幅広ビーム映像化
【課題】超音波ビームを使用して調査中の物質を検査するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】エコーロケーションデータは、異なる超音波トランスデューサアレイ530を使用して生成された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相及び振幅情報を使用できる多次元変換を使用して発生される。多次元変換は送信又は受信ビームラインの使用に依存しないので、多次元領域は一つの超音波送信を使用して映像化され得る。ある実施例では、これにより画像フレームレートが増加し、画像を発生させるために要する超音波エネルギーの量が減少する。
【解決手段】エコーロケーションデータは、異なる超音波トランスデューサアレイ530を使用して生成された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相及び振幅情報を使用できる多次元変換を使用して発生される。多次元変換は送信又は受信ビームラインの使用に依存しないので、多次元領域は一つの超音波送信を使用して映像化され得る。ある実施例では、これにより画像フレームレートが増加し、画像を発生させるために要する超音波エネルギーの量が減少する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像化の分野に係り、特に、超音波映像化の分野に関する。
【0002】
〔関連出願へのクロスリファレンス〕本願は、2002年4月5日に出願され、本願と同一出願人に譲渡された発明の名称が”幅広ビーム映像化(Broad-beam Imaging)”である米国仮特許出願第60/370,632を基礎とする優先権主張出願である。
【0003】
本願は、2001年10月20日に出願された発明の名称が”超音波映像化におけるブロック切換(Block Switching in Ultrasound Imaging)”である米国特許出願第10/039,922の一部継続出願である。
【0004】
本願は、2001年5月18日に出願された、発明の名称が”並列多重モード・多重バンド(M3B)超音波映像化(Simultaneous Multi-Mode and Multi-Band(M3B) Ultrasonic Imaging)”である同時係属中の米国特許出願第10/039,862号、2001年5月31日に出願された、発明の名称が”位相反転超音波映像化システム及び方法(System and Method for Phase Inversion Ultrasonic Imaging)”である米国特許出願第09/872,541号、及び、2002年3月19日に出願された、発明の名称が”後処理超音波カラードップラー映像化システム及び方法(System and Method for Post-Processing Ultrasound Color Doppler Imaging)”に関連する。関連出願の内容は、参考のため引用される。関連出願は本願と同一出願人に譲渡されている。
【背景技術】
【0005】
超音波映像化は、広い範囲の物質を検査するため頻繁に使用される方法である。この方法は、相対的に非侵襲性、低コスト、及び、高速診断サイクルであるため、特に、医療分野で普及している。典型的に、超音波映像化は、超音波を発生し、調査対象の物質の方へ向け、異種物質の境界で発生される反射を観察することにより実現される。例えば、医療アプリケーションの場合、観察された反射は患者の組織の境界で発生されている。観察された反射は、受信装置(トランスデューサ)によって電気信号に変換され、エコー源のロケーションを判定するために従来技術で公知の方法を使用して処理される。得られたデータは、モニタのような表示装置を使用して表示される。
【0006】
従来技術による超音波ビームを生成し、得られたエコーを解析する処理は、「ビーム形成(処理方式)」と呼ばれる。生産プロセスは、オプションとして、アパーチャ・アポディゼーション、ステアリング、及び/又は、フォーカシングによって「送信」ビーム特性を定義する。解析プロセスは、オプションとして、「受信ビーム」を計算し、受信されたエコーは、狭い領域に沿って発生したエコーを隔離するため処理される。この計算には、エコーが発生したときに沿ったと考えられる1次元ラインを識別することが含まれるので、以下では、「エコーライン計算」とも呼ばれる。ビーム形成を通じて、エコーロケーションデータの1次元集合が、各送信及び/又は受信ビームを使用して発生させられる。エコーロケーションデータは、1個以上のエコー源の物理的位置に関連した位置データであり、オプションとして、強度、速度及び/又は同様の物理情報を含む。エコーロケーションデータは、後ビーム形成未加工データ、検出データ、又は、画像データを含む。超音波画像のような多次元エコーロケーションデータは、多数の送信及び/又は受信ビームを使用して調査中に物質内の視野を走査することによって発生される。
【0007】
送信フェーズ中に調査中の物質に送信された超音波ビームは、電子信号をトランスデューサへ供給することによって発生される。超音波ビームは、調査中の物質中を伝播するとき、散乱、共鳴、減衰及び/又は反射される。反射信号の一部はトランスデューサで受信され、エコーとして検出される。受信用トランスデューサは、エコー信号を電子信号に変換し、オプションとして、受信ビームを使用する解析に本質的なエコーライン計算を実行するエコーライン計算器(ビーム形成器)にエコー信号を供給する。
【0008】
ビーム形成後、画像スキャンコンバータは、画像データを発生させるため計算されたエコーロケーションデータを使用する。従来技術のシステムの場合、画像形成レート(フレームレート)は、少なくとも、エコー画像を発生させるため使用された全超音波ビームの総パルス戻り時間によって制限される。パルス戻り時間は、超音波ビームが調査中の物質に送信されてから、最後に生じた反射エコーが検出されるまでの時間である。フレームレートが制限されると、超音波システムと調査中の物質の間の相対運動が原因となって時間的アーティファクトが生じる。
【0009】
図1には、従来技術による超音波システム100が示されている。超音波システム100は、トランスデューサ素子110の素子アレイ105と、基材120と、オプション的なマッチング層130と、送受スイッチ140と、ビーム送信機150と、を含む。基材120は、素子アレイ105を支持し、基材120へ向かって伝播する超音波エネルギーを減衰させる。マッチング層130は、トランスデューサ素子110から調査中の物質(図示せず)に超音波エネルギーを転送する。トランスデューサ素子110は、個別のトランスデューサ素子110A−110Hを含み、個別のトランスデューサ素子110A−110Hは、導体115及び1117によって、送受スイッチ140を介して、ビーム送信機150へ別々に接続される。送受スイッチ140は、マルチプレクサ145を具備してもよく、これにより、導体117の個数を導体115の個数よりも少なくすることができる。送信フェーズでは、ビーム送信機150は、電子パルスを発生する。電子パルスは、送受スイッチ140を介して供給され、一部若しくは全部のトランスデューサ素子110A−110Hに供給され、超音波パルス160に変換される。全体として、超音波パルス160は、調査中の物質を調べる超音波ビーム170を形成する。
【0010】
超音波ビーム170は、エコーが発生される領域を制限するため集中される。エコー源が狭い領域に限定されたとき、エコーロケーションデータの計算は、エコー源が「送信ライン」に沿うことを仮定することによって簡単化される。この仮定の下で、ビーム計算器の仕事は、エコー源の位置を1次元で判定する問題に簡略化される。この位置は、エコーの戻り時間を使用して確定される。この仮定の精度と、送信ラインの間隔は、従来技術の超音波システムの解像度を決定する上で重要な要因である。ビームを精細に集中させると、粗く集中させたビームよりも容易に解像度を高くすることができる。同様の仮定及び結果は、計算された受信ビームに関係した解析の場面にも現れる。
【0011】
図2に示された従来技術の焦点合わせシステムでは、素子アレイ105は、トランスデューサ素子110A−110Hに印加される電子パルス210のタイミングを変えることによって超音波ビーム170を集中させるように構成されたフェーズドアレイである。本システムの場合、電子パルス210は、ビーム送信機150で発生され、送受スイッチ140を通される。電子パルス210は、遅延発生器(図示せず)を使用して遅延され、トランスデューサ素子110A−Hに供給される。超音波ビーム170は、トランスデューサ素子110A−Hが遅延電子パルスを超音波パルス160(図1)に適切に変換するときに形成される。一旦形成されると、超音波ビーム170は、焦点230を含む送信ビームライン250の方向へ向けられ、超音波ビーム170の幅によって表されるビーム胴部240が得られる。同様の方式で、素子アレイ150の段階的(フェーズド)励起は、超音波ビーム170を特定の方向へ向ける(舵取りする)ため使用される。超音波ビーム170の横断面強度は、典型的に、焦点周りのガウシアンであり、送信ビームライン250に沿って最大値をとる。超音波ビーム170の形状は、アパーチャ・アポディゼーションに依存する。
【0012】
走査(スキャンニング)プロセスにおいて、超音波システム100は、二つ以上の空間次元で画像を形成するため別の異なる送信ビームライン250に沿って別々の超音波ビーム170の系列を送信する。特定の超音波ビーム170は、オプションとして、別の超音波ビーム170を発生する前に、幾つかの送受サイクルで送信される。各送信フェーズの間に受信フェーズが現れ、その間にエコーが検出される。超音波スキャンにふくまれる各超音波ビーム170は、少なくとも1回の送受サイクルを必要とするので、走査プロセスは、パルス戻り時間の多数倍の時間を要する。このパルス戻り時間は、調査中の物質内の音速によって決定されるが、従来技術の超音波画像が発生されるレートに関する主要な制限である。更に、トランスデューサ素子110A−110Hが走査プロセス中に調査中の物質に対して相対的に移動した場合、望ましくない時間的異常性が発生される。
【0013】
図3A乃至3Eには、8個のトランスデューサ素子110A−110Hからなるフェーズドアレイ310における従来技術の走査プロセスが示されている。8個のトランスデューサ素子110A−110Hの部分集合320A−320Eは、別々の1個の超音波ビーム170A−170Eを発生させるため使用される。例えば、図3Aは、トランスデューサ素子110A−110Dを含む部分集合320Aによって形成された超音波ビーム170Aを示す。走査プロセスの次のステップは、図3Bに示されるようにトランスデューサ素子110B−110Eを含む部分集合320Bを使用して超音波ビーム170Bを形成する。本例の場合、超音波ビーム170Bと関連した送信ビームライン250Bは、焦点230Bを通過し、焦点230Bは、典型的に1個のトランスデューサ素子110の幅に一致する距離だけ焦点230Aから離れている。図3C乃至3Eに示されるように、超音波ビーム170C乃至170Eを生成するため使用された各部分集合320C乃至320Eは、夫々、部分集合320B乃至320Dに対してトランスデューサ素子110の1個分だけ変位している。各送信フェーズの間で出現し受信フェーズで検出されたエコーは、エコーロケーションデータを発生させるため使用され、これらのエコーロケーションデータは、典型的に、表示に適した画像を形成するため合成される。走査プロセスは多数の画像を生成するため繰り返される。
【0014】
実際上、フェーズドアレイ310は、64個、128個、或いは、それ以上の個数のトランスデューサ素子110を含む。エコーロケーションデータの解像度は、トランスデューサ素子110のアパーチャ及び個数と、送信ビームライン250が超音波ビーム170内で考えられるエコー源を正確に表現できる程度と、に依存する。ビームライン250A−Eを使用する超音波ビーム170A−Eの表現は、得られるエコーロケーションデータを決定する近似表現である。近似が良くない場合、得られるエコーロケーションデータの解像度が制限される。したがって、超音波ビーム170A−Eの最大幅は、エコーロケーションデータの望ましい解像度によって制限される。近似の精度は、焦点230A−Eからの距離の関数であり、近似はこの距離が長くなると精度が悪化する。
【0015】
一般的な実現例では、異なる焦点230A−Eで幾つかの超音波ビームを発生させ、焦点230A−E付近でデータを発生させるため受信したエコーの各組を使用する。従来技術のデータ発生は、焦点230A−E付近のエリアに制限される。なぜならば、距離が遠くなると、送信ビームライン250の近似は、望ましい解像度のエコーロケーションデータを得るために精度が不足するからである。典型的に、1本の受信又は送信ビームライン250が送受サイクル毎に発生される。エリアを映像化するために必要なビーム本数は、映像化されるべきエリアの幅及び奥行きと、望ましい解像度とに依存する。焦点230付近のエコーだけを使用することにより、全受信信号の一部分だけ(例えば、10%未満)が使用され、残りの受信信号は無視される。従来技術の場合、検出信号は十分に利用されていない。同様の欠点は、シンセティック受信ラインを利用するシステムの場合にも生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術において、カバーされるべきエリア、送信ビーム幅、送信ビーム170の個数、及び、エコーロケーションデータの解像度は、相互依存的である。送信ビーム幅は、エコーロケーションの最小横方向解像度幅を決定する。各送信ビーム170は、限定されたエリアしかカバーしないので、大規模エリアを映像化するためには非常に多数の送信ビーム170が必要になる。使用する送信ビーム170の数が増加すると、画像を発生させるために要する最大時間が長くなる。
【0017】
パルス戻り時間、及び、信号の不十分な使用によって制限されている画像形成レートのような従来技術の欠点は、従来技術の超音波システムがマイクロ処理パワーにおける進歩を完全に活用することを阻害している。従来技術は、実現可能な最高解像度をもつ画像を発生させるためにこれらの欠点を犠牲にしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順(1)を有し、超音波ビームは、複数のトランスデューサのうちの各トランスデューサによって発生された成分を含み、超音波ビームと調査中の物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信エコーから第1のデータを発生させる手順(3)と、を有し、第1のデータは、位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布し、受信エコーの中から、複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相情報及び/又は振幅情報を使用する手順(4)と、区別されたエコーを使用して、第1のデータを、第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する手順(5)と、を有する。
【0019】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、超音波ビームと調査中の物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信エコーから、位相情報及び振幅情報を含み、時間次元及び少なくとも第1の空間次元に関連付けられた値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、変換されるべき第1のデータの一部を選択するために位相情報及び/又は振幅情報を用い、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成し得る変換を使用して、第1のデータの一部を第2のデータに変換する手順(4)と、を有する。
【0020】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、一つ以上の超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、送信された一つ以上の超音波ビームの中の1個の超音波ビームと調査中の物質との間で、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元上に分布する点において生じる相互作用によって発生させられた第1のエコーを受信する手順(2)と、受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、付加的に少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元の両方に分布する値をとる第2のデータに変換する手順(4)と、別の超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(5)と、別の超音波ビームを使用して発生された更なるエコーを受信する手順(6)と、受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順(7)と、第3のデータと同じ次元をもつように第3のデータと第2のデータを結合する手順(8)と、を有する。
【0021】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、送信された超音波ビームと調査中の物質との間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信されたエコーを使用して、時間及び第1の空間次元の多数の点と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と(3)を有し、点の個数は少なくとも64個であり、点の個数との関連性は時間との関連性とは独立であり、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元と関連付けることができる値をとる第2のデータに変換する手順(4)を更に有する。
【0022】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数の超音波トランスデューサを使用する手順(1)と、超音波ビームと調査中の物質との間の相互作用によって発生させられたエコーを受信する手順(2)と、受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、第1のデータから、第2の空間次元及び第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順(4)と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、第2のデータの中で、第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値は、第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される。
【0023】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、複数の超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順(1)と、複数の超音波ビームの中の第1のメンバーと調査中の物質との間の相互作用によって発生された第1のエコーを受信する手順(2)と、受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順(3)と、複数の超音波ビームの中の少なくとも第2のメンバーと調査中の物質との間の相互作用によって発生された第2のエコーを受信する手順(4)と、受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順(5)と、第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順(6)と、第2のエコーロケーションデータを発生させるため第2のエコーデータを使用する手順(7)と、第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、第1のロケーションデータ及び第2のロケーションデータを結合する手順(8)と、を有する。
【0024】
本発明の一実施例によるエコーロケーションデータを発生させる方法は、エコーをエコー信号に変換することによって、時間及び少なくとも一つの空間次元における複数の位置に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む複数の値をとる第1のデータを発生させる手順(1)と、第1のデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を使用して、複数の位置における異なる位置と関連付けることができる複数の値のうちの2個以上のメンバーから獲得された少なくとも一つの値をとるエコーロケーションデータを発生させる手順(2)と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術の超音波システムの説明図である。
【図2】従来技術による超音波ビームを集中させる方法の説明図である。
【図3】(A)乃至(E)は8個のトランスデューサ素子からなるフェーズドアレイを使用する従来技術の走査プロセスの説明図である。
【図4】本発明の一実施例による幅広ビーム方法の概要を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例による幅広ビームシステムのブロック図である。
【図6】本発明の一実施例による幅広ビーム設計ステップの詳細フローチャートである。
【図7A】本発明の一実施例による直線状トランスデューサアレイを使用して発生された超音波ビームの説明図である。
【図7B】本発明の一実施例による曲線状トランスデューサアレイを使用して発生された超音波ビームの説明図である。
【図7C】本発明の一実施例により発生した高周波照射領域を生じる超音波ビームの説明図である。
【図7D】幅広ビームの横断面を通る超音波強度をプロットしたグラフである。
【図8】本発明の一実施例による送信ステップの詳細フローチャートである。
【図9】本発明の一実施例による受信ステップの詳細フローチャートである。
【図10】本発明の一実施例によるチャネルデータアレイに配置された保存データの説明図である。
【図11A】X位置を示す第1軸とY位置を示す第2軸を有する本発明の一実施例によるエコーロケーションデータアレイの説明図である。
【図11B】角度(θ)を示す第1軸と半径(R)を示す第2軸を有する本発明の一実施例によるエコーロケーションデータアレイの他の実施例の説明図である。
【図12A】Xの11分割用データビンを含む本発明の一実施例よる直交座標系の例示用の説明図である。
【図12B】本発明の一実施例による超音波ビームによって高周波照射された領域を表現する極座標系の説明図である。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の一実施例によるトランスデューサ素子から調査中の物質内の物体まで伝播する超音波の説明図である。
【図14】本発明の一実施例によるエコーから生成されたチャネルデータの説明図である。
【図15】本発明の一実施例による図14に示されたデータチャネルを使用して発生されたエコーロケーションデータの説明図である。
【図16】本発明の一実施例によるエコー領域計算に含まれる方法のフローチャートである。
【図17】本発明の一実施例による3通りの代替的なアポディゼーション関数を説明するグラフである。
【図18】2個のトランスデューサ素子から送信され、超音波反射物体に衝突した超音波の説明図である。
【図19】本発明の一実施例によるチャネルデータアレイに格納された、SCEトランスデューサ素子によって発生された信号の説明図である。
【図20】本発明の一実施例によるエコー領域計算ステップの詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
新しい幅広ビーム(New broad-beamTM)技術は、多次元(領域2次元若しくは容積3次元)エコーロケーションデータをできる限り少ない1個の超音波ビームから発生させることができるシステム及び方法である。これらの技術は、超音波ビームを発生させ、調査中の物質に超音波ビームを送信し、得られたエコーからエコー信号を発生させ、2次元以上の次元に分布したエコーロケーションデータを生成するためエコー信号を処理する。
【0027】
幅広ビーム技術は、従来技術の超音波システム及び方法と比較して複雑ではない。例えば、幅広システム及び方法は、送信ライン、走査ライン、或いは、受信ラインの使用による制限がなく、幅広ビームシステム及び方法は、僅か1個の送信超音波ビームから多次元エコーロケーションデータを発生させ得る。送信ライン及び受信ラインへの依存性は取り除かれる。なぜならば、幅広ビーム技術は、エコー源が、送信ビームライン250及び/又は受信ラインのような1次元ラインに沿って存在することを仮定しないからである。幅広ビームシステム及び方法は、2次元画像を発生させるため、多数のビーム走査若しくは走査ラインを必要としない。また、従来技術とは異なり、得られたエコーロケーションデータは、2次元に分布する1個の送信された超音波ビームから生じ得る。幅広ビームシステム及び方法を使用した場合、大多数の受信エコー信号は画像発生のため使用される。
【0028】
従来技術の実施例に対して、幅広ビームシステム及び方法は、送信された超音波ビームの形状若しくは幅に依存することなく、エコーロケーションデータの解像度を決定することができる。このような独立性が得られる理由は、幅広ビームシステムは、送信された超音波ビームが、送信ライン、又は、送信ラインを取り囲む円柱によって近似されることを仮定していないためである。一般的に、幅広ビームシステム及び方法において使用される超音波ビーム(幅広ビーム)は、従来技術において使用される精細に集束させられた超音波ビーム170よりも幅が広い。
【0029】
幅広ビームシステム及び方法は、データの操作の仕方が従来技術とは相違する。幅広ビームシステム及び方法は、受信用トランスデューサで受信されたエコーをエコーロケーションデータに変換する多次元逆コンボリューションアルゴリズムに基づいているので、単一の送信超音波ビームから多次元エコーロケーションデータを発生する。例えば、一実施例によれば、逆コンボリューションアルゴリズム(計算)は、2次元(時間、超音波トランスデューサ)未加工データから、2次元(X,Y位置)エコーロケーションデータへの変換に影響を与える。2次元(時間、超音波トランスデューサ)未加工データは、オプションとして、送信ライン若しくは受信ラインを仮定することなく、単一の送信超音波ビームから発生させられる。2次元エコーロケーションデータは、表現のため少なくとも二つの空間次元を要求する領域に分布する。幅広ビームシステム及び方法に組み込まれたデータ操作は、表示装置への表示のため構成された2次元画像を生成するため、単一の送信超音波ビームを使用することが可能である。
【0030】
幅広ビームシステム及び方法は、マイクロプロセッサ能力の増加と、集積回路技術の進歩を有効に活用する。現在のマイクロプロセッサは、従来技術のビーム形成技術を使用して個別の超音波ビームが送信され受信されるレートよりも速いレートで幅広ビームデータ解析を実行する能力を備えている。従来技術は、パルス戻り時間と、領域を映像化するために必要な個別の超音波ビームの個数とによって制限されるが、幅広ビーム方式の実施例は、コンピューティングテクノロジーにおいて進行中の最新技術を活用する。幅広ビームシステム及び方法は、従来技術のように、細く集束させられた超音波ビームを使用することによって主として制限されることのない画像発生レートを達成する。
【0031】
例えば、200mmの深さまで映像化する従来のシステムの場合、128回の送受信サイクルは、1.54mm/マイクロ秒の音速に基づいて33.3ミリ秒を要する。このレートにより得られるフレームレートは、基本アレイ105の軸に垂直な方向で画像領域全体の画像解像度が128ラインである場合に、約30フレーム/秒である。これに対して、同じ深さを映像化するため本発明の一実施例を使用する場合、同じ解像度は、5乃至7回の送受信サイクルを使用して実現され、全部で1.3乃至1.8ミリ秒しか要しない。この時間は、最終的なフレームレートを769乃至549フレーム/秒に制限する。様々な実施例において、上述の129ラインの画像解像度の画像は、25、17、10.5、又は、2ミリ秒未満で獲得される。
【0032】
幅広ビーム技術の一部の実施例は、従来技術の走査プロセスに伴う望ましくない時間的異常性の出現が最小限に抑えられた画像を生じる。幅広ビーム超音波ビームから獲得された多次元エコーロケーションデータは、短期間のパルスもどり時間における調査中の物質の断面を表す。この時間は、従来技術における2次元(多重ビーム)走査を実現するために要する時間よりも短いので、データ収集中にトランスデューサと調査中の物質の間に相対運動が生じる確率は、従来技術の場合よりも低下する。
【0033】
幅広ビームシステム及び方法は、超音波ビームがビームライン250のようなラインによって表現可能である、という従来技術の近似法に依存しない。したがって、得られるエコーロケーションデータの解像度は、従来技術の焦点230A−Eのような焦点からの距離の関数ではない。幅広ビームは、典型的に、従来技術の各集束ビームよりも幅が広く、より大きい領域を映像化する能力を備えている。
【0034】
各幅広ビームは、従来技術の超音波ビームの場合よりも広い領域を映像化することができるので、特定の領域を映像化するために必要な超音波ビームの個数は、従来技術よりも減少する。必要とされる超音波ビームは、例えば、1本のように非常に少ないので、幅広ビームシステム及び方法は、調査中の物質を映像化するため従来技術よりも少ない電力しか使用しない。使用電力が減少すると、調査中の物質に与えられるエネルギー量が減少し、各映像を発生させるために要する電気量も減少する。電気的必要条件の緩和は、バッテリーのような内蔵型電力源を使用する装置のためになる。
【0035】
幅広ビーム技術の実施例には、超音波ビームを生成、受信及び解析するエリア(領域)形成(area formingTM)プロセスが含まれる。このプロセスでは、エコーロケーションデータの組は、表現のための二つの空間次元を必要とする領域に分布し、高々1個の超音波ビームを使用して発生される。エコー検出が行われ、エコーロケーションデータが発生される受信点は、検査領域内のどの場所でも構わない。受信点は、オプションとして、粒度及び規則性が位置によって変化する可変グリッドに沿って並ぶ。幅広ビーム技術の他の実施例は、ボリューム(容積)形成(volume formingTM)プロセスが含まれる。ボリューム形成プロセスは、エリア形成プロセスと類似しているが、僅か1個の超音波ビームを使用して発生されたエコーロケーションデータを適切に表現するために3個の空間次元が必要である点で相違する。エリア形成及びボリューム形成は、オプションとして、多次元形成(multidimensional formingTM)プロセスを達成するため、時間及び速度のような非空間次元と組み合わされる。
【0036】
図4は、本発明の一実施例による幅広ビーム方法400の概要を説明するフローチャートである。方法400は、領域又は容積を映像化するために要する超音波ビーム(幅広ビーム)の個数及び形状を決定する幅広ビーム設計ステップ410から始まる。このステップ内で、少なくとも1個の決定された幅広ビームの望ましい特性が計算され、この幅広ビームの発生のためのパラメータが設定される。各幅広ビームの望ましい特性は、位置、方向、幅、強度、分散などのような因子を含む。パラメータには、電圧、アパーチャ関数、励起遅延などが含まれる。
【0037】
送信ステップ420において、ステップ410で設計された幅広ビームが発生され、調査中の物質へ送信される。送信ステップ420は、例えば、デジタル若しくはアナログ波形発生器を使用する電子波形の発生を含む。この波形は多数のチャネルに供給され、各チャネルは、多重チャネル遅延発生器及び多重チャネル電力装置を使用して独立に遅延させられ、増幅される。典型的に、遅延時間は、幅広ビームの望ましい形状、幅、及び、方向に応じて選択される。増幅された波形は、幅広ビームを調査中の物質へ送信させるトランスデューサ素子110を励起する。
【0038】
受信ステップ430は、送信された幅広ビームによって生成されたエコーを検出するためトランスデューサ素子110を使用する。トランスデューサ素子110は、検出されたエコーに応じて電子信号を発生する。発生した電子信号(アナログチャネルデータ)は、アナログフィルタを使用してオプション的にフィルタ処理され、デジタルチャネルデータを発生させるため、典型的に多重チャネルA/D変換器を用いてデジタル化される。一実施例において、チャネルデータは、好ましくは、振幅情報と位相情報の両方を含む。データ保存ステップ440では、チャネルデータはチャネルデータバッファに記憶される。このチャネルデータバッファは、RAM、磁気媒体、光媒体などのようなメモリに設けられる。
【0039】
エコー領域計算ステップ450は、多次元逆コンボリューションアルゴリズムを使用して、保存されているチャネルデータを操作する。これらのアルゴリズムは、チャネルデータを多次元エコーロケーションデータに変換する数学的技術である。エコー領域計算ステップ450は、従来技術を特徴付ける送信ライン、受信ライン、又は、走査ラインを使用することなく、多次元エコーロケーションデータを発生することが可能である。
【0040】
方法400は、エコーロケーションデータ保存ステップ460へ進み、ここで、得られたエコーロケーションデータは、事前に選択された座標系を利用するエコーロケーションデータアレイを使用して記憶される。エコーロケーションデータは、典型的に、RAM、磁気媒体、光媒体などのようなメモリに設けられる。
【0041】
ステップ465において、方法400は、データ収集プロセスが完了したかどうか(例えば、望ましい画像を発生させるために必要なデータが収集されたかどうか)をテストする。データ収集プロセスが不完全である場合、この方法は、幅広ビーム設計ステップ410へ戻り、別の幅広ビームが設計される。ステップ465において、データ収集プロセスが完了した場合、画像は、オプション的な画像発生ステップ470で発生され、オプション的な表示ステップ480でコンピュータモニタのような表示装置に表示される。
【0042】
他の一実施例では、幅広ビーム設計ステップ410は、幾つかの幅広ビームに対する特性を計算する。本実施例では、オプションとして、ステップ465とステップ420の間でステップ410へ戻る。この方法は、ステップ465から送信ステップ420へ直接的に進む場合がある。なぜならば、次の幅広ビームの望ましい特性は、ステップ410の先行の場面で予め計算されているからである。
【0043】
図5は、本発明の一実施例による幅広ビームシステム500の構成図である。プログラマブル・パルス・シーケンス発生器などのような波形発生器510は、電子パルス210のような電子信号を発生させるため使用される。この電子パルスは、幅広ビーム形超音波ビームを形成するため後で使用される。電子信号は、幾つかの信号チャネルで、遅延装置515によって、図4のステップ410で設計された特性をもつ超音波ビームを発生させるように構成された遅延の組を用いて、個別に遅延される。遅延装置515の出力は、電力トランジスタ、演算増幅器、高速FETなどのような電力増幅器520に供給され、そこで増幅され、送受スイッチ525を通過する。送受スイッチ525は、オプションとして、遅延装置515から与えられた信号を含む入力チャネルを、トランスデューサアレイ530への送信用の出力チャネルへ接続するように構成されたマルチプレクサ527を具備する。トランスデューサアレイ530は従来技術の素子アレイ105と類似している。トランスデューサアレイ530は、超音波トランスデューサ素子110A−110Hのような超音波トランスデューサ素子を含み、送受スイッチ525から受信した電気信号を超音波パルスに変換することによって幅広ビームを発生させる。
【0044】
トランスデューサアレイ530は、幅広ビームを調査中の物質535に送信するように構成される。幅広ビームの送信は図4のステップ420で行われる。エコーは、幅広ビームと、組織及び骨のような超音波反射物体との間の相互作用によって、調査中の物質535内で発生される。トランスデューサアレイ530は、発生されたエコーを受信し、図4のステップ430において対応した電気信号を生成する。典型的にアナログ信号であるこれらの電気信号は、送受スイッチ525を介して、電圧調整型演算増幅器。デジタル制御型増幅器、増幅用トランジスタコイルなどの可変利得増幅器540へ供給される。
【0045】
増幅後、信号は、オプション的なアナログフィルタ545を通過して、A/D変換器550へ渡され、A/D変換器において、増幅された信号はデジタル化される。アナログフィルタ545は、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、などのように従来技術において公知のアナログフィルタでもよい、A/D変換器550は、典型的に、市販されているアナログ・デジタル変換器などでもよい。
【0046】
生成されたデジタル信号は、ステップ440(図4)で、チャネルデータ記憶バッファ555に格納され、信号プロセッサ560によって操作される。チャネルデータ記憶バッファ555は、従来技術において公知の記憶システムに設けられる。例えば、チャネルデータ記憶バッファ555は、オプションとして、RAMのような電子メモリ、ディスクドライブのような磁気メモリ若しくは光メモリ、コンパクトディスク等に設けられる。信号プロセッサ560によって実行される演算は、図4のステップ450のエコー領域計算を含み、チャネルデータ記憶バッファ550に保存された時間域データを、図4のステップ460でエコーロケーションデータ記憶装置565に格納される未加工データ若しくは検出データのようなエコーロケーションデータに変換する。エコーロケーションデータ記憶装置565から、データは、オプションとして、付加データ記憶装置570に転送されるか、或いは、画像コンバータ575によってアクセスされる。エコーロケーションデータ記憶装置565及び付加データ記憶装置570は、電子メモリ、磁気媒体、光媒体などのような任意の適当な記憶装置である。画像コンバータ575は、従来技術における画像スキャンコンバータと類似しているが、幾つかの超音波ビームを含む走査を使用した発生されたデータではなく、1個の超音波ビームを使用して発生させられたデータに対して更に作用する。図4のステップ470において、画像コンバータ575は、検出されたデータ又は画像データを発生させるため、エコーロケーションデータ記憶装置565、付加データ記憶装置570、或いは、両方の記憶装置に記憶されたデータを使用する。
【0047】
画像発生プロセスは、従来技術のビーム形成方法によって発生されたエコーロケーションデータを使用する画像発生技術に類似している。例えば、エコーロケーションデータ記憶装置565内の特定の1は、オプションとして、表示スクリーンの特定の場所にマッピングされる。画像内のある位置の強度及び/又はカラーは、調査中の物質535から検出された強度特性又はその他の特性を示す。この画像は、オプションとして、図4のステップ480で、LCDスクリーン、CRTスクリーン、コンピュータモニタ、電子ディスプレイ等のディスプレイ580に表示される。
【0048】
画像コンバータ575によって使用されるデータは、超音波ビームの系列から得られるか、或いは、単一の超音波ビームから得られる。付加データ記憶装置570内のデータは、画像コンバータ575、通信電子機器585、及び、ユーザ・インタフェース電子機器590のような幅広ビームシステム500の別のコンポ−メントに供給される。幅広ビームシステム500のコンポーネントは、図5に示されないコネクションを通じて、図5に示された制御電子機器595によって制御され、調整される。制御電子機器595は、幅広ビームシステム500の要素を制御し、幅広ビーム処理400のような本発明の方法を実行するように構成されたマイクロプロセッサと、DSPと、オプション的なコンピュータコード596と、を含む。
【0049】
図6は、本発明の一実施例による幅広ビーム設計ステップ410を説明するフローチャートである。本実施例では、計算は、コンピュータコード596を使用して実行され、例えば、超音波ビーム発生、伝播及びエコー発生の数学モデルを含む。ある種の例では、計算処理を高速化するためルックアップテーブルが使用される。例えば、ユーザが特定の解析の深さを指定した場合、望ましい強度は、オプションとして、ルックアップテーブルから決定される。幅広ビーム設計ステップ410は、カバレッジ判定ステップ610から始まる。カバレッジ判定ステップ610では、調査されるべき対象の物質535内の領域(若しくは容積)と、調査が行われるべき時間周期とが判定される。カバレッジ判定ステップ610は、ユーザによって選択されたオプション、及び、現在の映像化(解析)モードの要求に応答する。例えば、ドップラー映像化モードの場合、ユーザは、連続的なモニタリングと、超音波パルスの連続的な系列によって表される幅広ビームと、を選定する。別の例では、ユーザは、制限された視野を使用して、調査中の物質535内の領域を注目するように選択する。特定の視野の選択は、オプションとして、発生された幅広ビームの幅を計算するときに使用される。例えば、幅広ビームの幅は、整数個の幅広ビームが、10%のオーバーラップで、選択された視野にぴったり合うように選択される。
【0050】
また、カバレッジ判定ステップ610は、調査中の物質535内に領域(又は容積)を画像化するために要する幅広ビームの個数を決定する。例えば、一実施例によれば、カバレッジ判定ステップ61は、遠くのフィールドにおけるカバレッジをシミュレートするように構成され、ブロック切換技術を使用して相互に離れている3個の幅広ビームを用いることによって最良に映像化される領域を決定する計算を含む。他の実施例では、この計算は、ある領域が最も巧く映像化される際に使用される幅広ビームの個数が、1個、2個、又は、それ以上の何れであるかを決定する。ユーザが、数種類の幅広ビーム、反復映像化、若しくは、連続モニタリングを含む動作モードを選択したとき、カバレッジ判定ステップ610は、オプションとして、幅広ビーム毎に1回ずつ実行される。
【0051】
カバレッジ判定ステップ610の後には、特性判定ステップ620が続き、カバレッジ判定ステップ610で判定された更なる幅広ビームの特性が指定される。これらの特性には、例示として、超音波周波数、方向、散乱、パルス形状、位相関係、アパーチャ、強度、区間、反復レート、及び/又は、超音波ビームの他の特性が含まれるが、これらの例に限定されない。特性は、典型的に、実行される解析の映像化モード、必要解像度、及び、ユーザによって選択されたオプションに依存する。例えば、連続モニタリングモードは、特定のパルスレートで発生された幅広ビームを要求し、高解像度は多数の超音波周波数の使用を要求し、ユーザは、散乱の少ない幅広ビームによって最も良く検査される狭い領域の調査を選択する。更に、上述の特性の他に、特性判定ステップ620は、幅広ビームによって覆われる領域を表現するために使用する座標系と、この座標系の原点を選択する。このような座標系は、エコーロケーションデータを記憶するため使用される。座標系の選択は、オプションとして、幅広ビームの形状に応答する。実現可能な座標系の例は、図7に示されている。
【0052】
カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、オプションとして、解像度要求条件及びダイナミックレンジ要求条件に応答する。例えば、一実施例では、これらのステップは、特定の領域に関してズームされた画像を指定するユーザ入力に応答する。他の実施例では、これらのステップは、画像の一部若しくは全部に対して非常に高い画像解像度を指定するユーザ入力に応答する。他の一実施例では、カバレッジ判定ステップ610は、単一の超音波ビームが発生されるべきであるが、たとえば解像度を高めるために、この単一の超音波ビームによって発生されたエコーは、数種類の受信用トランスデューサの組によって複数の送受信サイクルにおいて検出されるべきである、と判定する。
【0053】
カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、オプションとして、本発明の他のステップで発生されるフィードバックに応答する。例えば、一実施例において、エコーロケーションデータは、覆われた領域の区域が余り巧く映像化されず、この映像化の不良は、巧く映像化されなかった区域と最も近いトランスデューサ素子110との間に非常に反射率の高い境界が存在するためであることを示す。このフィードバックへの応答として、カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、反射境界及び検査されるべき領域とは同一線上に存在しない代替的な超音波トランスデューサから領域を検査する案内された幅広ビームを定義する。
【0054】
幅広ビーム選択ステップ630は、送信用の幅広ビームを選択する。この幅広ビームは、特性判定ステップ620で定義された幅広ビームの中から選択される。幾つかの幅広ビームが特性判定ステップ620で特徴付けられた場合、幅広ビーム選択ステップ630は、次の特性判定ステップ620が出現する前に、オプション的に、2回以上実行される。このような場合、幅広ビーム選択ステップ630は、図4のステップ465の後で反復される。
【0055】
幅広ビーム設計ステップ410は、励起計算ステップ640で終了する。励起計算ステップ640は、幅広ビーム選択ステップ630で選択された幅広ビームを発生させるため必要な適当な物理パラメータを決定する。これらの物理パラメータには、例えば、励起すべきトランスデューサ素子110、電子パルス電圧、パルス遅延時間、マルチプレクサ527の設定値等が含まれる。例えば、一実施例において、特定の望ましい形状及び方向をもつ選択された超音波ビームは、振幅、周波数及び位相によって特徴付けられた特定の電子波形によって励起された特定のトランスデューサ素子110の組を使用する必要がある。要求されたトランスデューサ素子110の組の中の各トランスデューサ110は適当な遅延で励起される。適当な物理パラメータは、特定個数のトランスデューサ素子110を励起するため使用される電圧、波形、及び、遅延を計算するため、例えば、数学モデルを使用して決定される。一実施例において、電圧は、幅広ビームが侵入することが期待される調査中の物質535までの距離に依存する。
【0056】
図7A〜7Cは、カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620で決定された幅広ビーム710の実施例(710A〜710C)を示す。図7Aには、直線的なトランスデューサアレイ530の実施例を使用して発生された幅広ビーム710Aが示されている。高周波音波が照射された区域の領域715Aは、オプションとして、原点720がトランスデューサ素子110の表面に置かれた極(θ,R)座標系で表現される。高周波音波照射区域715内の点は、原点720からの距離(R)と、トランスデューサアレイ530、又は、軸730若しくは軸735のような軸に関する角度座標値(θ)とによって識別される。他の実施例では、幅広ビーム701Bの焦点は、図2に示されるようにトランスデューサ素子110の前面ではなく、トランスデューサアレイ530の反対側に設けられる。
【0057】
図7Bは、曲線的なトランスデューサアレイ530の実施例を使用して発生された幅広ビーム710Bの説明図である。高調波音波が照射された区域715Bは、オプションとして、原点755がトランスデューサアレイ530の反対側にある極座標系によって表現される。この原点位置は、原点が図7Aに示されるようにトランスデューサアレイ530に接近している場合よりも、トランスデューサ素子110付近の広い領域に高周波音波を照射する。トランスデューサアレイ530の反対側の原点755の位置は、オプションとして、トランスデューサアレイ755の形状とは独立である。本発明の実施例には、原点755及び/又は焦点を、直線的なトランスデューサアレイ530の反対側に配置する実施例も含まれるが、これらの例には限定されない。
【0058】
図7Cは、高調波音波照射域715Cを生じる幅広ビーム710Cの説明図である。高調波音波照射域715Cは、図7Aに示された幅広ビーム710Aや図7Bに示された幅広ビーム710Bによって発生された高調波音波照射域よりも四角い形状をしている。幅広ビーム710Cによる高調波音波照射域は、矩形の形状をしているので、好ましくは、直交(x,y)座標系780で表現される。
【0059】
超音波ビームの中心で最大強度が検出される従来技術に対して、幅広ビーム710B若しくは710Cのような幅広ビームの最大強度は、ビーム中心線以外の点に現れる。図7Dは、ビームアパーチャの幅の約2分の1に一致する距離だけトランスデューサアレイ530から離れた点で測定された、幅広ビーム710Cの断面を通る超音波の強度をプロットしたグラフ790である。この断面は、図7Cでは、破線785で示されている。ある種の状況では、幅広ビームの強度プロファイルは、従来技術で見られるエネルギー分布よりも望ましいエネルギー分布を表す。例えば、グラフ790によって示されたエネルギー分布は、従来技術による焦点側の超音波ビーム内のエネルギー分布よりも均等に高調波音波照射域715C上に分布している。
【0060】
図8は、図4の送信ステップ420の一実施例の詳細説明図である。本実施例の場合、ステップ420は、波形発生器510が幅広ビーム設計ステップ410で計算された特性を備えた電気波形を発生させるため使用される波形発生ステップ810を含む。発生された波形は、オプションとして、周波数又は位相が変化する複数のパルスを含む。信号遅延ステップ820において、発生された波形は、幾つかの信号チャネルで再生され、遅延装置515を使用して、幅広ビーム設計ステップ410で決定された時間だけ遅延させられる。各信号チャネルの波形は、電力増幅器520を使用して増幅ステップ830で増幅される。増幅された波形は、多重化ステップ840でマルチプレクサ527に供給される。マルチプレクサ527は、トランスデューサアレイ530内のトランスデューサ素子110の一つ以上のメンバーに、各信号チャネル内の波形を案内する。音波発生ステップ850では、案内された波形が、トランスデューサアレイ530に幅広ビーム710を発生させる。この幅広ビームは調査中の物質535に向けられる。音波発生ステップ850は、送信ステップ420を終了する。
【0061】
図9は、エコーが検出され、デジタルデータに変換される図4の受信ステップ430の実施例の詳細説明図である。スイッチセットステップ910では、送受(送信/受信)スイッチ525は、トランスデューサ素子110で生成された信号がマルチプレクサ527を介して可変利得増幅器540へ供給されるようにセットされる。エコー検出ステップ920では、調査中の物質535からのエコーがトランスデューサアレイ530内のトランスデューサ素子110のメンバーによって検出される。エコーの検出に使用されるトランスデューサ素子110のメンバーは、オプションとして、幅広ビーム710を送信するため使用されるトランスデューサ素子110のメンバーとは別のメンバーでもよい。様々な実施例において、これらの2組のトランスデューサ素子110は、多数の方法で構成される。例えば、2組は、同一であり、インターリーブされ、トランスデューサアレイ530に沿って部分的に重なり合い、或いは、トランスデューサアレイ530に沿って重なり合わない。送受スイッチ525はスイッチセットステップ910でセットされているので、検出されたエコーから生ずる電子信号は可変利得増幅器540へ供給される。
【0062】
可変利得増幅器540へ供給された電子信号は、可変増幅ステップ930で増幅される。可変増幅ステップ930は、オプションとして、前の幅広ビーム710を使用して取得されたデータに基づくフィードバックを含む。フィードバックは、適応的な処理を実現し、後続のデータ操作ステップのダイナミックレンジが最大限になるように各チャネル内の信号を調節するため使用される。例えば、一実施例において、前の可変増幅ステップ930の実行によって特定のチャネルが飽和状態になった場合、そのチャネルの増幅は、オプション的に、後続の可変増幅ステップ930の実行の際に低下される。このような低下、すなわち、適応的フロントエンド利得は、増幅された信号のデジタル化後に行われる後のデータ操作で補償される。他の実施例では、トランスデューサアレイ530の中心付近のトランスデューサ素子110は、トランスデューサアレイ530の縁付近にあるトランスデューサ素子110よりも強くエコーに系統的に応答することが分かる。可変増幅ステップ930は、オプションとして、この系統的な差を補償する。
【0063】
オプション的なアナログフィルタリングステップ940では、可変増幅ステップ930で増幅された電子信号は、アナログフィルタ945を使用して処理される。この処理には、例えば、I/Qミキシング、望ましくない周波数の除去、及び、後段のデータ操作により好適な周波数範囲への信号のシフトが含まれる。
【0064】
データ変換ステップ950では、アナログフィルタリングステップ940でオプションとしてフィルタリングされる電子信号は、A/D変換器550を使用してデジタル化される。デジタルデータの発生は、図4の受信ステップ430で完了する。様々な実施例において、データ変換ステップ950は、幅広ビーム処理400内の別の時点で行われる。受信ステップ430の完了後、得られたデジタル信号は、データ保存ステップ440(図4)において、チャネルデータ記憶バッファ555に格納される。
【0065】
図10は、データ保存ステップ440で記憶されたデジタルデータを保持するように構成されたチャネルデータアレイ1000の一実施例の説明図である。チャネルデータアレイ1000は、チャネルデータ記憶バッファ555に収容される。チャネルデータアレイ1000の第1軸1010は、トランスデューサアレイ530のエコー受信用メンバーによってインデックスされる。チャネルデータアレイ1000の第2軸1020は、時間チャネルに分割される。アレイの各場所に格納された値は、特定の時間に、トランスデューサアレイ530の特定のメンバーによって検出されたエコー信号の強度及び位相を示す。
【0066】
チャネルデータ記憶バッファ555は、オプションとして、幾つかのチャネルデータアレイ1000を具備する。さらに、チャネルデータアレイ1000に格納された情報は、受信信号を平均化若しくは合計するため使用される。種々の実施例において、チャネルデータアレイ1000は、多次元データを格納するように構成される。例えば、一実施例によれば、トランスデューサアレイ530は、トランスデューサ素子110の2次元アレイである。本実施例の場合、チャネルデータアレイ100は、トランスデューサアレイ530の二つの次元を表現する2本の軸をふくみ、一方の軸は時間チャネルを表現する。
【0067】
エコー領域計算ステップ450は、調査中の物質535内のエコー源の位置及び強度を示すエコーロケーションデータを発生させるため、データ保存ステップ440で格納されたデータを使用する。このエコーロケーションデータの発生には、チャネルデータアレイ1000内で、多次元時間チャネルデータを、多次元位置(エコーロケーション)データに変換することが含まれる。例えば、一実施例によれば、2次元時間チャネルデータは、2次元空間座標によって表現されたエコーロケーションデータに変換される。エコー領域計算ステップ450のデータ変換は、ここで説明した多数の代替的な変換アルゴリズムを使用して実行される。これらの変換は、オプションとして、単一の幅広ビーム710の結果として受信された信号を用いて、2次元エコーロケーションデータを発生させるため使用される。代替的な一実施例では、エコー領域計算ステップ450は、付加的な空間次元を含む類似したエコー容積計算ステップで置き換えられる。エコー容積計算は、3次元容積をカバーする単一の幅広ビームの結果として受信された信号を用いて、3次元エコーロケーションデータを発生させる。
【0068】
図11A及び11Bは、エコーロケーションデータ記憶装置565に格納され、エコー領域計算ステップ450から得られた位置データを記憶するように構成されたエコーロケーションデータアレイ1100の二つの実施例の説明図である。これらの二つの実施例は、異なる座標系を利用する。以下で詳述するように、より効率的な座標系は、特に、個別の超音波ビーム710の形状に依存する。殆どの場合に、より効率的な座標系は、高周波音波が照射された領域と接近してオーバーレイする。例えば、図7A〜7Cに示されるように、幅広ビーム710A、幅広ビーム710B、及び、幅広ビーム710Cによって高周波音波照射された領域は、夫々、異なる原点をもつ別々の座標系によって表現される。より効率的な座標系を使用することにより、サンプリング効率と空間解像度が向上する。好ましい座標系とエコーロケーションデータアレイ1100の選定は、幅広ビーム710のような超音波ビームの形状に応じて行われ、オプションとして、ステップ410、440又は450で行われる。
【0069】
図11Aは、X座標(位置)を示す第1軸1110と、Y座標(位置)を示す第2軸1120と、を含む直交座標系を使用するエコーロケーションデータ和え離1100の一実施例の説明図である。図11Bは、角度(θ)座標を示す第1軸1110と、半径座標を示す第2軸1120と、を含む極座標系を使用するエコーロケーションデータアレイ1100の他の一実施例の説明図である。エコーロケーションデータアレイ1100の別の実施例は、別の座標系によって表現される。図示されない付加データは、オプションとして、第1軸1100と第2軸1120をトランスデューサアレイ530に関係付けるため使用される。例えば、エコーロケーションデータアレイ1100は、オプションとして、各座標系の原点を特定の個数の超音波トランスデューサ素子110へ関係付けるベクトルによって表現される。
【0070】
図12A及び12Bは、一方の座標系を使用する方がもう一方の座標系を使用するよりも効率的である状況を説明する図である。図12A及び12Bは、夫々、図11A及び11Bに示されたエコーロケーションデータアレイ1100の実施例が超音波ビーム1210に重ねられた様子を表している。超音波ビーム1210は、幅広ビーム710の一実施例である。図12Aは、例示の目的のため、11個のX分割用データビン(格納場所)1220を含む直交座標系を表している。データビン1220は、遠くのフィールド1230をカバーするために適切である。X次元におけるデータビン1220の間隔は、近傍フィールド1240のデータビンの間隔と同じであり、近傍フィールド1240の多数のデータビン1220は、超音波ビーム1219によって検査されない領域にマッピングされている。検査領域にマッピングされていないデータビン1220は、調査中の物質535の非効率的なサンプリングを表している。
【0071】
これに対して、図12Bには、超音波ビーム1210によって高調波音波照射された領域を表現するため極座標系を使用する例が示されている。極座標系の場合、データビン1250のサイズは、R座標の関数として変化する。エコーロケーションデータアレイ1100の本実施例のデータ点は、したがって、図12Aに示されたエコーロケーションデータアレイ1100の実施例の場合よりも効率的に、超音波ビーム1210によって検査される領域にマッピングされる。データビン1250のサイズの変化は効率的に増加する。なぜならば、図12Bに示されるように、データアレイ1100内のできるだけ多くのデータビン1250が超音波ビーム1210によってカバーされる領域に収まるからである。
【0072】
データビンの粒度はダイナミックである。一部の実施例では、エコーロケーションデータアレイ1100は、ナイキストの標本化空間を表現する。ビン1250の密度は、ある個数の標本が、対象の区域を通じて擬似的ではないサンプリングに対して、ナイキスト基準を充たすように、変化させられる。一部の実施例では、ビン1250の密度は、得られるエコーロケーションの解像度がある特定の区域で大きくなるように変化する。例えば、一実施例では、ユーザは、より詳細な画像が望ましい特定の区域を指定する。これに応じて、幅広ビームシステム及び方法は、この区域内でビン1250の密度が高くされたエコーロケーションデータアレイ1100を使用する。
【0073】
本発明の一部の実施例は、データビン1250の間で外挿及び内挿を行う。例えば、一実施例によれば、内挿は、遠方フィールドで使用され、各データビン1250は、エコーロケーションデータの密度を増加させるためより広い領域を表現する。オプションとして、内挿が近傍フィールドで殆ど使用されない場合、データビン1250の密度は高くなる。
【0074】
受信ステップ430で発生されたチャネルデータの解像度(標本化周波数)は、基本的に、ナイキスト理論の結果として、得られるエコーロケーションの解像度を制限する。しかし、受信ステップ430で発生されたデータの解像度は、オプション的に、信号平均化又はアップサンプリング技術によって改良される。アップサンプリング技術には、付加データの使用が含まれ、オプションとして、付加データが解像度の改良を非常に要求する区域に集められるように、フィードバックが含まれる。
【0075】
図13乃至15は、エコー領域計算ステップ450(図4)の実施例を示すために使用される。図13は、トランスデューサ素子110A−110Sと、調査中の物質535内部の超音波反射物体との間での超音波の伝播の説明図である。図14には、検出されたエコーから生成されたチャネルデータが示されている。図15には、図14に示されたチャネルデータを使用して発生させられたエコーロケーションデータが示されている。
【0076】
エコー領域計算ステップ450の幾つかの実施例では、データ変換方法が含まれ、調査中の物質535内の各ロケーションから検出されたエコーへの主要な要因は、そのロケーションの最も近くにあるトランスデューサ素子110のメンバーであると仮定される。この素子は、主寄与素子(MCE)と呼ばれる。典型的に、あるロケーションに最も近いトランスデューサ素子110のメンバーは、その特定のロケーション、及び、そのロケーションでの超音波反射物体に対するMCEである。しかし、MCEの独自性は、幅広ビーム710の方向と、トランスデューサアレイ530の形状とに依存する。このような場合に、MCEは、特定のロケーションに最も近いトランスデューサ素子110ではない。図4のエコー領域計算ステップ450のデータ変換方法は、オプションとして、幅広ビーム710の方向、トランスデューサアレイ530の幾何形状、フィードバック、並びに、超音波反射物体に対し、トランスデューサ素子110の中で最も近いメンバーではないMCEを決定するためのその他の要因を含む。
【0077】
図13Aには、単一のトランスデューサ素子110から送信された超音波1305が示されている。超音波1305は、調査中の物質535(図示せず)の中を伝わり、超音波反射物体1310Aに衝突する。トランスデューサ素子110Gは、トランスデューサ素子110A−110Sの中で超音波反射物体1310Aの最も近くにあるトランスデューサ素子であり、従って、反射物体1310Aに対するMCEであるとみなされる。超音波反射物体1310Aで、超音波1305は、超音波エコー1315を発生させる。その中の超音波エコー1315A−1315Fが図示されている。超音波エコー1315は、トランスデューサ素子110A−110Sまで逆伝播し、そこで検出される。
【0078】
図13Aには、1個のトランスデューサ素子110G(MCE)から送信された超音波1305が示されているが、殆どの実施例において、超音波は、幅広ビーム710の形成中に複数のトランスデューサ素子110A−110Sから送信される。図13Bは、超音波反射物体1310Bに対するMCEである単一のトランスデューサ素子110Qによって発生させられた超音波1330を示す図である。超音波エコー1340A−1340Fが図示されているエコー1340は、反射物体1310Bで発生し、逆伝播し、トランスデューサ素子110A−110Sによって検出される。
【0079】
図14は、図13に示された超音波1305及び超音波1330によって発生させられたデータを含むチャネルデータアレイ1000の一実施例の説明図である。チャネルデータアレイ1000の各列1410A−1410Sは、対応したトランスデューサ素子110A−110Sで検出された信号を表す。チャネルデータアレイ1000の各行1420A−1420Uは、特定の時間周期に検出された信号を含む。図14において、エコー1315及び1340の検出によって発生したデータを含むデータ要素1430は、データロケーションライン1440A又はデータロケーションライン1440Bのそれぞれと交差するデータ要素1430である。かくして、調査中の物質535内で超音波反射物体1310のような反射物体から発生した超音波エコーは、データロケーションライン1440A又は1440Bのようなラインに沿って存在するデータを生成する。データロケーションライン1440A及び1440Bは、トランスデューサ530の既知幾何形状と、調査中の物質535内での音速と、を使用する物理学及び幾何学の原則から計算することができる。データロケーションライン1440A及び1440Bは、MCE、トランスデューサ素子110G、或いは、典型的にその他のトランスデューサ素子110と交差しない。実際上、調査中の物質535は、多数の超音波反射物体1310を含み、チャネルデータアレイ1000はそれぞれの超音波反射物体によって発生されたデータを含む。
【0080】
エコー領域計算ステップ450の実施例によれば、エコーロケーションデータは、データロケーションライン1440A、データロケーションライン1440Bなどのようなラインに沿ってデータを合計することによって計算される。例えば、データロケーションライン1440Bの方向にデータを合計すると、超音波反射物体1310Bによって占有された位置で発生させられ、データビン1220やデータビン1240のようなデータビンによって表現されるエコー1315の振幅を表す結果が得られる。この合計は代表的なデータビンに格納される。類似した合計は、エコーロケーションデータアレイ1100内のデータビン毎にオプションとして実行される。多数回の合計によって、エコーロケーションデータアレイ1100は、調査中の物質535内の超音波反射物体を表現するエコーロケーションデータで占められる。
【0081】
図15には、エコーロケーションデータビン1520を含むエコーロケーションデータアレイ1100の一実施例が示されている。各エコーロケーションデータビン1520は、図14に示されるようにチャネルデータアレイ1000におけるデータロケーションライン1440Aのような固有のラインと関連付けられる。固有のラインに沿ったデータは、各データビン1520によって表される物理的ロケーションで行われたエコー発生の大きさを計算するため合計される。この合計は、オプションとして、全てのデータビン1520に関して実行され、エコーロケーションデータアレイ1100全体のエコーロケーションデータを計算するために使用され得る。
【0082】
図16は、エコー領域計算ステップ450の一実施例に含まれるデータ変換方法の説明図である。本実施例は、エコーロケーションデータアレイ1100内の一つのエコーロケーションデータビン1520が選択される素子選択ステップ1610を含む。典型的に、各々のエコーロケーションデータビン1520の選択は、エコーロケーションデータアレイ1100を系統的にトラバース(辿る)ことによって実現される。素子選択ステップ1610の後には、ライン判定ステップ1620が続き、選択されたエコーロケーションデータビン1520と関連付けられたチャネルデータアレイ1100の固有ラインが判定される。判定は、前に計算されたラインを含むルックアップテーブルなどを使用して、幾何学の原理からラインを計算することによって実行される。判定は、エコー領域計算ステップ450の前、或いは、エコー領域計算ステップ450の間に行われる。種々の実施例では、判定は、幅広ビーム設計ステップ410の前に、或いは、幅広ビーム設計ステップ410の間に行われる。代替的な実施例では、判定は、図4のステップ420、430及び/又は440の前若しくは実行中に行われる。ライン判定ステップ1620の後には、データ合計ステップ1630が続き、ライン判定ステップ1620で判定されたラインと交差するデータ要素1430からのデータを合計する。一実施例において、データ合計ステップ1630は、単純なデータの加算を行う。代替的な実施例では、データ合計ステップ1630は、重み付き関数、マトリックス演算、外挿、内挿など数学的技術を使用する。一実施例において、データ合計ステップ1630は、制御電子機器595内のファームウェアによって容易に実現される。結果保存ステップ1640では、ステップ1630での合計の結果が素子選択ステップ1610で選択されたデータ要素に格納される。
【0083】
ステップ1610乃至1640は、オプションとして、エコーロケーションデータアレイ1100内の全てのエコーロケーションデータビン1520に対して繰り返してもよい。図15は、図16に示された方法を使用してデータロケーションライン1440A及び1440Bに沿った合計によって得られた非零値を含むエコーロケーションデータビン1520の二つの組(1550及び1560)を示す。エコーロケーションデータビン1520の各組(1550及び1560)は、典型的に、種々の非零値が格納されたエコーロケーションデータビンを含む。ある種の実施例では、ステップ1610から1640までの一つ以上のステップは、並列処理として実行される。
【0084】
エコー領域計算ステップ450の他の実施例は、代替的なデータ変換方法を含む。これらの代替的な方法は、例えば、周波数域で実行される計算を使用し、受信信号間の位相関係を使用し、各トランスデューサ素子110の寄与に重み付けをするためアポディゼーション関数を使用し、フィードバック機構を使用し、MCE以外の送信用トランスデューサ素子110の相関解析を使用し考慮する。これらのMCE以外のトランスデューサ素子110は、チャネルデータからエコーロケーションデータへの変換の質と速度の両方を高めるため使用される。
【0085】
一実施例において、エコー領域計算ステップ450は、各トランスデューサ素子110の寄与度に重みを付けるためアポディゼーション関数を利用する。MCEの近くにあるトランスデューサ素子110は、MCEから遠くにあるトランスデューサ素子110よりも強いエコーを、特定の反射物体1310から受信するので、重み付けをする方が望ましい。
【0086】
図17は、本発明の実施例による3通りの別のアポディゼーション関数の説明図である。グラフ1710は、3種類の別のアポディゼーション関数1720、1730及び1740を示す。例えば、トランスデューサ素子110Gが、図16の素子選択ステップ1610で選択されたデータ要素1430のうちの一つに対するMCEである場合、アポディゼーション関数1720は、得られた合計がトランスデューサ素子110Gの近くにあるトランスデューサ素子110からより大きい寄与を受けるように、データ合計ステップ1630で使用される。同様に、トランスデューサ素子110K及び110SがMCEであるときの合計の場合、オプションとして、ライン1730及び1740で表されたアポディゼーション関数が使用される。
【0087】
他の実施例では、エコー領域計算ステップ450は、少なくとも部分的に周波数域で実行される。データは、可逆的な変換、例えば、サイン変換、フーリエ変換、ウェーブレット変換などを用いて変換される。
【0088】
エコー領域計算ステップ450の一部の実施例では、受信信号間の位相関係が、MCEによって送信された超音波から得られた受信信号と、2次寄与素子(SCE)から得られた受信信号とを区別するために使用される。SCEは、MCE以外のトランスデューサ素子110であり、超音波反射物体1310のような所定の超音波反射物体から発生した信号に寄与する。
【0089】
図18は、トランスデューサ素子110F及び110Gから送信され、超音波反射物体1310Aに衝突する超音波1810及び1305を示す図である。トランスデューサ素子110Gは、トランスデューサ素子110の中で最も近くに存在するメンバーであるので、超音波反射物体1310Aに対するMCEで在ると考えられる。他の実施例では、密接に集合したトランスデューサの組が一体的にMCEとして取り扱われる。トランスデューサ素子110Fのような他のトランスデューサ素子110も、反射物体1310Aに到達する超音波を発生する。本例の場合、トランスデューサ素子110FはSCEである。これらのSCEトランスデューサ素子110からの超音波は、超音波反射物体1310Aに到達するまでに、MCEトランスデューサ素子110からの超音波よりも長い距離を伝わる。MCEによって発生された超音波と同様に、SCEからの超音波は、超音波反射物体1310Aに衝突したとき、エコーを発生させる。その中の一部のエコーはトランスデューサアレイ530で検出される。
【0090】
図19は、チャネルデータアレイ1000内のSCEトランスデューサ素子110Fによって発生された信号のロケーションの説明図である。これらの信号は、データロケーションライン1440Aと類似したデータロケーションライン1910上にのる。データロケーションライン1910はデータロケーションライン1440Aよりも時間的に僅かに遅れている。データロケーションライン1440Aとデータロケーションライン1910の時間差は、超音波がトランスデューサ素子110Fから超音波反射物体1310Aに到達するまでに要する時間と、超音波がトランスデューサ素子110Gから超音波反射物体1310Aに到達するまでに要する時間との差に起因する。SCEから得られたデータと、MCEから得られたデータは、区別する方が望ましい。MCEからの信号は、典型的に、(超音波がより長い距離を伝わる)SCEから来る信号よりも強いが、SCEからの信号は、移動距離の差から生じる位相差によって更に見分けられる。特定の位相をもつ信号だけを考慮することによって、SCEから得られた信号をフィルタリングによって分離することができる。例えば、一実施例によれば、SCE信号は、10dBよりも上で除去され、一部の実施例では、38dBよりも上で除去される。
【0091】
様々な実施例において、SCEから来る信号は、エコー領域計算ステップ450で獲得された結果を改善するため使用される。例えば、一部の実施例では、SCEから来るデータは、MCEから来るデータに加算される(added)。かくして、図19に示されるように、データロケーションライン1910にのるデータは、データロケーションライン1440Aに沿うデータに加算される。データロケーションライン1910に重なるデータには、SCEトランスデューサ素子110Fで発生され、反射物体1310Aから反射された超音波により生じたデータが含まれる。位相調節及び重み付けの後、このデータは、データロケーションライン1440Aに重なるデータに強め合うように加算され、反射物体1310Aの存在を示すエコーロケーションデータの信号対雑音比を改善する。典型的に、MCEの最も近くにあるSCEは、遠くに離れているSCEよりも大きい重みが付与される。例えば、一実施例では、近傍SCEの重みを決定するためMCEに中心が置かれたChi平方重み付け分布が使用される。他の実施例では、重み付け分布は、チャネルデータアレイ1000における信号が強いMCE信号と重なるSCEの重みを減少させるフィードバックアルゴリズムに応答する。
【0092】
他の実施例では、SCEによって生ずる信号は、MCEによって生ずる信号から減算される。例えば、大きいMCE信号が、図19に示されるようにデータロケーションライン1440Aに沿って検出される場合、対応する大きいSCE信号がデータロケーションライン1910に沿って存在することが予想される。対応するSCE信号は予測可能であり、近似値はMCE信号の関数として計算可能であるため、データ値が他のエコーロケーションデータビン1250に対する値を計算するため使用される前に、計算値がデータ要素1430に格納されたチャネルデータ値から減算される。エコー領域計算を改良するためSCEから生じたデータを考慮することは、オプションとして、データ合計ステップ1630(図16)の一部として行われる。
【0093】
エコー領域計算ステップ450の一部の実施例はフィードバックを使用する。例えば、一実施例によれば、計算エコーロケーションデータは、計算エコーロケーションデータに基づいてシミュレートされたエコー信号(シミュレートされたチャネルデータ)を生成する技術を使用する「逆」データ変換で処理される。この逆変換は、エコーロケーションデータの計算が最適である場合に期待されるシミュレーション・チャネルデータを生成する。逆変換は、オプションとして、従来技術の光線追跡法(レイ・トレーシング)を使用して実行される。シミュレートされたチャネルデータは、チャネルデータアレイ1000に保存されている実際のエコーデータと比較される。これらの二つのデータセット間の類似度は、エコーロケーションデータを生成するため使用された計算の品質を表す。オプション的な反復処理の場合、エコーロケーションデータの計算は、この類似度に応じて変化するパラメータを使用して繰り返される。これらのパラメータは、チャネルデータアレイ1000内のデータとシミュレート・エコー信号との間の類似度を最適化するため操作される、種々の加重(重み付け)係数、アポディゼーション関数又はSCEを含む。
【0094】
他の実施例によれば、フィードバックは、幅広ビーム設計ステップ410を制御するためエコーロケーションデータを利用する。例えば、一実施例では、ステップ410で設計された超音波ビームの方向は、調査中の物質535内の反射性境界の場所に応答する。他の実施例では、ステップ410で設計されたビームの焦点、幅、周波数、又は、個数は、計算エコーロケーションデータに敏感である。
【0095】
エコー領域計算ステップ450の幾つかの実施例は、相関解析を利用するデータ変換を行う。相関法は、データ解析技術では公知であり、データ間の類似度を強調し、データ間の比較を行うために有用である。相関は、特に、例えば、位相の変化によって系統的に異なるデータを比較する場合に役に立つ。ある座標方向に一定の度合いで差がある2組のデータセットの相互相関解析は、この一定の差と、この差を考慮した後のデータの類似度を識別する。データセットの自己相関解析は、データ中の周期的信号又は反復的信号を実証する。
【0096】
図20は、MCEデータとの相関が良いSCEデータの成分を識別するため相互相関法が使用されるエコー領域計算ステップ450の一実施例の説明図である。相互相関計算ステップ2010において、MCEと関連付けられた、ラインデータロケーション1440A(図14)のようなラインに載るデータは、SCEと関連付けられた、ラインデータロケーション1910(図14)のようなラインに載るデータとの間で相互相関が求められる。これらのデータセットの各々は、オプションとして、アポディゼーション関数1720のような関数を使用して前処理される。相互相関は、2組のデータセットの間の位相差対類似度の関数として表現され得る相関データセットを発生する。位相差計算ステップ2020において、MCEデータとSCEデータ間の予想位相差は、MCEとSCEの間の既知の幾何学的関係に基づいて計算される。参照(ルックアップ)ステップ2030において、計算された位相差は、相関データセット内で、特定の位相差で、相互相関によって発生された相関データセット内の類似度値を参照するため使用される。位相差計算ステップ2020で計算された位相差に対応する類似度値は、MCEデータの信号対雑音比を改善する際にSCEデータがどの程度有効であり得るかを示す。なぜならば、SCEデータの類似度が高くなるほど、強め合うようにMCEデータに加算される可能性が高くなるからである。判定ステップ2040において、類似度値は所定の閾値(スレッショルド)と比較される。類似度値が閾値よりも大きい場合、SCEデータは、データ追加ステップ2050でMCEデータに加算される。ステップ2040において、類似度値は所定の閾値未満であることが判明した場合、コンピュータコード596は、判定ステップ2060で、特定のSCEデータセットの更なる解析を行うのが当然であるかどうかを判定する。例えば、近傍のSCEが未だ検査されていない場合、或いは、ユーザが信号対雑音比をより一層改善することを要求する場合、更なる解析が当然に行われる。さもなければ、この特定のSCEデータセットの解析は終了する。ステップ2060において、更なる解析が保証されていることが判定された場合,SCEデータセットはオプション的なフィルタステップ2070で処理される。ステップ2070における処理には、MCEデータセットとの間で優れた相関を示すSCEデータセットの成分を強調するため設計された、フィルタリング、打ち切り、若しくは、類似した手段が含まれる。例えば、一実施例よれば、アポディゼーション関数1740のような代替的な関数がSCEデータセットに適用される。図20に示されたステップは、オプションとして、2組以上のSCEデータセットに適用される。
【0097】
エコー領域計算ステップ450の代替的な実施例を使用して発生させられたエコーロケーションデータは、オプションとして比較され、この比較は、計算の整合性を判定し、或いは、フィードバックを与えるため使用される。例えば、一実施例において、エコー領域計算ステップ450の2回の繰返しには、異なるSCEの考慮が含まれる。これらの計算の精度は、繰返し毎の結果を比較することによってチェックされる。結果が接近している程、SCEを使用することによって正確な結果が生成される可能性が高くなる。他の例では、エコー領域計算ステップ450の2種類の実施例を使用して計算されたエコーロケーションデータは、著しく相違することが判明する。これらの相違は、幅広ビーム技術の他のステップに影響を与えるフィードバックとして使用される。例えば、特定区域におけるエコーロケーションデータの再生不可能性は、オプションとして、その区域を検査する幅広ビームの特性(強度、周波数、方向など)が変更されるように、幅広ビーム設計ステップ410にフィードバックを与えるため使用される。
【0098】
エコーロケーションデータアレイ1100に格納されたデータは、オプションとして、ユーザに向けて表示することができる調査中の物質535の画像を発生する画像発生ステップ470(図4)で使用される。画像の発生及び表示は、画像コンバータ575及びディスプレイ580を夫々使用することによって実現される。2次元データは、幅広ビーム技術を使用して単一の超音波ビームから発生させられ得るので、2次元画像が単一の超音波ビームから発生され得る。様々な実施例において、この能力は、従来技術による方法よりも画像フレームレートを増加させる。なぜならば、画像は、従来技術の多数の(すなわち、100個を超える)パルスの戻り時間ではなく、単一パルスの戻り時間、或いは、選択的に、少数個(すなわち、5個未満、10個未満、20個未満、40個未満若しくは64個未満)のパルスの戻り時間によって制限される時間内に生成されるからである。単一の超音波パルスから画像を発生させることの利点には、生成される画像内のジッタを低減し得ることがある。なぜならば、従来技術に対して、データが収集される期間中にトランスデューサアレイ530と調査中の物質535の間に相対運動が生じる時間が短くなるからである。単一の超音波ビームから画像を発生させることにより、調査中の物質535へ向けられる超音波エネルギーの量が削減され、画像を発生させるために要する電気的パワーの量が削減される。
【0099】
以上の方法及び装置の様々な実施例の記述から、当業者に明らかであるように、これらの実施例への変更及び追加は、本発明の原理を逸脱することなくなし得る。例えば、トランスデューサ素子110は、別の超音波発生素子によって置き換えることが可能であり、送受スイッチ515は、別個の送信スイッチ及び受信スイッチによって置き換えることが可能である。図示されたトランスデューサ素子110の個数は限定するものではない。典型的な実施例には、非常に多数のトランスデューサ素子110が含まれる。同様に、図示されたデータアレイの解像度は、例示の目的のためだけに選択された解像度である。典型的な実施例には、非常に多数のデータビンを備えたデータアレイが含まれる。
【0100】
幅広ビーム技術は、領域形成と従来のビーム形成の両方を使用するように構成されたシステムに適用可能である。一部の実施例は、これらの二通りのアプローチを切り替える手段を含む。例えば、領域形成技術は、領域を調べるために使用され、従来のビーム形成技術は、特定の対象領域にエネルギーを集中させるために使用される。2次元トランスデューサアレイを含むある種の実施例では、領域形成技術は、従来のビーム形成技術と同時に使用される。例えば、一方のトランスデューサ素子の組は領域形成のため使用され、他方のトランスデューサ素子の組は従来のビーム形成のため使用される。別の例では、領域形成は一方の空間次元でデータを収集するため使用され、従来のビーム形成は他方の空間次元でデータを収集するため使用される。超音波ビームは、一方の次元では領域形成用に構成され、他方の次元では従来のビーム形成用に構成される。これらの実施例の場合、2種類以上のエコーロケーション法が同時に実行され、各々のエコーロケーション法は、オプションとして、特定の空間次元と関連付けられる。
【0101】
幅広ビーム技術は、2次元領域若しくは3次元容積の中で集中ビームを走査させるため、フェーズドアレイを使用することによって制限されたシステムに適用可能である。これらのシステムは、ソナーのような音響システム、並びに、レーダーのような電磁波システムを含む。幅広ビーム技術の実施例は、2次元トランスデューサアレイと共に使用される。これらの実施例の場合、エコー容積計算は、エコー領域計算を置き換え、ステップ450の変換は、エコーデータの3次元(トランスデューサ、トランスデューサ、時間)アレイを3次元(x、y、z)エコーロケーションデータアレイに変換する。一実施例によれば、一つの3次元超音波ビームは、容積形成を実行するため使用され、これにより、空間内の容積をカバーするエコーロケーションデータを生成する。
【0102】
本願に関連して下記の態様が考えられる。
〔態様1〕
検査対象物質を検査する方法であって、各々のトランスデューサによって発生された成分を含む超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順と、超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、第1のデータが位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布するデータを表すとき、受信したエコーからこの第1のデータを発生させる手順と、受信したエコーの中から、複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相情報及び/又は振幅情報を使用する手順と、区別されたエコーを使用して、第1のデータを、第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する手順と、を有する方法。
〔態様2〕
振幅情報は受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様3〕振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様4〕位相情報は受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様5〕
超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するように設定されている、態様4記載の方法。
〔態様6〕
付加超音波ビームを検査対象物質に送信する手順を更に含み、付加超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている、態様5記載の方法。
〔態様7〕
2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている付加超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、付加超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生した第2のエコーを受信する手順と、受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順と、第2のデータと第3のデータの両方を使用して画像を発生させる手順と、を更に有する態様5記載の方法。
〔態様8〕映像化モードに応答して超音波ビームを設定する手順を更に有する態様4記載の方法。
〔態様9〕受信用トランスデューサを使用して、受信したエコーから電子信号を発生させる手順と、受信用トランスデューサの組のメンバーの独自性に応じた係数をもつ重み付け関数を使用して、発生された電子信号を増幅する手順と、を更に有する態様4記載の方法。
〔態様10〕重み付け関数は主要な寄与素子の独自性に応答する、態様9記載の方法。
〔態様11〕第1のデータを変換する手順は多次元データ変換を行う、態様1記載の方法。
〔態様12〕
検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、受信したエコーから、位相情報及び振幅情報を含み、時間次元及び少なくとも第1の空間次元に関連付けられた値をとる第1のデータを発生させる手順と、変換されるべき第1のデータの一部を選択するために位相情報及び/又は振幅情報を用い、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成し得る変換を使用して、第1のデータの一部を第2のデータに変換する手順と、を有する方法。
〔態様13〕振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様14〕位相情報が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様15〕第1の空間次元は第2の空間次元と同じ次元である、態様14記載の方法。
〔態様16〕検査対象中の領域を解析するため設定される超音波ビームの特性を決定する手順を更に有する態様14記載の方法。
〔態様17〕超音波ビームによって検査されるべき領域を決定する手順を更に有し、第2のデータは当該領域に分布している、態様12記載の方法。
〔態様18〕変換する手順は、主要な寄与素子のロケーションを使用してデータロケーションラインを決定する手順を含む、態様12記載の方法。
〔態様19〕データロケーションラインは曲線である、態様18記載の方法。
〔態様20〕データロケーションラインは主要な寄与素子と交差しない、態様18記載の方法。
〔態様21〕第1のデータを変換する手順は、相関解析を使用する変換を含む、態様12記載の方法。
〔態様22〕第1のデータを変換する手順は、主要な寄与素子の決定を含む、態様12記載の方法。
〔態様23〕第1のデータを変換する手順は、2次的な寄与素子の考慮を含む、態様12記載の方法。
〔態様24〕付加超音波ビームを送信する手順を更に有し、第1のデータを変換する手順は、付加超音波ビームを送信する手順よりも前に行われる、態様12記載の方法。
〔態様25〕検査対象物質を検査する方法であって、一つ以上の超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元上に分布する点において、送信された一つ以上の超音波ビームの中の1個の超音波ビームと検査対象物質との間で生じる相互作用によって発生させられた第1のエコーを受信する手順と、受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、付加的に少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する値をとる第1のデータを発生させる手順と、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元の両方に分布する値をとる第2のデータに変換する手順と、別の超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、別の超音波ビームを使用して発生された更なるエコーを受信する手順と、受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順と、第3のデータと同じ次元をもつように第3のデータと第2のデータを結合する手順と、を有する方法。
〔態様26〕別の超音波ビームの特性は第2のデータを処理するアルゴリズムに応じて変更される、態様25記載の方法。
〔態様27〕第2のデータと第3のデータを結合する手順は、第2のデータ又は第3のデータの一方だけを使用して発生させられた画像の信号対雑音比よりも得られた画像の信号対雑音比を改善する、態様25記載の方法。
〔態様28〕別の超音波ビームを送信する手順は第2のデータに応答する、態様25記載の方法。
〔態様29〕映像化モードに応答して一つ以上の送信されるビームを設定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様30〕一つ以上の超音波ビームを使用して検査されるべき領域を決定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様31〕第1のデータを変換する手順は、主要な寄与素子の独自性に応じた重み付け関数によるデータ変換を使用する、態様25記載の方法。
〔態様32〕第2のデータは、一つ以上の超音波ビームの形状に応じた座標系を使用してインデックスされる、態様25記載の方法。
〔態様33〕
検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、送信された超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、受信されたエコーを使用して、時間及び第1の空間次元の多数の位置と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と、を有し、位置の個数は少なくとも64個であり、位置の個数との関連性は時間との関連性とは独立であり、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元と関連付けることができる値をとる第2のデータに変換する手順を更に有する方法。
〔態様34〕位置の個数は少なくとも128個である、態様33記載の方法。
〔態様35〕位置の個数は少なくとも256個である、態様33記載の方法。
〔態様36〕
第2の超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生させられた第2のエコーを受信する手順を更に有する態様33記載の方法。
〔態様37〕受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順を更に有し、第1のデータと第3のデータの組み合わせは、第1のデータと同じ次元をもつ、態様36記載の方法。
〔態様38〕第2のデータはエコーロケーションデータである、態様33記載の方法。
〔態様39〕検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数の超音波トランスデューサを使用する手順と、超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生させられたエコーを受信する手順と、受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順と、第1のデータから、第2の空間次元及び第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、第2のデータの中で、第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値は、第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される、方法。
〔態様40〕第2のデータと関連付けることができる空間次元の個数は送信される超音波の個数とは独立である、態様39記載の方法。
〔態様41〕送信される超音波ビームは、方向、焦点、及び、焦点におけるビーム幅によって表され、ビーム幅は、ビームの方向に直交した、焦点を通る直線に沿って測定され、第2のデータは、ビームの方向に直交した、ビーム幅よりも小さい空間次元における解像度をもつエコーロケーションデータである、態様39記載の方法。
〔態様42〕第2のデータを発生させる手順は、エコー受信ロケーションに応じて重みをエコーに割当てる重み付け関数を用いる変換アルゴリズムを使用する、態様39記載の方法。
〔態様43〕超音波ビームを送信するため複数のトランスデューサを使用する手順は、複数のトランスデューサを使用し、第2のデータを発生させる手順は、受信したエコーの位相関係を使用し、又は、受信したエコーの振幅を使用して、複数のトランスデューサの異なるメンバーから得られる信号を区別するように設定された変換アルゴリズムを使用する、態様39記載の方法。
〔態様44〕検査対象物質を検査する方法であって、複数の超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順と、複数の超音波ビームの中の第1のメンバーと検査対象物質との間の相互作用によって発生された第1のエコーを受信する手順と、受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順と、複数の超音波ビームの中の少なくとも第2のメンバーと検査対象物質との間の相互作用によって発生された第2のエコーを受信する手順と、受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順と、第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順と、第2のエコーロケーションデータを発生させるため第2のエコーデータを使用する手順と、第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、第1のロケーションデータ及び第2のロケーションデータを結合する手順と、を有する方法。
〔態様45〕データ変換は位相情報及び振幅情報に応答する、態様44記載の方法。
〔態様46〕データ変換は位相情報に応答する、態様44記載の方法。
〔態様47〕第1の空間次元は第2の空間次元と同じ次元である、態様44記載の方法。
〔態様48〕第1のエコーは、複数のトランスデューサのうちの少なくとも1台のトランスデューサを使用して受信される、態様44記載の方法。
〔態様49〕第3のエコーロケーションデータを試用して画像を表示する手順を更に有する態様44記載の方法。
〔態様50〕第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、第1のエコーロケーションデータは、直交座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様44記載の方法。
〔態様51〕第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、第1のエコーロケーションデータは、極座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様44記載の方法。
〔態様52〕エコーロケーションデータを発生させる方法であって、エコーをエコー信号に変換することによって第1のデータを発生させる手順を有し、第1のデータは、時間と関連付けることができ、かつ、少なくとも一つの空間次元における複数の位置と別々に関連付けることができる複数の値をとり、複数の値は位相情報及び振幅情報を含み、第1のデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を使用して、エコーロケーションデータを発生させる手順を更に有し、エコーロケーションデータは、複数の位置における異なる位置と関連付けることができる複数の値のうちの2個以上のメンバーから獲得された少なくとも一つの値をとる、方法。
〔態様53〕少なくとも一つの値は、複数の値のうちのメンバー間の内挿を使用しないで発生させられる、態様52記載の方法。
〔態様54〕エコーロケーションデータの複数のデータの各々は、少なくとも1次元の空間次元に異なる位置を占める複数の値のうちのメンバーから獲得される、態様52記載の方法。
〔態様55〕エコーは複数のトランスデューサ素子によって受信され、複数の値のうちの2個以上のメンバーの異なる位置は、複数のトランスデューサ素子の任意の2個のメンバー間の最短距離の少なくとも2倍だけ離されている、態様52記載の方法。
〔態様56〕データ変換は位相情報に応答する、態様52記載の方法。
【0103】
また、以下の態様も考えられる。
〔態様1〕超音波システムであって:
第1の複数のトランスデューサからの単一の超音波ビームを発生させる手順と、
第2の複数のトランスデューサから発生されたエコーを受信する手順と、
位相情報及び振幅情報を含み、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布する第1のデータを、受信したエコーから発生させる手順と、
前記第1のデータからの位相及び振幅情報に変換を適用することによって第2のデータを発生させる手順と、
前記第2のデータから画像を生成する手順とを有する、
超音波映像化方法を実行するよう構成された、超音波システム。
〔態様2〕前記振幅情報を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様3〕前記振幅情報と位相情報の両方を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様4〕前記位相情報を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様5〕超音波ビームを発生させる前記手順が、2次元以上の空間次元を含む第1の対象領域を検査するように超音波ビームを構成することを含む、態様4記載の超音波システム。
〔態様6〕前記方法が:
追加的な超音波ビームを発生させる手順を更に含み、該追加的な超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む、前記第1の対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように構成される、態様5記載の超音波システム。
〔態様7〕前記方法が:
前記追加的な超音波ビームによって発生した第2のエコーを受信する手順と、
受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順と、
前記第2のデータと前記第3のデータの両方を使用して画像を発生させる手順と、を更に有する、
態様6記載の超音波システム。
〔態様8〕映像化モードに基づく前記超音波ビームの構成についての選択を受け取る手段を更に有する、
態様4記載の超音波システム。
〔態様9〕前記方法が:
第2の複数のトランスデューサを介して受信したエコーから電子信号を発生させる手段と、
前記第2の複数の受信用トランスデューサのうちのあるトランスデューサからの発生された電子信号の寄与に基づいて、発生された電子信号を増幅する手段と、を更に有する態様4記載の超音波システム。
〔態様10〕前記の増幅が、発生された電子信号に重み付け関数を適用することを含む、態様9記載の超音波システム。
〔態様11〕第2のデータを発生させる前記手順が前記第1のデータに多次元データ変換を適用することを含む、態様1記載の超音波システム。
〔態様12〕超音波映像化システムの動作方法であって、
単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された単一の超音波ビームからのエコーを受信する手順と、
第1の空間次元および時間に基づく受信したエコーから、位相情報及び振幅情報を含む第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータの一部から、前記位相情報、前記振幅情報およびそれらの任意の組み合わせのうちのどれかに基づいて前記第1のデータの前記部分にデータ変換を適用することによって、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成する手順と、を有する方法。
〔態様13〕前記振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様14〕前記位相情報が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様15〕前記第1の空間次元は前記第2の空間次元と同じ次元である、態様14記載の方法。
〔態様16〕検査対象物質中の領域を解析するよう構成された超音波ビームの特性を決定する手順を更に有する態様14記載の方法。
〔態様17〕前記超音波ビームを用いて映像化するべき領域を決定する手順を更に有し、前記第2のデータは前記領域にわたって分布している、態様12記載の方法。
〔態様18〕前記第1のデータの前記部分に前記変換を適用する手順は、受信したエコーの寄与素子のロケーションを使用してデータロケーションラインを決定する手順を含む、態様12記載の方法。
〔態様19〕データロケーションラインは曲線である、態様18記載の方法。
〔態様20〕データロケーションラインは主要な寄与素子と交差しない、態様18記載の方法。
〔態様21〕第1のデータを変換する前記手順は、相関解析を使用する変換を含む、態様12記載の方法。
〔態様22〕第2のデータを発生させる前記手順は、位相情報、振幅情報及びそれらの任意の組み合わせのうちのどれかの比較に基づいて、前記第2の複数のトランスデューサのうちから、受信したエコーへの寄与素子を特定することを含む、態様1記載の超音波システム。
〔態様23〕寄与素子を特定する前記手順が、前記比較に基づいて前記第2のトランスデューサのうちから主要なトランスデューサを特定することを含む、態様22記載の超音波システム。
〔態様24〕前記第2のデータを発生させたあとに追加的な超音波ビームを発生させる手順を更に有する、態様12記載の方法。
〔態様25〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された超音波ビームからの第1のエコーを受信する手順と、
受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、検査対象物質の少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータからデータロケーション軌跡を決定することによって前記第1のデータを、少なくとも前記第1の空間次元及び前記第2の空間次元に分布するエコーロケーションデータを含む第2のデータに変換する手順と、
前記第2のデータからの前記エコーロケーションデータが完全であるかどうかを判定する手順と、
別の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
前記別の超音波ビームによって発生された更なるエコーを受信する手順と、
受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順と、
前記第3のデータと同じ次元をもつように前記第3のデータと前記第2のデータを組み合わせる手順と、を有する方法。
〔態様26〕前記別の超音波ビームの特性は前記第2のデータを処理するアルゴリズムに応じて変更される、態様25記載の方法。
〔態様27〕前記第2のデータと前記第3のデータを組み合わせる前記手順は、前記第2のデータ又は前記第3のデータの一方だけを使用して発生されうる画像の信号対雑音比よりも得られた画像の信号対雑音比を改善する、態様25記載の方法。
〔態様28〕映像化モードに基づく前記超音波ビームの構成についての選択を受け取る手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様29〕前記超音波ビームによって映像化されるべき領域を決定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様30〕前記第1のデータを変換する手順は、重み付け関数によるデータ変換を使用することを含む、態様25記載の方法。
〔態様31〕前記第2のデータは、前記超音波ビームの形状に応じた座標系を使用してインデックスされる、態様25記載の方法。
〔態様32〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された第1の単一の超音波ビームによって発生された第1のエコーを受信する手順と、
受信された第1のエコーを使用して、時間及び第1の空間次元における位置と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と、を有し、位置の個数は少なくとも64個であり、位置との関連付けは時間との関連付けとは独立であり、
前記第1のデータを、前記第1の空間次元及びある第2の空間次元上に分布する第2のデータに変換する手順を更に有する方法。
〔態様33〕前記位置の個数は少なくとも128個である、態様32記載の方法。
〔態様34〕前記位置の個数は少なくとも256個である、態様32記載の方法。
〔態様35〕第2の超音波ビームを発生させる手順と、
前記第2の超音波ビームに対する第2のエコーを受信する手順を更に有する態様32記載の方法。
〔態様36〕受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順を更に有し、
前記第1のデータと前記第3のデータの組み合わせは、前記第1のデータと同じ次元をもつ、態様35記載の方法。
〔態様37〕前記第2のデータはエコーロケーションデータである、態様32記載の方法。
〔態様38〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
検査対象物質への単一の超音波ビームを発生させるために複数の超音波トランスデューサを使用する手順と、
前記単一の超音波ビームによって発生させられたエコーを受信する手順と、
受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータから、第2の空間次元及び前記第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、前記第2のデータの中で、前記第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、前記第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値が、前記第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される、方法。
〔態様39〕前記第2のデータと関連付けることができる空間次元数は発生される超音波ビームの数とは独立である、態様38記載の方法。
〔態様40〕発生される超音波ビームは、方向、焦点、及び、焦点におけるビーム幅によって特徴付けられ、ビーム幅は、ビームの方向に直交した、焦点を通る直線に沿って測定され、前記第2のデータは、ビームの方向に直交した空間次元において、ビーム幅よりも小さい解像度をもつエコーロケーションデータである、態様38記載の方法。
〔態様41〕前記第2のデータを発生させる手順は、エコー受信ロケーションに応じて重みをエコーに割当てる重み付け関数を用いる変換アルゴリズムを使用することを含む、態様38記載の方法。
〔態様42〕超音波ビームを発生させるために複数のトランスデューサを使用する前記手順は、複数のトランスデューサを使用することを含み、第2のデータを発生させる前記手順は、受信したエコーの位相関係を使用し、又は、受信したエコーの振幅を使用して、前記複数のトランスデューサのうちの異なるトランスデューサから得られる信号を区別するように構成された変換アルゴリズムを使用する、態様38記載の方法。
〔態様43〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
複数のトランスデューサからの第1の組のトランスデューサから第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
前記複数の超音波ビームからの第2の組のトランスデューサから、前記第1の超音波ビームの一部と重なる第2の超音波ビームを発生させる手順と、
前記第1の超音波ビームによって発生された第1のエコーを受信する手順と、
受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順と、
前記第2の超音波ビームによって発生された第2のエコーを受信する手順と、
受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順と、
前記第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順と、
第2のエコーロケーションデータを発生させるため前記第2のエコーデータを使用する手順と、
前記第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、前記第1のエコーロケーションデータ及び前記第2のエコーロケーションデータを組み合わせる手順と、を有する方法。
〔態様44〕前記データ変換は位相情報及び振幅情報に応答する、態様43記載の方法。
〔態様45〕前記データ変換は位相情報に応答する、態様43記載の方法。
〔態様46〕前記第1の空間次元は前記第2の空間次元と同じ次元である、態様43記載の方法。
〔態様47〕前記第1のエコーは、前記複数のトランスデューサのうちの少なくとも1台のトランスデューサを使用して受信される、態様43記載の方法。
〔態様48〕前記第3のエコーロケーションデータを使用して画像を表示する手順を更に有する態様43記載の方法。
〔態様49〕前記第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、該位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、前記第1のエコーロケーションデータは、直交座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様43記載の方法。
〔態様50〕前記第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、該位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、前記第1のエコーロケーションデータは、極座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様43記載の方法。
〔態様51〕エコーロケーションデータを発生させる方法であって:
単一の発された超音波ビームからのエコーを電子信号に変換することによって第1のデータを発生させる手順を有し、前記エコーは少なくとも一つの空間次元でインデックスされるアレイに配列された複数のトランスデューサ素子によって複数の時間に受信され、前記第1のデータは、前記複数の時間のうちの一つの時間と関連付けることができ、かつ、前記アレイ中のあるトランスデューサ素子の位置と別々に関連付けることができる、前記電子信号の位相情報及び振幅情報を含む複数の値をもち、
当該方法が:
前記第1のデータに前記第1データからの前記位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を適用することによってエコーロケーションデータを発生させ、エコーロケーションデータが前記アレイからのあるトランスデューサ素子と関連付けることができる2個以上の値から導出される手順を更に有する、方法。
〔態様52〕前記エコーロケーションデータにおける、少なくとも1次元の空間次元において異なる位置を占める複数の値が、それぞれ、前記第1のデータからの値から導出される、態様51記載の方法。
〔態様53〕前記第1のデータからの前記2個以上の値の位置は、前記複数のトランスデューサ素子からの任意の2個の素子の最短距離の少なくとも2倍だけ離されている、態様51記載の方法。
〔態様54〕前記データ変換は位相情報に応じたものである、態様51記載の方法。
〔態様55〕超音波撮像方法であって:
第1の複数の超音波トランスデューサ素子を介して第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
空間次元上に分布したアレイ内に配置された第2の複数の超音波トランスデューサ素子において、前記第1の単一の超音波ビームのエコーを検出する手順と、
前記エコーが検出された時刻および前記エコーが検出されたトランスデューサ素子ごとに、検出されたエコーからのデータを記憶する手順と、
前記第1のデータからデータロケーション軌跡を決定することによって前記の記憶されたデータから、少なくとも空間次元2次元上に分布するエコーロケーションデータを生成する手順と、
前記エコーロケーションデータから超音波画像を生成する手順とを有する、
方法。
〔態様56〕態様55記載の方法であって、前記第1の超音波ビームの一部に重なり、第2の複数の超音波トランスデューサ素子を介して発される、検査対象物質への第2の超音波ビームを発生させる手順を更に有する、方法。
【符号の説明】
【0104】
510 波形発生器
515 遅延装置
520 電力増幅器
525 送受スイッチ
527 マルチプレクサ
530 トランスデューサアレイ
535 調査中物質
540 可変利得増幅器
545 アナログフィルタ
550 A/D変換器
555 チャネルデータ記憶バッファ
560 信号プロセッサ
565 エコーロケーションデータ記憶装置
570 付加データ記憶装置
575 画像コンバータ
580 ディスプレイ
585 通信電子機器
590 ユーザ・インタフェース電子機器
595 制御電子機器
596 コンピュータコード
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像化の分野に係り、特に、超音波映像化の分野に関する。
【0002】
〔関連出願へのクロスリファレンス〕本願は、2002年4月5日に出願され、本願と同一出願人に譲渡された発明の名称が”幅広ビーム映像化(Broad-beam Imaging)”である米国仮特許出願第60/370,632を基礎とする優先権主張出願である。
【0003】
本願は、2001年10月20日に出願された発明の名称が”超音波映像化におけるブロック切換(Block Switching in Ultrasound Imaging)”である米国特許出願第10/039,922の一部継続出願である。
【0004】
本願は、2001年5月18日に出願された、発明の名称が”並列多重モード・多重バンド(M3B)超音波映像化(Simultaneous Multi-Mode and Multi-Band(M3B) Ultrasonic Imaging)”である同時係属中の米国特許出願第10/039,862号、2001年5月31日に出願された、発明の名称が”位相反転超音波映像化システム及び方法(System and Method for Phase Inversion Ultrasonic Imaging)”である米国特許出願第09/872,541号、及び、2002年3月19日に出願された、発明の名称が”後処理超音波カラードップラー映像化システム及び方法(System and Method for Post-Processing Ultrasound Color Doppler Imaging)”に関連する。関連出願の内容は、参考のため引用される。関連出願は本願と同一出願人に譲渡されている。
【背景技術】
【0005】
超音波映像化は、広い範囲の物質を検査するため頻繁に使用される方法である。この方法は、相対的に非侵襲性、低コスト、及び、高速診断サイクルであるため、特に、医療分野で普及している。典型的に、超音波映像化は、超音波を発生し、調査対象の物質の方へ向け、異種物質の境界で発生される反射を観察することにより実現される。例えば、医療アプリケーションの場合、観察された反射は患者の組織の境界で発生されている。観察された反射は、受信装置(トランスデューサ)によって電気信号に変換され、エコー源のロケーションを判定するために従来技術で公知の方法を使用して処理される。得られたデータは、モニタのような表示装置を使用して表示される。
【0006】
従来技術による超音波ビームを生成し、得られたエコーを解析する処理は、「ビーム形成(処理方式)」と呼ばれる。生産プロセスは、オプションとして、アパーチャ・アポディゼーション、ステアリング、及び/又は、フォーカシングによって「送信」ビーム特性を定義する。解析プロセスは、オプションとして、「受信ビーム」を計算し、受信されたエコーは、狭い領域に沿って発生したエコーを隔離するため処理される。この計算には、エコーが発生したときに沿ったと考えられる1次元ラインを識別することが含まれるので、以下では、「エコーライン計算」とも呼ばれる。ビーム形成を通じて、エコーロケーションデータの1次元集合が、各送信及び/又は受信ビームを使用して発生させられる。エコーロケーションデータは、1個以上のエコー源の物理的位置に関連した位置データであり、オプションとして、強度、速度及び/又は同様の物理情報を含む。エコーロケーションデータは、後ビーム形成未加工データ、検出データ、又は、画像データを含む。超音波画像のような多次元エコーロケーションデータは、多数の送信及び/又は受信ビームを使用して調査中に物質内の視野を走査することによって発生される。
【0007】
送信フェーズ中に調査中の物質に送信された超音波ビームは、電子信号をトランスデューサへ供給することによって発生される。超音波ビームは、調査中の物質中を伝播するとき、散乱、共鳴、減衰及び/又は反射される。反射信号の一部はトランスデューサで受信され、エコーとして検出される。受信用トランスデューサは、エコー信号を電子信号に変換し、オプションとして、受信ビームを使用する解析に本質的なエコーライン計算を実行するエコーライン計算器(ビーム形成器)にエコー信号を供給する。
【0008】
ビーム形成後、画像スキャンコンバータは、画像データを発生させるため計算されたエコーロケーションデータを使用する。従来技術のシステムの場合、画像形成レート(フレームレート)は、少なくとも、エコー画像を発生させるため使用された全超音波ビームの総パルス戻り時間によって制限される。パルス戻り時間は、超音波ビームが調査中の物質に送信されてから、最後に生じた反射エコーが検出されるまでの時間である。フレームレートが制限されると、超音波システムと調査中の物質の間の相対運動が原因となって時間的アーティファクトが生じる。
【0009】
図1には、従来技術による超音波システム100が示されている。超音波システム100は、トランスデューサ素子110の素子アレイ105と、基材120と、オプション的なマッチング層130と、送受スイッチ140と、ビーム送信機150と、を含む。基材120は、素子アレイ105を支持し、基材120へ向かって伝播する超音波エネルギーを減衰させる。マッチング層130は、トランスデューサ素子110から調査中の物質(図示せず)に超音波エネルギーを転送する。トランスデューサ素子110は、個別のトランスデューサ素子110A−110Hを含み、個別のトランスデューサ素子110A−110Hは、導体115及び1117によって、送受スイッチ140を介して、ビーム送信機150へ別々に接続される。送受スイッチ140は、マルチプレクサ145を具備してもよく、これにより、導体117の個数を導体115の個数よりも少なくすることができる。送信フェーズでは、ビーム送信機150は、電子パルスを発生する。電子パルスは、送受スイッチ140を介して供給され、一部若しくは全部のトランスデューサ素子110A−110Hに供給され、超音波パルス160に変換される。全体として、超音波パルス160は、調査中の物質を調べる超音波ビーム170を形成する。
【0010】
超音波ビーム170は、エコーが発生される領域を制限するため集中される。エコー源が狭い領域に限定されたとき、エコーロケーションデータの計算は、エコー源が「送信ライン」に沿うことを仮定することによって簡単化される。この仮定の下で、ビーム計算器の仕事は、エコー源の位置を1次元で判定する問題に簡略化される。この位置は、エコーの戻り時間を使用して確定される。この仮定の精度と、送信ラインの間隔は、従来技術の超音波システムの解像度を決定する上で重要な要因である。ビームを精細に集中させると、粗く集中させたビームよりも容易に解像度を高くすることができる。同様の仮定及び結果は、計算された受信ビームに関係した解析の場面にも現れる。
【0011】
図2に示された従来技術の焦点合わせシステムでは、素子アレイ105は、トランスデューサ素子110A−110Hに印加される電子パルス210のタイミングを変えることによって超音波ビーム170を集中させるように構成されたフェーズドアレイである。本システムの場合、電子パルス210は、ビーム送信機150で発生され、送受スイッチ140を通される。電子パルス210は、遅延発生器(図示せず)を使用して遅延され、トランスデューサ素子110A−Hに供給される。超音波ビーム170は、トランスデューサ素子110A−Hが遅延電子パルスを超音波パルス160(図1)に適切に変換するときに形成される。一旦形成されると、超音波ビーム170は、焦点230を含む送信ビームライン250の方向へ向けられ、超音波ビーム170の幅によって表されるビーム胴部240が得られる。同様の方式で、素子アレイ150の段階的(フェーズド)励起は、超音波ビーム170を特定の方向へ向ける(舵取りする)ため使用される。超音波ビーム170の横断面強度は、典型的に、焦点周りのガウシアンであり、送信ビームライン250に沿って最大値をとる。超音波ビーム170の形状は、アパーチャ・アポディゼーションに依存する。
【0012】
走査(スキャンニング)プロセスにおいて、超音波システム100は、二つ以上の空間次元で画像を形成するため別の異なる送信ビームライン250に沿って別々の超音波ビーム170の系列を送信する。特定の超音波ビーム170は、オプションとして、別の超音波ビーム170を発生する前に、幾つかの送受サイクルで送信される。各送信フェーズの間に受信フェーズが現れ、その間にエコーが検出される。超音波スキャンにふくまれる各超音波ビーム170は、少なくとも1回の送受サイクルを必要とするので、走査プロセスは、パルス戻り時間の多数倍の時間を要する。このパルス戻り時間は、調査中の物質内の音速によって決定されるが、従来技術の超音波画像が発生されるレートに関する主要な制限である。更に、トランスデューサ素子110A−110Hが走査プロセス中に調査中の物質に対して相対的に移動した場合、望ましくない時間的異常性が発生される。
【0013】
図3A乃至3Eには、8個のトランスデューサ素子110A−110Hからなるフェーズドアレイ310における従来技術の走査プロセスが示されている。8個のトランスデューサ素子110A−110Hの部分集合320A−320Eは、別々の1個の超音波ビーム170A−170Eを発生させるため使用される。例えば、図3Aは、トランスデューサ素子110A−110Dを含む部分集合320Aによって形成された超音波ビーム170Aを示す。走査プロセスの次のステップは、図3Bに示されるようにトランスデューサ素子110B−110Eを含む部分集合320Bを使用して超音波ビーム170Bを形成する。本例の場合、超音波ビーム170Bと関連した送信ビームライン250Bは、焦点230Bを通過し、焦点230Bは、典型的に1個のトランスデューサ素子110の幅に一致する距離だけ焦点230Aから離れている。図3C乃至3Eに示されるように、超音波ビーム170C乃至170Eを生成するため使用された各部分集合320C乃至320Eは、夫々、部分集合320B乃至320Dに対してトランスデューサ素子110の1個分だけ変位している。各送信フェーズの間で出現し受信フェーズで検出されたエコーは、エコーロケーションデータを発生させるため使用され、これらのエコーロケーションデータは、典型的に、表示に適した画像を形成するため合成される。走査プロセスは多数の画像を生成するため繰り返される。
【0014】
実際上、フェーズドアレイ310は、64個、128個、或いは、それ以上の個数のトランスデューサ素子110を含む。エコーロケーションデータの解像度は、トランスデューサ素子110のアパーチャ及び個数と、送信ビームライン250が超音波ビーム170内で考えられるエコー源を正確に表現できる程度と、に依存する。ビームライン250A−Eを使用する超音波ビーム170A−Eの表現は、得られるエコーロケーションデータを決定する近似表現である。近似が良くない場合、得られるエコーロケーションデータの解像度が制限される。したがって、超音波ビーム170A−Eの最大幅は、エコーロケーションデータの望ましい解像度によって制限される。近似の精度は、焦点230A−Eからの距離の関数であり、近似はこの距離が長くなると精度が悪化する。
【0015】
一般的な実現例では、異なる焦点230A−Eで幾つかの超音波ビームを発生させ、焦点230A−E付近でデータを発生させるため受信したエコーの各組を使用する。従来技術のデータ発生は、焦点230A−E付近のエリアに制限される。なぜならば、距離が遠くなると、送信ビームライン250の近似は、望ましい解像度のエコーロケーションデータを得るために精度が不足するからである。典型的に、1本の受信又は送信ビームライン250が送受サイクル毎に発生される。エリアを映像化するために必要なビーム本数は、映像化されるべきエリアの幅及び奥行きと、望ましい解像度とに依存する。焦点230付近のエコーだけを使用することにより、全受信信号の一部分だけ(例えば、10%未満)が使用され、残りの受信信号は無視される。従来技術の場合、検出信号は十分に利用されていない。同様の欠点は、シンセティック受信ラインを利用するシステムの場合にも生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術において、カバーされるべきエリア、送信ビーム幅、送信ビーム170の個数、及び、エコーロケーションデータの解像度は、相互依存的である。送信ビーム幅は、エコーロケーションの最小横方向解像度幅を決定する。各送信ビーム170は、限定されたエリアしかカバーしないので、大規模エリアを映像化するためには非常に多数の送信ビーム170が必要になる。使用する送信ビーム170の数が増加すると、画像を発生させるために要する最大時間が長くなる。
【0017】
パルス戻り時間、及び、信号の不十分な使用によって制限されている画像形成レートのような従来技術の欠点は、従来技術の超音波システムがマイクロ処理パワーにおける進歩を完全に活用することを阻害している。従来技術は、実現可能な最高解像度をもつ画像を発生させるためにこれらの欠点を犠牲にしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順(1)を有し、超音波ビームは、複数のトランスデューサのうちの各トランスデューサによって発生された成分を含み、超音波ビームと調査中の物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信エコーから第1のデータを発生させる手順(3)と、を有し、第1のデータは、位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布し、受信エコーの中から、複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相情報及び/又は振幅情報を使用する手順(4)と、区別されたエコーを使用して、第1のデータを、第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する手順(5)と、を有する。
【0019】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、超音波ビームと調査中の物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信エコーから、位相情報及び振幅情報を含み、時間次元及び少なくとも第1の空間次元に関連付けられた値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、変換されるべき第1のデータの一部を選択するために位相情報及び/又は振幅情報を用い、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成し得る変換を使用して、第1のデータの一部を第2のデータに変換する手順(4)と、を有する。
【0020】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、一つ以上の超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、送信された一つ以上の超音波ビームの中の1個の超音波ビームと調査中の物質との間で、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元上に分布する点において生じる相互作用によって発生させられた第1のエコーを受信する手順(2)と、受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、付加的に少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元の両方に分布する値をとる第2のデータに変換する手順(4)と、別の超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(5)と、別の超音波ビームを使用して発生された更なるエコーを受信する手順(6)と、受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順(7)と、第3のデータと同じ次元をもつように第3のデータと第2のデータを結合する手順(8)と、を有する。
【0021】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信する手順(1)と、送信された超音波ビームと調査中の物質との間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順(2)と、受信されたエコーを使用して、時間及び第1の空間次元の多数の点と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と(3)を有し、点の個数は少なくとも64個であり、点の個数との関連性は時間との関連性とは独立であり、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元と関連付けることができる値をとる第2のデータに変換する手順(4)を更に有する。
【0022】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数の超音波トランスデューサを使用する手順(1)と、超音波ビームと調査中の物質との間の相互作用によって発生させられたエコーを受信する手順(2)と、受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順(3)と、第1のデータから、第2の空間次元及び第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順(4)と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、第2のデータの中で、第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値は、第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される。
【0023】
本発明の一実施例による調査中の物質を検査する方法は、複数の超音波ビームを調査中の物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順(1)と、複数の超音波ビームの中の第1のメンバーと調査中の物質との間の相互作用によって発生された第1のエコーを受信する手順(2)と、受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順(3)と、複数の超音波ビームの中の少なくとも第2のメンバーと調査中の物質との間の相互作用によって発生された第2のエコーを受信する手順(4)と、受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順(5)と、第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順(6)と、第2のエコーロケーションデータを発生させるため第2のエコーデータを使用する手順(7)と、第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、第1のロケーションデータ及び第2のロケーションデータを結合する手順(8)と、を有する。
【0024】
本発明の一実施例によるエコーロケーションデータを発生させる方法は、エコーをエコー信号に変換することによって、時間及び少なくとも一つの空間次元における複数の位置に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む複数の値をとる第1のデータを発生させる手順(1)と、第1のデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を使用して、複数の位置における異なる位置と関連付けることができる複数の値のうちの2個以上のメンバーから獲得された少なくとも一つの値をとるエコーロケーションデータを発生させる手順(2)と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術の超音波システムの説明図である。
【図2】従来技術による超音波ビームを集中させる方法の説明図である。
【図3】(A)乃至(E)は8個のトランスデューサ素子からなるフェーズドアレイを使用する従来技術の走査プロセスの説明図である。
【図4】本発明の一実施例による幅広ビーム方法の概要を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例による幅広ビームシステムのブロック図である。
【図6】本発明の一実施例による幅広ビーム設計ステップの詳細フローチャートである。
【図7A】本発明の一実施例による直線状トランスデューサアレイを使用して発生された超音波ビームの説明図である。
【図7B】本発明の一実施例による曲線状トランスデューサアレイを使用して発生された超音波ビームの説明図である。
【図7C】本発明の一実施例により発生した高周波照射領域を生じる超音波ビームの説明図である。
【図7D】幅広ビームの横断面を通る超音波強度をプロットしたグラフである。
【図8】本発明の一実施例による送信ステップの詳細フローチャートである。
【図9】本発明の一実施例による受信ステップの詳細フローチャートである。
【図10】本発明の一実施例によるチャネルデータアレイに配置された保存データの説明図である。
【図11A】X位置を示す第1軸とY位置を示す第2軸を有する本発明の一実施例によるエコーロケーションデータアレイの説明図である。
【図11B】角度(θ)を示す第1軸と半径(R)を示す第2軸を有する本発明の一実施例によるエコーロケーションデータアレイの他の実施例の説明図である。
【図12A】Xの11分割用データビンを含む本発明の一実施例よる直交座標系の例示用の説明図である。
【図12B】本発明の一実施例による超音波ビームによって高周波照射された領域を表現する極座標系の説明図である。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の一実施例によるトランスデューサ素子から調査中の物質内の物体まで伝播する超音波の説明図である。
【図14】本発明の一実施例によるエコーから生成されたチャネルデータの説明図である。
【図15】本発明の一実施例による図14に示されたデータチャネルを使用して発生されたエコーロケーションデータの説明図である。
【図16】本発明の一実施例によるエコー領域計算に含まれる方法のフローチャートである。
【図17】本発明の一実施例による3通りの代替的なアポディゼーション関数を説明するグラフである。
【図18】2個のトランスデューサ素子から送信され、超音波反射物体に衝突した超音波の説明図である。
【図19】本発明の一実施例によるチャネルデータアレイに格納された、SCEトランスデューサ素子によって発生された信号の説明図である。
【図20】本発明の一実施例によるエコー領域計算ステップの詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
新しい幅広ビーム(New broad-beamTM)技術は、多次元(領域2次元若しくは容積3次元)エコーロケーションデータをできる限り少ない1個の超音波ビームから発生させることができるシステム及び方法である。これらの技術は、超音波ビームを発生させ、調査中の物質に超音波ビームを送信し、得られたエコーからエコー信号を発生させ、2次元以上の次元に分布したエコーロケーションデータを生成するためエコー信号を処理する。
【0027】
幅広ビーム技術は、従来技術の超音波システム及び方法と比較して複雑ではない。例えば、幅広システム及び方法は、送信ライン、走査ライン、或いは、受信ラインの使用による制限がなく、幅広ビームシステム及び方法は、僅か1個の送信超音波ビームから多次元エコーロケーションデータを発生させ得る。送信ライン及び受信ラインへの依存性は取り除かれる。なぜならば、幅広ビーム技術は、エコー源が、送信ビームライン250及び/又は受信ラインのような1次元ラインに沿って存在することを仮定しないからである。幅広ビームシステム及び方法は、2次元画像を発生させるため、多数のビーム走査若しくは走査ラインを必要としない。また、従来技術とは異なり、得られたエコーロケーションデータは、2次元に分布する1個の送信された超音波ビームから生じ得る。幅広ビームシステム及び方法を使用した場合、大多数の受信エコー信号は画像発生のため使用される。
【0028】
従来技術の実施例に対して、幅広ビームシステム及び方法は、送信された超音波ビームの形状若しくは幅に依存することなく、エコーロケーションデータの解像度を決定することができる。このような独立性が得られる理由は、幅広ビームシステムは、送信された超音波ビームが、送信ライン、又は、送信ラインを取り囲む円柱によって近似されることを仮定していないためである。一般的に、幅広ビームシステム及び方法において使用される超音波ビーム(幅広ビーム)は、従来技術において使用される精細に集束させられた超音波ビーム170よりも幅が広い。
【0029】
幅広ビームシステム及び方法は、データの操作の仕方が従来技術とは相違する。幅広ビームシステム及び方法は、受信用トランスデューサで受信されたエコーをエコーロケーションデータに変換する多次元逆コンボリューションアルゴリズムに基づいているので、単一の送信超音波ビームから多次元エコーロケーションデータを発生する。例えば、一実施例によれば、逆コンボリューションアルゴリズム(計算)は、2次元(時間、超音波トランスデューサ)未加工データから、2次元(X,Y位置)エコーロケーションデータへの変換に影響を与える。2次元(時間、超音波トランスデューサ)未加工データは、オプションとして、送信ライン若しくは受信ラインを仮定することなく、単一の送信超音波ビームから発生させられる。2次元エコーロケーションデータは、表現のため少なくとも二つの空間次元を要求する領域に分布する。幅広ビームシステム及び方法に組み込まれたデータ操作は、表示装置への表示のため構成された2次元画像を生成するため、単一の送信超音波ビームを使用することが可能である。
【0030】
幅広ビームシステム及び方法は、マイクロプロセッサ能力の増加と、集積回路技術の進歩を有効に活用する。現在のマイクロプロセッサは、従来技術のビーム形成技術を使用して個別の超音波ビームが送信され受信されるレートよりも速いレートで幅広ビームデータ解析を実行する能力を備えている。従来技術は、パルス戻り時間と、領域を映像化するために必要な個別の超音波ビームの個数とによって制限されるが、幅広ビーム方式の実施例は、コンピューティングテクノロジーにおいて進行中の最新技術を活用する。幅広ビームシステム及び方法は、従来技術のように、細く集束させられた超音波ビームを使用することによって主として制限されることのない画像発生レートを達成する。
【0031】
例えば、200mmの深さまで映像化する従来のシステムの場合、128回の送受信サイクルは、1.54mm/マイクロ秒の音速に基づいて33.3ミリ秒を要する。このレートにより得られるフレームレートは、基本アレイ105の軸に垂直な方向で画像領域全体の画像解像度が128ラインである場合に、約30フレーム/秒である。これに対して、同じ深さを映像化するため本発明の一実施例を使用する場合、同じ解像度は、5乃至7回の送受信サイクルを使用して実現され、全部で1.3乃至1.8ミリ秒しか要しない。この時間は、最終的なフレームレートを769乃至549フレーム/秒に制限する。様々な実施例において、上述の129ラインの画像解像度の画像は、25、17、10.5、又は、2ミリ秒未満で獲得される。
【0032】
幅広ビーム技術の一部の実施例は、従来技術の走査プロセスに伴う望ましくない時間的異常性の出現が最小限に抑えられた画像を生じる。幅広ビーム超音波ビームから獲得された多次元エコーロケーションデータは、短期間のパルスもどり時間における調査中の物質の断面を表す。この時間は、従来技術における2次元(多重ビーム)走査を実現するために要する時間よりも短いので、データ収集中にトランスデューサと調査中の物質の間に相対運動が生じる確率は、従来技術の場合よりも低下する。
【0033】
幅広ビームシステム及び方法は、超音波ビームがビームライン250のようなラインによって表現可能である、という従来技術の近似法に依存しない。したがって、得られるエコーロケーションデータの解像度は、従来技術の焦点230A−Eのような焦点からの距離の関数ではない。幅広ビームは、典型的に、従来技術の各集束ビームよりも幅が広く、より大きい領域を映像化する能力を備えている。
【0034】
各幅広ビームは、従来技術の超音波ビームの場合よりも広い領域を映像化することができるので、特定の領域を映像化するために必要な超音波ビームの個数は、従来技術よりも減少する。必要とされる超音波ビームは、例えば、1本のように非常に少ないので、幅広ビームシステム及び方法は、調査中の物質を映像化するため従来技術よりも少ない電力しか使用しない。使用電力が減少すると、調査中の物質に与えられるエネルギー量が減少し、各映像を発生させるために要する電気量も減少する。電気的必要条件の緩和は、バッテリーのような内蔵型電力源を使用する装置のためになる。
【0035】
幅広ビーム技術の実施例には、超音波ビームを生成、受信及び解析するエリア(領域)形成(area formingTM)プロセスが含まれる。このプロセスでは、エコーロケーションデータの組は、表現のための二つの空間次元を必要とする領域に分布し、高々1個の超音波ビームを使用して発生される。エコー検出が行われ、エコーロケーションデータが発生される受信点は、検査領域内のどの場所でも構わない。受信点は、オプションとして、粒度及び規則性が位置によって変化する可変グリッドに沿って並ぶ。幅広ビーム技術の他の実施例は、ボリューム(容積)形成(volume formingTM)プロセスが含まれる。ボリューム形成プロセスは、エリア形成プロセスと類似しているが、僅か1個の超音波ビームを使用して発生されたエコーロケーションデータを適切に表現するために3個の空間次元が必要である点で相違する。エリア形成及びボリューム形成は、オプションとして、多次元形成(multidimensional formingTM)プロセスを達成するため、時間及び速度のような非空間次元と組み合わされる。
【0036】
図4は、本発明の一実施例による幅広ビーム方法400の概要を説明するフローチャートである。方法400は、領域又は容積を映像化するために要する超音波ビーム(幅広ビーム)の個数及び形状を決定する幅広ビーム設計ステップ410から始まる。このステップ内で、少なくとも1個の決定された幅広ビームの望ましい特性が計算され、この幅広ビームの発生のためのパラメータが設定される。各幅広ビームの望ましい特性は、位置、方向、幅、強度、分散などのような因子を含む。パラメータには、電圧、アパーチャ関数、励起遅延などが含まれる。
【0037】
送信ステップ420において、ステップ410で設計された幅広ビームが発生され、調査中の物質へ送信される。送信ステップ420は、例えば、デジタル若しくはアナログ波形発生器を使用する電子波形の発生を含む。この波形は多数のチャネルに供給され、各チャネルは、多重チャネル遅延発生器及び多重チャネル電力装置を使用して独立に遅延させられ、増幅される。典型的に、遅延時間は、幅広ビームの望ましい形状、幅、及び、方向に応じて選択される。増幅された波形は、幅広ビームを調査中の物質へ送信させるトランスデューサ素子110を励起する。
【0038】
受信ステップ430は、送信された幅広ビームによって生成されたエコーを検出するためトランスデューサ素子110を使用する。トランスデューサ素子110は、検出されたエコーに応じて電子信号を発生する。発生した電子信号(アナログチャネルデータ)は、アナログフィルタを使用してオプション的にフィルタ処理され、デジタルチャネルデータを発生させるため、典型的に多重チャネルA/D変換器を用いてデジタル化される。一実施例において、チャネルデータは、好ましくは、振幅情報と位相情報の両方を含む。データ保存ステップ440では、チャネルデータはチャネルデータバッファに記憶される。このチャネルデータバッファは、RAM、磁気媒体、光媒体などのようなメモリに設けられる。
【0039】
エコー領域計算ステップ450は、多次元逆コンボリューションアルゴリズムを使用して、保存されているチャネルデータを操作する。これらのアルゴリズムは、チャネルデータを多次元エコーロケーションデータに変換する数学的技術である。エコー領域計算ステップ450は、従来技術を特徴付ける送信ライン、受信ライン、又は、走査ラインを使用することなく、多次元エコーロケーションデータを発生することが可能である。
【0040】
方法400は、エコーロケーションデータ保存ステップ460へ進み、ここで、得られたエコーロケーションデータは、事前に選択された座標系を利用するエコーロケーションデータアレイを使用して記憶される。エコーロケーションデータは、典型的に、RAM、磁気媒体、光媒体などのようなメモリに設けられる。
【0041】
ステップ465において、方法400は、データ収集プロセスが完了したかどうか(例えば、望ましい画像を発生させるために必要なデータが収集されたかどうか)をテストする。データ収集プロセスが不完全である場合、この方法は、幅広ビーム設計ステップ410へ戻り、別の幅広ビームが設計される。ステップ465において、データ収集プロセスが完了した場合、画像は、オプション的な画像発生ステップ470で発生され、オプション的な表示ステップ480でコンピュータモニタのような表示装置に表示される。
【0042】
他の一実施例では、幅広ビーム設計ステップ410は、幾つかの幅広ビームに対する特性を計算する。本実施例では、オプションとして、ステップ465とステップ420の間でステップ410へ戻る。この方法は、ステップ465から送信ステップ420へ直接的に進む場合がある。なぜならば、次の幅広ビームの望ましい特性は、ステップ410の先行の場面で予め計算されているからである。
【0043】
図5は、本発明の一実施例による幅広ビームシステム500の構成図である。プログラマブル・パルス・シーケンス発生器などのような波形発生器510は、電子パルス210のような電子信号を発生させるため使用される。この電子パルスは、幅広ビーム形超音波ビームを形成するため後で使用される。電子信号は、幾つかの信号チャネルで、遅延装置515によって、図4のステップ410で設計された特性をもつ超音波ビームを発生させるように構成された遅延の組を用いて、個別に遅延される。遅延装置515の出力は、電力トランジスタ、演算増幅器、高速FETなどのような電力増幅器520に供給され、そこで増幅され、送受スイッチ525を通過する。送受スイッチ525は、オプションとして、遅延装置515から与えられた信号を含む入力チャネルを、トランスデューサアレイ530への送信用の出力チャネルへ接続するように構成されたマルチプレクサ527を具備する。トランスデューサアレイ530は従来技術の素子アレイ105と類似している。トランスデューサアレイ530は、超音波トランスデューサ素子110A−110Hのような超音波トランスデューサ素子を含み、送受スイッチ525から受信した電気信号を超音波パルスに変換することによって幅広ビームを発生させる。
【0044】
トランスデューサアレイ530は、幅広ビームを調査中の物質535に送信するように構成される。幅広ビームの送信は図4のステップ420で行われる。エコーは、幅広ビームと、組織及び骨のような超音波反射物体との間の相互作用によって、調査中の物質535内で発生される。トランスデューサアレイ530は、発生されたエコーを受信し、図4のステップ430において対応した電気信号を生成する。典型的にアナログ信号であるこれらの電気信号は、送受スイッチ525を介して、電圧調整型演算増幅器。デジタル制御型増幅器、増幅用トランジスタコイルなどの可変利得増幅器540へ供給される。
【0045】
増幅後、信号は、オプション的なアナログフィルタ545を通過して、A/D変換器550へ渡され、A/D変換器において、増幅された信号はデジタル化される。アナログフィルタ545は、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、などのように従来技術において公知のアナログフィルタでもよい、A/D変換器550は、典型的に、市販されているアナログ・デジタル変換器などでもよい。
【0046】
生成されたデジタル信号は、ステップ440(図4)で、チャネルデータ記憶バッファ555に格納され、信号プロセッサ560によって操作される。チャネルデータ記憶バッファ555は、従来技術において公知の記憶システムに設けられる。例えば、チャネルデータ記憶バッファ555は、オプションとして、RAMのような電子メモリ、ディスクドライブのような磁気メモリ若しくは光メモリ、コンパクトディスク等に設けられる。信号プロセッサ560によって実行される演算は、図4のステップ450のエコー領域計算を含み、チャネルデータ記憶バッファ550に保存された時間域データを、図4のステップ460でエコーロケーションデータ記憶装置565に格納される未加工データ若しくは検出データのようなエコーロケーションデータに変換する。エコーロケーションデータ記憶装置565から、データは、オプションとして、付加データ記憶装置570に転送されるか、或いは、画像コンバータ575によってアクセスされる。エコーロケーションデータ記憶装置565及び付加データ記憶装置570は、電子メモリ、磁気媒体、光媒体などのような任意の適当な記憶装置である。画像コンバータ575は、従来技術における画像スキャンコンバータと類似しているが、幾つかの超音波ビームを含む走査を使用した発生されたデータではなく、1個の超音波ビームを使用して発生させられたデータに対して更に作用する。図4のステップ470において、画像コンバータ575は、検出されたデータ又は画像データを発生させるため、エコーロケーションデータ記憶装置565、付加データ記憶装置570、或いは、両方の記憶装置に記憶されたデータを使用する。
【0047】
画像発生プロセスは、従来技術のビーム形成方法によって発生されたエコーロケーションデータを使用する画像発生技術に類似している。例えば、エコーロケーションデータ記憶装置565内の特定の1は、オプションとして、表示スクリーンの特定の場所にマッピングされる。画像内のある位置の強度及び/又はカラーは、調査中の物質535から検出された強度特性又はその他の特性を示す。この画像は、オプションとして、図4のステップ480で、LCDスクリーン、CRTスクリーン、コンピュータモニタ、電子ディスプレイ等のディスプレイ580に表示される。
【0048】
画像コンバータ575によって使用されるデータは、超音波ビームの系列から得られるか、或いは、単一の超音波ビームから得られる。付加データ記憶装置570内のデータは、画像コンバータ575、通信電子機器585、及び、ユーザ・インタフェース電子機器590のような幅広ビームシステム500の別のコンポ−メントに供給される。幅広ビームシステム500のコンポーネントは、図5に示されないコネクションを通じて、図5に示された制御電子機器595によって制御され、調整される。制御電子機器595は、幅広ビームシステム500の要素を制御し、幅広ビーム処理400のような本発明の方法を実行するように構成されたマイクロプロセッサと、DSPと、オプション的なコンピュータコード596と、を含む。
【0049】
図6は、本発明の一実施例による幅広ビーム設計ステップ410を説明するフローチャートである。本実施例では、計算は、コンピュータコード596を使用して実行され、例えば、超音波ビーム発生、伝播及びエコー発生の数学モデルを含む。ある種の例では、計算処理を高速化するためルックアップテーブルが使用される。例えば、ユーザが特定の解析の深さを指定した場合、望ましい強度は、オプションとして、ルックアップテーブルから決定される。幅広ビーム設計ステップ410は、カバレッジ判定ステップ610から始まる。カバレッジ判定ステップ610では、調査されるべき対象の物質535内の領域(若しくは容積)と、調査が行われるべき時間周期とが判定される。カバレッジ判定ステップ610は、ユーザによって選択されたオプション、及び、現在の映像化(解析)モードの要求に応答する。例えば、ドップラー映像化モードの場合、ユーザは、連続的なモニタリングと、超音波パルスの連続的な系列によって表される幅広ビームと、を選定する。別の例では、ユーザは、制限された視野を使用して、調査中の物質535内の領域を注目するように選択する。特定の視野の選択は、オプションとして、発生された幅広ビームの幅を計算するときに使用される。例えば、幅広ビームの幅は、整数個の幅広ビームが、10%のオーバーラップで、選択された視野にぴったり合うように選択される。
【0050】
また、カバレッジ判定ステップ610は、調査中の物質535内に領域(又は容積)を画像化するために要する幅広ビームの個数を決定する。例えば、一実施例によれば、カバレッジ判定ステップ61は、遠くのフィールドにおけるカバレッジをシミュレートするように構成され、ブロック切換技術を使用して相互に離れている3個の幅広ビームを用いることによって最良に映像化される領域を決定する計算を含む。他の実施例では、この計算は、ある領域が最も巧く映像化される際に使用される幅広ビームの個数が、1個、2個、又は、それ以上の何れであるかを決定する。ユーザが、数種類の幅広ビーム、反復映像化、若しくは、連続モニタリングを含む動作モードを選択したとき、カバレッジ判定ステップ610は、オプションとして、幅広ビーム毎に1回ずつ実行される。
【0051】
カバレッジ判定ステップ610の後には、特性判定ステップ620が続き、カバレッジ判定ステップ610で判定された更なる幅広ビームの特性が指定される。これらの特性には、例示として、超音波周波数、方向、散乱、パルス形状、位相関係、アパーチャ、強度、区間、反復レート、及び/又は、超音波ビームの他の特性が含まれるが、これらの例に限定されない。特性は、典型的に、実行される解析の映像化モード、必要解像度、及び、ユーザによって選択されたオプションに依存する。例えば、連続モニタリングモードは、特定のパルスレートで発生された幅広ビームを要求し、高解像度は多数の超音波周波数の使用を要求し、ユーザは、散乱の少ない幅広ビームによって最も良く検査される狭い領域の調査を選択する。更に、上述の特性の他に、特性判定ステップ620は、幅広ビームによって覆われる領域を表現するために使用する座標系と、この座標系の原点を選択する。このような座標系は、エコーロケーションデータを記憶するため使用される。座標系の選択は、オプションとして、幅広ビームの形状に応答する。実現可能な座標系の例は、図7に示されている。
【0052】
カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、オプションとして、解像度要求条件及びダイナミックレンジ要求条件に応答する。例えば、一実施例では、これらのステップは、特定の領域に関してズームされた画像を指定するユーザ入力に応答する。他の実施例では、これらのステップは、画像の一部若しくは全部に対して非常に高い画像解像度を指定するユーザ入力に応答する。他の一実施例では、カバレッジ判定ステップ610は、単一の超音波ビームが発生されるべきであるが、たとえば解像度を高めるために、この単一の超音波ビームによって発生されたエコーは、数種類の受信用トランスデューサの組によって複数の送受信サイクルにおいて検出されるべきである、と判定する。
【0053】
カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、オプションとして、本発明の他のステップで発生されるフィードバックに応答する。例えば、一実施例において、エコーロケーションデータは、覆われた領域の区域が余り巧く映像化されず、この映像化の不良は、巧く映像化されなかった区域と最も近いトランスデューサ素子110との間に非常に反射率の高い境界が存在するためであることを示す。このフィードバックへの応答として、カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620は、反射境界及び検査されるべき領域とは同一線上に存在しない代替的な超音波トランスデューサから領域を検査する案内された幅広ビームを定義する。
【0054】
幅広ビーム選択ステップ630は、送信用の幅広ビームを選択する。この幅広ビームは、特性判定ステップ620で定義された幅広ビームの中から選択される。幾つかの幅広ビームが特性判定ステップ620で特徴付けられた場合、幅広ビーム選択ステップ630は、次の特性判定ステップ620が出現する前に、オプション的に、2回以上実行される。このような場合、幅広ビーム選択ステップ630は、図4のステップ465の後で反復される。
【0055】
幅広ビーム設計ステップ410は、励起計算ステップ640で終了する。励起計算ステップ640は、幅広ビーム選択ステップ630で選択された幅広ビームを発生させるため必要な適当な物理パラメータを決定する。これらの物理パラメータには、例えば、励起すべきトランスデューサ素子110、電子パルス電圧、パルス遅延時間、マルチプレクサ527の設定値等が含まれる。例えば、一実施例において、特定の望ましい形状及び方向をもつ選択された超音波ビームは、振幅、周波数及び位相によって特徴付けられた特定の電子波形によって励起された特定のトランスデューサ素子110の組を使用する必要がある。要求されたトランスデューサ素子110の組の中の各トランスデューサ110は適当な遅延で励起される。適当な物理パラメータは、特定個数のトランスデューサ素子110を励起するため使用される電圧、波形、及び、遅延を計算するため、例えば、数学モデルを使用して決定される。一実施例において、電圧は、幅広ビームが侵入することが期待される調査中の物質535までの距離に依存する。
【0056】
図7A〜7Cは、カバレッジ判定ステップ610及び特性判定ステップ620で決定された幅広ビーム710の実施例(710A〜710C)を示す。図7Aには、直線的なトランスデューサアレイ530の実施例を使用して発生された幅広ビーム710Aが示されている。高周波音波が照射された区域の領域715Aは、オプションとして、原点720がトランスデューサ素子110の表面に置かれた極(θ,R)座標系で表現される。高周波音波照射区域715内の点は、原点720からの距離(R)と、トランスデューサアレイ530、又は、軸730若しくは軸735のような軸に関する角度座標値(θ)とによって識別される。他の実施例では、幅広ビーム701Bの焦点は、図2に示されるようにトランスデューサ素子110の前面ではなく、トランスデューサアレイ530の反対側に設けられる。
【0057】
図7Bは、曲線的なトランスデューサアレイ530の実施例を使用して発生された幅広ビーム710Bの説明図である。高調波音波が照射された区域715Bは、オプションとして、原点755がトランスデューサアレイ530の反対側にある極座標系によって表現される。この原点位置は、原点が図7Aに示されるようにトランスデューサアレイ530に接近している場合よりも、トランスデューサ素子110付近の広い領域に高周波音波を照射する。トランスデューサアレイ530の反対側の原点755の位置は、オプションとして、トランスデューサアレイ755の形状とは独立である。本発明の実施例には、原点755及び/又は焦点を、直線的なトランスデューサアレイ530の反対側に配置する実施例も含まれるが、これらの例には限定されない。
【0058】
図7Cは、高調波音波照射域715Cを生じる幅広ビーム710Cの説明図である。高調波音波照射域715Cは、図7Aに示された幅広ビーム710Aや図7Bに示された幅広ビーム710Bによって発生された高調波音波照射域よりも四角い形状をしている。幅広ビーム710Cによる高調波音波照射域は、矩形の形状をしているので、好ましくは、直交(x,y)座標系780で表現される。
【0059】
超音波ビームの中心で最大強度が検出される従来技術に対して、幅広ビーム710B若しくは710Cのような幅広ビームの最大強度は、ビーム中心線以外の点に現れる。図7Dは、ビームアパーチャの幅の約2分の1に一致する距離だけトランスデューサアレイ530から離れた点で測定された、幅広ビーム710Cの断面を通る超音波の強度をプロットしたグラフ790である。この断面は、図7Cでは、破線785で示されている。ある種の状況では、幅広ビームの強度プロファイルは、従来技術で見られるエネルギー分布よりも望ましいエネルギー分布を表す。例えば、グラフ790によって示されたエネルギー分布は、従来技術による焦点側の超音波ビーム内のエネルギー分布よりも均等に高調波音波照射域715C上に分布している。
【0060】
図8は、図4の送信ステップ420の一実施例の詳細説明図である。本実施例の場合、ステップ420は、波形発生器510が幅広ビーム設計ステップ410で計算された特性を備えた電気波形を発生させるため使用される波形発生ステップ810を含む。発生された波形は、オプションとして、周波数又は位相が変化する複数のパルスを含む。信号遅延ステップ820において、発生された波形は、幾つかの信号チャネルで再生され、遅延装置515を使用して、幅広ビーム設計ステップ410で決定された時間だけ遅延させられる。各信号チャネルの波形は、電力増幅器520を使用して増幅ステップ830で増幅される。増幅された波形は、多重化ステップ840でマルチプレクサ527に供給される。マルチプレクサ527は、トランスデューサアレイ530内のトランスデューサ素子110の一つ以上のメンバーに、各信号チャネル内の波形を案内する。音波発生ステップ850では、案内された波形が、トランスデューサアレイ530に幅広ビーム710を発生させる。この幅広ビームは調査中の物質535に向けられる。音波発生ステップ850は、送信ステップ420を終了する。
【0061】
図9は、エコーが検出され、デジタルデータに変換される図4の受信ステップ430の実施例の詳細説明図である。スイッチセットステップ910では、送受(送信/受信)スイッチ525は、トランスデューサ素子110で生成された信号がマルチプレクサ527を介して可変利得増幅器540へ供給されるようにセットされる。エコー検出ステップ920では、調査中の物質535からのエコーがトランスデューサアレイ530内のトランスデューサ素子110のメンバーによって検出される。エコーの検出に使用されるトランスデューサ素子110のメンバーは、オプションとして、幅広ビーム710を送信するため使用されるトランスデューサ素子110のメンバーとは別のメンバーでもよい。様々な実施例において、これらの2組のトランスデューサ素子110は、多数の方法で構成される。例えば、2組は、同一であり、インターリーブされ、トランスデューサアレイ530に沿って部分的に重なり合い、或いは、トランスデューサアレイ530に沿って重なり合わない。送受スイッチ525はスイッチセットステップ910でセットされているので、検出されたエコーから生ずる電子信号は可変利得増幅器540へ供給される。
【0062】
可変利得増幅器540へ供給された電子信号は、可変増幅ステップ930で増幅される。可変増幅ステップ930は、オプションとして、前の幅広ビーム710を使用して取得されたデータに基づくフィードバックを含む。フィードバックは、適応的な処理を実現し、後続のデータ操作ステップのダイナミックレンジが最大限になるように各チャネル内の信号を調節するため使用される。例えば、一実施例において、前の可変増幅ステップ930の実行によって特定のチャネルが飽和状態になった場合、そのチャネルの増幅は、オプション的に、後続の可変増幅ステップ930の実行の際に低下される。このような低下、すなわち、適応的フロントエンド利得は、増幅された信号のデジタル化後に行われる後のデータ操作で補償される。他の実施例では、トランスデューサアレイ530の中心付近のトランスデューサ素子110は、トランスデューサアレイ530の縁付近にあるトランスデューサ素子110よりも強くエコーに系統的に応答することが分かる。可変増幅ステップ930は、オプションとして、この系統的な差を補償する。
【0063】
オプション的なアナログフィルタリングステップ940では、可変増幅ステップ930で増幅された電子信号は、アナログフィルタ945を使用して処理される。この処理には、例えば、I/Qミキシング、望ましくない周波数の除去、及び、後段のデータ操作により好適な周波数範囲への信号のシフトが含まれる。
【0064】
データ変換ステップ950では、アナログフィルタリングステップ940でオプションとしてフィルタリングされる電子信号は、A/D変換器550を使用してデジタル化される。デジタルデータの発生は、図4の受信ステップ430で完了する。様々な実施例において、データ変換ステップ950は、幅広ビーム処理400内の別の時点で行われる。受信ステップ430の完了後、得られたデジタル信号は、データ保存ステップ440(図4)において、チャネルデータ記憶バッファ555に格納される。
【0065】
図10は、データ保存ステップ440で記憶されたデジタルデータを保持するように構成されたチャネルデータアレイ1000の一実施例の説明図である。チャネルデータアレイ1000は、チャネルデータ記憶バッファ555に収容される。チャネルデータアレイ1000の第1軸1010は、トランスデューサアレイ530のエコー受信用メンバーによってインデックスされる。チャネルデータアレイ1000の第2軸1020は、時間チャネルに分割される。アレイの各場所に格納された値は、特定の時間に、トランスデューサアレイ530の特定のメンバーによって検出されたエコー信号の強度及び位相を示す。
【0066】
チャネルデータ記憶バッファ555は、オプションとして、幾つかのチャネルデータアレイ1000を具備する。さらに、チャネルデータアレイ1000に格納された情報は、受信信号を平均化若しくは合計するため使用される。種々の実施例において、チャネルデータアレイ1000は、多次元データを格納するように構成される。例えば、一実施例によれば、トランスデューサアレイ530は、トランスデューサ素子110の2次元アレイである。本実施例の場合、チャネルデータアレイ100は、トランスデューサアレイ530の二つの次元を表現する2本の軸をふくみ、一方の軸は時間チャネルを表現する。
【0067】
エコー領域計算ステップ450は、調査中の物質535内のエコー源の位置及び強度を示すエコーロケーションデータを発生させるため、データ保存ステップ440で格納されたデータを使用する。このエコーロケーションデータの発生には、チャネルデータアレイ1000内で、多次元時間チャネルデータを、多次元位置(エコーロケーション)データに変換することが含まれる。例えば、一実施例によれば、2次元時間チャネルデータは、2次元空間座標によって表現されたエコーロケーションデータに変換される。エコー領域計算ステップ450のデータ変換は、ここで説明した多数の代替的な変換アルゴリズムを使用して実行される。これらの変換は、オプションとして、単一の幅広ビーム710の結果として受信された信号を用いて、2次元エコーロケーションデータを発生させるため使用される。代替的な一実施例では、エコー領域計算ステップ450は、付加的な空間次元を含む類似したエコー容積計算ステップで置き換えられる。エコー容積計算は、3次元容積をカバーする単一の幅広ビームの結果として受信された信号を用いて、3次元エコーロケーションデータを発生させる。
【0068】
図11A及び11Bは、エコーロケーションデータ記憶装置565に格納され、エコー領域計算ステップ450から得られた位置データを記憶するように構成されたエコーロケーションデータアレイ1100の二つの実施例の説明図である。これらの二つの実施例は、異なる座標系を利用する。以下で詳述するように、より効率的な座標系は、特に、個別の超音波ビーム710の形状に依存する。殆どの場合に、より効率的な座標系は、高周波音波が照射された領域と接近してオーバーレイする。例えば、図7A〜7Cに示されるように、幅広ビーム710A、幅広ビーム710B、及び、幅広ビーム710Cによって高周波音波照射された領域は、夫々、異なる原点をもつ別々の座標系によって表現される。より効率的な座標系を使用することにより、サンプリング効率と空間解像度が向上する。好ましい座標系とエコーロケーションデータアレイ1100の選定は、幅広ビーム710のような超音波ビームの形状に応じて行われ、オプションとして、ステップ410、440又は450で行われる。
【0069】
図11Aは、X座標(位置)を示す第1軸1110と、Y座標(位置)を示す第2軸1120と、を含む直交座標系を使用するエコーロケーションデータ和え離1100の一実施例の説明図である。図11Bは、角度(θ)座標を示す第1軸1110と、半径座標を示す第2軸1120と、を含む極座標系を使用するエコーロケーションデータアレイ1100の他の一実施例の説明図である。エコーロケーションデータアレイ1100の別の実施例は、別の座標系によって表現される。図示されない付加データは、オプションとして、第1軸1100と第2軸1120をトランスデューサアレイ530に関係付けるため使用される。例えば、エコーロケーションデータアレイ1100は、オプションとして、各座標系の原点を特定の個数の超音波トランスデューサ素子110へ関係付けるベクトルによって表現される。
【0070】
図12A及び12Bは、一方の座標系を使用する方がもう一方の座標系を使用するよりも効率的である状況を説明する図である。図12A及び12Bは、夫々、図11A及び11Bに示されたエコーロケーションデータアレイ1100の実施例が超音波ビーム1210に重ねられた様子を表している。超音波ビーム1210は、幅広ビーム710の一実施例である。図12Aは、例示の目的のため、11個のX分割用データビン(格納場所)1220を含む直交座標系を表している。データビン1220は、遠くのフィールド1230をカバーするために適切である。X次元におけるデータビン1220の間隔は、近傍フィールド1240のデータビンの間隔と同じであり、近傍フィールド1240の多数のデータビン1220は、超音波ビーム1219によって検査されない領域にマッピングされている。検査領域にマッピングされていないデータビン1220は、調査中の物質535の非効率的なサンプリングを表している。
【0071】
これに対して、図12Bには、超音波ビーム1210によって高調波音波照射された領域を表現するため極座標系を使用する例が示されている。極座標系の場合、データビン1250のサイズは、R座標の関数として変化する。エコーロケーションデータアレイ1100の本実施例のデータ点は、したがって、図12Aに示されたエコーロケーションデータアレイ1100の実施例の場合よりも効率的に、超音波ビーム1210によって検査される領域にマッピングされる。データビン1250のサイズの変化は効率的に増加する。なぜならば、図12Bに示されるように、データアレイ1100内のできるだけ多くのデータビン1250が超音波ビーム1210によってカバーされる領域に収まるからである。
【0072】
データビンの粒度はダイナミックである。一部の実施例では、エコーロケーションデータアレイ1100は、ナイキストの標本化空間を表現する。ビン1250の密度は、ある個数の標本が、対象の区域を通じて擬似的ではないサンプリングに対して、ナイキスト基準を充たすように、変化させられる。一部の実施例では、ビン1250の密度は、得られるエコーロケーションの解像度がある特定の区域で大きくなるように変化する。例えば、一実施例では、ユーザは、より詳細な画像が望ましい特定の区域を指定する。これに応じて、幅広ビームシステム及び方法は、この区域内でビン1250の密度が高くされたエコーロケーションデータアレイ1100を使用する。
【0073】
本発明の一部の実施例は、データビン1250の間で外挿及び内挿を行う。例えば、一実施例によれば、内挿は、遠方フィールドで使用され、各データビン1250は、エコーロケーションデータの密度を増加させるためより広い領域を表現する。オプションとして、内挿が近傍フィールドで殆ど使用されない場合、データビン1250の密度は高くなる。
【0074】
受信ステップ430で発生されたチャネルデータの解像度(標本化周波数)は、基本的に、ナイキスト理論の結果として、得られるエコーロケーションの解像度を制限する。しかし、受信ステップ430で発生されたデータの解像度は、オプション的に、信号平均化又はアップサンプリング技術によって改良される。アップサンプリング技術には、付加データの使用が含まれ、オプションとして、付加データが解像度の改良を非常に要求する区域に集められるように、フィードバックが含まれる。
【0075】
図13乃至15は、エコー領域計算ステップ450(図4)の実施例を示すために使用される。図13は、トランスデューサ素子110A−110Sと、調査中の物質535内部の超音波反射物体との間での超音波の伝播の説明図である。図14には、検出されたエコーから生成されたチャネルデータが示されている。図15には、図14に示されたチャネルデータを使用して発生させられたエコーロケーションデータが示されている。
【0076】
エコー領域計算ステップ450の幾つかの実施例では、データ変換方法が含まれ、調査中の物質535内の各ロケーションから検出されたエコーへの主要な要因は、そのロケーションの最も近くにあるトランスデューサ素子110のメンバーであると仮定される。この素子は、主寄与素子(MCE)と呼ばれる。典型的に、あるロケーションに最も近いトランスデューサ素子110のメンバーは、その特定のロケーション、及び、そのロケーションでの超音波反射物体に対するMCEである。しかし、MCEの独自性は、幅広ビーム710の方向と、トランスデューサアレイ530の形状とに依存する。このような場合に、MCEは、特定のロケーションに最も近いトランスデューサ素子110ではない。図4のエコー領域計算ステップ450のデータ変換方法は、オプションとして、幅広ビーム710の方向、トランスデューサアレイ530の幾何形状、フィードバック、並びに、超音波反射物体に対し、トランスデューサ素子110の中で最も近いメンバーではないMCEを決定するためのその他の要因を含む。
【0077】
図13Aには、単一のトランスデューサ素子110から送信された超音波1305が示されている。超音波1305は、調査中の物質535(図示せず)の中を伝わり、超音波反射物体1310Aに衝突する。トランスデューサ素子110Gは、トランスデューサ素子110A−110Sの中で超音波反射物体1310Aの最も近くにあるトランスデューサ素子であり、従って、反射物体1310Aに対するMCEであるとみなされる。超音波反射物体1310Aで、超音波1305は、超音波エコー1315を発生させる。その中の超音波エコー1315A−1315Fが図示されている。超音波エコー1315は、トランスデューサ素子110A−110Sまで逆伝播し、そこで検出される。
【0078】
図13Aには、1個のトランスデューサ素子110G(MCE)から送信された超音波1305が示されているが、殆どの実施例において、超音波は、幅広ビーム710の形成中に複数のトランスデューサ素子110A−110Sから送信される。図13Bは、超音波反射物体1310Bに対するMCEである単一のトランスデューサ素子110Qによって発生させられた超音波1330を示す図である。超音波エコー1340A−1340Fが図示されているエコー1340は、反射物体1310Bで発生し、逆伝播し、トランスデューサ素子110A−110Sによって検出される。
【0079】
図14は、図13に示された超音波1305及び超音波1330によって発生させられたデータを含むチャネルデータアレイ1000の一実施例の説明図である。チャネルデータアレイ1000の各列1410A−1410Sは、対応したトランスデューサ素子110A−110Sで検出された信号を表す。チャネルデータアレイ1000の各行1420A−1420Uは、特定の時間周期に検出された信号を含む。図14において、エコー1315及び1340の検出によって発生したデータを含むデータ要素1430は、データロケーションライン1440A又はデータロケーションライン1440Bのそれぞれと交差するデータ要素1430である。かくして、調査中の物質535内で超音波反射物体1310のような反射物体から発生した超音波エコーは、データロケーションライン1440A又は1440Bのようなラインに沿って存在するデータを生成する。データロケーションライン1440A及び1440Bは、トランスデューサ530の既知幾何形状と、調査中の物質535内での音速と、を使用する物理学及び幾何学の原則から計算することができる。データロケーションライン1440A及び1440Bは、MCE、トランスデューサ素子110G、或いは、典型的にその他のトランスデューサ素子110と交差しない。実際上、調査中の物質535は、多数の超音波反射物体1310を含み、チャネルデータアレイ1000はそれぞれの超音波反射物体によって発生されたデータを含む。
【0080】
エコー領域計算ステップ450の実施例によれば、エコーロケーションデータは、データロケーションライン1440A、データロケーションライン1440Bなどのようなラインに沿ってデータを合計することによって計算される。例えば、データロケーションライン1440Bの方向にデータを合計すると、超音波反射物体1310Bによって占有された位置で発生させられ、データビン1220やデータビン1240のようなデータビンによって表現されるエコー1315の振幅を表す結果が得られる。この合計は代表的なデータビンに格納される。類似した合計は、エコーロケーションデータアレイ1100内のデータビン毎にオプションとして実行される。多数回の合計によって、エコーロケーションデータアレイ1100は、調査中の物質535内の超音波反射物体を表現するエコーロケーションデータで占められる。
【0081】
図15には、エコーロケーションデータビン1520を含むエコーロケーションデータアレイ1100の一実施例が示されている。各エコーロケーションデータビン1520は、図14に示されるようにチャネルデータアレイ1000におけるデータロケーションライン1440Aのような固有のラインと関連付けられる。固有のラインに沿ったデータは、各データビン1520によって表される物理的ロケーションで行われたエコー発生の大きさを計算するため合計される。この合計は、オプションとして、全てのデータビン1520に関して実行され、エコーロケーションデータアレイ1100全体のエコーロケーションデータを計算するために使用され得る。
【0082】
図16は、エコー領域計算ステップ450の一実施例に含まれるデータ変換方法の説明図である。本実施例は、エコーロケーションデータアレイ1100内の一つのエコーロケーションデータビン1520が選択される素子選択ステップ1610を含む。典型的に、各々のエコーロケーションデータビン1520の選択は、エコーロケーションデータアレイ1100を系統的にトラバース(辿る)ことによって実現される。素子選択ステップ1610の後には、ライン判定ステップ1620が続き、選択されたエコーロケーションデータビン1520と関連付けられたチャネルデータアレイ1100の固有ラインが判定される。判定は、前に計算されたラインを含むルックアップテーブルなどを使用して、幾何学の原理からラインを計算することによって実行される。判定は、エコー領域計算ステップ450の前、或いは、エコー領域計算ステップ450の間に行われる。種々の実施例では、判定は、幅広ビーム設計ステップ410の前に、或いは、幅広ビーム設計ステップ410の間に行われる。代替的な実施例では、判定は、図4のステップ420、430及び/又は440の前若しくは実行中に行われる。ライン判定ステップ1620の後には、データ合計ステップ1630が続き、ライン判定ステップ1620で判定されたラインと交差するデータ要素1430からのデータを合計する。一実施例において、データ合計ステップ1630は、単純なデータの加算を行う。代替的な実施例では、データ合計ステップ1630は、重み付き関数、マトリックス演算、外挿、内挿など数学的技術を使用する。一実施例において、データ合計ステップ1630は、制御電子機器595内のファームウェアによって容易に実現される。結果保存ステップ1640では、ステップ1630での合計の結果が素子選択ステップ1610で選択されたデータ要素に格納される。
【0083】
ステップ1610乃至1640は、オプションとして、エコーロケーションデータアレイ1100内の全てのエコーロケーションデータビン1520に対して繰り返してもよい。図15は、図16に示された方法を使用してデータロケーションライン1440A及び1440Bに沿った合計によって得られた非零値を含むエコーロケーションデータビン1520の二つの組(1550及び1560)を示す。エコーロケーションデータビン1520の各組(1550及び1560)は、典型的に、種々の非零値が格納されたエコーロケーションデータビンを含む。ある種の実施例では、ステップ1610から1640までの一つ以上のステップは、並列処理として実行される。
【0084】
エコー領域計算ステップ450の他の実施例は、代替的なデータ変換方法を含む。これらの代替的な方法は、例えば、周波数域で実行される計算を使用し、受信信号間の位相関係を使用し、各トランスデューサ素子110の寄与に重み付けをするためアポディゼーション関数を使用し、フィードバック機構を使用し、MCE以外の送信用トランスデューサ素子110の相関解析を使用し考慮する。これらのMCE以外のトランスデューサ素子110は、チャネルデータからエコーロケーションデータへの変換の質と速度の両方を高めるため使用される。
【0085】
一実施例において、エコー領域計算ステップ450は、各トランスデューサ素子110の寄与度に重みを付けるためアポディゼーション関数を利用する。MCEの近くにあるトランスデューサ素子110は、MCEから遠くにあるトランスデューサ素子110よりも強いエコーを、特定の反射物体1310から受信するので、重み付けをする方が望ましい。
【0086】
図17は、本発明の実施例による3通りの別のアポディゼーション関数の説明図である。グラフ1710は、3種類の別のアポディゼーション関数1720、1730及び1740を示す。例えば、トランスデューサ素子110Gが、図16の素子選択ステップ1610で選択されたデータ要素1430のうちの一つに対するMCEである場合、アポディゼーション関数1720は、得られた合計がトランスデューサ素子110Gの近くにあるトランスデューサ素子110からより大きい寄与を受けるように、データ合計ステップ1630で使用される。同様に、トランスデューサ素子110K及び110SがMCEであるときの合計の場合、オプションとして、ライン1730及び1740で表されたアポディゼーション関数が使用される。
【0087】
他の実施例では、エコー領域計算ステップ450は、少なくとも部分的に周波数域で実行される。データは、可逆的な変換、例えば、サイン変換、フーリエ変換、ウェーブレット変換などを用いて変換される。
【0088】
エコー領域計算ステップ450の一部の実施例では、受信信号間の位相関係が、MCEによって送信された超音波から得られた受信信号と、2次寄与素子(SCE)から得られた受信信号とを区別するために使用される。SCEは、MCE以外のトランスデューサ素子110であり、超音波反射物体1310のような所定の超音波反射物体から発生した信号に寄与する。
【0089】
図18は、トランスデューサ素子110F及び110Gから送信され、超音波反射物体1310Aに衝突する超音波1810及び1305を示す図である。トランスデューサ素子110Gは、トランスデューサ素子110の中で最も近くに存在するメンバーであるので、超音波反射物体1310Aに対するMCEで在ると考えられる。他の実施例では、密接に集合したトランスデューサの組が一体的にMCEとして取り扱われる。トランスデューサ素子110Fのような他のトランスデューサ素子110も、反射物体1310Aに到達する超音波を発生する。本例の場合、トランスデューサ素子110FはSCEである。これらのSCEトランスデューサ素子110からの超音波は、超音波反射物体1310Aに到達するまでに、MCEトランスデューサ素子110からの超音波よりも長い距離を伝わる。MCEによって発生された超音波と同様に、SCEからの超音波は、超音波反射物体1310Aに衝突したとき、エコーを発生させる。その中の一部のエコーはトランスデューサアレイ530で検出される。
【0090】
図19は、チャネルデータアレイ1000内のSCEトランスデューサ素子110Fによって発生された信号のロケーションの説明図である。これらの信号は、データロケーションライン1440Aと類似したデータロケーションライン1910上にのる。データロケーションライン1910はデータロケーションライン1440Aよりも時間的に僅かに遅れている。データロケーションライン1440Aとデータロケーションライン1910の時間差は、超音波がトランスデューサ素子110Fから超音波反射物体1310Aに到達するまでに要する時間と、超音波がトランスデューサ素子110Gから超音波反射物体1310Aに到達するまでに要する時間との差に起因する。SCEから得られたデータと、MCEから得られたデータは、区別する方が望ましい。MCEからの信号は、典型的に、(超音波がより長い距離を伝わる)SCEから来る信号よりも強いが、SCEからの信号は、移動距離の差から生じる位相差によって更に見分けられる。特定の位相をもつ信号だけを考慮することによって、SCEから得られた信号をフィルタリングによって分離することができる。例えば、一実施例によれば、SCE信号は、10dBよりも上で除去され、一部の実施例では、38dBよりも上で除去される。
【0091】
様々な実施例において、SCEから来る信号は、エコー領域計算ステップ450で獲得された結果を改善するため使用される。例えば、一部の実施例では、SCEから来るデータは、MCEから来るデータに加算される(added)。かくして、図19に示されるように、データロケーションライン1910にのるデータは、データロケーションライン1440Aに沿うデータに加算される。データロケーションライン1910に重なるデータには、SCEトランスデューサ素子110Fで発生され、反射物体1310Aから反射された超音波により生じたデータが含まれる。位相調節及び重み付けの後、このデータは、データロケーションライン1440Aに重なるデータに強め合うように加算され、反射物体1310Aの存在を示すエコーロケーションデータの信号対雑音比を改善する。典型的に、MCEの最も近くにあるSCEは、遠くに離れているSCEよりも大きい重みが付与される。例えば、一実施例では、近傍SCEの重みを決定するためMCEに中心が置かれたChi平方重み付け分布が使用される。他の実施例では、重み付け分布は、チャネルデータアレイ1000における信号が強いMCE信号と重なるSCEの重みを減少させるフィードバックアルゴリズムに応答する。
【0092】
他の実施例では、SCEによって生ずる信号は、MCEによって生ずる信号から減算される。例えば、大きいMCE信号が、図19に示されるようにデータロケーションライン1440Aに沿って検出される場合、対応する大きいSCE信号がデータロケーションライン1910に沿って存在することが予想される。対応するSCE信号は予測可能であり、近似値はMCE信号の関数として計算可能であるため、データ値が他のエコーロケーションデータビン1250に対する値を計算するため使用される前に、計算値がデータ要素1430に格納されたチャネルデータ値から減算される。エコー領域計算を改良するためSCEから生じたデータを考慮することは、オプションとして、データ合計ステップ1630(図16)の一部として行われる。
【0093】
エコー領域計算ステップ450の一部の実施例はフィードバックを使用する。例えば、一実施例によれば、計算エコーロケーションデータは、計算エコーロケーションデータに基づいてシミュレートされたエコー信号(シミュレートされたチャネルデータ)を生成する技術を使用する「逆」データ変換で処理される。この逆変換は、エコーロケーションデータの計算が最適である場合に期待されるシミュレーション・チャネルデータを生成する。逆変換は、オプションとして、従来技術の光線追跡法(レイ・トレーシング)を使用して実行される。シミュレートされたチャネルデータは、チャネルデータアレイ1000に保存されている実際のエコーデータと比較される。これらの二つのデータセット間の類似度は、エコーロケーションデータを生成するため使用された計算の品質を表す。オプション的な反復処理の場合、エコーロケーションデータの計算は、この類似度に応じて変化するパラメータを使用して繰り返される。これらのパラメータは、チャネルデータアレイ1000内のデータとシミュレート・エコー信号との間の類似度を最適化するため操作される、種々の加重(重み付け)係数、アポディゼーション関数又はSCEを含む。
【0094】
他の実施例によれば、フィードバックは、幅広ビーム設計ステップ410を制御するためエコーロケーションデータを利用する。例えば、一実施例では、ステップ410で設計された超音波ビームの方向は、調査中の物質535内の反射性境界の場所に応答する。他の実施例では、ステップ410で設計されたビームの焦点、幅、周波数、又は、個数は、計算エコーロケーションデータに敏感である。
【0095】
エコー領域計算ステップ450の幾つかの実施例は、相関解析を利用するデータ変換を行う。相関法は、データ解析技術では公知であり、データ間の類似度を強調し、データ間の比較を行うために有用である。相関は、特に、例えば、位相の変化によって系統的に異なるデータを比較する場合に役に立つ。ある座標方向に一定の度合いで差がある2組のデータセットの相互相関解析は、この一定の差と、この差を考慮した後のデータの類似度を識別する。データセットの自己相関解析は、データ中の周期的信号又は反復的信号を実証する。
【0096】
図20は、MCEデータとの相関が良いSCEデータの成分を識別するため相互相関法が使用されるエコー領域計算ステップ450の一実施例の説明図である。相互相関計算ステップ2010において、MCEと関連付けられた、ラインデータロケーション1440A(図14)のようなラインに載るデータは、SCEと関連付けられた、ラインデータロケーション1910(図14)のようなラインに載るデータとの間で相互相関が求められる。これらのデータセットの各々は、オプションとして、アポディゼーション関数1720のような関数を使用して前処理される。相互相関は、2組のデータセットの間の位相差対類似度の関数として表現され得る相関データセットを発生する。位相差計算ステップ2020において、MCEデータとSCEデータ間の予想位相差は、MCEとSCEの間の既知の幾何学的関係に基づいて計算される。参照(ルックアップ)ステップ2030において、計算された位相差は、相関データセット内で、特定の位相差で、相互相関によって発生された相関データセット内の類似度値を参照するため使用される。位相差計算ステップ2020で計算された位相差に対応する類似度値は、MCEデータの信号対雑音比を改善する際にSCEデータがどの程度有効であり得るかを示す。なぜならば、SCEデータの類似度が高くなるほど、強め合うようにMCEデータに加算される可能性が高くなるからである。判定ステップ2040において、類似度値は所定の閾値(スレッショルド)と比較される。類似度値が閾値よりも大きい場合、SCEデータは、データ追加ステップ2050でMCEデータに加算される。ステップ2040において、類似度値は所定の閾値未満であることが判明した場合、コンピュータコード596は、判定ステップ2060で、特定のSCEデータセットの更なる解析を行うのが当然であるかどうかを判定する。例えば、近傍のSCEが未だ検査されていない場合、或いは、ユーザが信号対雑音比をより一層改善することを要求する場合、更なる解析が当然に行われる。さもなければ、この特定のSCEデータセットの解析は終了する。ステップ2060において、更なる解析が保証されていることが判定された場合,SCEデータセットはオプション的なフィルタステップ2070で処理される。ステップ2070における処理には、MCEデータセットとの間で優れた相関を示すSCEデータセットの成分を強調するため設計された、フィルタリング、打ち切り、若しくは、類似した手段が含まれる。例えば、一実施例よれば、アポディゼーション関数1740のような代替的な関数がSCEデータセットに適用される。図20に示されたステップは、オプションとして、2組以上のSCEデータセットに適用される。
【0097】
エコー領域計算ステップ450の代替的な実施例を使用して発生させられたエコーロケーションデータは、オプションとして比較され、この比較は、計算の整合性を判定し、或いは、フィードバックを与えるため使用される。例えば、一実施例において、エコー領域計算ステップ450の2回の繰返しには、異なるSCEの考慮が含まれる。これらの計算の精度は、繰返し毎の結果を比較することによってチェックされる。結果が接近している程、SCEを使用することによって正確な結果が生成される可能性が高くなる。他の例では、エコー領域計算ステップ450の2種類の実施例を使用して計算されたエコーロケーションデータは、著しく相違することが判明する。これらの相違は、幅広ビーム技術の他のステップに影響を与えるフィードバックとして使用される。例えば、特定区域におけるエコーロケーションデータの再生不可能性は、オプションとして、その区域を検査する幅広ビームの特性(強度、周波数、方向など)が変更されるように、幅広ビーム設計ステップ410にフィードバックを与えるため使用される。
【0098】
エコーロケーションデータアレイ1100に格納されたデータは、オプションとして、ユーザに向けて表示することができる調査中の物質535の画像を発生する画像発生ステップ470(図4)で使用される。画像の発生及び表示は、画像コンバータ575及びディスプレイ580を夫々使用することによって実現される。2次元データは、幅広ビーム技術を使用して単一の超音波ビームから発生させられ得るので、2次元画像が単一の超音波ビームから発生され得る。様々な実施例において、この能力は、従来技術による方法よりも画像フレームレートを増加させる。なぜならば、画像は、従来技術の多数の(すなわち、100個を超える)パルスの戻り時間ではなく、単一パルスの戻り時間、或いは、選択的に、少数個(すなわち、5個未満、10個未満、20個未満、40個未満若しくは64個未満)のパルスの戻り時間によって制限される時間内に生成されるからである。単一の超音波パルスから画像を発生させることの利点には、生成される画像内のジッタを低減し得ることがある。なぜならば、従来技術に対して、データが収集される期間中にトランスデューサアレイ530と調査中の物質535の間に相対運動が生じる時間が短くなるからである。単一の超音波ビームから画像を発生させることにより、調査中の物質535へ向けられる超音波エネルギーの量が削減され、画像を発生させるために要する電気的パワーの量が削減される。
【0099】
以上の方法及び装置の様々な実施例の記述から、当業者に明らかであるように、これらの実施例への変更及び追加は、本発明の原理を逸脱することなくなし得る。例えば、トランスデューサ素子110は、別の超音波発生素子によって置き換えることが可能であり、送受スイッチ515は、別個の送信スイッチ及び受信スイッチによって置き換えることが可能である。図示されたトランスデューサ素子110の個数は限定するものではない。典型的な実施例には、非常に多数のトランスデューサ素子110が含まれる。同様に、図示されたデータアレイの解像度は、例示の目的のためだけに選択された解像度である。典型的な実施例には、非常に多数のデータビンを備えたデータアレイが含まれる。
【0100】
幅広ビーム技術は、領域形成と従来のビーム形成の両方を使用するように構成されたシステムに適用可能である。一部の実施例は、これらの二通りのアプローチを切り替える手段を含む。例えば、領域形成技術は、領域を調べるために使用され、従来のビーム形成技術は、特定の対象領域にエネルギーを集中させるために使用される。2次元トランスデューサアレイを含むある種の実施例では、領域形成技術は、従来のビーム形成技術と同時に使用される。例えば、一方のトランスデューサ素子の組は領域形成のため使用され、他方のトランスデューサ素子の組は従来のビーム形成のため使用される。別の例では、領域形成は一方の空間次元でデータを収集するため使用され、従来のビーム形成は他方の空間次元でデータを収集するため使用される。超音波ビームは、一方の次元では領域形成用に構成され、他方の次元では従来のビーム形成用に構成される。これらの実施例の場合、2種類以上のエコーロケーション法が同時に実行され、各々のエコーロケーション法は、オプションとして、特定の空間次元と関連付けられる。
【0101】
幅広ビーム技術は、2次元領域若しくは3次元容積の中で集中ビームを走査させるため、フェーズドアレイを使用することによって制限されたシステムに適用可能である。これらのシステムは、ソナーのような音響システム、並びに、レーダーのような電磁波システムを含む。幅広ビーム技術の実施例は、2次元トランスデューサアレイと共に使用される。これらの実施例の場合、エコー容積計算は、エコー領域計算を置き換え、ステップ450の変換は、エコーデータの3次元(トランスデューサ、トランスデューサ、時間)アレイを3次元(x、y、z)エコーロケーションデータアレイに変換する。一実施例によれば、一つの3次元超音波ビームは、容積形成を実行するため使用され、これにより、空間内の容積をカバーするエコーロケーションデータを生成する。
【0102】
本願に関連して下記の態様が考えられる。
〔態様1〕
検査対象物質を検査する方法であって、各々のトランスデューサによって発生された成分を含む超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順と、超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、第1のデータが位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布するデータを表すとき、受信したエコーからこの第1のデータを発生させる手順と、受信したエコーの中から、複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別するため、位相情報及び/又は振幅情報を使用する手順と、区別されたエコーを使用して、第1のデータを、第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する手順と、を有する方法。
〔態様2〕
振幅情報は受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様3〕振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様4〕位相情報は受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様1記載の方法。
〔態様5〕
超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するように設定されている、態様4記載の方法。
〔態様6〕
付加超音波ビームを検査対象物質に送信する手順を更に含み、付加超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている、態様5記載の方法。
〔態様7〕
2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている付加超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、付加超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生した第2のエコーを受信する手順と、受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順と、第2のデータと第3のデータの両方を使用して画像を発生させる手順と、を更に有する態様5記載の方法。
〔態様8〕映像化モードに応答して超音波ビームを設定する手順を更に有する態様4記載の方法。
〔態様9〕受信用トランスデューサを使用して、受信したエコーから電子信号を発生させる手順と、受信用トランスデューサの組のメンバーの独自性に応じた係数をもつ重み付け関数を使用して、発生された電子信号を増幅する手順と、を更に有する態様4記載の方法。
〔態様10〕重み付け関数は主要な寄与素子の独自性に応答する、態様9記載の方法。
〔態様11〕第1のデータを変換する手順は多次元データ変換を行う、態様1記載の方法。
〔態様12〕
検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、超音波ビームと検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、受信したエコーから、位相情報及び振幅情報を含み、時間次元及び少なくとも第1の空間次元に関連付けられた値をとる第1のデータを発生させる手順と、変換されるべき第1のデータの一部を選択するために位相情報及び/又は振幅情報を用い、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成し得る変換を使用して、第1のデータの一部を第2のデータに変換する手順と、を有する方法。
〔態様13〕振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様14〕位相情報が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様15〕第1の空間次元は第2の空間次元と同じ次元である、態様14記載の方法。
〔態様16〕検査対象中の領域を解析するため設定される超音波ビームの特性を決定する手順を更に有する態様14記載の方法。
〔態様17〕超音波ビームによって検査されるべき領域を決定する手順を更に有し、第2のデータは当該領域に分布している、態様12記載の方法。
〔態様18〕変換する手順は、主要な寄与素子のロケーションを使用してデータロケーションラインを決定する手順を含む、態様12記載の方法。
〔態様19〕データロケーションラインは曲線である、態様18記載の方法。
〔態様20〕データロケーションラインは主要な寄与素子と交差しない、態様18記載の方法。
〔態様21〕第1のデータを変換する手順は、相関解析を使用する変換を含む、態様12記載の方法。
〔態様22〕第1のデータを変換する手順は、主要な寄与素子の決定を含む、態様12記載の方法。
〔態様23〕第1のデータを変換する手順は、2次的な寄与素子の考慮を含む、態様12記載の方法。
〔態様24〕付加超音波ビームを送信する手順を更に有し、第1のデータを変換する手順は、付加超音波ビームを送信する手順よりも前に行われる、態様12記載の方法。
〔態様25〕検査対象物質を検査する方法であって、一つ以上の超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元上に分布する点において、送信された一つ以上の超音波ビームの中の1個の超音波ビームと検査対象物質との間で生じる相互作用によって発生させられた第1のエコーを受信する手順と、受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、付加的に少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する値をとる第1のデータを発生させる手順と、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元の両方に分布する値をとる第2のデータに変換する手順と、別の超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、別の超音波ビームを使用して発生された更なるエコーを受信する手順と、受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順と、第3のデータと同じ次元をもつように第3のデータと第2のデータを結合する手順と、を有する方法。
〔態様26〕別の超音波ビームの特性は第2のデータを処理するアルゴリズムに応じて変更される、態様25記載の方法。
〔態様27〕第2のデータと第3のデータを結合する手順は、第2のデータ又は第3のデータの一方だけを使用して発生させられた画像の信号対雑音比よりも得られた画像の信号対雑音比を改善する、態様25記載の方法。
〔態様28〕別の超音波ビームを送信する手順は第2のデータに応答する、態様25記載の方法。
〔態様29〕映像化モードに応答して一つ以上の送信されるビームを設定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様30〕一つ以上の超音波ビームを使用して検査されるべき領域を決定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様31〕第1のデータを変換する手順は、主要な寄与素子の独自性に応じた重み付け関数によるデータ変換を使用する、態様25記載の方法。
〔態様32〕第2のデータは、一つ以上の超音波ビームの形状に応じた座標系を使用してインデックスされる、態様25記載の方法。
〔態様33〕
検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信する手順と、送信された超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生されたエコーを受信する手順と、受信されたエコーを使用して、時間及び第1の空間次元の多数の位置と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と、を有し、位置の個数は少なくとも64個であり、位置の個数との関連性は時間との関連性とは独立であり、第1のデータを、少なくとも第1の空間次元及び第2の空間次元と関連付けることができる値をとる第2のデータに変換する手順を更に有する方法。
〔態様34〕位置の個数は少なくとも128個である、態様33記載の方法。
〔態様35〕位置の個数は少なくとも256個である、態様33記載の方法。
〔態様36〕
第2の超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生させられた第2のエコーを受信する手順を更に有する態様33記載の方法。
〔態様37〕受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順を更に有し、第1のデータと第3のデータの組み合わせは、第1のデータと同じ次元をもつ、態様36記載の方法。
〔態様38〕第2のデータはエコーロケーションデータである、態様33記載の方法。
〔態様39〕検査対象物質を検査する方法であって、超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数の超音波トランスデューサを使用する手順と、超音波ビームと検査対象物質との間の相互作用によって発生させられたエコーを受信する手順と、受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順と、第1のデータから、第2の空間次元及び第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、第2のデータの中で、第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値は、第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される、方法。
〔態様40〕第2のデータと関連付けることができる空間次元の個数は送信される超音波の個数とは独立である、態様39記載の方法。
〔態様41〕送信される超音波ビームは、方向、焦点、及び、焦点におけるビーム幅によって表され、ビーム幅は、ビームの方向に直交した、焦点を通る直線に沿って測定され、第2のデータは、ビームの方向に直交した、ビーム幅よりも小さい空間次元における解像度をもつエコーロケーションデータである、態様39記載の方法。
〔態様42〕第2のデータを発生させる手順は、エコー受信ロケーションに応じて重みをエコーに割当てる重み付け関数を用いる変換アルゴリズムを使用する、態様39記載の方法。
〔態様43〕超音波ビームを送信するため複数のトランスデューサを使用する手順は、複数のトランスデューサを使用し、第2のデータを発生させる手順は、受信したエコーの位相関係を使用し、又は、受信したエコーの振幅を使用して、複数のトランスデューサの異なるメンバーから得られる信号を区別するように設定された変換アルゴリズムを使用する、態様39記載の方法。
〔態様44〕検査対象物質を検査する方法であって、複数の超音波ビームを検査対象物質に送信するため複数のトランスデューサを使用する手順と、複数の超音波ビームの中の第1のメンバーと検査対象物質との間の相互作用によって発生された第1のエコーを受信する手順と、受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順と、複数の超音波ビームの中の少なくとも第2のメンバーと検査対象物質との間の相互作用によって発生された第2のエコーを受信する手順と、受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順と、第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順と、第2のエコーロケーションデータを発生させるため第2のエコーデータを使用する手順と、第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、第1のロケーションデータ及び第2のロケーションデータを結合する手順と、を有する方法。
〔態様45〕データ変換は位相情報及び振幅情報に応答する、態様44記載の方法。
〔態様46〕データ変換は位相情報に応答する、態様44記載の方法。
〔態様47〕第1の空間次元は第2の空間次元と同じ次元である、態様44記載の方法。
〔態様48〕第1のエコーは、複数のトランスデューサのうちの少なくとも1台のトランスデューサを使用して受信される、態様44記載の方法。
〔態様49〕第3のエコーロケーションデータを試用して画像を表示する手順を更に有する態様44記載の方法。
〔態様50〕第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、第1のエコーロケーションデータは、直交座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様44記載の方法。
〔態様51〕第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、第1のエコーロケーションデータは、極座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様44記載の方法。
〔態様52〕エコーロケーションデータを発生させる方法であって、エコーをエコー信号に変換することによって第1のデータを発生させる手順を有し、第1のデータは、時間と関連付けることができ、かつ、少なくとも一つの空間次元における複数の位置と別々に関連付けることができる複数の値をとり、複数の値は位相情報及び振幅情報を含み、第1のデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を使用して、エコーロケーションデータを発生させる手順を更に有し、エコーロケーションデータは、複数の位置における異なる位置と関連付けることができる複数の値のうちの2個以上のメンバーから獲得された少なくとも一つの値をとる、方法。
〔態様53〕少なくとも一つの値は、複数の値のうちのメンバー間の内挿を使用しないで発生させられる、態様52記載の方法。
〔態様54〕エコーロケーションデータの複数のデータの各々は、少なくとも1次元の空間次元に異なる位置を占める複数の値のうちのメンバーから獲得される、態様52記載の方法。
〔態様55〕エコーは複数のトランスデューサ素子によって受信され、複数の値のうちの2個以上のメンバーの異なる位置は、複数のトランスデューサ素子の任意の2個のメンバー間の最短距離の少なくとも2倍だけ離されている、態様52記載の方法。
〔態様56〕データ変換は位相情報に応答する、態様52記載の方法。
【0103】
また、以下の態様も考えられる。
〔態様1〕超音波システムであって:
第1の複数のトランスデューサからの単一の超音波ビームを発生させる手順と、
第2の複数のトランスデューサから発生されたエコーを受信する手順と、
位相情報及び振幅情報を含み、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布する第1のデータを、受信したエコーから発生させる手順と、
前記第1のデータからの位相及び振幅情報に変換を適用することによって第2のデータを発生させる手順と、
前記第2のデータから画像を生成する手順とを有する、
超音波映像化方法を実行するよう構成された、超音波システム。
〔態様2〕前記振幅情報を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様3〕前記振幅情報と位相情報の両方を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様4〕前記位相情報を使って受信したエコーのうちからのエコーを区別する手段と、
区別されたエコーに基づいて前記第2のデータを発生させる手段とを更に有する、
態様1記載の超音波システム。
〔態様5〕超音波ビームを発生させる前記手順が、2次元以上の空間次元を含む第1の対象領域を検査するように超音波ビームを構成することを含む、態様4記載の超音波システム。
〔態様6〕前記方法が:
追加的な超音波ビームを発生させる手順を更に含み、該追加的な超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む、前記第1の対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように構成される、態様5記載の超音波システム。
〔態様7〕前記方法が:
前記追加的な超音波ビームによって発生した第2のエコーを受信する手順と、
受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順と、
前記第2のデータと前記第3のデータの両方を使用して画像を発生させる手順と、を更に有する、
態様6記載の超音波システム。
〔態様8〕映像化モードに基づく前記超音波ビームの構成についての選択を受け取る手段を更に有する、
態様4記載の超音波システム。
〔態様9〕前記方法が:
第2の複数のトランスデューサを介して受信したエコーから電子信号を発生させる手段と、
前記第2の複数の受信用トランスデューサのうちのあるトランスデューサからの発生された電子信号の寄与に基づいて、発生された電子信号を増幅する手段と、を更に有する態様4記載の超音波システム。
〔態様10〕前記の増幅が、発生された電子信号に重み付け関数を適用することを含む、態様9記載の超音波システム。
〔態様11〕第2のデータを発生させる前記手順が前記第1のデータに多次元データ変換を適用することを含む、態様1記載の超音波システム。
〔態様12〕超音波映像化システムの動作方法であって、
単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された単一の超音波ビームからのエコーを受信する手順と、
第1の空間次元および時間に基づく受信したエコーから、位相情報及び振幅情報を含む第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータの一部から、前記位相情報、前記振幅情報およびそれらの任意の組み合わせのうちのどれかに基づいて前記第1のデータの前記部分にデータ変換を適用することによって、少なくとも第2の空間次元及び第3の空間次元に分布する第2のデータを生成する手順と、を有する方法。
〔態様13〕前記振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様14〕前記位相情報が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、態様12記載の方法。
〔態様15〕前記第1の空間次元は前記第2の空間次元と同じ次元である、態様14記載の方法。
〔態様16〕検査対象物質中の領域を解析するよう構成された超音波ビームの特性を決定する手順を更に有する態様14記載の方法。
〔態様17〕前記超音波ビームを用いて映像化するべき領域を決定する手順を更に有し、前記第2のデータは前記領域にわたって分布している、態様12記載の方法。
〔態様18〕前記第1のデータの前記部分に前記変換を適用する手順は、受信したエコーの寄与素子のロケーションを使用してデータロケーションラインを決定する手順を含む、態様12記載の方法。
〔態様19〕データロケーションラインは曲線である、態様18記載の方法。
〔態様20〕データロケーションラインは主要な寄与素子と交差しない、態様18記載の方法。
〔態様21〕第1のデータを変換する前記手順は、相関解析を使用する変換を含む、態様12記載の方法。
〔態様22〕第2のデータを発生させる前記手順は、位相情報、振幅情報及びそれらの任意の組み合わせのうちのどれかの比較に基づいて、前記第2の複数のトランスデューサのうちから、受信したエコーへの寄与素子を特定することを含む、態様1記載の超音波システム。
〔態様23〕寄与素子を特定する前記手順が、前記比較に基づいて前記第2のトランスデューサのうちから主要なトランスデューサを特定することを含む、態様22記載の超音波システム。
〔態様24〕前記第2のデータを発生させたあとに追加的な超音波ビームを発生させる手順を更に有する、態様12記載の方法。
〔態様25〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された超音波ビームからの第1のエコーを受信する手順と、
受信された第1のエコーから、時間次元に分布し、検査対象物質の少なくとも第1の空間次元又は第2の空間次元に分布する第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータからデータロケーション軌跡を決定することによって前記第1のデータを、少なくとも前記第1の空間次元及び前記第2の空間次元に分布するエコーロケーションデータを含む第2のデータに変換する手順と、
前記第2のデータからの前記エコーロケーションデータが完全であるかどうかを判定する手順と、
別の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
前記別の超音波ビームによって発生された更なるエコーを受信する手順と、
受信された更なるエコーを使用して、エコーロケーションデータであり、特定の次元をもつ第3のデータを発生させる手順と、
前記第3のデータと同じ次元をもつように前記第3のデータと前記第2のデータを組み合わせる手順と、を有する方法。
〔態様26〕前記別の超音波ビームの特性は前記第2のデータを処理するアルゴリズムに応じて変更される、態様25記載の方法。
〔態様27〕前記第2のデータと前記第3のデータを組み合わせる前記手順は、前記第2のデータ又は前記第3のデータの一方だけを使用して発生されうる画像の信号対雑音比よりも得られた画像の信号対雑音比を改善する、態様25記載の方法。
〔態様28〕映像化モードに基づく前記超音波ビームの構成についての選択を受け取る手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様29〕前記超音波ビームによって映像化されるべき領域を決定する手順を更に有する態様25記載の方法。
〔態様30〕前記第1のデータを変換する手順は、重み付け関数によるデータ変換を使用することを含む、態様25記載の方法。
〔態様31〕前記第2のデータは、前記超音波ビームの形状に応じた座標系を使用してインデックスされる、態様25記載の方法。
〔態様32〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
発生された第1の単一の超音波ビームによって発生された第1のエコーを受信する手順と、
受信された第1のエコーを使用して、時間及び第1の空間次元における位置と関連付けることが可能である第1のデータを発生させる手順と、を有し、位置の個数は少なくとも64個であり、位置との関連付けは時間との関連付けとは独立であり、
前記第1のデータを、前記第1の空間次元及びある第2の空間次元上に分布する第2のデータに変換する手順を更に有する方法。
〔態様33〕前記位置の個数は少なくとも128個である、態様32記載の方法。
〔態様34〕前記位置の個数は少なくとも256個である、態様32記載の方法。
〔態様35〕第2の超音波ビームを発生させる手順と、
前記第2の超音波ビームに対する第2のエコーを受信する手順を更に有する態様32記載の方法。
〔態様36〕受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる手順を更に有し、
前記第1のデータと前記第3のデータの組み合わせは、前記第1のデータと同じ次元をもつ、態様35記載の方法。
〔態様37〕前記第2のデータはエコーロケーションデータである、態様32記載の方法。
〔態様38〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
検査対象物質への単一の超音波ビームを発生させるために複数の超音波トランスデューサを使用する手順と、
前記単一の超音波ビームによって発生させられたエコーを受信する手順と、
受信されたエコーから、時間及び第1の空間次元における2個以上の第1の個数の位置と関連付けることができる複数の値をとる第1のデータを発生させる手順と、
前記第1のデータから、第2の空間次元及び前記第1の空間次元における第2の個数の位置と関連付けることができる第2のデータを発生させる手順と、を有し、第1の位置の個数は第2の位置の個数よりも少数であり、前記第2のデータの中で、前記第2の個数の位置のうちの1個と関連付けることできるが、前記第1の個数の位置とは関連付けることができない少なくとも1個の値が、前記第1のデータの値の間の内挿を用いることなく発生される、方法。
〔態様39〕前記第2のデータと関連付けることができる空間次元数は発生される超音波ビームの数とは独立である、態様38記載の方法。
〔態様40〕発生される超音波ビームは、方向、焦点、及び、焦点におけるビーム幅によって特徴付けられ、ビーム幅は、ビームの方向に直交した、焦点を通る直線に沿って測定され、前記第2のデータは、ビームの方向に直交した空間次元において、ビーム幅よりも小さい解像度をもつエコーロケーションデータである、態様38記載の方法。
〔態様41〕前記第2のデータを発生させる手順は、エコー受信ロケーションに応じて重みをエコーに割当てる重み付け関数を用いる変換アルゴリズムを使用することを含む、態様38記載の方法。
〔態様42〕超音波ビームを発生させるために複数のトランスデューサを使用する前記手順は、複数のトランスデューサを使用することを含み、第2のデータを発生させる前記手順は、受信したエコーの位相関係を使用し、又は、受信したエコーの振幅を使用して、前記複数のトランスデューサのうちの異なるトランスデューサから得られる信号を区別するように構成された変換アルゴリズムを使用する、態様38記載の方法。
〔態様43〕検査対象物質検査システムの動作方法であって:
複数のトランスデューサからの第1の組のトランスデューサから第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
前記複数の超音波ビームからの第2の組のトランスデューサから、前記第1の超音波ビームの一部と重なる第2の超音波ビームを発生させる手順と、
前記第1の超音波ビームによって発生された第1のエコーを受信する手順と、
受信した第1のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第1の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができ、位相情報及び振幅情報を含む値をとる第1のエコーデータを発生させる手順と、
前記第2の超音波ビームによって発生された第2のエコーを受信する手順と、
受信した第2のエコーから、時間次元と関連付けることができ、少なくとも第2の空間次元における2個以上の位置と別個に関連付けることができる値をとる第2のエコーデータを発生させる手順と、
前記第1のエコーデータ、並びに、位相情報及び/又は振幅情報に応答するデータ変換を使用して、第1のエコーロケーションデータを発生させる手順と、
第2のエコーロケーションデータを発生させるため前記第2のエコーデータを使用する手順と、
前記第1のエコーロケーションデータと同じ次元をもつ第3のエコーロケーションデータを生成するため、前記第1のエコーロケーションデータ及び前記第2のエコーロケーションデータを組み合わせる手順と、を有する方法。
〔態様44〕前記データ変換は位相情報及び振幅情報に応答する、態様43記載の方法。
〔態様45〕前記データ変換は位相情報に応答する、態様43記載の方法。
〔態様46〕前記第1の空間次元は前記第2の空間次元と同じ次元である、態様43記載の方法。
〔態様47〕前記第1のエコーは、前記複数のトランスデューサのうちの少なくとも1台のトランスデューサを使用して受信される、態様43記載の方法。
〔態様48〕前記第3のエコーロケーションデータを使用して画像を表示する手順を更に有する態様43記載の方法。
〔態様49〕前記第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、該位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、前記第1のエコーロケーションデータは、直交座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様43記載の方法。
〔態様50〕前記第1のエコーデータは、時間次元及び位置次元をもち、該位置次元はトランスデューサ素子のロケーションと関連付けることができ、前記第1のエコーロケーションデータは、極座標系で表現された2個の空間次元をもつ、態様43記載の方法。
〔態様51〕エコーロケーションデータを発生させる方法であって:
単一の発された超音波ビームからのエコーを電子信号に変換することによって第1のデータを発生させる手順を有し、前記エコーは少なくとも一つの空間次元でインデックスされるアレイに配列された複数のトランスデューサ素子によって複数の時間に受信され、前記第1のデータは、前記複数の時間のうちの一つの時間と関連付けることができ、かつ、前記アレイ中のあるトランスデューサ素子の位置と別々に関連付けることができる、前記電子信号の位相情報及び振幅情報を含む複数の値をもち、
当該方法が:
前記第1のデータに前記第1データからの前記位相情報及び/又は振幅情報に応じたデータ変換を適用することによってエコーロケーションデータを発生させ、エコーロケーションデータが前記アレイからのあるトランスデューサ素子と関連付けることができる2個以上の値から導出される手順を更に有する、方法。
〔態様52〕前記エコーロケーションデータにおける、少なくとも1次元の空間次元において異なる位置を占める複数の値が、それぞれ、前記第1のデータからの値から導出される、態様51記載の方法。
〔態様53〕前記第1のデータからの前記2個以上の値の位置は、前記複数のトランスデューサ素子からの任意の2個の素子の最短距離の少なくとも2倍だけ離されている、態様51記載の方法。
〔態様54〕前記データ変換は位相情報に応じたものである、態様51記載の方法。
〔態様55〕超音波撮像方法であって:
第1の複数の超音波トランスデューサ素子を介して第1の単一の超音波ビームを発生させる手順と、
空間次元上に分布したアレイ内に配置された第2の複数の超音波トランスデューサ素子において、前記第1の単一の超音波ビームのエコーを検出する手順と、
前記エコーが検出された時刻および前記エコーが検出されたトランスデューサ素子ごとに、検出されたエコーからのデータを記憶する手順と、
前記第1のデータからデータロケーション軌跡を決定することによって前記の記憶されたデータから、少なくとも空間次元2次元上に分布するエコーロケーションデータを生成する手順と、
前記エコーロケーションデータから超音波画像を生成する手順とを有する、
方法。
〔態様56〕態様55記載の方法であって、前記第1の超音波ビームの一部に重なり、第2の複数の超音波トランスデューサ素子を介して発される、検査対象物質への第2の超音波ビームを発生させる手順を更に有する、方法。
【符号の説明】
【0104】
510 波形発生器
515 遅延装置
520 電力増幅器
525 送受スイッチ
527 マルチプレクサ
530 トランスデューサアレイ
535 調査中物質
540 可変利得増幅器
545 アナログフィルタ
550 A/D変換器
555 チャネルデータ記憶バッファ
560 信号プロセッサ
565 エコーロケーションデータ記憶装置
570 付加データ記憶装置
575 画像コンバータ
580 ディスプレイ
585 通信電子機器
590 ユーザ・インタフェース電子機器
595 制御電子機器
596 コンピュータコード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物質を検査する超音波システムによって実行される方法であって、
複数のトランスデューサにより、前記複数のトランスデューサの各トランスデューサによって発生された成分を含む超音波ビームを検査対象物質に送信する段階と、
前記超音波ビームと前記検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する段階と、
受信したエコーから第1のデータを発生させる段階であって、前記第1のデータは位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布するデータを表す、段階と、
前記位相情報及び/又は振幅情報を使用して、受信したエコーの中から、前記複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別する段階と、
区別されたエコーを使用して、前記第1のデータを、前記第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記振幅情報、前記位相情報または前記振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するように設定されており、
当該方法は、追加的超音波ビームを前記検査対象物質に送信する段階を更に含み、前記追加的超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む前記対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するよう構成されており、
当該方法は、2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている追加的超音波ビームを前記検査対象物質に送信する段階と、
前記追加的超音波ビームと前記検査対象物質の間の相互作用によって発生した第2のエコーを受信する段階と、
受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる段階と、
前記第2のデータと前記第3のデータの両方を使用して画像を発生させる段階と、を更に有する請求項1記載の方法。
【請求項1】
検査対象物質を検査する超音波システムによって実行される方法であって、
複数のトランスデューサにより、前記複数のトランスデューサの各トランスデューサによって発生された成分を含む超音波ビームを検査対象物質に送信する段階と、
前記超音波ビームと前記検査対象物質の間の相互作用によって発生されたエコーを受信する段階と、
受信したエコーから第1のデータを発生させる段階であって、前記第1のデータは位相情報及び振幅情報を含む値をとり、時間次元と関連付けられ、少なくとも一つの空間次元上で分布するデータを表す、段階と、
前記位相情報及び/又は振幅情報を使用して、受信したエコーの中から、前記複数のトランスデューサのうちのトランスデューサの部分集合によって発生された超音波ビーム成分から生じたエコーを区別する段階と、
区別されたエコーを使用して、前記第1のデータを、前記第1のデータよりも少なくとも1次元以上大きい空間次元上で分布した値をとる第2のデータに変換する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記振幅情報、前記位相情報または前記振幅情報と位相情報の両方が受信したエコーの間でエコーを区別するため使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するように設定されており、
当該方法は、追加的超音波ビームを前記検査対象物質に送信する段階を更に含み、前記追加的超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む前記対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記超音波ビームは2次元以上の空間次元を含む対象領域を検査するよう構成されており、
当該方法は、2次元以上の空間次元を含む対象領域と重なり合う第2の対象領域を検査するように設定されている追加的超音波ビームを前記検査対象物質に送信する段階と、
前記追加的超音波ビームと前記検査対象物質の間の相互作用によって発生した第2のエコーを受信する段階と、
受信した第2のエコーを使用して第3のデータを発生させる段階と、
前記第2のデータと前記第3のデータの両方を使用して画像を発生させる段階と、を更に有する請求項1記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−39388(P2013−39388A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219778(P2012−219778)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−19579(P2010−19579)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(503067340)ゾネア メディカル システムズ,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Zonare Medical Systems, Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−19579(P2010−19579)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(503067340)ゾネア メディカル システムズ,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Zonare Medical Systems, Inc.
【Fターム(参考)】
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