説明

希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスにおける窒素酸化物の量を低減するための触媒

【課題】改善された熱安定性、より広い温度ウインドウ、およびより高い窒素酸化物転換率を有する触媒の提供。
【解決手段】希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスにおける窒素酸化物の量を低減するための触媒であって、少なくとも1つの白金族の貴金属、ならびに酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムの均一なMg/Al混合酸化物と組み合わせた少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵材料を含み、ここで、この酸化マグネシウムが、このMg/Al混合酸化物の総重量に基づいて、約1〜約40重量%の濃度で存在する、触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガス中の窒素酸化物の量を低減するための触媒に関する。この触媒は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵物質ならびに元素の周期表の白金族からの少なくとも1つの貴金属を含む。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
ガソリンエンジンの分野において、いわゆる、希薄混合気燃焼エンジンが、燃料消費を減少するために開発され、このエンジンは、部分負荷で作動する場合に、燃料の分率が低い空気/燃料混合物で燃料供給される。燃料の分率が低い空気/燃料混合物は、燃料の完全な燃焼に必要とされるよりも高い濃度の酸素を含む。次いで、対応する排出ガスは、還元排出ガス成分(一酸化炭素(CO)、水素(H)および炭化水素(HC))と比較して、過剰の、酸化成分(酸素(O)、窒素酸化物(NO))を含む。燃料の分率が低い排出ガスは、通常、3〜15容量%の酸素を含む。しかし、負荷または全負荷での操作の間に、化学量論的なまたは化学量論未満の(すなわち、燃料分率が高い(rich))空気/燃料混合物が、希薄混合気燃焼エンジンにおいてさえ使用される。
【0003】
一方で、ディーゼルエンジンは、通常、かなり化学量論を超える(superstoichiometric)空気/燃料混合物を用いる作動条件下で、作動する。近年になって、短時間の間、燃料分率が高い空気/燃料混合物を用いてもまた作動され得るディーゼルエンジンが開発されている。本発明において、ディーゼルエンジン、特に燃料分率が高い作動期間が可能なディーゼルエンジンを、同様に、希薄混合気燃焼エンジンという。
【0004】
希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスの高い酸素含有量に起因して、そこに含まれる窒素酸化物は、化学量論的に作動するガソリンエンジンの場合と同様に、いわゆる三元触媒によって炭化水素および一酸化炭素の同時酸化と組合せて、窒素に連続的に還元され得ない。むしろ、これらの触媒を用いて、いわゆる、窒素酸化物の還元のための温度ウインドウ(これは、排出ガスの温度に依存する)が、観察される。排出ガス温度の上昇は、窒素酸化物転換の初期増加を生じる。特定の温度において、転換率は最大に達し、そしてより高い温度で、転換率は、ゼロに戻る。この温度ウインドウにおいて、燃料分率の低い排出ガスにいつも存在する残る炭化水素は、窒素酸化物についての還元剤として機能する。
【0005】
温度ウインドウの位置および幅、ならびにこの温度ウインドウ内での最大窒素酸化物転換は、触媒の処方および排出ガスの残留炭化水素含量に依存する。従来の三元触媒は、この温度ウインドウ内で低い窒素酸化物変換を示すのみである。しかし、いわゆるHC−DeNOx触媒が、開発され、これは、180℃〜250℃の範囲の温度で、60%までの、温度ウインドウでの最大窒素酸化物転換を示す。温度ウインドウの幅は、約50℃のみである。
【0006】
温度ウインドウ内での比較的高い窒素酸化物転換率に関わらず、これらの触媒は、標準化された運転サイクルMVEG−Aを通して、30%未満の平均窒素酸化物転換を提供するのみである。
【0007】
この状況を改善するために、いわゆる、窒素酸化物貯蔵触媒が、開発され、この触媒は、燃料分率の低い排出ガスに含まれる窒素酸化物を硝酸塩の形態で貯蔵する。
【0008】
窒素酸化物貯蔵触媒の機構は、SAE報告書、SAE 950809に記載される。従って、窒素酸化物貯蔵触媒は、不活性な、セラミックまたは金属ハニカムキャリア、いわゆるキャリア上に、一般にコーティングの形態で適用される触媒物質からなる。この触媒物質は、窒素酸化物貯蔵物質および触媒活性成分を含む。順に、この窒素酸化物貯蔵物質は、実質的な窒素酸化物貯蔵成分からなり、この成分は、支持体物質に、高度に分散された形態で堆積される。
【0009】
塩基性アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、および希土類金属酸化物、特に酸化バリウム(これらは、二酸化窒素と反応して、対応する硝酸塩を形成する)は、主に、貯蔵成分として使用される。空気中において、これらの物質は、ほとんど、炭酸塩および水酸化物の形態で存在することが公知である。これらの化合物はまた、酸化窒素を貯蔵するために、適切である。従って、塩基性の貯蔵酸化物が、本発明において言及される場合はいつでも、これはまた、対応する炭酸塩および水酸化物を含む。
【0010】
白金族の貴金属は、代表的に、触媒活性成分として使用され、これらは、一般的に、貯蔵成分と一緒に支持物質上に配置される。大きな表面積を有する活性酸化アルミニウムが、通常支持物質として使用される。しかし、この触媒活性な成分はまた、例えば、活性酸化アルミニウムのような別の支持物質上に適用され得る。
【0011】
触媒活性な成分の作用は、燃料分率の低い排出ガス中の一酸化炭素および炭化水素を、二酸化炭素および水に転換することである。さらに、それらは、排出ガスの一酸化窒素を、二酸化窒素に酸化すべきであり、その結果、それは、次いで、塩基性の貯蔵物質と反応して、硝酸塩を形成し得る(貯蔵期間)。貯蔵物質における窒素酸化物の組み込みの増加は、物質の貯蔵容量の減少を引き起こし、これは、一定時間ごとに、再生されるべきである。この目的のために、エンジンは、化学量論的または燃料分率が高い(rich)空気/燃料混合物で、短時間作動される(再生期間といわれる)。燃料分率が高い排出ガスの還元条件において、形成された硝酸塩は、窒素酸化物(NO)に分解し、そして、還元剤として一酸化炭素、水素および炭化水素を使用して、窒素に還元され、一方で、水および二酸化炭素が形成される。
【0012】
窒素酸化物貯蔵触媒の作動の間に、貯蔵期間と再生期間が、規則的に交代する。通常、貯蔵期間は、60秒〜120秒間続き、一方で、再生期間は、20秒未満で完了する。
【0013】
窒素酸化物貯蔵触媒は、HC−DeNOx触媒よりもより大きな温度ウインドウにおいて、かなり高い窒素酸化物転換率を可能にする。それらの窒素酸化物転換は、ユーロIV標準(これらの導入は2005年に計画されている)に従う排気制限に合致する。
【0014】
しかし、作動の安定性およびこれらの触媒の長期安定性を改善するために、それらの熱安定性を増加させること、それらの温度ウインドウを広くすること、およびそのウインドウにおいて達成可能な窒素酸化物転換をさらに改善することが必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先の記述に基づいて、燃焼機関からの排出ガス中の窒素酸化物の防止のための触媒について、当該分野での必要性が存在し、この触媒は、改善された熱安定性、より広い温度ウインドウ、およびこのウインドウにおいて、従来の窒素酸化物貯蔵触媒より高い窒素酸化物転換率を有する。
【0016】
従って、本発明は、このような改善された熱安定性、より広い温度ウインドウ、およびより高い窒素酸化物転換率を有する触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明において、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガス中の窒素酸化物の量を低下させるための触媒が、提供され、この触媒は、元素の周期表の白金族の少なくとも1つの貴金属、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムの均一なMg/Al混合酸化物と組合せて少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵物質を含み、ここで、酸化マグネシウムは、Mg/Al混合酸化物の総重量に基づいて、約1重量%〜約40重量%の濃度で存在する。好ましくは、酸化アルミニウム中の酸化マグネシウムの濃度は、約5重量%と約28重量%未満との間、特に約10重量%と約25重量%との間である。
【0018】
1つの局面において、本発明は、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスにおける窒素酸化物の量を低減するための触媒を提供し、この触媒は、少なくとも1つの白金族の貴金属、ならびに酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムの均一なMg/Al混合酸化物と組み合わせた少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵材料を含み、ここで、この酸化マグネシウムは、Mg/Al混合酸化物の総重量に基づいて、約1〜約40重量%の濃度で存在する。
【0019】
1つの実施形態において、上記少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵材料は、1つ以上の支持材料上の少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵成分を含み得る。
【0020】
他の実施形態において、上記貴金属は、白金、パラジウム、ロジウムまたはこれらの混合物からなる群より選択され得、そしてこの貴金属は、上記Mg/Al混合酸化物上に完全にかまたは部分的に堆積され得る。
【0021】
別の実施形態において、上記Mg/Al混合酸化物の表面には、1つ以上の希土類酸化物が付着され得る。
【0022】
なお別の実施形態において、上記Mg/Al混合酸化物には、酸化プラセオジムおよび/または酸化セリウムが付着され得る。
【0023】
さらに別の実施形態において、上記酸化マグネシウムは、上記混合酸化物の総重量に基づいて、約5〜28重量%の濃度で存在し得る。
【0024】
さらに別の実施形態において、上記酸化マグネシウムは、上記混合酸化物の総重量に基づいて、約10〜25重量%の濃度で存在し得る。
【0025】
さらに別の実施形態において、上記窒素酸化物貯蔵成分は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属またはこれらの混合物からなる群より選択される元素の酸化物、炭酸塩、あるいは水酸化物であり得る。
【0026】
さらに別の実施形態において、上記窒素酸化物貯蔵成分のための上記支持材料は、1つ以上の高融点金属酸化物からなり得る。
【0027】
さらに別の実施形態において、上記高融点金属酸化物は、酸化セリウム、セリウム混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、均一なMg/Al混合酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、酸化ネオジム、酸化イットリウム、およびマンガン酸ランタンまたはこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0028】
さらに別の実施形態において、上記窒素酸化物貯蔵成分は、酸化セリウムまたはセリウム混合酸化物の支持材料上に固定されたストロンチウムまたはバリウムの酸化物、炭酸塩、あるいは水酸化物であり得る。
【0029】
さらに別の実施形態において、上記窒素酸化物貯蔵成分のための上記支持材料は、ジルコニウム、ケイ素、スカンジウム、イットリウム、ランタンおよび希土類金属またはこれらの混合物からなる群より選択される元素のうち少なくとも1つの酸化物の、上記貯蔵材料の総重量に基づいて約0.5〜80重量%でドープ処理したセリウム混合酸化物であり得る。
【0030】
さらに別の実施形態において、上記窒素酸化物貯蔵成分のための上記支持材料は、セリウム/ジルコニウム混合酸化物であり得、酸化ジルコニウム含有量が、この混合酸化物の総重量に基づいて約1〜約25重量%であり得る。
【0031】
さらに別の実施形態において、上記セリウム/ジルコニウム混合酸化物は、このセリウム/ジルコニウム混合酸化物ならびに酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムの総重量に基づいて、約0.5〜約10重量%の酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムでドープ処理され得る。
【0032】
さらに別の実施形態において、上記選択された貴金属は、白金および/またはパラジウムであり得、この貴金属は、上記均一なMg/Al混合酸化物に適用され得る。
【0033】
さらに別の実施形態において、白金がまた、上記窒素酸化物貯蔵材料上に堆積され得る。
【0034】
さらに別の実施形態において、上記触媒は、活性な、必要に応じて安定化された酸化アルミニウムを含み得、この上にさらなる支持材料としてロジウムが堆積され得る。
【0035】
さらに別の実施形態において、上記触媒は、酸化セリウムまたはセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み得、この上にさらなる支持材料として白金が堆積され得る。
【0036】
さらに別の実施形態において、上記選択された貴金属は、白金および/またはロジウムであり得、この貴金属が前記均一なMg/Al混合酸化物上に適用され得る。
【0037】
さらに別の実施形態において、白金がまた、上記窒素酸化物貯蔵材料上に堆積され得る。
【0038】
さらに別の実施形態において、上記触媒は、活性な、必要に応じて安定化された酸化アルミニウムを含み得、この上にさらなる支持材料としてロジウムが堆積され得る。
【0039】
さらに別の実施形態において、上記触媒は、酸化セリウムまたはセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み得、この上にさらなる支持材料として白金が堆積され得る。
【0040】
さらに別の実施形態において、上記触媒は、不活性なセラミックまたは金属キャリア上に、コーティングの形態で適用され得る。
【0041】
他の局面において、本発明は、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスの浄化のための、上記触媒の使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明により、改善された熱安定性、より広い温度ウインドウ、およびこのウインドウにおいて、従来の窒素酸化物貯蔵触媒より高い窒素酸化物転換率を有する触媒が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(発明の実施の形態)
他およびさらなる利点および実施形態と一緒に、本発明のより良い理解のために、実施例と組合せて、以下の説明に参照がなされ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態を、例示および説明の目的のために選択したが、本発明の範囲を制限することはいかなる様式でも意図されない。本発明の特定の局面の好ましい実施形態が、添付の図面に示される。
【0045】
ここで、本発明を、好ましい実施形態と関連させて記述する。これらの実施形態は、本発明の理解を補助するために提供され、そしていずれの様式でも本発明を制限することが意図されず、そして本発明を制限すると解釈されるべきではない。全ての代替物、改変物、および等価物(これは、本開示を読む際に当業者に明らかとなり得る)が、本発明の意図および範囲に含まれる。
【0046】
この開示は、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガス中の窒素酸化物の量を減少させるための触媒についての入門書ではなく、当業者に公知の基本的な概念は、詳細には記載されない。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「混合酸化物」は、原子レベルで混合物を形成する少なくとも2種の酸化物からなる固体粉末物質をいう。この用語は、酸化物粉末物質の物理的な混合物は、排除する。酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの均一な混合酸化物は、本発明による触媒の必須の成分である。本発明において、これは、Mg/Al混合酸化物といわれる。粉末粒子の断面にわたるその組成は、測定方法の精度内で、一定(すなわち、均一)である。
【0048】
以下において、窒素酸化物貯蔵物質と窒素酸化物貯蔵成分との間に、区別がなされる。窒素酸化物貯蔵成分は、例えば、それらの塩基性特性に起因して、排出ガスの酸性窒素酸化物と硝酸塩を形成し得、そしてこのような様式でそれらを貯蔵し得る、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩または水酸化物である。窒素酸化物貯蔵物質は、排出ガスとの広い範囲の相互作用を作り出すために、可能な限り、高度に分配された様式で、適切な支持物質上に堆積された、貯蔵成分を含む。
【0049】
より大きな表面積支持体物質(例えば、酸化アルミニウム)上に酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウムを含む貯蔵物質は、しばしば、窒素酸化物貯蔵触媒のために使用される。
【0050】
酸化アルミニウム上に堆積された酸化マグネシウムの補助とともに、窒素酸化物の貯蔵に関して本発明者らによって実施された研究は、満足できない貯蔵容量を示した。しかし、驚くべきことに、この物質と他の貯蔵物質(特に、酸化バリウムまたは酸化ストロンチウムに基づくもの)との組合せは、特定の条件下で、NOx貯蔵効率の有意な改善を導き得ることが見出された。
【0051】
酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムが均一な混合酸化物を形成することが本質的であることが判明した。酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとのこのような混合酸化物において、マグネシウムイオンは、アルミニウムイオンの格子位置を占有し、その結果、この物質のX線構造は、純粋な酸化アルミニウムのX線構造と区別できない。好ましくは、この物質は、40m/gより大きい比表面積、特に約100〜約200m/gの比表面積を有する。好ましくは、約130〜約170m/gの比表面積、最も好ましくは約100〜約150m/gの表面積を有する物質が使用され得る。酸化マグネシウムは、γ−酸化アルミニウムと比較して、Mg/Al混合酸化物に改善した温度安定性を付与する。なお、この熱安定性は、酸化マグネシウムが、混合酸化物の粒子全体を通して、酸化アルミニウムにおいて、可能な限り均一に分布する場合にのみ、最適である。酸化アルミニウム粒子への酸化マグネシウムの単に表面上だけの組み込みは、所望の熱安定性を導かない。
【0052】
好ましくは、このような物質は、当該分野で公知の、いわゆるゾル−ゲル法によって、調製され得る。アルコキシドの混合物およびその後の水での加水分解を含む、別のプロセスが当該分野で公知である。
【0053】
酸化アルミニウムの酸化マグネシウムの可溶性前駆体化合物での引き続く含浸および酸化マグネシウムへの前駆体化合物の転換のためのか焼は、一般的な焼結温度では、均一なMg/Al混合酸化物に導かない。焼結温度を上昇させることによる、均一なMg/Al混合酸化物を強制的に形成する試みは、触媒適用には適切ではない小さい表面積の混合酸化物を生じる。
【0054】
Mg/Al混合酸化物の熱安定性の更なる改善が、混合酸化物の1種以上の希土類酸化物での表面的な含浸によって、特に、Mg/Al混合酸化物を酸化プラセオジムおよび/または酸化セリウムでコーティングすることによって達成され得る。
【0055】
触媒の窒素酸化物貯蔵物質と組み合わせての、本発明の触媒中でのMg/Al混合酸化物の使用は、触媒の窒素酸化物貯蔵能力の相乗的な改善を導き、これは、酸化マグネシウムと貯蔵物質との足算的な効果で説明できない。さらに、触媒中のMg/Al混合酸化物はまた、白金族の触媒活性貴金属のために支持物質として機能する。好ましくは、白金、パラジウム、ロジウムまたはこれらの混合物が使用される。触媒に意図される貴金属の全体的な量は、Mg/Al混合酸化物上に堆積される。しかし、好ましくは、部分的な量の貴金属のみが、Mg/Al混合酸化物に適用される。
【0056】
触媒の特定の実施形態において、貴金属白金および/またはパラジウムが、均一なMg/Al混合酸化物に適用される。別の部分的な量の白金が、窒素酸化物貯蔵物質上に直接堆積され得る。従って、二酸化窒素を形成するための一酸化窒素の酸化が、貯蔵成分のすぐ近傍で起こり、このことは、高い排出ガス温度で触媒の活性(貯蔵および再生)に対して正の効果を有する。
【0057】
再生期間の間に、脱離した窒素酸化物の可能な限り完全な転換を達成するために、さらなる支持物質を、その上に堆積されたロジウムとともに、触媒に添加することが有利であり得る。活性であり、そして必要に応じて、安定化された酸化アルミニウムが、ロジウムのための適切な支持物質である。
【0058】
適切なさらなる支持物質としては、酸化セリウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物が挙げられる。ロジウムの代わりに、白金が、好ましくは、このさらなる支持物質に堆積される。
【0059】
触媒の別の実施形態においては、貴金属の白金および/またはロジウムが、均一なMg/Al混合酸化物に適用され得る。同様に、この場合において、さらなる部分的な量の白金が、窒素酸化物貯蔵物質上に直接堆積され得る。再生期間の間に、脱離した窒素酸化物の可能な限り完全な転換を達成するために、この実施形態においても同様に、さらなる支持物質が、その上に堆積されたロジウムとともに、触媒に添加され得る。好ましくは、活性であり、そして必要に応じて安定化された酸化アルミニウムが、さらなる支持物質として使用される。あるいは、ロジウムの代わりに白金がその上に堆積された、酸化セリウムまたはセリウム/ジルコニウム混合酸化物はまた、適切なさらなる支持物質である。
【0060】
本発明による触媒の窒素酸化物貯蔵成分として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属の酸化物、炭酸塩または水酸化物、またはこれらの混合物が、使用され得る。高い融点の金属酸化物(これらの融点は、上記のプロセスで生じる温度よりも高い)は、これらの成分のための適切な支持物質である。これらの金属酸化物は、好ましくは、酸化セリウム、セリウム混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、均一なMg/Al混合酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化サマリウム、酸化ネオジム、酸化イットリウム、マンガン酸ランタンまたはその混合物からなる群から選択される。
【0061】
酸化セリウムまたはセリウム混合酸化物の支持物質上に固定された窒素酸化物貯蔵成分としてのストロンチウムまたはバリウムの使用は、特に有利である。セリウム混合酸化物、特に混合酸化物の総重量に基づいて、約1〜25重量%のジルコニウム含量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、支持物質として特に適切である。この混合酸化物は、貯蔵物質の総重量に基づいて、約0.5〜約80重量%の、ジルコニウム、ケイ素、スカンジウム、イットリウム、ランタン、および希土類金属またはその混合物からなる群から選択される元素の少なくとも1つの酸化物で、さらにドーピングされ得る。好ましくは、セリウム/ジルコニウム混合酸化物が、セリウム/ジルコニウム混合酸化物および酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムの総重量に基づいて、約0.5〜約10重量%の酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムでドーピングされる。
【0062】
本発明による触媒は、希薄混合気燃焼エンジン(すなわち、燃料分率の低いガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン)からの排出ガスの精製について特に適切である。
【0063】
一般的に、本発明を記載してきたが、以下の実施例に対する以下の参照を通して、本発明はより容易に理解され得る。以下の実施例は、例示のために提供され、そして特定されない限り、本発明を限定することは意図されない。
【0064】
本発明は、希薄混合気燃焼エンジンからの希薄混合気排出ガス中のNOxの量を低減するための触媒に関し、この触媒は、活性な酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび元素の周期表の白金族のうち少なくとも1つの貴金属少、ならびに少なくとも1つの窒素酸化物貯蔵材料を含む。この触媒は、酸化マグネシウムが、酸化アルミニウムと均一な混合酸化物を形成し、そしてこの混合酸化物の総重量に基づいて、約1〜約40重量%の濃度で存在することを特徴とする。
【実施例】
【0065】
本発明を、以下の実施例および図面にさらに詳細に説明する。
【0066】
上記で既に説明したように、Mg/Al混合酸化物と貯蔵材料との組み合わせ、特に、酸化バリウムおよび酸化ストロンチウムに基づく組み合わせは、窒素酸化物貯蔵に対する温度ウィンドウの幅に関して、そして最大転換速度に関して、相乗効果を導くことが見出された。この効果は、Mg/Al混合酸化物が単独で使用される場合には観察できない。従って、以下の実施例および比較例において、完全な触媒が、この材料を使用して調製され、そして窒素酸化物に対するこれらの貯蔵効率が、排出ガスの温度の関数として決定された。触媒の貯蔵効率は、その触媒の性能を評価するための最も重要なパラメータである。貯蔵効率は、希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスからの窒素酸化物の除去に関する有効性を説明する。
【0067】
この触媒のNO貯蔵効率を、モデル気体ユニットにおいて決定した。この目的で、貯蔵触媒をいわゆる濃厚混合気/希薄混合気サイクルに供した。すなわち、希薄混合排出ガスおよび濃厚混合排出ガスを、所定の温度において触媒に交互に通過させた。希薄混合排出ガス組成物を、酸素の供給ならびに同時に一酸化炭素および水素の供給の中断によって、達成した。濃厚混合排出ガスの組成物を、作用の逆の過程によって調製した。
【0068】
希薄混合気段階において、窒素酸化物を、触媒の各々によって貯蔵した。濃厚混合気段階の間に、窒素酸化物を再度脱着し、そしてこの触媒において、一酸化炭素、水素および炭化水素の成分の還元によって、窒素、二酸化炭素および水に転換した。
【0069】
図1は、これらの条件を、理想化した様式で示す。測定の間、排出ガスは、500vppm(容量ppm)の一定濃度の一酸化窒素(NO)を有する。従って、貯蔵触媒に入る窒素酸化物濃度(NOIn)は、図1において、真っ直ぐな破線で表される。貯蔵触媒の後の窒素酸化物濃度(NOOut)は、最初は0である。なぜなら、新しい貯蔵触媒は、理想的には、排出ガスに含まれる全ての窒素酸化物を結合するからである。時間が経過するにつれて、貯蔵触媒に窒素酸化物が充填され、そしてこの触媒の貯蔵能力が低下する。従って、貯蔵触媒に結合する窒素酸化物が次第に減少し、その結果、触媒の後に、次第に増加する窒素酸化物濃度が測定され得、この濃度は、貯蔵触媒が窒素酸化物で完全に飽和された後には、最初の濃度に近付く。この理由により、特定の時間の後(図1においては、80秒後)に、この触媒の再生が開始されなければならない。このことは、排出ガスを約20秒間富化することによってなされる。このことにより、窒素酸化物が脱着され、そして理想的には、貯蔵触媒において完全に転換され、その結果、再生期間の間に、貯蔵触媒の後に窒素酸化物が測定され得ない。その後、再度希薄混合排出ガスに切り替えられ、そして窒素酸化物の貯蔵を再開する。
【0070】
ある時点におけるこの貯蔵触媒の貯蔵効率は、以下の比で定義される:
【0071】
【数1】

図1から判断され得るように、この効率は、時間依存性である。従って、貯蔵触媒を評価するために、貯蔵効率Sを、各貯蔵段階を積分し、そして連続した8サイクルの貯蔵の平均値を求めることによって、決定した:
【0072】
【数2】

従って、貯蔵効率Sは、その材料の定数ではなく、選択された濃厚混合気/希薄混合気サイクルのパラメータに依存する。以下の条件を、調製した貯蔵触媒の評価のために選択した:
(濃厚混合気/希薄混合気サイクルのパラメータ)
空間速度: 30,000h−1
温度範囲: 50℃の増分で150〜500℃
濃厚混合気/希薄混合気サイクルの数: 温度増分につき8
希薄混合気段階の持続時間: 80秒間
濃厚混合気段階の持続時間: 20秒間
【0073】
【表1】

以下の実施例において試験した触媒処方物は、異なる成分からなる。これらの成分を水性コーティング懸濁物に加工し、この懸濁物を用いて、62cm−2のセル密度(断面積あたりのハニカム状キャリアのフローダクトの数)を有する菫青石製ハニカム状キャリアを、浸漬プロセスによってコーティングした。このコーティングしたハニカム状キャリアを乾燥させ、引き続いて500℃で2時間、空気中でか焼した。
【0074】
コーティングしたハニカム状キャリアの窒素酸化物貯蔵効率を、モデル気体ユニットにおいて、新しい状態とエージング後との両方において、上記のように決定した。エージングのために、これらの触媒を、850℃の温度で24時間、空気中に貯蔵した。
【0075】
図2〜12は、異なる貯蔵触媒のこのように決定した貯蔵効率値を、排出ガス温度の関数として示す。表3は、試験した触媒のコーティングの組成を示す。この表の第1列および第2列は、使用したコーティング成分およびこれらの濃度(ハニカム状キャリア容量1リットルあたりのグラム数)を示す。列3〜5は、個々のコーティング成分に存在する白金族の金属の濃度を示す。いくつかの例において、混合酸化物および貯蔵材料に、同時に貴金属を含浸した。これらの場合には、表3は、両方の材料における貴金属(例えば、白金)の総濃度を示すのみである。
【0076】
(白金を含有する触媒性Mg/Al混合酸化物粉末の調製)
均一なMg/Al混合酸化物粉末を、異なる酸化マグネシウム/酸化アルミニウム比で、以下の実施例および比較例のために調製した。最初に、マグネシウムアルコキシドとアルミニウムアルコキシドとの混合物を、文献DE 195 03 522 A1に従って調製し、そしてこの混合物を水で加水分解した。得られた水酸化物混合物を乾燥させ、そして700℃で24時間、空気中でか焼して、均一な混合酸化物の調製を完了した。
【0077】
この様式で、以下の酸化マグネシウム/酸化アルミニウム比を有する4種類の粉末を調製した:
【0078】
【表2】

Mg/Al混合酸化物Iの組成は、マグネシウム−アルミニウムスピネル(MgO・Al)に対応する。しかし、本発明は、化学量論的なマグネシウム−アルミニウムスピネルの酸化マグネシウム含有量より少ないか、またはそれに等しい酸化マグネシウム含有量の混合酸化物に限定されない。この混合酸化物の、窒素酸化物貯蔵材料の触媒活性に対する相乗効果は、35〜40重量%(wt.−%)の酸化マグネシウム含有量においてもなお観察された。
【0079】
均一なMg/Al混合酸化物IIの形態を、透過電子顕微鏡(TEM)によって試験した。この材料を、最初に、Mg/Al混合酸化物と白金との総重量に基づいて2.5重量%の白金でコーティングした。この目的で、Mg/Al混合酸化物を水に懸濁させ、そしてエタノールアミンに溶解したヘキサヒドロキシ白金酸(hexahydroxoplatinic acid)(HPt(OH))の溶液の添加によって、含浸した。貴金属が混合酸化物に吸着された後に、乾燥させ、そして500℃で空気中でか焼した。
【0080】
図13は、調製した粉末材料の電子顕微鏡写真を示す。A、BおよびCで示される位置において、この材料の組成を、エネルギー分散性X線分析によって決定した。測定方法の正確さの範囲内で、この材料は、全ての位置において、20重量%の一定のMgO含有量を示す。
【0081】
(比較例1:(比較触媒CC1))
貯蔵材料、白金およびパラジウムでコーティングした酸化アルミニウム、ならびにロジウムでコーティングした酸化アルミニウムを含む、従来の貯蔵触媒を調製した。
【0082】
酸化バリウムでコーティングしたセリウム/ジルコニウムの混合酸化物(酸化セリウム90重量%および酸化ジルコニウム10重量%)を、DE 199 55 456 A1に記載のプロセスに従って調製して、貯蔵材料として使用した。この貯蔵成分である酸化バリウムの濃度は、貯蔵材料の総重量に基づいて、17.8重量%であった。この材料は、23m/gのBET表面積を有した。以下において、この材料は、BaO/Ce/Zr酸化物と称される。
【0083】
ロジウムでコーティングされた酸化アルミニウムを調製するために、3重量%のランタンで安定化された酸化アルミニウム(BET表面積202m/g)を、硝酸ロジウム溶液で含浸し、乾燥させ、そして500℃で空気中でか焼した。その結果、完成した材料は、材料の総重量に基づいて、合計3.37重量%のロジウムを含んだ。
【0084】
白金およびパラジウムでコーティングされた酸化アルミニウムを調製するために、10重量%のランタン(BET表面積170m/g)で安定化した酸化アルミニウムを、最初にエタノールアミン中のヘキサヒドロキシ白金酸(HPt(OH))水溶液で含浸し、乾燥させ、そして500℃で空気中でか焼した。この材料は、その総重量に基づいて、2.5重量%の白金を含んだ。次いで、この材料を水に懸濁させた。硝酸パラジウムの溶液をこの懸濁物に添加し、そしてこの材料に硝酸パラジウムが吸着した後に、貯蔵材料およびロジウムコーティングした酸化アルミニウムをこの懸濁物に添加した。この懸濁物を3〜5μm(d50)の粒子サイズに粉砕し、そして市販の菫青石製ハニカム状キャリア(1cmあたり62セル)に、浸漬プロセスによって適用した。
【0085】
このコーティングしたハニカム状キャリアを120℃で乾燥オーブン中で乾燥させた。次いで、このコーティングしたハニカム状キャリアを、500℃で4時間か焼した。
【0086】
表3は、個々のコーティング材料の濃度(ハニカム状キャリアの容量1リットルあたりのグラム数)およびこの触媒に堆積した白金族の金属の濃度を示す。この材料を、本明細書中以下において比較触媒CC1と称する。
【0087】
図2は、新しい状態とエージング状態との両方における、この比較触媒の窒素酸化物貯蔵効率を示す。この触媒は、新しい状態において非常に良好な窒素酸化物貯蔵能力を示すが、この触媒がエージングを受けた後には、この貯蔵能力は、明らかに損なわれる。
【0088】
(比較例2:(比較触媒CC2))
表3に与えるような組成を有する、別の比較触媒(CC2)を調製した。白金のみを、触媒的に活性な貴金属として使用し、そして比較例1とは対照的に、この白金を、安定化した酸化アルミニウムではなく均一なMg/Al混合酸化物IIに堆積させた。このMg/Al混合酸化物IIをまた、貯蔵材料BaO/Ce/Zr酸化物の代わりに使用した。
【0089】
白金をMg/Al混合酸化物に堆積させるために、この粉末を、エタノールアミンに溶解したヘキサヒドロキシ白金酸(HPt(OH))水溶液で含浸し、乾燥させ、そして500℃で空気中でか焼した。このように調製した混合酸化物は、その総重量に基づいて、2.5重量%の白金を含んだ。
【0090】
図3は、これら2つの比較触媒CC1とCC2との、新しい状態とエージング状態との両方における、窒素酸化物貯蔵効率の比較を示す。新しい状態においてさえも、比較触媒CC2は、明らかに、触媒CC1より劣る。エージング後、比較触媒CC2は、窒素酸化物の貯蔵に対して全く不適切になった。
【0091】
(実施例1:(触媒C1aおよびC1b))
2種類の貯蔵触媒を、本発明に従って調製した。これらを、以下においてC1aおよびC1bと称する。
【0092】
比較例2とは対照的に、比較例2の白金でコーティングされていないMg/Al混合酸化物を、触媒C1aの調製については貯蔵材料BaO/Ce/Zr酸化物で置き換えた。この触媒の組成は、表3から判断され得る。
【0093】
触媒C1bの調製のために、貯蔵材料BaO/Ce/Zr酸化物およびMg/Al混合酸化物IIの水性懸濁物を調製した。エタノールアミンに溶解したヘキサヒドロキシ白金酸(HPt(OH))の溶液を、この懸濁物に添加した。この懸濁物の2つの酸化物成分に貴金属が吸着した後に、ハニカム状キャリアをこの懸濁物でコーティングした。このコーティングの組成は、表3から判断され得る。触媒C1aとは対照的に、貴金属である白金は、触媒C1bのMg/Al混合酸化物と貯蔵材料との両方に存在する。
【0094】
図4は、これら2種の触媒の、新しい状態での活性とエージング後の活性との比較を示す。エージング後には、本発明による触媒は、温度ウィンドウ全体にわたって、比較触媒CC1より顕著により高い貯蔵能力を示す。この貯蔵能力は、新しい状態と比較して、より高い温度において有意に増加することもまた、注目に値する。
【0095】
(実施例2:(触媒C2aおよびC2b))
触媒C2aの調製のために、Mg/Al混合酸化物IIを、最初に、比較例2において記載したように白金でコーティングし、次いで水に懸濁させた。硝酸パラジウムを、この懸濁物に撹拌しながら入れた。硝酸パラジウムが、白金で触媒化されたMg/Al混合酸化物に吸着した後に、貯蔵材料BaO/Ce/Zr酸化物をこの懸濁物に添加し、そしてハニカム状キャリアを、得られた懸濁物でコーティングした。
【0096】
触媒C2bの調製のために、Mg/Al混合酸化物IIを、最初に、比較例2において記載したように白金でコーティングし、次いで貯蔵材料と共に水に懸濁させた。次いで、硝酸パラジウムを、この懸濁物に撹拌しながら入れた。硝酸パラジウムが、これら2種の酸化物成分に吸着された後に、ハニカム状キャリアを、得られた懸濁物でコーティングした。
【0097】
両方の触媒の、新しい状態とエージング状態との両方における窒素酸化物貯蔵効率を、図5に示す。両方の触媒は、その新しい状態において、先に試験した他の全ての触媒より有意に広い温度ウィンドウを示す。
【0098】
(実施例3:(触媒C3aおよびC3b))
表3に列挙される触媒組成が得られるように、パラジウムをロジウムで置き換えたことを除いて、実施例2を繰り返した。硝酸ロジウムを、ロジウムの前駆体化合物として使用した。
【0099】
パラジウムをロジウムで置き換えて生じた窒素酸化物貯蔵能力を、図6に要約する。新しい触媒のみが、実施例2と比較して高い温度範囲において貯蔵能力の差異を示すが、エージングした触媒は、200℃および250℃において、優れた貯蔵効率を示す。
【0100】
(実施例4:(触媒C4aおよびC4b))
触媒C4aのコーティングは、触媒C1aとまったく同様に、貯蔵材料BaO/Ce/Zr酸化物に加えて、白金で触媒化されたMg/Al混合酸化物IIを含む。さらに、このコーティングは、比較触媒CC1と同様に、ロジウムで触媒化されたLa/Alを含む。
【0101】
触媒C4aと対照的に、触媒C4bにおいては、Mg/Al混合酸化物IIをまた、白金に加えてパラジウムでコーティングした。
【0102】
図7は、本発明の触媒C4aおよびC4bの、エージング状態における貯蔵効率が、比較触媒CC1に対して本質的な利点を示すことを示す。触媒C4bは、新しい状態とエージング状態との両方で、最良の貯蔵効率を有する。
【0103】
(実施例5:(触媒C5a、C5bおよびC5c))
均一なMg/Al混合酸化物における酸化マグネシウム対酸化アルミニウムの混合比の、貯蔵効率に対する影響を試験するために、触媒C4bによる触媒組成におけるMg/Al混合酸化物IIを、混合酸化物I、IIIおよびIVで置き換えた。
【0104】
得られた触媒C5a、C5bおよびC5cの組成を、表3に示す。
【0105】
図8において、これらの触媒の新しい状態とエージング状態との貯蔵効率を、触媒C4bのものと比較する。触媒C4bが、新しい状態とエージング状態との両方において、最良の貯蔵効率を有することが判断され得る。すなわち、最良の結果は、20/80のMg/Al比を有するMg/Al混合酸化物IIを用いて達成される。
【0106】
(比較例3:(比較触媒CC3))
比較触媒CC3を、触媒C4bと類似して調製したが、均一なMg/Al混合酸化物IIを、酸化マグネシウムをドープした酸化アルミニウムで置き換えた。この材料を、γ−Alを酢酸マグネシウムで含浸し、乾燥させ、そして900℃で2時間か焼することによって得た。表3において、この材料は、均一なMg/Al「混合」酸化物IIと区別するために、Mg/Al酸化物IIと記載される。Mg/Al混合酸化物IIとまったく同様に、そのMgO/Alの比は20/80であった。
【0107】
2.5重量%の白金での含浸の後に、Mg/Al酸化物IIもまた、電子顕微鏡で試験した。図14は、この材料の対応する写真を示す。位置A〜Dにおいて、この材料の組成を、エネルギー分散性X線分析によって決定した。均一なMg/Al「混合」酸化物IIとは対照的に、含浸したMg/Al酸化物IIは、試験の位置に依存して、酸化マグネシウム濃度によって有意な変化を示した。以下の濃度が、位置A〜Dにおいて測定された:
A=55重量%
B=50重量%
C=84重量%
D= 5重量%。
【0108】
(比較例4:(比較触媒CC4))
比較触媒CC4を、触媒C5aと類似して調製したが、均一なMg/Al混合酸化物IIIを、酸化マグネシウムでドープした酸化アルミニウムで置き換えた。この材料を、γ−Alを酢酸マグネシウムで含浸し、乾燥させ、そして900℃で2時間か焼することによって得た。表3において、この材料は、均一なMg/Al「混合」酸化物IIIと区別するために、Mg/Al酸化物IIIと記載される。Mg/Al混合酸化物IIIと全く同じに、そのMgO/Alの比は10/90であった。
【0109】
図9は、2種の比較触媒CC3およびCC4の貯蔵効率、ならびに触媒C4bの貯蔵効率の比較を示す。これら2種の比較触媒は、これらの新しい状態においては、触媒C4bとほとんど異ならない。エージング後、これら2種の比較触媒は、明らかに劣っていた。これらの結果は、酸化マグネシウムでの酸化アルミニウムの表面含浸が、所望の相乗効果を導かないことを示す。特に熱エージングの後に、温度ウィンドウの拡張は起こらない。酸化アルミニウム中の酸化マグネシウムの均一な分布のみが、この触媒の所望の高い熱安定性を導く。
【0110】
(比較例5:(比較触媒CC5))
比較触媒CC5を、触媒C4aと類似して調製したが、均一なMg/Al混合酸化物IIを、900℃で2時間か焼したハイドロタルサイトで置き換えた。このハイドロタルサイトのMgO/Al比は、50:50であった。
【0111】
(比較例6:(比較触媒CC6))
比較触媒CC6を、触媒C4bと類似して調製したが、均一なMg/Al混合酸化物IIを、80/20の混合比のランタン安定化酸化γ−アルミニウムおよび酸化マグネシウムの物理的混合物で置き換えた。これら2種の粉末物質の混合物を、公知の孔隙量含浸のプロセスによって、2.5重量%の白金で含浸した。エタノールアミン中のヘキサヒドロキシ白金酸(HPt(OH))の水溶液(これは、他の実施例において既に使用された)を、白金の前駆体化合物として使用した。含浸した材料を乾燥させ、そして500℃で2時間、空気中でか焼した。
【0112】
図10は、2種の比較触媒CC5およびCC6の貯蔵効率、ならびに触媒C4bの貯蔵効率の比較を示す。これらの新しい状態において既に、これら2種の比較触媒は、触媒C4bより狭い温度ウィンドウを示す。エージングの後に、これら2種の比較触媒は、なおさらに劣っている。
【0113】
比較例3〜6の結果は、ハイドロタルサイトおよび酸化アルミニウムと酸化マグネシウムの物理的混合物および酸化アルミニウムの酸化マグネシウムでの含浸のいずれも、均一なMg/Al混合酸化物が貯蔵効率に対して有するポジティブな効果に近付かないことを示す。
【0114】
(実施例6:(触媒C6aおよびC6b))
触媒6aおよび6bをまた、触媒4bと同様に調製した。
【0115】
触媒4とは対照的に、触媒6aについて、白金を用いて触媒されるMg/Al混合酸化物IIを、酢酸プラセオジムの水溶液で含浸し、乾燥し、そして10gの酸化プラセオジムと共にか焼することによって、コーティング懸濁液の調製の前に改変した。
【0116】
触媒6bについて、このMg/Al混合酸化物IIを、5gのプラセオジムのみを用いる第一工程、および硝酸セリウムおよび5gの酸化セリウムでの含浸による第二工程において、改変した。各含浸工程後、この材料を乾燥し、そしてか焼した。触媒6aおよび6bの組成を、表3に示す。
【0117】
(実施例7:(触媒C7aおよびC7b))
触媒7aを、触媒6aと同様に調製した。酸化プラセオジムを用いる代わりに、白金によって触媒されるMg/Al混合酸化物IIを、硝酸セリウムで含浸し、乾燥し、そしてか焼することによって、10gの酸化セリウムを用いて改変した。
【0118】
触媒7aとは反対に、触媒7bの調製について、Mg/Al混合酸化物IIを、5gの酸化セリウムを用いる改変のみを行った。
【0119】
図11は、均一なMg/Al混合酸化物の、プラセオジムおよび/またはセリウムでの含浸の影響を示す。均一なMg/Al混合酸化物の、4重量%の酸化セリウムでの含浸は、貯蔵効率のさらなる改善を生じる。
【0120】
(実施例8:)
比較例1の触媒CC1および実施例6のC6bを、強化した熱的エージングに供した。この目的のために、この触媒を、空気中、850℃、900℃、および950℃の温度で各々24時間貯蔵した。
【0121】
図12は、この熱的損傷後のこの触媒の貯蔵効率を示す。950℃でのエージング後、2つの触媒の間の差異は、特に明白であった。エージング処理後、触媒6bは、排出ガス温度が250℃に達するまで比較触媒が達成しない貯蔵効率を、しかしながら150℃の排出ガス温度で示した。高い排出ガス温度で、エージングの影響は、本発明の触媒C6bにおいては比較的小さいが、比較触媒の貯蔵効率は、850℃の代わりに950℃でエージングされる場合、約半分になる。
【0122】
(表3:触媒の組成)
【0123】
【表3】



【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、NO貯蔵効率の決定を示す。
【図2】図2は、比較触媒1についてのNO貯蔵効率を示す。
【図3】図3は、比較触媒1および2についてのNO貯蔵効率を示す。
【図4】図4は、実施例1の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図5】図5は、実施例2の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図6】図6は、実施例3の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図7】図7は、比較触媒1と比較した、実施例4の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図8】図8は、触媒4bおよび実施例5の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図9】図9は、触媒4bならびに比較例3および4についてのNO貯蔵効率を示す。
【図10】図10は、触媒4bならびに比較例5および6についてのNO貯蔵効率を示す。
【図11】図11は、実施例6および7の触媒についてのNO貯蔵効率を示す。
【図12】図12は、異なる温度(850℃、900℃および950℃)でのエージング後の触媒6bおよび比較例1についてのNO貯蔵効率を示す。
【図13】図13は、白金でコートされたMg/Al混合酸化物II(表2を参照のこと)のTEM写真であり、ここで、酸化マグネシウム粉末が、酸化アルミニウム(触媒粉末1)中に均一に溶解している。
【図14】図14は、比較例3からの酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムのMg/Al酸化物IIのTEM写真である。この場合において、酸化マグネシウムを、含浸によって、酸化アルミニウム上に適用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスにおける窒素酸化物の量を低減するための触媒であって、少なくとも1つの白金族の貴金属、ならびになくとも1つの窒素酸化物貯蔵材料酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムの均一なMg/Al混合酸化物と組み合わせ含み、ここで、該酸化マグネシウムは、該Mg/Al混合酸化物の総重量に基づいて、約5〜約28重量%の濃度で存在する、触媒。
【請求項2】
前記酸化マグネシウムが、前記混合酸化物の総重量に基づいて、約10〜25重量%の濃度で存在する、請求項に記載の触媒。
【請求項3】
前記貴金属が、白金、パラジウム、ロジウムまたはこれらの混合物からなる群より選択され、そして該貴金属が、前記Mg/Al混合酸化物上に完全にかまたは部分的に堆積される、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記Mg/Al混合酸化物の表面に、1つ以上の希土類酸化物が付着されている、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記Mg/Al混合酸化物に、酸化プラセオジムおよび/または酸化セリウムが付着されている、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記窒素酸化物貯蔵成分が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属またはこれらの混合物からなる群より選択される元素の酸化物、炭酸塩、あるいは水酸化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記窒素酸化物貯蔵成分のための前記支持材料が、1つ以上の高融点金属酸化物からなる、請求項に記載の触媒。
【請求項8】
前記高融点金属酸化物が、酸化セリウム、セリウム混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、均一なMg/Al混合酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、酸化ネオジム、酸化イットリウム、およびマンガン酸ランタンまたはこれらの混合物からなる群より選択される、請求項に記載の触媒。
【請求項9】
前記窒素酸化物貯蔵成分が、酸化セリウムまたはセリウム混合酸化物の支持材料上に固定されたストロンチウムまたはバリウムの酸化物、炭酸塩、あるいは水酸化物である、請求項に記載の触媒。
【請求項10】
前記窒素酸化物貯蔵成分のための前記支持材料が、ジルコニウム、ケイ素、スカンジウム、イットリウム、ランタンおよび希土類金属またはこれらの混合物からなる群より選択される元素のうち少なくとも1つの酸化物の、前記貯蔵材料の総重量に基づいて約0.5〜80重量%でドープ処理したセリウム混合酸化物である、請求項に記載の触媒。
【請求項11】
前記窒素酸化物貯蔵成分のための前記支持材料が、セリウム/ジルコニウム混合酸化物であり、酸化ジルコニウム含有量が、該混合酸化物の総重量に基づいて約1〜約25重量%である、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
前記セリウム/ジルコニウム混合酸化物が、該セリウム/ジルコニウム混合酸化物ならびに酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムの総重量に基づいて、約0.5〜約10重量%の酸化ランタンおよび/または酸化プラセオジムでドープ処理される、請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
前記金属金および/またはパラジウム、前記均一なMg/Al混合酸化物に適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
白金がまた、前記窒素酸化物貯蔵材料上に堆積される、請求項13に記載の触媒。
【請求項15】
前記触媒が、活性な、必要に応じて安定化された酸化アルミニウムを含み、この上にさらなる支持材料としてロジウムが堆積される、請求項14に記載の触媒。
【請求項16】
前記触媒が、酸化セリウムまたはセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、この上にさらなる支持材料として白金が堆積される、請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
前記金属金および/またはロジウム前記均一なMg/Al混合酸化物上に適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項18】
白金がまた、前記窒素酸化物貯蔵材料上に堆積される、請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒が、活性な、必要に応じて安定化された酸化アルミニウムを含み、この上にさらなる支持材料としてロジウムが堆積される、請求項18に記載の触媒。
【請求項20】
前記触媒が、酸化セリウムまたはセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、この上にさらなる支持材料として白金が堆積される、請求項18に記載の触媒。
【請求項21】
前記触媒が、不活性なセラミックまたは金属キャリア上に、コーティングの形態で適用される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項22】
希薄混合気燃焼エンジンからの排出ガスの浄化のための、請求項1〜21のいずれか一項に記載の触媒の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−100230(P2008−100230A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335372(P2007−335372)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2002−349272(P2002−349272)の分割
【原出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】