説明

帯電制御材料、表示用粒子分散液、表示媒体、及び表示装置

【課題】他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料を提供することを提供すること。また、当該帯電制御材料を利用した、表示粒子分散液、表示媒体、及び表示装置を提供すること。
【解決手段】反応性官能基を持つ反応性高分子と前記反応性高分子の反応性官能基に対して付加反応する反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物との第1反応付加体、並びに、反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物と前記反応性シリコーン系化合物の反応性官能基に対して付加反応するアミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方との第2反応付加体から選択される少なくとも1種である帯電制御材料である。そして、これを用いた表示用粒子分散液、表示媒体、及び表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 帯電制御材料、表示用粒子分散液、表示媒体、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリー性を有するディスプレイとして電気泳動表示媒体が盛んに研究されている。本表示方式では、液体中に帯電した表示用粒子(泳動粒子)が分散された電気泳動材料を用いて、電場付与によって泳動粒子をセル内(二枚の電極基板を重ねてその間に電気泳動材料を封入した構成)の視野面及び背面へ交互に移動させることによって表示を行なうことができる。
【0003】
本技術では、前記の電気泳動材料が重要な要素になっており、様々な技術開発がなされている。また、粒子を分散する液体として、揮発性が低く、化学物質としての安全性の高い材料が望まれる。このような安全性の高い液体として、石油由来高沸点成分であるパラフィン系炭化水素溶媒(市販されている製品としてはエクソン社製のアイソパー系材料等が挙げられる)、シリコーンオイル、フッ素系液体等が望ましく、このような液体中で安定に分散し、帯電性や電気泳動性に優れた材料が必要となっている。特にシリコーンオイルは揮発性や可燃性が低く、安全性が高いことから有用である。
【0004】
ところが、シリコーンオイルに安定に分散しかつ安定な帯電特性を有する材料系はあまり知られていないのが現状である。従来技術としては、例えば、シリコーン系帯電制御高分子分散剤を用いた技術が特許文献1〜2に提案されており、シリコーンオイルに分散する電気泳動粒子として電荷調整剤を含有する構成が開示されている。
【特許文献1】特許3936588号
【特許文献2】特開2002−212423公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の課題は、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
【0007】
請求項1に係る発明は、
反応性官能基を持つ反応性高分子と前記反応性高分子の反応性官能基に対して付加反応する反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物との第1反応付加体、並びに、反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物と前記反応性シリコーン系化合物の反応性官能基に対して付加反応するアミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一つとの第2反応付加体から選択される少なくとも1種である帯電制御材料。
【0008】
請求項2に係る発明は、
第1反応付加体が、少なくとも下記一般式(1)で示される単量体単位を有する反応性高分子と一般式(1−A)及び一般式(1−B)で示される反応性シリコーン系化合物の少なくとも1種との付加反応物であることを特徴とする請求項1に記載の帯電制御材料。
【0009】
【化1】

【0010】
請求項3に係る発明は、
前記第1反応付加体が、下記一般式(11)で示される構造単位を少なくとも含む高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【0011】
【化2】

【0012】
(前記一般式(11)中、Rは、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又はハロゲン基を表す。Rは、下記構造式(11−A)又は構造式(11−B)で示される基を表す。Rは、水素原子、炭素数1以上30のアルキル基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。Xは、−COOCHCH(OH)−で示される基を表す。pは、0又は1を表す。)
【0013】
【化3】

【0014】
(前記構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、Rは、炭素数3以上10以下のアルキレン基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアミノアルキル基を表す。n1は、1以上1000の整数を表す。)
【0015】
請求項4に係る発明は、
前記第1反応付加体が、前記一般式(11)で示される構造単位のみからなる高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【0016】
請求項5に係る発明は、
前記第2反応付加体における反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物が、下記一般式(2)で示される反応性シリコーン系である請求項1に記載の帯電制御材料。
【0017】
【化4】

【0018】
請求項6に係る発明は、
前記第2反応付加体が、下記一般式(22)で示される構造単位を含む高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【0019】
【化5】

【0020】
(前記一般式(22)中、Xは、下記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。)
【0021】
【化6】

【0022】
(前記構造式(22−A)又は構造式(22−B)中、R及びRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基、又は芳香族基を表す。)
【0023】
請求項7に係る発明は、
前記第2反応付加体が、下記一般式(22−1)で示される化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【0024】
【化7】

【0025】
(前記一般式(22−1)中、Xは、前記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。mは、1以上1000の整数を表す。nは、1以上1000の整数を表す。)
【0026】
請求項8に係る発明は、
電界に応じて移動する表示用粒子を含む粒子群と、
前記粒子群を分散する分散媒してのシリコーンオイルと、
前記分散媒に含まれる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の帯電制御材料と、
を有することを特徴とする表示用粒子分散液。
【0027】
請求項9に係る発明は、
少なくとも一方が透光性を有する一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された、請求項8に記載の表示用分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【0028】
請求項10に係る発明は、
一対の電極と、
前記一対の電極間に封入された、請求項8に記載の表示用分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【0029】
請求項11に係る発明は、
請求項9又は10に記載の表示媒体と、
前記表示媒体の前記一対の基板間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えた表示装置。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項2に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項3に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項4に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項5に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項6に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
請求項7に係る発明によれば、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性を表示用粒子に付与する帯電制御材料が提供される。
【0031】
請求項8に係る発明によれば、他種の帯電制御材料を用いる場合に比べ、少ない添加量の帯電制御材料で、安定した分散性及び帯電特性が付与された表示用粒子を含む表示用粒子分散液が提供される。
請求項9に係る発明によれば、他種の帯電制御材料を用いる場合に比べ、少ない添加量の帯電制御材料で、繰り返し安定して表示がなされる表示媒体が提供される。
請求項10に係る発明によれば、他種の帯電制御材料を用いる場合に比べ、少ない添加量の帯電制御材料で、繰り返し安定して表示がなされる表示装置が提供される。
請求項11に係る発明によれば、他種の帯電制御材料を用いる場合に比べ、少ない添加量の帯電制御材料で、繰り返し安定して表示がなされる表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
(帯電制御材料、表示用粒子分散液)
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、電界に応じて移動する表示用粒子を含む粒子群と、粒子群を分散するための分散媒としてのシリコーンオイルと、前記分散媒に含まれる特定の帯電制御材料と、を有する。本実施形態では、この特定の帯電制御材料により他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。ここで、帯電特性は、粒子の帯電極性及び帯電量を示しており、本実施形態ではこの帯電極性及び帯電量の変動が抑制され、安定化される。そして、当該表示用粒子分散液を表示媒体及び表示装置に適用することで、他種の帯電制御材料を用いる場合に比べ、少ない添加量の帯電制御材料で、繰り返し安定して表示がなされる。
【0034】
特定の帯電制御材料について説明する。特定の帯電制御材料としては、以下に示す付加反応体の少なくとも1種が挙げられる。
1)反応性官能基を持つ反応性高分子と前記反応性高分子の反応性官能基に対して付加反応する反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物との第1反応付加体
2)反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物と前記反応性シリコーン系化合物の反応性官能基に対して付加反応するアミン化合物及び二塩基性酸の少なくとも一方との第2反応付加体
【0035】
まず、第1反応付加体について説明する。第1反応付加体は、反応性高分子と、シリコーン系化合物と、の反応付加体である。つまり、第1反応付加体は、反応性高分子と、シリコーン系化合物と、の付加反応により得られるものである。
【0036】
反応性高分子は、反応性シリコーン系化合物が持つ反応性官能基が付加反応する反応性官能基を持つものである。当該反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、酸基、アミノ基等が好適に挙げられる。
【0037】
反応性高分子としては、例えば、反応性官能基を持つ反応性単量体の単独重合体、反応性官能基を持つ単量体とその他単量体(反応性官能基を持たない単量体)との共重合体が挙げられる。
【0038】
反応性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネートモノマ(昭和電工:カレンズAOI、カレンズMOI)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
(メタ)アクリル酸若しくはその塩、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはその塩、ビニルスルホン酸若しくはその塩、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン、酢酸ビニル(加水分解後にビニルアルコール単量体単位に転化)等が挙げられる。
【0039】
その他単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキレート若しくはその誘導体、スチレン若しくはその誘導体、ビニルピロリドン、エチレンオキシドユニットを持つモノマ(例えばテトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のアルキルオキシオリゴエチレングリコールの(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコールの片末端(メタ)アクリレート等)等が好適に挙げられる。
【0040】
ここで、反応性高分子には、表示用粒子への帯電特性付与のために、酸基又はアミノ基が含有されていることが望ましい。これら酸基又はアミノ基は、反応性単量体における上記反応性官能基と兼用してもよいし、別途、上記その他単量体として上記酸基又はアミノ基が含む単量体を反応性単量体と共重合させて、反応性高分子に導入してもよい。上記その他単量体としての酸基又はアミノ基が含む単量体は、例えば、N−アルキル置換アルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)が好適に挙げられる。
【0041】
ここで、反応性単量体と、その他単量体と、の共重合比(質量比)は、10:90乃至100:0であることが望ましく、より望ましくは20:80乃至100:0である。
【0042】
一方、反応性シリコーン系化合物とは、反応性高分子の反応性官能基に対して付加反応する反応性官能基を持つものである。当該反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基が挙げられる。反応性シリコーン系化合物は、片末端に当該反応性官能基を持つものであることがよい。
【0043】
反応性シリコーン系化合物として具体的には、例えば、エポキシ基を持ったシリコーン系化合物(例えば、信越シリコーン社製:X−22−173DX等)、アミノ基を持ったシリコーン系化合物(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ:TSF4700、TSF4701等)、ヒドロキシル基を持ったシリコーン系化合物(例えば、信越シリコーン社製:X−22−170BX、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176F)、カルボキシル基を持ったシリコーン系化合物(例えば、信越シリコーン社製:X−22−3710等)、が挙げられる。
【0044】
第1反応付加体において、反応性高分子に対して、反応性シリコーン系化合物を付加反応させる比率は、反応性高分子が持っている反応性官能基の数に対して、10%〜90%の範囲が好ましい。より好ましくは20%から90%の範囲である。反応性高分子の持つ官能基の100%すべてに付加反応する必要はなく、シリコーンオイルに可溶になる程度で、反応することが望ましい。別の定義で表現すれば、生成した付加体中に含まれる反応性シリコーン量が30質量%以上あればシリコーンへの溶解性があるため好ましく、より好ましくは40質量%以上である。
【0045】
第1反応付加体としては、特に、少なくとも下記一般式(1)で示される単量体単位を有する反応性高分子と一般式(1−A)及び一般式(1−B)で示される反応性シリコーン系化合物の少なくとも1種との付加反応物であることが望ましい。当該化合物は、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。
【0046】
【化8】

【0047】
第1反応付加体としては、特に、下記一般式(1)で示される構造単位を含む高分子化合物であることも望ましい。当該高分子化合物は、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。
【0048】
前記第1反応付加体が、下記一般式(11)で示される構造単位を少なくとも含む高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【化9】

【0049】
一般式(11)中、Rは、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又はハロゲン基を表す。Rは、下記構造式(2−A)又は構造式(2−B)で示される基を表す。Rは、水素原子、炭素数1以上30のアルキル基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。Xは、−COOCHCH(OH)−で示される基を表す。pは、0又は1を表す。)
【0050】
一般式(11)中、各符号が表す炭素数1以上10以下のアルキル基としては、直鎖状、分鎖状、又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキル基としては、望ましくは1以上8以下のアルキル基、より望ましくは1以上6以下のアルキル基である。
【0051】
一般式(11)中、各符号が表す炭素数1以上30以下のアルキル基としては、直鎖状、分鎖状、又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数1以上30以下のアルキル基としては、望ましくは1以上18以下のアルキル基、より望ましくは1以上12以下のアルキル基である。
【0052】
pは、0又は1を表すが、0のときが3級アミノ基構造(−NR)を示し、1のときが4級アミノ基構造((−N)を表すことを意味する。
【0053】
【化10】

【0054】
構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、Rは、炭素数3以上10以下のアルキレン基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアミノアルキル基を表す。n1は、1以上1000の整数を表す。)
【0055】
構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基としては、例えば、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアミノアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上8以下のアミノアルキル基、より望ましくは1以上5以下のアミノアルキル基である。
【0056】
構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、各符号が表す炭素数1以上10以下のアルキル基、及び炭素数1以上10以下のアルキレン基は、一般式(11)中で各符号が表す炭素数1以上10以下のアルキル基、及び炭素数1以上10以下のアルキレン基と同義である。
【0057】
構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、n1は、1以上1000の整数を表すが、望ましくは10以上1000以下のであり、より望ましくは10以上500以下である。
【0058】
上記一般式(11)で示される構造単位を含む化合物としては、特に、
が、メチル基又は水素原子を表し、
が、構造式(11−A)又は構造式(11−B)で示される基を表し、
が、水素原子を表し、
Xが、−COOCHCH(OH)−基を表し、
pが、0を示し(つまりRなし)、
且つ、構造式(11−A)又は構造式(11−B)において、
が、プロピレン基を表し、
が、メチル基を表し、
n1が、1以上100の整数を表す化合物であることが望ましい。
【0059】
一般式(11)で示される構造単位を含む化合物(第1反応付加体)としては、一般式(11)で示される構造単位のみからなる化合物であることが望ましいが、一般式(11)で示される構造単位と他の構造単位(例えば、上記その他単量体の重合単位)とを含む化合物であってもよい。但し、一般式(11)で示される構造単位が、10重量%以上含まれることがよい。一般式(11)で示される構造単位を含む高分子化合物により、他種の帯電制御材料に比べ、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。
【0060】
次に、第2反応付加体について説明する。第2反応付加体は、反応性シリコーン系化合物と、アミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方と、の反応付加体である。つまり、第2反応付加体は、反応性シリコーン系化合物と、アミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方と、の付加反応により得られるものである。
【0061】
反応性シリコーン系化合物は、アミン化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方が付加反応する反応性官能基を持つものである。反応性官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、又はエポキシ基が挙げられる。反応性シリコーン系化合物は、ジメチルシリコーン鎖(−Si(CHO−)における、末端基やメチル基(−CH)に、当該反応性官能基が置換されて導入されているものがよい。
【0062】
反応性シリコーン系化合物として具体的には、例えば、反応性ジメチルシリコーン系化合物が好適に挙げられ、例えば、
1級アミノ基を持ったシリコーン系化合物(例えば信越化学工業社製KF−8010、XX−22−161A、XX−22−161B、X−22−1660B−3、KF−8008、KF−8012、KF−857、KF−8001、KF−862、X−22−9192、KF−858等)、1級および2級アミノ基を持ったシリコーン系化合物(例えば信越化学工業社製、 KF−393、KF−859、KF−860、KF−861、KF−867、KF−869、KF−880、KF−8002、KF−8004、KF−8005、KF−858、KF−864、KF−865、KF−868、KF−8003 等)、又はエポキシ基を持ったシリコーン系化合物(例えば信越化学工業社製KF−105、X22−163A、X−22−163B、X−22−163C、KF−1001、KF−101、X−22−2000、X−22−169AS、XX−22−169B、KF−102、X−22−9002、X−22−2046等)が挙げられる。
【0063】
一方、アミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸は、反応性シリコーン系化合物の反応性官能基に対して付加反応する化合物である。
【0064】
アミン化合物としては、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル化合物としては、アルキル基の炭素数が1から18までの範囲の塩素、ヨウ素、又は臭素置換化合物(例えば臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、臭化ヘキシル、臭化オクチル、臭化デシル、臭化ドデシル、臭化オクタデシル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化オクチル、ヨウ化デシル、ヨウ化ドデシル、ヨウ化オクタデシル等)が挙げられる。
【0065】
多塩基性酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、イソクエン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、などのジあるいはトリカルボン酸等が挙げられる。
【0066】
第2反応付加体において、反応性シリコーン系化合物中の付加反応基に対して、アミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方を付加反応させる比率の範囲は(モル比反応性シリコーン系化合物:アミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一方)としては、1:0.1ないし:4が望ましく、より望ましくは1:0.2乃至1:4である。なお、付加反応については反応性シリコーン中の付加反応基のすべてに置換する必要はなく、上記した範囲内であれば構わない。
【0067】
ここで、第2反応付加体における反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物としては、下記一般式(2)で示される反応性シリコーン系であることが望ましい。当該化合物を適用することで、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。
【0068】
【化11】

【0069】
ここで、一般式(2)中、mは、1以上500の整数を表すことが望ましく、nは、1以上500以下の整数を表すことが望ましい。また、mとnとの比率は、99:1乃至10:90であことが望ましく、より望ましくは98:2乃至20:80である。
【0070】
第2反応付加体としては、特に、下記一般式(22)で示される構造単位を含む化合物であることが望ましい。当該化合物は、他種の帯電制御材料に比べ、少ない添加量で、安定した分散性及び帯電特性が表示用粒子に付与される。
【0071】
【化12】

【0072】
一般式(22)中、Xは、下記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。)
【0073】
【化13】

【0074】
構造式(22−A)又は構造式(22−B)中、R及びRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基、又は芳香族基を表す。
【0075】
構造式(22−A)又は構造式(22−B)中、各符号が表す炭素数1以上18以下のアルキル基としては、直鎖状、分鎖状、又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数1以上18以下のアルキル基としては、望ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基、より望ましくは1以上10以下のアルキル基である。
【0076】
構造式(22−A)又は構造式(22−B)中、各符号が表す炭素数1以上10以下のアルキレン基としては、直鎖状、又は分鎖状のいずれもよく、例えば、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基、トリメチレン基等が挙げられる。炭素数1以上10以下のアルキレン基としては、望ましくは炭素数1以上6以下のアルキレン基、より望ましくは炭素数3以上6以下のアルキレン基である。
【0077】
構造式(2−A)又は構造式(2−B)中、各符号が表す芳香族基としては、フェニル基や置換フェニル基等が挙げられる。
【0078】
上記構造式(22−A)又は構造式(22−B)においては、特に、
Rが、プロピレン基を表し、
が、エチレン基又はプロピレン基を表し、
が、炭素数1から12のアルキル基を表し、
が、炭素数1から12のアルキル基を表し、
が、炭素数1から12のアルキル基を表し、
が、炭素数1から12のアルキル基を表すことが望ましい。
【0079】
そして、上記一般式(22)で示される構造単位を含む化合物(第2付加体)は、下記一般式(22−1)で示される化合物であることが特に望ましい。
【0080】
【化14】

【0081】
一般式(22−1)中、Xは、前記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。mは、1以上1000の整数を表す。nは、1以上1000の整数を表す。)ここで、mは、1以上500の整数を表すことが望ましく、nは、1以上500の整数を表すことが望ましい。また、mとnとの比率は、99:1乃至10:90であることが望ましく、より望ましくは98:2乃至20:80である。
【0082】
以上説明した特定の帯電制御材料は、分散媒(シリコーンオイル)に対して可溶な帯電制御材料である。ここで、可溶とは、25℃において、帯電制御材料が分散媒(シリコーンオイル)に対して10g/L以上溶解することを意味する。
そして、特定の帯電制御材料の含有量は、分散媒(例えばシリコーンオイル)に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが望ましく、より望ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、さらに望ましくは0.01質量%以上3質量%以下である。
【0083】
なお、上記特定の帯電制御材料は、他の帯電制御材料と併用してもよい。他の帯電制御材料としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、シリコーン系カチオン化合物、シリコーン系アニオン化合物、金属石鹸、アルキルリン酸エステル類、コハク酸イミド類等が挙げられる。これらは、特定の帯電制御材料の働きを阻害しない範囲で併用される。
【0084】
次に、表示用粒子について説明する。表示用粒子としては、帯電基を有する高分子と、着色剤と、必要に応じてその他の配合材料と、を含んで構成されることがよい。また、表示用粒子は、これに限られず、例えば、帯電基を有する化合物(例えば帯電基を有する高分子や、帯電基を有する単量体)で表面を修飾した顔料(顔料粒子)を採用してもよい。
【0085】
帯電基を有する高分子は、帯電基として例えばカチオン性基又はアニオン性基を有する高分子である。帯電基としてのカチオン性基は、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基が挙げられ(これら基の塩も含む)、このカチオン基により粒子に正帯電極性が付与される。一方、帯電基としてのアニオン性基としては、例えば、フェノール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基及びテトラフェニルボロン基が挙げられ(これら基の塩も含む)、このアニオン性基により粒子に負帯電極性が付与される。
【0086】
帯電基を有する高分子として、具体的には、例えば、帯電基を有する単量体の単独重合体であってもよいし、帯電基を有する単量体と他の単量体(帯電基を持たない単量体)との共重合体が挙げられる。
【0087】
帯電基を有する単量体としては、カチオン性基を有する単量体(以下、カチオン性単量体)、アニオン性基を有する単量体(以下、アニオン性単量体)が挙げられる。
【0088】
カチオン性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オ クチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を有する芳香族置換エチレン系単量体類、
ビニル−N−エチル −N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類、ビニルアミン、N−ビニルピロール等のピロール類、N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類、N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエ ーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類、N−ビニルインドール等のインドール類、N−ビニルインドリン等のインドリン類、N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピロジン等のピリジン類、(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類、N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類、2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類、4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類などが挙げられる。
また、汎用性から特に好ましいカチオン性単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類が好ましく、特に重合前あるいは重合後に4級アンモニウム塩とした構造で使用されることが好ましい。4級アンモニウム塩化は、前記化合物をアルキルハライド類やトシル酸エステル類と反応することで得ることができる。
【0089】
一方、アニオン性単量体としては、例えば、以下のものが挙げられる。
具体的には、アニオン性単量体のうち、カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、又はそれらの無水物及びそのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を有するビニルエーテル類等がある。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等及びその塩がある。また、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びその塩がある。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等がある。
好ましいアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸やスルホン酸を持ったものであり、より好ましくは重合前あるいは重合後にアンモニウム塩となった構造のものである。アンモニウム塩は、3級アミン類あるいは4級アンモニウムハイドロオキサイド類と反応させることで作製できる。
【0090】
また、他の単量体としては、非イオン性単量体(ノニオン性単量体)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルカルバゾール、スチレン、スチレン誘導体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0091】
ここで、帯電基を有する単量体と他の単量体との共重合比は、所望の粒子の帯電量に応じて適宜変更される。通常は帯電基を有する単量体と他の単量体との共重合比がそのモル比で1:100乃至100:0からの範囲で選択される。
【0092】
帯電基を有する高分子の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上20万以下である。
【0093】
次に、着色剤について説明する。着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等が挙げられ、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、着色剤としては、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0094】
着色剤の配合量としては、帯電基を持つ高分子に対し10質量%以上99質量%以下が望ましく、望ましくは30質量%以上99質量%以下である。
【0095】
次にその他の配合材料を説明する。その他の配合材料としては、例えば帯電制御材料、磁性材料が挙げられる。
帯電制御材料としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属微粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属微粒子を挙げることができる。
【0096】
磁性材料としては、必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は着色顔料の発色を阻害せず、比重も無機磁性材料に比べて小さく、より望ましい。
着色した磁性材料(カラーコートした材料)として、例えば、特開2003−131420公報記載の小径着色磁性粉を用いることができる。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等適宜選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが好ましい。この光干渉薄膜とは、SiOやTiO等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光の波長を選択的に反射するものである。
【0097】
次に、本実施系形態に係る表示用粒子分散液(電気泳動組成物)について説明する。本実施形態に係る表示用粒子分散液は、電界に応じて移動する表示用粒子を含む粒子群と、
粒子群を分散する分散媒しての分散媒と、分散媒に含まれる、上記実施形態に係る帯電制御材料と、を有する。分散媒はシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、パラフィンオイル、種々アイソパーやこれらの混合溶液などが使用できる。
【0098】
この分散液中の表示用粒子の濃度(表示用粒子分散液中の濃度)は、表示特性や応答特性あるいはその用途によって種々選択されるが0.1質量%以上30質量%以下の範囲で選択されることが望ましい。色の異なった多粒子を混合する場合にはその粒子総量がこの範囲であると望ましい。0.1質量%よりも少ないと表示濃度が不十分になり、30質量%よりも多いと、表示速度が遅くなったり凝集が起こりやすいことがある。
【0099】
また、帯電制御材料は表示粒子との組み合わせによって種々選択される。例えば、表示粒子が酸基や酸基の塩などのアニオン性基を持った負帯電粒子である場合、そこに添加する帯電制御材料はアミノ基やアンモニウム基を有した反応付加体であることが望ましい。一方、表示粒子がアミノ基やアンモニウム基などのカチオン性基を持った正帯電粒子である場合、そこに添加する帯電制御材料は酸基を有した反応付加体であることが望ましい。このように異なる特性を持った表示用粒子と帯電制御材料を組み合わせることで安定な帯電極性や帯電安定性が得られる。
【0100】
表示用粒子は、色や帯電極性、帯電量の異なる複数種の粒子を混合して使用し、カラー表示を得るということも好ましく実施される。例えば、帯電極性の異なる複数種類の表示用粒子は、例えば、後述する帯電基を有する高分子の当該帯電基を変更することで得られる。
【0101】
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)、液体現像方式電子写真システムの液体トナーなどに利用される。なお、電気泳動方式の表示媒体、電気泳動方式の調光媒体(調光素子)としては、公知である電極(基板)面に対して垂直方向に粒子群を移動させる方式、それとは異なり水平方向に移動させる方式(いわゆるインプレーン型素子)、又はこれらを組み合わせたハイブリッド素子がある。
【0102】
(表示媒体、表示装置)
以下、実施形態に係る表示媒体、及び表示装置の一例について説明する。
【0103】
−第1実施形態−
まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る表示装置の概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【0104】
第1実施形態に係る表示装置10は、その表示媒体12の分散媒50と粒子群34とを含む粒子分散液として、上記実施形態に係る表示用粒子と分散媒と特定の帯電制御材料を含む本実施形態に係る表示用粒子分散液を適用する形態である。
【0105】
第1実施形態に係る表示装置10は、図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0106】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を所定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された粒子群34、及び粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する大径着色粒子群36を含んで構成されている。
【0107】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34(詳細後述)は、複数の粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を大径着色粒子群36の間隙を通じて移動する。
【0108】
なお、本実施形態では、1つのセル内に封入されている粒子群34は、所定の色を有すると共に、正又は負に帯電処理されて予め調製されているものとして説明する。
【0109】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示が可能となるように構成してもよい。
【0110】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0111】
まず、一対の基板について説明する。表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を積層した構成となっている。
【0112】
表示基板20、又は表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0113】
支持基板38及び支持基板44としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0114】
表面電極40及び背面電極46には、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が使用される。これらは単層膜、混合膜あるいは複合膜として使用でき、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等で形成される。また、その厚さは、蒸着法、スパッタリング法によれば、通常100Å以上2000Å以下である。背面電極46及び表面電極40は、従来の液晶表示媒体あるいはプリント基板のエッチング等従来公知の手段により、所望のパターン、例えば、マトリックス状、又はパッシブマトリックス駆動を可能とするストライプ状に形成してもよい。
【0115】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料を粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0116】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0117】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0118】
また、アクティブマトリックス駆動を可能にするために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。配線の積層化及び部品実装が容易であることから、TFTは表示基板ではなく背面基板22に形成することが望ましい。
【0119】
なお、表示媒体12を単純マトリクス駆動とすると、表示媒体12をそなえた後述する表示装置10の構成を簡易な構成とすることができ、TFTを用いたアクティブマトリックス駆動とすると、単純マトリクス駆動に比べて表示速度が速くなる。
【0120】
次に、間隙部材について説明する。上記表面電極40及び背面電極46が、各々支持基板38及び支持基板44上に形成されている場合、表面電極40及び背面電極46の破損や、粒子群34の各粒子の固着を招く電極間のリークの発生を防止するため、必要に応じて表面電極40及び背面電極46各々上に誘電体膜としての表面層42及び表面層48を形成している。
【0121】
この表面層42及び表面層48を形成する材料としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、共重合ナイロン、紫外線硬化アクリル樹脂、フッ素樹脂等を用いてもよい。
【0122】
また、上記した絶縁材料の他に、絶縁性材料中に電荷輸送物質を含有させたものも使用され得る。電荷輸送物質を含有させることにより、粒子への電荷注入による粒子帯電性の向上や、粒子の帯電量が極度に大きくなった場合に粒子の電荷を漏洩させ、粒子の帯電量を安定させるなどの効果が得られる。
【0123】
電荷輸送物質としては、例えば、正孔輸送物質であるヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、アリールアミン化合物等が挙げられる。また、電子輸送物質であるフルオレノン化合物、ジフェノキノン誘導体、ピラン化合物、酸化亜鉛等も使用してもよい。さらに、電荷輸送性を有する自己支持性の樹脂を用いてもよい。
具体的には、ポリビニルカルバゾール、米国特許第4806443号に記載の特定のジヒドロキシアリールアミンとビスクロロホルメートとの重合によるポリカーボネート等が挙げられる。誘電体膜は、粒子の帯電特性や流動性に影響を及ぼすことがあるので、粒子の組成等に応じて適宜選択する。基板の一方である表示基板は光を透過する必要があるので、上記各材料のうち透明のものを使用することが好ましい。
【0124】
次に、間隙部材について説明する。表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための間隙部材24は、表示基板20の透光性を損なわないように形成され、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で形成される。
【0125】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38又は支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理又は印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製する。
【0126】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、表示媒体12に表示される表示画像に悪影響を及ぼさないように無色透明であることが望ましく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等が使用される。
【0127】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
【0128】
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0129】
次に、大径着色粒子群について説明する。大径着色粒子群36は、帯電されていない粒子群であり、粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する大径着色粒子から構成され、粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。すなわち、大径着色粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ粒子群34の各粒子は移動される。この大径着色粒子群子36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することが好ましい。なお、本実施形態では、大径着色粒子群36は白色である場合を説明するが、この色に限定されることはない。
【0130】
大径着色粒子群36は、例えば、酸化チタンや酸化ケイ素、酸化亜鉛などの白色顔料を、ポリスチレンやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PMMA、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などに分散した粒子が使用される。また、着色部材を構成する粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料あるいは染料が使用してもよい。
【0131】
大径着色粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、大径着色粒子群36を固定化する場合、例えば、大径着色粒子群36を封入した後、加熱(及び必要があれば加圧)して、大径着色粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0132】
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示可能な表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下程度である。
【0133】
上記表示基板20及び背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0134】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存及び書換えが可能な掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0135】
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(図1参照)。
【0136】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0137】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受可能に接続されている。
【0138】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央演算処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていることも可能である。
【0139】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する。
【0140】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0141】
ここで、表示媒体12に封入されている粒子群34は、黒色であり且つ負極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、大径着色粒子群36が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、粒子群34の移動によって黒色又は白色を表示する場合を説明する。
【0142】
まず、電圧を、所定時間、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、負極に帯電している粒子群34を構成する粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に到る(図2(A)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、大径着色粒子群36の色としての白色として視認される。
【0143】
このT1時間は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この所定時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0144】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極として電圧を印加すると、図2(B)に示すように、粒子群34は表示基板20側へと移動して表示基板20側に到達し、粒子群34による黒表示がなされる。
【0145】
−第2実施形態−
以下、第2実施形態に係る表示装置について説明する。図3は、第2実施形態に係る表示装置の概略構成図である。図4は、第2実施形態に係る表示装置における、印加する電圧と粒子の移動量(表示濃度)との関係を模式的に示す線図である。図5は、第2実施形態に係る表示装置における、表示媒体の基板間へ印加する電圧態様と、粒子の移動態様との関係を模式的に示す説明図である。
【0146】
第2実施形態に係る表示装置10は、2種類以上の粒子群を適用した形態である。なお、2種類以上の粒子群は、全て同じ極性で帯電されている。
【0147】
本実施形態に係る表示装置10は、図3に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
なお、本実施形態に係る表示装置10は、上記第1実施形態で説明した表示装置10と略同一の構成であるため、同一構成には同一符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0148】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を所定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された粒子群34、及び粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する大径着色粒子群36を含んで構成されている。
表示基板20及び背面基板22の対向面は、第1実施形態と同様に帯電処理されており、この対向面上には、処理層21及び処理層23各々が設けられている。
【0149】
本実施形態では、粒子群34として、互いに色の異なる複数種の粒子群34が分散媒50に分散されている。
【0150】
なお、本実施形態では3種類の粒子群34として、互いに色の異なる粒子群34として、イエロー色のイエロー粒子群34Y、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、及びシアン色のシアン粒子群34Cが分散されているとして説明するが、3種類に限られない。
この複数種類の粒子群34は、基板間を電気泳動する粒子群であり、電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が各色の粒子群でそれぞれ異なる。すなわち、各色の粒子群34(イエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、及びシアン粒子群34C)は、色毎に各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲を有し、当該電圧範囲がそれぞれ異なる。
【0151】
この電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なる複数種の粒子群34の各粒子としては、上記第1実施形態で説明した粒子群34を構成する材料の内の、例えば、帯電制御材料や磁性粉の量、粒子を構成する樹脂の種類や濃度等を換える等して、帯電量の異なる粒子を含む粒子分散液をそれぞれ作製し、これを混合することで得られる。
【0152】
ここで、上述のように、本実施形態に係る表示媒体12には3種類の粒子群34として、互いに色の異なるイエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、及びシアン粒子群34Cが分散されており、これらの複数種類の粒子群34は、電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が各色の粒子群でそれぞれ異なる。
【0153】
なお、本実施形態では、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々が移動を開始するときの電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vtm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vtc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vty|であるとして説明する。また、各色粒子群34のゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々をほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vdm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vdc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vdy|であるとして説明する。
【0154】
なお、以下で説明するVtc、−Vtc、Vdc、−Vdc、Vtm、−Vtm、Vdm、−Vdm、Vty、−Vty、Vdy、及び−Vdyの絶対値は、|Vtc|<|Vdc|<|Vtm|<|Vdm|<|Vty|<|Vdy|の関係であるとして説明する。
【0155】
具体的には、図4に示すように、例えば、3種類の粒子群34は、全て同極性に帯電された状態で分散媒50内に分散され、シアン粒子群34Cを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtc≦Vc≦Vdc|(VtcからVdcの間の値の絶対値)、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、及びイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)が、この順で重複することなく、大きくなるように設定されている。
【0156】
また、各色の粒子群34を独立駆動するために、シアン粒子群34Cをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdc|が、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、及びイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。また、マゼンタ粒子群34Mをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdm|が、イエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。
【0157】
即ち、本実施形態では、各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲が重ならないように設定することによって、各色の粒子群34が独立駆動されるようにしている。
【0158】
なお、「粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲」とは、粒子が移動開始するために必要な電圧と移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和するまでの電圧範囲を示す。
また、「粒子群34をほぼ全て移動させるために必要な最大電圧」とは上記の移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和する電圧を示す。
また、「ほぼ全て」とは、各色の粒子群34の特性ばらつきがあるため、一部の粒子群34の特性が表示特性に寄与しない程度異なるものがあることを表す。すなわち上述した移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和した状態である。
また、「表示濃度」は、表示面側における色濃度を光学濃度(Optical Density=0D)の反射濃度計X-rite社の反射濃度計で測定しながら、表示面側と背面側との間に電圧を印加して且つこの電圧を測定濃度が増加する方向に徐々に変化(印加電圧を増加又は減少)させて、単位電圧あたりの濃度変化が飽和し、且つその状態で電圧及び電圧印加時間を増加させても濃度変化が生じず、濃度が飽和したときの濃度を示している。
【0159】
そして、本実施形態に係る表示媒体12では、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vから電圧を印加して除々に印加電圧の電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtcを超えると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdcとなると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0160】
さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vtmを超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0161】
さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtyを超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0162】
反対に、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vからマイナス極の電圧を印加して除々に電圧の絶対値を上昇させ、基板間に印加された電圧−Vtcの絶対値を超えると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの基板間の移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値の絶対値を上昇させ、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdc以上となると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0163】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtmの絶対値を超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0164】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtyの絶対値を超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動により表示濃度に変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、基板間に印加された電圧が−Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0165】
すなわち、本実施形態では、図4に示すように、基板間に印加される電圧が−VtcからVtcの範囲内(電圧範囲|Vtc|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子群34(シアン粒子群34C、マゼンタ粒子群34M、及びイエロー粒子群34Y)の粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtc及び電圧−Vtcの絶対値以上の電圧が印加されると、3色の粒子群34の内のシアン粒子群34Cについて表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じはじめて表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdc及び電圧Vdcの絶対値|Vdc|以上の電圧が印加されると、単位電圧あたりの表示濃度に変化は生じなくなる。
【0166】
さらに、基板間に印加される電圧が−VtmからVtmの範囲内(電圧範囲|Vtm|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度のマゼンタ粒子群34M及びイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtm及び電圧−Vtmの絶対値以上の電圧が印加されると、マゼンタ粒子群34M及びイエロー粒子群34Yの内のマゼンタ粒子群34Mについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じはじめて単位電圧あたりの表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdm及び電圧Vdmの絶対値|Vdm|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0167】
さらに、基板間に印加する電圧が−VtyからVtyの範囲内(電圧範囲|Vty|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度のイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vty及び電圧−Vtyの絶対値以上の電圧が印加されると、イエロー粒子群34Yについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じ始めて表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdy及び電圧Vdyの絶対値|Vdy|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0168】
次に、図5を参照して、表示媒体12に画像を表示するときの粒子移動のメカニズムを説明する。
【0169】
例えば、表示媒体12に、複数種類の粒子群34として、図4を用いて説明したイエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34Cが封入されているとして説明する。
【0170】
また、以下では、イエロー粒子群34Yを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つイエロー粒子群34Yの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「大電圧」と称し、マゼンタ粒子群34Mを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つマゼンタ粒子群34Mの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「中電圧」と称し、シアン粒子群34Cを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つシアン粒子群34Cの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「小電圧」と称して説明する。
【0171】
また、表示基板20側に背面基板22側より高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「+大電圧」、「+中電圧」、及び「+小電圧」各々と称する。また、背面基板22側に表示基板20側より高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「−大電圧」、「−中電圧」、及び「−小電圧」各々と称して説明する。
【0172】
図5(A)に示すように、初期状態では全ての粒子群としてのマゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yの全てが背面基板22側に位置されるとすると(白色表示状態)、この初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+大電圧」を印加させると、全ての粒子群として、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yが表示基板20側に移動する。この状態で、電圧印加を解除しても、各粒子群各々は表示基板20側に付着したまま移動せずに、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yによる減色混合(マゼンタと、シアンと、イエロー色の減色混合)により黒色を表示したままの状態となる。(図5(B)参照)。
【0173】
次に、図5(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−中電圧」を印加させると、全ての色の粒子群34の内、マゼンタ粒子群34Mと、シアン粒子群34Cと、が背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yのみが付着した状態となることから、イエロー色表示がなされる(図5(C)参照)。
【0174】
さらに、図5(C)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、背面基板22側に移動したマゼンタ粒子群34M及びシアン粒子群34Cの内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、イエロー粒子群34Y及びシアン粒子群34Cが付着した状態となり、イエローとシアンとの減色混合による緑色が表示される(図5(D)参照)。
【0175】
また、上記図5(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、全ての粒子群34のシアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yとマゼンタ粒子群34Mが付着した状態となることから、シアンとマゼンタの加色混合による赤色表示がなされる(図5(I)参照)。
【0176】
一方、図5(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+中電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Y)の内、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが付着するので、マゼンタとシアンの減色混合による青色が表示される(図5(E)参照)。
【0177】
この図5(E)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cの内の、シアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mのみが付着した状態となるので、マゼンタ色が表示される(図5(F)参照)。
【0178】
この図5(F)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、何も付着しない状態となるため、大径着色粒子群36の色としての白色が表示される(図5(G)参照)。
【0179】
また、上記図5(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Y)の内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、シアン粒子群34Cが付着するので、シアン色が表示される(図5(H)参照)。
【0180】
さらに、上記図5(I)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、図5(G)に示すように全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
同様に、上記図5(D)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、図5(G)に示すように全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
【0181】
本実施形態では、各粒子群34に応じた電圧を基板間に印加することで、当該電圧による電界に応じて選択的に所望の粒子を移動させるので、所望の色以外の色の粒子が分散媒50中を移動することを抑制することができ、所望の色以外の色が混じる混色を抑制され、表示媒体12の画質劣化を抑制しつつ、カラー表示がなされる。なお、各粒子群34は、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なれば、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧範囲が重なっていても、鮮明なカラー表示が実現されるが、当該電圧範囲が互いに異なるほうが、より混色を抑制してカラー表示が実現される。
【0182】
また、シアン、マゼンタ、イエローの3色の粒子群34を分散媒50中に分散することによって、シアン、マゼンタ、イエロー、青色、赤色、緑色、及び黒色を表示するとともに、例えば、白色の大径着色粒子群36によって白色を表示し、特定のカラー表示を行うことが実現される。
【0183】
このように、本実施形態に係る表示装置10でも、上記第1実施形態で説明した表示装置10と同様に、粒子群34が表示基板20又は背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【実施例】
【0184】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0185】
[実施例A]
(実施例A1)
−帯電制御材料の調製−(含エポキシ反応性高分子と含アミノ基シリコーンとの付加物)
反応性高分子としてエポキシ基を含有した高分子を合成した。グリシジルメタアクリレート:2質量部、メチルメタクリレート:8質量部、テトラヒドロフラン(THF):40質量部、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリル:0.1質量部を混合し、窒素下、60℃で重合を行い、メタノールで沈殿精製を行って重量平均分子量が2万の反応性基としてエポキシ基を含有した反応性高分子を作製した。
【0186】
次に、末端に1級アミノ基をもった反応性シリコーン化合物としてTSF−4701(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社:アミノ基当量2500g/mol)を用いた。
トルエン:THFの1:1混合物:50質量部に先に合成した反応性高分子:1質量部、TSF−4701:4質量部を溶解し、70℃、24時間加熱反応させ、エポキシ基とシリコーン系化合物を付加反応させた。 生成した付加反応物をメタノールに沈殿精製し下記構造式A1で示される構造単位を有する化合物を得た。生成物は赤外吸収スペクトルからシリコーン鎖が付加した高分子であり、かつアミノ基を含有することが確認できた。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs 粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。この生成物(付加反応体)を、帯電制御材料とした。
【0187】
【化15】

【0188】
−表示用粒子分散液の調製−
以下の方法によって負帯電の電気泳動粒子分散液(表示用粒子分散液、以下同様)を作製した。
シリコーン系モノマであるサイラプレーンFM−0711(チッソ社製):95質量部、及びグリシジルメタクリレート5質量部を、シリコーンオイル100質量部と混合し、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリル(和光純薬製:V−65)を0.2質量部添加して、55℃、10時間、重合を実施し、エポキシ基を含有したシリコーン系分散剤A(反応性分散剤)を作製した。重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法で測定したところ30万であった。そして、シリコーンオイルで希釈することで反応性シリコーン高分子Aの3質量%シリコーンオイル溶液を準備した。なお、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs 粘度2cs)を使用した。
【0189】
次に、帯電基を持つ高分子としての市販品(和光純薬製)のポリメタクリル酸(重量平均分子量5万)の10質量%水溶液を準備した。次に、Ciba製水分散顔料溶液(ユニスパース・マゼンタ色:顔料濃度16重量%)1質量部、上記ポリメタクリル酸10質量%水溶液3質量部及びこれを中和するための化学量論量のトリエチルアミンを混合し、これらの混合溶液を調製し、上記シリコーン系反応性分散剤Aの3質量%シリコーンオイル溶液10質量部に混合し、これを超音波破砕機(エスエムテー社製UH−600S)で10分間攪拌し、帯電基を持つ高分子及び顔料を含む水溶液をシリコーンオイル中に分散・乳化させた懸濁液を調製した。
【0190】
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)を1時間実施して水分を除去し、シリコーンオイル中に帯電基を持つ高分子及び顔料を含んだマゼンタ着色粒子が分散したシリコーンオイル分散液を得た。さらに、この分散液を100℃/3時間加熱して反応性シリコーン分散剤Aを着色粒子表面に反応させて結合させた。反応後、遠心分離装置を用いて粒子を沈降、シリコーンオイル洗浄を繰り返し、精製を行なった。さらにシリコーンオイルで濃度を調整して、5質量%の表示用粒子分散液を作製した。作製した粒子分散液の体積平均粒子径を測定(ホリバLA−300:レーザー光散乱・回折式粒度測定装置)した結果、400nmであった。
【0191】
上記にて作製した泳動粒子を使って以下の2種類の分散液を調製した。1)前記粘度2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式A1で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、20Vの直流電圧を交互に印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式A1で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0192】
(実施例A2)
−帯電制御材料の調製−(含イソシアネート反応性高分子+含ヒドロキシルシリコーンの付加物)
反応性高分子としてイソシアネート基を含有した高分子を合成した。イソシアネート基をもったメタクリレートモノマであるカレンズMOI(昭和電工製)2質量部、メチルメタクリレート7.5質量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5質量、テトラヒドロフラン(THF)40質量部、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリル0.1質量部を混合し、窒素下、60℃で重合を行い、ヘキサンで沈殿精製を行って重量平均分子量が2万の反応性基としてイソシアネート基を含有した反応性高分子を作製した。
末端にヒドロキシル基をもった反応性シリコーン化合物としてXX−22−170BX(信越化学工業製:水酸基価20mgKOH/g)を用いた。THF(テトラヒドロフラン)50質量部にXX−22−170BX:4質量部、先に合成したイソシアネート基をもった反応性高分子1質量部を溶解し、60℃、24時間反応させた。
生成した付加反応体をメタノールに沈殿精製し下記構造式A2で示される構造単位を有する化合物を得た。生成物は赤外吸収スペクトルからシリコーン鎖が付加した高分子かつアミノ基を含有することが確認できた。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs 粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。この生成物を帯電制御材料とした。
【0193】
【化16】

【0194】
次に、実施例A1で作製したものと同じ電気泳動粒子分散液を用いて同様に帯電制御性の評価を行った。
1)前記の粘度2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式A2で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、20Vの直流電圧を交互に印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式A2で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0195】
(実施例A3)
−帯電制御材料の調製−(含イソシアネート反応性高分子+含ヒドロキシルシリコーンの付加物2)
反応性高分子として実施例2と同様なイソシアネート基を含有した高分子を用いた。
末端に1級アミノ基をもった反応性シリコーン化合物として実施例A1と同じTSF−4701(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社:アミノ基当量2500g/mol)を用いた。THF:50質量部に反応性高分子:1質量部、TSF−4701:3.5質量部を溶解し、70℃、24時間加熱反応させ、エポキシ基とシリコーン系化合物を付加反応させた。生成した付加反応物をメタノールに沈殿精製した。生成物は赤外吸収スペクトルからシリコーン鎖が付加した高分子であり、かつアミノ基を含有することが確認できた。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs 粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。この生成物を、帯電制御材料とした。
次に、末端にヒドロキシル基をもった反応性シリコーン化合物としてXX−22−170BX(信越化学工業製:水酸基価20mgKOH/g)を用いた。THF(テトラヒドロフラン)50質量部にXX−22−170BX:4質量部、先に合成した反応性高分子1質量部を溶解し、60℃、24時間反応させた。
生成した付加反応体をメタノールに沈殿精製し下記構造式A3で示される構造単位を有する化合物を得た。生成物は赤外吸収スペクトルからシリコーン鎖が付加した高分子かつアミノ基を含有することが確認できた。また、本高分子はジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96−2CS)に可溶であった。
【0196】
【化17】

【0197】
実施例A1で作製したものと同じ電気泳動粒子分散液を用いて同様に帯電制御性の評価を行った。
1)前記の粘度2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式A3で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式A3で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0198】
(実施例A4)
−帯電制御材料の調製−(含イソシアネート反応性高分子+含ヒドロキシルシリコーンの付加物3)
反応性高分子としてイソシアネート基を含有した高分子を合成した。イソシアネート基をもったメタクリレートモノマであるカレンズMOI(昭和電工製)2.5質量部、メチルメタクリレート7.5質量部、テトラヒドロフラン(THF)40質量部、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリル0.1質量部を混合し、窒素下、60℃で重合を行い、ヘキサンで沈殿精製を行って重量平均分子量が2万の反応性基としてイソシアネート基を含有した反応性高分子を作製した。
末端にヒドロキシル基をもった反応性シリコーン化合物として実施例2と同様のXX−22−170BX(信越化学工業製:水酸基価20mgKOH/g)を用いた。THF(テトラヒドロフラン)50質量部にXX−22−170BX:3質量部、先に合成したイソシアネート基をもった反応性高分子1質量部を溶解し、60℃、24時間反応させた後、アジピン酸1.5質量部を添加し、60℃で24時間加熱し、残存イソシアネート基と過剰に存在するアジピン酸の一方のカルボキシル基を反応させて、カルボキシル基を導入した。
生成した付加反応体をメタノールに沈殿精製し下記構造式A4で示される構造単位を有する化合物を得た。生成物は赤外吸収スペクトルからシリコーン鎖が付加した高分子かつカルボキシル基を含有することが確認できた。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs 粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。
【0199】
【化18】

【0200】
−表示用粒子分散液の調製−
以下の方法によって正帯電の電気泳動粒子分散液を作製した。
帯電基を持つ高分子として、N−ビニルピロリドンとN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートとの重量比で9/1の共重合体(重量平均分子量6万)を通常のラジカル溶液重合で合成した。さらにこの樹脂をイソプロパノール中で該アミノ基に対して当モル以上のヨウ化エチルを添加し、80℃で1時間加熱することでアミノ基の4級化を実施し、再度、固体として精製した。
帯電樹脂として、顔料分散液としてCiba製水分散顔料溶液(ユニスパース・シアン色:顔料濃度26重量%)以外は実施例A1と同様のシリコーン系反応性分散剤Aを用いて、同様な方法でシアン顔料を含有した5wt%濃度の粒子分散液を作製した。
作製した粒子分散液の体積平均粒子径は350nmであった。
【0201】
この電気泳動粒子分散液を用いて同様に帯電制御性の評価を行った。
1)前記の粘度2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式A4で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が正帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式A4で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0202】
(実施例A5)
−光学素子モデル作製と評価−
ITOガラス基板(5cm×10cm、厚み2mm)を1枚ずつ用意し、配線のための電極面を一部確保したオフセット形状で、またテープスペーサを外周部に形成(一部開口部を形成)することで、電極基板面を対向させて二枚の基板を100μmの間隔で張り合わせたセル構造体(空セル)を複数作製した。
酸化チタンを40質量%の濃度で含有するポリメタクリル酸メチルからなる体積平均粒子径が6μmの真球状粒子(積水化成品工業製)を10質量%でエタノール中に分散した分散液を調製し、これを前記セルに開口部から浸透後、エタノールを乾燥させて白色粒子を充填させた。
さらに、実施例A1からA4で記載した、各構造式A1からA4で示される構造単位を有する化合物(帯電制御材料)を含む泳動粒子分散液を各々減圧法で注入し、開口部を封止した評価光学素子を4種類作製した。
この作製した光学素子に20Vの極性の異なる直流電圧を交互に付与すると、いずれの素子も白色とマゼンタ色あるいはシアン色を交互に表すことができた。また繰り返し安定性も10万回以上あり、泳動粒子の凝集や分散性の低下も見られなかった。
さらに直流電圧を付与することによってマゼンタ色あるいはシアン色の各表示色を形成した状態での電圧付与を停止(電場をOFF)直後の表示濃度と、該電圧付与の停止から24時間経過後の各々の表示濃度をX−rite(X−rite社製)で測定したところ、変化はみられず、安定なメモリー性を示した。
【0203】
(比較例A−1)
公知例のアミノ基を含有した帯電制御高分子(帯電制御材料)を合成し、比較評価を行った。
シリコーン系モノマであるサイラプレーンFM−0711(チッソ社製):19質量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート1質量部を、シリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−1cs)200質量部と混合し、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリル(和光純薬製:V−65)を 0.1 質量部添加して、60℃、6時間、重合を実施した。重合終了後、エバポレーションによって溶媒と未反応モノマを除去して含アミノ基シリコーン系高分子を得た。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。
【0204】
実施例A1で作製した泳動粒子分散液に、上記で作製した含アミノ基高分子(帯電制御材料)を分散液に対して0.1質量%、0.5質量%および2質量%の濃度で添加した評価用分散液を作製した。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価することで求めた結果、0.1質量%、0.5質量%濃度では正・負、両極の泳動粒子が存在し粒子の極性が揃っていないことが分かった。一方、1質量%濃度ほぼ全ての粒子が負帯電であり、極性がほぼ揃っていることがわかった。一方、実施例と同様なメモリー性の評価では1%濃度のものは1時間放置後に、ほぼ全ての粒子が基板表面から剥がれてしまい、放置前後の光学濃度の変化が大きくメモリー性が低いことが判明した。これらの結果から、公知例の高分子を添加した場合には、極性を安定化させるために必要な添加量が多いこと、また、極性が安定した状態では電気泳動の特長であるメモリー性が低いということが判明し、本実施例の有効性が確認された。
【0205】
[実施例B]
(実施例B1)
−帯電制御材料の調整−
(シリコーン化合物側鎖アミノ基のアルキル化)
まず、ジメチルシリコーン鎖(−Si(CHO−)におけるメチル基(−CH)に、1級アミノ基が置換された反応性シリコーン系化合物として、「KF−865:官能基当量5000g/mol」(信越化学工業社製)を準備した。この側鎖に1級アミノ基を有するジメチルシリコーンオイル10質量部、ヨウ化エチル0.7質量部をイソプロピルアルコール50質量部と混合し、70℃で5時間加熱反応させることでアミノ基に二つのエチル基を付加させた後に精製し、下記構造式B1で示される、側鎖にジエチルアミノ基を有するシリコーン化合物を作製した。
生成物は赤外吸収スペクトルからジエチルアミノ基を有したジメチルシリコーン系化合物であることが確認された。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs、粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。この生成物(付加反応体)を、帯電制御材料とした。
なお、得られた帯電制御材料は、以下の構造式B1を有する化合物である。本化合物は、上記一般式(22−1)で示される化合物において、Xが、構造式(22−A)で示される基を表し、nが、1〜200を表し、mが1〜1000を表し、且つ構造式(22−A)において、Rが、プロピレン基を表し、Rが、エチル基を表し、Rが、エチル基を表す化合物である。
【0206】
【化19】

【0207】
次に、実施例A1と同様の泳動粒子分散液を使って以下の2種類の分散液を調製した。1)前記の2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式B1を有する化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、20Vの直流電圧を交互に印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式B1を有する化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0208】
(実施例B2)
−帯電制御材料の調整−
(シリコーン化合物側鎖エポキシ基のアミノ化)
側鎖にエポキシ基を有するジメチルシリコーンオイル(KF−101:官能基当量350g/mol:信越化学工業社製)10質量部、ジエチルアミン3質量gをイソプロピルアルコール50質量部と混合し、70℃で5時間加熱させてエポキシ基にジエチルアミノ基を付加反応させた後に精製し、下記構造式B2で示される、側鎖にジエチルアミノ基を有するシリコーン化合物を作製した。生成物は赤外吸収スペクトルからジエチルアミノ基を有したジメチルシリコーン系化合物であることが確認された。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs、粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。
【0209】
【化20】

【0210】
実施例A1と同様の泳動粒子分散液を使って以下の2種類の分散液を調製した。1)前記1)2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した下記構造式B2で示される、側鎖にジエチルアミノ基を有するシリコーン化合物(帯電制御材料)を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、20Vの直流電圧を交互に印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負、両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、下記構造式B2で示される、側鎖にジエチルアミノ基を有するシリコーン化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0211】
(実施例B3)
−帯電制御材料の調整−
(シリコーン化合物側鎖エポキシ基のカルボキシル化)
実施例B2と同様の側鎖にエポキシ基を有するジメチルシリコーンオイル(KF−101:官能基当量350g/mol)10質量部、アジピン酸8質量部をイソプロピルアルコール50質量部と混合し、70℃で5時間加熱させてエポキシ基にアジピン酸の一方のカルボキシル基を付加反応させた後に精製し、下記構造式B3で示される、側鎖にカルボキシル基を有するシリコーン化合物を作製した。生成物は赤外吸収スペクトルからカルボキシル基を有したジメチルシリコーン系化合物であることが確認された。また、生成物は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs、粘度2cs)に少なくとも100g/L以上溶解し、当該ジメチルシリコーンオイルに可溶であることがわかった。
【0212】
【化21】

【0213】
以下の方法によって正帯電の電気泳動粒子分散液を作製した。
実施例A4と同様のカチオン基をもった泳動粒子分散液を使って以下の2種類の分散液を調製した。1)前記の2csシリコーンオイル(信越シリコーン社製KF−96L−2cs)のみの分散液、および、2)前記分散液に上記で作製した構造式B3で示される、側鎖にカルボキシル基を有するシリコーン化合物を濃度0.1質量%で調製したもの。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、20Vの直流電圧を交互に印加して泳動方向を評価することで求めた結果、1)では正・負両極の泳動粒子が存在し、粒子の極性が揃っていないことが分かったが、2)では全ての粒子が負帯電であり、極性が揃っていることが明らかとなり、構造式B3で示される、側鎖にカルボキシル基を有するシリコーン化合物(帯電制御材料)は良好な帯電制御性を示した。また、電気的に基板上に粒子を付着させた後、電圧印加を止め、1時間放置し、放置前後の光学濃度の変化量を測定した結果、変化は無く、いわゆるメモリー性に優れていることがわかった。
【0214】
(実施例B4)
−光学素子モデル作製と評価2−
実施例A5と同様に、ITOガラス基板(5cm×10cm、厚み2mm)を1枚ずつ用意し、配線のための電極面を一部確保したオフセット形状で、またテープスペーサを外周部に形成(一部開口部を形成)することで、電極基板面を対向させて二枚の基板を100μmの間隔で張り合わせたセル構造体(空セル)を複数作製した。
酸化チタンを40質量%の濃度で含有するポリメタクリル酸メチルからなる体積平均粒子径が6μmの真球状粒子(積水化成品工業製)を10質量%でエタノール中に分散した分散液を調製し、これを前記セルに開口部から浸透後、エタノールを乾燥させて白色粒子を充填させた。
さらに、実施例B1からB3で記載した、構造式B1からB3で示される化合物(帯電制御材料)を含む泳動粒子分散液を各々減圧法で注入し、開口部を封止した評価光学素子を3種類作製した。
この作製した光学素子に20Vの極性の異なる直流電圧を交互に付与すると、いずれの素子も白色とマゼンタ色あるいはシアン色を交互に表すことができた。また繰り返し安定性も10万回以上あり、泳動粒子の凝集や分散性の低下も見られなかった。
さらに直流電圧を付与することによってマゼンタ色あるいはシアン色の各表示色を形成した状態での電圧付与を停止(電場をOFF)直後の表示濃度と、該電圧付与の停止から24時間経過後の各々の表示濃度をX−rite(X−rite社製)で測定したところ、変化はみられず、安定なメモリー性を示した。
【0215】
(比較例B−1)
実施例B1、B2で使用した付加反応させていない反応性シリコーンを添加して比較評価を行った。
実施例A1、A4で作製した泳動粒子分散液に、実施例B1、B2で使用した1級アミノ基をもったシリコーン化合物「KF−865:官能基当量5000g/mol」(信越化学工業社製)および側鎖にエポキシ基を有するジメチルシリコーンオイル「KF−101:官能基当量350g/mol」(信越化学工業社製)をそれぞれ0.5質量%の濃度で添加したものを調製した。
これら分散液中の電気泳動粒子の帯電極性を、2枚のITO電極基板間(電極間ギャップは100μm)に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価することで求めた結果、いずれの分散液においても正・負両極の泳動粒子が存在し粒子の極性が揃っていないことが分かった。これらの結果から、本実施例の帯電制御材料(付加反応体)を用いることで、極性を安定化することが判明し、本実施例の有効性を確認された。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】第1実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの粒子群の移動態様を模式的に示す説明図である。
【図3】第2実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図4】第2実施形態に係る表示装置における、印加する電圧と粒子の移動量(表示濃度)との関係を模式的に示す線図である。
【図5】表示媒体の基板間へ印加する電圧態様と、粒子の移動態様との関係を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0217】
10 表示装置
12 表示媒体
16 電圧印加部
18 制御部
20 表示基板
22 背面基板
24 間隙部材
34 粒子群
34Y イエロー粒子群
34C シアン粒子群
34M マゼンタ粒子群
36 大径着色粒子群
38 支持基板
40 表面電極
42 表面層
44 支持基板
46 背面電極
48 表面層
50 分散媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基を持つ反応性高分子と前記反応性高分子の反応性官能基に対して付加反応する反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物との第1反応付加体、並びに、反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物と前記反応性シリコーン系化合物の反応性官能基に対して付加反応するアミン化合物、ハロゲン化アルキル化合物及び多塩基性酸の少なくとも一つとの第2反応付加体から選択される少なくとも1種である帯電制御材料。
【請求項2】
第1反応付加体が、少なくとも下記一般式(1)で示される単量体単位を有する反応性高分子と一般式(1−A)及び一般式(1−B)で示される反応性シリコーン系化合物の少なくとも1種との付加反応物であることを特徴とする請求項1に記載の帯電制御材料。
【化1】

【請求項3】
前記第1反応付加体が、下記一般式(11)で示される構造単位を少なくとも含む高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【化2】

(前記一般式(11)中、Rは、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又はハロゲン基を表す。Rは、下記構造式(11−A)又は構造式(11−B)で示される基を表す。Rは、水素原子、炭素数1以上30のアルキル基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。Xは、−COOCHCH(OH)−で示される基を表す。pは、0又は1を表す。)
【化3】

(前記構造式(11−A)又は構造式(11−B)中、Rは、炭素数3以上10以下のアルキレン基を表す。Rは、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアミノアルキル基を表す。n1は、1以上1000の整数を表す。)
【請求項4】
前記第1反応付加体が、前記一般式(11)で示される構造単位のみからなる高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【請求項5】
前記第2反応付加体における反応性官能基を持つ反応性シリコーン系化合物が、下記一般式(2)で示される反応性シリコーン系である請求項1に記載の帯電制御材料。
【化4】

【請求項6】
前記第2反応付加体が、下記一般式(22)で示される構造単位を含む高分子化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【化5】

(前記一般式(22)中、Xは、下記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。)
【化6】

(前記構造式(22−A)又は構造式(22−B)中、R及びRは、各々独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基を表す。R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基、又は芳香族基を表す。)
【請求項7】
前記第2反応付加体が、下記一般式(22−1)で示される化合物である請求項1に記載の帯電制御材料。
【化7】

(前記一般式(22−1)中、Xは、前記構造式(22−A)又は構造式(22−B)で示される基を表す。mは、1以上1000の整数を表す。nは、1以上1000の整数を表す。)
【請求項8】
電界に応じて移動する表示用粒子を含む粒子群と、
前記粒子群を分散する分散媒しての分散媒と、
前記分散媒に含まれる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の帯電制御材料と、
を有することを特徴とする表示用粒子分散液。
【請求項9】
少なくとも一方が透光性を有する一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された、請求項8に記載の表示用分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【請求項10】
一対の電極と、
前記一対の電極間に封入された、請求項8に記載の表示用分散液と、
を備えたことを特徴とする表示媒体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の表示媒体と、
前記表示媒体の前記一対の基板間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132809(P2010−132809A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311161(P2008−311161)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】