説明

帯封防犯装置

本発明の防犯装置は、ケーブルを含み、可調整ループを形成する保持部材と、ケーブルに接続され、ループを狭める動作及びループの拡張を抑える動作が可能なラチェット部材とを備え、該ラチェット部材が、第1平面内に延在すると共に該第1平面から隆起する鋸歯状プロファイルを有するギヤリングを備える第1主要部と、第1主要部に対して回転自在であり、第1平面側に付勢されギヤリングと係合するラッチ部材とケーブルを巻き上げるドラムとを含む第2主要部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、物品ないし商品を守るための装置に関する。特に、本発明は、ケーブルが物品に巻き付けられ、上記物品の周りのケーブルを締め付けるラチェット部材を含む、調整可能な装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
物品の盗難および不正開封は、小売店にとっては常に脅威である。今日、物品を収容するボックスが権限のない者によって開けられボックスの中身が抜き取られるのを防ぐことは非常に困難である。物品を保護する際、費用や魅力的な見た目(すなわち、消費者はパッケージを購入する前に、パッケージの中身が確認できることを望んでいる)と同時にセキュリティグレードのバランスを取らなければならない。物品を保護すると同時に中身を展示するために、ロックすることができる透明ボックスといった多くの解決策を利用できることがよく知られている。この解決策は、パッケージやボックスが権限のない者によって開封されるのを防ぐ手段を提供している。しかし、この解決策は、透明ボックスが特定の物品に適した特定の寸法を有することが求められ、場合によっては、特異な寸法の物品には特製のボックスかスペースの無駄につながる過大寸法のボックスが必要となる。したがって、物品を守って物品の異なるサイズにも調整可能な可調整装置が待望されている。
【0003】
米国特許第5,722,266号は、ボックスまたは類似物の6面全部を取り囲みかつロックする複数のワイヤまたはケーブルを含む防犯装置を開示している。ケーブルは、複数の歯を有する歯車および歯と係合する一方向爪を含むラチェット部材と、ベースにスナップフィットすると共にロックを解除するにはロック解除具を必要とするファスナを含みかつラチェット部材から離間したロック部材との間に延びる。該装置は、様々なサイズの保護対象の周りを締め付けるように調整可能である。しかし、該装置は構造および操作に関して複雑である。
【0004】
したがって、本発明の目的は、構造および操作が単純であり、防犯装置を締め付けるのに別途のツールを必要としない防犯装置を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の全体的な目的は、ラチェット部材と保護対象の周りに配される1つ以上のケーブルとを含んだ防犯装置の簡素化された構造を提供することである。
【0006】
本発明の防犯装置は、この目的を実現するため、ケーブルを含む可調整ループを形成する保持部材と、ケーブルに接続され、ループを狭める動作及びループの拡張を抑える動作が可能なラチェット部材とを備え、ラチェット部材が、第1平面内に延在すると共にその平面から隆起する鋸歯状プロファイルを有するギヤリングを備える第1主要部と、その第1主要部に対して回転自在であり、第1平面側に付勢されギヤリングと係合するラッチ部材とケーブルを巻き上げるドラムとを含む第2主要部とを備える。
【0007】
さらに、防犯装置の第2主要部は、第1平面と平行な第2平面内に離間配置された2つのラッチ部材を備えることができる。
【0008】
その上、防犯装置の第2主要部は、ギヤリングの上側で径方向に離間配置された2つのラッチ部材を備えることができる。
【0009】
一実施形態では、防犯装置の第2主要部は、第1平面側に付勢されてギヤリングと係合すると共にギヤリングから個別に取り外し可能な2つのラッチ部材を備える。
【0010】
さらに、防犯装置のラッチ部材は、第1平面と垂直な方向におけるラッチ部材の磁気吸着によって、ギヤリングから取り外せるように構成されている。
【0011】
その上、防犯装置は、第2主要部に接続されており、ギヤリングに対面しラッチ部材を担持する内面と、ギヤリングからラッチ部材を取り外すツール用のインターフェースを担持する外面とを有する操作手段を備える。追加の実施形態では、防犯装置の操作手段は、離間する2つのラッチ部材と、ツールの補助グリップ部に接続するラッチ部材の間の中央グリップ部とを担持する。
【0012】
防犯装置のラッチ部材は、そのままの状態でギヤリングと係合する先端部を有する磁気吸着可能な板ばねを備えることができる。
【0013】
さらに、防犯装置のラッチ部材は、第1平面と平行な第2平面内に配置された磁気吸着可能な金属シートを備え、そのシートには、第2平面から第1平面に向かって曲げられた板ばねが形成されるようにして略U字状スロットが形成される。板ばねは、鋸歯状プロファイルが環状に延在しているのに従うようにして第2平面内において湾曲させることができる。
【0014】
さらに、防犯装置の保持部材は、2本のケーブルと、ラチェット部材から離れて2本のケーブルに接続される支持部材とを含む。
【0015】
その上、防犯装置のケーブルは、共にドラムに接続された2つの端部の間に延びている。
【0016】
防犯装置の保持部材は、ラチェット部材から離間してケーブルに接続され、防犯装置に保持された際に物品と対向する面にゴム状材料の層が設けられた支持部材を含むことができる。
【0017】
本発明の実施形態では、防犯装置に保持された際に物品と対向するラチェット部材の面に、ゴム状材料の層が設けられている。防犯装置のさらなる実施形態では、ラチェット部材は、ケーブルに接続され、そのケーブルが切断されたときにアラームを鳴らすように構成されたアラーム回路を備える。防犯装置はさらに電子物品監視(EAS)タグを備えることができる。
【0018】
本発明について、実施形態の例に関連して、添付の図面を参照しながら、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態の分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の異なる角度からの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態の側面図である。
【図4】図4は、図3の線B−Bに沿って切った防犯装置の断面図である。
【図5】図5は、図3の線B−Bに沿って切った、ラッチ部材がロック状態でないときの防犯装置の断面図である。
【図6】図6は、図3の線A−Aに沿って切った防犯装置の断面図である。
【図7】図7は、図3の線C−Cに沿って切った防犯装置の断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態の分解斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る防犯装置で利用される脱着器を概略的に示す図である。
【図10】図10は、防犯装置のロックが解除されているときの本発明の実施形態に係る防犯装置と脱着器との係合を概略的に示す図である。
【本発明の実施形態の詳細な説明】
【0020】
図1および2を参照すると、本発明の実施形態の分解図が示されており、防犯装置は一般的に10で表わされる。防犯装置10は、ラチェット部材200、ラチェット部材200に接続された保持部材100、150、およびラチェット部材200から離れて保持部材100、150に接続された支持部材300を備える。該防犯装置の主な目的は、保護対象の周りに保持部材100、150を締め付けることである。保持部材は1つ以上の可調整ループを形成し、保護対象の周りで調整可能である1つ以上のケーブルを、図示する実施形態では特に2つのケーブル100、150を備えることができる。ケーブルに接続され、ループを狭める動作及びループの拡張を抑える動作が可能である防犯装置のラチェット部材200は、第1平面に延在すると共に第1平面から隆起する鋸歯状プロファイルを有するギヤリング250を備える第1主要部と、第1主要部に対して回転自在であり、第1平面側に付勢されギヤリング250と係合するラッチ部材230、235およびケーブルを巻き上げるためのドラム270を備える第2主要部とを備える。装置の第2主要部は、第1平面と平行な第2平面内に離間配置された2つのラッチ部材230、235を備えることができる。
【0021】
本発明の実施形態では、2つのラッチ部材は、ギヤリング250の上で直径方向に間隔を置いて配置される。しかし、ラッチ部材の数のみならず、ラッチ部材間の間隔も、どの脱着器を使用するかによって変化する。
【0022】
一実施形態では、2つのラッチ部材230、235が第1平面側に付勢されギヤリング250と係合すると共にギヤリング250から個別に取り外し可能である。さらに、防犯装置10のラッチ部材230、235は、第1平面とは垂直方向の各ラッチ部材230、235の磁気吸着力によって、ギヤリング250から取り外せるように構成される。ラッチ部材をギヤリング250から解放するこの磁気吸着力は一般的に、万能脱着器若しくは同様のものによって生成される。
【0023】
さらに、防犯装置10は、第2主要部に接続されており、ギヤリング250に対面しラッチ部材230、235を担持する内面と、ギヤリングからラッチ部材を取り外すツール用のインターフェースを担持する外面とを有する操作部材220を備える。ツールは一般的に脱着器である。追加の実施形態では、防犯装置の操作部材220は、離間する2つのラッチ部材230、235と、ツールの補助グリップ部に接続するためのラッチ部材の間の中央グリップ部225とを担持する。グリップ部225は、操作部材220に陥没させるようにしてもよく、また、図示する実施形態のように操作部材220から突出させるようにしてもよい。
【0024】
防犯装置10のラッチ部材230、235は、そのままの状態でギヤリング250に係合する先端部233、238を有する舌片を有する磁気吸着可能な板ばねを備えることができる。ラッチ部材230、235の代替的実施形態は、磁力が防犯装置に印加されたときに、突出した静止状態から引っ込む弾性基部を有する細長い磁性ピンとすることができる。しかし、防犯装置の図示したラッチ部材230、235は、第1平面と平行な第2平面に配置された磁気吸着可能な金属シートを含み、シートには、第2平面から第1平面の方向に曲げられた板ばねが形成されるように略U字状スロットが形成される。本発明の実施形態では、ラッチ部材230、235がギヤリング250の歯と係合する部分を中心に合わせるために、板ばねは鋸歯状プロファイルが環状に延在しているのに従うようにして第2平面内において湾曲する。しかし、板ばねの製造を容易にするために、板ばねは矩形とすることができる。
【0025】
防犯装置の保持部材100、150が2つのケーブルを含む実施形態では、ケーブルは、ともに装置のドラム270に接続された2つの端部の間に延びる。
【0026】
防犯装置は、ラチェット部材200から離間してケーブル100、150に接続され、防犯装置によって保持された際に物品と対面する面にゴム状材料310のような高摩擦材の層が設けられた支持部材300を含むことができる。本発明の実施形態では、ゴム状材料の層は、防犯装置によって保持された際に物品と対面するラチェット部材200の面にも設けられる。ゴム状材料の目的は、様々な部材が物品から引き外されるのを妨げるために、ラチェット/支持部材と物品との間の摩擦力を高めることである。
【0027】
次に、図1〜7に示す実施形態についてより詳細に説明する。防犯装置のラチェット部材が、ケーブルを巻き上げそれによってケーブルを締め付けるように動作するように相互に対して回転自在である、第1主要部および第2主要部を備えている。ラチェット部材200の第1主要部および第2主要部は両方とも、ロック可能とするために複数のサブユニットを備える。
【0028】
第1主要部の主要部材はギヤリング250であり、第2主要部の主要部材は、ギヤリングとの相互作用のためにラッチ部材230、235がその上に固定されている操作部材220である。ラッチ部材は操作部材220の内面に確実に取り付けることが好ましく、操作部材220の外面にはグリップ部225が配置され、それを用いてユーザは物品の周りに防犯装置10を締め付けることができる。操作性を向上し、かつ安全性を高めるために、操作部材220の外周上に配置された外側リング210のような外側ケーシングを設けることも好ましい。外側リング210は、ギヤリング250の外周に溶接または接着することが好ましく、それによって操作部材220はそのラッチ部材230、235と共に、ギヤリング250と外側リング210との間に固定される。代替的実施形態では、図8に示すように、第1部材もまた、第2主要部全体を実質的に密閉しかつケーブル用のアパーチャーを有する、ケーシング600を含む。物体の周りでケーブルを締め付けるために防犯装置を操作するときに、片手を外側リング210またはケーシング600に掛けながら、操作部材220を他方の手で回転させることができる。ケーブルが物体の周りに配置されるときに、実際は第1主要部を押さえ続ける必要は無く、把持可能な外側リング210またはケーシング600は、締付けプロセスの安定性に関して操作性を向上させる。
【0029】
ラッチ部材は、ギヤリング250に配列された歯と係合するように構成された突出舌片233、238を備える。本発明の一実施形態では、各ラッチ部材230、235は、舌片233、238を提供するために略U字状スロットが形成された、磁性鋼のような磁気的に吸着可能な弾性金属シートから構成される。舌片は、そのままの位置で、シートの主面からわずかに外に屈曲する。このように、舌片233、238は実質的に直線状であるかまたはシートの主面に対して鋭角に延びるかのいずれかとすることができ、若しくは、図4および5に示すように舌片の外側先端が主面から突出するように舌片を湾曲させることもできる。防犯装置10が締め付けられるときに、舌片233、238はラチェット部材200の第1主要部のギヤリング250の歯に沿って柔軟に従動し、それによって一方向に移動し、反対方向に回転することができないことによって、防犯装置10を巻き戻すことができないことが確実になる。図6に明示するように、ラッチ部材はその主面においてわずかに湾曲した形状を有することが好ましく、その曲率は操作部材220の回転の中心までの径方向距離によって画定される。このようにして、舌片233、238とギヤリング250との間の係合点は装置の周辺に配置され、小さいギヤステップが可能になる。それによって、ケーブルが緊張状態にあるときでも、ケーブルを締め付けることが容易であり、物品をきつく固定することが容易になる。例えば図6に示すように、操作部材220は、ラッチ部材230、235に配置された穴236内に挿入されるように構成された突出ピン229を備え、それによってラッチ部材230、235をスナップロックにより操作部材220に固定する。代替として、ラッチ部材は操作部材220に接着するか、または操作部材220と一体化することができる。
【0030】
ラチェット部材200の第2主要部はさらに、単数または複数のケーブルを巻き上げるためのドラム270、および操作部材220をドラム270に接続する巻取り部240を備える。巻取り部240に配置された凹部242内に突出部228を挿入することによって、操作部材220を巻取り部240に固定するために、操作部材220の内面に複数の突出部228が設けられる。装置の巻取り部240にはさらに、そのエンベロープ表面の下縁に沿って溝245が配置される。ラチェット部材200のグリップ部225を回転することによってドラム270を回転することができるようにするために、溝の端面は、ドラム270と係合するかまたはケーブル端と直接係合するように構成された係合面またはショルダ248をもたらすように形成される。
【0031】
装置10は1つ以上のケーブルを含むことができ、図示した実施形態は2つのケーブル100、150を含み、それは少なくとも箱状物品には最良の操作形態である。くびれ部を有する物品の場合、1つのケーブルだけで充分であるかもしれない一方、より複雑な形状の物品は実際、3つ以上のケーブルを必要とするかもしれない。
【0032】
ケーブル端には、図面に示すように幅が広くなったヘッド部を設けることが好ましい。ドラム270で、各ケーブル端は、端をステーブル(stable)275に固定することによって固定位置に配置される。ケーブル100、150をドラム270に固定するステーブル275を巻取り部240のショルダ248と係合することができるようにするために、巻取り部240は少なくとも部分的にドラム270内に埋没するように配置される。本発明の実施形態では、ドラムは複数の鍵穴型スロット277を備え、防犯装置10を組み立てるときに、ケーブル100、150の端部をスロットの略円形部分から挿入し、次いでステーブル275内に折り曲げることができる。図示する実施形態のケーブルは輪にされ、両端がドラム270に固定されていることに注目されたい。さらに詳しくは、ケーブルはドラム270から出て、支持部材300を介してドラムに戻り、ケーブルの両端はドラムに固定される。しかし、言うまでもなく、代替的選択肢として、1つのケーブルをラチェット部材200から支持部材に送って、次いで別のケーブルを支持部材300からラチェット部材200に戻すことが可能である。しかし、これは本発明に関係しない。防犯装置10を締め付けるときに、ドラム270は巻取り部240によって回転され、ケーブルが上記ドラム270の筒状周面278に沿って巻き取られる。
【0033】
図示した実施形態では、ケーブル100、150の切断などが発生したときにそれを決定するために、中間アラームプレート260が配置される。中間アラームプレート260は電源回路を形成するケーブルと接触しており、電源回路が遮断されたとき、例えばケーブルの1本の切断などが発生したときに、中間アラームプレートはアラームを鳴らす。したがってケーブルはプレートに接続され、図示した実施形態では、ケーブルのいずれか1本の切断を感知するように構成されたコンデンサ267が示される。中間アラームプレートはドラム270の底に配置され、ドラムのステーブル275を受け入れるように構成されたスロット265が設けられる。
【0034】
中間アラームプレート260に電力を供給するために、ドラム270の下に、バッテリなどのような1つ以上の電力素子が設けられる。これらの電力素子を格納するために、ドラム270の下側に、複数の溝およびキャビティ279を設けることが好ましい。電力は、例えばドラム270を貫通して埋め込まれた導電チャネルを介して、中間アラームプレートに供給される。本発明の実施形態では、バッテリ極板280をドラム270の下に配置することもでき、電力素子のために配置されたキャビティを閉鎖するために、閉鎖板290がバッテリ極板の下に配置される。閉鎖板はバッテリ極板280、ドラム270、アラームプレート260の中心穴を通して巻取り部240と確実な係合状態にねじ止めすることが好ましい。ねじ(図示せず)は、防犯装置10が物品に掛かっていないときにだけ、取り外すためにアクセス可能である。
【0035】
例えば図1〜3および図8に、支持部材300を示す。支持部材300は、(EAS)システムなどのカラムのような中央店舗アラーム(central store alarm)を通過したときにアラームを始動するように構成された、電子物品監視タグのような装置を収容するハウジング部330を備えることが好ましい。ハウジング部330はさらに、ケーブルに配置された突出部130、180を介してケーブルを固定するための複数の固定要素335を備える。ケーブルの長さは変えることができることを理解されたい。
【0036】
さらに、ハウジング部330は支持部材300の頂部320によって密閉される。頂部320の上に、一般的にゴム、シリコンなどのようなゴム状材料の高摩擦層310が設けられる。層310は、防犯装置を物品から引き外すことがより難しくなるように、防犯装置10が巻き付けられる物品の表面を把持するために、ハウジング部に設けられる。また、保護対象に対面するラチェット部材200の表面、例えば閉鎖板290またはケーシング600にも、同様の層を設けることができることも理解されたい。
【0037】
ここで、本発明を明確にするために、図面を参照しながら、防犯装置の機能について説明する。盗難から保護しようとする物品の周りに、ケーブル100、150が巻き付けられる。ケーブルを物品の周りに締め付けるために、ラチェット部材200を回転する。図1に戻って参照すると、操作部材220に配置されたグリップ部225を捩じることによってラチェット部材200が回転し、それによってラッチ部材がギヤリング250に沿って回転する。操作部材220に従って、巻取り部240も回転する。巻取り部240が回転すると、ドラム270も同様に回転させられ、ラチェット部材のコアが回転する。内部に固定されたケーブルを有するドラム270は、上記防犯装置10のケーシング600の開口610(図8の分解図のみに示す)を通してケーブル100、150を引き込む。ケーブルが物品の周りに充分に締め付けられ、ゴムパッド付き支持部材320が上記物品にしっかりと配置されるまで、グリップ部225は回転される。
【0038】
図4を参照すると、防犯装置10の部分断面図が示されている。図示した実施形態では、ラッチ部材230は係合状態にある。すなわち、ラッチ部材の舌片233がギヤリング250の歯255と係合する。グリップ部225が反時計方向に回転すると、舌片233は傾斜歯255に沿って従動する。しかし、グリップ部を時計方向に回転させようとする力がグリップ部に加えられると、舌片233は傾斜歯の係合面、つまり垂直面に押し付けられ、グリップ部が動くことを妨げる。舌片233の通過を妨げる歯の面は、舌片がその方向に動くことを妨げる限り、任意の形状とすることができることを理解されたい。このようにして、ラッチ部材233がギヤリング250と係合する限り、防犯装置を物品の周りで締め付けることができる。
【0039】
図5を参照すると、防犯装置の断面図が示され、ここで防犯装置はロック解除状態にある。すなわち、ケーブルを巻き戻して、ドラム270から引き出すことができ、それによって上記防犯装置10から物品を開封することが可能になる。防犯装置をロック解除状態に配置するためには、防犯装置を磁力にさらす必要がある。この磁力は、いわゆる脱着器に配置された永久磁石によって防犯装置10に印加される。これは、脱着器を防犯装置の上面の方向に、すなわちグリップ部225が設けられた操作部材220の表面に持っていくことによっておこなわれ、それにより磁石が操作部材220に接し、ラッチ部材の舌片233、238が磁石の磁力によって強制的に係合状態(図4参照)からロック解除状態(図5参照)にされる。ラッチ部材の舌片233は、防犯装置10の操作部材220に対してロック解除状態になり、それによって防犯装置10の回転自在部を緩む方向に、すなわち図示した実施形態では時計方向に、回転させることが可能になる。これは、脱着器または物品のいずれかを回転させることによって、物品の周りのケーブルが緩められることを意味する。
【0040】
操作部材220は、そのグリップ部を防犯ボックス用の既存の脱着器の凹部に嵌合させるように形成することが好ましい。操作部材220は、脱着器の磁力がラッチ部材230、235を水平配置にすることができるように、充分に薄くしなければならないことに留意されたい。発明の実施形態では、突出縁233、238をわずかに垂直方向に移動させ、必ずしもラッチ要素を完全な水平配置にするのではなく、舌片233、238をギヤリング250の歯255から取り外すのに充分なだけ水平配置にする。ラッチ部材は、既存の脱着器と嵌合するために、ラッチ部材の中心間距離で径方向に40mm〜60mmの距離だけ離して配置する必要がある。
【0041】
図6および7は、取り付けられた状態のラッチ部材230、235を図3の線A−Aおよび線C−Cに沿って示す。ラッチ部材は、万能脱着器を用いて防犯装置10をロック解除するために、ギヤリング250の直径のみならず、既存の脱着器における磁石の配置にも対応する径方向距離に、相互に対向して配置される。ラッチ部材の数は増やすことができることを理解されたい。
【0042】
図8は、図1には含まれないケーシング600に関して、図1に示したものとは異なる防犯装置10の分解図を開示する。防犯装置10では、ケーブル100、150を巻き取るために、ラチェット部材のコアが回転自在である。しかし、ギヤリング250およびケーシング600は回転できず、ケーブルを締め付けたり緩めることが可能になる。ケーシング600には、ラチェット部材200の様々な部分を受け入れるように構成された複数の溝620が設けられる。ラチェット200の回転自在の第2主要部はこれらの溝の上に置かれ、ギヤリング250はケーシングに固定され、内部巻取り機構がケーブル100、150をラチェット部材200のハウジング部270内に巻き取ることが可能になる。
【0043】
ギヤリング250は、ギヤリング250に配置された凹部および上記凹部にスナップロックするためにケーシング600に配置された対応する突出ピンのような、スナップロックを使用することによって、ケーシング600に固定することができる。ケーシング600は、一実施形態では、例えば超音波溶接などを用いて一体に溶接することができる。ギヤリング250もまた、例えばそれを外側リング210に接着することによって該リングに固定することができ、ケーシング600は、それを外側リング210に接着することによって該リングに固定することもできる。しかし、別の実施形態では、ギヤリング250はケーシング600に接着され、外側リング210もケーシング600に接着または超音波溶接される。また、ケーシング600はオプショナルであり、ケーシングの無い実施形態では、ギヤリング250は、ドラム270が剥き出しのまま、外側リング210に固定されることも理解されたい。
【0044】
次に、本発明の実施形態のアセンブリについて、図1、2、および8を参照しながら説明する。アラームプレート260はドラム270内に埋設される。ケーブルは、最初にケーシング600の開口610を介して挿入され、次いでドラム270のスロット277を介してさらに挿入される。ヘッド付き端部は最初に円形部分を介して垂直方向に挿入され、次いでステーブル275内へ摺動される。ケーブル100、150の端部は次いで、ドラムのステーブル275内に固定される。ケーブルは、ステーブル275を介してアラームプレートと接触するか、またはアラームプレート260に単に当接配置することができる。次いでバッテリが、例えばスナップフィットロックまたはねじ止め構成によってドラム270に固定されたバッテリ極板280に配置することによって、ドラム270に設けられる。アラームプレート260を有するドラム270、およびケーブル100、150、ならびにバッテリ極板290から成るアセンブリは、ケーシング600内に埋設され、閉鎖板290をバッテリ極板280にねじ止めすることによって、ケーシング内に固定される。次いで、ギヤリング250は、スナップフィットロックなどによってケーシング600に固定される。
【0045】
ラッチ部材230、235は、例えばねじ止めまたはスナップフィットなどによって操作部材220に固定され、巻取り部240も操作手段に固定される。ラッチ部材230、235および巻取り部240が配置された操作部材220は次いで、巻取り部の溝をドラム270のステーブル275と一致させるように位置合わせされたアラームプレートの上で、ドラム内に埋設される。一致が行なわれると、対応する要素275、250を係合するために、巻取り部240およびラッチ部材230、235を適切な位置に収容するように、外側リング210が防犯装置10に供給される。次いで外側リングは、好ましくはそれらを一体に溶接することによって、ケーシング600に固定される。ここで、防犯装置がそのアラームを鳴らした場合、その電源装置、例えばバッテリを取り外すことによってのみ、音を止めることができることに留意されたい。したがって、防犯装置は、閉鎖板290のねじを外すことによってのみ、音を止めることができる。
【0046】
支持部材300は、ケーブルの突出部130、180をハウジング部330に配置されたステーブル335などにスナップフィットさせ、ハウジング部330にEASタグを配置することによって組み立てられる。ハウジング部は、例えばスナップロックフィット、固定要素、接着、溶接などによってハウジング部に固定される、頂部320によって閉鎖される。ハウジング部330および頂部は、本発明の実施形態では、ケーブル100、150と嵌合するように配置された凹部を周面に有する。図示した支持部材300は六角形であるが、円形、矩形などのような任意の適切な形にすることができる。また、EASタグをラチェット部材200内に収容することができることも理解されたい。
【0047】
最後に、ケーブル100、150がハウジング部330に固定され、ハウジング部が頂部320によって密閉されるときに、ゴム状層310を頂部320に接着するか、溶接するなどによって、ゴム状層310が頂部320に設けられる。これは別個のプロセスによっておこなうこともでき、それによって頂部320およびゴム状層310はハウジング部に固定される前に組み立てられる。
【0048】
図9および図10は、防犯装置をロック解除するためのツール、いわゆる脱着器を概略的に示す。図9で、脱着器90は、プラスチックフレームのような支持構造91を含むように図示される。支持構造は、図示する好適な実施形態では細長いインターフェースを画定する。しかし、それは、たとえ図面にそのように図示されていても、支持構造自体を細長くする必要があることを意味するものではない。インターフェースは、操作部220のグリップ部225を受容するための中央凹部92を含む。さらに、1対の強力な永久磁石93および94がそれぞれ、凹部92の両側に固定される。
【0049】
図10に、本発明の実施形態に係る防犯装置10に適用された脱着器90の略図を開示する。凹部92は、好ましくは1つの向きまたは2つの正反対の向きにだけ、グリップ部225を収容するように形作られる。脱着器90をグリップ部225上に配置することによって、磁石93、94は自動的にラッチ部材230、235上に位置合わせされ、それによって該ラッチ部材は磁石によって吸着され、ギヤリング250から取り外される。防犯装置の第2主要部はそれによって第1主要部から回転自在になり、ケーブル100および150を防犯装置10から引き出すことができる。そして、脱着器90は操作部220に沿って回転し、磁力によって、おそらく凹部92のグリップ部225のとまり嵌めによっても、取り付けられた状態に保たれる。異なる角度や異なる径方向距離に配置された3つ以上のラッチ部材及び磁石を備えることにより、防犯のさらなる向上を実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…防犯装置
100…保持部材
150…保持部材
200…ラチェット部材
220…操作手段
230…ラッチ部材
235…ラッチ部材
250…ギヤリング
270…ドラム
300…支持部材
310…ゴム状材料の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル(100、150)を含み、可調整ループを形成する保持部材と、
前記ケーブル(100、150)に接続され、前記ループを狭める動作及び前記ループの拡張を抑える動作が可能なラチェット部材(200)とを備え、
前記ラチェット部材(200)が、
第1平面内に延在すると共に前記第1平面から隆起する鋸歯状プロファイルを有するギヤリング(250)を備える第1主要部と、
前記第1主要部に対して回転自在であり、前記第1平面側に付勢され前記ギヤリング(250)と係合するラッチ部材(230、235)と、前記ケーブル(100、150)を巻き上げるドラム(270)とを含む第2主要部と
を含む、防犯装置(10)。
【請求項2】
前記第2主要部が、前記第1平面と平行な第2平面内において離間配置された2つのラッチ部材(230、235)を備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項3】
前記第2主要部が、前記ギヤリング(250)の上側で径方向に離間配置された2つのラッチ部材(230、235)を備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項4】
前記第2主要部が、前記第1平面側に付勢されて前記ギヤリング(250)と係合すると共に前記ギヤリング(250)から個別に取り外し可能な2つのラッチ部材(230、235)を備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項5】
前記ラッチ部材(230、235)が、前記第1平面と垂直な方向における前記ラッチ部材(230、235)の磁気吸着によって、前記ギヤリング(250)から取り外せるように構成されている、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項6】
前記第2主要部に接続されており、前記ギヤリング(250)に対面し前記ラッチ部材(230、235)を担持する内面と、前記ギヤリング(250)から前記ラッチ部材を取り外すツール用のインターフェースを担持する外面とを有する操作手段(220)を備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項7】
前記操作手段(220)が、離間する2つのラッチ部材(230、235)と、前記ツールの補助グリップ部に接続するための前記ラッチ部材(230、235)の間の中央グリップ部(225)とを担持する、請求項6に記載の防犯装置。
【請求項8】
前記ラッチ部材(230、235)が、そのままの状態で前記ギヤリング(250)に係合する先端部(233、238)を有する磁気吸着可能な板ばねを備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項9】
前記ラッチ部材(230、235)が、前記第1平面と平行な第2平面内に配置された磁気吸着可能な金属シートを備え、前記シートには、前記第2平面から前記第1平面に向かって曲げられた板ばねが形成されるようにして略U字状スロットが形成されている、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項10】
前記板ばねが、前記鋸歯状プロファイルが環状に延在しているのに従うようにして前記第2平面内において湾曲している、請求項9に記載の防犯装置。
【請求項11】
前記保持部材が、2本のケーブル(100、150)と、前記ラチェット部材(200)から離れて前記2本のケーブルに接続される支持部材(300)とを含む、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項12】
前記ケーブル(100、150)が、共に前記ドラム(270)に接続された2つの端部の間に延びている、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項13】
前記保持部材が、前記ラチェット部材(200)から離間して前記ケーブルに接続され、前記防犯装置(10)に保持された際に物品と対向する面にゴム状材料の層(310)が設けられた支持部材(300)を含む、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項14】
前記防犯装置(10)に保持された際に物品と対向する前記ラチェット部材(200)の面に、ゴム状材料の層が設けられている、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項15】
前記ラチェット部材(200)が、前記ケーブルに接続され、前記ケーブルが切断されたときにアラームを鳴らすように構成されたアラーム回路(260)を備える、請求項1に記載の防犯装置。
【請求項16】
電子物品監視(EAS)タグを備える、請求項1に記載の防犯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−541614(P2009−541614A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515849(P2009−515849)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056001
【国際公開番号】WO2007/147798
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(507253358)エム ダブリュー セキュリティ アクチボラゲット (3)
【Fターム(参考)】