説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】長期間の繰り返し使用によっても、汚れ画像、放電不良画像及び過放電画像を抑制した良好な画像を出力することができる帯電部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体と表面層とを有する接触帯電用の帯電部材であって、
該表面層は、バインダー樹脂と該バインダー樹脂中に分散している樹脂粒子を含み、表面に該樹脂粒子に由来する凸部を有し、その表面における十点平均粗さRzjisが2μm以上30μm以下であり、凹凸の平均間隔Smが15μm以上150μm以下であり、
該表面層中の該樹脂粒子の平均粒径の値が1μm以上30μm以下の範囲にあり、該表面層中の該樹脂粒子の80個数%以上が円形度0.9以上であり、
該樹脂粒子は、平均粒径10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含み、かつ該樹脂粒子は導電性を有していることを特徴とする帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、詳しくは、電圧を印加して被帯電体である電子写真感光体表面を所定の電位に帯電処理するための帯電部材、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」ということがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置では、電子写真感光体(単に「感光体」ともいう)を一次帯電する方法として、接触帯電方法が実用化されている。これは、低オゾン、低電力を目的としており、中でも、帯電部材が導電性ローラであるローラ帯電方式が、帯電の安定性という点で好ましいので、広く用いられている。
【0003】
ローラ帯電方式では、導電性の弾性ローラを被帯電体に加圧当接させ、該ローラに電圧を印加し放電することにより被帯電体を帯電する。具体的には、放電開始電圧(OPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させた場合には、約550V)に、必要とされる感光体表面電位Vdを足した直流電圧(DC電圧)を印加することで帯電を行うDC帯電方式がある。さらに、環境・耐久変動による電位の変動を改善する目的で、必要とされる感光体表面電位Vdに相当するDC電圧に放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つ交流成分(AC成分)を重畳した電圧を接触帯電部材に印加して帯電を行うAC帯電方式がある。
【0004】
DC帯電方式は、AC帯電方式に比べて一般的に電源コストは安いという利点がある。しかしながら、DC帯電方式はAC帯電方式に比べ放電領域が狭く、AC放電電流での均し効果が無いために、帯電部材の微小な抵抗値ムラに起因した横スジ状の帯電不良(放電不良画像)が発生しやすいといった問題があった。本不良は、特に低湿環境において発生しやすい傾向にある。
【0005】
そこで、DC帯電方式に用いる帯電部材において、帯電部材の表面層に被導電性の有機微粒子を含有させ、凹凸を形成させることによって、横スジ状の帯電不良を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
なお、上記課題を改善するためではないが、導電性を有する粒子を使用する提案もなされている(特許文献2〜6)。
【0007】
しかしながら、帯電部材の表面層に被導電性の有機微粒子を含有させて、帯電部材の表面に凹凸を形成させる方法では、電子写真感光体(被帯電体)表面に残る外添剤等が凹部に堆積しやすく、それに伴い凹部の帯電能力が低下し、帯電ムラになる場合がある。
【0008】
また、近年、形成される画像の高画質化が要求され、それに伴いトナーが小粒径化し、極めて微粒子化したトナーの割合も増加してきている。さらに、トナーが高機能化され、様々な外添剤も使用されている。それゆえに帯電部材がさらに外添剤等により汚染される傾向にある。
【0009】
また、電子写真画像形成装置の長寿命化、カラー化に伴い、帯電部材及び電子写真感光体を含むユニットの耐久寿命が伸び、長期使用あるいは大量出力されている。そのため電子写真感光体との接触時間(接触距離)も長くなり、付着物の堆積量がより多くなり、以前の耐久枚数では発生しなかった画像不良も耐久寿命後半で顕在化してくる場合がある。
【0010】
特に低湿環境において、帯電部材凹部へトナー等の堆積による影響を受け、縦スジやポチといった画像不良(汚れ画像)が発生する場合がある。
【0011】
さらに、導電性を有する微粒子を使用した場合には、特に、高温高湿環境において白ポチ状の過放電画像が発生してしまうことがある。
【0012】
すなわち、DC帯電方式において、高画質化、カラー化及び長寿命化を達成する上で、これらは解決しなければならない問題として残っている。
【特許文献1】特開2003−316112号公報
【特許文献2】特開平04−133077号公報
【特許文献3】特開平08−185013号公報
【特許文献4】特開2003−208825号公報
【特許文献5】特開2003−223811号公報
【特許文献6】特開2003−162106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、上記問題を解決した、優れた特性を有し、高画質化、カラー化及び長寿命化された帯電部材を提供することにある。また、本発明の他の課題は、該帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、帯電部材が最も外側の層(表面層)に特定の導電性樹脂粒子を含むならば、良好な帯電性が達成されること、すなわち帯電部材の長寿命化が達成できることを見出し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0016】
導電性支持体と表面層とを有する接触帯電用の帯電部材であって、
該表面層は、バインダー樹脂と該バインダー樹脂中に分散している樹脂粒子を含み、表面に該樹脂粒子に由来する凸部を有し、その表面における十点平均粗さRzjisが2μm以上30μm以下であり、凹凸の平均間隔Smが15μm以上150μm以下であり、
該表面層中の該樹脂粒子の平均粒径の値が1μm以上30μm以下の範囲にあり、該表面層中の該樹脂粒子の80個数%以上が円形度0.9以上であり、
該樹脂粒子は、平均粒径10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含み、かつ該樹脂粒子は導電性を有していることを特徴とする帯電部材。
【0017】
前記最外層中の樹脂粒子の90個数%以上が、前記平均粒径の値をAとするとき、A/5以上5×A以下の粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【0018】
前記表面層中の樹脂粒子の80個数%以上が、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材:
1.0≦B≦1.5
(Bは、1つの樹脂粒子の長径と短径の比(長径/短径)である。)。
【0019】
前記樹脂粒子の断面を観察した時に、カーボンブラックが断面を占める割合(カーボンブラックの断面占有率)が30%以上90%以下である上記の帯電部材。
【0020】
前記カーボンブラックの平均粒径(μm)が、A/10以下である上記の帯電部材。
【0021】
前記表面層が、さらに、平均粒径0.01μm以上0.9μm以下の導電性微粒子を含む上記の帯電部材。
【0022】
少なくとも、上記の帯電部材と被帯電体とが一体化されてなり、帯電部材の表面の凸部で被帯電体とのニップ部において空隙を生じており、電子写真画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0023】
少なくとも、上記の帯電部材と、被帯電体と、露光手段と、現像手段とを有する電子写真画像形成装置であって、該帯電部材は、該被帯電体と共にニップ部を形成するように該被帯電体に接触して配置されており、該ニップ部においては、該帯電部材の表面の前記樹脂粒子に由来する凸部により空隙を生じていることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【0024】
帯電部材に直流電圧のみが印加されて、被帯電体を帯電する上記の電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、DC帯電方式によって、例えば600dpiの中間調画像の様な高精細画像を出力した場合においても、良好な帯電特性を長期間安定して維持することができる帯電部材を提供することができる。
【0026】
さらに、本発明の帯電部材を使用することにより、DC帯電方式によって高精細画像を出力した場合においても、良好な帯電特性を長期間安定して維持することができる帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の帯電部材は、上記したように、導電性支持体の上に、少なくとも導電性の表面層を有する接触帯電用の帯電部材であって、表面層が、バインダー樹脂にを分散して含むものであり、該樹脂粒子に由来する凸部が帯電部材の表面に形成されており、その表面粗さが、十点平均粗さRzjis 2μm以上30μm以下であり、凹凸の平均間隔Sm 15μm以上150μm以下であり、該樹脂粒子が、平均粒径1μm以上30μm以下であり、円形度0.9以上の粒子の割合が80%以上であり、かつ、該樹脂粒子が、平均粒径10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含み、かつ、該樹脂粒子は導電性を有することを特徴とする。
【0028】
まず、本発明の帯電部材について、その構造を図1により説明する。
【0029】
本発明の帯電部材は、表面が導電性である支持体(導電性支持体)1に、少なくとも導電性である表面層3が形成されている。そして、導電性支持体1と表面層3の間には、帯電部材5として必要な機能、例えば、柔軟性、帯電安定性等を付与するため、弾性被覆層2、抵抗層等が形成されていてもよい。なお、図1は、ローラ形状の帯電部材で、導電性支持体1、弾性被覆層2及び表面層3からなるものの断面図である。なお、本明細書では、導電性支持体1に表面層3が直接形成されている時は該支持体を、また、導電性支持体1に弾性被覆層2等が形成されている時は表面層が形成される直前のものを、「導電性支持基体」あるいは「支持基体」ということがある。
【0030】
本発明では、部分断面図(図2)で示すように、表面層3は、支持基体21の上に形成され、かつ、導電性を有する樹脂粒子22を含んでいる。そして、この導電性を有する樹脂粒子22により、帯電部材の表面23に凸部27が形成されている。
【0031】
本発明者らは、まず、帯電部材の表面に凸部を形成するために粗し剤として、上記したような導電性を有する樹脂粒子を使用したとき、その樹脂粒子がどのように作用しているかを考察した。
【0032】
すなわち、まず、帯電部材の表面に凸部を形成すると、何故、横スジ状の帯電不良が改善するのかを検討した。そこで、本発明者らはDC帯電方式におけるスジ状の帯電不良を解析するため、帯電部材の放電状態(感光体表面電位)を観察した。
【0033】
その結果、表面層3が樹脂粒子を含有していない平滑な表面23の帯電部材では、感光体表面24とのニップ部両脇の空隙で放電25するのみであり、ニップ内での放電は観察されなかった(図3)。しかし、絶縁性の樹脂粒子26により凸部27を形成した帯電部材では、感光体とのニップ部両脇での放電に加え、ニップ内でも放電25が起きていることが確認された(図4)。なお、図3、4において、29は表面層3に導電性を与えるために添加されたカーボンブラック等の微細な導電剤である。
【0034】
つまり、帯電部材の表面層3が絶縁性の樹脂粒子26を含有すると、帯電部材の表面23に微小な凸部27が形成される。微小な凸部27を有する帯電部材を接触帯電のために用いると、被帯電体である感光体とのニップ部で、微小な空隙が形成され、そこで放電25が起きる(図4)。すなわち、ニップ部上流側の空隙で発生した横スジ状の帯電不良が、ニップ内の放電で均されていると考えられる。
【0035】
一方、表面に凹凸を形成した帯電部材において、耐久寿命途中に放電不良画像や汚れ画像が発生する現象を以下のように考察される。
【0036】
前述したように帯電部材の表面に凹凸を形成させる方法では、凹部に外添剤等28が堆積しやすく、その影響で凹部の帯電能力が低下していくと考えられる(図5)。これにより、耐久途中から放電不良画像が発生すると共に、汚れが堆積した部分で放電しなかったり、過放電が発生したりしまうことにより、汚れ画像が発生すると考えられる。
【0037】
帯電部材の表面23に凸部27を形成するための粗し剤として、導電性を有する樹脂粒子22を表面層に含ませると、例え、凹部に外添剤等28が堆積したとしても、凸部27の斜面から放電25が維持できる。そのために、放電不良画像及び汚れ画像の抑制効果があるものと考えられる(図6)。
【0038】
したがって、導電性を有する樹脂粒子により表面に凸部が設けられた帯電部材では、長期間の繰り返し使用によっても、放電不良画像や汚れ画像の発生を抑制することができる。さらに、このような帯電部材は、放電不良や汚れが画像上影響を受けやすいDC帯電方式に使用することが可能となり、耐久性を維持することが可能となる。
【0039】
本発明の帯電体に用いられる導電性支持体は、例えば、炭素鋼合金表面に5μmの厚さのニッケルメッキを施した円柱である。導電性支持体を構成する他の材料としては、鉄、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル等の金属;これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮、青銅等の合金;カーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料などが使用できる。また、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。なお、形状としては、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒状、板状、ベルト状とすることもできる。
【0040】
本発明の帯電部材の表面層は、バインダー樹脂に少なくとも導電性を有する樹脂粒子を含むものである。
【0041】
本発明の帯電部材の表面層に使用するバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられ、具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0042】
本発明で該バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂が好ましく、特に好適には、ラクトン変性アクリルポリオールを用い、イソシアネート化合物とで架橋したウレタン樹脂である。
【0043】
ここで用いるイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表面層がより密に架橋することができ、導電性弾性層から低分子成分がローラ表面に染み出してくるのを一層効果的に防止することができる。また、該イソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック剤でブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由は、イソシアネート基は反応し易く、表面層塗工用塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう場合があるからである。これに対してブロックイソシアネートでは、活性なイソシアネート基がブロックされており、ブロック結合は解離温度までは解離しないので、塗料の取扱が容易になるというメリットがある。この目的のブロック剤としては、フェノール、クレゾールのようなフェノール類、ε−カプロラクタムのようなラクタム類及びメチルエチルケトオキシムのようなオキシム類が挙げられる。本発明では、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
【0044】
また、ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は50〜150KOHmg/gであることが好ましい。OH価が小さいと、イソシアネートで架橋されにくくなり、それによって樹脂が柔らかくなり過ぎて感光体に貼り付き易くなる。OH価が大き過ぎると塗膜が硬くなり過ぎて衝撃を受けたときに割れ易くなる。
【0045】
本発明では、該ラクトン変性アクリルポリオールとしては、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であることが好ましく、かかる分子鎖骨格を有していると、ラクトン変性鎖とあいまって、適度な硬度と非汚染性が発揮される。また、ラクトン変性鎖の末端に存在する水酸基が多数の架橋点となり、イソシアネート化合物で密に架橋することが可能であり、導電性弾性層から低分子成分が染み出すのを防止することができる。
【0046】
表面層のガラス転移温度Tgは、粘弾性測定法によるピーク温度で45℃以上が好ましく、特に、50℃以上あることが好ましい。該Tgが45℃未満であると、感光体と帯電部材を当接したまま長期間放置した場合、感光体に貼り付いてしまったり、帯電部材の表面がトナー等によって汚れ易くなったりするという弊害があり、好ましくない。一方、特に限定はしないが、あまり該Tgが高過ぎても表面層の可撓性がなくなり、割れ易くなるので好ましくない。なお、表面層のTgは、ラクトン変性アクリルポリオールを使用した場合、架橋させるイソシアネート化合物の種類、使用量等によって適宜調節することができる。
【0047】
なお、表面層のガラス転移温度Tgの測定は以下のようにして行う。測定試料は、帯電部材の表面層を剥がす、又は、表面層用塗料をPET樹脂シートやフッ素系樹脂シートの上に塗布し、塗膜を形成した後に剥がし測定用フィルムを得、得られたフィルムを5mm×40mm程度の短冊形に切り出して作製する。測定装置としては、動的粘弾性測定装置「RSA−II」(商品名、レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製)を用い、また、治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。Tg測定は、−50℃乃至150℃の範囲において、測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/min及び初期歪0.07%乃至0.25%のオートテンションモードで行う。動的粘弾性の損失正接tanδの温度分散を測定し、この時に測定されたピーク温度をTgとする。
【0048】
ラクトン変性アクリルポリオール樹脂に対しイソシアネート化合物の使用量は塗料中でイソシアネート化合物のNCO基のモル数(NCO)とラクトン変性アクリルポリオール樹脂のOH基のモル数(OH)との比(NCO/OH)で0.1乃至2.0が好ましい。特に好ましくは0.3乃至1.5の範囲になるようにする。
【0049】
ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネート化合物で架橋することにより、導電性弾性層からの低分子成分が染み出すのを防止するとともに、帯電部材自体がトナー、外添剤等で汚れにくく、かつ感光体を汚染しない表面層を形成することができる。
【0050】
表面層を形成する樹脂塗料には、レベリング剤を混合してもよい。レベリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
【0051】
本発明帯電部材は、バインダー樹脂に少なくとも導電性を有する樹脂粒子が配されている。表面層に配される樹脂粒子は、導電性を有していることが必要であるが、その導電性を得るために一次粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含有する。該樹脂粒子の概略断面図を図7に示す。
【0052】
すなわち、本発明で使用される樹脂粒子はその内部に一次粒子の平均粒子径10nm以上300nm以下のカーボンブラック29が配されており、結着樹脂30により構成されている。
【0053】
該カーボンブラックの上記平均粒子径が10nmより小さい場合、前述した汚れ画像及び放電不良画像を十分に抑制するために必要な導電性を得ることができないことがある。また、300nm超の場合には、樹脂粒子中に異常な電流を流す部分を形成してしまう可能性が高くなり、過放電画像を十分に抑制できないことがある。
【0054】
樹脂粒子に使用する樹脂として、例えば、PMMA、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等又はこれらの共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0055】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンのようなカーボン粉等が挙げられる。ケッチェンブラック(商品名)は、ストラクチャーが発達しているために、上記の平均粒径を得ることが難しく、好ましくない。
【0056】
ファーネスブラックとして、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、I−ISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEF、GPF、SRF−HS−HM、SRF−LM、ECF、FEF−HS等が使用可能である。また、サーマルブラックとしては、FT、MTが使用できる。
【0057】
樹脂粒子の抵抗の安定性を考慮すると、中性に近いカーボンブラックを選択することが特に好ましい。
【0058】
表面層中の導電性を有する樹脂粒子の平均粒径の値は1μm以上30μm以下の範囲にある。より好ましくは、2μm以上20μm以下の範囲にある。平均粒径が上記の数値範囲内にあれば、放電不良画像を十分に抑制することができる。また、前述した汚れ画像、過放電画像を十分に抑制できる。
【0059】
一方、表面層中の導電性を有する樹脂粒子の80個数%以上は、円形度0.9以上である。粒子が真円から離れてしまえばしまう程、樹脂粒子同士の電荷の流れは不均一となり、表面層を流れる電荷の流れが不均一となる。そのため、電荷が集中してしまう部分が存在することになる。また、不定形な部分が表面層表面に形成された場合、トナーや外添剤が堆積しやすくなり、汚れ画像の発生を促進してしまうことがある。
【0060】
しかし、樹脂粒子の80個数%以上を円形度0.9以上とすることにより、上記の課題を有効に改善できる。
【0061】
また、表面層中の樹脂粒子の90個数%以上は、その平均粒径(μm)の値をAとしたとき、A/5以上5×A以下の粒径を有することが好ましい。特には、A/3以上3A以下の粒径を有することがより好ましい。上記形状が90%未満では、粒径の大きく異なる樹脂粒子が表面層中に存在する確率が増大する。これにより、電荷の流れが均一でなくなり、放電が集中するため、特に、過放電画像の抑制効果を低減してしまう可能性がある。5Aより大きな粒子が多い場合は、それ単体で過放電を誘発しやすくなるため、A/5未満の粒子が多い場合は、粒子の凝集が発生しやすくなるため、過放電画像の抑制効果が低減するものと推察される。
【0062】
さらに、表面層中の前記樹脂粒子の80個数%は、1つの樹脂粒子の長径/短径の比をBとするとき、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.0≦B≦1.5。
特には以下の関係を満たすことが好ましい。
1.0≦B≦1.3。
【0063】
この範囲の粒子が80%未満であると、特に、過放電画像の抑制効果が低減してしまう可能性がある。この形状範囲から離れるに従って、樹脂粒子は針状形状に近くなるのであるが、その場合には、表面層の電荷の流れに偏りができてしまい、放電が集中する部分が発生してしまう。また、粒子輪郭が鋭角であるような樹脂粒子の割合が上昇し、この鋭角な部分が、帯電部材表面に形成された場合、トナーや外添剤が堆積しやすくなり、汚れ画像の抑制効果を低減してしまう可能性がある。
【0064】
なお、表面層中の樹脂粒子の上記平均粒径等の形状は、以下の様にして算出する。表面層のある任意の点を500μmにわたって、20nmずつ集束イオンビーム「FB−2000C」(商品名、株式会社日立製作所製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして同じ樹脂粒子を撮影した画像を、20nm間隔で組み合わせ、立体的な粒子形状を算出する。この作業を、帯電部材の表面層の任意の100点で行う。
【0065】
樹脂粒子の平均粒径は、上記で得られた立体的粒子形状から、投影面積を算出し、得られた面積の円相当径を計算する。この円相当径から体積平均粒径を求め、それを平均粒径Aとする。また、上記した粒度分布は、この体積平均粒径としての分布である。
【0066】
樹脂粒子の円形度は、上記粒子形状から下記計算式により求める。
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
ここで、「粒子投影面積」とは二値化された樹脂粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは樹脂粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さである。かかる円形度は、粒子が完全な球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0067】
表面層中の導電性を有する樹脂粒子の長径/短径の比Bについても、上記立体的粒子形状の最大径と最小径から求める。
【0068】
また、樹脂粒子中に内包するカーボンブラックの平均粒径については、樹脂粒子を撮影した断面画像から、任意のカーボンブラック粒子100個を選択する。そして、カーボンブラック粒子の投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒径を求め、それをカーボンブラック粒子の平均粒径として求めることができる。この時、円相当径が5nm乃至500nmの範囲にある粒子のみを、測定対象として測定した。
【0069】
本発明で用いる導電性を有する樹脂粒子を得る方法としては、以下に述べる様な方法が好ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、樹脂とカーボンブラックとを混練してカーボンブラックを樹脂中に分散させた後、冷却固化し、その後粉砕し、機械的処理及び熱的処理により球形化し、分級して樹脂粒子を得る方法がある。また、重合性単量体中に重合開始剤、カーボンブラック及びその他の添加剤を加え、分散機によって均一に分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中に撹拌機によって所定の粒子径になる様に懸濁させて重合を行うという方法が挙げられる。
【0070】
本発明における、樹脂粒子の導電性としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以上101Ω・cm以下であることが好ましく、更には、108Ω・cm以上102Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0071】
樹脂粒子の体積抵抗率は23℃/50%RH環境下で、抵抗測定装置「Loresta−GP」(商品名、三菱化学株式会社製)を用い、試料に10Vの電圧を印加したときの測定値とする。なお、測定対象試料としては、10.1MPa(102kgf/cm2)の圧力をかけて圧縮したものを用いる。
【0072】
また、導電性を有する樹脂粒子そのものの平均粒径は、二次凝集した粒子を除いた1次粒子のみを透過型電子顕微鏡(TEM)にて100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して体積平均粒径を求めたものである。また、該樹脂粒子そのものの粒度分布は、この体積平均粒径を求めた時の分布である。
【0073】
更に、導電性を有する樹脂粒子そのものの円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として一般的に用いられているものであり、フロー式粒子像分析装置による粒子形状を検出し、粒子形状から上記計算式により求めることができる。
【0074】
なお、測定には、フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」(商品名、東亜医用電子株式社製)を用いる。本装置で測定したデータであっても、上記計算式の「粒子投影面積」とは二値化され樹脂粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは樹脂粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さである。本発明の導電性を有する樹脂粒子の円形度は、各粒子の円形度を算出した後、この算出した円形度を次の方法で平均値を求めて得られた値である。つまり、円形度0.400〜1.000を、0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満、・・・、0.990以上1.000未満及び1.000の61分割した分割範囲に分類する。次いで、各分割範囲に属する粒子数と分割範囲の中央値から粒子全体の平均値として算出する。なお、円形度は、粒子が完全な球形の場合には1.000であり、表面形状が複雑になる程、小さな値となることは、上記と同じである。
【0075】
樹脂粒子の円形度の具体的な測定方法としては、次のようにする。すなわち、容器に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの界面活性剤を少量加えた後、測定試料0.02gを加え、均一に分散させる。分散は、超音波分散機「UH−50型」(商品名、株式会社エスエムテー製)に振動子としてφ5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間処理する。その際、該分散液の温度が40℃以上とならないように適宜冷却する。その後、フロー式粒子像測定装置を用い、測定時の樹脂粒子の濃度が3000個/μl以上10000個/μl以下となるように分散液濃度を再調整し、樹脂粒子を100個以上について計測する。
【0076】
本発明の樹脂粒子におけるカーボンブラックの断面占有率は30%以上90%以下が好ましい。30%未満であると、複合粒子の導電性が低下する傾向にあり、特に、放電不良画像の抑制効果を低減してしまう可能性がある。また、90%超であると、カーボンブラック粒子の凝集を引き起こしやすくなり、特に、過放電画像の抑制効果を低減してしまう可能性がある。
【0077】
ここで、断面占有率は、平均粒径を算出するために表面層で撮影した断面画像において、それぞれの断面画像で樹脂粒子の断面積と、カーボンブラック断面積の総和とを算出し、カーボンブラックの占有率を算出する。すべての断面画像で得られた占有率の平均をもって、樹脂粒子におけるカーボンブラックの断面占有率とする。
【0078】
本発明の樹脂粒子におけるカーボンブラックの平均粒径は、A/10以下であることが更に好ましい。本範囲にすることにより、前述した樹脂粒子における異常な電流の流れを確実に抑制することが可能になり、特に、過放電画像の抑制に効果を奏することができる。
【0079】
樹脂粒子の含有量としては、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは2質量部以上120質量部以下、より好ましくは5質量部以上100質量部以下、更に好ましくは、5質量部以上80質量部以下の範囲で、より効果を奏することができる。
【0080】
この樹脂粒子が粗し剤として表面層に配されている時、弾性を有するため無機粒子に比べて被帯電体である感光体を傷つける恐れが少ない。
【0081】
表面層の膜厚は、粗し剤として用いる樹脂粒子の平均粒径Aに対して、好ましくは、A/3倍以上10A以下、より好ましくは、A/2以上5A以下である。なお、樹脂粒子の粒径に比して、表面層の膜厚が厚すぎると、膜中に樹脂粒子が埋もれて帯電部材表面に樹脂粒子由来の凸部が形成しにくくなるので好ましくない。逆に、薄すぎると、感光体との接触や摺擦で樹脂粒子が欠落する恐れがあるので好ましくない。
【0082】
なお、表面層の膜厚は、ローラ状の帯電部材にあっては、その表面層を軸方向3箇所、円周方向3箇所の計9箇所を鋭利な刃物で切り出して、その断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して測定することができ、その平均値を当該帯電部材の表面層の膜厚とする。ベルト状、板状の帯電部材では、表面層を上記と同様に分散した9箇所を切り出し、膜厚を測定する。
【0083】
本発明の帯電部材の表面粗さは、十点平均粗さRzjisで2μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下であることが、また、表面凹凸の平均間隔Smで15μm以上150μm以下であることが好ましい。なお、帯電部材の表面粗さを上記の範囲とすることにより、前述した放電不良画像、汚れ画像及び過放電画像の抑制効果を十分に発現することができる。
【0084】
帯電部材のRzjisがあまり大き過ぎると帯電部材表面がトナーや外添剤等で汚れやすくなると同時に、放電不良を引き起こす恐れがあり、小さすぎるとスジ状の帯電不良を抑制する効果(ニップ内放電)が現れにくく好ましくない。なお、Rzjisが2μm未満では、ニップ内放電がほとんど発生しないことを本発明者らは確認している。
【0085】
また、表面凹凸の平均間隔Smが15μm未満では、帯電部材表面にトナーや外添剤等の汚れが堆積しやすく、汚れ画像の発生を抑制する効果が低減してしまう可能性があり、150μm超では、放電不良画像の発生を抑制する効果が低減してしまう可能性がある。
【0086】
帯電部材の表面粗さ(Rzjis及びSm)は、JIS B0601−2001に基づき、表面粗さ計「サーフコーダーSE3400」(商品名、株式会社小坂研究所製)にて、軸方向3箇所、その円周方向2箇所の計6箇所を測定し、その平均値とする。なお、本明細書中では、接触針を先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとしたものである。
【0087】
上記範囲の表面粗さを有する帯電部材とするため、導電性支持基体の表面粗さ、表面層の膜厚、表面層へ配する樹脂粒子の平均粒子径や添加量等を調整する。なお、感光体とのニップ部において、帯電部材の表面の凸部に由来した空隙を形成するためには、導電性支持基体の表面粗さを小さくし、樹脂粒子の平均粒子径と添加量で表面粗さを調整した方が好ましい傾向にあった。一方、導電性支持基体で表面粗さを調整した場合は、樹脂粒子で表面粗さを調整した場合に比べて、スジ状の帯電不良を抑制する効果が小さい傾向にあった。特に、導電性支持基体が導電性弾性層を有するときには、その導電性弾性層が比較的柔らかく、感光体との当接圧力によって圧縮変形して、十分な空隙を形成できないためと推察される。
【0088】
本発明の帯電部材は、感光体の帯電を良好なものとするため、通常、電気抵抗が、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1×104Ω以上であり、15℃/10%の低温低湿の環境中では1×108Ω以下であることが好ましい。なお、帯電部材の電気抵抗は、ローラ形状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」ということがある)にあっては、以下のようにして測定する。
【0089】
帯電ローラの電気抵抗の測定のようすを示す模式図を図8に示す。
【0090】
帯電ローラ5の両端で露出している支持体1を、荷重のかかった軸受け33、33により感光体と同じ曲率の円柱形金属32に、平行になるように当接させる。この状態で、モータ(不図示)により円柱形金属32を回転させ、当接した帯電ローラ5を従動回転させながら安定化電源34から直流電圧−200Vを印加する。この時に流れる電流を電流計35で測定し、帯電ローラの抵抗を計算する。なお、本明細書中では、荷重は各5Nとし、金属製円柱は直径φ30mmのものであり、金属製円柱の回転は周速45mm/secである。
【0091】
本発明では、表面層は、帯電部材の電気抵抗を上記とする為に、体積抵抗率が、以下の各環境下で、1×106Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが好ましい。
・15℃/10%RH(LL)環境;
・23℃/50%RH(NN)環境;及び
・30℃/80%RH(HH)環境。
【0092】
表面層の体積抵抗率がこれよりも小さいと、帯電部材として使用した場合、感光体にピンホールがある時にピンホールに過大な電流が流れて印加電圧が電圧降下し、ピンホール部の長手方向全域が帯状の帯電不良となって画像に表れてしまうので好ましくない。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、帯電ローラに電流が流れにくくなり、感光体を所定の電位に帯電することができず画像が所望する濃度にならないという弊害が発生する場合がある。また、ある程度の電位に帯電したとしても帯電能力が低いためゴースト画像等の弊害が現れてしまうので好ましくない。
【0093】
表面層の体積抵抗率は、下記のようにして作製した測定用サンプルを、微小電流計「ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER」(商品名、株式会社アドバンテスト製)にて測定する。なお、測定サンプルに電圧200Vを30秒印加後に電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。測定用サンプルは、帯電部材の表面層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出し、その両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを形成し、あるいはアルミシートの上に表面層塗料を塗布して塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して、作成する。
【0094】
表面層の体積低効率を上記範囲とするために、導電性を有する樹脂粒子とともに、イオン導電剤、電子導電剤等の導電剤を用いることが好ましい。
【0095】
イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されるものではない。イオン導電剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウムのような無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートのような陽イオン性界面活性剤;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタインのような両性イオン界面活性剤;過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウムのような第四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウムのような有機酸リチウム塩などが使用できる。中では、環境変化に対して抵抗が安定なことから、特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適である。
【0096】
電子導電剤としては、電子導電性を示す電子導電剤であれば特に限定されるものではない。電子導電剤としては、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀のような金属系の粒子や繊維;酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛のような金属酸化物;適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウム等の導電性金属、金属酸化物を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粒子;ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボンのようなカーボン粉などが使用できる。なお、ファーネスブラック、サーマルブラックは、上述したものが支障なく使用できる。
【0097】
これら導電剤は、単独で使用しても良く、2種類以上組み合わせて用いても良い。なお、表面層に導電剤を使用する場合は、環境などの外的因子に影響を受けにくいものが好ましく、そのため、一般的には電子導電剤を用いる。
【0098】
導電剤は、平均粒径が0.01μm以上0.9μm以下、好ましくは、0.01μm以上0.5μm以下である導電性微粒子であることが好ましい。この範囲であれば、表面層の体積抵抗率の制御を容易にし、導電性を有する樹脂粒子含有による効果を阻害することなく、導電剤添加の効果を奏することが可能になる。
【0099】
表面層に加えるこれらの導電剤の添加量は、表面層の体積抵抗率が上記範囲になるように決めることが好ましく、通常、表面層に対して2質量%乃至80質量%、好ましくは20質量%乃至60質量%の範囲が適当である。
【0100】
ここで用いる導電剤は、表面がカップリング剤で表面処理されていてもよい。なお、好ましいカップリング剤は、同一分子内に加水分解可能な基と疎水基を有し、珪素、アルミニウム、チタン又はジルコニウム等の中心元素に結合している化合物で、この疎水基部分に長鎖アルキル基を有するものである。
【0101】
加水分解基としては、例えば比較的親水性の高い、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基のようなアルコキシ基が挙げられる。その他、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、これらの変性体及びハロゲンでもよい。また、疎水基としては、その構造中に炭素原子が6個以上直鎖状に連なる炭化水素構造を含むものであればよく、中心元素と、カルボン酸エステル結合、アルコキシ結合、スルホン酸エステル結合又は燐酸エステル結合で、あるいは直に結合していてもよい。更に、疎水基の構造中に、エーテル結合、エポキシ基及びアミノ基のような官能基を含んでもよい。カップリング剤処理することで導電剤表面への水分の吸着を抑え、より環境変動が小さい表面層とすることができる。
【0102】
なお、この目的で使用するカップリング剤としては、反応性が高いシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0103】
本発明においては、表面層に、導電剤以外に絶縁性の無機粒子を添加してもよい。無機粒子としては、シリカや酸化チタンが好ましい。なお、シリカや酸化チタンの一次粒子径は0.5μm以下の微粒子であることが好ましい。さらに、本発明においては、シリカや酸化チタンは表面処理されているものを用いてもよい。
【0104】
表面処理は、シリカや酸化チタンと反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによってできる。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粒子をシランカップリング剤で処理する方法、シリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法、シランカップリング剤で処理した後或いはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルのような有機ケイ素化合物で処理する方法などが例示できる。
【0105】
ここで表面処理に使用できるシランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0106】
また、表面処理に使用できる有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられ、25℃における粘度が30センチストークス乃至1000センチストークスのものが好ましい。該シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイルやフッ素変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0107】
シリコーンオイルによる表面処理の方法としては、シランカップリング剤で処理されたシリカ微粒子とシリコーンオイルをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、シリカ微分体ヘシリコーンオイルを噴射する方法によってもよい。また、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粒子と混合し、溶剤を除去することによってもよい。
【0108】
無機粒子の添加量は、表面層中、0.1質量%乃至30質量%が好ましい。少なすぎると無機粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多すぎると表面層形成の際に用いる塗料の粘度の制御に時間を要することになる。
【0109】
本発明においては、導電性支持体と表面層が必須であるが、導電性支持体と表面層の間に帯電部材としての機能を向上させるために、少なくとも1層の導電性弾性層を設けることが好ましい。また、該導電性弾性層のほかに抵抗層等が設けられていてもよい。さらに、これら導電性支持体の上に設けられる各層は、その表面が各種処理されていても良く、また、導電性支持体には直接毛制される層との接着性を往生させるために接着剤が予め塗布されていても良い。
【0110】
なお、導電性弾性層は導電性弾性体からなり、そして、導電性弾性体は、少なくとも導電剤と高分子弾性体から構成されている。
【0111】
高分子弾性体としては、エピクロルヒドリンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等の熱可塑性エラストマーなどが適当である。なお、高分子弾性体としては、エピクロルヒドリンゴムが、ポリマー自体が中抵抗領域の導電性を有し、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性が発揮することができ、位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることが出来るので、好適に用いられる。
【0112】
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン(EP)単独重合体、EP−エチレンオキサイド(EO)共重合体、EP−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体及びEP−EO−AGE三元共重合体が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、EP−EO−AGE三元共重合体が特に好適である。なお、EP−EO−AGE三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。エピクロルヒドリンゴムを主成分として用いた場合、必要に応じて、その他の一般的なゴムを適宜配合する。
【0113】
その他の一般的なゴムとしては、EPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等を用いることができる。また、SBS、SEBS等の熱可塑性エラストマーを用いてもよい。上記の一般的なゴムを配合する場合、高分子弾性体全量に対し1質量%乃至50質量%であるのが好ましい。
【0114】
導電剤としては、イオン導電剤又は電子導電剤を用いることができる。導電性弾性層の電気抵抗のムラを小さくするという目的では、イオン導電剤を含有することが好ましい。イオン導電剤では、高分子弾性体の中に均一に分散しやすく、導電性弾性体の電気抵抗が均一化となり、帯電部材に直流電圧のみを印加したときでも均一な帯電を得ることができる。
【0115】
イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されるものではない。イオン導電剤としては上記表面層に使用できるものが支障なく使用できる。なお、イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから、過塩素酸4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0116】
電子導電剤としては、電子導電性を示す電子導電剤であれば特に限定されるものではない。電子導電剤としては上記表面層に使用できるものが支障なく使用できる。
【0117】
また、これら導電剤は、単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0118】
導電性弾性体に配合する導電剤の量は、導電性弾性体の体積抵抗率が、以下の各環境下で1×104Ω・cm乃至1×108Ω・cmの範囲(中抵抗領域)になるよう量が好ましい。
・15℃/10%RH(LL)環境;
・23℃/50%RH(NN)環境;
・30℃/80%RH(HH環境)。
【0119】
なお、導電性弾性体の体積抵抗率は、導電性弾性層の原料組成物を厚さ1mmのシートに成型し、両面に金属を蒸着して電極とガード電極を形成して得た体積抵抗率測定試料を、上記表面層の体積抵抗率測定方法と同様にして測定できる。
【0120】
導電性弾性体の体積抵抗率がこれよりも小さいと、被帯電体である感光体にピンホールがあった場合に大電流がピンホールに一気に集中してしまい、印加電圧が降下し、高精細なハーフトーン画像上に帯状となって帯電電位が不足した部分が現れる傾向がある。また、ピンホールをより大きくしてしまう、といった不具合が発生する恐れがある。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、所望する帯電電位を得るためには帯電部材に高電圧を印加しなければならないので好ましくない。
【0121】
導電性弾性体には、必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、離型剤等の配合剤を加えることもできる。
【0122】
導電性弾性体を導電性支持体の上に形成する方法としては、上記の導電性弾性体の原料組成物を密閉型ミキサーで混合して、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形等の公知の成形方法によるのが好ましい。また、導電性弾性層は、導電性支持体の上に直接設けてもよいし、帯電部材が帯電ローラであるときは、予め成形したチューブ形状の導電性弾性体を導電性支持体上に被覆してもよい。なお、帯電ローラを作製するときには、導電性弾性層を、形成した後に、表面研磨して形状を整えておくことも好ましい。
【0123】
帯電ローラでは、該導電性弾性層の形状が、感光体との均一な密着性を確保するために中央部を一番太く、両端部に行くほど細くなる、クラウン形状に形成されていることが好ましい。一般に使用されている帯電ローラは、支持体の両端部に所定の押圧力を与えて感光体4当接されているので、中央部の押圧力が小さく、両端部ほど大きくなっている。そのために、帯電ローラは、真直度が十分で、支持体の剛性も十分であれば問題ないが、これらが十分でない場合には中央部と両端部に対応する画像に濃度ムラが生じてしまう場合がある。クラウン形状は、これを防止するために有効である。
【0124】
また、帯電ローラを感光体と当接させて回転させた時、ニップ幅が均一となるために、導電性弾性層を設けたときにローラの外径差振れが小さい方が望ましい。
【0125】
ローラの振れの測定値は、支持体を回転軸としてローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器にて1cmピッチでローラ径を測定する。そして、各ピッチでの測定値の最大値と最小値の差をそのピッチでの振れとし、その触れの最大の値を当該ローラの振れとする。なお、測定には、例えば、株式会社キーエンス製の非接触レーザー測長器「LS−5000」(商品名)を用いることができる。
【0126】
また、ローラの直径Dは、上記において測定した各ピッチのローラ径の最大値と最小値の平均を当該ピッチでの直径とし、導電性弾性層の中央部で測定したピッチでの直径を当該ローラの直径とする。
【0127】
上記クラウン量は、軸方向250mm程度のローラでは、軸方向中央部の直径D1、央部から90mm端部側の部分の2箇所の直径D2、D3から、{D1−(D2+D3)/2}により求めることができる。
【0128】
また、導電性弾性層が設けられたローラの振れの好ましい値は、ローラ中央部で直径の0.5%以下、より好ましくは0.25%以下である。例えば、ローラの直径が12mm程度の場合、振れの値は具体的には60μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下である。
【0129】
クラウン量は、出来上がったローラで、感光体とのニップ幅が均一になるように決めるが、好ましくはローラ直径の5.0%以下が好ましい。具体的には直径12mm程度の場合、600μm以下が好ましい。
【0130】
導電性弾性体の硬さは、マイクロ硬度70°以下が好ましく、より好ましくは60°以下である。マイクロ硬度が70°を超えると、帯電部材と感光体との間接触が不適になりやすく、特に帯電ローラにおいてはニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる。これによって帯電が安定しなくなったり、あるいは感光体や帯電部材の表面に現像剤その他が付着し易くなったりする等の弊害が起きる場合がある。
【0131】
なお、「マイクロ硬度」とは、微小領域ゴム硬さ計「アスカー マイクロゴム硬度計 MD−1型」(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定した、ゴム部材の硬さである。なお、本発明では、23℃/55%RH(NN)環境に12時間以上放置した帯電部材に対して、該硬度計を10Nのピークホールドモードで測定した値とする。
【0132】
導電性弾性体に、マイクロ硬度を小さくする目的で、可塑剤を配してもよい。その配合量は、高分弾性体100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上20質量部以下である。なお、可塑剤としては、高分子タイプのものを用いることが好ましい。高分子可塑剤は、数平均分子量で、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上のものである。該分子量が2000より小さいと可塑剤がローラの表面に染み出してきて感光体を汚染する恐れがあり、4000以上では導電性弾性を柔らかする効果が得られないことがある。
【0133】
導電性弾性層は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
【0134】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系等の公知のものを用いることができる。
【0135】
接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、上記した導電剤から適宜選択し、単独で、また2種類以上組み合わせて、用いることができる。
【0136】
なお、通常は、導電性弾性層を作製した後に、その被覆層として表面層が設けられる。
【0137】
表面層の形成方法としては、上記の表面層を構成する材料を塗料とし、該塗料を、導電性基体の上に、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法、リングコート法等により、塗工する。なお、塗料は、表面層用の各種材料を、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により溶媒中に分散することにより得られる。
【0138】
なお、表面層の膜厚は、上記したように、導電性を有する樹脂粒子の平均粒径Aに対して、好ましくは、A/3以上10A以下、より好ましくは、A/2以上5A以下とするのが適当である。つまり、樹脂粒子の粒径に対して、表面層の膜厚が厚すぎると、膜中に樹脂粒子が埋もれて帯電部材表面に樹脂粒子由来の凸部が形成しにくくなるので好ましくない。逆に、薄すぎると、感光体との接触や摺擦で樹脂粒子が欠落する恐れがあるので好ましくない。
【0139】
表面層の膜厚を調整するには、表面層用塗料の固形分、塗工速度等を制御することにより可能である。例えば、帯電ローラの表面層形成をディップ法による時、塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表面層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。表面層塗料は、揮発させる溶媒に対して固形分を10質量%乃至40質量%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、塗工引き上げ速度を20mm/min乃至5000mm/minの範囲で行うのが適当である。
【0140】
本発明の帯電部材は、上記したように、表面粗さが、Rzjis2μm以上30μm以下、好ましくは3μm以上20μm以下、Sm15μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0141】
上記範囲の表面粗さを有する帯電部材とするため、導電性支持基体(導電性弾性層)の表面粗さ、表面層の膜厚、樹脂粒子の平均粒子径とその添加量等を調整することが望ましい。
【0142】
また、本発明の帯電部材の電気抵抗としては、30℃/80%RH(HH)環境中では1×104Ω以上であり、15℃/10%(LL)環境中では1×108Ω以下であることが好ましい。帯電部材の電気抵抗をこの範囲とするには、導電性弾性層の体積抵抗率を1×104Ω・cm乃至1×108Ω・cmに、また、表面層の体積抵抗率を1×106Ω・cm乃至1×1015Ω・cmに、かつ、表面層の膜厚を1μm乃至100μmとするのが好ましい。
【0143】
次に、本発明に係る電子写真画像形成装置について説明する。
【0144】
本発明に係る電子写真画像形成装置は、前記した本発明に係る帯電部材と、該帯電部材により帯電される被帯電体と、露光手段と、現像手段とを有している。該帯電部材は、被帯電体と共にニップ部を形成するように被帯電体に接触配置されている。該ニップ部においては、該帯電部材の表面の、樹脂粒子に由来する凸部により空隙が生じている。
【0145】
電子写真が造形性装置として、帯電部材が帯電ローラであり、感光体がドラム形状である例の模式図を図9に示す。以下、この図に従って説明する。
【0146】
像担持体である感光体4は矢印の方向に回転しながら、帯電ローラ5によって一次帯電され、次に露光手段により露光11が照射され、感光体表面に静電潜像が形成される。次いで、弾性規制ブレード13により現像手段である現像ローラ6上で薄層になされたトナーは、感光体4の表面と接触し、該静電潜像をトナー像として可視化(現像)する。該トナー像は、転写部材である転写ローラ8と感光体4の間の現像部において、感光体4から被転写部材(紙等)7に転写され、その後定着部9で熱と圧力により定着され、永久画像となる。一方、感光体4は、帯電前露光装置12によって表面が露光され、残った電位(潜像)が消去され、表面電位をアース電位に戻される。さらに、転写されずに感光体表面に残ったトナーは、クリーニングブレード10で回収され、感光体は表面がきれいにされ、次の画像形成に供される。
【0147】
帯電ローラ5、現像ローラ6及び転写ローラ8には、それぞれ、電源18、19及び20から、電圧が印加されている。ここで、帯電ローラ5には、直流電圧が印加されている。なお、印加電圧に直流電圧を用いることで、電源のコストを低く抑えることができるという利点がある。また、交流電圧を印加したときに発生する帯電音が発生しないという利点もある。印加する直流電圧の絶対値は、空気の放電開始電圧と被帯電体表面(感光体表面)の一次帯電電位との和とすることが好ましい。通常空気の放電開始電圧は500V乃至700V、感光体表面の一次帯電電位は300V乃至800Vであるので、具体的な一次帯電電圧としては800V乃至1500Vとすることが好ましい。
【0148】
本発明では、像担持体(感光体)、静電潜像をトナー像として可視化する現像手段、像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング手段の少なくとも一つが、帯電部材(帯電ローラ)と共に一体にされ、プロセスカートリッジになっている。
【0149】
また、カラー画像形成装置とする場合は、上記のプロセスカートリッジを4色分(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)用意して、直列に配置するとよい。なお、各色のトナー像は、紙等の被転写部材に直接重ね合わせられてカラートナー像とされても、一旦転写ベルト、転写ローラ等にカラートナー像を形成し、このカラートナー像を一括して紙等の被転写部材に転写されてもよい。いずれにしても、全色のトナー像が重ね合わせられたのちに、定着装置に送られ定着される。
【0150】
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明に係る帯電部材と被帯電部材とが少なくとも一体化されてなり、帯電部材の表面層の凸部は、被帯電部材(電子写真感光体)とのニップ部において空隙を生じさせ、電子写真画像形成装置本体に着脱自在に構成されているものである。
【0151】
また、本発明のプロセスカートリッジは、現像手段やクリーニング手段も一体化されていてもよい。例えば、図10に示すように、感光体ドラム4、帯電ローラ5、現像ローラ6、トナー供給ローラ14及びクリーニングブレード10が一体に支持された、画像形成装置の本体と脱着自在な構成である。
【0152】
電子写真プロセスカートリッジが使用される前には、トナーシール31で現像ローラ6とトナーの接触を避けておくことが好ましい。
【実施例】
【0153】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0154】
製造例1[樹脂粒子RP1の製造]
イオン交換水400質量部、ポリビニルアルコール(鹸化度85%)8質量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.04質量部の混合液を用意した。
【0155】
一方、以下の材料の混合物をφ0.5mmのジルコニアビーズを充填したビスコミル分散機を用い、周速度10m/sで60時間分散させた混合液を用意した。
エチレングリコールジメタクリレート 0.1質量部
過酸化ベンゾイル 0.5質量部
メタクリル酸メチル 100質量部
カーボンブラック(平均粒径28nm、pH=6.0) 80質量部
【0156】
次いで、高速撹拌装置TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を備えた2リットル用4つ口フラスコ中に上記2種類の溶液を投入し、回転数を13000rpmで分散した。その後、撹拌機、温度計を備えた重合器にこの分散液を入れ、空間を窒素置換した後、60℃で12時間攪拌(撹拌機の回転は55rpm)を続けて懸濁重合を完了した。冷却後、この懸濁液を濾過、洗浄し、乾燥、分級を行い、樹脂粒子PR1を得た。使用したカーボンブラックの平均粒径及び質量部、及び樹脂粒子の物性を表1に示す。
【0157】
製造例2[樹脂粒子RP2の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=7.0を使用)及び添加量のとおりとした。ビスコミル分散時間を24時間に変更した。それ以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子RP2を作成した。その物性を表1に示す。
【0158】
製造例3[樹脂粒子RP3の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を10000rpmに変更した。それ以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子RP3を作成した。その物性を表1に示す。
【0159】
製造例4[樹脂粒子RP4の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとした。それ以外は、製造例3と同様にして、樹脂粒子RP4を作成した。その物性を表1に示す。
【0160】
製造例5[樹脂粒子RP5の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、ビスコミル分散時間を72時間に変更した。さらに、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を15000rpmに変更した。それ以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子RP5を作成した。その物性を表1に示す。
【0161】
製造例6[樹脂粒子RP6の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、ポリビニルアルコールを10質量部に変更し、ビスコミル分散時間を30時間に変更した。さらに、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を10000rpmに変更した。それ以外は、製造例1と同様にして、樹脂粒子RP6を作成した。その物性を表1に示す。
【0162】
製造例7[樹脂粒子RP7の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を15000rpmに変更した以外は、製造例6と同様にして、樹脂粒子RP7を作成した。その物性を表1に示す。
【0163】
製造例8[樹脂粒子RP8の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を20000rpmに変更した以外は、製造例6と同様にして、樹脂粒子RP8を作成した。その物性を表1に示す。
【0164】
製造例9[樹脂粒子RP9の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を8000rpmに変更した以外は、製造例6と同様にして、樹脂粒子RP9を作成した。その物性を表1に示す。
【0165】
製造例10[樹脂粒子RP10の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、ビスコミル分散時間を20時間に変更した以外は、製造例6と同様にして、樹脂粒子RP10を作成した。その物性を表1に示す。
【0166】
製造例11[樹脂粒子RP11の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、高速撹拌TKホモミキサーの回転数を11000rpmに変更した以外は、製造例10と同様にして、樹脂粒子RP11を作成した。その物性を表1に示す。
【0167】
製造例12[樹脂粒子RP12の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、ビスコミル分散時間を100時間に変更した以外は、製造例5と同様にして、樹脂粒子RP12を作成した。その物性を表1に示す。
【0168】
製造例13[樹脂粒子RP13の製造]
スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート−ジビニルベンゼン共重合体(共重合比=90:10:0.05)100質量部及びカーボンブラック(平均粒径122nm、pH=7.5)60質量部を密閉型ミキサーにて2時間混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、更に、ターボミルT−250型(ターボ工業株式会社製)にて微粉砕を行った。回転子の周速は115m/sであった。その後、ハイブリダイザー(商品名、奈良機械株式会社製)を用いて30分間、球形化処理を行った。さらに、風力分級を行って、樹脂粒子RP13を得た。その物性を表1に示す。
【0169】
製造例14[樹脂粒子RP14の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を1時間に、回転子の周速を100m/sに変更した。さらに、球形化処理時間を15分間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP14を作成した。その物性を表1に示す。
【0170】
製造例15[樹脂粒子RP15の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を30分間に、回転子の周速を80m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を1時間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP15を作成した。その物性を表1に示す。
【0171】
製造例16[樹脂粒子RP16の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=7.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を30分間に、回転子の周速を150m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を1時間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP16を作成した。その物性を表1に示す。
【0172】
製造例17[樹脂粒子RP17の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を1時間に、回転子の周速を150m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を1時間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP17を作成した。その物性を表1に示す。
【0173】
製造例18[樹脂粒子RP18の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を30分間に、回転子の周速を80m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を1時間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP18を作成した。その物性を表1に示す。
【0174】
製造例19[樹脂粒子RP19の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を1時間に、回転子の周速を80m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を3分間に変更した。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP194を作成した。その物性を表1に示す。
【0175】
製造例20[樹脂粒子RP20の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとした以外は、製造例19と同様にして、樹脂粒子RP20を作成した。その物性を表1に示す。
【0176】
製造例21[樹脂粒子RP21の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとした以外は、製造例19と同様にして、樹脂粒子RP21を作成した。その物性を表1に示す。
【0177】
製造例22[樹脂粒子RP22の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を10分間に、回転子の周速を110m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を5分間に変更した。それ以外は、製造例19と同様にして、樹脂粒子RP22を作成した。その物性を表1に示す。
【0178】
製造例23[樹脂粒子RP23の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を10分間に、回転子の周速を150m/sに変更し、さらに、球形化処理時間を3分間に変更した。それ以外は、製造例19と同様にして、樹脂粒子RP23を作成した。その物性を表1に示す。
【0179】
製造例24[樹脂粒子RP24の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=9.0を使用)及び添加量のとおりとした。それ以外は、製造例23と同様にして、樹脂粒子RP24を作成した。その物性を表1に示す。
【0180】
製造例25[樹脂粒子RP25の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径及び添加量のとおりとし、ビスコミル分散時間を12時間に、高速撹拌ホモミキサーの回転数を3000rpmに変更した以外は、製造例9と同様にして、樹脂粒子RP25を作成した。その物性を表1に示す。
【0181】
製造例26[樹脂粒子RP26の製造]
カーボンブラックを表1に記載した平均粒径(pH=7.5を使用)及び添加量のとおりとし、混練時間を10分間に、回転子の周速を80m/sに変更し、さらに、球形化処理及び分級処理をしなかった。それ以外は、製造例13と同様にして、樹脂粒子RP26を作成した。その物性を表1に示す。
【0182】
製造例27[グラファイトの調製]
グラファイトを分級して、平均粒径が25.0μmで、円形度0.9以上の割合が70%であるものを調製した。その物性を表1に示した。
【0183】
【表1】

【0184】
製造例28[導電性複合微粒子の製造]
シリカ粒子(平均粒径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgにメチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加し、588N/cm(60kg/cm)の線荷重で30分間混合攪拌を行った。この時の攪拌速度は22rpmであった。次に、カーボンブラック粒子(平均粒径28nm、pH=6.5)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行った。メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆をしたシリカ粒子にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、導電性複合微粒子を得た。なお、このカーボンブラックの付着も、攪拌速度は22rpmであった。得られた導電性複合微粒子は、平均粒径が15nmであり、体積抵抗率は2.3×102Ω・cmであった。
【0185】
製造例29[表面処理酸化チタン粒子の製造]
針状ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、縦:横=3:1)1000g、表面処理剤イソブチルトリメトキシシラン110g及び溶媒トルエン3000gからスラリーを調製した。このスラリーを、攪拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%がφ0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得たスラリーを、ニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30℃乃至60℃、減圧度:約13.3kPa(100Torr))によりトルエンを除去し、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理後の粒子を、室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕して、表面処理された酸化チタンを得た。
【0186】
製造例30[導電性弾性層を有する原料ローラの製造]
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス製芯金を導電性支持体として使用した。これに、熱硬化性接着剤(メタロックU−20 株式会社東洋化学研究所製)を塗布し、乾燥した。
【0187】
エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGC三元共重合体、EO/EP/AGE=73mol%/23mol%/4mol%)100質量部に対して、下記成分を加えて、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
炭酸カルシウム 60質量部
脂肪族ポリエステル系可塑剤 8質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)(老化防止剤)0.5質量部
酸化亜鉛 2質量部
四級アンモニウム塩 1.5質量部
カーボンブラック(平均粒径100nm、体積抵抗率0.1Ω・cm)5質量部
【0188】
これに加硫剤として硫黄1質量部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルスルフィド(DM)1質量部及びテトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)0.5質量部を添加した。その後、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、導電性弾性層用コンパウンドを得た。
【0189】
上記導電性支持体とともに、導電性弾性層用コンパウンドをクロスヘッド付き押出成型機にて押し出し、外径が約9mmのローラ形状になるように成型し、次いで、電気オーブンの中、160℃で1時間、加硫及び接着剤の硬化を行った。ゴムの両端部を突っ切り、ゴム長さを228mmとした後、外径が8.5mmのローラ形状になるように表面の研磨加工を行って、導電性支持体上に導電性弾性層を形成して、原料ローラを得た。なお、この原料ローラのクラウン量(中央部と中央部から90mm離れた位置の外径の差)は120μmであった。
【0190】
実施例1
[表面層用塗布液の調製]
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液「プラクセルDC2016」(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が17質量%となるように調整した。
【0191】
この溶液588.2質量部(アクリルポリオール固形分100質量部)に対して、下記成分を加え、混合溶液を調整した。
複合導電性微粒子(製造例28で作製) 50質量部
表面処理酸化チタン粒子(製造例29で作製) 30質量部
変性ジメチルシリコーンオイル*1 0.08質量部
ブロックイソシアネート混合物*2 80.14質量部
このとき、ブロックイソシアネート混合物は、イソシアネート量としては「NCO/OH=1.0」となる量であった。
*1)変性ジメチルシリコーンオイル「SH28PA」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)
*2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体の7:3混合物。なお、HDIとIPDIについては、HDI「デュラネートTPA−B80E」(商品名:旭化成工業株式会社製)及びIPDI「ベスタナートB1370」(商品名、デグサ・ヒュルス社製)を使用した。
【0192】
内容積450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gを、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gと共に入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて72時間分散した。分散した後、製造例1で作製した導電性を有する樹脂粒子RP1を2.72g(アクリルポリオール固形分100重量部に対して10重量部相当量)を添加した後、更に5分間分散し、ガラスビーズを除去して表面層用塗布溶液を得た。
【0193】
[帯電部材の製造]
製造例30で得た原料ローラを用い、表面層用塗布液を、1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾した。その後、熱風循環乾燥機にて80℃で1時間、更に160℃で1時間乾燥して、導電性弾性層上に表面層を形成して、導電性支持体上に導電性弾性層及び表面層を有する帯電部材を得た。なお、ディッピング塗布は、浸漬時間9秒、ディッピング塗布引き上げ速度、初期速度20mm/s、最終速度2mm/s、その間は、時間に対して直線的に速度を変化させて、行った。
【0194】
得られた帯電部材の表面層中の導電性を有する樹脂粒子等の物性及び表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定は、上記した方法で行った。得られた結果を表2に示した。
【0195】
得られた帯電部材を電子写真画像形成装置に帯電部材として組み込んで、画像を出力して、帯電部材としての性能(耐久評価)を下記のようにして調べた。
【0196】
[耐久画像評価(汚れ画像、放電不良画像及び過放電画像)]
得られた帯電部材を図9に示す構成の電子写真画像形成装置に装着し、15℃/10%RH(LL)環境及び30℃/80%RH(HH)環境において耐久評価を行った。なお、帯電部材は、直径24mmの感光体に、一端で0.5kg重、両端で合計1kg重のバネによる押し圧力で当接した。電子写真画像形成装置はA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、200mm/secと100mm/secの2種類、画像の解像度は600dpiである。帯電部材へ直流電圧のみ−1100Vを印加した。また、感光体は、電子写真画像形成装置「HP Color LaserJet 3000」(商品名、ヒューレットパッカード社製)のモノクロ(ブラック)カートリッジに搭載されていた感光体を使用した。1枚画像を出力すると装置を停止させた後、また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(E文字1%印字画像を間欠耐久)、5万枚の画像出力耐久試験を行った。耐久試験中はプロセススピードを200mm/sに設定したが、耐久試験中、1万枚目、3万枚目及び5万枚目の耐久画像出力後に、評価用画像を2種類のプロセススピードで出力した。なお、評価用画像は、ハーフトーン画像(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)画像であった。得られた画像を用い、15℃/10%RH環境のものでは汚れ画像と放電不良画像について、30℃/80%RH環境のものでは過放電画像について、下記基準で評価を行った。結果を表3に示す。
1:非常に良い。
2:良い。
3:ハーフトーン画像にわずかにスジ状、ポチ状の画像欠陥がある。
4:スジ状、ポチ状の画像欠陥が目立つ。
【0197】
実施例2〜17
樹脂粒子の種類及び添加量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電部材を製造した。なお、表2の質量部は前記アクリルポリオール固形分100質量部に対しての質量部である。
【0198】
製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子等の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0199】
実施例18
酸化チタン粒子を添加しない以外は、実施例17と同様にして、帯電部材を製造した。製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0200】
実施例19〜27
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液の固形分を23%とし、導電性複合微粒子及び表面処理酸化チタン粒子を添加せず、添加する樹脂粒子の種類及び添加量を表2のように変更した以外、実施例1と同様にして、帯電部材を製造した。なお、ブロックイソシアナート混合物の使用量は、カプロラクトン変性アクリルポリオールに対して「NCO/OH=1.0」となるように調整した。
【0201】
製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0202】
比較例1
樹脂粒子に換えて、平均粒径25.0μmのグラファイト(製造例27)60質量部を用いた以外は、実施例24と同様にして帯電部材を製造した。製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0203】
比較例2、3、6
樹脂粒子の種類及び樹脂粒子の添加量を表2のように変更した以外は、実施例24と同様にして帯電部材を製造した。製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0204】
比較例4及び5
樹脂粒子の種類及び樹脂粒子の添加量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして帯電部材を製造した。製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0205】
比較例7
樹脂粒子を添加せずに、実施例1と同様にして帯電部材を製造した。製造した帯電部材の表面層中の樹脂粒子の物性及び帯電部材の表面粗さ(Rzjis、Sm)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様に行った耐久評価について、結果を表3に示す。
【0206】
【表2】

【0207】
【表3】

【0208】
上記表2、3に示されるように、本発明の帯電部材は、汚れ画像、放電不良画像及び過放電画像の発生が抑制され、電子写真装置、プロセスカートリッジに組み込んで好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の帯電部材の一例(帯電ローラ)の概略断面図である。
【図2】本発明の帯電部材の表面層の一例の部分断面図である。
【図3】平滑な表面の帯電ローラと感光体のニップ部近傍の放電の様子を表す模式図である。
【図4】絶縁性の樹脂粒子に由来する凸部を有する帯電ローラと感光体のニップ部における放電の様子を表す模式図である。
【図5】図4のニップ部の凹部に外添剤等が堆積した時の帯電ローラと感光体のニップ部における放電の様子を表す模式図である。
【図6】図5において、樹脂粒子が導電性を有する時の帯電ローラと感光体のニップ部における放電の様子を表す模式図である。
【図7】本発明の樹脂粒子の一例の模式断面図である。
【図8】本発明の帯電ローラの電気抵抗を測定する様子を示す模式図である。
【図9】本発明の電子写真画像形成装置の一例の模式図を示す。
【図10】本発明のプロセスカートリッジの一例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0210】
1 導電性支持体
2 導電性弾性層
3 表面層
4 感光体
5 帯電ローラ(帯電部材)
6 現像ローラ
7 被転写部材(紙等)
8 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニングブレード
11 露光
12 帯電前露光装置
13 弾性規制ブレード
14 トナー供給ローラ
18 電源(帯電ローラ用)
19 電源(現像ローラ用)
20 電源(転写ローラ用)
21 導電性支持基体
22 導電性を有する樹脂粒子
23 帯電部材の表面
24 感光体の表面
25 放電
26 絶縁性の樹脂粒子
27 凸部
28 外添剤等
29 カーボンブラック
30 結着樹脂(樹脂粒子の)
31 トナーシール
32 円柱形金属
33 軸受け
34 安定化電源
35 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と表面層とを有する接触帯電用の帯電部材であって、
該表面層は、バインダー樹脂と該バインダー樹脂に分散している樹脂粒子を含み、表面に該樹脂粒子に由来する凸部を有し、その表面における十点平均粗さRzjisが2μm以上30μm以下であり、凹凸の平均間隔Smが15μm以上150μm以下であり、
該表面層中の該樹脂粒子の平均粒径の値が1μm以上30μm以下の範囲にあり、該表面層中の該樹脂粒子の80個数%以上が円形度0.9以上であり、
該樹脂粒子は、平均粒径10nm以上300nm以下のカーボンブラックを含み、かつ該樹脂粒子は導電性を有していることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記表面層中の樹脂粒子の90個数%以上が、前記平均粒径の値をAとするとき、A/5以上5×A以下の粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記表面層中の樹脂粒子の80個数%以上が、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電部材:
1.0≦B≦1.5
(Bは、1つの樹脂粒子の長径と短径の比(長径/短径)である。)。
【請求項4】
前記樹脂粒子の断面を観察した時に、カーボンブラックが断面を占める割合(カーボンブラックの断面占有率)が30%以上90%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記カーボンブラックの平均粒径(μm)が、A/10以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記表面層が、さらに、平均粒径が0.01μm以上0.9μm以下の導電性微粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項7】
少なくとも、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の帯電部材と被帯電体とが一体とされ、帯電部材の表面の凸部で被帯電体とのニップ部において空隙を生じており、電子写真画像形成装置の本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
少なくとも、請求項1乃至6のいずれかに記載の帯電部材と、被帯電体と、露光手段と、現像手段とを有する電子写真画像形成装置であって、該帯電部材は、該被帯電体と共にニップ部を形成するように該被帯電体に接触して配置されており、該ニップ部においては、該帯電部材の表面の前記樹脂粒子に由来する凸部により空隙を生じていることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項9】
帯電部材に直流電圧のみが印加されて、被帯電体を帯電することを特徴とする請求項8に記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−276023(P2008−276023A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121314(P2007−121314)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】