説明

帯電ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】長寿命化、高速化、高画質化に適した帯電部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る帯電ローラは、像担持体に当接して該像担持体の表面を帯電する帯電ローラであって、芯金と、該芯金の上に設けられた弾性層と、該弾性層の上に設けられた表面層とを有しており、該表面層は、バインダーと該バインダーに分散している樹脂粒子及び黒鉛粒子とを含有しており、且つ、該樹脂粒子由来の凸部と、該黒鉛粒子由来の凸部とを表面に有しており、該黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、該黒鉛粒子由来の凸部に隣接する該樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面とのなす距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部が、該黒鉛粒子由来の凸部の総数の80%以上であり、該距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部を形成する該黒鉛粒子の平均凹凸度が1.03以上1.08以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電ローラ、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。詳しくは、電圧を印加して像坦持体である電子写真感光体表面を所定の電位に帯電処理するための帯電ローラ、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の一次帯電の方法として、接触帯電方法が実用化されている。これは、低オゾン、低電力を目的としており、中でも特に帯電ローラとして導電性ローラを用いたローラ帯電方式が、帯電の安定性という点で好ましく、広く用いられている。
【0003】
ローラ帯電方式では、導電性の弾性ローラを被帯電体である像坦持体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって放電により像坦持体への帯電を行う。具体的には、放電開始電圧(OPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、約550V)に、必要とされる感光体表面電位Vdを足した直流電圧(DC電圧)を印加することで帯電を行うDC帯電方式がある。さらに、環境・耐久変動による電位の変動を改善する目的として、AC帯電方式がある。AC帯電方式では、必要とされる感光体表面電位Vdに相当するDC電圧に放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流成分(AC成分)を重畳した電圧を接触帯電部材に印加することで帯電を行う。
【0004】
DC帯電方式は、AC帯電方式に比較して一般的に電源のコストは安いという利点がある。しかしながら、DC帯電方式はAC帯電方式に比べ、放電領域が狭い、及びAC放電電流の均し効果が無いために、帯電部材の微小な抵抗値ムラに起因したスジ状の帯電不良が発生しやすいといった課題があった。
【0005】
そこで、DC帯電方式に用いる帯電部材において、帯電部材の表面層に有機微粒子を含有させ、凹凸を形成させることによって、スジ状の帯電不良を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、帯電部材の表面層に有機微粒子を含有させ、帯電部材の表面に凹凸を形成させる方法では、凹部に外添剤等が堆積しやすく、それに伴い凹部の帯電能力が低下する場合があった。
【0007】
また、近年、市場の高画質化の要求により、トナーが小粒径化し、トナーの微粒子の割合も増加してきている。更に、トナーの高機能化に伴い、様々な外添剤も使用されている。それゆえに帯電部材の汚染の度合いも増加する傾向にある。また、長寿命化、カラー化の要求により、帯電部材及び感光体を含むユニットの目標耐久寿命値が伸びており、それにより付着物の堆積量が大きくなり、以前の耐久枚数では発生しなかった画像不良も耐久寿命後半で顕在化してくる場合があった。特に低湿環境において、帯電部材凹部の汚れの堆積による影響を受け、帯電能力が低下しやすかった。そのため、凹凸形成によるスジ状の帯電不良改善の効果が衰え、画像品質が低下する場合があった。
【0008】
この課題に対し、粒子を導電化することにより良化傾向があることがわかってきた。特許文献2には導電性ローラの表面層中に導電性の粒子を添加することが開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2には、帯電部材として、帯電性能を長期に亘って維持するといった長寿命化については何ら開示がなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2003−316112号公報
【特許文献2】特開2007−127777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、長寿命化、高速化、高画質化に適した帯電部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記帯電部材を用いた電子写真装置、帯電装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る帯電ローラは、像担持体に当接して該像担持体の表面を帯電する帯電ローラであって、
芯金と、該芯金の上に設けられた弾性層と、該弾性層の上に設けられた表面層とを有しており、
該表面層は、バインダーと該バインダーに分散している樹脂粒子及び黒鉛粒子とを含有しており、且つ、該樹脂粒子由来の凸部と、該黒鉛粒子由来の凸部とを表面に有しており、
該黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、該黒鉛粒子由来の凸部に隣接する該樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面とのなす距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部が、該黒鉛粒子由来の凸部の総数の80%以上であり、
該距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部を形成する該黒鉛粒子の平均凹凸度が1.03以上1.08以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプロセスカートリッジは、上記の帯電ローラ及び像坦持体が、当接して一体化され、且つ、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
更に本発明に係る電子写真装置は、上記の帯電ローラと、該帯電ローラに当接している像担持体とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
帯電ローラの感光体へのニップ内において樹脂粒子に由来する凸部により、黒鉛粒子に由来する凸部の感光体への圧接を規制する。且つ黒鉛粒子に由来する凸部により感光体への放電点を増やすことで、結果的に放電機会が増し、汚れによる放電不良起因の画像の発生を抑制し、過帯電によるポチ画像の発生を防止し、長期に亘って安定した帯電均一性を維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、帯電ローラ表面に凸部を形成するための粗し剤として、導電性を有する粒子を表面層に含有させることが、前述の課題に対して有効であることとが分かった。
【0016】
本発明者等は、鋭意検討した結果、帯電ローラ表面に凸部を形成するための粗し粒子として特定の凹凸度を有する黒鉛粒子を用いることによって、放電不良に起因する不良画像の発生を抑制し、長期に亘って良好な帯電特性を維持できることが分かった。
【0017】
一般に、放電現象は放電電極が尖った形状を有している方が放電が起こり易く、黒鉛粒子も真球状ではなく、表面にある程度の凹凸を有している方が、黒鉛粒子からの放電が起こりやすいと考えられる。黒鉛粒子の表面に凹凸があることで、放電点が増え、黒鉛粒子由来の凸部から積極的に放電が起こり、感光体に対する放電機会が増加するため、耐久により帯電ローラ表面に汚れが付着しても、放電が弱まることがない。よって、長期に亘って均一な帯電が得られるものと推測している。
【0018】
更に、本発明では、樹脂粒子を添加し、樹脂粒子に由来する凸部を形成させる。更に、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数の80%以上とする。これにより、感光体への黒鉛粒子由来の凸部の直接の接触を規制し、黒鉛粒子由来の凸部の変形や、汚れの付着を低減させ、過帯電によるポチ画像の発生を防止する。
【0019】
(黒鉛粒子)
本発明において、黒鉛粒子とは、「SP2共有結合によって層構造をなす炭素原子を含有する物質であり、かつラマンスペクトルにおける1580cm-1のピーク(黒鉛に由来する)における半値幅(=Δν1580と表記。)が80cm-1以下のものを指す。Δν1580
は、黒鉛化度や、SP2軌道の黒鉛面の広がりを示しており、それに起因して黒鉛粒子の導電性の指標ともなる。Δν1580が小さいほど、黒鉛化度は高く、黒鉛面の広がりは広く
、導電性は高くなる。Δν1580のさらに好ましい範囲は60cm-1以下である。この範囲
であれば、本発明の効果を十分に発現することができる。
【0020】
このような黒鉛粒子としては、バルクメソフェーズピッチを黒鉛処理して得られる粒子、メソカーボンマイクロビーズを黒鉛処理して得られる粒子等を挙げることができる。
【0021】
以下に、本発明における黒鉛粒子の製造方法の概略を記す。
【0022】
<バルクメソフェーズピッチを黒鉛処理して得られる粒子>
バルクメソフェーズピッチは、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得ることができる。また重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼン又はトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得ることもできる。このバルクメソフェーズピッチはキノリン可溶分が95wt%以上であることが好ましい。95wt%未満のものを用いると、粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなる場合がある。このキノリン可溶分を適宜コントロールすることにより、得られる黒鉛粒子の凹凸度をコントロールすることができる。
【0023】
メソフェーズピッチを用いて黒鉛粒子を得る方法としては、まず、前記のバルクメソフェーズピッチを微粉砕して、これを空気中200℃以上350℃以下で熱処理して、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛処理時の溶融、融着が防止される。また、微粉砕するときの条件をコントロールすることで、得られる黒鉛粒子の凹凸度を制御できる。次にこのように酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて、1000℃以上3500℃以下で熱処理することにより所望の黒鉛粒子が得られる。
【0024】
<メソカーボンマイクロビーズを黒鉛処理して得られる粒子>
メソカーボンマイクロビーズを得る方法としては、石炭系重質油又は石油系重質油を300℃以上500℃以下の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズを生成させる。その後、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理をしてメソカーボンマイクロビーズを分離後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、さらに乾燥する方法等が挙げられる。
【0025】
このメソカーボンマイクロビーズを用いて黒鉛粒子を得る方法としては、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズを破壊させない程度の力で機械的に一次分散させておくことが、黒鉛処理後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズは、不活性雰囲気下において200℃以上1500℃以下の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の力で炭化物を機械的に分散させることが、黒鉛処理後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において1000℃以上3500℃以下で二次加熱処理することで所望の黒鉛粒子が得られる。
【0026】
また、上記のバルクメソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズをコア粒子とし、このコア粒子の表面に、さらに別のバルクメソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズをメカノケミカル処理等によって被覆する。この被覆した粒子を不活性雰囲気下で焼成することによって所望の凹凸度の黒鉛粒子を得ることができる。
【0027】
<ラマンスペクトルの測定>
表面層に含有されている黒鉛粒子については、表面層から採取した黒鉛粒子を測定試料とする。また、黒鉛粒子粉体については、そのまま測定試料とする。
【0028】
Δν1580の測定方法としては下記の条件で行う。
【0029】
〔条件〕
測定機 ラマン分光器(商品名「LabRAM HR」、HORIBA JOBIN YVON社製)
レーザー He−Neレーザー(ピーク波長632nm)
フィルター D0.3
ホール 1000μm
スリット 100μm
中心スペクトル 1500cm-1
測定時間 1秒×16回
グレーティング 1800
対物レンズ ×50
【0030】
<黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、これに隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面とのなす距離について>
【0031】
帯電ローラの表面を、レーザー顕微鏡(商品名:LSM5 PASCAL;カール・ツアイス(Carl Zeiss)社製)を用いて、視野0.5mm×0.5mmで観察する。励起させるレーザーの波長を変化させ、励起光のスペクトルを調べることにより、視野内の凸部が樹脂粒子由来であるか、黒鉛粒子由来であるかを同定する。レーザーを視野内のX−Y平面でスキャンさせることにより、2次元の画像データを得る。更に、焦点をZ方向に移動させ、上記のスキャンを繰り返すことにより、3次元の画像データを得る。
【0032】
次に、視野内の任意の黒鉛粒子由来の凸部に着目し、その黒鉛粒子由来の凸部に隣接している樹脂粒子由来の凸部を3つ定める。ここで「隣接している」とは、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、各々の樹脂粒子由来の凸部の頂点との距離の和が最小となっているような状態を指す。このようにして定めた樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、着目した黒鉛粒子由来の凸部との距離を、前述した3次元の画像データより計算する。このような作業を視野内の10個の黒鉛粒子について行う。そして、同様の測定を帯電ローラの長手方向10点について行い、得られた計100個の、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面との距離の分布について調べる。
【0033】
そして、黒鉛粒子由来の凸部の頂点が、樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面より下方にある場合を、「距離」が「正」であるとし、上方にある場合を、「距離」が「負」であると定義する。
【0034】
ここで、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、該黒鉛粒子由来の凸部に隣接する該樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面とのなす距離は、正であれば本発明の効果を十分に発揮できる。この正である距離は、好ましくは+3μm以上、+20μm以下であり、より好ましくは+10μm以上、+20μm以下である。この範囲であれば、黒鉛粒子由来の凸部からの十分な放電を生じさせつつ、同時に樹脂粒子由来の凸部が黒鉛粒子由来の凸部の感光体への接触を十分に抑制でき、過放電によるポチ画像の発生を防止できる。
【0035】
本発明では、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(以下、「頻度」ともいう)を80%以上とする。この「頻度」を80%以上とするということは、帯電ローラの実用領域のほぼ全てにおいて帯電均一性を維持できるという技術的意義を有する。
【0036】
<黒鉛粒子の平均凹凸度について>
上記方法により、「距離」が「正」である黒鉛粒子由来の凸部について、その凸部の頂点から、Z方向と平行かつローラ長手方向に平行な方向に鋭利な刃物(カミソリ刃、カッターナイフなど)又はミクロトーム等で切断する。切断された表面層の断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡により観察し、黒鉛粒子の断面画像データを得る。得られた画像データを画像解析ソフト(商品名:Image-Pro PLUS、プラネトロン株式会社製)を用い、黒鉛粒子の実際の断面周囲長(A)と包絡周囲長(B)との比{(A)/(B)}を求め、これを凹凸度とする(図1参照)。ここで、包絡周囲長とは、黒鉛粒子断面の凸部を結んだときの周上の長さのことを指す。このような作業を、「距離」が「正」である別の黒鉛粒子由来の凸部について行い、得られた複数の凹凸度データの算術平均を平均凹凸度とする。
【0037】
この平均凹凸度の範囲は1.03以上1.08以下とする。1.03未満では表面の凹凸が少な過ぎ、放電が起こりにくくなる。特に低温低湿環境での耐久後半で放電が弱くなり、放電不良に起因する不良画像が発生しやすくなる傾向にある。1.08を超えると、放電の点からは好ましい方向ではあるものの、表面の凹凸が多過ぎ、感光体に当接したときの当接圧により表面層、弾性層が変形し、黒鉛粒子がその脆さから、壊れてしまう場合がある。黒鉛粒子が壊れてしまうと、形状や粒径を維持できなくなり、本来の機能を発揮できなくなる場合がある。
【0038】
また、本発明の黒鉛粒子の平均粒径としては、0.2μm以上のものを例として挙げることができる。好ましい範囲としては0.5〜30μm、また、帯電ローラ表面層に凸部を形成させるという点から1〜20μmの範囲にあることがより好ましい。0.2μm未満では、表面層に凸部を形成しにくくなり、また、粒径が大きすぎる場合には、凸部が大きすぎることによる過放電を起こしてしまう場合がある。
【0039】
既に、表面層に含有された状態での黒鉛粒子の平均粒径の測定方法は、上述の黒鉛粒子の凹凸度の測定の際に得られた黒鉛粒子の断面画像データから、黒鉛粒子の投影面積を求める。この面積と等しい面積を持つ円の直径を黒鉛粒子の粒径とする。同様に別の黒鉛粒子の断面投影面積から、この面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、これらの円の直径の算術平均を平均粒径とする。
【0040】
<黒鉛粒子の粒径測定>
表面層に含有する前の黒鉛粒子の粉体での粒径は、レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(コールター社製)を用いて測定する。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としては純水を使用する。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行する。次に純水10ml中に界面活性剤3〜4滴を加え、更に測定試料を5〜25mg加える。試料を懸濁した水溶液について超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行うことにより、試料液を得る。前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、個数分布から算術した個数平均粒径を求める。
【0041】
また、黒鉛粒子の体積抵抗率としては103Ω・cm以下10-3Ω・cm以上であることが好ましく、更には、102Ω・cm以下10-1Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0042】
(樹脂粒子)
樹脂粒子の作製方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。樹脂粒子の作製方法の一例として、次の方法が挙げられる。まず、熱可塑性樹脂あるいはゴムからなる組成物を、分散媒とともに加圧混練機で加熱しながら混練し、分散媒中に組成物を微粒子サイズに分散していく。次に、得られた混練物を冷却し粉砕した後、組成物の貧溶媒でかつ分散媒の良溶媒である展開溶媒と、前記混練物とを混合して懸濁液とする。この懸濁液から目的とする樹脂粒子を、遠心分離、濾過、又はこれらの方法を組み合わせて分離する。また、樹脂粒子の他の作製方法としては、樹脂組成物の機械粉砕や冷凍粉砕にて作製する方法でもよい。また、懸濁重合法や分散重合法等によって製造される樹脂粒子は粒径や形状が揃っており好ましい。
【0043】
樹脂粒子の材料としては、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、これらの共重合体や変性物、誘導体等の樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム等のゴム、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどが例として挙げられる。
【0044】
樹脂粒子の粒径としては、1〜30μmの範囲が好ましい。1μm未満では凸部を形成しにくくなり、30μmを超えると、帯電ローラ表面が粗れ過ぎて帯電が不均一になったり、帯電ローラ表面の凹凸の凹部へのトナーや外添剤の堆積量が増えたりしてしまう場合がある。また、樹脂粒子の平均粒子径が1μm未満であると、黒鉛粒子由来の凸部の感光体への当接を十分に抑制できない場合がある。
【0045】
本発明において、樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンター・マルチサイザーII型(コールター社製)を用いて測定する。
【0046】
まず、電解液は1%NaCl水溶液を調製した。この電解水溶液100〜150ml中にアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5mlと樹脂粒子を2〜20mg加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行った。その後、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーとして、100μmアパーチャーを用いて測定した。樹脂粒子の体積と個数を測定して、体積分布、個数分布とを算出した。そして、体積基準の粒子分布の50%の粒子径をD50とし、この値を樹脂粒子の平均粒子径とした。
【0047】
なお、本発明では、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、黒鉛粒子由来の凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数の80%以上とする。そのためには、樹脂粒子の粒径が黒鉛粒子の粒径よりも大きいことが好ましい。
【0048】
(本発明の帯電ローラの構成)
本発明の帯電ローラは少なくとも芯金と、該芯金の上に設けられた弾性層と、該弾性層の上に設けられた表面層とを有する構成をなすものである。
【0049】
図2〜図4に本発明の帯電ローラの一例としての概略断面図を示す。図2は芯金1の上に弾性層2を設け、更にその上に表面層3を設けた帯電ローラである。図3は弾性層2と表面層1の間に、中間層21を有する帯電ローラである。また、図4は弾性層2と表面層1の間に中間層21及び22を有する帯電ローラである。
【0050】
<芯金>
本発明の帯電ローラに用いられる芯金は、導電性を有し、感光体の表面を所定の静電量に帯電できるように、その上に積層される弾性層を密着支持する機能を有しているものであればいずれでもよい。材質としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属やその合金(ステンレス、ジュラルミン、真鍮、青銅等)を挙げることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施してもよい。また、カーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料でもよい。剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、形状としては円柱形状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
【0051】
<弾性層>
本発明では、上記芯金の外周に弾性層を成形する。弾性層は、感光体とのニップを確実なものとする。弾性層は弾性体からなっている。弾性体は、通常、導電剤と高分子弾性体とを混合して成形される。
【0052】
高分子弾性体としては以下のものが例として挙げられる。エピクロルヒドリンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、あるいはSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマー。
【0053】
高分子弾性体としては、特にエピクロルヒドリンゴムが好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムは、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができる。また、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることができるので、高分子弾性体として好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムとしては以下のものが例として挙げられる。エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0054】
高分子弾性体は、エピクロルヒドリンゴム単独でもよいが、エピクロルヒドリンゴムを主成分として、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有してもよい。その他の一般的なゴムとしては、以下のものが挙げられる。EPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。また、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)の如き熱可塑性エラストマーを含有してもよい。上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、高分子弾性体全量に対し1〜50質量%であるのが好ましい。
【0055】
導電剤としては、イオン導電剤または電子導電剤を用いることができる。弾性層の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが好ましい。イオン導電剤が高分子弾性体の中に均一に分散し、弾性体の電気抵抗を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの電圧印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
【0056】
イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されるものではない。イオン導電剤としては以下のものが例として挙げられる。過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムの如き無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートの如き陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインの如き両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムの如き第四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。これらを単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0057】
電子導電剤としては、電子導電性を示す電子導電剤であれば特に限定されるものではない。電子導電剤としては以下のものが例として挙げられる。アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀の如き金属系の粉体や繊維;異種金属をドープした酸化スズ、酸化亜鉛の如き金属酸化物;ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボンブラック、の如きカーボンブラック。
【0058】
ファーネスブラックとしては以下のものが例として挙げられる。SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HS。サーマルブラックとしては、FT、MTがある。
【0059】
また、これら導電剤を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
この他にも弾性体には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤又は離型剤の配合剤を加えることもできる。
【0061】
弾性体の成形方法としては、上記の弾性体の原料を密閉型ミキサーで混合して、例えば、押し出し成形、射出成形、又は圧縮成形の如き公知の方法により成型するのが好ましい。また、弾性層は、芯金の上に直接弾性体を成形して作製してもよいし、予めチューブ形状に成形した弾性体を芯金上に被覆形成させてもよい。なお、弾性層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0062】
また、芯金と弾性層との間には、接着層を設けても良い。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤(例えば上述したイオン導電剤や電子導電剤)から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられ、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
【0064】
<クラウン形状>
本発明における帯電ローラは、クラウン形状を有していることが好ましい。帯電ローラがクラウン形状を有することにより、被帯電部材である感光体へのニップを帯電ローラの長手方向全域に亘ってより均一にすることができる。
【0065】
本発明における帯電ローラの好ましい形状として、長手方向中央部が最も太く、長手方向両端部に向かって細くなる形状、いわゆるクラウン形状が挙げられる。帯電ローラを、その芯金の両端部で押圧された状態で感光体と当接させた場合、押圧が長手方向中央部において小さく、長手方向両端部にいくほど大きくなる。このため、ストレート形状の帯電ローラにおいては、中央部に対応する画像と両端部に対応する画像との間に濃度ムラが生じることがある。クラウン形状は、このような濃度ムラを有効に抑制することができる。このクラウン量は、中央部の外径と中央部から90mm離れた位置の外径との差が、30μm以上200μm以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、端部と中央部を好ましく当接させることができる。より具体的には、30μm以上であれば、端部が当接して中央部が当接しないという状態を免れ易く、200μm以下であれば、逆に、中央部は当接するが端部が当接しないという状態を免れ易い。
【0066】
クラウン形状の形成の方法としては、弾性層の形成時に、クラウン形状の金型内で形成しても良いし、弾性層を研磨する際にクラウン形状としてもよい。
【0067】
<表面層>
本発明の表面層は、少なくともバインダーと、該バインダー中に分散している樹脂粒子と、黒鉛粒子とを含み、樹脂粒子由来の凸部と、黒鉛粒子由来の凸部とを表面に有していることを特徴とする。
【0068】
表面層中の黒鉛粒子の含有量は、本発明の帯電部材に良好な帯電能力を保持させるために、バインダー100質量部に対して1質量部以上120質量部以下とすることが好ましい。
【0069】
また、表面層中の樹脂粒子の含有量は、上記と同様の理由から、バインダー100質量部に対して1質量部以上120質量部以下とすることが好ましい。
【0070】
表面層のバインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。本発明の表面層のバインダーとしては、公知のバインダー樹脂を使用できる。中でも、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂又はブチラール樹脂等がより好ましい。
【0071】
合成ゴムの具体的な材料を以下に挙げる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム又はエピクロルヒドリンゴム等。
【0072】
これらは1種を使用しても、2種以上を併用してもよく、また共重合体でもよい。
【0073】
<その他配合剤>
表面層には、本発明の効果を損なわない範囲で他の材料を含有させることができる。他の材料としては、導電剤、充填剤、離型剤等が挙げられる。
【0074】
導電剤としては、上述の弾性層の導電剤として例示したイオン導電剤、電子導電剤等を挙げることができる。
【0075】
導電剤は、その表面を表面処理してもよい。表面処理剤としては、例えば、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物を使用できる。これらは一種で使用しても、二種以上を用いても良い。好ましくは、アルコキシシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤である。
【0076】
導電剤として、カーボンブラックを使用する際は、金属酸化物微粒子にカーボンブラックを被覆した複合導電性微粒子として使用することが好ましい。カーボンブラックは、ストラクチャーを形成するため、バインダーに対して、均一に存在させることが困難な傾向にある。カーボンブラックを金属酸化物に被覆した複合導電性微粒子として使用すると、導電剤をバインダーへ均一に存在させることができ、体積抵抗率の制御がより容易になる。
【0077】
この目的で使用する金属酸化物微粒子としては、具体的には、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0078】
金属酸化物系微粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理としては、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系又はジルコネート系の各種カップリング剤、オリゴマー又は高分子化合物が使用可能である。これらは1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0079】
離型剤としては、低表面エネルギーを有するもの、摺動性を有するものなどを利用できる。表面層に離型剤を含有させることで、帯電ローラと感光体との間での相対移動が滑らかになり、スティックスリップのような不規則な移動状態の発生が低減される。その結果、帯電ローラの表面の不規則な摩耗の発生、異音の発生等が抑制される。離型剤が液体の場合は、表面層を形成する際にレベリング剤としても作用する。
【0080】
具体的には、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、一酸化鉛等の金属酸化物である。また、オイル状或いは固体状(離型性樹脂或いはその粉末、ポリマーの一部に離形性を有する部位を導入したもの)の珪素やフッ素を分子内に含む化合物、ワックス、高級脂肪酸、その塩やエステル、その他誘導体も使用できる。
【0081】
本発明において弾性層あるいは表面層に添加する導電剤は、黒鉛粒子や樹脂粒子とは異なり、粒径が0.2μm未満のものをいう。この範囲であれば、弾性層、表面層の体積抵抗率を制御しやすい。
【0082】
本発明の表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。
【0083】
なお、表面層の厚みは、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0084】
表面層は、更に表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、UVや電子線を用いた表面加工処理や、化合物等を表面に付着及び/又は含浸させる表面改質処理が挙げられる。
【0085】
<表面層の形成方法>
本発明の表面層の形成方法としては、黒鉛粒子と樹脂粒子とをバインダーに分散させた塗料を弾性層上に塗工することにより設ける方法が好ましい。この方法であれば、表面層に黒鉛粒子由来の凸部と樹脂粒子由来の凸部を形成させやすい。また、表面層中での黒鉛粒子の凹凸度のコントロール、黒鉛粒子由来の凸部の高さと樹脂粒子由来の凸部の高さとの関係をコントロールしやすい。
【0086】
<帯電ローラの表面粗さ>
表面層の表面粗さとしては、好ましくはJIS B0601−2001による十点平均粗さRzjis及び表面の凹凸平均間隔Smは下記の範囲にあることが好ましい。
2μm≦Rzjis≦20μm
15μm≦Sm≦150μm
【0087】
上記範囲の表面粗さを有する帯電ローラとするため、弾性層の表面粗さ、表面層の膜厚、黒鉛粒子及び樹脂粒子の平均粒子径と添加量を調整する。帯電ローラの表面粗さRzjis、凹凸平均間隔Smをこの範囲とすることにより、帯電ローラと電子写真感光体との接触状態をより安定にすることができる。これにより、感光体を均一に帯電することが容易になるため、より好ましい。
【0088】
<帯電ローラの硬度>
本発明の帯電ローラの適切な硬さは、マイクロ硬度30°以上80°以下が好ましく、より好ましくは45°以上65°以下である。この範囲であれば、帯電ローラが感光体に対して長期に当接状態が継続した場合にも、当接跡が画像に出たりすることがなく、好ましい。なお、「マイクロ硬度」とは、微小領域ゴム硬さ計(商品名「アスカー マイクロゴム硬度計 MD−1型」、高分子計器株式会社製)を用いて測定した、ゴム部材の硬さである。なお、本発明では、23℃/55%RH(NN)環境に12時間以上放置した帯電ローラに対して、該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0089】
<帯電ローラの電気抵抗>
本発明の帯電ローラは、感光体への帯電を確実なものとするため、通常、電気抵抗が、23℃、50%RH環境中において、1×102Ω以上、1×1010Ω以下であることがより好ましい。
【0090】
一例として、図5に帯電ローラの電気抵抗の測定法を示す。芯金1の両端を、荷重のかかった軸受け33a、33bにより感光体と同じ曲率の円柱形金属32に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラ5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの抵抗を計算する。ここで、荷重は各4.9Nとし、金属製円柱は直径φ30mm、金属製円柱の回転は周速45mm/secである。
【0091】
本発明における黒鉛粒子、導電剤等の粉体の体積抵抗率は23℃/50%RH環境下で、抵抗測定装置「Loresta-GP」(商品名、三菱化学株式会社製)を用い、試料に10Vの電圧を印加したときの測定値とする。なお、測定対象試料としては、10.1MPa(102kgf/cm2)の圧力をかけて圧縮したものを用いた。
【0092】
(電子写真装置)
本発明に従う画像形成装置の概略構成を図6に示す。
【0093】
画像形成装置は、感光体、感光体を帯電する帯電装置、露光を行う潜像形成装置、トナー像に現像する現像装置、転写材に転写する転写装置、感光体上の転写トナーを回収するクリーニング装置、トナー像を定着する定着装置などから構成される。
【0094】
感光体4は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。感光体は矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
【0095】
帯電装置は、感光体に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ5を有する。帯電ローラ5は、感光体回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源から所定の直流電圧を印加することにより、感光体を所定の電位に帯電する。感光体に静電潜像を形成する潜像形成装置11は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された感光体に画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。
【0096】
現像装置は、感光体に近接または接触して配設される接触式の現像ローラ6を有する。感光体帯電極性と同極性に静電的処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。
【0097】
転写装置は、接触式の転写ローラ8を有する。感光体からトナー像を普通紙などの転写
材(転写材は、搬送部材を有する給紙システムにより搬送される。)に転写する。
【0098】
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材10、回収容器を有し、転写した後、感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。
【0099】
ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を取り除くことも可能である。
【0100】
定着装置は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を定着し、機外に排出する。
【0101】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の帯電ローラが少なくとも像担持体と一体化されたものである。具体的には、像坦持体である感光体、本発明の帯電ローラを含む帯電装置、現像装置及びクリーニング装置などを一体化し、電子写真装置本体に着脱可能に設計されたプロセスカートリッジ(図7)を用いることもできる。
【実施例】
【0102】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0103】
<黒鉛粒子の製造例>
<黒鉛粒子1〜3の製造例>
コールタールピッチから溶剤分別により、β−レジンを抽出し、これを水素添加により重量化処理を行った。続いて、トルエンにより溶剤可溶分を除去することで、バルクメソフェーズピッチを得た。このバルクメソフェーズピッチを機械粉砕した後、空気中で、昇温速度300℃/hで270℃まで昇温し、酸化処理を施した。これを平均粒径20μm、3μm、1μm及び1μm未満の微粉に分級した。このうち、平均粒径20μm、3μm、1μmの粒子をコア粒子とする。
【0104】
分級の際に生じた、粒径が1μm未満の微粉を被覆粒子とする。
【0105】
平均粒径20μmのコア粒子を100質量部と粒径が1μm未満のバルクメソフェーズピッチ25質量部とを均一に混合した後、ライカイ機(自動乳鉢、石川工場製)中で乾式混合処理(メカノケミカル処理)を行った。これにより、コアとなるバルクメソフェーズピッチ粒子表面を更に粒径の小さいバルクメソフェーズピッチで均一に被覆したピッチ被覆球状粒子を得た。
【0106】
次に、このピッチ被覆球状粒子を窒素雰囲気下で200℃/hrの昇温速度で1000℃まで昇温して1時間保持して焼成し、黒鉛粒子1を得た。
【0107】
同様にして、3μmのコア粒子及び1μmのコア粒子にピッチ被覆した粒子を上記の条件と同様に焼成し、黒鉛粒子2及び3を得た。得られた黒鉛粒子のラマンスペクトルの1580cm-1でのピーク強度の半値幅を表1に示す。
【0108】
<黒鉛粒子4〜6の製造例>
石炭系重質油を熱処理し、生成した粗メソカーボンマイクロビーズを遠心分離し、ベンゼンで洗浄精製して乾燥した。続いて、アトマイザーミルにて機械的に分散を行い、メソカーボンマイクロビーズを得た。このメソカーボンマイクロビーズを窒素雰囲気下にて、昇温速度600℃/hで1200℃まで昇温させ、続いて、アトマイザーミルにて2次分散を行った。この際、平均粒径が、6μm程度になるよう調整した。このメソカーボンマイクロビーズ100質量部に製造例1〜3で使用したものと同様の粒径が1μm未満のバルクメソフェーズピッチ25質量部を混合し、ライカイ機(自動乳鉢、石川工場製)を用いて、乾式混合処理(メカノケミカル処理)を行った。これにより、コアとなるバルクメソフェーズピッチ粒子表面を更に粒径の小さいバルクメソフェーズピッチで均一に被覆したピッチ被覆球状粒子を得た。
【0109】
得られたピッチ被覆球状粒子を窒素雰囲気下にて、昇温速度1400℃/hで2800℃まで昇温し、2800℃で15分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、平均粒径20μm、6μm及び1μmの黒鉛粒子4、5及び6を得た。得られた黒鉛粒子のラマンスペクトルの1580cm-1でのピーク強度の半値幅を表1に示す。
【0110】
<黒鉛粒子7、8の製造例>
コールタールピッチから溶剤分別により、β−レジンを抽出し、これを水素添加により重量化処理を行った。続いて、トルエンにより溶剤可溶分を除去することで、バルクメソフェーズピッチを得た。このバルクメソフェーズピッチを機械粉砕した後、空気中で、昇温速度300℃/hで280℃まで昇温し、酸化処理を施した。粉砕の際には、平均粒径が3μm程度になるよう調整した。続いて、窒素雰囲気下にて、2500℃まで昇温し、2500℃で15分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、それぞれの平均粒径が20μm及び1μmの黒鉛粒子7及び8を得た。得られた黒鉛粒子のラマンスペクトルの1580cm-1でのピーク強度の半値幅を表1に示す。
【0111】
<黒鉛粒子9、10の製造例>
石炭系重質油を400℃で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズを生成させ、その後、遠心分離によりメソカーボンマイクロビーズを分離後、ベンゼンで洗浄し、さらに乾燥させた。
【0112】
その後、このメソカーボンマイクロビーズをアトマイザーミルにて機械的に1次分散を行い、窒素雰囲気下にて、1200℃で1次熱処理し、更に、アトマイザーミルにて2次分散を行った。得られた分散物を窒素雰囲気下にて、昇温速度1000℃/hで2800℃まで昇温し、2800℃で15分間2次加熱処理を施した。このようにして得られたメソカーボンマイクロビーズをハイブリタイザー(奈良機械製)を用いて球形化処理を行うことによって、ほぼ真球状のメソカーボンマイクロビーズを作製した。更に分級処理を行い、それぞれの平均粒径が5μm及び1μmの黒鉛粒子9及び10を得た。得られた黒鉛粒子のラマンスペクトルの1580cm-1でのピーク強度の半値幅を表1に示す。
【0113】
<黒鉛粒子11、12の製造例>
コールタールピッチから溶剤分別により、β−レジンを抽出し、これを水素添加により重量化処理を行い、バルクメソフェーズピッチを得た。続いて、溶剤可溶分は除去せずに、このバルクメソフェーズピッチを機械粉砕した後、空気中で、昇温速度300℃/hで270℃まで昇温し、酸化処理を施した。粉砕の際には、平均粒径が3μm程度になるよう調整した。続いて、窒素雰囲気下にて、昇温速度1500℃/hで3000℃まで昇温し、3000℃で15分間加熱処理を施した。更に、分級処理を行い、それぞれの平均粒径が6μm及び1μmの黒鉛粒子11及び12を得た。得られた黒鉛粒子のラマンスペクトルの1580cm-1でのピーク強度の半値幅を表1に示す。
【0114】
<本実施例で使用した樹脂粒子>
樹脂粒子1:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製、テクポリマーMBX−20(商品名)、平均粒子径20μm)
樹脂粒子2:架橋ウレタン樹脂粒子(根上工業株式会社製、アートパールC−400(商品名)、平均粒子径14μm)
樹脂粒子3:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製、テクポリマーMBX−12(商品名)、平均粒子径12μm)
樹脂粒子4:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(綜研化学株式会社製、ケミスノーMX−1000(商品名)、平均粒子径10μm)
樹脂粒子5:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、平均粒子径3μm
樹脂粒子6:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、平均粒子径25μm
樹脂粒子7:シリコーン樹脂粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、トスパール120A(商品名)、平均粒子径2μm)
樹脂粒子8:架橋ポリメチルメタクリレート樹脂粒子(積水化成品工業株式会社製、テクポリマーMBX−5(商品名)、平均粒子径5μm)
【0115】
[複合導電性微粒子の作製]
シリカ粒子(平均粒子径12.5nm、体積抵抗率1.4×1012Ωcm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。この時の攪拌速度は22rpmであった。
【0116】
その中に、カーボンブラック粒子(平均粒子径28nm、体積抵抗率1.2×102Ωcm)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加した。その後、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。このようにしてメチルハイドロジェンポリシロキサンを被覆シリカ粒子の表面にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、複合導電性微粒子を得た。この時の攪拌速度は22rpmであった。なお、得られた複合導電性微粒子は、平均粒子径が15nmであり、体積抵抗率は2.3×102Ωcmであった。
【0117】
[表面処理酸化チタン微粒子の作製]
針状ルチル型酸化チタン微粒子(平均粒子径15nm、縦:横=3:1、体積抵抗率5.2×1010Ωcm)1000g、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン100g及び溶媒としてトルエン3000gを配合してスラリーを調製した。
【0118】
このスラリーを、攪拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。
【0119】
湿式解砕処理して得たスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30〜60℃、減圧度:約100Torr)によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理した微粒子を室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理酸化チタン微粒子を得た。
【0120】
[弾性層付きの芯金の作製]
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製丸棒に、熱硬化性接着剤「メタロックU−20」(商品名、株式会社東洋化学研究所製)を塗布し、乾燥したものを芯金として使用した。
【0121】
エピクロルヒドリンゴム100質量部に対して、下記成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
・炭酸カルシウム 60質量部
・脂肪族ポリエステル系可塑剤 8質量部
・ステアリン酸亜鉛 1質量部
・2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)(老化防止剤) 0.5質量部
・酸化亜鉛 2質量部
・四級アンモニウム塩 2質量部
・カーボンブラック(平均粒子径100nm、体積抵抗率0.1Ωcm) 5質量部
【0122】
これに、加硫剤として硫黄0.8質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィト(DM)1質量部とテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を、20℃に冷却した二本ロール機にて15間混練して、弾性層用コンパウンドを得た。
【0123】
上記芯金とともに、弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型した。次いで、電気オーブンにて160℃で1時間、加硫及び接着剤の硬化を行った。その後ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを232mmとした。更に、ローラ中央部における外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、芯金上に弾性層を形成して、弾性層付きの芯金を得た。
【0124】
<帯電ローラ1の作製>
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が16質量%となるように調整した。
【0125】
この溶液625質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調製した。
・複合導電性微粒子 45質量部
・表面処理酸化チタン微粒子 30質量部
・変性ジメチルシリコーンオイル 0.08質量部
・ブロックイソシアネート混合物 80.14質量部
【0126】
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物である。イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
【0127】
また、変性ジメチルシリコーンオイルは「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)を使用した。
【0128】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gを、メディアとしての平均粒子径0.8mmのガラスビーズ200gとともに入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて48時間分散した(これを1次分散とする)。
【0129】
次いで、樹脂粒子1を16.4g(アクリルポリオール固形分100質量部に対して60質量部相当量)添加した後、1時間分散した(これを2次分散とする)。最後に、黒鉛粒子2を2.05g(アクリルポリオール固形分100質量部に対して7.5質量部相当量)添加し、5分間分散した(これを3次分散とする)。その後、濾過によりガラスビーズを除去して粘度が10mPa・sの表面層用塗布液を得た。
【0130】
上記により得られた弾性層付きの芯金に、表面層用塗布液を1回ディッピング塗布した。常温で30分間以上風乾後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、弾性層上に厚さが15μmの表面層を形成した。このようにして、芯金上に弾性層及び表面層を有する帯電ローラ1を得た。なお、ディッピング塗布の浸漬時間は9秒とし、ディッピング塗布引き上げ速度については、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。
【0131】
得られた帯電ローラ1のクラウン量(中央部と中央部から90mm離れた位置の外径の差)は115μmであった。
【0132】
得られた帯電ローラ1について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(頻度)は95%であった。また、この正である距離の平均値は17μmであった。
【0133】
また、帯電ローラ1の表面層中の黒鉛粒子の平均凹凸度、Rzjis、Smを前述の測定方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0134】
<帯電ローラ2の作製>
ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF、商品名:カイナー7201、アルケマ製)100質量部に樹脂濃度が15%になるようにアセトンを添加、樹脂を溶解させた。この樹脂溶液に導電性酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製、パゼットCK(商品名))100質量部と分散メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ100質量部を添加して、ペイントシェーカー分散機を用いて6時間分散した。
【0135】
次いで、樹脂粒子1を60質量部添加した後、1時間分散した。その後、更に黒鉛粒子2を7.5質量部添加した後、5分間分散した。
【0136】
分散後、ガラスビーズを濾過により分離して表面層形成用塗料を得た。
【0137】
上記により得られた塗料を実施例1と同様にしてディッピング塗工し、帯電ローラ2を得た。
【0138】
得られた帯電ローラ2について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(頻度)は92%であった。また、この正である距離の平均値は17μmであった。
【0139】
また、帯電ローラ2の表面層中の黒鉛粒子の平均凹凸度、Rzjis、Smを前述の測定方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0140】
<帯電ローラ3の作製>
N−メトキシメチル化ナイロン100質量部に樹脂濃度が15%になるようにエタノールを添加、樹脂を溶解させた。この樹脂溶液に、カーボンブラック(三菱カラー用カーボンブラック#52(商品名))15質量部を添加し、これに分散メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ100質量部を添加し、ペイントシェーカー分散機を用いて50時間分散した。
【0141】
次いで、樹脂粒子1を60質量部添加した後、1時間分散した。その後、更に黒鉛粒子2を7.5質量部添加した後、5分間分散した。
【0142】
分散後、ガラスビーズを濾過により分離して表面層形成用塗料を得た。
【0143】
上記により得られた塗料を実施例1と同様にしてディッピング塗工し、帯電ローラ3を得た。
【0144】
得られた帯電ローラ3について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(頻度)は90%であった。また、この正である距離の平均値は17μmであった。
【0145】
また、帯電ローラ3の表面層中の黒鉛粒子の平均凹凸度、Rzjis、Smを前述の測定方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0146】
<帯電ローラ4の作製>
HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を含有したアクリル樹脂(ガラス転移温度:18℃)をメチルエチルケトン(MEK)溶媒に溶解した。これにアルコール変性シリコーンオイル「FZ−3711」(東レダウコーニング)を2官能イソシアネートによってプレポリマー化したものをアクリル樹脂100質量部に対して60質量部添加した。更に導電剤としてカーボンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック粉状品(商品名))を35質量部添加し、これに分散メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ100質量部を添加し、ペイントシェーカー分散機を用いて50時間分散した。
【0147】
次いで、樹脂粒子1を60質量部添加した後、1時間分散した。その後、更に黒鉛粒子2を7.5質量部添加した後、5分間分散した。
【0148】
分散後、ガラスビーズを濾過により分離して表面層形成用塗料を得た。
【0149】
上記により得られた塗料を実施例1と同様にしてディッピング塗工し、帯電ローラ4を得た。
【0150】
得られた帯電ローラ4について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(頻度)は94%であった。また、この正である距離の平均値は17μmであった。
【0151】
また、帯電ローラ4の表面層中の黒鉛粒子の平均凹凸度、Rzjis、Smを前述の測定方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0152】
<帯電ローラ5〜24の作製>
黒鉛粒子及び樹脂粒子の種類及び添加量を表1に示すものに替えた以外は、帯電ローラ1と同様にして帯電ローラ5〜24を作製した。なお、帯電ローラ23については、黒鉛粒子を添加せず、樹脂粒子のみを添加した。
【0153】
得られた帯電ローラ5〜22について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離が正である黒鉛粒子由来の凸部が、黒鉛粒子由来の凸部の総数に占める割合(頻度)は80%以上であった。頻度の測定値を表2に示す。帯電ローラ23は黒鉛粒子を添加していないので、頻度は0%、帯電ローラ24の頻度は10%であった。
【0154】
また、帯電ローラ5〜22について、黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、この凸部に隣接する樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面と、のなす距離の平均値を表2に示す。帯電ローラ23は黒鉛粒子を添加していないので、距離は測定できず、帯電ローラ24の距離は負の値となり−3μmであった。
【0155】
得られた帯電ローラ5〜22及び24の表面層中の黒鉛粒子の平均凹凸度、Rzjis、Smを前述の測定方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0156】
(実施例1)
[帯電ローラ1の画像評価]
<汚れ付着促進試験>
作製した帯電ローラを電子写真装置(LBP5400、キヤノン株式会社製)のブラックカートリッジに装着し、図6に示す構成を有する電子写真装置として、電子写真装置(LBP5400、キヤノン株式会社製)に組み込んだ。そして、23℃/50%RH環境(NN環境)下で、単色ベタ画像を50枚印刷後、ベタ白画像を1枚印刷した。これを6回繰り返して行い、単色ベタ画像を合計で300枚相当印刷して、予め表面に強制的にトナーや外添剤による汚れを付着させた帯電ローラを得た。なお、帯電ローラには直流電圧のみ−1100Vを印加した。
【0157】
上記により汚れ付着促進試験を実施した帯電ローラを、また別のブラックカートリッジに装着し、耐久試験を行った。
【0158】
<耐久画像評価(帯電均一性(帯電横スジ))>
電子写真装置(LBP5400、キヤノン株式会社製)を改造することにより、プロセススピードを200mm/sに設定し、高速化を図った。この電子写真装置を用い、1枚画像を出力して電子写真装置の回転を停止させた後、また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(印字率1%で間欠耐久)、5000枚の画像出力耐久試験を行った。
【0159】
上記の試験を、23℃/50%RH(NN環境)、15℃/10%RH(LL環境)の2環境でそれぞれ行った。耐久試験中、1000枚目、3000枚目及び5000枚目の時点でハーフトーン画像を出力し、その画像から帯電横スジ画像の発生状態を評価した。上記の発生状態の評価は、以下に示す評価基準にて行った。
【0160】
<帯電横スジ画像の評価基準>
◎:未発生
○:軽微な発生のみで、実用上は問題無し
△:画像の一部に発生が認められ、画像の品質が低下
×:画像全体に発生し、著しく画像の品質が低下
【0161】
評価結果を表1に示す。帯電横スジ画像は、耐久評価中は未発生であり、良好な画像を維持することができた。
【0162】
また、5000枚印字時点での過帯電に起因するハーフトーン画像におけるポチ画像の発生について評価した。
【0163】
<過帯電に起因するポチ画像>
◎:過帯電に起因するポチ画像の発生なし
○:ハーフトーン画像にわずかなポチ状の画像欠陥がある
×:ポチ状の画像欠陥が目立つ
【0164】
この結果、過帯電に起因するポチ画像の発生はなく、良好な画像を維持することができた。
【0165】
(実施例2〜18)
帯電ローラ2〜18を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0166】
(比較例1〜6)
帯電ローラ19〜24を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0167】
<評価結果>
実施例2〜4では、表面層のバインダーを問わず、本発明の構成を採ることで、帯電横スジ画像は、耐久評価中は未発生であり、良好な画像を維持することが確認できた。また5000枚印字後の過帯電に起因するポチ画像の発生はなく、良好な画像を維持することが確認できた。
【0168】
実施例5では、実施例1に比べ、黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、帯電均一性にとって不利な条件であるLL環境下の5000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0169】
実施例6では、実施例5よりも更に黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、LL環境下の3000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0170】
実施例7では、帯電横スジ画像は、耐久評価中は未発生であり、良好な画像を維持することが確認できた。しかし、凸部の高さの差が10μm未満で小さかったためか、LL環境下でハーフトーン画像にわずかなポチ状の画像欠陥が認められた。但し、実使用上は全く問題のないものであった。
【0171】
実施例8では、実施例7に比べ、黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、帯電均一性にとって不利な条件であるLL環境下の5000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0172】
実施例9では、実施例8よりも更に黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、LL環境下の3000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0173】
実施例10では、帯電横スジ画像は、耐久評価中は未発生であり、良好な画像を維持することが確認できた。ただ、凸部の高さの差が3μm未満で小さかったためか、NN,LL両環境下においてハーフトーン画像にわずかなポチ状の画像欠陥はあったものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0174】
実施例11では、実施例10に比べ、黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、帯電均一性にとって不利な条件であるLL環境下の5000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0175】
実施例12では、実施例11よりも更に黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、LL環境下の3000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0176】
実施例13では、Rzjisが20μmを超えており、帯電ローラ表面が特に汚れやすいLL環境下において1000枚印字時点で汚れに起因すると思われる軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0177】
実施例14では、実施例13に比べ、黒鉛粒子の凹凸度が若干小さく、かつRzjisが20μmを超えており、NN環境下の5000枚印字時点で汚れに起因すると思われる軽微な横スジが発生したが、実使用上は全く問題のないものであった。
【0178】
実施例15では、実施例14よりも更に黒鉛粒子の凹凸度が若干小さく、かつRzjisが20μmを超えており、NN環境下の3000枚印字時点で汚れに起因すると思われる軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0179】
実施例16では、Rzjisが2μm未満であり、帯電均一性にとって不利な条件であるLL環境下の1000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0180】
実施例17では、実施例16に比べ、黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、かつRzjisが2μm未満であり、帯電横スジに対しては有利であるNN環境下の5000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0181】
実施例18では、実施例17よりも更に黒鉛粒子の凹凸度が若干小さくなっており、かつRzjisが2μm未満であり、帯電横スジに対しては有利であるNN環境下の3000枚印字時点で軽微な横スジが発生したものの、実使用上は全く問題のないものであった。
【0182】
比較例1、2では、黒鉛粒子の凹凸度が1.03未満であり、LL環境下の3000枚印字時点で画像の一部に横スジの発生が認められ、5000枚印字時点で横スジが発生し画像品質は劣るものであった。
【0183】
比較例3、4では、黒鉛粒子の凹凸度が1.08を超えており、NN環境下において5000枚印字時点で、また、LL環境下の3000枚印字時点で画像の一部に横スジの発生が認められた。さらに、LL環境下の5000枚印字時点で横スジが発生し、画像品質は劣るものであった。
【0184】
比較例5では、黒鉛粒子を含有せず、NN環境下において3000枚印字時点で、また、LL環境下の3000枚印字時点で画像の一部に横スジの発生が認められた。さらに、LL環境下の5000枚印字時点で横スジが発生し、画像品質は劣るものであった。
【0185】
比較例6では、凸部の高さが負となり、5000枚印字時点で過帯電によるポチ状の画像欠陥が画像全域に発生し、大変劣っていた。また、帯電横スジが、NN環境下で3000枚、LL環境下で1000枚印字時点で見られ、画像品質は劣るものであった。
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の黒鉛粒子断面の凹凸度の説明図である。
【図2】本発明の帯電ローラの断面図である。
【図3】本発明の別の帯電ローラの断面図である。
【図4】本発明のまた別の帯電ローラの断面図である。
【図5】本発明の帯電ローラの電気抵抗値測定に用いる機器における測定時の概略図である。
【図6】本発明の電子写真装置の一つの実施の形態の断面を表す概略図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの一つの実施の形態の断面を表す概略図である。
【符号の説明】
【0189】
1 芯金
2 弾性層
3 表面層
4 電子写真感光体
5 帯電ローラ
6 現像ローラ
7 印刷メディア
8 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニングブレード
11 露光
12 帯電前露光装置
13 弾性規制ブレード
14 トナー供給ローラ
18、19、20 電源
21 中間層
22 第2の中間層
30 トナーシール
32 円柱形金属
33 軸受け
34 安定化電源
35 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に当接して該像担持体の表面を帯電する帯電ローラであって、
芯金と、該芯金の上に設けられた弾性層と、該弾性層の上に設けられた表面層とを有しており、
該表面層は、バインダーと該バインダーに分散している樹脂粒子及び黒鉛粒子とを含有しており、且つ、該樹脂粒子由来の凸部と、該黒鉛粒子由来の凸部とを表面に有しており、
該黒鉛粒子由来の凸部の頂点と、該黒鉛粒子由来の凸部に隣接する該樹脂粒子由来の凸部の頂点を3つ含む平面とのなす距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部が、該黒鉛粒子由来の凸部の総数の80%以上であり、
該距離が正である該黒鉛粒子由来の凸部を形成する該黒鉛粒子の平均凹凸度が1.03以上1.08以下であることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記帯電ローラの表面の十点平均粗さ(Rzjis)及び表面の凹凸平均間隔(Sm)が下記の範囲にある請求項1に記載の帯電ローラ。
2μm≦Rzjis≦20μm
15μm≦Sm≦150μm
【請求項3】
前記表面層は、少なくとも前記樹脂粒子と前記黒鉛粒子とを含有する塗料を前記弾性層に塗工することにより形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯電ローラ及び像坦持体が、当接して一体化され、且つ、電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電ローラと、該帯電ローラに当接している像担持体とを有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−107796(P2010−107796A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280810(P2008−280810)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】