性にも優れることが好ましい。具体的には、保磁力HcJが14.5kOe(1.15MA/m)以上であることが好ましい。
【0057】
(実施例)
次に、本発明の実施形態の効果を、以下の実施例を用いて説明する。
(組成の影響)
合金薄帯の組成を変化させて、合金薄帯の組成と磁気特性との関連性を調査した。合金薄帯の製造手順は、原材料の配合量を目的とする組成に応じて変化させた以外は、以下の手順とした。
【0058】
目的の組成比の磁性合金を得るにために、組成式中のNdとPrの合計としてDiを用い、その他の組成成分であるFe,Co,Nb,Y,Bを単体で目的の組成比に応じて配合する方法を採用した。前記Diとして、Di−Fe合金を用いた。実験で用いたDi−Fe合金は、Ndが66.73wt%、Prが19.06wt%、Feが14.14wt%のものを用いた。また、各原子の構成比率よりDidymiumの分子量を143.5とした。詳細な組成を表1に記す。
【表1】
【0059】
金属であるDi−Fe合金、Fe、Co、Nb、およびYと、メタロイドであるBを含む母合金を、真空吸い上げ法により作製した。片ロール液体急冷法を用いて、母合金を溶解して得られた合金溶湯から、急速冷却により結晶化された組織構造を有する急冷薄帯を得た。急冷薄帯作製時の雰囲気は高純度Arガスとした。ロールは、銅製のロールにCrメッキを施したものであり、ロールの直径は300mmであった。ロール周速度は20m/secとした。ロールへの合金溶湯の供給は、オリフィス径が0.5mmである石英射出管を使用して行い、射出時には、高純度Arガスを用いて、射出ガス圧を30kPa一定とした。得られた急冷薄帯は、赤外線ゴールドイメージ炉を用いて高純度Arガス雰囲気中において熱処理された。昇温速度、熱処理温度、熱処理時間は適宜選択した。
【0060】
まず、最適な急冷薄帯の熱処理条件を定める際の参考とするために、組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯についてのDSC曲線を測定した。結果を図1に示す。DSC曲線は、リガク社製示差熱量計を用いて行い、DSC(Differential Scanning Calorimetry)の昇温速度は20℃/minで行った。結晶相の同定は、急冷薄帯試料に低温より熱処理を施し、発熱ピーク温度に達した後、常温まで急冷し、X線回折を調べ、それぞれの発熱ピークがどの結晶相に対応しているかを確認した。図1より、ハード相として作用する(Pr,Nd)2Fe14B型結晶相の結晶化開始温度は約592.4℃であることが分かり、この組成系の熱処理は575℃以上で行うべきという指針が得られた。
【0061】
次に、組成Di12.5Fe70.5−xCo10Nb1YxB6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe70.5−xCo10Nb1YxB6の急冷薄帯について、昇温速度210℃/min、温度650℃、時間10minの条件の下で熱処理した後の磁気特性を測定した。xを0〜1.0の範囲で変化させた場合に得られた結果を図2に示す。ここで、Coを10at%としたのは、Co量を8at%、10at%、12at%と変化させて磁気特性を評価したところ、Co量が10at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。Nbを1.0at%としたのは、Nb量を0.5at%、1.0at%、1.5at%、2.0at%と変化させて磁気特性を評価したところ、Nb量が1.0at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。Bを6at%としたのは、B量を5.5at%、6.0at%、7at%,8at%,9at%,10at%と変化させて磁気特性を評価したところ、B量が6.0at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。
【0062】
合金薄帯の残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)は、合金薄帯に対して4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、東英工業社製振動試料型磁力計(VSM)を用いて、常温で測定した。xの値が0.2〜1.0の範囲で良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための、最も良好なxの値は、0.7であった。
【0063】
上記は、FeをYで置換した組成に関する結果である。DiをYで置換した場合にも、同様の保磁力の増大が確認された。すなわち、Y無添加のDi12.5Fe70.5Co10Nb1B6組成急冷薄帯では、最適条件(ロール周速度20.0m/s、熱処理温度625℃、熱処理時間5min)にて、保磁力HcJ=1048.4kA/mであったのに対し、DiをYで置換した。Di11.8Fe70.5Co10Nb1Y0.7B6組成では、最適条件(ロール周速度20.0m/s、熱処理温度650℃、熱処理時間10min)HcJ=1262.1kA/mとなった。
【0064】
(ロール周速度の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、ロール周速度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。ロール周速度は15〜22.5m/secの範囲で変化させた。結果を図3に示す。図3に示すように、ロール周速度が15〜22.5m/secの全ての範囲で良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための、最も良好なロール周速度は20.0m/secであった。
【0065】
(熱処理温度の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、熱処理温度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。熱処理温度は575〜675℃の範囲で変化させた。結果を図4に示す。図4に示すように、熱処理速度が600〜675℃の範囲であると、良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための最も良好な熱処理温度は650℃であった。熱処理温度が550℃より低い場合には磁気特性の確保が難しかったが、その理由は図1に示したDSCの結果からも了解される。
【0066】
(熱処理時間の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、熱処理の際の昇温速度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。結果を図5に示す。図5に示すように、熱処理速度が0〜15minの全ての範囲で、良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。ここで熱処理時間0minとは、熱処理の際に最高温度到達後直ちに冷却を開始したことを意味する。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための最も良好な熱処理時間は10minであった。
【0067】
図6には、Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯のAs melt−spun、熱処理温度575℃、600℃、625℃、650℃、および675℃でのX線回折図形を示す。測定にはCuのKα線を使用した。図6より、As melt−spunでは、結晶相からの回折線が見られず、ほぼ非晶質であることがわかる。また、各熱処理温度別の回折図において、Nd2Fe14B型結晶相とα−Fe型結晶相が現われ、複合組織であることがわかる。α−Fe型結晶相の回折線強度は全体から見ると小さいものであった。
【0068】
(結晶粒の粒径の影響)
組成がDiaFe69.8Co10Nb1YdB6すなわち、Pr0.21aNd0.79aFe69.8Co10Nb1YdB6である合金薄帯に関して、aおよびdの値を変化させて、得られる合金薄帯における結晶粒の平均粒径を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めた。TEM写真において確認される結晶粒から100個の結晶粒を任意に選び、各粒子の長径を測定し、長径の平均値を平均粒径とした。所定の組成における平均粒径を表2に示す。
【表2】
【0069】
得られた合金薄帯はいずれも優れた磁気特性を示し、平均粒径は30〜60nmであった。一方、発明者らの一人によって報告されているDi12.5Fe70.5Co10Nb1B6組成急冷薄帯では、平均粒径は約20nmと小さく、HcJ=1.049MA/mであった。Di12.5Fe69.5Co10Nb1V1B6組成急冷薄帯では、平均粒径は約25nmとやはり小さく、HcJ=1.100MA/mであった。本発明の磁性合金では、これらと比較して結晶粒径が大きく、かつ大きなHcJが得られている。従って平均粒径が保磁力増大の原因であるとは考え難く、化合物の磁気の本質的な特性である、異方性磁場Haや結晶磁気異方性定数Kuの絶対値が変化しているものと思われる。しかしながら「Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6についての磁気特性は後述するように、試料が等方性であることから詳細が明らかではない。
【0070】
(Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6についての磁気特性)
実験した範囲においては、組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minのときに、もっとも最適な磁気特性が得られた。この条件下での諸特性について以下に示す。
図7は得られた合金薄帯の減磁曲線である。
Jr=0.85T(8.5kG)、HcJ=1.4090MA/m(17.71kOe)、HcB=0.5883MA/m(7.395kOe)、(BH)max=126.4kJ/m3(15.88MGOe)であった。
【0071】
図8は得られた合金薄帯のσ−T曲線である。試料は予め、4.8MA/mにて着磁し、振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した。測定磁界は160A/mであった。図8より、試料のキュリー温度は428℃、Nd2Fe14B型結晶相の量はおよそ76vol%、α−Fe型結晶相の量はおよそ24vol%であることがわかる。
【0072】
図9は得られた合金薄帯のTEM写真および電子線回折写真である。図9に示すTEM写真より、結晶粒の粒径は、約15〜100nm程度のものが観察され、平均粒径は48nmであった。また、図9に示す電子線回折写真からは、得られた合金薄帯が等方性であることがわかる。
【0073】
(不可逆減磁率の測定)
組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯を用いて、ボンド磁石を作製した。まず、合金薄帯を150μm以下に粉砕して、合金粉末を得た。合金粉末と、バインダーとして作用する耐熱性樹脂であるエポキシ樹脂2.5質量%とを混合撹拌し、980MPaの圧力で圧縮成形した。その後、180℃×1hの硬化処理を行い、直径10mm×長さ7.8mmの(等方性)ボンド磁石を得た。各ボンド磁石の磁気特性は、4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、高感度自記磁束計(東英工業社製)を用いて測定した。ボンド磁石の減磁曲線を図10に示す。このボンド磁石の密度は6.1Mg/m3であった。また、磁気特性の値はそれぞれJr=0.62T(6.2kG)、HcJ=1.3849MA/m(17.40kOe)、HcB=0.4292MA/m(5.39kOe)、(BH)max=66.3kJ/m3(8.33MGOe)であった。
各ボンド磁石の不可逆減磁率は、以下の様に求めた。まず、デジタルフラックスメータ(東英工業社製)を使用し、4.8MA/mのパルス着磁した後のボンド磁石の磁束(F1)を測定した。次に、恒温槽にて所定の温度で1時間保持し、空気中で1時間放冷した後のボンド磁石の磁束(F2)を測定した。これらの測定結果に基づき、125℃および150℃における不可逆減磁率(%)を、(F1−F2)×100/F1により算出した。
【0074】
作製したボンド磁石の磁気特性および不可逆減磁率の温度依存性を図11示す。図11からわかるように、本発明のボンド磁石における減磁率は、125℃において、−1.38%、150℃において、−3.58%となっている。
【0075】
比較のために、非特許文献2で用いられている組成(Nd0.75Pr0.2Dy0.05)8.9FebalCo8.0B5.7にて合金薄帯を作製した。ロール周速度、熱処理条件、ボンド磁石の作製条件は、「組成の影響」に記載の方法、および上記ボンド磁石の製造方法をもとに非特許文献2の最適条件と同一とした。得られたボンド磁石の密度は、ほぼ同じであった。このボンド磁石の125℃における不可逆減磁率は−2.06%、150℃における不可逆減磁率は−3.64%であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、自動車搭載永久磁石モータ、各種OA機器類等のスピンドルモータおよびステッピングモータ等に広く使用されうる。高温環境下で使用される自動車搭載永久磁石モータに適用されることが好ましい。具体的には、電動カーテン用リニアモータ、サンルーフ開閉用モータ、パワーウィンド用モータ、ワイパー用モータ、電動ミラー格納用モータ、電動ミラー制御用モータ、ステアリングアクチュエータ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について昇温速度20℃/minにて測定したDSC曲線である。
【図2】組成Di12.5Fe70.5−xCo10Nb1YxB6の合金薄帯について、組成と熱処理後磁気特性との関係を示した図である。
【図3】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、ロール周速度と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図4】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、熱処理温度と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図5】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、熱処理時間と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図6】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、As−melt spun、熱処理温度575℃、600℃、625℃、650℃、および675℃で熱処理して得られた合金薄帯のX線回折図形である。
【図7】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minの条件で作製された合金薄帯の減磁曲線を示すグラフである。
【図8】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/secの条件で作製された合金薄帯のσ−T曲線である。
【図9】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minの条件で作製された合金薄帯のTEM写真である。
【図10】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6におけるボンド磁石の減磁曲線である。
【図11】作製したボンド磁石の不可逆減磁率についての温度依存性を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気特性、特に熱安定性を向上させた希土類磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石は、磁石粉末を樹脂やゴムで固めて作製されるものであるため、その形状の制御が自在であり、寸法精度を容易に高めることが可能である。このため、前記ボンド磁石は、電気製品や自動車部品等の各種用途に広く使用されている。
【0003】
近年、電気製品や自動車部品については、その小型化・軽量化が求められており、これらに使用されるボンド磁石に対しては、磁気特性を低下させずに小型化を実現することが強く要求されている。この要求に応えるためには、磁石の高性能化が必要である。具体的には、残留磁束密度および保磁力を向上させ、最大エネルギー積を高めることが求められる。
【0004】
磁気特性を高めるための方策として、磁石粉末の磁石組成や磁石構造の改良が提案されている。磁石組成に関しては、マグネトプランバイト型フェライトを用いたフェライトボンド磁石が汎用されていた。しかし、フェライトボンド磁石の磁気特性は、残留磁束密度Br、保磁力HcJ、および最大エネルギー積(BH)maxが比較的低い。このため、最大エネルギー積がフェライトボンド磁石の倍以上になるNd2Fe14B系ボンド磁石が普及した。Nd2Fe14B系ボンド磁石は、原料合金の溶湯を回転ロールに供給して得られる急冷薄帯を用いて製造される。
【0005】
磁石構造の改良に関しては、交換スプリング磁石が、新たな磁石材料として注目を集めている。前記交換スプリング磁石は、永久磁石相(ハード相)と軟磁性相(ソフト相)とがナノサイズで混在する構造のものである。前記交換スプリング磁石は、高い磁束密度を有するソフト相を含有するため、磁石全体としての磁束密度が向上し、磁気特性の向上が図れる。
【0006】
上述のような改良により磁気特性の向上が進行しているが、上述した希土類ボンド磁石に対しては、熱安定性に劣るという課題が指摘されている。前記希土類ボンド磁石が自動車の駆動系などの高温環境下に曝される部位に適用される場合には、前記希土類ボンド磁石に対しては、熱安定性に優れ、不可逆減磁率が小さいことが特に求められる。
【0007】
前記希土類ボンド磁石の熱安定性を向上させる手段としては、磁石粉末の表面に、複数の凸条または溝を形成することによって、熱安定性を向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。ただし、特許文献1に開示された技術には、自動車の駆動系などの高温環境下における使用を考えた場合、より一層の熱安定性の向上が求められる。
【0008】
希土類ボンド磁石の熱安定性を向上させる他の手段としては、磁石組成、急冷薄帯の製造条件、急冷薄帯の熱処理条件を制御することによって熱安定性を向上させる方法が、本発明者らの一人によって開発されている(非特許文献2および非特許文献3参照)。
【0009】
非特許文献2は、Pr−Nd−Fe−Co−Bに、NbおよびVを加えた交換スプリング磁石を対象とするものであり、非特許文献2では、交換スプリング磁石の磁石組成、急冷薄帯製造時のロール周速度、急冷薄帯の熱処理温度、および急冷薄帯の熱処理時間を変化させて、各条件が磁気特性に与える影響を調査し、熱安定性を向上させる技術が開示されている。また、Pr−Nd−Fe源として安価なジジムが使用できることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献2に開示された交換スプリング磁石においては、自動車の駆動系などの高温環境下における使用を考えた場合、より一層の熱安定性の向上が求められる。
【0011】
非特許文献3においては、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−V−BにTbを加えた交換スプリング磁石について、磁石組成、急冷薄帯製造時のロール周速度、急冷薄帯の熱処理温度、および急冷薄帯の熱処理時間を変化させて、各条件が磁気特性に与える影響を調査し、熱安定性を向上させる技術が開示されている。またPr−Nd−Fe源として安価なジジムが使用できることを示している。
【0012】
しかしながら、非特許文献3に開示された交換スプリング磁石においては、熱安定性を付与するために添加しているTbは埋蔵量が非常に少ない高価な希少元素であるため、磁石の大幅なコストアップをもたらす。そこでTbを使用せずに熱安定性を十分向上させることが望ましい。
【特許文献1】特許第3277932号
【非特許文献1】山元,古澤,電気学会論文誌A,125巻,12号 (2005)
【非特許文献2】K. Furusawa, H. Yamamoto,IEEE TRANSACTION ON MAGNETICS, VOL.41,NO.10,OCTOBER 2005
【0013】
本発明の目的は、高価な希少金属であるTb、DyやHoを用いることなく、かつ磁気特性および熱安定性に優れる希土類磁石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法は、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップを実行することを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法を実施することにより、組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造である希土類磁石用合金薄帯が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、高価な希少金属である、Tb、DyやHoを用いることなく、磁気特性に優れ、熱安定性に優れる希土類ボンド磁石および、そのボンド磁石に適用して最適な磁性合金を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る希土類磁石用合金薄帯の製造方法は基本的構成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明者らは、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金にYを添加すること、及び前記合金からなる急冷薄帯を結晶化させるための熱処理工程において、昇温速度を所定範囲に制御することによって、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを見出した。
【0020】
本発明の実施形態1に係る製造方法を具体的に説明する。先ず、合金原料を溶解させて母合金を作製する。前記合金原料には、Pr,Nd,Fe,Co,Nb,B及びYの成分が含まれている。
【0021】
次に、前記母合金を溶かして、その溶融している合金を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る。前記急冷薄帯を得るにあたって、本発明の実施形態では、合金溶湯を回転するロールの上に噴射して、前記合金溶湯合金を前記ロール上で急冷し、リボン状の合金薄帯を製造する液体急冷法を用いている。前記液体急冷法を用いるにあたって、その種類、ロールの材質、ロールの大きさなどについては、特に限定されない。例えば、前記ロールとしては、Crメッキを施した銅製のロールを用いることが可能である。前記ロールの大きさは、製造スケールに応じて決定することが望ましいものである。
【0022】
用いられる合金原料は、合金薄帯の組成に応じて決定される。所望する組成となるように、合金原料を配合するとよい。本発明の実施形態に希土類磁石用合金薄帯は、その組成にPr,Nd,Fe,Co,Nb,Y,Bを含む希土類磁石から構成されるものである。前記母合金は、組成Pr−Nd−Fe−Co−Nb−Bの合金にYを添加することによって作製されるため、前記母合金としては、比較的安価でかつ熱安定性に優れる希土類磁石合金を用いることが可能である。
【0023】
Nd2Fe14B系磁石の熱安定性向上のための一つの手段として、保磁力を増大させることが有効である。保磁力の向上は、R2Fe14B結晶相のRサイトをTb、DyやHoなどの元素で置換することで実現される場合がある。このことは次のように理解される。すなわち、Tb2Fe14B結晶相やDy2Fe14B結晶相、Ho2Fe14B結晶相が大きな異方性磁場を有するため、一部のRサイトがTb、DyやHoで置換されたR2Fe14B結晶相も異方性磁場が高められることに起因しているものとして理解される(非特許文献4 佐川,広沢,山本,松浦,藤村,固体物理21,(1986),37)。
【0024】
これに対して、前記非特許文献4によれば、RサイトをYで置換したY2Fe14B結晶の異方性磁場は非常に小さく、RサイトをYで置換したことが、保磁力向上ひいては耐熱性向上へ寄与するものとは考え難い。
【0025】
上述した一般的な磁石の常識に反して、本発明者は、希土類元素であるYを、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金に添加することにより、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを見出した。しかしながら組成に占めるYの比率が小さいことから、合金中にYの存在形態を特定することはできなかった。
【0026】
しかし、以下に示す実験結果から明らかなように、本発明者は、希土類元素であるYを、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−B合金に添加することにより、熱安定性に優れる希土類磁石が得られることを実験に基づいて立証した。本発明による希土類磁石は、非特許文献4に示されているR2Fe14B結晶相のRサイトをYにより元素置換することは異方性磁場を増大させる可能性が低いという希土類磁石の技術分野での一般常識を覆した点に特異性がある。本発明による熱安定性に優れる希土類磁石が得られるメカニズムは、RサイトをYで元素置換した結晶相にYの存在形態を特定することができなかったため、明らかでない。但し、実験により立証されているのであるから、R2Fe14B結晶相のRサイトへのTb,Dy及び/又はHoの元素置換による異方性磁場の増大のメカニズムとは別のメカニズムによるものであると推測される。
【0027】
本発明の実施形態において、Pr−Nd−Fe−Co−Nb−Y−B系磁石を得るには、合金薄帯中に、Pr、Nd、Fe、Co、Nb、Y、およびBが含有されるように合金原料を配合する。PrならびにNdの単体を用いる代わりに、工業的に安価である、ジジム(Didymium、以下Diと表記する)を用い、その他の組成成分であるFe,Co,Nb,Y,Bを単体で前記組成比に応じて配合することもできる。このDiには、Fe成分を含むDidymium−Fe合金、あるいはFe成分を含まないDidymium合金のいずれを用いてもよい。Fe成分を含むDidymium-Fe合金を用いた場合には、この合金にFe成分が含まれているため、単体で含ませるFe成分の組成比は、合金に含まれるFe成分の組成比を差引いたものに設定する。また、Diとしては、Ndを77〜79重量%,Prを21〜23重量%含有するDiを用いることが可能である。Diを用いる場合には、実施例にて後述するような微量な成分を含むものである。
【0028】
また、場合によっては、磁気特性を向上させるために他の元素が含有されてもよい。合金薄帯は合金材料であるため、微量の不純物が混入することは止むを得ないが、不純物量は少量であるほど好ましく、1質量%未満であることが好適である。
【0029】
本発明の実施形態に係る合金薄帯の組成は、組成式RaFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBeにおいて、
a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=6〜10、好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.3〜0.8、e=5.5〜10、さらに好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.5〜0.8、e=5.5〜10である。但し、Rは少なくともNd及びPrを含む。
【0030】
合金薄帯の組成を前記範囲に設定することにより、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)に優れる合金薄帯が得られる。なお、合金薄帯は合金であるため、ある程度の不純物が混入することは避けがたい。したがって、本発明においては、「合金薄帯の組成」とは、混入する不純物を除いた他の成分についての組成を意味する。
【0031】
合金の組成は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法などの測定装置を用いて測定されうる。合金の組成は、用いられる合金材料の配合比から推定することも可能である。
【0032】
本発明の実施形態に係る希土類磁石用合金薄帯は、少なくともα−Fe系ソフト磁性相とNd2Fe14B系ハード磁性相を含む。
【0033】
α−Fe系ソフト磁性相とは、Feの一部が他の元素で置換されている形態も包含する概念である。Feの一部がCo等の他の遷移金属元素で置換されていてもよい。特にFeの一部をCoに置換した場合は、α−Fe系ソフト磁性相のキュリー温度を上昇させ、希土類磁石合金の耐熱温度が向上し、使用温度範囲を拡大させることができる。
【0034】
Nd2Fe14B系ハード磁性相とは、Ndの一部がPrで置換されている形態も包含する概念である。一方、Feの一部がCo等の他の遷移金属元素で置換されていてもよい。特にFeの一部をCoに置換した場合は、Nd2Fe14B系ハード磁性相のキュリー温度を上昇させ、希土類磁石用合金の耐熱温度が向上し、使用温度範囲を拡大させることができる。
【0035】
本発明の実施形態に係る希土類磁石用薄帯は少なくともα−Fe系ソフト磁性相とNd2Fe14B系ハード磁性相からなる複合組織構造を有することから、合金薄帯に添加されたCoの分布の割合は明らかでないが、合金薄帯中の置換されるFeの量は、Feに対して0.01at%以上、30at%以下であることが好ましい。0.01at%未満であると、置換による効果が不十分となるおそれがある。30at%を超えると、磁化の低下が大きくなる恐れや、保磁力の低下が大きくなるおそれがある。
【0036】
本発明の実施形態に係る液体急冷法においては、合金溶湯を回転するロールに供給することによって急冷薄帯を得る。この場合、ロール周速度は15〜22.5m/sec、好ましくは17.5〜21m/secの範囲に設定することが望ましものである。さらに、前記ロール周速度は、好ましくは19.0〜20.5m/secの範囲に設定することが望ましいものである。ロール周速度を前記範囲に設定することによって、保磁力(HcJ;HcB)、残留磁束密度(Br)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。ロール周速度が小さすぎると、急冷薄帯の内部組織が粗大なものとなり、均質性も失われ、磁石特性が低下してしまう。ロール周速度が大きすぎると、この後行う熱処理工程の条件設定が難しくなる。
【0037】
前記液体急冷法により得られた急冷薄帯を熱処理することによって、結晶化させる。結晶化させるための熱処理条件によって、得られる合金の磁気特性が変化する。前記熱処理における昇温速度を所定の範囲に制御することによって、熱安定性を大きく向上させうることがわかった。本発明の実施形態においては、前記昇温速度を、150〜250℃/min、好ましくは180〜220℃/minの範囲に設定し、その昇温速度で急冷薄帯を熱処理して、急冷薄帯を結晶化させる。このような昇温速度で熱処理することによって、保磁力などの磁石特性に優れる磁石合金を得ることができる。そして、製造される磁石の高温での不可逆減磁率を低減することが可能である。つまり、高温環境下で使用しても、磁気特性が低下しにくい磁石が得られる。
【0038】
急冷薄帯の熱処理は、大きな昇温速度が実現できる装置を用いて行われることが好ましい。例えば、赤外線ゴールドイメージ炉が用いられる。熱処理の熱処理温度は、600〜675℃であり、好ましくは625〜660℃であり、さらに好ましくは640〜660℃である。この範囲の温度で熱処理することによって、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。熱処理温度が低すぎると、磁性を担うNd2Fe14B型結晶相の析出および成長を十分に進めることができず、十分な磁石特性を得ることができない。熱処理温度が高すぎると、Nd2Fe14B型結晶相およびαFe型結晶相が必要以上に粗大化し、十分な磁石特性を得ることができない。
【0039】
熱処理の熱処理時間は、0〜15minであり、好ましくは5〜12.5minであり、さらに好ましくは7.5〜12.5minである。ここで、熱処理時間0minとは、熱処理温度到達後に温度を保持することなく、直ちに冷却を開始することを意味する。この範囲の熱処理時間とすることによって、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性に優れる合金を得ることが可能である。なお、熱処理時間は、目的とする熱処理温度範囲において保持される時間を意味する。例えば、熱処理温度が600℃である場合、600℃で3分保持したのち冷却したら、熱処理時間は3分である。なお、熱処理時に温度を完全に一定に保つことは困難であるので、熱処理時間の算定にあたっては、ある程度の温度幅を考慮すべきである。本願においては、±3℃の範囲の温度の変動は、熱処理時間の算定にあたっては考慮しないものとする。例えば、目的とする熱処理温度が600℃である場合、600℃±3℃の温度範囲である時間の合計を、熱処理の熱処理時間とする。
【0040】
熱処理によって希土類磁石原料となる合金薄帯が得られるが、合金薄帯は、永久磁石相(ハード相)と軟磁性相(ソフト相)とがナノサイズで混在する交換スプリング磁石であることが好ましい。交換スプリング磁石は、高い磁束密度を有するソフト相を含有するため、磁石全体としての磁束密度が向上し、磁気特性の向上が図れる。
【0041】
熱処理が施された合金薄帯を用いてボンド磁石を製造する方法については、特に限定されない。通常は、合金薄帯を粉砕して得られる合金粉末を用いてボンド磁石が製造される。合金粉末の粉砕方法やボンド磁石の製造方法については、公知技術が適宜援用されうる。
【0042】
(実施形態2)
次に、上述した本発明の実施形態1に係る製造方法により得られる希土類磁石用合金薄帯について、実施形態2として説明する。
【0043】
本発明の実施形態2に係る希土類磁石用合金薄帯は、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給し、その得られた急冷薄帯を150〜250℃/minの範囲の昇温速度、好ましくは180〜220℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化した組織構造として得られるものである。
【0044】
本発明の実施形態2に係る希土類磁石用合金薄帯は、上述した本発明の実施形態1に係る製造方法によって得られるが、本発明の実施形態1に係る製造方法により得られる構造および同相の組成を有している限り、他の製造方法を用いて製造されたものであってもよいものである。本発明の実施形態2に係る合金薄帯は、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、最大エネルギー積((BH)max)などの磁気特性、および熱安定性に優れる。
【0045】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成は、本発明の実施形態1において説明したとおりである。すなわち、本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成は、好ましくはRaFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBeにおいて、
a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=5.5〜10、好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.3〜0.8、e=6〜10、さらに好ましくはa=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.5〜0.8、e=5.5〜10である。但し、Rは少なくともNd及びPrを含む。
【0046】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の組成を前記範囲に設定することにより、高価な希少金属である、Tb、DyおよびHoを用いることなく、残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)に優れる合金薄帯が得られる。因みに、元素のクラーク数について説明すると、Yはクラーク数0.003%であり、Tbはクラーク数0.00008%であり、Dyはクラーク数0.0004%であり、Hoはクラーク数0.0001%である。
【0047】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯の結晶化構造を得るために必要なロール周速度、熱処理の昇温速度、熱処理温度、熱処理時間などの製造条件については、本発明の実施形態1において説明した通りである。具体的には、ロール周速度が15.0〜22.5m/secであり、好ましくは17.5〜21m/secであり、さらに好ましくは19.0〜20.5m/secであり、熱処理の昇温速度が150〜250℃/min、好ましくは180〜220℃/minであり、熱処理の熱処理温度が600〜675℃であり、好ましくは625〜660℃であり、さらに好ましくは640〜660℃であり、熱処理の熱処理時間が0〜15minであり、好ましくは5〜12.5minであり、さらに好ましくは7.5〜12.5minである。それぞれの条件の詳細については、本発明の第1において説明したため、ここでは説明を省略する。
【0048】
前記合金薄帯の磁気特性としては、等方性であっても異方性であってもよい。また、合金薄帯は、磁気特性を考慮すると、少なくともα−Fe型ソフト相、およびNd2Fe14B型ハード相を含む交換スプリング磁石であることが好ましい。
【0049】
前記合金薄帯の結晶構造は、多数の結晶粒から構成される。前記結晶粒の平均粒径は、好ましくは30〜60nmの範囲に設定することが望ましいものである。前記結晶粒の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定されうる。具体的には、TEM写真において確認される結晶粒100個の結晶粒を任意に選び、各粒子の長径を測定し、長径の平均値が平均粒径とされる。
【0050】
前記合金薄帯の原料のうち、Pr源およびNd源としては、目的の組成が達成されるのであれば、何を用いてもよいが、好ましくは工業的に安価であるジジムを用いる。
【0051】
本発明の実施形態2に係る合金薄帯は、高価な希少金属である、Tb、DyおよびHoを用いることなく、保磁力などの磁石特性を向上することが可能である。具体的に、前記保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることが好ましく、好ましくは1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることが望ましい。このことにより、前記合金薄帯は125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−2.0%未満である高温での熱安定性に優れた磁石材料や、150℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−3.6%未満である高温での熱安定性に優れた磁石材料の原料として使用することが可能となる。不可逆減磁率(%)は、例えば4.8MA/mでパルス着磁した後の磁束(F1)、および所定の温度で磁石材料を保持し、更に常温に冷却した後の磁束(F2)に基づいて、(F1−F2)×100/F1により算出されうる。磁束は、デジタルフラックスメータなどの磁気特性評価装置を用いて測定されうる。所定の温度に保持するには、恒温槽において例えば1時間保持される。常温での冷却は、例えば大気中に1時間保持される。
【0052】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態1及び2に係る合金薄帯を利用したボンド磁石を実施形態3として説明する。
【0053】
本発明の実施形態1及び2に係る合金薄帯を粉砕することによって、前記結晶構造を有する合金粉末が得られる。前記合金粉末は、必要に応じて分級された後、樹脂と混合され、成形されてボンド磁石として構成される。合金薄帯の粉砕手段、粉末の粒径、樹脂などの、ボンド磁石を作製する手段は、特に限定されない。公知のボンド磁石の製造方法が適宜用いられうる。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ナイロン樹脂などが用いられる。成形は、圧縮成形や射出成形などの公知手段が用いられる。
【0054】
本発明の実施形態3に係るボンド磁石は、耐熱性に優れる磁石合金を原料として作製されるため、耐熱性に優れる。具体的には、本発明の実施形態3に係るボンド磁石は、125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、好ましくは−2.0%未満であることが望ましいものである。150℃まで加熱した際の前記ボンド磁石の不可逆減磁率は、好ましくは−3.6%未満であることが望ましいものである。前記ボンド磁石の不可逆減磁率(%)は、例えば4.8MA/mでパルス着磁した後の磁束(F1)、および所定の温度でボンド磁石を保持し、更に常温に冷却した後の磁束(F2)に基づいて、(F1−F2)×100/F1により算出されうる。磁束は、デジタルフラックスメータなどの磁気特性評価装置を用いて測定されうる。所定の温度に保持するには、恒温槽において例えば1時間保持される。常温での冷却は、例えば大気中に1時間保持される。
【0055】
(実施形態4)
次に、前記合金薄帯を構成する希土類磁石用合金について実施形態4として説明する。
【0056】
本発明の実施形態4に係る希土類磁石用合金は、保磁力の大きな希土類磁石用合金であって、その組成に、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mである希土類磁石用合金である。前記合金は、薄帯状であってもよいし、粉末状であってもよい。本発明の実施形態4に係る、前記組織構造をもつ保磁力の大きな合金を用いることによって、熱安定性に優れる125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−2.0%未満である磁石や150℃まで加熱した際の不可逆減磁率が、−3.6%未満である高温での熱安定性に優れた磁石が製造される。磁石合金は、保磁力などの磁気特性にも優れることが好ましい。具体的には、保磁力HcJが14.5kOe(1.15MA/m)以上であることが好ましい。
【0057】
(実施例)
次に、本発明の実施形態の効果を、以下の実施例を用いて説明する。
(組成の影響)
合金薄帯の組成を変化させて、合金薄帯の組成と磁気特性との関連性を調査した。合金薄帯の製造手順は、原材料の配合量を目的とする組成に応じて変化させた以外は、以下の手順とした。
【0058】
目的の組成比の磁性合金を得るにために、組成式中のNdとPrの合計としてDiを用い、その他の組成成分であるFe,Co,Nb,Y,Bを単体で目的の組成比に応じて配合する方法を採用した。前記Diとして、Di−Fe合金を用いた。実験で用いたDi−Fe合金は、Ndが66.73wt%、Prが19.06wt%、Feが14.14wt%のものを用いた。また、各原子の構成比率よりDidymiumの分子量を143.5とした。詳細な組成を表1に記す。
【表1】
【0059】
金属であるDi−Fe合金、Fe、Co、Nb、およびYと、メタロイドであるBを含む母合金を、真空吸い上げ法により作製した。片ロール液体急冷法を用いて、母合金を溶解して得られた合金溶湯から、急速冷却により結晶化された組織構造を有する急冷薄帯を得た。急冷薄帯作製時の雰囲気は高純度Arガスとした。ロールは、銅製のロールにCrメッキを施したものであり、ロールの直径は300mmであった。ロール周速度は20m/secとした。ロールへの合金溶湯の供給は、オリフィス径が0.5mmである石英射出管を使用して行い、射出時には、高純度Arガスを用いて、射出ガス圧を30kPa一定とした。得られた急冷薄帯は、赤外線ゴールドイメージ炉を用いて高純度Arガス雰囲気中において熱処理された。昇温速度、熱処理温度、熱処理時間は適宜選択した。
【0060】
まず、最適な急冷薄帯の熱処理条件を定める際の参考とするために、組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯についてのDSC曲線を測定した。結果を図1に示す。DSC曲線は、リガク社製示差熱量計を用いて行い、DSC(Differential Scanning Calorimetry)の昇温速度は20℃/minで行った。結晶相の同定は、急冷薄帯試料に低温より熱処理を施し、発熱ピーク温度に達した後、常温まで急冷し、X線回折を調べ、それぞれの発熱ピークがどの結晶相に対応しているかを確認した。図1より、ハード相として作用する(Pr,Nd)2Fe14B型結晶相の結晶化開始温度は約592.4℃であることが分かり、この組成系の熱処理は575℃以上で行うべきという指針が得られた。
【0061】
次に、組成Di12.5Fe70.5−xCo10Nb1YxB6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe70.5−xCo10Nb1YxB6の急冷薄帯について、昇温速度210℃/min、温度650℃、時間10minの条件の下で熱処理した後の磁気特性を測定した。xを0〜1.0の範囲で変化させた場合に得られた結果を図2に示す。ここで、Coを10at%としたのは、Co量を8at%、10at%、12at%と変化させて磁気特性を評価したところ、Co量が10at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。Nbを1.0at%としたのは、Nb量を0.5at%、1.0at%、1.5at%、2.0at%と変化させて磁気特性を評価したところ、Nb量が1.0at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。Bを6at%としたのは、B量を5.5at%、6.0at%、7at%,8at%,9at%,10at%と変化させて磁気特性を評価したところ、B量が6.0at%の場合に磁気特性が最高値を示したためである。
【0062】
合金薄帯の残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ;HcB)、および最大エネルギー積((BH)max)は、合金薄帯に対して4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、東英工業社製振動試料型磁力計(VSM)を用いて、常温で測定した。xの値が0.2〜1.0の範囲で良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための、最も良好なxの値は、0.7であった。
【0063】
上記は、FeをYで置換した組成に関する結果である。DiをYで置換した場合にも、同様の保磁力の増大が確認された。すなわち、Y無添加のDi12.5Fe70.5Co10Nb1B6組成急冷薄帯では、最適条件(ロール周速度20.0m/s、熱処理温度625℃、熱処理時間5min)にて、保磁力HcJ=1048.4kA/mであったのに対し、DiをYで置換した。Di11.8Fe70.5Co10Nb1Y0.7B6組成では、最適条件(ロール周速度20.0m/s、熱処理温度650℃、熱処理時間10min)HcJ=1262.1kA/mとなった。
【0064】
(ロール周速度の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、ロール周速度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。ロール周速度は15〜22.5m/secの範囲で変化させた。結果を図3に示す。図3に示すように、ロール周速度が15〜22.5m/secの全ての範囲で良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための、最も良好なロール周速度は20.0m/secであった。
【0065】
(熱処理温度の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、熱処理温度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。熱処理温度は575〜675℃の範囲で変化させた。結果を図4に示す。図4に示すように、熱処理速度が600〜675℃の範囲であると、良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための最も良好な熱処理温度は650℃であった。熱処理温度が550℃より低い場合には磁気特性の確保が難しかったが、その理由は図1に示したDSCの結果からも了解される。
【0066】
(熱処理時間の影響)
組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯を、熱処理の際の昇温速度を変化させた以外は、「組成の影響」に記載の方法に準じて作製した。結果を図5に示す。図5に示すように、熱処理速度が0〜15minの全ての範囲で、良好な保磁力を有する合金薄帯が得られた。ここで熱処理時間0minとは、熱処理の際に最高温度到達後直ちに冷却を開始したことを意味する。また、Jr,HcB,(BH)maxも含めて考慮すると、良好な磁気特性を有する合金薄帯を得るための最も良好な熱処理時間は10minであった。
【0067】
図6には、Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6である合金薄帯のAs melt−spun、熱処理温度575℃、600℃、625℃、650℃、および675℃でのX線回折図形を示す。測定にはCuのKα線を使用した。図6より、As melt−spunでは、結晶相からの回折線が見られず、ほぼ非晶質であることがわかる。また、各熱処理温度別の回折図において、Nd2Fe14B型結晶相とα−Fe型結晶相が現われ、複合組織であることがわかる。α−Fe型結晶相の回折線強度は全体から見ると小さいものであった。
【0068】
(結晶粒の粒径の影響)
組成がDiaFe69.8Co10Nb1YdB6すなわち、Pr0.21aNd0.79aFe69.8Co10Nb1YdB6である合金薄帯に関して、aおよびdの値を変化させて、得られる合金薄帯における結晶粒の平均粒径を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めた。TEM写真において確認される結晶粒から100個の結晶粒を任意に選び、各粒子の長径を測定し、長径の平均値を平均粒径とした。所定の組成における平均粒径を表2に示す。
【表2】
【0069】
得られた合金薄帯はいずれも優れた磁気特性を示し、平均粒径は30〜60nmであった。一方、発明者らの一人によって報告されているDi12.5Fe70.5Co10Nb1B6組成急冷薄帯では、平均粒径は約20nmと小さく、HcJ=1.049MA/mであった。Di12.5Fe69.5Co10Nb1V1B6組成急冷薄帯では、平均粒径は約25nmとやはり小さく、HcJ=1.100MA/mであった。本発明の磁性合金では、これらと比較して結晶粒径が大きく、かつ大きなHcJが得られている。従って平均粒径が保磁力増大の原因であるとは考え難く、化合物の磁気の本質的な特性である、異方性磁場Haや結晶磁気異方性定数Kuの絶対値が変化しているものと思われる。しかしながら「Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6についての磁気特性は後述するように、試料が等方性であることから詳細が明らかではない。
【0070】
(Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6についての磁気特性)
実験した範囲においては、組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minのときに、もっとも最適な磁気特性が得られた。この条件下での諸特性について以下に示す。
図7は得られた合金薄帯の減磁曲線である。
Jr=0.85T(8.5kG)、HcJ=1.4090MA/m(17.71kOe)、HcB=0.5883MA/m(7.395kOe)、(BH)max=126.4kJ/m3(15.88MGOe)であった。
【0071】
図8は得られた合金薄帯のσ−T曲線である。試料は予め、4.8MA/mにて着磁し、振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した。測定磁界は160A/mであった。図8より、試料のキュリー温度は428℃、Nd2Fe14B型結晶相の量はおよそ76vol%、α−Fe型結晶相の量はおよそ24vol%であることがわかる。
【0072】
図9は得られた合金薄帯のTEM写真および電子線回折写真である。図9に示すTEM写真より、結晶粒の粒径は、約15〜100nm程度のものが観察され、平均粒径は48nmであった。また、図9に示す電子線回折写真からは、得られた合金薄帯が等方性であることがわかる。
【0073】
(不可逆減磁率の測定)
組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6すなわち、Pr2.7Nd9.8Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯を用いて、ボンド磁石を作製した。まず、合金薄帯を150μm以下に粉砕して、合金粉末を得た。合金粉末と、バインダーとして作用する耐熱性樹脂であるエポキシ樹脂2.5質量%とを混合撹拌し、980MPaの圧力で圧縮成形した。その後、180℃×1hの硬化処理を行い、直径10mm×長さ7.8mmの(等方性)ボンド磁石を得た。各ボンド磁石の磁気特性は、4.8MA/mのパルス着磁を行った後に、高感度自記磁束計(東英工業社製)を用いて測定した。ボンド磁石の減磁曲線を図10に示す。このボンド磁石の密度は6.1Mg/m3であった。また、磁気特性の値はそれぞれJr=0.62T(6.2kG)、HcJ=1.3849MA/m(17.40kOe)、HcB=0.4292MA/m(5.39kOe)、(BH)max=66.3kJ/m3(8.33MGOe)であった。
各ボンド磁石の不可逆減磁率は、以下の様に求めた。まず、デジタルフラックスメータ(東英工業社製)を使用し、4.8MA/mのパルス着磁した後のボンド磁石の磁束(F1)を測定した。次に、恒温槽にて所定の温度で1時間保持し、空気中で1時間放冷した後のボンド磁石の磁束(F2)を測定した。これらの測定結果に基づき、125℃および150℃における不可逆減磁率(%)を、(F1−F2)×100/F1により算出した。
【0074】
作製したボンド磁石の磁気特性および不可逆減磁率の温度依存性を図11示す。図11からわかるように、本発明のボンド磁石における減磁率は、125℃において、−1.38%、150℃において、−3.58%となっている。
【0075】
比較のために、非特許文献2で用いられている組成(Nd0.75Pr0.2Dy0.05)8.9FebalCo8.0B5.7にて合金薄帯を作製した。ロール周速度、熱処理条件、ボンド磁石の作製条件は、「組成の影響」に記載の方法、および上記ボンド磁石の製造方法をもとに非特許文献2の最適条件と同一とした。得られたボンド磁石の密度は、ほぼ同じであった。このボンド磁石の125℃における不可逆減磁率は−2.06%、150℃における不可逆減磁率は−3.64%であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、自動車搭載永久磁石モータ、各種OA機器類等のスピンドルモータおよびステッピングモータ等に広く使用されうる。高温環境下で使用される自動車搭載永久磁石モータに適用されることが好ましい。具体的には、電動カーテン用リニアモータ、サンルーフ開閉用モータ、パワーウィンド用モータ、ワイパー用モータ、電動ミラー格納用モータ、電動ミラー制御用モータ、ステアリングアクチュエータ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について昇温速度20℃/minにて測定したDSC曲線である。
【図2】組成Di12.5Fe70.5−xCo10Nb1YxB6の合金薄帯について、組成と熱処理後磁気特性との関係を示した図である。
【図3】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、ロール周速度と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図4】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、熱処理温度と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図5】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、熱処理時間と熱処理後磁気特性との関係を示すグラフである。
【図6】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6の合金薄帯について、As−melt spun、熱処理温度575℃、600℃、625℃、650℃、および675℃で熱処理して得られた合金薄帯のX線回折図形である。
【図7】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minの条件で作製された合金薄帯の減磁曲線を示すグラフである。
【図8】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/secの条件で作製された合金薄帯のσ−T曲線である。
【図9】組成がDi12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6であり、ロール周速度が20.0m/sec、熱処理温度が650℃、熱処理時間が10minの条件で作製された合金薄帯のTEM写真である。
【図10】組成Di12.5Fe69.8Co10Nb1Y0.7B6におけるボンド磁石の減磁曲線である。
【図11】作製したボンド磁石の不可逆減磁率についての温度依存性を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、
前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップと、
を含むことを特徴とする希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項2】
前記合金薄帯の組成を、R(但し、Rは少なくともNd及びPrを含む)aFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBe(a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.5〜2.0、d=0.1〜1.0、e=5.5〜10に設定することを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項3】
前記ロールの周速度を15〜22.5m/secの範囲に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理の熱処理温度を600〜675℃の範囲に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理の熱処理時間を0〜15分の範囲に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項6】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造であることを特徴とする希土類磁石用合金薄帯。
【請求項7】
前記組成が、R(但し、Rは少なくともNd及びPrを含む)aFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBe(a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=5.5〜10、Rは少なくともNd及びPrを含む)であることを特徴とする請求項6に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項8】
前記組織構造は、少なくともα−Fe型ソフト相、およびR2Fe14B型ハード相を含むことを特徴とする請求項7に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項9】
前記組織構造において実質的に観察される結晶粒の平均粒径が30〜60nmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項10】
前記組成式のRとしてジジムを用いたことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項11】
保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項12】
保磁力HcJが1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることを特徴と請求項6〜10のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項13】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造をもつ粉末であることを特徴とする希土類磁石用合金粉末。
【請求項14】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造をもつ粉末をボンド材で成形したことを特徴とする希土類ボンド磁石。
【請求項15】
125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が−2.0%未満であることを特徴とする請求項14に記載の希土類ボンド磁石。
【請求項16】
150℃まで加熱した際の前記結晶構造の不可逆減磁率が−3.6%未満であることを特徴とする請求項14に記載の希土類ボンド磁石。
【請求項17】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造を有し、
保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることを特徴とする希土類磁石用合金。
【請求項18】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造を有し、
保磁力HcJが1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることを特徴とする希土類磁石用合金。
【請求項1】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含む合金溶湯を回転するロールに供給して、急冷薄帯を得る薄帯製造ステップと、
前記急冷薄帯を、150〜250℃/minの範囲の昇温速度で熱処理して、前記急冷薄帯を結晶化させる結晶化ステップと、
を含むことを特徴とする希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項2】
前記合金薄帯の組成を、R(但し、Rは少なくともNd及びPrを含む)aFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBe(a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.5〜2.0、d=0.1〜1.0、e=5.5〜10に設定することを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項3】
前記ロールの周速度を15〜22.5m/secの範囲に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理の熱処理温度を600〜675℃の範囲に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理の熱処理時間を0〜15分の範囲に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯の製造方法。
【請求項6】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造であることを特徴とする希土類磁石用合金薄帯。
【請求項7】
前記組成が、R(但し、Rは少なくともNd及びPrを含む)aFe100−a−b−c−d−eCobNbcYdBe(a=11.0〜13.0、b=8.0〜11.0、c=0.1〜2.0、d=0.2〜1.0、e=5.5〜10、Rは少なくともNd及びPrを含む)であることを特徴とする請求項6に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項8】
前記組織構造は、少なくともα−Fe型ソフト相、およびR2Fe14B型ハード相を含むことを特徴とする請求項7に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項9】
前記組織構造において実質的に観察される結晶粒の平均粒径が30〜60nmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項10】
前記組成式のRとしてジジムを用いたことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項11】
保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項12】
保磁力HcJが1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることを特徴と請求項6〜10のいずれか一項に記載の希土類磁石用合金薄帯。
【請求項13】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造をもつ粉末であることを特徴とする希土類磁石用合金粉末。
【請求項14】
組成として、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造をもつ粉末をボンド材で成形したことを特徴とする希土類ボンド磁石。
【請求項15】
125℃まで加熱した際の不可逆減磁率が−2.0%未満であることを特徴とする請求項14に記載の希土類ボンド磁石。
【請求項16】
150℃まで加熱した際の前記結晶構造の不可逆減磁率が−3.6%未満であることを特徴とする請求項14に記載の希土類ボンド磁石。
【請求項17】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造を有し、
保磁力HcJが1.15MA/m≦HcJ≦1.50MA/mであることを特徴とする希土類磁石用合金。
【請求項18】
プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、およびホウ素(B)を含み、急速冷却と熱処理により結晶化された組織構造を有し、
保磁力HcJが1.27MA/m≦HcJ≦1.45MA/mであることを特徴とする希土類磁石用合金。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−251037(P2007−251037A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75288(P2006−75288)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本応用磁気学会 第29回日本応用磁気学会学術講演概要集(平成17年9月19日発行)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本応用磁気学会 第29回日本応用磁気学会学術講演概要集(平成17年9月19日発行)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
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