説明

希釈倍率導出方法、定量方法、及び分析装置

【課題】 本発明では、乳びを含む生物学的試料を希釈する場合でもより正確な希釈倍率を導出する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の希釈倍率導出方法は、光源(A)の光に対する希釈用水溶液中の指示物質の吸光度(C1)を測定する工程と、定量すべき任意成分を含む生物学的試料と希釈用水溶液とを混合して定量用試料液を調製する工程と、光源(A)の光に対する定量用試料液中の指示物質の吸光度(C2)を測定する工程と、光源(A)の光とは波長が異なる光源(B)の光に対する定量用試料液中の指示物質の吸光度(C4)を測定する工程と、吸光度(C4)と、生物学的試料中の乳びを含む血漿における光源(A)及び光源(B)の光の波長依存特性とから、血漿のブランク吸光度(C5)を求め、吸光度(C1)と、吸光度(C2)から吸光度(C5)を減算した値とから、生物学的試料の希釈倍率(D2)を求める工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料の希釈倍率を精度よく導出するための希釈倍率導出方法、及び該方法を利用した前記生物学的試料中の任意成分の定量方法、及び前記希釈倍率導出方法を利用する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1台で、血液等の生物学的試料と分析試薬とを反応させ、生物学的試料中の様々な成分を定量可能な大型の自動分析装置が実用化されており、医療分野においては不可欠な存在となっている。しかし、すべての病院においてそのような装置が導入されているわけではなく、特に診療所等の小規模な医療機関の中には、運用コスト等の様々な理由によって、試料の分析を外部委託するという形態をとるものも少なくない。分析を外部委託する場合、分析結果を得るまでに時間を要するので、患者は検査結果に基づく適切な治療を受けるために、必然的に再来院を余儀なくされる。さらに、急患等の緊急を要する場合の迅速対応が難しいといった問題も生じる。そのような背景の中、近年市場において、より小型で、より低コストで、より短時間で、より高精度で、より少量の試料液で生物試料の測定が可能な、運用の自由度が高い分析装置が望まれている。
【0003】
運用の自由度の高い分析装置として、例えば、指先採血等で採取される少量の検体から複数種の成分濃度を短時間で高精度に測定できるという条件を満たすものが一つの例として挙げられる。しかし、指先採血等で被験者にストレスを与えることなく採取できる検体量は、多くとも十数マイクロリットル程度であり、そのような少量の検体をそのまま分析するのでは、上述の条件、特に複数種の成分分析を高精度に行うことは、技術的に難しい。このような課題に対する解決策の一つとして、分析システムを高感度化し、少量の検体を希釈することでその容量を増加させ、複数種の成分を高感度な分析システムで分析するという方法がある。
【0004】
一般に、生物学的試料中の任意成分を定量するとき、以下のような理由、すなわち、該生物学的試料中の任意成分の濃度が高い、該生物学的試料の容量が少ない、または分析装置の都合等により、生物学的試料を適当な水溶液によって希釈することがある。検体である生物学的試料を希釈して分析する場合、生物学的試料を所定の希釈倍率に希釈後、前記試料中の任意成分を定量し、そして試料の希釈倍率を基に希釈前の濃度に換算し、希釈前の生物学的試料中に含まれる任意成分の濃度を決定する。このため、生物学的試料中の任意成分を精度良く定量する場合、希釈倍率を正確に知ることは、生物学的試料を高精度に分析するという点で非常に重要な要素となる。
【0005】
一般的な希釈倍率を正確に知る方法のうちの、例えば、主に大型の自動分析装置等に採用されている方式として、生物学的試料と希釈用水溶液とを定量装置等によって定量し、所定の希釈倍率に正確に合わせこむ方法がある。この方法は、試料の希釈倍率をあらかじめ任意に決定できるという利点があるが、定量のための機構が必要になる。また、他の方法として、予め希釈用水溶液中に色素等に代表される指示物質を添加し、希釈前と希釈後の前記指示物質の光学的性質(例えば吸光度)を測定し比較することで試料の希釈倍率を正確に検出する方法がある。この方法は、定量のための機構が必要ではないことから比較的単純な構成にできるという利点があり、装置の小型化に有利である。しかし、試料の希釈倍率が一定でないため、それに対応できる仕組みが必要になる。
【0006】
従来、例えば、生物学的試料である血液を希釈する血液分離器具が提案されている(例えば、特許文献1)。この血液分離器具は、指示物質が含まれた希釈用水溶液と血液(生物学的試料)とを混合するための専用の器具である。
【0007】
図10は、従来の血液分離器具の構成例を示す図である。血液分離器具100は、本体容器101と、本体容器101に接続された濾過体102と、それぞれ本体容器101に接続された血漿採取容器103および血球採取容器104と、本体容器101に嵌挿可能な蓋105と、血漿採取容器着脱部106と、血漿採取容器着脱部106上に形成される円筒状の血液採取容器部107から構成される。血液分離器具100では、血液採取容器部107内の採取された血液のうち血漿が濾過体102を通過して、血漿採取容器103内の血漿希釈用水溶液108と混合される。混合後、血液分離器具100は、検査場所まで搬送され、そこで、医師や看護婦、臨床検査技師等の一定の有資格者または専門の技術者によって、希釈倍率が検出される。血漿希釈用水溶液108中には指示物質(色素)が混入されているので、指示物質を光学的手法等によって測定することで、溶液の希釈倍率(溶解率)を算出して、希釈前の血液(生物学的試料)中に含まれる任意成分の濃度を決定することができる。
【0008】
次に、従来の、生物学的試料の希釈倍率導出方法と、生物学的試料中の定量すべき任意成分の濃度を定量する方法について、図11を用いて説明する。図11は、生物学的試料の希釈倍率導出方法と、生物学的試料中の定量すべき任意成分の濃度を定量する方法を説明するためのステップ図である。
【0009】
まず、光源(A)の光に対する希釈用水溶液中の指示物質の吸光度(C1)を測定する(ステップS111)。吸光度(C1)は希釈用水溶液中の指示物質の濃度を示す。次に、定量すべき任意成分を含む生物学的試料と指示物質を含む希釈用水溶液とを混合して定量用試料液を調製する(ステップS112)。すなわち、生物学的試料を希釈用水溶液で希釈する。次に、光源(A)の光に対する、定量用試料液中の指示物質の吸光度(C2)を測定する(ステップS113)。吸光度(C2)は、定量用試料液中の指示物質の濃度を示す。次に、生物学的試料の希釈倍率(D1)を導出する(ステップS114)。希釈倍率(D1)は、
希釈倍率(D1)=C1/(C1−C2) (式1)
の式で表される。次に、ステップS112で調整された定量用試料液中の定量すべき任意成分の濃度(Y)を定量する(ステップS115)。例えば、任意成分を定量用試薬と反応させて、反応状態を光学的に検出、例えば、所定波長の光に対する吸光度や濁度を検出することで、定量試料液中の定量すべき任意成分の濃度(Y)を求める。次に、濃度(Y)とステップS114で求めた希釈倍率とから、希釈前の生物学的試料の定量すべき任意成分の濃度(X)を導出する(ステップS116)。濃度(X)は、
X=D1Y (式2)
の式で表される。
【特許文献1】特開2003―161729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の、前記指示物質を使用して生物学的試料の希釈倍率を導出する方法では、生物学的試料自体の中に一般的に存在する物質、クロモゲンの影響により正確に希釈倍率が導出できない場合がある。クロモゲンという物質はそれ自体が光吸収特性をもっているため、前記指示物質が含まれた希釈用水溶液と生物学的試料とを混合した後の、前記指示物質の吸光度を測定するときに、クロモゲンの作用を受けて、混合後の前記指示物質の正確な吸光度が得られないという現象が発生する。その結果、希釈前の希釈用水溶液中の前記指示物質の吸光度と、希釈用水溶液と生物学的試料との混合溶液中の前記指示物質の吸光度とを単純に比較するというだけでは、正確な希釈倍率を算出することが困難である。
【0011】
上記従来の方法では、希釈前と希釈後の指示物質の濃度を比較して希釈倍率を導出する場合、指示物質の濃度を求めるときに、同一波長における指示物質の吸光度を利用している。しかし、一般的に生物学的試料中には、例えば、溶血(ヘモグロビン)、黄疸(ビリルビン)、カイロミクロン、リポタンパク等の含有量が著しく高いために溶液が濁る、いわゆる乳び(血清の濁り)などの混濁物質が存在し、この混濁物質に含まれるクロモゲンの光吸収作用の影響によって、生物学的試料の吸光度を測定する場合の見かけの吸光度が増加し、分析結果に悪影響を与えることが明らかになっている。したがって、このクロモゲンの光吸収作用の影響を抑制しない限り、生物学的試料の希釈倍率を正確に導出できないという問題が存在していた。
【0012】
また、理論上、これら生物学的試料中のクロモゲンの光吸収作用を受けないように、前記指示物質を含む希釈用水溶液と生物学的試料との混合前に、これらクロモゲンの成分を除去できれば正確な希釈倍率が導出できるが、この場合、別途大掛かりな設備が必要である。さらに、クロモゲンの光吸収作用の影響を完全に抑制することは技術的に難しく現実的ではない。
【0013】
また、クロモゲンの光吸収作用の影響を無視して測定した希釈倍率は、誤差が含まれることになり、該誤差はそのまま測定結果の決定に影響を与える。このため、上記従来の方法では、より高い精度の希釈倍率の導出が求められる分野での使用は難しいという問題が生じる。
【0014】
また、生物学的試料が微量化すればするほど、それに見合った希釈用水溶液の定量精度を保つことがより困難になり、より定量精度に悪影響を及ぼす傾向になる。よって、分析に用いる生物学的試料の検体量が微量の場合、特に、希釈倍率を正確に知ることは、高精度に生物学的試料を分析するという点で、非常に重要な要素となる。
【0015】
また、従来の方法で、生物学的試料中の任意成分の濃度を定量する場合、溶血(ヘモグロビン)および黄疸(ビリルビン)の光吸収波長は、600nm以下に存在するため、600nm以上の波長で光吸収作用を持つ前記指示物質を用いることによって、溶血および黄疸の光吸収作用による影響を回避することができる。しかし、カイロミクロンやリポタンパクによる濁りいわゆる乳びについては、その混濁物質が可視光領域の全てに光吸収作用を有するので、乳びの濁りにより光の散乱が生じて見かけの吸光度が増加し、分析結果に悪影響を与えるという不都合が生じる。
【0016】
以上のことから、本発明では、乳びを含む生物学的試料を希釈する場合でもより正確な希釈倍率を導出することができる希釈倍率導出方法、該方法を利用した前記生物学的試料中の任意成分を定量する定量方法、及び前記希釈倍率導出方法を利用する分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る希釈倍率導出方法は、第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、前記生物学的試料を希釈し、定量用試料液を調製する工程と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る希釈倍率導出方法は、前記第2の光源の光が、前記指示物質の光吸収特性の吸光度が0になる波長よりも大きい波長を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る希釈倍率導出方法は、前記特定成分が血漿であり、前記第1の光源の光及び前記2の光源の光の波長が585〜900nmであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る希釈倍率導出方法は、前記指示物質が、色素、色原体、蛍光物質、及び発光物質からなるグループの少なくとも1つから選択されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る定量方法は、第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、前記生物学的試料を希釈し、定量用試料液を調製する工程と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程と、前記定量用試料液中の定量すべき成分を反応試薬と反応させて、前記定量すべき成分の濃度を求める工程と、前記求めた希釈倍率と、前記定量用試料液中の定量すべき成分の濃度とから、前記生物学的試料中に含まれる定量すべき成分の濃度を求める工程とを含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る定量方法は、前記第2の光源の光が、前記指示物質の光吸収特性の吸光度が0になる波長よりも大きい波長であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る定量方法は、前記特定成分が血漿であり、前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長は585〜900nmであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る定量方法は、前記指示物質が、色素、色原体、蛍光物質、及び発光物質からなるグループのうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る定量方法は、前記生物学的試料が血液成分であり、前記定量すべき成分が脂質成分であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る、生物学的試料中の定量すべき成分を定量する分析装置は、前記生物学的試料が注入される分析用デバイスと、前記分析用デバイスに光を照射する光発生部と、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動部と、前記分析用デバイスの透過光を検出する光検出部と、前記光検出部による検出結果を処理して、前記生物学的試料中の定量すべき成分を定量する処理部とを有し、前記分析用デバイスは、前記生物学的試料を収容する第1の収容部と、前記生物学的試料の希釈に用いられる希釈用水溶液を収容する第2の収容部と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを移送するための流路と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合する混合部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を一定量保持する保持部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を反応試薬と反応させる分析部とを有し、前記回転駆動部によって回転させられると、遠心力及び前記流路の毛細管力によって、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とをそれぞれ移送して、混合し、前記光発生部は、前記希釈用水溶液に対して第1の光源の光を照射し、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液との混合溶液に対して、前記第1の光源の光と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光とを照射し、前記光検出部は、前記分析用デバイスを透過する光から、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度とを検出し、前記処理部は、前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから前記特定成分の吸光度を求めて、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める希釈倍率導出手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の希釈倍率導出方法によれば、第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、定量用試料液を調製する工程と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分に対する前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程とを含むことから、希釈前と希釈後の指示物質の吸光度から、生物学的試料の希釈倍率を求める際に、前記乳びの光吸収作用の影響を回避することができる。その結果、より高い精度で生物学的試料の希釈倍率を導出することができる。
【0028】
また、本発明の定量方法によれば、第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、定量用試料液を調製する工程と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分に対する前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程と、前記定量用試料液中の定量すべき成分を反応試薬と反応させて前記定量すべき成分の濃度を求める工程と、前記求めた希釈倍率と、前記定量用試料液中の定量すべき成分の濃度とから、前記生物学的試料中に含まれる定量すべき成分の濃度を求める工程とを含むことから、希釈前と希釈後の指示物質の吸光度から、生物学的試料の希釈倍率を求める際に、前記乳びの光吸収作用の影響を回避して、より正確な生物学的試料の希釈倍率を求めることができる。さらに、該希釈倍率に基づいて、生物学的試料中の任意成分の濃度をより正確に定量することができる。
【0029】
本発明の分析装置は、生物学的試料が注入される分析用デバイスと、前記分析用デバイスに光を照射する光発生部と、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動部と、前記分析用デバイスの透過光を検出する光検出部と、前記光検出部による検出結果を処理して、前記生物学的試料中の定量すべき成分を定量する処理部とを有し、前記分析用デバイスは、前記生物学的試料を収容する第1の収容部と、前記生物学的試料の希釈に用いられる希釈用水溶液を収容する第2の収容部と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを移送するための流路と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合する混合部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を一定量保持する保持部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を反応試薬と反応させる分析部とを有し、前記回転駆動部によって回転させられると、遠心力及び前記流路の毛細管力によって、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とをそれぞれ移送して、混合し、前記光発生部は、前記希釈用水溶液に対して第1の光源の光を照射し、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液との混合溶液に対して、前記第1の光源の光と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光とを照射し、前記光検出部は、前記分析用デバイスを透過する光から、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度とを検出し、前記処理部は、前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから前記特定成分の吸光度を求めて、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める希釈倍率導出手段を備えることから、希釈前と希釈後の指示物質の吸光度から、生物学的試料の希釈倍率を求める際に、異なる2つの波長の光を用いるだけで、大型で複雑な装置を用いることなく、前記乳びの光吸収作用の影響を回避して、より正確な生物学的試料の希釈倍率を求めることができる。さらに、該希釈倍率に基づいて、生物学的試料中の任意成分の濃度をより正確に定量することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る希釈倍率導出方法及び定量方法について図1〜図5を用いて説明する。
【0031】
図1は、乳びが含まれた血漿成分における光吸収特性の変化を表したものであり、吸光スペクトルを例示したグラフである。この血漿成分は、全血を遠心分離することにより、血球成分を除いた後、血漿成分だけを抽出した生物学的試料である。図1では、乳びの含有率がそれぞれ異なる4種類の血漿成分1〜4の吸収スペクトルを示す。一般に、乳びの含有率は、個人ごとに採血される検体で異なるので、それらの吸収スペクトルも異なり、その結果、吸光度が異なる。
【0032】
希釈倍率を導出するときには、検体由来の吸光度のブランク値が“0”であれば、希釈倍率の導出誤差が生じず、乳びによる光吸収特性の影響を考慮する必要もないので望ましい。しかし、現実的には、乳びをもつ生物学的試料は、図1に示すように、波長が600nm以上の可視光領域の全てに光吸収作用を持ち、長波長になる程、吸収強度は減少していくという性質を持つ。このため、長波長側に向かって吸光度が右肩下がりになることが示される。なお、この場合の、溶血(ヘモグロビン)および黄疸(ビリルビン)の混濁物質の影響については、光吸収波長が600nm以下の領域に存在するので、600nm以上の領域では無視できる(図示せず)。
【0033】
図2は、乳びを含む血漿成分における、波長の異なる2種類の光の光吸収特性の吸光度の関係をグラフで表したもので、620nmと770nmの吸光度の関係を例示したものである。図2は、図1で用いた乳びの含有量が異なる4つの生物学的試料についてプロットしたグラフを示し、図2に示すように、良好な直線関係が得られた(R2=0.9999)。なお、Rは、回帰直線の相関係数を表す。また、前記乳びの含有量が異なる4つの生物学的試料のそれぞれの試料を、指示物質が含まれていない希釈用水溶液であるPBS(緩衝液)と混合し、2倍、3倍、4倍と希釈したものを作製して、それらの希釈液に対する、波長の異なる2種類の光の光吸収特性の吸光度の関係を表した場合においても、同様に直線関係が得られた(図示せず)。つまり、生物学的試料と希釈用水溶液との混合の前後における、波長の異なる2種類の光の光吸収特性の吸光度の関係は、図2のグラフと比較すると、傾きやy切片は多少異なるので同じ回帰直線にはならないが、同じような直線関係が得られることを示す。ここでは直線に制限されるものではなく、精度をさらに向上させるために多項式を用いても良い。波長の選択としては585nm〜900nmの範囲であればいずれも直線の関係式が成立し、用いる指示物質の光吸収特性にとって適したところが選択される。
【0034】
本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法では、乳びを含む血漿における一定の波長領域(585nm〜900nm)で、希釈用水溶液に含まれた指示物質の光吸収特性に依存しない波長依存特性をもつことに着目し、2波長の光を利用するとともに、図2の関係式を利用して、乳びの光吸収作用による吸光度の上昇分を抑制する高精度の希釈倍率の導出を実現した。
【0035】
図3は、生物学的試料と希釈用水溶液との混合前後の指示物質の光吸収特性の変化を例示したグラフである。図3において、吸収スペクトル5は、希釈前の指示物質であるブリリアントブルーFCFを含む希釈用水溶液の光吸収特性(吸光スペクトル)を示し、吸収スペクトル6、7は、指示物質であるブリリアントブルーFCFを含む希釈用水溶液と乳びを含む血漿成分とを1:1の割合で混合した希釈後の混合溶液(定量用試料液)中の指示物質の光吸収特性(吸光スペクトル)を示す。特に、吸収スペクトル6は、混合溶液の吸光度を実際に測定した場合のグラフであり、指示物質由来の吸光度のほかに、乳びの光吸収作用による吸光度も上乗せされており、吸収スペクトル7は、乳びの光吸収作用による吸光度の前記上乗せ分を差し引いた、指示物質由来の吸光度を示すグラフである。
【0036】
また、図3において、「C1」は指示物質の光吸収特性のピーク波長を表し、希釈倍率導出のための吸光度でもある。「C2」は希釈後の指示物質の光吸収特性のピーク波長を表し、実際に測定される吸光度でもある。「C3」は、指示物質由来の吸光度を表し、「C5」は検体ブランク由来の吸光度、いわゆる乳び自体の光吸収作用による吸光度を表す。生物学的試料の希釈倍率を正確に導出するためには、吸光度C1と吸光度C3とを比較する必要がある。しかし、希釈後、実際に測定される吸光度C2には、指示物質由来の吸光度C3のほかに、乳び自体の光吸収作用による吸光度C5が上乗せされているので、正確な希釈倍率の導出ができない。
【0037】
よって、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法では、吸光度(C1)と、吸光度(C2)から吸光度C5を差し引いた値とから、希釈用水溶液による生物学的試料の希釈倍率を導出する。
【0038】
図5は、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法、及び該希釈倍率導出方法を用いた生物学的試料中の任意成分の定量方法を説明するためのステップ図である。ここでは、生物学的試料として血液を用い、該血液を、指示物質を含む希釈用水溶液と混合して定量用試料液を調整する場合を例として、説明する。
【0039】
まず、光源(A)の光に対する希釈用水溶液中の指示物質の吸光度(C1)を測定する(ステップS511)。次に、生物学的試料を希釈用水溶液と混合して、定量用試料液(混合溶液)を調整する(ステップS512)。次に、光源(A)の光に対する定量用試料液中の指示物質の吸光度(C2)を測定し(ステップS513)、光源(B)の光に対する定量用試料液中の指示物質の吸光度(C4)を測定する。ここで、従来の希釈倍率導出方法から明らかなように、定量用試料液中の生物学的試料の希釈倍率(D1)は、上記式(1)で表される。しかし、図3に示すように、実際に測定される吸光度C2には、上述のように、指示物質由来の吸光度C3のほかに、検体ブランク由来の吸光度C5も、乳び自体の光吸収作用による吸光度として上乗せされているので、実際に測定されるC2は、以下の関係式となる。
【0040】
C2=C3+C5 (式3)
【0041】
ここで、より精度の高い希釈倍率を導出するために、検体ブランク由来の吸光度の影響を取り除いた希釈倍率(D2)は以下の関係式で表される。
【0042】
希釈倍率(D2)=C1/(C1−C3) (式4)
【0043】
さらに、希釈倍率(D2)は、(式3)及び(式4)から以下の関係式で表される。
【0044】
希釈倍率(D2)=C1/(C1−C3)=C1/{C1−(C2−C5)} (式5)
【0045】
実際に測定される吸光度C2から検体ブランク由来の吸光度C5を引くことができれば、乳び自体の光吸収作用による吸光度として上乗せされる分の影響を取り除くことになり、正確な指示物質由来の吸光度C3を導出することができる。ここで、乳びを含む血漿成分における検体ブランク由来の吸光度C5は、それぞれ波長の異なる2つの光の波長光吸収特性の吸光度の関係を示した図2のグラフを使って、ある波長の吸光度が決まれば、もう一方の波長の吸光度が導出されるという特性を利用して求める。一例として、図2の関係式を以下におく。
【0046】
C5=a×(C4)+b (式6)
【0047】
吸光度C5は、前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を定量するときに用いる光源(A)光の測定波長に吸収をもつ検体ブランクの吸光度を表し、図1に示される乳び自体の光吸収作用による吸光度がこれにあたる。吸光度C4は、光源(A)の光の測定波長とは別の波長であり、前記指示物質による吸光度の値が「0」である光源(B)の光の測定波長の吸光度である。なお、実際の吸光度の測定においては、指示物質の特性や測定環境等によって、前記吸光度の「0」という値については、若干の誤差が生じるが、一般的には、この誤差は無視できる範囲であると考えられる。式6において、「a」は、図2のグラフの直線の傾きを表し、「b」はy切片を表す。この関係式から、前記定量用試料液において、光源(A)の光の波長の吸光度C5は、光源(A)とは波長が異なる光源(B)の光の波長の吸光度によって導出される。これらのことから、(式5)及び(式6)より、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法の希釈倍率を表す式は、以下の関係式となる。
【0048】
希釈倍率(D2)=(C1)/[(C1)−{(C2)−( a×(C4)+b)}](式7)
【0049】
この(式7)を用いて、吸光度(C2)と吸光度(C4)から、生物学的試料の希釈倍率を求める(ステップS515)。これにより、検体ブランク由来の乳びによる光吸収作用による影響が除去され、誤差の無い正確な希釈倍率が導出される。また、必要に応じ、導出された希釈倍率と、理論希釈倍率との間に別途換算式を設けてもよい。
【0050】
次に、以上のようにして導出された希釈倍率から希釈前の生物学的試料中の定量すべき任意成分の濃度(X)を定量する。定量すべき任意成分として、グルコース、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、ALT、ASTなどが挙げられる。希釈された生物学的試料中、すなわち、定量用試料液中のグルコース、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、ALT、ASTなどを、それらの物質を定量するための公知の各反応試薬と反応させ、その反応状態を検出することで任意成分の濃度(Y)を求める(ステップS516)。例えば、特定波長の光によって、反応液の吸光度や濁度を測定することで、任意成分の濃度(Y)を求める。次に、(式7)によって導かれた生物学的試料の希釈倍率(D2)から、(式8)により、希釈前の生物学的試料中の任意成分の濃度(X)を求める(ステップS517)。
【0051】
X=D2Y (式8)
【0052】
以上のような、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法、及び定量方法を実現するための分析装置について図6〜図9を用いて説明する。ここでは、生物学的試料として血液を用い、該血液を、指示物質を含む希釈用水溶液と混合して定量用試料液を調整する場合を例として、説明する。
【0053】
図6は、分析装置の構成例を示す図である。分析装置60は、分析用デバイス61と、分析用デバイス61を回転させる回転駆動部62と、光発生部63と、光検出部64と、光検出部64の検出結果を処理する処理部65とを備える。処理部65は、上記希釈倍率導出処理を行う希釈倍率導出手段と、上記定量処理を行う定量手段とを有する。
【0054】
分析用デバイス61は回転駆動部62に装着される。回転駆動部62により分析用デバイス61を矢印の方向に軸心周りに回転させることにより、分析用デバイス61に遠心力をかけ、該遠心力と分析用デバイス61内に配置された連絡流路に働く毛細管力とを合わせることで、分析用デバイス61内に収容される流体の移動を制御することができる。分析デバイス61内の流体の流れの状態、または化学的な状態は、光発生部63から照射される光66に対する流体の光吸収特性を光検出部64で測定することによって検出することができる。
【0055】
図7は、分析用デバイス61が回転駆動部62に装着した状態を示す図であり、図8は分析用デバイス61の内部構造を示す図である。分析用デバイス61は、定量すべき任意成分を含む生物学的試料(液体試料)を収容する液体試料収容室81と、前記液体試料を希釈しその希釈倍率を正確に導出するための指示物質を含む希釈用水溶液を収容する希釈用水溶液収容室82と、希釈用水溶液収容室82に連結され、希釈用水溶液収容室82から流入した希釈用水溶液の一定量を計量し保持する希釈用水溶液計量室83と、液体試料収容室81と希釈用水溶液計量室83とに連結され、希釈用水溶液計量室83から流入した希釈用水溶液と、液体試料収容室81から流入した液体試料とを混合する混合室84と、混合室84と連結され、混合室84で混合(希釈)された液体試料の一定量を保持する計量流路85と、混合室84と連結され、混合室84から移送される混合(希釈)された液体試料内の任意成分を定量するために、該液体試料の吸光度または濁度を測定するための分析室86とを備えている。
【0056】
希釈用水溶液収容室82に収容される希釈用水溶液には、指示物質が含まれており、正確な希釈倍率を導出するために、生物学的試料中の血漿成分の検体ブランク吸光度(C5)を除去する方法は、上述した通りである。また、連結流路に働く毛細管力と回転によって生じる遠心力による流体の制御を可能にするために、希釈用水溶液計量室83は希釈用水溶液収容室82に対して軸心より遠い位置に配置されており、混合室84は希釈用水溶液計量室83に対して軸心より遠い位置に配置され、分析室86は混合室84に対して軸心より遠い位置に配置されている。希釈用水溶液に含まれる指示物質の吸光度は、希釈用水溶液計量室83と混合室84とで測定し、測定結果に基づいて、希釈倍率を導出する。また希釈用水溶液計量室83と混合室84は一体に形成して、同一の測定領域で混合前と混合後の希釈用水溶液の指示物質の吸光度を測定してもよい。必要に応じ、液体試料収容室81と混合室84の間に、液体試料収容室81から流入されてきた液体試料を、遠心力を用いて低比重成分と高比重成分とに分離する分離室を設けてもよく、さらに、前記分離室と混合室84との間に、液体試料を一定量保持する液体試料計量流路を設け、一定量の液体試料を混合室84へ移送できるようにしてもよい。分析室86には液体試料中に含まれる定量すべき任意成分と反応する反応試薬が保持されており、必要に応じ分析項目別に複数個配置してもよい。また、計量流路85は、分析室86に一定量の液体試料を移送させるために配置されている。また、希釈用水溶液計量室83に連結される溢流室20には、希釈用水溶液計量室83で液体試料が計量されるときに余剰分の液量が流入される。
【0057】
以上のように構成される分析装置60による希釈倍率導出動作と定量動作について説明する。
【0058】
まず、分析用デバイス61を回転駆動部62に装着し、分析用デバイス61を軸心周りに回転させることにより、希釈用水溶液を希釈用水溶液計量室83に移送し、この回転を停止することで、定量すべき任意成分を含む生物学的試料(液体試料)と希釈用水溶液計量室83の希釈用水溶液とを、混合室84の直前の連結通路までそれぞれ移送する。再び分析用デバイス61を回転させることで、液体試料と希釈用水溶液とを混合室84に移送して混合する。この回転を停止することで、混合溶液(定量用試料液)を、分析室86の直前の連結通路までそれぞれ移送する。その後、分析用デバイス61を再び回転させることで、定量用試料液を、分析室86へ移送する。この一連の流れの中で光検出部64によって、液体試料と希釈用水溶液との混合前後の指示物質の光吸収特性を測定し、該測定結果に基づいて、処理部65の希釈倍率導出手段が、上述した方法により、式7を用いて、液体試料の希釈倍率(D2)を導出する。なお、希釈倍率(D2)の導出過程において、希釈後に実際に測定された吸光度(C2)から、乳び自体の光吸収作用による吸光度(C5)を差し引くために、吸光度(C5)を算出するのに用いる、乳びを含む血漿成分における2波長の光の波長依存特性の関係式は、分析装置60のメモリ等の記録部(図示せず)に予め保存されており、必要時に、処理部65の希釈倍率導出手段が読み出して利用する。このように、定量すべき任意成分の濃度を高精度に定量するための分析装置では、高精度に希釈倍率を導出することが必要不可欠であり、そのためには、従来技術の希釈倍率導出方法に加えて、本発明の、希釈後に実際に測定された吸光度(C2)から乳び自体の光吸収作用による吸光度(C5)を差し引くというブランク吸光度の影響を回避する処理が非常に重要な要素となる。
【0059】
次に、光検出部64によって、定量用試料液中の定量すべき任意成分の濃度(Y)を定量する。例えば、定量すべき任意成分と分析室86内の反応試薬とを反応させ、反応液に光発生部63から特定波長の光を照射して、吸光度または濁度を光検出部64で測定することで濃度(Y)を定量する。この測定された定量すべき任意成分の濃度(Y)と前記希釈倍率導出手段により求められた希釈倍率(D2)とから、処理部65の定量手段が、上記式(8)を用いて、混合(希釈)前の液体試料中の定量すべき任意成分の濃度(X)を決定する。
【0060】
以上のように、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法、定量方法、及び分析装置によれば、指示物質を含む希釈用水溶液で生物学的試料を希釈するときに、光源(A)の光と、光源(A)の光とは波長の異なる光源(B)の光によって、希釈前と希釈後の指示物質の吸光度を測定し、測定した吸光度と、光源(A)の光の波長と光源(B)の光の波長との関係式で示される乳びを含む成分の波長依存特性を利用して、生物学的試料中の乳びを含む成分のブランク吸光度(C5)を求め、希釈前の希釈用水溶液中の指示物質の吸光度(C1)と、希釈後の定量用試料液中の指示物質の吸光度(C2)から前記ブランク吸光度(C5)を減算した値とから、生物学的試料の希釈倍率を求めることから、前記乳びの光吸収作用の影響を回避して、より正確な生物学的試料の希釈倍率を求めることができ、さらに、該希釈倍率に基づいて、生物学的試料中の定量すべき任意成分の濃度をより正確に定量することができる。
【0061】
また、本実施の形態1に係る希釈倍率導出方法によれば、乳びを含む生物学的試料であれば、どのような試料においても測定精度を向上させることができるという効果がある。
【0062】
(実施例1)
本実施例1では、生物学的試料である血清を、指示物質としてブリリアントブルーFCFを含む希釈用水溶液で希釈し、希釈前と希釈後のブリリアントブルーFCFの吸光度から、血清の希釈倍率を導出する。
【0063】
まず、粉末状のブリリアントブルーFCFを、PBS(緩衝液)と10mg/mlBSAとの混合液に溶解させ、光路長1cmでピーク波長633nm(光源(A)の光の波長)の場合の吸光度が0.5となるように濃度調整した。これは、指示物質であるブリリアントブルーFCFの濃度は、光路長等の測定条件により最適な範囲が変動するため、指示物質が測定される条件で、想定される試料の希釈倍率の範囲において、指示物質の吸光度を測定可能な範囲内に収めることが望ましいからである。具体的には希釈倍率導出に用いる測定波長における吸光度は0.1〜1.5が望ましく、さらには0.4〜0.6がより望ましい。次に、生物学的試料としての血清を添加する前のブリリアントブルーFCF溶液の633nm(光源(A)の光の波長)での吸光度(C1)を測定した。次に、ブリリアントブルーFCFに血清を添加して、混合溶液の633nmでの吸光度(C2)と、ブリリアントブルーFCFの吸光度の値が“0”である751nm(光源(B)の光の波長)での吸光度(C4)とを測定した。ここで、乳びを含む特定成分(血漿成分)における633nmと751nmの波長依存特性の関係式(y=2.0143x+0.0002)を予め図4のように求めており、その式と、吸光度(C1)、吸光度(C2)、及び吸光度(C4)とから、式7を用いて、希釈倍率を求めた。生物学的試料としての血清と希釈用水溶液との混合溶液である定量用試料液に関して、試験管番号1〜3の測定結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
試験管番号1に関しては、理論希釈倍率2.0倍であるが、従来の方法で導出した場合、希釈倍率は2.7倍となった。この理想希釈倍率からの大きな乖離は乳びの影響である。これが従来技術では大きな問題となっていた。一方、本発明の方法で導出した場合、希釈倍率は2.0倍となった。詳細に理想希釈倍率からの乖離を計算すると、0.6%であり、従来技術では37%乖離していることを鑑みると、非常に良好な結果が得られた。試験管番号2、3についても同様な結果が得られた。このように希釈倍率2.0〜6.0倍のような低希釈倍率においては、従来の技術では乳びの影響により希釈倍率の導出に大きな誤差が生じた。特に、本実験では光路長が1cmという長い光路長だったこともあり、理想希釈倍率からの乖離が25〜46%とその影響が顕著に表れた結果になった。一方、本発明の方法を用いると、乖離が−0.9〜0.6%と高精度な希釈倍率の導出が実現でき、本発明の有効性が実証された。
【0066】
(実施例2)
本実施例2では、生物学的試料である血液を、指示物質としてアミドブラック401号を含む希釈用水溶液で希釈して、希釈前と希釈後のアミドブラック401号の吸光度から、血液中の定量すべき任意成分であるトリグリセリド(TG)の希釈倍率を導出し、微量(10μl)の血液中に含まれるトリグリセリド(TG)の含有濃度を測定する。
【0067】
まず、アミドブラック401号、PBS(緩衝液)、安定化剤とを含む希釈用水溶液について、光路長1mm、ピーク波長620nm(光源(A)の光の波長)の吸光度を測定した(C1=0.429)。次に、全血10μlを前記希釈用水溶液と混合させ、混合溶液を遠心分離して血球を除去した後、その上清について光路長1mm、波長620nmでの吸光度(C2)と、波長730nm(光源(B)の光の波長)での吸光度(C4)を測定した。吸光度(C1)、吸光度(C2)及び吸光度(C4)の測定は、光路長のばらつきによる測定精度への影響を除去するため同一スポットで測定することが望ましい。予め、図9に示すように、血漿における620nmと730nmの関係式(y=1.745x+0.00010)を求めておき、その式と、吸光度(C1)、吸光度(C2)、及び吸光度(C4)とから、(式7)を用いて、希釈倍率を求めた。次に、前記上清のTG濃度を、定量用試薬等と反応させて導くことができる公知の方法によって求め、その測定値と前記求めた希釈倍率を(式8)に代入することで、希釈用水溶液と混合する前の前記微量血液中に含まれるTG濃度を算出した。生物学的試料としての血液中の血漿と希釈用水溶液との混合溶液である定量用試料液に関して、試験管番号4〜8の測定結果を表2に示す。なお、全血10μlと混合させる希釈用水溶液の量は表2の試験管番号4〜8のように条件を変えて実施した。なお、本実験で用いた血液中のTG濃度は、高精度の大型装置(日立7020)によって測定したが、実測希釈倍率は164mg/dlであった。
【0068】
【表2】

【0069】
表2は、上記組成で調製された希釈用水溶液により希釈された血漿において、実績濃度から導出した2.0倍希釈から10.9倍希釈までの範囲における希釈倍率(D)を、従来技術の方法と本発明の方法とでそれぞれ算出し、その算出した希釈倍率(D)から血液中に含まれるトリグリセリド(TG)の含有濃度を測定し、その結果を比較したものである。実測希釈倍率は、試験管番号4では2.0倍、試験管番号5では4.0倍、試験管番号6では6.3倍、試験管番号7では8.2倍、試験管番号8では10.9倍となっているが、全ての試験管(4〜8)において、本発明の方法による算出希釈倍率は、試験管番号4では2.0倍、試験管番号5では4.0倍、試験管番号6では6.1倍、試験管番号7では8.3倍、試験管番号8では11.0倍となっており、従来の方法による算出希釈倍率より、実測希釈倍率に近い値になった。その結果、本発明の方法により定量された算出濃度は、試験管(4〜8)において、161mg/dl、162mg/dl、158mg/dl、166mg/dl、166mg/dlと算出されており、従来技術による算出濃度より、本発明の方法による算出濃度の方が、実測希釈倍率164mg/dlに対してより近い値になっているのがわかる。さらに、算出された2.0倍希釈から10.9倍の範囲における算出濃度について、従来の方法では最大で9.9%の乖離誤差が生じているが、本発明の方法では3.8%以内に乖離誤差を抑えることがわかる。従来の方法と比較して、本発明の方法がばらつきなく希釈倍率を導出できることがわかる。このように、本発明の方法によって試験管番号4〜8のいずれの場合も従来に方法よりも正確なTG濃度の算出ができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る希釈倍率導出方法及び定量方法は、乳びを含む生物学的試料を希釈して、生物学的試料に含まれる任意の物質を定量する方法及び装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法を説明するための、ヒト血漿の吸光スペクトル(光吸収特性の変化)の例を表したグラフである。
【図2】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法を説明するための、血漿の波長依存特性を表したグラフ及び関係式を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法を説明するための、ブリリアントブルーFCF溶液と血漿との混合前と混合後の吸光スペクトルの例を表したグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法を説明するための、血漿の波長依存特性を表したグラフ及び関係式を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法及び生物学的試料中の定量すべき任意成分の定量方法を説明するためのステップ図である。
【図6】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法及び定量方法を実現するための分析装置の構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における希釈倍率導出方法及び定量方法を実現するための分析装置が有する分析用デバイスの上面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る希釈倍率導出方法及び定量方法を実現するための分析装置が有する分析用デバイスの内部構造を示す図である。
【図9】本発明の実施例2における血漿の波長依存特性を表したグラフ及び関係式を示す図である。
【図10】従来の血液分離器具の構成図である。
【図11】従来の、希釈倍率導出方法及び生物学的試料中の定量すべき任意成分の定量方法を説明するためのステップ図である。
【符号の説明】
【0072】
1 検体1の吸光スペクトル
2 検体2の吸光スペクトル
3 検体3の吸光スペクトル
4 検体4の吸光スペクトル
5 ブリリアントブルーFCF溶液の吸光スペクトル
6 ブリリアントブルーFCF溶液と血漿を1:1の割合で混合した混合溶液の吸光スペクトル
7 ブリリアントブルーFCF溶液と指示物質を含まない希釈用水溶液を1:1の割合とで混合した混合溶液の吸光スペクトル
a グラフの傾き
b グラフのy切片
C1 混合前の指示物質由来の吸光度
C2 混合後の指示物質由来の吸光度と検体ブランク由来の吸光度との和(実測吸光度)
C3 混合後の指示物質由来の吸光度
C4 指示物質の吸光度が0である、別波長による吸光度(混合後)
C5 検体ブランク由来の吸光度(乳び成分の吸光度)
D1 従来方法により導出される希釈倍率
D2 本発明の方法により導出される希釈倍率
X 希釈後の定量すべき成分の濃度
Y 希釈前の定量すべき成分の濃度
60 分析装置
61 分析用デバイス
62 回転駆動部
63 光発生部
64 光検出部
65 処理部
66 光
81 液体試料収容室
82 希釈用水溶液収容室
83 希釈用水溶液計量室
84 混合室
85 計量流路
86 分析室
87 溢流室
100 血液分離器具
101 本体容器
102 濾過体
103 血漿採取容器
104 血球採取容器
105 蓋
106 血漿採取容器着脱部
107 血液採取容器部
108 血漿希釈用水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、
定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、前記生物学的試料を希釈し、定量用試料液を調製する工程と、
前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、
前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、
前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、
前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程とを含む、
ことを特徴とする希釈倍率導出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の希釈倍率導出方法において、
前記第2の光源の光は、前記指示物質の光吸収特性の吸光度が0になる波長よりも大きい波長を有する、
ことを特徴とする希釈倍率導出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の希釈倍率導出方法において、
前記特定成分は血漿であり、前記第1の光源の光及び前記2の光源の光の波長は585〜900nmである、
ことを特徴とする希釈倍率導出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の希釈倍率導出方法において、
前記指示物質は、色素、色原体、蛍光物質、及び発光物質からなるグループの少なくとも1つから選択される、
ことを特徴とする希釈倍率導出方法。
【請求項5】
第1の光源の光に対する、希釈用水溶液に含まれる光学的に検出可能な指示物質の吸光度を測定する工程と、
定量すべき成分を含む生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合して、前記生物学的試料を希釈し、定量用試料液を調製する工程と、
前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、
前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度を測定する工程と、
前記第2の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから、前記特定成分の吸光度を求める工程と、
前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記定量用試料液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める工程と、
前記定量用試料液中の定量すべき成分を反応試薬と反応させて、前記定量すべき成分の濃度を求める工程と、
前記求めた希釈倍率と、前記定量用試料液中の定量すべき成分の濃度とから、前記生物学的試料中に含まれる定量すべき成分の濃度を求める工程とを含む、
ことを特徴とする定量方法。
【請求項6】
請求項5に記載の定量方法において、
前記第2の光源の光は、前記指示物質の光吸収特性の吸光度が0になる波長よりも大きい波長である、
ことを特徴とする定量方法。
【請求項7】
請求項6に記載の定量方法において、
前記特定成分は血漿であり、前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長は585〜900nmである、
ことを特徴とする定量方法。
【請求項8】
請求項5に記載の定量方法において、
前記指示物質は、色素、色原体、蛍光物質、及び発光物質からなるグループのうちの少なくとも1つから選択される、
ことを特徴とする定量方法。
【請求項9】
請求項5に記載の定量方法において、
前記生物学的試料は血液成分であり、前記定量すべき成分は脂質成分である、
ことを特徴とする。
【請求項10】
生物学的試料中の定量すべき成分を定量する分析装置において、
前記生物学的試料が注入される分析用デバイスと、
前記分析用デバイスに光を照射する光発生部と、
前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動部と、
前記分析用デバイスの透過光を検出する光検出部と、
前記光検出部による検出結果を処理して、前記生物学的試料中の定量すべき成分を定量する処理部とを有し、
前記分析用デバイスは、前記生物学的試料を収容する第1の収容部と、前記生物学的試料の希釈に用いられる希釈用水溶液を収容する第2の収容部と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを移送するための流路と、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とを混合する混合部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を一定量保持する保持部と、前記混合部で希釈された生物学的試料を反応試薬と反応させる分析部とを有し、前記回転駆動部によって回転させられると、遠心力及び前記流路の毛細管力によって、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液とをそれぞれ移送して、混合し、
前記光発生部は、前記希釈用水溶液に対して第1の光源の光を照射し、前記生物学的試料と前記希釈用水溶液との混合溶液に対して、前記第1の光源の光と、前記第1の光源の光とは波長が異なる第2の光源の光とを照射し、
前記光検出部は、前記分析用デバイスを透過する光から、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度とを検出し、
前記処理部は、前記第2の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度と、前記生物学的試料中の乳びを含む特定成分における前記第1の光源の光及び前記第2の光源の光の波長依存特性とから前記特定成分の吸光度を求めて、前記第1の光源の光に対する前記希釈用水溶液中の指示物質の吸光度と、前記第1の光源の光に対する前記混合溶液中の指示物質の吸光度から前記特定成分の吸光度を減算した値とに基づいて、前記希釈用水溶液による前記生物学的試料の希釈倍率を求める希釈倍率導出手段を備える、
ことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−109196(P2009−109196A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278384(P2007−278384)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】