説明

帯電防止用押出シート

【課題】高い帯電防止性能を安定して示すシートまたはフィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(a)90〜50重量%とポリアミドエラストマー(b)10〜50重量%を含む樹脂組成物からなり、表面抵抗率が10〜1010、かつ体積抵抗率が10〜1010であることを特徴とする帯電防止用押出シートまたはフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止用シートまたはフィルムに関する。また、本発明は押出成形によって得られる、表面抵抗率および体積抵抗率が1010以下の性能を有する帯電防止用シートまたはフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム強化スチレン系樹脂は成形加工性、物理的性質および機械的性質に優れており、電気・電子分野、家電分野、自動車分野および雑貨などの幅広い分野に使用されている。しかし、ゴム強化スチレン系樹脂は電気絶縁材料であり、帯電した静電気を漏洩することができず、電子機器類に帯電した静電気が電気的に妨害を与えることが知られている。このため、帯電防止剤を練り込む方法、あるいはさらにポリエチレングリコールとポリアミドを主成分とするポリエーテルエステルアミドエラストマーを配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかし、上記文献類は射出成形品に関して帯電防止性を向上させるものであるが、シートまたはフィルムの帯電防止性を達成する方法は知られていない。帯電防止性を有する半導電性シートは導電性カーボンブラックを用いる方法、あるいは重合型帯電防止剤がポリエーテルエステル系帯電防止樹脂である事の提案がなされているが(例えば、特許文献4参照)、無機充填剤をも含んで、表面抵抗率とおよび体積抵抗率が1011以下の性能を、安定的して示す帯電防止用シートまたはフィルムの提案はなされていない。
【特許文献1】特開昭62−116652号公報
【特許文献2】特開平8−183894号公報
【特許文献3】特開平8−302118号公報
【特許文献4】特開2004−230780公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高い帯電防止性能を安定して示すシートまたはフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は前記課題を解決するために、鋭意検討を行なった結果、特定の割合の組成物からなる押出シートまたはフィルムが、導電性に優れることを見出した。
すなわち、本発明は、
1.熱可塑性樹脂(a)90〜50重量%とポリアミドエラストマー(b)10〜50重量%を含む樹脂組成物からなり、表面抵抗率が10〜1010、かつ体積抵抗率が10〜1010であることを特徴とする帯電防止用押出シートまたはフィルム、
2.成分(a)が、ゴム強化スチレン系樹脂であることを特徴とする上記1または2に記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム、
3.ポリアミドエラストマーが、ハードセグメントとしてのポリアミド鎖とソフトセグメントとしてのポリ(アルキレンオキシド)鎖からなることを特徴とする上記1または2のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム、
4.該樹脂組成物100重量部に対し、無機フィラー(c)15〜50重量部を含むことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム、
5.成分(c)が、タルクおよび/またはマイカであることを特徴とする上記4に記載の押出シートまたはフィルム、
6.上記1に記載の樹脂組成物100重量部に対し、炭素繊維1〜15重量部およびカーボンブラック0.01〜1重量部を配合してなる樹脂組成物から得られることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム、
7.多層シートまたはフィルムの少なくも一面が、上記1〜6のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルムであることを特徴とする帯電防止用多層シートまたは多層フィルム、
である。
【発明の効果】
【0005】
押出成形によって得られる本発明のシートまたはフィルムは、表面抵抗率および体積抵抗率が安定的に1011以下を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の熱可塑性樹脂(a)はポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリアクリル系樹脂である。スチレン系樹脂として好ましいものはゴム強化スチレン系樹脂が挙げられる。ゴム強化スチレン系樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上を共重合した共重合体に、ゴム質重合体をブレンドまたはグラフトしたゴム強化スチレン樹脂(a1)が挙げられる。また、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合したグラフト共重合体(a2)および芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上からなるビニル系共重合体(a3)とからなる樹脂が挙げられる。
【0007】
ゴム質重合体としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムが挙げられ、具体的にはポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。
これらのゴム質重合体は1種以上の混合物で使用されることがある。これらのゴム質重合体のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンゴムが耐衝撃性の点で好ましい。ゴム質重合体の重量平均粒子径は、成分(a1)では0.8〜2.5μmであり、成分(a2)では0.08〜1.5μm、好ましくは0.1〜0.8μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmであるが、制限されない。
【0008】
成分(a1)、(a2)および(a3)に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレンおよびハロゲン化スチレンが挙げられ、1種以上を用いることができる。なかでも、スチレン、o−メチルスチレンが好ましい。
成分(a1)、(a2)および(a3)に用いられるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
成分(a1)、(a2)および(a3)成分に用いられる共重合可能なその他のビニル系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド
化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物を挙げることができる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0009】
また、成分(a3)に用いられる共重合可能なその他のビニル系単量体のうち、マレイミド化合物および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量は、スチレン系樹脂組成物に対して、0.01〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%、さらに好ましくは0.2〜0.7重量%、特に好ましくは0.3〜0.7重量%である。
本発明のグラフト共重合体(a3)のグラフト率は20〜150%、好ましくは30〜100%である。また、本発明のグラフト率は、ゴム質重合体にグラフトした単量体のゴム質重合体に対する重量割合として定義される。すなわち、重合反応により生成した重合体をアセトンに溶解し、遠心分離機によりアセトン可溶分と不溶分に分離する。この時、アセトン可溶分は重合反応した重合体にグラフト反応しなかった成分であり、アセトン不溶分はゴム質重合体にグラフト反応した成分である。アセトン不溶分の重量からゴム質重合体の重量を差し引いた値がグラフト成分の重量である。この値からグラフト率を求めることができる。
【0010】
本発明のビニル系重合体(a2)の還元比粘度(ηsp/c)は0.1〜1.0、好ましくは0.2〜0.8である。還元比粘度はゴム質重合体にグラフト反応しなかった成分を用いて測定する。すなわち、重合反応により生成した重合体1gをアセトンに溶解し、遠心分離機によりアセトン可溶分と不溶に分離した後、アセトン不溶分を80℃の乾燥機で予備乾燥を行い、さらに真空乾燥機を用いて105℃、30分間真空乾燥を行う、その乾燥されたグラフト反応しなかった成分0.125±0.0005gを精秤(X)し、メチルエチルケトン25mlで溶解させる。30±0.1℃にコントロールされた恒温槽中の粘度管にメチルエチルケトン10mlを注入し、粘度管上部標線から下部標線間の流下秒数(Z)を測定する。同様に、グラフト反応しなかった成分のメチルエチルケトン溶解液10mlの粘度管上部標線から下部標線間の流下秒数(Y)を測定する。
還元比粘度(ηsp/c)は下式によって、計算される。
還元比粘度(ηsp/c)=(Y/Z−1)/(X/25)×100
【0011】
本発明のゴム強化ビニル系樹脂(a1)、グラフト共重合体(a2)およびビニル系重合体(a3)の製造方法に制限はなく、塊状重合、溶液重合、縣濁重合、乳化重合等のいずれでもよい。
本発明のスチレン系樹脂(a)のゴム質重合体の含有量は、機械的、加工性の観点から2〜60重量%であり、5〜30重量%が好ましい。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂(a)とポリアミドエラストマー(b)の割合は90〜50重量%/10〜50重量%であり、好ましくは70〜50重量%/30〜50重量%、さらに好ましくは60〜50重量%/40〜50重量%であり、制電性のレベルまた機械的強度に応じて選択される。
【0012】
本発明のポリアミドエラストマー(b)は公知のものが使用できるが、炭素数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(b1)と数平均分子量2000〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b2)を構成成分として含むグラフトまたはブロック共重合体が挙げられる。炭素数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(b1)からなるポリアミド鎖は、その分子の拘束性からハードセグメントとして働き、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(b2)鎖はソフトセグメントとしての働きをもつ。
【0013】
炭素数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩として、具体的にはω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノカルボン酸、あるいはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバチン酸塩,ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸塩等のナイロン塩が挙げられる。
ポリ(アルキレンオキシド)グルコールとして、ポリエチレンオキシドグルコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、2−ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が用いられる。また、ビスフェノールAや脂肪族のアルキルオキシド付加物などが共重合されていてもよい。好ましくは、ポリエチレンオキシドグリコール、ビスフェノールAのアルキルオキシド付加物である。該ポリ(アルキレンオキシド)グルコールの数平均分子量は200〜6000であり、好ましくは300〜4000である。必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グルコール成分の両末端をアミノ化またはカルボキシル化してもよい。
【0014】
本発明の炭素数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(b1)とポリ(アルキレンオキシド)グルコールの結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが、特に限定されない。また、ジカルボン酸、ジアミン等の第三成分を反応成分として用いることも可能であり、この場合のジカルボン酸成分として、炭素数4〜20のものが好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2、7−ジカルボン酸、ジフェニル−4、4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムのような芳香族ジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、1、2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4、4−ジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、1、10−デカンジカルボン酸が好ましい。一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族、脂肪族のジアミンが用いられ、中でも、脂肪族のヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0015】
本発明のポリアミドエラストマー(b)は、公知のものが使用できる。例えば、上記のポリアミド成分を重合した後、ジカルボン酸を添加して両末端をカルボキシル化し、さらにポリ(アルキレンオキシド)グリコールを反応させて目的のポリアミドエラストマーを得る方法、あるいはポリアミド生成成分に過剰のジカルボン酸およびポリ(アルキレンオキシド)グリコールの規定量を添加し、重合してポリアミドエラストマーを得る方法等がある。
本発明の無機フィラー(c)はアスベスト、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、セピオライト、石膏繊維、マイカ、タルク、カオリンクレー、セリサイトおよびガラスフレーク、ガラス繊維、炭酸カルシウム、シリカ、クレーが挙げられる。好ましくはタルクおよびマイカである。これらは、樹脂組成物100重量部に対し、20〜50重量部であり、好ましくは25〜50重量部、さらに好ましくは30〜50重量部である。本発明の樹脂組成物はポリアミドエラストマーおよび無機フィラーと併用することにより、表面抵抗率、体積抵抗率は1011以下の安定した値を保持することができる。安定した抵抗率を保持するためには15重量部以上、50重量部以下であり、好ましくは20重量部以下、50重量部以下である。
【0016】
本発明の炭素繊維としては、国際公開特許WO94/023433号公報に記載されている微細な炭素繊維等が挙げられる。市販されているカーボンフィブリルとしては、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なBNフィブリル等が挙げられる。本発明の樹脂組成物100重量部に対し、炭素繊維1〜15重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
本発明のカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャネルブラックおよびケッチエンブラックが挙げられる。これらのカーボンブラックは金属石鹸あるいは滑剤等で表面処理されていてもよい。本発明の樹脂組成物100重量部に対し、カーボンブラック0.01〜1重量部、好ましくは0.1〜0.7重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。本発明の樹脂組成物はポリアミドエラストマー、炭素繊維およびカーボンブラックと併用された場合、安定した表面抵抗率および体積抵抗率を保持する。即ち、併用することにより、抵抗率のバラツキを抑えることが可能である。本願発明の抵抗率を保持するために、カーボンブラックの濃度は0.01重量部以上であり、加工性の点から1重量部以下である。炭素繊維は1重量部以上が必要であり、生産性および加工性の点から15重量部以下である。
【0017】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のナイロン樹脂、変性PPE樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂あるいはそれらの変性物を配合し、シートあるいはフィルム用の性能を改良することができる。これら熱可塑性樹脂は、本発明の樹脂組成物100重量部に対し、1〜10重量部の範囲内で使用できる。
また、該樹脂組成物に任意成分として、必要に応じてヒンダードフェノール系、含イオウ化合物系、含リン有機化合物などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類の滑材、低分子量ポリエチレンワックス類、顔料および染料などを添加することができる。また、電解型帯電防止剤のアニオン系、カチオン系および両性系のものも使用でき、代表的なものとしてアニオン系としてはアルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、カチオン系として第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムナイトレート、また両性系としてアルキルベタイン、アルキルアラニンを挙げることができる。これら任意成分は、樹脂組成物100重量部に対し、通常0.1〜5重量部である。さらに、ガラス繊維等の各種強化材や充填材を配合することができる。
【0018】
本発明の樹脂組成物からなる帯電防止用押出シートまたはフィムルは、通常公知の方法により得ることができる。通常は溶融、ブレンド機能を有する短軸あるいは二軸押出機を用いて目的とする押出シートまたはフィルムを得ることができる。得られた押出シートまたはフィルムは、単体として帯電防止用のシートまたはフィルムとして用いることができるのみならず、他のシートあるいはフィルムの片面あるいは両面に貼りあわせた多層シートあるいは多層フィルムとして用いることができる。また、本発明のシートまたはフィルムを中間層とし、両面に他のシートまたはフィルムを貼りあわせた多層シートあるいは多層フィルムも使用することができる。多層シートあるいはフィルムは、通常3層形態のものが用いられるものの、必要に応じて4層また5層の多層シートあるいはフィルムが用いられる。
【0019】
本発明のシート厚みは0.25〜5mmであり、好ましくは0.25〜3mm、さらに好ましくは0.3〜2mmである。
本発明のフィルム厚みは10〜250μm、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜150μmである。また、本発明の多層シートあるいは多層フィルム厚みも上記の範囲である。さらにまた、本発明の帯電防止シートあるいはフィルムを用いた多層シートあるいは多層フィルムにおいて、該帯電防止シートまたはフィルムが占める割合は、全体厚みの20〜80%であり、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは40〜60%、最も好ましくは45〜60%である。
【0020】
多層シートあるいは多層フィルムは、それぞれ単独のシートあるいはフィルム単独で押出機を用いて製造した後、貼りあわせて多層シートあるいは多層フィルムを得ることができる。また、複数の押出機を用い、ダイヘッドでその溶融樹脂を合流させ、多層シートあるいは多層フィルムを得る方法を用いてもよい。必要に応じ、多層シートあるいは多層フィルムの形態を利用することが可能である。また、これらの単体、多層シートあるいは多層フィルムは帯電防止用の材料として利用されるのみならず、例えば、真空成形加工されて、帯電防止用容器等に使用される。あるいは、鋼管類に本願のシートあるいはフィルムをコーテイグして用いる方法もある。
【実施例】
【0021】
以下に本発明を実施例に基いて説明する。実施例中、部および%は、特にことわらない限り重量基準である。また、実施例中における各種の測定は下記に従って、測定した。
(A)評価方法
1.表面抵抗率(1)
シスコ表面抵抗計ST−3(シスコジャパン(株)製)を用いて測定した。
測定電位 15V
2.表面抵抗率(2)
超絶縁計SM―8220(東亜電波工業(株)製)を用い、50秒間印加し、10秒後の値を測定した。
測定電位 100V
3.体積抵抗率
超絶縁計SM−8220(東亜電波工業(株)製)を用いて、50秒印加し、10秒後の値を測定値とした。
測定電位 100V
【0022】
(B)用いた材料
1.ゴム強化スチレン系樹脂
ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した体積平均粒子径=0.35μm、固形分量=50重量%)
100重量部に、脱イオン水80重量部を加え、気相部を窒素置換した後、脱イオン水50重量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.08重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.02重量部を溶解してなる水溶液を加えて、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリリニトリル13.5重量部、スチレン36.5重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.2重量部、クメンハイドロパーオキシド0.1重量部よりなる単量体混合液及び脱イオン水22重量部にナトリウムホルムアルデヒドヒドスルホキシレート0.045重量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0023】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させてグラフト重合体(A)を得た。この時、グラフト率は50重量%であり、グラフトされていない成分の還元比粘度は0.38であった。
sec−ブチルアルコールにアクリロニトリル及びスチレンを溶解し、重合反応器に上記混合液を連続的に添加し、重合系の温度を140から160℃にコントロールして重合反応を行った。その後、未反応のモノマーを真空下にて除去し、ビニル系重合体(B)の固形粉末を得た。ビニル系重合体(B)はフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル25重量%、スチレン75重量%であった。また還元比粘度は0.46であった。
グラフト共重合体(A)75重量部およびビニル系重合体(B)25重量部を押出し機にて溶融混合し、ゴム強化スチレン系樹脂を得た。
【0024】
2.系共重合体ビニル
sec−ブチルアルコールにアクリロニトリル及びスチレンを溶解し、重合反応器に上記混合液を連続的に添加し、重合系の温度を140から160℃にコントロールして重合反応を行った。その後、未反応のモノマーを真空下にて除去し、ビニル系重合体(C)の固形粉末を得た。ビニル系重合体(C)はフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル25重量%、スチレン75重量%であった。還元比粘度は0.62であった。
3.PMMA
メタクリル酸メチルー無水マレイン酸—スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N(登録商標))。
4.ポリアミドエラストマー
ペレスタットNC6321(登録商標)(三洋化成工業(株)製)。
【0025】
5.タルク
クラウンタルクPP(登録商標)(松村産業(株)製)。
6.電解型帯電防止剤
ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(竹本油脂(株)製AKS−518−2(登録商標))
7.離型剤
ステアリン酸カルシウム(大日化学工業(株)製ダイワックスC(登録商標))
8.炭素繊維
TR06U FBE(登録商標)(三菱レイヨン(株)製)
9.カーボンブラック
BP−800(登録商標)(CABOT CORPORATION製)
【0026】
[実施例1]
押出し機を用いて、表1に示す配合の熱可塑性樹脂組成物を得た。更に、この組成物を用いて0.3mm厚みのシートを得た。シート成形は東芝機械製SE−65CVのシート押出し機を用いて、750mmコートハンガータイプダイスにて、ダイス、シリンダー温度とも230℃設定で行い、3本ロールの上ロールは70℃、中ロールは70℃、下ロールは60℃設定とした、吐出量は540kg/h、スクリュー回転数は70rpm設定とした。得られた0.3mm厚みシートの表面抵抗率と体積抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【0027】
[実施例2、3および比較例1]
表1に示す配合以外は実施例1と同様に実施し、0.3mm厚みのシートを得た。結果を表1に示した。
【0028】
[実施例4]
押出し機を用いて、表1に示す配合の熱可塑性樹脂組成物を得た。更に、この組成物とABS樹脂(旭化成ケミカルズ(株)スタイラック220B)を用いて2.0mm厚みの3層シートを得た。シート成形は東芝機械製SE−65CVを用い、フィードブロック方式にて3層シートを得た。ダイス、シリンダー温度とも230℃設定で行い、3本ロールの上ロールは70℃、中ロールは70℃、下ロールは60℃とした。吐出量は540kg/h、スクリュー回転数は70rpm設定とした。シートのコア層はABS(旭ケミカルズ(株)スタイラック220B)製の1.4mm厚みで、両面は各々0.3mm厚みの表1に示した配合の熱可塑性樹脂組成物からなる3層シ−トを得、表面抵抗率および体積抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【0029】
[比較例2および3]
表1に示す配合以外は実施例4と同様に実施した。表面抵抗率バラツキ、体積抵抗率バラツキが±10を上回ったため×とした。結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
安定した表面抵抗率および体積抵抗率を有すシートあるいはフィルムは、静電気除去のための材料として用いられ、ICトレー、液晶用トレー、HDD用トレー等の静電気除去のソフトトレーなどに用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(a)90〜50重量%とポリアミドエラストマー(b)10〜50重量%を含む樹脂組成物からなり、表面抵抗率が10〜1010、かつ体積抵抗率が10〜1010であることを特徴とする帯電防止用押出シートまたはフィルム。
【請求項2】
成分(a)が、ゴム強化スチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム。
【請求項3】
ポリアミドエラストマーが、ハードセグメントとしてのポリアミド鎖とソフトセグメントとしてのポリ(アルキレンオキシド)鎖からなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム。
【請求項4】
該樹脂組成物100重量部に対し、無機フィラー(c)15〜50重量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム。
【請求項5】
成分(c)が、タルクおよび/またはマイカであることを特徴とする請求項4に記載の押出シートまたはフィルム。
【請求項6】
請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し、炭素繊維1〜15重量部およびカーボンブラック0.01〜1重量部を配合してなる樹脂組成物から得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルム。
【請求項7】
多層シートまたはフィルムの少なくも一面が、請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止用押出シートまたはフィルムであることを特徴とする帯電防止用多層シートまたは多層フィルム。

【公開番号】特開2006−282707(P2006−282707A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100981(P2005−100981)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】