説明

帯電ローラ

【課題】軽量柔軟な二重構造のローラ型でありながら長期に亘って均一な帯電性が得られ且つハーフトーン画像を印刷しても白点も黒点も発生しない帯電ローラを提供する。
【解決手段】帯電ローラ16は中心の芯金53上に支持された第1の導電性弾性層54と第1の導電性弾性層54上に設けられた第2の導電性弾性層55とを備え、第1の導電性弾性層54はニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり、第2の導電性弾性層55はエピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなると共に表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を有する。第1の導電性弾性層54の平均外径D1(mm)と第2の導電性弾性層55の平均内径D2(mm)の間には「−0.30≦D2−D1≦−0.15」の関係がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便軽量な二重構造のローラ型でありながらハーフトーン画像に起こり易い白点や黒点の発生要因となる放電を防止する帯電ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体に形成したトナー像を用紙に転写して定着することにより用紙に文字や画像を形成する電子写真式のプリンタが知られている。通常、上記の感光体は、ドラム型であり、その周面上に露光ヘッドにより静電潜像を形成され、その静電潜像を現像器によってトナー像化され、そのトナー像を転写器によって用紙上に転写される。
【0003】
上記の静電潜像の形成には、これに先立って帯電装置による初期化帯電が必ず行われる。この初期化帯電では、旧来は放電型の非接触帯電器やブラシ型の接触帯電器が用いられていたが、放電型は周囲の環境へ悪影響が及ぶこと、ブラシ型は均一な帯電が実現されにくいことでそれぞれ問題があり、現在ではほとんどローラ型の接触帯電器すなわち帯電ローラが用いられている。
【0004】
この帯電ローラを用いる方式では、ローラは、通常、軸金(芯金)に外嵌する導電性の厚いゴム層から成るゴムローラ型であるが、これでは高価であるので、ローラを安価に構成するために軸金に外嵌する導電性発泡体ローラの上に導電性のチューブを被せ、双方を両端部の非画像形成領域で接着剤により接着して構成した軽量で二重構造の帯電ローラを用いる方式が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
一般に、帯電ローラに用いられる上記の導電性発泡体としては、ポリウレタン、シリコーンゴム、ニトリルゴム製などの導電性発泡体が用いられてきた。ただし、帯電ローラには、感光体ドラムへの非汚染性や、自身の導電性などの性能が要求されるため、導電性発泡体からなる弾性層の表面に、各種のコーティング層、表面処理層、又は被覆チューブ等による二重構造が採用されている。
【0005】
また、上記の軽量二重構造の帯電ローラでは、帯電ローラの両端部を感光体ドラム側に付勢して帯電性を強化する場合、中央部よりも両端部に圧力がかかって中央部と両端部で帯電性にムラが生じることを解消するために、端部から画像形成領域まで所定範囲入り込んだ所まで接着剤を塗布して端部の電気抵抗性を高める方式が知られている。(例えば、特許文献2参照。)
また、これらの二重構造の形式の中には、放電音が小さく且つ帯電性に優れた帯電ローラとして、芯金上に、第1の導電性弾性層としてニトリル系ゴムからなる導電性発泡層を形成し、その上に、第2の導電性弾性層としてエピクロルヒドリン系ゴムからなる被覆層を形成した帯電ローラが提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開平11−125956号公報(段落[0031]〜[0033]、図5)
【特許文献2】特開2001−22251号公報(段落[0054]〜[0058]、図5)
【特許文献3】特開2005−292600号公報([要約]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、上記のようなトナーを用いる電子写真式のプリンタは、当初の頃はA4判の用紙を横にした場合の印刷速度が13枚/秒程度であったものが種々の技術面の改良により29枚/秒の印刷速度が普通となり、当初の倍以上の印刷速度に高速化されてきている。
【0007】
ところが、このように印刷速度が高速化されると、厚いゴムの一層構造のゴムローラ型では何らの問題も生じないが、上述した特許文献1〜3のような導電性発泡体ローラと導電性チューブとの軽量二重構造のものでは、両端部のみの接着であるため、長期の使用で表層部の導電性チューブに捩れや皺が生じて均一な帯電性が得られなくなるという問題が発生する。
【0008】
また、そればかりでなく、特許文献1〜3に開示されている帯電ローラを試作して実験してみると、ハーフトーン画像を印刷すると白点や黒点が発生する、という問題があることが判明した。
【0009】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、軽量柔軟な二重構造のローラ型でありながら長期に亘って均一な帯電性が得られ且つハーフトーン画像を印刷しても白点も黒点も発生しない帯電ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の帯電ローラは、中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と、この第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラにおいて、上記第1の導電性弾性層は、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり、上記第2の導電性弾性層は、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなるとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を有し、上記第1の導電性弾性層の平均外径をD1(mm)とし、上記第2の導電性弾性層の平均内径をD2(mm)として、「−0.30≦D2−D1≦−0.15」であるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二重構造の帯電ローラの第1の導電性弾性層の外径を第2の導電性弾性層の内径よりも0.15〜0.30mm大きくして両端を接着し、第1の導電性弾性層と第2の導電性弾性層が単に位置ずれしないというだけでなく外径と内径の当接面全体が強固に密着するように構成するので、長期の使用でも表層部の導電性チューブに捩れや皺が発生せず、したがって、長期に亘って均一な帯電性が得られ且つハーフトーン画像を印刷しても白点も黒点も発生しない接触型帯電装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、一実施の形態における帯電ローラを備えた画像形成装置の内部構成を示す側断面図であり、例としてタンデム型のカラー画像形成装置を示している。
【0013】
同図に示すカラー画像形成装置1は、例えばデスクトップ型のパソコン用ラックに載置可能な程度の大きさの小型のカラー画像形成装置であり、本体基部2の前面(図の右方)に開閉給紙トレー3を備え、下部に用紙カセット4を着脱自在に備えている。用紙カセット4には多枚数の用紙Pが載置・収容されている。
【0014】
また上蓋5は、本体基部2の後部上面と共に排紙トレー6を形成しており、そこには上部排紙口7から排出される画像形成済みの用紙が積載される。本体基部2の上面には上蓋5の前方側方に、液晶表示装置、電源スイッチ、複数のデータ入力キー等からなる操作パネル9が配設されている。
【0015】
このカラー画像形成装置1の内部には、略中央に、用紙搬送ベルト(以下、単にベルトという)11が前後に偏平なループ状に配置されている。用紙搬送ベルト11は、その両端部を駆動ローラ12と従動ローラ13に保持されて、図の矢印Aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0016】
ベルト11の上循環部には、4個の感光体ドラム14(14a、14b、14c、14d)が用紙搬送方向(図の右から左方向)に多段式に並設されている。そして、各感光体ドラム14を夫々取り囲むようにして(以下、代表的に感光体ドラム14dの周囲装置についてのみ符号を付して示す)、クリーナ15、帯電ローラ16、書込ヘッド17、現像器18及び転写シート19が配置されている。
【0017】
感光体ドラム14aに対応する現像器18から感光体ドラム14dに対応する現像器18まで、各現像器18には、減法混色の三原色であるM(マゼンタ:赤色染料)、C(シアン:緑味のある青色)及びY(イエロー:黄色)の各色トナーと、文字や画像の黒色部分等の印字に専用されるK(ブラック:黒)トナーが夫々収容されている。
【0018】
上記4個の書込ヘッド17は、支持部材21を介して上蓋5に支持されている。転写シート19は、ベルトユニットに所属する部材として配置されている。また、詳しくは後述するが、上記の感光体ドラム14、クリーナ15、及び帯電ローラ16はドラム副ユニットを構成し、現像器18は内部に諸部材を備えて現像副ユニットを構成している。そして、これらの両副ユニットが合体して画像形成ユニットを構成している。
【0019】
ベルト11は、下循環部の下流側裏面に押接するテンションローラ22によって図の矢印Bで示す下方に常に付勢されて適度の張力を保っている。ベルト11の上循環部の上流側端部には、吸着ローラ23が圧接して、ここに用紙搬入部を形成している。
【0020】
ベルト11より搬送方向上流側には、待機ローラ対24、その下方に給紙案内路25、その下端部に給送ローラ対26が配設される。その給送ローラ対26の下方に、用紙カセット4の給紙端が位置しており、この給紙端上方に給紙コロ27が配設されている。
【0021】
一方、ベルト11の用紙搬送方向下流(図の左方)には、断熱性の匡体内に組み付けられた圧接ローラ、発熱ローラ、分離爪、周面清掃器、オイル塗布ローラ、温度測定器等から成る定着器28が設けられる。
【0022】
定着器28の後方には搬出ローラ対29が配置され、それより上方に用紙排紙路31が形成され、用紙排紙路31の終端は排紙トレー6の後部上方に開口して、そこには排紙ローラ対32が配置されている。
【0023】
また、ベルト11と用紙カセット4の間には適宜の回路基盤を装着した電装部33が配設され、その回路基盤には複数の電子部品からなる制御装置が搭載されている。制御装置は、特には図示しないがコントローラ部とエンジン部からなる。
【0024】
コントローラ部は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(読出し専用メモリ)、EEPROM(再書込み可能な読出し用メモリ)、フレームメモリ、イメージデータ転送回路等からなり、ホストコンピュータ等から入力される印刷データを解析し、印字用データを作成してエンジン部に転送する。
【0025】
エンジン部は、CPUやROM等を備え、入力側にはコントローラ部からのデータや指令信号、不図示の温度センサの出力、用紙検知センサの出力等が入力し、出力側には不図示のモータを駆動するモータドライバ、そのモータの駆動を各部に伝達する駆動系を切り替えるクラッチドライバ、書込みヘッド17を上記印字用データに基づいて駆動する印字ドライバ、帯電ローラ16、転写シート19、後述する現像ローラ等に所定のバイアス電流を供給するバイアス電源ドライバ等が接続されている。
【0026】
エンジン部はコントローラ部からのデータや指令信号、各種のセンサの出力等に基づいて各部を駆動制御する。
図2(a) は、上述の画像形成ユニットのみを取り出して示す外観斜視図であり、同図(b) は、その内部構成を示す側断面図である。尚、同図(a),(b) には図1に示した部分と同一部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0027】
図2(a),(b) に示すように、画像形成ユニット35は、現像副ユニット18とドラム副ユニット36とが一体に組み付けられて構成される。一方のドラム副ユニット36は、図1にも示した感光体ドラム14、クリーナ15、帯電ローラ16を備え、更にドラムカバー37を前後(図2(b) の左右)に移動自在に備え、クリーニング部の内部に廃トナー送出パイプ38を備えている。
【0028】
上蓋5(図2参照)の閉成に伴われて、書込ヘッド17が図2(b) の矢印Cで示すように円弧状の軌跡を描いて降下し、その先端部(露光部)が、ドラムユニット36の匡体上部において感光体ドラム14の軸方向に沿って形成されている長溝孔39(図2(a) 参照)に嵌入して位置決めされる。
【0029】
他方の現像ユニット18は、ドラム副ユニット36を支持する支持部41(41a、41b)と、現像剤(トナー)40を収容する現像ケーシング42と、この現像ケーシング42の開口部から周面の一部を露出させた現像ローラ43とを備え、更に現像ケーシング42の内部には、トナー40に埋没するようにしてトナー撹拌部材44、トナー供給ローラ45、ドクターブレード46、掬いシート47等を備えている。また、上部には、廃トナー受入パイプ48が配設され、この廃トナー受入パイプ48には廃トナーを収容する回収袋49が取り付けられている。
【0030】
この現像副ユニット18の一方の支持部41aには軸受け孔51(図2(a) 参照)が形成され、他方の支持部41bには上から切り欠くように形成された図では定かに見えないが軸受け溝が設けられている。その上開口部近傍に固定レバー52が上下に略90度回動可能に取り付けられている。
【0031】
現像副ユニット18の支持部41aの側面からは、現像ローラ43の支持軸43−1の一方の端部が突出し、軸受け孔51から感光体ドラム14の支持軸14−1の一方の端部が突出している。
【0032】
また支持部41bの図2(a) では見えない側面には、現像ローラ43の支持軸43−1の他端が突出し、上記の軸受け溝からは感光体ドラム14の支持軸14−1の他端が突出している。
【0033】
上記の現像副ユニット18とドラム副ユニット36が一体に組み付けられ図2(a),(b) に示すように画像形成ユニット35として完成したとき、廃トナー送出パイプ38と廃トナー受入パイプ48が、不図示の搬送パイプによって連結される。
【0034】
続いて上記構成のタンデム型カラー画像形成装置1の動作を、上述した図1及び図2(b) を再び参照しながら説明する。先ず、図1に示す装置本体1に電源が投入され、使用する用紙の紙質、枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると印字(印刷)が開始される。
【0035】
給紙コロ27が用紙カセット4に載置収容されている用紙Pを一枚取り出し、給送ローラ対26、給紙案内路25を介して待機ローラ対24へ給送する。待機ローラ対24は回転を一時停止して、その挟持部に用紙Pの先端を当接させて用紙の進行を制止すると共に斜行を矯正し、搬送タイミングを待機する。
【0036】
駆動ローラ12が反時計回り方向に回転し、従動ローラ13が従動して同じく反時計回り方向に回転する。これによりベルト11は、上循環部が4個の感光体ドラム14に当接して全体が反時計回り方向へ循環移動する。
【0037】
これと共に感光体ドラム14を中心に配置された諸装置が印字タイミングに合わせて順次駆動される。感光体ドラム14は時計回り方向に回転し、帯電ローラ16は、感光体ドラム14周面に一様な高マイナス電荷を付与して電位を初期化する。
【0038】
書込ヘッド17は、その感光体ドラム14周面に画像信号に応じて露光を行って電位を減衰させる。これにより、上記初期化による高マイナス電位部と、露光によって減衰した低マイナス電位部からなる静電潜像が、感光体ドラム14周面に形成される。
【0039】
現像ローラ43は、その静電潜像の低電位部に現像ケーシング42のトナー40を転移させて感光体ドラム14周面上にトナー像を形成(反転現像)する。
最上流の感光体ドラム14a周面上のトナー像の先端が、ベルト11との対向部に回転搬送されてくるタイミングで、その対向部に用紙Pの印字開始位置が一致するように待機ローラ対24が回転を開始して用紙Pを用紙搬入部へ給送する。
【0040】
従動ローラ13と吸着ローラ23は、給送された用紙Pをベルト11と共に挟持して搬送する。用紙Pは、ベルト11に吸着され、感光体ドラム14aと転写シート19により形成されている最初の転写部へ搬送される。
【0041】
転写シート19は、不図示の転写バイアス電源から出力される転写電流(又は転写電圧)をベルト11を介して用紙Pに印加する。これにより、感光体ドラム14a上のM(マゼンタ)トナー像が用紙Pに転写される。
【0042】
続いて、感光体ドラム14bと転写シート19により形成されている上流から2番目の転写部においてC(シアン)トナー像が転写され、更に感光体ドラム14cと転写シート19により形成されている上流から3番目の転写部でY(イエロー)トナー像が転写される。
【0043】
更に、感光体ドラム14dと転写シート19により形成されている最下流の転写部でK(ブラック)トナー像が転写されて、4色のトナー像が用紙P上に順次塗り重ねられる。
このようにして4色のトナー像を転写された用紙Pは、ベルト11から分離されて定着器28に搬入される。定着器28は熱と圧力とにより、トナー像を用紙Pに定着させる。この画像定着後、用紙Pは搬出ローラ対29により、用紙排紙路31、及び排紙ローラ対32を介して排紙トレー6上にトナー像を下にして排出される。
【0044】
図3(a) は、上記のように動作する本例のカラー画像形成装置1における帯電ローラ16と感光体ドラム14の配置関係を示す正面図であり、同図(b) は、帯電ローラ16の直径方向の断面図である。
【0045】
同図(a),(b) に示す本例の帯電ローラ16は、中心の芯金53上に支持された第1の導電性弾性層54と、この第1の導電性弾性層54上に設けられた第2の導電性弾性層55とで構成されている。
【0046】
第1の導電性弾性層54は、ニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとで構成されている。また、第2の導電性弾性層55は、エピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとで構成され、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を形成されている。
【0047】
これらの第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55との間には、第1の導電性弾性層54の平均外径をd(mm)とし、第2の導電性弾性層55の平均内径をD(mm)としたとき、「−0.30≦D−d≦−0.15」であるような関係を有している。
【0048】
換言すれば、本例の二重構造の帯電ローラ16は、第1の導電性弾性層54の外径のほうが、第2の導電性弾性層55の内径よりも、0.15〜0.30mm大きく形成されている。
【0049】
この理由を以下に説明する。
先ず、実施例1として、以下の方法で第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55を作成する。
【0050】
先ず、ニトリル量33%の中高ニトリル系ゴム(ムーニー粘度:ML1+4 (100℃):30)を100質量部、亜鉛華を5質量部、ステアリン酸を1質量部、導電性カーボン(トーカブラック#5500:東海カーボン社製)を25質量部、DOP30を質量部、加硫材(硫黄)を1質量部、及び加硫助剤を3.5質量部を用意する。
【0051】
次に、これらに、発泡剤(ADCAセルマイクCAP:三協化成製)、発泡助剤3質量部をそれぞれ添加し、ロールミキサーで混練りして作成したゴム状物質(発泡前の第一の導電層)を、外径6mmの芯金53上に、厚さ1mmで押出しにより予備成形する。
【0052】
この後、電気炉で150℃で1時間加熱して上記発泡前の第1の導電性弾性層を発泡させ、外径D1が8.9mmになるように研磨加工し、発泡した第1の導電性弾性層54を作成する。
【0053】
続いて、エピクロルヒドリンゴム(ECO)を100質量部に、導電性カーボンブラック(トーカブラック#4500:東海カーボン社製)を20質量部、亜鉛華を5質量部、ステアリン酸を2質量部、及び加硫剤を1.5質量部をそれぞれ添加し、ロールミキサーで混練りして、これをインジェクション成形後、170℃×30分で加硫を行い、厚さ0.7mm、内径D2が8.7mmのゴムスリーブを形成する。
【0054】
更に、酢酸エチル100質量部、イソシアネート化合物(MDI)20質量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4質量部、及びアクリルシリコーンポリマー(モデイパーサFS700:日本油脂社製)2質量部を、ボールミルで3時間分散混合して表面処理液を作成する。
【0055】
この表面処理液中に、上記のゴムスリーブを、23℃で60秒間浸漬した後、120℃のオーブンで1時間加熱して、ゴムスリーブに表面処理層を形成して、第2の導電性弾性層55を作成する。
【0056】
このようにして作成した第1の導電性弾性層54に第2の導電性弾性層55を被覆した後、両端部から2mmまで、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55の間にウレタン系のホットメルト接着剤をデイスペンサで塗布して両端部を接着し、帯電ローラ16(実施例1の帯電ローラ16a)を作成した。
【0057】
この帯電ローラ16aにおいて、第1の導電性弾性層54の外径D1と、第2の導電性弾性層55の内径D2との間には、「D2−D1=8.7−8.9=−0.2(mm)」の関係がある。
【0058】
上記の方法で作製した帯電ローラ16aを、市販のカラープリンタ(N5300:カシオ計算機社製)の帯電ローラ部に取り付けて、ハーフトーン画像を印刷して評価したところ、良好な画像が得られた。
【0059】
次に、実施例2として、以下の方法で第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55を作成した。
第1の導電性弾性層54を発泡させた後、外径D1が8.85mmになるように研磨したこと以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ16(実施例2の帯電ローラ16b)を作製した。
【0060】
この帯電ローラ16bにおいて、第1の導電性弾性層54の外径D1と、第2の導電性弾性層55の内径D2との間には、「D2−D1=8.7−8.85=−0.15(mm)」の関係がある。
【0061】
上記の方法で作製した帯電ローラ16bを、市販のカラープリンタ(N5300:カシオ計算機社製)の帯電ローラ部に取り付けて、ハーフトーン画像を印刷して評価したところ、良好な画像が得られた。
【0062】
更に、実施例3として、以下の方法で第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55を作成した。
第1の導電性弾性層54を発泡させた後、外径D1が9.00mmになるように研磨したこと以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ16(実施例3の帯電ローラ16c)を作製した。
【0063】
この帯電ローラ16cにおいて、第1の導電性弾性層54の外径D1と、第2の導電性弾性層55の内径D2との間には、「D2−D1=8.7−9.00=−0.3(mm)」の関係がある。
【0064】
上記の方法で作製した帯電ローラ16cを、市販のカラープリンタ(N5300:カシオ計算機社製)の帯電ローラ部に取り付けて、ハーフトーン画像を印刷して評価したところ、良好な画像が得られた。
【0065】
また、比較例1として、以下の方法で第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55を作成した。
第1の導電性弾性層54を発泡させた後、外径D1が8.80mmになるように研磨したこと以外は、実施例1と同様の方法で帯電ローラ16(比較例1の帯電ローラ16x)を作製した。
【0066】
この帯電ローラ16xにおいて、第1の導電性弾性層54の外径D1と、第2の導電性弾性層55の内径D2との間には、「D2−D1=8.7−8.80=−0.1(mm)」の関係がある。
【0067】
上記の方法で作製した帯電ローラ16xを、市販のカラープリンタ(N5300:カシオ計算機社製)の帯電ローラ部に取り付けて、ハーフトーン画像を印刷して評価したところ、ハーフトーン画像全面に白点と黒点が発生して、ハーフトーン画像としては不適であった。
【0068】
以上を総合すると、実施例1〜実施例3では、帯電ローラ16(16a、16b、16c)の第1の導電性弾性層54の平均外径D1と第2の導電性弾性層55の内径D2との間には「−0.15≦D2−D1≦−0.3」の関係があるように、両層が形成されている。
【0069】
すなわち、第1の導電性弾性層54の外径D1が、第2の導電性弾性層55の内径D2よりも、0.15mm以上太く形成されている。
したがって、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55が、両端でホットメルト接着剤により接着され他の部分では接着されていないにもかかわらず、実質的に第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55が圧着されて全体的に良く密着している。
【0070】
このように第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55が圧着で密着しており、上述した表面処理の作用も加わって、電圧印加時に、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55との間での異常放電が防止される。
【0071】
これにより、帯電ローラ16による感光体ドラム14の初期化帯電において、感光体ドラム14上の帯電ムラがなくなり、結果として白点や黒点が発生しない良好なハーフトーン画像が得られる。
【0072】
尚、第1の導電性弾性層54の外径D1が、第2の導電性弾性層55の内径D2よりも0.4mm以上太いと、第1の導電性弾性層54が第2の導電性弾性層55に挿入し難くなるので実用的でない。
【0073】
また、本例では、帯電ローラ16に直流と交流の重畳電圧を印加している。具体的には上述した第1の導電性弾性層54の電気抵抗を9×10^5Ω以下とし、第2の導電性弾性層55の表面電気抵抗を1×10^5Ω/□と9×10^5Ω/□の範囲とし、全体の製品硬度ASKER−F90°以下として、重畳バイアス電圧DC−600(V)及びAC1650(Vp−p)/1.3KHzを帯電ローラ16に印加している。
【0074】
これにより、例えば、感光体ドラム14からのトナーが帯電ローラ16に付着して、帯電ローラ16の電気抵抗地に約4倍程度の抵抗値ムラが生じても、十分な余裕をもって均一な帯電性を確保することができることが実験の結果判明している。
【0075】
ここで、第1の導電性弾性層54について説明する。
上述したように、帯電ローラ16の芯金53上に設けられた第1の導電性弾性層54は、ニトリル系ゴムと導電性カーボンブラックを含有し、かつ発泡されたニトリル系発泡体からなっている。
【0076】
この構成で、所定の導電性を満たすためには、第1の導電性弾性層54に導電性カーボンブラックを添加する必要があるが、導電性カーボンブラックを添加しすぎると、硬度が高くなり、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55との間の圧着に偏りが生じることになる。
【0077】
一方、低硬度にするために、可塑剤を添加すると、可塑剤が帯電ローラ16の外表面に移行して、当接した感光体ドラム14を汚染する心配がある。
このため、第1の導電性弾性層54のニトリル系発泡ゴムとして、特に中高ニトリル又は高ニトリル系ゴムを用いると、ニトリル系ゴムのガス低透過性のため高発泡とすることができ、高導電性でありかつ低汚染性、低高度の発泡体が実現できる。
【0078】
また、ニトリル系ゴムは発泡時に、ガスの低透過性が必要なため、ニトリル量が31%以上の中高ニトリル、高ニトリル又は極高ニトリル系ゴムであることが望ましい。
また、発泡のし易さの観点から低ムーニーの粘度のもの、例えばムーニー粘度がML1+4(100℃)が40以下のものを用いるのが好ましい。
【0079】
更に、帯電ローラ16としての特性を満たすために、第1の導電性弾性層54の電気抵抗値は、DC−100V印加時(芯金53に−100Vを印加し、帯電ローラ16表面層をアース電極に接触させる)の電気抵抗値で1×10^5Ω以下であることが必要なため、導電性付与剤として導電性カーボンブラックを添加する。例えばニトリル系ゴム100重量部に対して、導電性カーボンブラックを20重量部以上添加すればよい。
【0080】
また、導電性カーボンブラックの種類は特に限定されない。例えば、ケッチェンブラック(ライオン社製)、トーカブラック(東海カーボン社製)などがあげられる。
なお、電気抵抗の測定は、帯電ローラ16をSUS304からなる平面電極に載せ、芯金53と平面電極間に電圧(−100V)を印加して測定する。
【0081】
この測定器としては、ULTRA−HIGH−RESISTANCE−METER−R8340A(アドバンステスト社製)を用いて測定する。
また、ニトリル系ゴム発泡体の発泡倍率は、2〜4倍であることが好ましい。この発泡倍率は、発泡前の第1の導電性弾性層の金型の容積と、発泡前の第1の導電性弾性層の量の割合や、発泡剤の種類、量、加熱条件によって決めることができる。また、発泡体は独立気泡、連通気泡のどちらでもよい。
【0082】
続いて、第2の導電性弾性層55について説明する。
前述したように、第1の導電性弾性層54の上に被着される第2の導電性弾性層55はエピクロルヒドリン系ゴム及び導電性カーポンブラックからなり、かつ、その表面にはイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面層を含んでいる。
【0083】
エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体があげられる。
【0084】
また、表面処理層は、イソシアネートを含む表面処理液を含浸させて形成する。この表面処理液としては、イソシアネート化合物を有機溶剤に溶解させたもの、さらには、これに導電性カーポンプラックを添加したものを用いることができる。
【0085】
また、アクリルフッ素系ポリマーおよびアクリル系シリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種類のポリマーと、導電性付与剤との少なくとも一方をイソシアネート成分とともに含有する表面処理液を用いても良い。
【0086】
ここで、イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート、1,5’−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネー卜(TODI)及び上記の多量体および変性体などをあげることができる。
【0087】
帯電ローラ16の表面に、上記のような表面処理層を設けることにより、感光体ドラム14と第2の導電性弾性層55のエピクロルヒドリン系ゴムとが直接接触しなくなり、これにより、感光体ドラム14上のトナー、トナー添加剤、紙粉等による帯電ローラ16の汚染を防ぐことができる。
【0088】
尚、本例において帯電ローラ16に用いる芯金53、第1の導電性弾性層54、第2の導電性弾性層55の直径については、特に限定されるものではないが、芯金53については、直径5〜8mm、第1の導電性弾性層54は直径8〜14mm、第2の導電性弾性層55は直径10〜16mmである。
【0089】
また、第1の導電性弾性層54と第2の導電性弾性層55とを接着する接着剤としてはホットメルト型ウレタン接着剤をあげることができる。接着剤の接着位置は帯電ローラ16の導電性弾性層の両端から1〜5mm程度であることが好ましい。
【0090】
以上を簡単にまとめると、第1の導電性弾性層の作製では、先ず、円筒形金型に芯金が位置決めされて保持されている。このような円筒形金型の注入口から、発泡前の第1の導電性弾性層となる未発泡、未加硫ゴムを注入して押出成形する。この発泡前の第1の導電性弾性層を加熱発泡させるとともに加硫させる。その発泡後の第1の導電性弾性層を所定の外径になるように研磨切削する。
【0091】
次に、第2の導電性弾性層の作製では、 第2の導電性弾性層となるスリーブ部材を、鏡面研磨された金型を用いて、トランスファー、インジェクション又は押し出し成形により成形する。鏡面研磨された金型を用いるので、スリーブ部材は特に外表面を研磨することもなく、高精度かつ平滑な表面になる。したがって、寸法調整のために外表面を研磨する必要はない。
【0092】
このスリーブ部材と同径の芯金に被覆して表面処理液をスプレーコート、ディップーコートするなどして、表面に表面処理液を塗布し、その後加熱することによりスリーブ部材の外表面に表面処理層を形成する。
【0093】
この第2の導電性弾性層を第1の導電性弾性層上に被覆し、接着剤により第1の導電性弾性層と第2の導電性弾性層の両端部を接着することにより、本発明の帯電ローラを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】一実施の形態における帯電ローラを備えたタンデム型のカラー画像形成装置の内部構成を示す側断面図である。
【図2】(a) は一実施の形態におけるカラー画像形成装置の画像形成ユニットのみを取り出して示す外観斜視図、(b) はその内部構成を示す側断面図である。
【図3】(a) は一実施の形態におけるカラー画像形成装置の帯電ローラと感光体ドラムの配置関係を示す正面図、(b) は帯電ローラの直径方向の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 カラー画像形成装置
2 本体基部
3 開閉給紙トレー
4 用紙カセット
5 上蓋
6 排紙トレー
7 上部排紙口
9 操作パネル
11 用紙搬送ベルト(ベルト)
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
14(14a、14b、14c、14d) 感光体ドラム
14−1 感光体ドラム支持軸
15 クリーナ
16 帯電ローラ
17 書込ヘッド
18 現像器(現像副ユニット)
19 転写シート
21 支持部材
22 テンションローラ
23 吸着ローラ
24 待機ローラ対
25 給紙案内路
26 給送ローラ対
27 給紙コロ
28 定着器
29 搬出ローラ対
31 用紙排紙路
32 排紙ローラ対
33 電装部
35 画像形成ユニット
36 ドラム副ユニット
37 ドラムカバー
38 廃トナー送出パイプ
39 長溝孔
40 現像剤(トナー)
41(41a、41b) 支持部
42 現像ケーシング
43 現像ローラ
43−1 現像ローラ支持軸
44 トナー撹拌部材
45 トナー供給ローラ
46 ドクターブレード
47 掬いシート
48 廃トナー受入パイプ
49 回収袋
51 軸受け孔
52 固定レバー
53 芯金
54 第1の導電性弾性層
55 第2の導電性弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心の芯金上に支持された第1の導電性弾性層と、この第1の導電性弾性層上に設けられた第2の導電性弾性層とを備えた帯電ローラにおいて、
前記第1の導電性弾性層はニトリル系発泡ゴムと導電性カーボンブラックとからなり、
前記第2の導電性弾性層はエピクロルヒドリン系ゴムと導電性カーボンブラックとからなるとともに、その表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を有し、
前記第1の導電性弾性層の平均外径をD1(mm)とし、前記第2の導電性弾性層の平均内径をD2(mm)として、「−0.30≦D2−D1≦−0.15」である、
ことを特徴とする帯電ローラ。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−76602(P2008−76602A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253919(P2006−253919)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】