説明

帯電防止防眩ハードコート剤およびそれを用いたフィルム

【課題】 光透過率が高く、しかも乱反射を起こさない、表面硬度や耐擦傷性、払拭性、リコート性に優れた帯電防止ハードコート剤およびハードコートフィルムを得る。
【解決手段】 重合性多官能モノマーと、平均粒子径1μm〜8μmの無機微粒子及び/又は有機微粒子と、下記式(1)、(2)、(3)で示されるリチウム塩の内、少なくとも1種を配合する。
式(1)LiCFSO
式(2)Li(CFSO
式(3)LiClO
該重合性多官能(メタ)アクリレートモノマーの樹脂固形分100重量に対して、該無機微粒子及び/又は有機微粒子は1〜30重量部、該リチウム塩は固形分で5〜30重量部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止防眩ハードコート剤およびそれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といったことから、ガラスに変わり自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。しかし、ガラスと比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有している。この欠点を改良するために表面にシリコン系塗料、アクリル系塗料、メラミン系塗料等のハードコート剤を塗布することが一般的な手段として行われている。また、上記のディスプレイでは太陽光や蛍光灯などの光が表示画面に映り込むとこの光により画面が見にくくなるという現象がある。そのため、この映り込み現象を抑制する為の防眩ハードコートフィルムが提供されている。この防眩ハードコートフィルムをディスプレイの表示画面に貼付することにより、この現象が抑制される。更に、ホコリの付着防止やプラスチックフィルムの取り扱い時のゴミの混入を防止することを目的に帯電防止機能を有するハードコート剤が開発されている。
【0003】
この防眩ハードコートフィルムは、シリコーン系、または、アクリル系の樹脂バインダ中にシリカ粒子が含まれてなるハードコート剤をフィルムの表面に塗工して乾燥させた後、加熱するか、または、紫外線を照射することにより、樹脂分を硬化させて得られるものである。例えば、特許文献1および特許文献2に、所定の屈折率および平均粒径を有するシリカ粒子が含有されたハードコート剤と、このハードコート剤が塗布された防眩ハードコートフィルムとが提案されている。
【0004】
上記発明によれば、特許文献1の図1に示されるように、ハードコート剤の乾燥に伴い、シリカ粒子がハードコート剤の表層に現れて凹凸が形成される。この凹凸により反射光が乱反射することにより、フィルムに防眩性が付与されるものである。
【特許文献1】特開平9−230103号公報
【特許文献2】特開平9−211202号公報
【特許文献3】特開2001−214092号公報
【特許文献4】特許第3198494号
【特許文献5】特許第3207926号
【特許文献6】特許第345492号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、帯電防止を目的としたコート剤として、界面活性剤、金属ナノ粒子、カーボン等を添加したり、兀共役系導電性ポリマーを混合したり、反応させて導電性機能を付与させたものが知られている。例えば、特許文献3には、導電性酸化物微粒子を多官能(メタ)アクリレート等に混合する技術が開示されている。特許文献4は、導電性酸化物微粒子を含有させたコート剤であるが、導電性酸化物微粒子を混合させているため、コート剤や塗工フィルムの透明性が損なわれるといった欠点があった。
【0006】
特許文献5は、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩からなる塩とイミダゾリン型界面活性剤を併用して配合されてなる光硬化性樹脂組成物である。また、特許文献6は、反応性アニオン系/ノニオン系界面活性剤又は第4アンモニウム塩を含む帯電防止可塑剤、フェニルケトン骨格を有する第4級アンモニウム塩、分子内に少なくとも1個の不飽和基を有する化合物として、(メタ)アクリル酸エステル及び光開始剤を含んでなる樹脂組成物が開示されている。これら2つの特許は界面活性剤によるものであり、湿度に影響され易く耐湿性が必要とされる用途には不向きであった。
【0007】
また、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の兀共役系導電性ポリマーは透明性に劣るとともに共役部の紫外線劣化により導電率が低下するといった問題があった。
【0008】
本発明は、かかる背景技術に鑑み検討したもので、帯電防止防眩ハードコート剤およびそれを用いたフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重合性多官能モノマーと、微粒子と、下記式(1)、(2)、(3)で示されるリチウム塩のうち少なくとも1種とからなることを特徴とする帯電防止防眩ハードコート剤を要旨とし、更にこれを用いたハードコートフィルムである。
式(1)LiCFSO
式(2)Li(CFSO
式(3)LiClOである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、リチウム塩を用いた帯電防止防眩ハードコート剤であり、先に示したようなπ共役系導電性ポリマー、金属ナノ粒子、導電性酸化物微粒子を用いないため、表1に示すように黄色度が1.0未満と小さく、表面硬度や耐擦傷性に優れ、フィルムとして光透過率が高いものとなる。特に全光線透過率が90%以上であり、該ハードコート層の表面抵抗値が1013Ω/□未満のフィルムとすることにより、透明性、帯電防止性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明ではバインダー成分として、重合性多官能モノマーが用いられる。該重合性多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から優位性がある。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。
【0012】
前記の多官能(メタ)アクリレートの中でも、とりわけジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が、ハードコート層の耐擦傷性、透明性に優れることから好ましい。
【0013】
本発明において帯電防止機能を付与するために用いるリチウム塩は、下記式(1)、(2)、(3)で示され、少なくとも1種が用いられる。
式(1)LiCFSO
式(2)Li(CFSO
式(3)LiClO
式(1)、(2)に示すアニオンは数種類の共鳴構造をとり、マイナス電荷の非局在化が起こるため、マイナスイオンとして非常に安定である。さらに、フッ素化アルキル基の強い電子吸引性の効果もあり、リチウムイオンが非常に解離しやすい。このため、これらのリチウム塩は有機溶媒もしくは樹脂中で、高いリチウムイオン伝導性を発現する。
式(3)に示すアニオンもリチウムイオンを非常に解離しやすく、有機溶媒もしくは樹脂中で高いリチウムイオン伝導性を発現する。
【0014】
リチウム塩は、界面活性剤型帯電防止剤と比較して以下のような特徴を有する。第一に、界面活性剤のように塗膜表面からの飛散や拭き取りによる脱落がないため、帯電防止性能の持続性に優れる。第二に、塗膜表面へのブリードがないためリコート性に優れる。第三に、表面に吸着した水分ではなく、塗膜中に含有されるリチウムイオンがイオン伝導の媒体となるため、界面活性剤のように導電性が湿度依存を示し、低湿度下で導電性が低下することがない。
【0015】
また、リチウム塩は、親水性ポリマー型帯電防止剤と比較して以下のような特徴を有する。第一に、親水性ポリマー型帯電防止剤では表面に位置する親水基に吸着した水分がイオン伝導の媒体となるため、表面に十分な親水基を得るために、かなりの親水性ポリマーを添加する必要があり、表面硬度等の塗膜物性に大きな影響を及ぼすが、リチウム塩はリチウムイオンの移動により導電性を得るため、添加量を後述するような少量に抑えることができる。第二に、表面に吸着した水分ではなく、塗膜中に含有されるリチウムイオンがイオン伝導の媒体となるため、親水性ポリマーのように導電性が湿度依存を示し、低湿度下で導電性が低下することがない。
【0016】
更に、リチウム塩は、導電性酸化物微粒子を用いた帯電防止剤と比較して以下のような特徴を有する。第一に、導電性酸化物微粒子のような着色が全くなく、極めて高い透明性を有する。第二に、導電性酸化物微粒子では数100ナノメートル以下程度の微粒子を塗膜中で接触させることによって導電性を得るため、ベースとなる樹脂に対して同量近い添加量が必要になるが、リチウム塩はリチウムイオンの移動により導電性を得るため、添加量を後述するような少量に抑えることができる。
【0017】
更にまた、リチウム塩は、ポリピロールやポリチオフェン、ポリアニリンなどのπ共役系導電性ポリマーを用いた帯電防止剤と比較して以下のような特徴を有する。第一に、π共役系導電性ポリマーのような着色が全くなく、極めて高い透明性を有する。第二に、π共役系導電性ポリマーを溶解させるには一般に、ハロゲン含有溶剤や有害性、毒性を有する特殊な溶剤を必要とするが、リチウム塩は一般的な有機溶剤に溶解可能であり、コート剤設計の幅が広く、かつ環境負荷をより抑えることができる。
【0018】
これらのリチウム塩を帯電防止剤として用いることにより、ハードコート剤としての特性を失うことなく、無着色で光透過率が高く、しかも表面硬度や耐擦傷性に優れた帯電防止防眩ハードコート剤となる。これらリチウム塩の添加量は、重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対し、固形分で5〜30重量部が好適であり、下限に満たないと帯電防止性が低く、上限を超えると耐擦傷性が劣りやすくなる。
【0019】
本発明に係る微粒子としては、乾式シリカ、湿式シリカなどのシリカ微粒子、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、インジウム錫混合酸化物及びアンチモン錫混合酸化物などの金属酸化物微粒子、アクリル、スチレンなどの有機微粒子などが挙げられ、有機溶剤を分散媒とした市販品各種も使用することができる。平均粒子径は1〜8μmのものが好適である。平均粒子径が、下限未満では二次凝集が起こりやすく、上限を超えるとハードコート層の表面が粗くなって、視認性が低下し、生成被膜の透明性が失われる。微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。とりわけ、得られたハードコートフィルムの透明性が低いこと及びコート剤に混入させた際に分散性が良好であることなどからシリカ微粒子を採用するのが好ましい。また、無機微粒子は一般的にバインダーとなる有機物との屈折率差が大きいため、外光及び透過光の散乱角が大きくなる。そのため無機微粒子の添加量によっては、防眩性能は高くなるもののディスプレイとしての視認性に劣る場合がある。有機微粒子はバインダーとの屈折率差が一般的に小さいため、外光及び透過光の散乱角が小さく、有機微粒子の添加量によっては視認性に優れるものの、防眩性能が劣る場合がある。そのため、双方の欠点を補うためこれらを併用してもよい。
【0020】
微粒子の添加量は、重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対し、1〜30重量部が好適であり、下限未満では、防眩機能を有する樹脂硬化物が得られず、光沢度が高く防眩性に劣り、上限を超えると透明性に劣る。
【0021】
無機微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でもシランカップリング剤が最も好ましい。
【0022】
本発明では、前記の微粒子の凝集を防ぎ、優れた分散性及び分散安定性を確保するため分散剤を微粒子100重量部に対して、0.1〜5重量部が配合してもよい。分散剤としては種々の界面活性剤が挙げられる。例えば、硫酸エステル系、カルボン酸系、ポリカルボン酸系等のアニオン型界面活性剤、高級脂肪族アミンの4級塩等のカチオン型界面活性剤、高級脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系等のノニオン型界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤、アマイドエステル結合を有する高分子活性剤等が挙げられる。
【0023】
本発明においては帯電防止防眩ハードコート剤にはラジカル型重合開始剤を添加するが、ラジカル型重合開始剤としては特に制限はなく各種公知のものを使用することができる。ラジカル型重合開始剤としては、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、ダロキュア−1173(メルク社製)などの光開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p’−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p’−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの熱開始剤が挙げられる。添加量は重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対して1〜10重量部である。
【0024】
この他に有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
【0025】
その他、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤などを配合材料としてもよい。
【0026】
本発明のハードコートフィルムの基材としてのプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等、いずれも公知のものを用いることができる。基材は用途に応じてシート状、板状であってもよい。
【0027】
また、本発明の帯電防止防眩ハードコート剤との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施してもよい。
【0028】
本発明の帯電防止コート剤のフィルムへの塗布方法、塗布厚については特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを1〜10μmとなるように塗布する。1μm未満では、十分な耐擦傷性や耐スクラッチ性が得られず、10μm超では、得られたフィルムが反るなど、取扱上の問題がある。好ましくは、3〜7μmである。
【0029】
電子線を照射する場合は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cmのエネルギーを有する紫外線を照射する。硬化阻害を防止するため、窒素ガス等の不活性ガス下で照射を行ってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
実施例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学株式会社製 商品名はライトアクリレート DPE−6A 固形分100%)100重量部、平均粒子径3.1μmのシリカ微粒子(富士シリシア化学株式会社製 サイリシア420)5重量部、LiCFSOのMEK溶液(三光化学工業株式会社製 固形分50%)12重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184)5重量部、及びメチルエチルケトン71重量部を均一に混合し、固形分濃度約60重量%の帯電防止防眩ハードコート剤を得た。次に厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製 コスモシャインA−4300)の表面に、帯電防止防眩ハードコート剤を硬化膜厚が約5μmになるように、バーコート法で塗工して熱風乾燥器で100℃、2分の条件で乾燥した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、フュージョンランプ)を用いて紫外線を光量約200mJ/cm照射して帯電防止防眩ハードコートフィルムを得た。
【0031】
実施例2
実施例1において、LiCFSOの代わりに、Li(CFSOを用いた以外は同様に実施した。
【0032】
実施例3
実施例1において、LiCFSOの代わりに、LiClOを用いた以外は同様に実施した。
【0033】
実施例4
実施例1において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの代わりにジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製 SR−399E 固形分100%)を用いた以外は同様に実施した。
【0034】
実施例5
実施例1において、LiCFSOのMEK溶液の配合割合を60重量部とした以外は同様に実施した。
【0035】
実施例6
実施例1において、シリカ微粒子の代わりに有機微粒子として、ガンツパール
(平均粒子径4μm ガンツ化成株式会社製 GM−0401S)を用いた以外は同様に実施した。
【0036】
比較例1
実施例1において、LiCFSOのMEK溶液の配合割合を8重量部とした以外は同様に実施した。
【0037】
比較例2
実施例1において、LiCFSOのMEK溶液の配合割合を70重量部とした以外は同様に実施した。
【0038】
比較例3
実施例1において、LiCFSOのMEK溶液を界面活性剤(花王株式会社製 エレクトロストリッパーEA)6部とした以外は同様に実施した。
【0039】
比較例4
実施例1において、LiCFSOのMEK溶液を導電性酸化物微粒子として、アンチモンドープ酸化錫(ATO)(石原産業株式会社製 SNS−10M 固形分30%)120部とした以外は同様に実施した。

評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
評価方法は以下の通りとした。
1)全光線透過率:JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づきヘイズメータ(スガ試験機株式会社製)により測定した。
2)ヘイズ:JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(スガ試験機株式会社製)により測定した。
3)表面抵抗率:JIS K 6911−5−13(1995年版)に基づき、デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(株式会社アドバンテスト)を使用して測定した。
4)耐擦傷性:スチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)により荷重2kg重で10往復摩擦して傷がつくかどうかにより評価する。キズの付き方で5段階に分け、下記の様に評価した。
評価5:全くキズが付かない。
評価4:1から3本相当のキズが入る。
評価3:4から7本相当のキズが入る。
評価2:8から15本相当のキズが入る。
評価1:無数にキズが入る。
5)黄色度: 分光測色計CM−1000(ミノルタカメラ株式会社製)を用い、基材であるA−4300を基準に測定した。理想上の白色(完全拡散反射面)は黄色度が0で、この白色からの距離を黄色度とされ、白色から黄方向の色相ズレはプラス、青方向の色相ズレはマイナスの値を示す。
6)鉛筆硬度:JIS K 5600に準じ、斜め45度に固定した鉛筆の真上から荷重をかけ引っ掻き試験を行い、傷の付かない鉛筆硬度を表示した。
7)映り込み性:フィルムの表面に蛍光灯の光を入射し、蛍光灯の輪郭の映り込みについて目視にて確認し、下記の様に評価した。
○:蛍光灯の輪郭が確認できない。
×:蛍光灯の輪郭が確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性多官能モノマーと、微粒子と、下記式(1)、(2)、(3)で示されるリチウム塩のうち少なくとも1種とからなることを特徴とする帯電防止防眩ハードコート剤。
式(1)LiCFSO
式(2)Li(CFSO
式(3)LiClO
【請求項2】
該重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対して、該リチウム塩が固形分で5〜30重量部であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止防眩ハードコート剤。
【請求項3】
該微粒子が無機微粒子及び/又は有機微粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の帯電防止防眩ハードコート剤。
【請求項4】
請求項1〜3記載の該帯電防止防眩ハードコート剤を塗布し、硬化させて帯電防止防眩ハードコート層を形成した帯電防止防眩ハードコートフィルム。
【請求項5】
全光線透過率が90%以上であり、該ハードコート層の表面抵抗値が1013Ω/□未満であることを特徴とする請求項4記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2007−70455(P2007−70455A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258609(P2005−258609)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】